地中空間の充填工法
【課題】地山内に形成された一方向に延びる閉空間の地中空間内に充填材を十分に圧力をかけて充填し、その地中空間を完全に充填することが可能な地中空間の充填工法を提供する。
【解決手段】孔6を通して、注入管7の先端がパッカー5付近に到達するように、区間1a内に挿入する。このとき、注入管7はたわむが、注入管7の先端は斜坑1内の地面に接触していない。注入管7を通して、充填材8を区間1a内に充填する。その後、充填材8の硬化した区間1aを掘削し、区間1aに隣接する区間1bまで到達するように孔6を延長掘削する。孔6を通して、充填材8を送給するための注入管7を区間1b内に挿入する。注入管7内を通して、区間1b内に充填材8を充填する。
【解決手段】孔6を通して、注入管7の先端がパッカー5付近に到達するように、区間1a内に挿入する。このとき、注入管7はたわむが、注入管7の先端は斜坑1内の地面に接触していない。注入管7を通して、充填材8を区間1a内に充填する。その後、充填材8の硬化した区間1aを掘削し、区間1aに隣接する区間1bまで到達するように孔6を延長掘削する。孔6を通して、充填材8を送給するための注入管7を区間1b内に挿入する。注入管7内を通して、区間1b内に充填材8を充填する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山内に形成された一方向に延びる閉空間を充填する地中空間の充填工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地山内に構築され、坑口周辺が土砂等で封鎖されている閉空間を埋め戻す場合には、従来、例えば、図10に示すように、坑口3周辺一帯の表土Sを除去して坑口3を露出させ、地上から坑口3までの作業用道路20を構築し、坑口3付近又は地中空間21内に充填材を充填するためのポンプ等の充填装置を設置して、地中空間21の坑底側から坑口3側へ向かって充填材を充填して地中空間21を埋戻していた。
【0003】
しかし、この方法では、坑口3を露出させるために大量の土砂を掘削するので、周辺の環境を乱すという問題点があった。
【0004】
そこで、図11に示すように、坑口3周辺一帯の表土Sを除去することなく、地上から地中空間21に向かって充填材を送給するために必要な径の孔6をケーシングを用いて構築し、このケーシングを、充填材を送給するための注入管7として、地中空間21内のできるだけ奥まで挿入して、この注入管7によって充填材を地中空間21内に送給し、地中空間21内を充填材で充填して埋め戻すことが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、注入管により地中空間内を充填する方法では、以下に示すような問題点があった。(1)地中空間が斜坑や水平坑の場合に、注入管を地中空間内に挿入すると、地中空間内でこの注入管を支えるものがないので、注入管がたわんで注入管の先端が地中空間の地面に当たってしまい注入管をそれ以上挿入することができない。(2)注入管が地中空間の地面に当たってそれ以上挿入できなくなった位置から地中空間内を充填すると、充填材に十分な圧力を加えることができないので、充填材が充填されていない箇所が生じてしまい、地中空間内に隙間が生じる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、地山内に形成された一方向に延びる閉空間の地中空間内に充填材を十分に圧力をかけて充填し、その地中空間を完全に充填することが可能な地中空間の充填工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の地中空間の充填工法は、地山内に形成された一方向に延びる閉空間を充填する地中空間の充填工法であって、地上から地山を掘削して前記地中空間に到達する導坑を構築する導坑構築工程と、流体を注入すると膨張する膨張体を縮んだ状態で前記導坑を通して前記地中空間内に設置する設置工程と、前記流体を前記膨張体に注入して前記膨張体を膨張させ、前記膨張体を前記地中空間の内壁に密着させて前記地中空間を複数の区間に区切る分割工程と、地上から前記地中空間に向かって地山を掘削して、前記複数の区間のうち最も地上側に存在する地上側区間に到達する孔を構築する孔構築工程と、地上から前記孔を通して充填材を送給するための注入管を、その先端が前記地上側区間に到達するまで挿入する挿入工程と、前記注入管を介して充填材を前記地上側区間内に送給して、この区間を充填する充填工程と、前記地上側区間内に充填した充填材が硬化すると、前記孔を利用して前記地上側区間内を掘削して、この区間に隣接する区間まで到達するように前記孔を延長掘削する延長掘削工程とを備え、前記挿入工程、前記充填工程及び前記延長掘削工程を繰り返して、前記複数の区間を地上側から順に区間毎に充填して前記地中空間を充填することを特徴とする(第1の発明)。
