説明

地中障害物の撤去方法

【課題】騒音・振動が少なく、効率良く地中障害物を撤去できる方法を提供する。
【解決手段】地中壁2aや地中梁2b等のコンクリート製の地中障害物に対し、切削刃3aを有するケーシング3を、回転圧入機1によって回転圧入しながら所要深さまで切り込ませる第1工程と、装置本体4に対し所要のチルト角度に傾倒可能なブレーカ5又はハサミ型クラッシャーとからなる破砕装置7をクレーンにより吊持してケーシング3の内周面沿いに配備し、ブレーカ5又はクラッシャーによってケーシング3内の地中障害物を破砕する第2工程と、破砕装置7のブレーカ5又はクラッシャーで破砕した破砕物22をハンマーグラブ23により掴んで地上に排出する第3工程との3つの工程を繰り返し行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物の老朽化や都市の再開発事業などに伴う構造物の建て替えにあたって、オールケーシング工法による場所打ち杭を施工する際に、ケーシング内の地中に残されている既設コンクリート構造物の地中壁や地中梁等の地中障害物を撤去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における上記のような地中障害物の撤去方法として、特許公報等の具体的な公知文献を挙げることはできないが、従来においては、先端に切削刃を備えたケーシングを、回転圧入機によって回転圧入しながら、地中既設コンクリート構造物の地中壁や地中梁等の地中障害物に対し所要深さまで切り切り込んだ後、クレーンに吊持した重鎮(チゼル)をケーシングの内側に自由落下させて、地中障害物を破砕し、その破砕物をハンマーグラブによって地上へ引き上げる操作を繰り返し行なうようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の撤去方法では、地中障害物に数トンものチゼルを自由落下させることから、その衝撃によって大きな振動と騒音が発生する、という問題がある。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑み、騒音及び振動が少なく、効率良く地中障害物を撤去できる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、地中壁2aや地中梁2b等のコンクリート製の地中障害物2に対し、先端に切削刃3aを備えたケーシング3を、回転圧入機1によって回転圧入しながら所要深さまで切り込ませる第1工程、
装置本体4と、この装置本体4に対し所要のチルト角度に傾倒可能なブレーカ5又はハサミ型クラッシャー6とからなる破砕装置7をクレーンにより吊持してケーシング3の内周面沿いに配備し、そのブレーカ5又はクラッシャー6によってケーシング3内の地中障害物2を破砕する第2工程、及び
破砕装置7のブレーカ5又はクラッシャー6で破砕した破砕物22をハンマーグラブ23,29により掴んで地上に排出する第3工程、の3つの工程を繰り返し行うことを特徴とする。
【0006】
請求項2は、請求項1に記載の地中障害物の撤去方法において、クレーンで吊持してケーシング3の内周面沿いに配備される破砕装置7のブレーカ5又はクラッシャー6は、その先端部が実質的にケーシング3の軸芯O沿いに位置するチルト角度ゼロの中立姿勢と、中立姿勢からのブレーカ5又はクラッシャー6先端部の振り幅Vがケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度θa〜θbに設定可能なチルト姿勢とに姿勢変更可能で、前記振り幅Vがケーシング3の半径を越えるチルト角度θbに設定した時には、ブレーカ5又はクラッシャー6がケーシング3に当たらない高さまでケーシング3を引き上げて破砕動作を行なわせることを特徴とする。
【0007】