【0008】
本発明による地中空間の充填工法によれば、地上から地中空間に到達する導坑を構築し、膨張体を縮んだ状態でこの導坑内を通して、地中空間内に設置し、膨張体に流体を圧入して地中空間の内壁に密着させるので、地中空間を複数の区間に区切ることができる。
【0009】
そして、地上から地中空間に向かって地山を掘削して、最も地上側に存在する地上側区間に到達する孔を構築し、この孔内を通して注入管を、その先端が地上側区間内に到達するように挿入するので、この注入管を介して充填材を注入することができる。
【0010】
また、注入管を区間内に挿入すると注入管はたわむものの、膨張体により地中空間が分割され、各区間の長さが短くなっているので、注入管がたわんで地中空間内の地面に接触する前に注入管を膨張体近傍に到達するまで挿入することができる。したがって、この注入管を通して、充填材をその区間の深部側(つまり、膨張体付近)から圧力を加えて充填することができるので、その区間内を隙間無く確実に充填することができる。
【0011】
次に、地上側区間の充填が終了して充填材が硬化すると、孔を利用して充填材の硬化した地上側区間内を掘削して隣接する区間まで到達するように延長掘削し、延長掘削された孔内に再び注入管を挿通して隣接する区間まで挿入するので、隣接する区間内に充填材を注入することができる。また、掘削した地上側区間の充填材が、注入管をたわまないように支持するので、注入管を隣接する区間の深部まで挿入することができる。したがって、上記と同様にこの隣接する区間内を隙間無く確実に充填することができる。
【0012】
また、各区間に対して、挿入工程と充填工程及び延長掘削工程とを繰り返すことにより、地中空間内を地上側から深部側へ順番に区間毎に充填することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記導坑は、前記地中空間の長さ方向に並ぶように複数設けられることを特徴とする。
【0014】
本発明による地中空間の充填工法によれば、導坑は、地中空間の長さ方向に並ぶように所定の間隔で複数設けられるので、地中空間の距離が長くても地中空間を所定の間隔毎に区切ることができる。そして、これらの区間毎に充填を行うので、地中空間の距離が長くてもこの地下空間を確実に充填することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の地中空間の充填工法を用いることにより、地山内に形成された一方向に延びる閉空間である地中空間内に充填材を十分に圧力をかけた状態で充填し、その地中空間を完全に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る地中空間の充填工法の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、地中空間である斜坑の坑道を充填する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、水平坑、鉛直坑等の坑道全般に適用可能である。また、坑道に限らず地中の一方向に延びる閉空間を充填する場合に適用可能である。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る斜坑1の位置を示す地山2の断面図である。
図1に示すように、斜坑1は地山2内に構築されており、その坑口3は土砂により封鎖されている。本実施形態においては、斜坑1は、例えば、長さ25m、高さ2m、幅2mの規模を有している。
【0018】
図2は、本実施形態に係る斜坑1に到達する鉛直導坑4を構築した状態を示す地山2の断面図である。
図2に示すように、地上から鉛直方向に地山2をローターリーパーカッション等の掘削機9で掘削して、斜坑1に到達する鉛直導坑4を構築する。本実施形態においては、鉛直導坑4を1本構築したが、この数に限定されるものではなく、斜坑1の長さ方向に沿って並ぶように複数本構築してもよい。なお、鉛直導坑4を複数本構築する場合において、鉛直導坑4間の距離は、充填材8を送給するための注入管7のたわみ量に基づいて決定され、具体的には、注入管7の一端を支持して他端を支持せずに斜坑1内に設置した場合に、一端の支持位置から注入管7がたわんで他端が斜坑1内の地面に接触した位置までの距離(以下、接地距離Lという)以内になるように決定される。
【0019】
気体や液体の流体を圧入すると膨張するパッカー5を縮んだ状態で鉛直導坑4内を挿通させて、斜坑1内に設置する。そして、流体を圧入してパッカー5を膨張するとともに、所定の圧力で保持し、パッカー5を斜坑1の内壁に密着させて斜坑1内を複数の区間1a、1bに区切る。
パッカー5の膨張を保持するための圧力は、充填材8の充填時にパッカー5の設置位置がずれることがないように設定する。
以上のようにして、鉛直導坑4を構築し、斜坑1内にパッカー5を設置したら、次に孔6を構築する。
【0020】
図3は、本実施形態に係る斜坑1の最も坑口3に近い区間1aに到達する孔6を構築した状態を示す地山2の断面図である。
図3に示すように、斜坑1の長さ方向と略一致する向きに、地上から斜坑1に向かって地山2を掘削機9で掘削して、坑口3を通過するとともに、区間1aに到達する孔6をケーシングを用いて構築する。本実施形態においては、孔6の径は、例えば、φ133mmであり、この大きさは充填材8を送給するために必要な径の大きさである。
【0021】
図4は、本実施形態に係る斜坑1の区間1a内に注入管7を挿入した状態を示す地山2の断面図である。
図4に示すように、孔6を構築する際に使用したケーシングを、充填材8を送給するための注入管7とし、その先端がパッカー5付近に到達するように区間1a内に挿入する。このとき、注入管7のうち、孔6内に存在している部分は孔6の側面にて支持されているが、区間1aに突出している部分は何ら支持されていないので、区間1aに突出している部分は斜坑1の地面側にたわむものの、坑口3からパッカー5までの距離は上述した接地距離Lよりも短いので、注入管7の先端は斜坑1内の地面に接触していない。
【0022】
この状態で、地上に設置された充填用装置10から注入管7を通して、充填材8を区間1a内に注入する。本実施形態においては、充填材8として、乾燥粉体の石粉を用いたが、これに限定されるものではなく、発泡モルタルや石炭灰等を用いてもよい。
【0023】
充填材8の注入は、例えば、ジェットパウダーグラウト工法を用い、区間1aのパッカー5付近から充填材8を注入しながら徐々に注入管7を地上側に引き抜くことにより、図5に示すように、区間1a内を充填する。このとき、孔6内には充填材8を充填しない。そして、充填作業終了後、充填材8が硬化するまで放置する。なお、本実施形態においては、充填材8の注入工法としてジェットパウダーグラウト工法を用いたが、この工法に限定されるものではなく、他の充填工法を用いてもよい。
【0024】
区間1a内の充填材8が硬化したら、パッカー5の圧力を解放し、収縮させる。収縮したパッカー5は、鉛直導坑4を通して地上にて回収する。
次に、区間1aに充填されて硬化した充填材8を掘削する。
【0025】
図6は、本実施形態に係る斜坑1の区間1aを掘削している状態を示す地山2の断面図である。
図6に示すように、充填材8の硬化した区間1aを掘削機9で掘削し、図7に示すように、区間1aに隣接する区間1bまで到達するように孔6をケーシング(つまり、注入管7)を用いて延長掘削する。
【0026】
図8は、本実施形態に係る斜坑1の区間1bに充填材8を充填するための注入管7を挿入した状態を示す地山2の断面図である。
図8に示すように、孔6を構築する際に使用したケーシングを、充填材8を送給するための注入管7とし、その先端が斜坑1の坑底付近に到達するように、区間1b内に挿入する。このとき、注入管7のうち、孔6内に存在している部分は孔6の側面にて支持されているが、区間1bに突出している部分は何ら支持されていないので、区間1bに突出している部分は斜坑1の地面側にたわんでいるものの、区間1aの下面1cから坑底までの距離は上述した接地距離Lよりも短いので、注入管7の先端は斜坑1内の地面に接触していない。
この状態で、地上に設置された充填用装置10から注入管7を通し、充填材8を区間1b内に注入する。
【0027】
図9は、本実施形態に係る斜坑1の区間1bを充填した状態を示す地山2の断面図である。
図9に示すように、充填材8の注入は、区間1aを充填する場合と同様に、区間1bの坑底付近から行い、注入しながら徐々に注入管7を地上側に引き抜くことにより、区間1b内を充填する。区間1b内を充填したら、注入管7を更に地上側に引き抜きつつ、孔6内の区間1a部分及び地山2部分にも充填材8を充填して、斜坑1及び孔6を充填する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の斜坑1の充填工法によれば、地上から地山2を掘削して斜坑1に到達する鉛直導坑4を構築し、この鉛直導坑4を利用して斜坑1内にパッカー5を設置するので、斜坑1を複数の区間1a、1bに区切ることができる。