請求項3は、請求項1又は2に記載の地中障害物の撤去方法において、ケーシング3の内周面沿いに配備される破砕装置7のクラッシャー6は、所要の開き幅Wに開閉回動可能で、地中障害物2を挟圧破砕する一対の破砕部材18,18を有し、両破砕部材18,18の開き幅Wをケーシング3の直径を越える広幅で使用する時は、クラッシャー6がケーシング3に当たらない高さまでケーシング3を引き上げて破砕動作を行なわせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、地中壁2aや地中梁2b等のコンクリート製の地中障害物2に対し、切削刃3aを有するケーシング3を、回転圧入機1によって回転圧入しながら所要深さまで切り込ませる第1工程と、装置本体4に対し所要のチルト角度に傾倒可能なブレーカ5又はハサミ型クラッシャー6とからなる破砕装置7をクレーンにより吊持してケーシング3の内周面沿いに配備し、ブレーカ5又はクラッシャー6によってケーシング3内の地中障害物2を破砕する第2工程と、破砕装置7のブレーカ5又はクラッシャー6で破砕した破砕物22をハンマーグラブ23,29により掴んで地上に排出する第3工程の3つの工程を繰り返し行うものであるため、地中障害物2の撤去にあたり、従来工法のように激しい騒音及び振動を発生させることがなく、しかもケーシング3内の地中障害物2を効率良く撤去することができる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、破砕装置7のブレーカ5又はクラッシャー6は、チルト角度ゼロの中立姿勢と、中立姿勢からのブレーカ5又はクラッシャー6先端部の振り幅Vをケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要チルト角度θa〜θbに設定可能なチルト姿勢とに姿勢変更可能であるから、地中障害物2がケーシング3内の中心部や内周部等のどの位置にあっても、その地中障害物2を的確に破砕することができる。また、振り幅Vがケーシング3の半径を越えるチルト角度θbに設定した時は、ブレーカ5又はクラッシャー6がケーシング3に当たらない高さまでケーシング3を引き上げることによって、特にケーシング3内の内周側に片寄った位置にある地中障害物2を有効に破砕することができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、クラッシャー6は所要の開き幅Wに開閉回動可能で、特にケーシング3の直径を越える広幅で使用可能で、その広幅での使用時に、クラッシャー6がケーシング3に当たらない高さまでケーシング3を引き上げることによって、地中障害物2の厚さが相当厚い場合であっても、その地中障害物2を確実有効に破砕することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る地中障害物の撤去方法の実施形態を示すもので、(a) ,(b) は第1工程を示す説明図であり、(b) は破砕装置を(a) に対し軸芯周りに90度回転した状態の図面ある。
【図2】(a) はクラッシャーの使用による第2工程を示す説明図であり、(b) は破砕装置を(a) に対し軸芯周りに90度回転した状態の図面ある。
【図3】(a) は第3工程を示す説明図、(b) ,(c) はブレーカの使用による第2工程を示す説明図で、(c) は破砕装置を(b) に対し軸芯周りに90度回転した状態の図面ある。
【図4】(a) ,(b) は第1工程〜第3工程を繰り返して、クラッシャーで地中障害物を破砕している状態の説明図である。
【図5】(a) ,(b) は残存する地中障害物をハンマーグラブで排出する状態の説明図である。
【図6】地中障害物を撤去した後のケーシング内に埋め戻しをしている状態の説明図である。
【図7】(a) はブレーカを有する破砕装置の正面図、(b) は縦断側面図である。
【図8】(a) はクラッシャーを有する破砕装置の正面図であり、(b) は縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る地中障害物の撤去方法の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1の(a) は、回転圧入機1を、これから撤去しようとする地中障害物2のある地盤G上に、図示しないクレーンで吊って据え付けている状態を示し、(b) は地中障害物2に対し、先端に切削刃3aを備えたケーシング3を、回転圧入機1によって回転圧入しながら地盤Gの所要深さまで切り込ませる本発明の第1工程を示す。ここに例示される地中障害物2は、地中に構築された既設コンクリート構造物の鉄筋を含む地中壁2aとこの地中壁2aの下部にこれと一体につながった地中梁2bとからなる。