【0029】
そして、地上から斜坑1の長さ方向と略一致する向きで、斜坑1に向かって地山2を掘削して、坑口3を通過するとともに、区間1aに到達する孔6を構築し、この孔6内に注入管7を挿通するので、区間1aに充填材8を注入することができる。
【0030】
また、パッカー5は、各区間1a、1bの長さが注入管7の接地距離Lよりも短くなるように設置されているので、注入管7をパッカー5に到達するまで地面に接触させることなく挿入することができる。したがって、この注入管7を介して充填材8を区間1a内にその区間1aの坑底側から圧力を加えて充填することができるので、区間1a内を隙間無く確実に充填することができる。
【0031】
次に、区間1a内に充填した充填材8が硬化すると、孔6を利用して区間1a内を掘削して隣接する区間1bまで到達するように延長掘削し、この延長掘削された孔6内に再び、注入管7を挿通させて隣接する区間1bまで挿入するので、隣接する区間1b内に充填材8を注入することができる。また、区間1aの充填材8が注入管7をたわまないように支持するので、注入管7を区間1bの坑底まで挿入することができる。したがって、上記と同様に、注入管7を介して充填材8を区間1bの坑底側から圧力を加えて充填することができるので、この区間1b内を隙間無く確実に充填することができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、地上から斜坑1までの導坑を鉛直に構築する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、傾斜していてもよい。
【0033】
なお、本実施形態においては、孔6を構築する際に使用したケーシングを注入管7として利用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、孔6に設置されたケーシング内に注入管7を別途挿通させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る斜坑の位置を示す地山の断面図である。
【図2】本実施形態に係る斜坑に到達する鉛直導坑を構築した状態を示す地山の断面図である。
【図3】本実施形態に係る斜坑の区間に到達する孔を構築した状態を示す地山の断面図である。
【図4】本実施形態に係る斜坑の区間内に注入管を挿入した状態を示す地山の断面図である。
【図5】本実施形態に係る斜坑の区間内を充填した状態を示す地山の断面図である。
【図6】本実施形態に係る斜坑の区間を掘削している状態を示す地山の断面図である。
【図7】本実施形態に係る斜坑内に、区間に到達する孔を構築した状態を示す地山の断面図である。
【図8】本実施形態に係る斜坑の区間に充填材を充填するための注入管を挿入した状態を示す地山の断面図である。
【図9】本実施形態に係る斜坑の区間を充填した状態を示す地山の断面図である。
【図10】従来の実施例を示す地山の断面図である。
【図11】従来の実施例を示す地山の断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 斜坑
1a、1b 区間
1c 区間1aの下面
2 地山
3 坑口
4 鉛直導坑
5 パッカー
6 孔
7 注入管
8 充填材
9 掘削機
10 充填用装置
20 作業用道路
21 地中空間
S 表土
L 接地距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山内に形成された一方向に延びる閉空間を充填する地中空間の充填工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地山内に構築され、坑口周辺が土砂等で封鎖されている閉空間を埋め戻す場合には、従来、例えば、図10に示すように、坑口3周辺一帯の表土Sを除去して坑口3を露出させ、地上から坑口3までの作業用道路20を構築し、坑口3付近又は地中空間21内に充填材を充填するためのポンプ等の充填装置を設置して、地中空間21の坑底側から坑口3側へ向かって充填材を充填して地中空間21を埋戻していた。
【0003】
しかし、この方法では、坑口3を露出させるために大量の土砂を掘削するので、周辺の環境を乱すという問題点があった。
【0004】
そこで、図11に示すように、坑口3周辺一帯の表土Sを除去することなく、地上から地中空間21に向かって充填材を送給するために必要な径の孔6をケーシングを用いて構築し、このケーシングを、充填材を送給するための注入管7として、地中空間21内のできるだけ奥まで挿入して、この注入管7によって充填材を地中空間21内に送給し、地中空間21内を充填材で充填して埋め戻すことが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、注入管により地中空間内を充填する方法では、以下に示すような問題点があった。(1)地中空間が斜坑や水平坑の場合に、注入管を地中空間内に挿入すると、地中空間内でこの注入管を支えるものがないので、注入管がたわんで注入管の先端が地中空間の地面に当たってしまい注入管をそれ以上挿入することができない。(2)注入管が地中空間の地面に当たってそれ以上挿入できなくなった位置から地中空間内を充填すると、充填材に十分な圧力を加えることができないので、充填材が充填されていない箇所が生じてしまい、地中空間内に隙間が生じる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、地山内に形成された一方向に延びる閉空間の地中空間内に充填材を十分に圧力をかけて充填し、その地中空間を完全に充填することが可能な地中空間の充填工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の地中空間の充填工法は、地山内に形成された一方向に延びる閉空間を充填する地中空間の充填工法であって、地上から地山を掘削して前記地中空間に到達する導坑を構築する導坑構築工程と、流体を注入すると膨張する膨張体を縮んだ状態で前記導坑を通して前記地中空間内に設置する設置工程と、前記流体を前記膨張体に注入して前記膨張体を膨張させ、前記膨張体を前記地中空間の内壁に密着させて前記地中空間を複数の区間に区切る分割工程と、地上から前記地中空間に向かって地山を掘削して、前記複数の区間のうち最も地上側に存在する地上側区間に到達する孔を構築する孔構築工程と、地上から前記孔を通して充填材を送給するための注入管を、その先端が前記地上側区間に到達するまで挿入する挿入工程と、前記注入管を介して充填材を前記地上側区間内に送給して、この区間を充填する充填工程と、前記地上側区間内に充填した充填材が硬化すると、前記孔を利用して前記地上側区間内を掘削して、この区間に隣接する区間まで到達するように前記孔を延長掘削する延長掘削工程とを備え、前記挿入工程、前記充填工程及び前記延長掘削工程を繰り返して、前記複数の区間を地上側から順に区間毎に充填して前記地中空間を充填することを特徴とする(第1の発明)。
【0008】
本発明による地中空間の充填工法によれば、地上から地中空間に到達する導坑を構築し、膨張体を縮んだ状態でこの導坑内を通して、地中空間内に設置し、膨張体に流体を圧入して地中空間の内壁に密着させるので、地中空間を複数の区間に区切ることができる。
【0009】
そして、地上から地中空間に向かって地山を掘削して、最も地上側に存在する地上側区間に到達する孔を構築し、この孔内を通して注入管を、その先端が地上側区間内に到達するように挿入するので、この注入管を介して充填材を注入することができる。
【0010】
また、注入管を区間内に挿入すると注入管はたわむものの、膨張体により地中空間が分割され、各区間の長さが短くなっているので、注入管がたわんで地中空間内の地面に接触する前に注入管を膨張体近傍に到達するまで挿入することができる。したがって、この注入管を通して、充填材をその区間の深部側(つまり、膨張体付近)から圧力を加えて充填することができるので、その区間内を隙間無く確実に充填することができる。
【0011】
次に、地上側区間の充填が終了して充填材が硬化すると、孔を利用して充填材の硬化した地上側区間内を掘削して隣接する区間まで到達するように延長掘削し、延長掘削された孔内に再び注入管を挿通して隣接する区間まで挿入するので、隣接する区間内に充填材を注入することができる。また、掘削した地上側区間の充填材が、注入管をたわまないように支持するので、注入管を隣接する区間の深部まで挿入することができる。したがって、上記と同様にこの隣接する区間内を隙間無く確実に充填することができる。
【0012】
また、各区間に対して、挿入工程と充填工程及び延長掘削工程とを繰り返すことにより、地中空間内を地上側から深部側へ順番に区間毎に充填することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記導坑は、前記地中空間の長さ方向に並ぶように複数設けられることを特徴とする。
【0014】