【0014】
回転圧入機1は、一般的なオールケーシング工法に使用される全周回転圧入装置からなるもので、図1の(a) ,(b) に概略的に示すように、ベースフレームaの四隅に設けた昇降シリンダbに連結された昇降フレームcを備え、この昇降フレームcに、ケーシング3が挿通されるテーパ孔(図示省略)を有する回転フレーム(図示省略)が回転可能に支持されていて、昇降フレームcに連結されたチャックシリンダ(図示省略)によってケーシング3とテーパ孔との間に楔部材を挿入して、回転フレームとケーシング3とを締結するように構成され、しかしてケーシング3の建て込み時は、ケーシング3を回転フレームに把持した状態でこの回転フレームをモータ(図示省略)によって回転駆動させると共に、昇降シリンダbを下降させることにより、ケーシング3を回転させながら地盤G中に圧入するようになっている。尚、図1の(a) において、dは芯出しプレートを示す。
【0015】
図1の(b) に示すようにケーシング3を回転圧入機1によって回転圧入しながら所要深さまで切り込ませる第1工程を行なった後に、図2の(a) ,(b) に示すように、装置本体4と、この装置本体4に対し所要のチルト角度に傾倒可能なブレーカ5又はハサミ型クラッシャー6とからなる破砕装置7を、図示しないクレーンで吊持してケーシング3の内周面沿いに配備し、そしてここでは装置本体4とハサミ型クラッシャー6とからなる破砕装置7のクラッシャー6によって、ケーシング3内にある地中障害物2の地中壁2aを破砕する第2工程を行なう。
【0016】
ここで、破砕装置7について説明すると、先ず破砕装置7の装置本体4は、ケーシング3の内径より小さな外径を有して、ケーシング3の内周面にスライド自在に支持案内される上下のスタビライザー4a,4bと両スタビライザー4a,4bをつなぐ連結部材4cとからなり、上部スタビライザー4aの上端中央部にはポスト16が立設され、このポスト16の上端部にクレーン吊持用の吊り具17が設けてあって、この吊り具17に、クレーンから垂下した吊り下げ用ワイヤー27が取り付けられる。ブレーカ5は、図7の(a) ,(b) に示すように、油圧駆動部9を内蔵し、下部スタビライザー4bの下部にリンク部材8を介して連結された本体ケース10と、この本体ケース10の下方に突出し、油圧駆動部9により軸方向に加振されて、先端部に繰り返し衝撃力が発生するチゼル11とからなる。リンク部材8は、上部側の中央部が枢軸13により下部スタビライザー4bの下部に枢着されると共に、上部側の一端部が、下部スタビライザー4b側に設置されたチルト用油圧シリンダ14のピストンロッド14aにピン15で枢着され、そして下部側の両端部がブレーカ5の本体ケース10上端部にピン12,12で連結固定されている。この場合、ピン12を抜いて、本体ケース10を外すことにより、クラッシャー6と付け替えることができる。
【0017】
このブレーカ5は、図3の(c) に示すように、チゼル11が実質的にケーシング3の軸芯O沿いに位置するチルト角度ゼロの中立姿勢(実線図示)と、この中立姿勢からのチゼル11先端部の振り幅Vをケーシング3の半径以内(中立姿勢の右側の仮想線図示)乃至その半径を越える(中立姿勢の左側の仮想線図示)所要のチルト角度に設定可能なチルト姿勢とに姿勢変更可能であって、中立姿勢あるいは所要のチルト姿勢で油圧駆動部9によりチゼル11を軸方向に加振して、その先端部に繰り返し衝撃力を発生させるようになっている。尚、図3の(c) において、チゼル11先端部の振り幅Vがケーシング3の半径以内に設定された時のチルト角をθaで示し、チゼル11先端部の振り幅Vがケーシング3の半径を越えて設定された時のチルト角をθbで示す。
【0018】