本発明による地中空間の充填工法によれば、導坑は、地中空間の長さ方向に並ぶように所定の間隔で複数設けられるので、地中空間の距離が長くても地中空間を所定の間隔毎に区切ることができる。そして、これらの区間毎に充填を行うので、地中空間の距離が長くてもこの地下空間を確実に充填することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の地中空間の充填工法を用いることにより、地山内に形成された一方向に延びる閉空間である地中空間内に充填材を十分に圧力をかけた状態で充填し、その地中空間を完全に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る地中空間の充填工法の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、地中空間である斜坑の坑道を充填する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、水平坑、鉛直坑等の坑道全般に適用可能である。また、坑道に限らず地中の一方向に延びる閉空間を充填する場合に適用可能である。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る斜坑1の位置を示す地山2の断面図である。
図1に示すように、斜坑1は地山2内に構築されており、その坑口3は土砂により封鎖されている。本実施形態においては、斜坑1は、例えば、長さ25m、高さ2m、幅2mの規模を有している。
【0018】
図2は、本実施形態に係る斜坑1に到達する鉛直導坑4を構築した状態を示す地山2の断面図である。
図2に示すように、地上から鉛直方向に地山2をローターリーパーカッション等の掘削機9で掘削して、斜坑1に到達する鉛直導坑4を構築する。本実施形態においては、鉛直導坑4を1本構築したが、この数に限定されるものではなく、斜坑1の長さ方向に沿って並ぶように複数本構築してもよい。なお、鉛直導坑4を複数本構築する場合において、鉛直導坑4間の距離は、充填材8を送給するための注入管7のたわみ量に基づいて決定され、具体的には、注入管7の一端を支持して他端を支持せずに斜坑1内に設置した場合に、一端の支持位置から注入管7がたわんで他端が斜坑1内の地面に接触した位置までの距離(以下、接地距離Lという)以内になるように決定される。
【0019】
気体や液体の流体を圧入すると膨張するパッカー5を縮んだ状態で鉛直導坑4内を挿通させて、斜坑1内に設置する。そして、流体を圧入してパッカー5を膨張するとともに、所定の圧力で保持し、パッカー5を斜坑1の内壁に密着させて斜坑1内を複数の区間1a、1bに区切る。
パッカー5の膨張を保持するための圧力は、充填材8の充填時にパッカー5の設置位置がずれることがないように設定する。
以上のようにして、鉛直導坑4を構築し、斜坑1内にパッカー5を設置したら、次に孔6を構築する。
【0020】
図3は、本実施形態に係る斜坑1の最も坑口3に近い区間1aに到達する孔6を構築した状態を示す地山2の断面図である。
図3に示すように、斜坑1の長さ方向と略一致する向きに、地上から斜坑1に向かって地山2を掘削機9で掘削して、坑口3を通過するとともに、区間1aに到達する孔6をケーシングを用いて構築する。本実施形態においては、孔6の径は、例えば、φ133mmであり、この大きさは充填材8を送給するために必要な径の大きさである。
【0021】
図4は、本実施形態に係る斜坑1の区間1a内に注入管7を挿入した状態を示す地山2の断面図である。
図4に示すように、孔6を構築する際に使用したケーシングを、充填材8を送給するための注入管7とし、その先端がパッカー5付近に到達するように区間1a内に挿入する。このとき、注入管7のうち、孔6内に存在している部分は孔6の側面にて支持されているが、区間1aに突出している部分は何ら支持されていないので、区間1aに突出している部分は斜坑1の地面側にたわむものの、坑口3からパッカー5までの距離は上述した接地距離Lよりも短いので、注入管7の先端は斜坑1内の地面に接触していない。
【0022】
この状態で、地上に設置された充填用装置10から注入管7を通して、充填材8を区間1a内に注入する。本実施形態においては、充填材8として、乾燥粉体の石粉を用いたが、これに限定されるものではなく、発泡モルタルや石炭灰等を用いてもよい。
【0023】
充填材8の注入は、例えば、ジェットパウダーグラウト工法を用い、区間1aのパッカー5付近から充填材8を注入しながら徐々に注入管7を地上側に引き抜くことにより、図5に示すように、区間1a内を充填する。このとき、孔6内には充填材8を充填しない。そして、充填作業終了後、充填材8が硬化するまで放置する。なお、本実施形態においては、充填材8の注入工法としてジェットパウダーグラウト工法を用いたが、この工法に限定されるものではなく、他の充填工法を用いてもよい。
【0024】
区間1a内の充填材8が硬化したら、パッカー5の圧力を解放し、収縮させる。収縮したパッカー5は、鉛直導坑4を通して地上にて回収する。
次に、区間1aに充填されて硬化した充填材8を掘削する。
【0025】
図6は、本実施形態に係る斜坑1の区間1aを掘削している状態を示す地山2の断面図である。
図6に示すように、充填材8の硬化した区間1aを掘削機9で掘削し、図7に示すように、区間1aに隣接する区間1bまで到達するように孔6をケーシング(つまり、注入管7)を用いて延長掘削する。
【0026】
図8は、本実施形態に係る斜坑1の区間1bに充填材8を充填するための注入管7を挿入した状態を示す地山2の断面図である。
図8に示すように、孔6を構築する際に使用したケーシングを、充填材8を送給するための注入管7とし、その先端が斜坑1の坑底付近に到達するように、区間1b内に挿入する。このとき、注入管7のうち、孔6内に存在している部分は孔6の側面にて支持されているが、区間1bに突出している部分は何ら支持されていないので、区間1bに突出している部分は斜坑1の地面側にたわんでいるものの、区間1aの下面1cから坑底までの距離は上述した接地距離Lよりも短いので、注入管7の先端は斜坑1内の地面に接触していない。
この状態で、地上に設置された充填用装置10から注入管7を通し、充填材8を区間1b内に注入する。
【0027】
図9は、本実施形態に係る斜坑1の区間1bを充填した状態を示す地山2の断面図である。
図9に示すように、充填材8の注入は、区間1aを充填する場合と同様に、区間1bの坑底付近から行い、注入しながら徐々に注入管7を地上側に引き抜くことにより、区間1b内を充填する。区間1b内を充填したら、注入管7を更に地上側に引き抜きつつ、孔6内の区間1a部分及び地山2部分にも充填材8を充填して、斜坑1及び孔6を充填する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の斜坑1の充填工法によれば、地上から地山2を掘削して斜坑1に到達する鉛直導坑4を構築し、この鉛直導坑4を利用して斜坑1内にパッカー5を設置するので、斜坑1を複数の区間1a、1bに区切ることができる。
【0029】
そして、地上から斜坑1の長さ方向と略一致する向きで、斜坑1に向かって地山2を掘削して、坑口3を通過するとともに、区間1aに到達する孔6を構築し、この孔6内に注入管7を挿通するので、区間1aに充填材8を注入することができる。
【0030】
また、パッカー5は、各区間1a、1bの長さが注入管7の接地距離Lよりも短くなるように設置されているので、注入管7をパッカー5に到達するまで地面に接触させることなく挿入することができる。したがって、この注入管7を介して充填材8を区間1a内にその区間1aの坑底側から圧力を加えて充填することができるので、区間1a内を隙間無く確実に充填することができる。
【0031】
次に、区間1a内に充填した充填材8が硬化すると、孔6を利用して区間1a内を掘削して隣接する区間1bまで到達するように延長掘削し、この延長掘削された孔6内に再び、注入管7を挿通させて隣接する区間1bまで挿入するので、隣接する区間1b内に充填材8を注入することができる。また、区間1aの充填材8が注入管7をたわまないように支持するので、注入管7を区間1bの坑底まで挿入することができる。したがって、上記と同様に、注入管7を介して充填材8を区間1bの坑底側から圧力を加えて充填することができるので、この区間1b内を隙間無く確実に充填することができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、地上から斜坑1までの導坑を鉛直に構築する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、傾斜していてもよい。
【0033】
なお、本実施形態においては、孔6を構築する際に使用したケーシングを注入管7として利用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、孔6に設置されたケーシング内に注入管7を別途挿通させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る斜坑の位置を示す地山の断面図である。
【図2】本実施形態に係る斜坑に到達する鉛直導坑を構築した状態を示す地山の断面図である。
【図3】本実施形態に係る斜坑の区間に到達する孔を構築した状態を示す地山の断面図である。