次に、ハサミ型クラッシャー6について説明すると、このクラッシャー6は、装置本体4の下部に上述ブレーカ5と同様にして取り付けられるもので、図2にその概略を示し、その詳細を図8に示す。即ち、クラッシャー6は、図8の(a) ,(b) に示すように、互いの対向する内面の先端部及び中間部に破砕刃18a,18aを有する一対の破砕部材18,18と、両破砕部材18,18を枢軸19,19を中心として開閉回動可能に支持し、装置本体4の下部スタビライザー4bの下部にリンク部材8を介して連結されたフレーム20と、両破砕部材18,18を開閉回動させる油圧シリンダ21,21とからなるもので、リンク部材8は、上部側の中央部が枢軸13により下部スタビライザー4bの下部に枢着されると共に、上部側の一端部が、下部スタビライザー4b側に設置されたチルト用油圧シリンダ14のピストンロッド14aにピン15で枢着され、そして下部側の両端部がフレーム20の上端部にピン12,12で連結固定されている。また、両破砕部材18,18は、油圧シリンダ21,21によって開き幅Wを所望に設定可能であって、図4の(b) には、その開き幅Wをケーシング3の直径より広い広幅に設定した使用状態を示す。尚、ピン12を抜いて、フレーム20を外すことにより、ブレーカ5と付け替えることができる。
【0019】
このクラッシャー6も、ブレーカ5と同じく、図2の(b) に示すように、フレーム20が実質的にケーシング3の軸芯O沿いに位置するチルト角度ゼロの中立姿勢(実線図示)と、この中立姿勢からのチゼル11先端部の振り幅Vをケーシング3の半径以内(中立姿勢の右側の仮想線図示)乃至その半径を越える(中立姿勢の左側の仮想線図示)所要のチルト角度θa〜θbに設定可能なチルト姿勢とに姿勢変更可能であって、中立姿勢あるいは所要のチルト姿勢で油圧シリンダ21により両側一対の破砕部材18,18を開閉回動させて、コンクリート構造物を両破砕部材18,18間に挟み込み、油圧シリンダ21の力によってコンクリート構造物を挟圧破砕するようになっている。尚、図2の(b) において、破砕部材18先端部の振り幅Vがケーシング3の半径以内に設定された時のチルト角をθaで示し、破砕部材18先端部の振り幅Vがケーシング3の半径を越えて設定された時のチルト角をθbで示す。これについては、図3の(c) に示すブレーカ5の場合と同様である。
【0020】
従って、上記ハサミ型クラッシャー6を使用してケーシング3内の地中障害物2を破砕する第2工程において、図2の(a) に示すように、一対の破砕部材18,18に挟み込まれたコンクリート構造物の鉄筋を含む地中壁2aは、破砕刃18a,18aの刃先により集中的な荷重を受け、破砕刃18a,18aの刃先が食い込んでひび割れや亀裂が生じ、更に油圧シリンダ21によって荷重が加えられることで破砕されることになる。
【0021】
また、この第2工程において、クラッシャー6は、ケーシング3内の地中障害物2がケーシング3内のどの位置にあるかによって、中立姿勢又はチルト姿勢の何れかを選択し、チルト姿勢の場合はそのチルト角をθa又はθbに設定する。例えば、ケーシング3内の地中壁2aがケーシング3内にその直径方向に沿うように位置する時は、クラッシャー6を中立姿勢に設定すればよいし、ケーシング3内の地中壁2aがケーシング3内の中心部と内周部との中間に位置する時はチルト姿勢とし、そしてケーシング3内の地中壁2aがケーシング3内の内周部寄りに位置する時には、チルト姿勢のチルト角を、図2の(b) に示すように、破砕部材18先端部の振り幅Vがケーシング3の半径を越えるθbに設定する。そして、チルト角をθbに設定した場合、ケーシング3内では破砕部材18の先端がケーシング3に当たって作動できないので、図2の(b) に示すように、クラッシャー6の先端部がケーシング3に当たらないようにケーシング3を同図仮想線図示位置から実線図示位置まで引き上げて、破砕動作を行なわせる。
【0022】
第2工程が終われば、図3に示すように、第2工程で破砕した破砕物22をハンマーグラブ23により掴んで地上に排出する第3工程を行なう。このハンマーグラブ23は、図5の(a) にも示すように、スタビライザー24を有する筒状基枠25の下端部に複数個のシェル26を枢着し、筒状基枠25内に図示しないシェル開閉駆動用シリンダを装備し、シリンダの伸縮作動によってシェル26を開閉させるようにした周知のもので、クレーンから垂下した吊り下げ用ワイヤー28によって吊支されるようになっている。