【図4】本実施形態に係る斜坑の区間内に注入管を挿入した状態を示す地山の断面図である。
【図5】本実施形態に係る斜坑の区間内を充填した状態を示す地山の断面図である。
【図6】本実施形態に係る斜坑の区間を掘削している状態を示す地山の断面図である。
【図7】本実施形態に係る斜坑内に、区間に到達する孔を構築した状態を示す地山の断面図である。
【図8】本実施形態に係る斜坑の区間に充填材を充填するための注入管を挿入した状態を示す地山の断面図である。
【図9】本実施形態に係る斜坑の区間を充填した状態を示す地山の断面図である。
【図10】従来の実施例を示す地山の断面図である。
【図11】従来の実施例を示す地山の断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 斜坑
1a、1b 区間
1c 区間1aの下面
2 地山
3 坑口
4 鉛直導坑
5 パッカー
6 孔
7 注入管
8 充填材
9 掘削機
10 充填用装置
20 作業用道路
21 地中空間
S 表土
L 接地距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山内に形成された一方向に延びる閉空間を充填する地中空間の充填工法であって、
地上から地山を掘削して前記地中空間に到達する導坑を構築する導坑構築工程と、
流体を注入すると膨張する膨張体を縮んだ状態で前記導坑を通して前記地中空間内に設置する設置工程と、
前記流体を前記膨張体に注入して前記膨張体を膨張させ、前記膨張体を前記地中空間の内壁に密着させて前記地中空間を複数の区間に区切る分割工程と、
地上から前記地中空間に向かって地山を掘削して、前記複数の区間のうち最も地上側に存在する地上側区間に到達する孔を構築する孔構築工程と、
地上から前記孔を通して充填材を送給するための注入管を、その先端が前記地上側区間に到達するまで挿入する挿入工程と、
前記注入管を介して充填材を前記地上側区間内に送給して、この区間を充填する充填工程と、
前記地上側区間内に充填した充填材が硬化すると、前記孔を利用して前記地上側区間内を掘削して、この区間に隣接する区間まで到達するように前記孔を延長掘削する延長掘削工程とを備え、
前記挿入工程、前記充填工程及び前記延長掘削工程を繰り返して、前記複数の区間を地上側から順に区間毎に充填して前記地中空間を充填することを特徴とする地中空間の充填工法。
【請求項2】
前記導坑は、前記地中空間の長さ方向に並ぶように所定の間隔で複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の地中空間の充填工法。
【請求項1】
地山内に形成された一方向に延びる閉空間を充填する地中空間の充填工法であって、
地上から地山を掘削して前記地中空間に到達する導坑を構築する導坑構築工程と、
流体を注入すると膨張する膨張体を縮んだ状態で前記導坑を通して前記地中空間内に設置する設置工程と、
前記流体を前記膨張体に注入して前記膨張体を膨張させ、前記膨張体を前記地中空間の内壁に密着させて前記地中空間を複数の区間に区切る分割工程と、
地上から前記地中空間に向かって地山を掘削して、前記複数の区間のうち最も地上側に存在する地上側区間に到達する孔を構築する孔構築工程と、
地上から前記孔を通して充填材を送給するための注入管を、その先端が前記地上側区間に到達するまで挿入する挿入工程と、
前記注入管を介して充填材を前記地上側区間内に送給して、この区間を充填する充填工程と、
前記地上側区間内に充填した充填材が硬化すると、前記孔を利用して前記地上側区間内を掘削して、この区間に隣接する区間まで到達するように前記孔を延長掘削する延長掘削工程とを備え、
前記挿入工程、前記充填工程及び前記延長掘削工程を繰り返して、前記複数の区間を地上側から順に区間毎に充填して前記地中空間を充填することを特徴とする地中空間の充填工法。
【請求項2】
前記導坑は、前記地中空間の長さ方向に並ぶように所定の間隔で複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の地中空間の充填工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−114671(P2009−114671A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286493(P2007−286493)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
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