【0023】
破砕装置7による地中障害物2の破砕は、地中壁2aや地中梁2bの形状等によって、ブレーカ5又はクラッシャー6の何れかを使用する。図3の(b) はブレーカ5を使用し、ケーシング3内の地中壁2aを破砕している状態を示す。このブレーカ5を使用する場合も、クラッシャー6と同様に、ケーシング3内の地中障害物2(地中壁2a)がケーシング3内のどの位置にあるかによって、中立姿勢又はチルト姿勢の何れかを選択し、チルト姿勢の場合はそのチルト角をθa又はθbに設定する。しかして、チルト角をθbに設定した場合、ケーシング3内ではチゼル11がケーシング3に当たって作動できないので、図3の(c) に示すように、チゼル11がケーシング3に当たらないようにケーシング3を同図仮想線図示位置から実線図示位置まで引き上げた状態で破砕動作を行なわせる。
【0024】
上記のように、破砕装置7のブレーカ5又はクラッシャー6は、チルト角度がゼロの中立姿勢と、中立姿勢からのブレーカ5又はクラッシャー6先端部の振り幅Vをケーシング3の半径以内乃至その半径を越える所要チルト角度θa〜θbに設定可能なチルト姿勢とに姿勢変更可能であるから、地中障害物2の地中壁2a等がケーシング3内の中心部や内周部等のどの位置にあっても、その地中障害物2を的確に破砕することができることになる。また、振り幅Vをケーシング3の半径を越えるチルト角度θbに設定した時は、ブレーカ5又はクラッシャー6がケーシング3に当たらない高さまでケーシング3を引き上げることによって、特にケーシング3内の内周側に片寄った位置にある地中壁2a等の地中障害物2を的確且つ有効に破砕することができる。
【0025】
図4の(a) は、上述した第1工程〜第3工程の3つの工程を繰り返し行って、ケーシング3内の地中障害物2の地中壁2aを、地中障害物2の最下部にある地中梁2bを残すところまで破砕処理した状態を示す。そして、図4の(b) は、地中梁2b及びこれと一体を成す地中壁2a部分を幅木本体14のクラッシャー6によって破砕している状態を示す。尚、ケーシング3は、地中障害物2の深さに応じ順次継ぎ足してゆく。このクラッシャー6の使用において、図4の(b) に示すように、両破砕部材18,18の開き幅Wがケーシング3の直径を越えるような広幅で使用する時は、ケーシング3を同図仮想線図示位置から実線図示位置まで引き上げて、破砕動作を行なわせる。このように、クラッシャー6は、ケーシング3の直径を越える広幅での使用が可能であるから、その広幅での使用時に、クラッシャー6がケーシング3に当たらない適当な高さまでケーシング3を引き上げることによって、地中障害物2の厚さが相当に厚い場合、例えば図4の(b) に示すように地中壁2aと地中梁2bとがしたような地中障害物2であっても、その厚い地中障害物2を確実有効に破砕することができる。
【0026】
上記のように地中障害物2の最下部にある地中梁2b及びこれと一体を成す地中壁2a部分の破砕を終えたならば、吊り下げ用ワイヤー27を巻き上げて破砕装置7をケーシング3から引き上げた後、図5の(a) に示すようにケーシング3内に吊り下げ用ワイヤー28によりハンマーグラブ23を挿入し、クラッシャー6で破砕した破砕物22をハンマーグラブ23で掴んで地上に排出する。この工程は、第3工程でもある。これにより、ケーシング3内の地中障害物2(地中壁2a及び地中梁2b)は全て撤去される。
【0027】
図5の(a) に示すハンマーグラブ23は、図3の(a) に示すものと同じで、スタビライザー24を有する筒状基枠25の下端部に複数個のシェル26を枢着し、筒状基枠25内に図示しないシェル開閉駆動用シリンダを装備し、シリンダの伸縮作動によってシェル26,26を開閉させるタイプのものであるが、図5の(b) には他のタイプのハンマーグラブ29を示す。このハンマーグラブ29は、クレーンから垂下されるワイヤー30によって吊支される基枠31の下部に開閉自在な一対のシェル32,32を装備してなるもので、ワイヤー30は、ハンマーグラブ29をケーシング3内に吊り込む手段と、シェル32,32を閉じる手段とを兼用していて、ハンマーグラブ29をケーシング3内に吊り込んだ状態でワイヤー30を適宜に巻き取ることにより、シェル32,32が閉じるようになっている。
【0028】
図6は、地中障害物2(地中壁2a及び地中梁2b)A全て撤去したケーシング3内に掘削土砂などを油圧ショベル33によって埋め戻している状態を示す。
【0029】
以上の実施形態の説明から分かるように、この発明の地中障害物の撤去方法によれば、地中壁2aや地中梁2b等のコンクリート製の地中障害物2に対し、先端部に切削刃3aを備えたケーシング3を、回転圧入機1によって回転圧入しながら所要深さまで切り込ませる第1工程と、装置本体4に対し所要のチルト角度に傾倒可能なブレーカ5又はハサミ型クラッシャー6とからなる破砕装置7をクレーンにより吊持してケーシング3の内周面沿いに配備し、この破砕装置7のブレーカ5又はクラッシャー6によってケーシング3内の地中障害物2を破砕する第2工程と、破砕装置7のブレーカ5又はクラッシャー6で破砕した破砕物22をハンマーグラブ23,29により掴んで地上に排出する第3工程の3つの工程を繰り返し行う方法であるから、既設コンクリート構造物の地中壁2aや地中梁2b等の地中障害物2の撤去にあたり、従来工法のように激しい騒音及び振動を発生させることがなく、ケーシング3内の地中障害物2を効率良く撤去することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 回転圧入機
2 地中障害物
2a 地中壁
2b 地中梁
3 ケーシング
4 装置本体
5 ブレーカ
6 クラッシャー
7 破砕装置
22 破砕物
23 ハンマーグラブ
29 ハンマーグラブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中壁や地中梁等のコンクリート製の地中障害物に対し、先端に切削刃を備えたケーシングを、回転圧入機によって回転圧入しながら所要深さまで切り込ませる第1工程、
装置本体と、この装置本体に対し所要のチルト角度に傾倒可能なブレーカ又はハサミ型クラッシャーとからなる破砕装置をクレーンにより吊持してケーシングの内周面沿いに配備し、そのブレーカ又はクラッシャーによってケーシング内の地中障害物を破砕する第2工程、及び
破砕装置のブレーカ又はクラッシャーで破砕した破砕物をハンマーグラブにより掴んで地上に排出する第3工程、の3つの工程を繰り返し行うことを特徴とする地中障害物の撤去方法。
【請求項2】
ケーシングの内周面沿いに配備される破砕装置のブレーカ又はクラッシャーは、その先端部が実質的にケーシングの軸芯沿いに位置するチルト角度ゼロの中立姿勢と、中立姿勢からのブレーカ又はクラッシャー先端部の振り幅がケーシングの半径以内乃至その半径を越える所要のチルト角度に設定可能なチルト姿勢とに姿勢変更可能で、前記振り幅がケーシングの半径を越えるチルト角度に設定した時には、ブレーカ又はクラッシャーがケーシングに当たらない高さまでケーシングを引き上げて破砕動作を行なわせることを特徴とする請求項1に記載の地中障害物の撤去方法。
【請求項3】
ケーシングの内周面沿いに配備される破砕装置のクラッシャーは、所要の開き幅に開閉回動可能で、地中障害物を挟圧破砕する一対の破砕部材を有し、両破砕部材の開き幅をケーシングの直径を越える広幅で使用する時は、クラッシャーがケーシングに当たらない高さまでケーシングを引き上げて破砕動作を行なわせることを特徴とする請求項1に記載の地中障害物の撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−19250(P2013−19250A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155816(P2011−155816)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390016458)三和機工株式会社 (19)
【Fターム(参考)】