説明

地図データ及び地図データ作成方法

【課題】地図データを転送する際の効率を向上させる。
【解決手段】地図データ作成時には、地図収録対象のエリアを複数メッシュに分割し(S110)、メッシュ毎に、このメッシュに対応する地図の道路要素に関する情報を記述したデータ(道路要素メッシュ単位データ)及びこのメッシュに対応する地図の背景要素に関する情報を記述したデータ(背景要素メッシュ単位データ)を作成する(S130,S140)。このようにして第一段階では、メッシュ毎に、道路要素メッシュ単位データ及び背景要素メッシュ単位データを作成する。また、第二段階では、これらメッシュ単位データの一群を種類毎にまとめてデータファイル化する。即ち、道路要素メッシュ単位データをまとめたデータファイルを、道路マップファイルとして作成し(S160)、背景要素メッシュ単位データをまとめたデータファイルを、背景マップファイルとして作成する(S170)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データ及び地図データ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データとしては、車載型ナビゲーション装置に用いられる地図データが知られている。また、地図データのフォーマットとしては、KIWIフォーマットが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このフォーマットによれば、地図収録対象のエリアが複数メッシュに分割され、地図データは、メッシュ毎に、地図の構成要素としての道路要素及び背景要素に関するデータがまとめて記述された構成にされる(図7参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】藤本 英俊、「カーナビ用地図データフォーマットKIWI」、デンソーテクニカルレビュー、2001年、第6巻、第1号、p.29−34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来では、図7に示すように、道路要素及び背景要素に関するデータをまとめたメッシュ単位のデータ(メッシュ単位データ)を、データファイル化して、地図データを、これらの一群により構成しているため、地図収録対象のエリアが広い地図データは、メッシュの数に応じた膨大な数のデータファイルにより構成されることになる。
【0005】
そして、このような膨大な数のデータファイルにより構成される地図データを、ハードディスク装置にインストールする際には、データファイル数が多いことから、インストールに非常に長い時間がかかる。
【0006】
一方、近年においては、ハードディスク装置に地図データを搭載するナビゲーション装置が広く普及しており、このようなナビゲーション装置の製造時においては、ナビゲーション装置に搭載するハードディスク装置に対して地図データを転送(インストール)する必要がある。従って、このような作業に多くの時間を要することは、非常に不便であった。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、地図データの転送効率(インストールに係る効率)を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされた第一の発明(請求項1)は、地図データの作成方法であって、地図収録対象のエリアを複数メッシュに分割し、メッシュ毎に、このメッシュに対応する地図構成要素に関する情報を、地図構成要素の種類毎に記述してなる当該種類毎のメッシュ単位データを作成し、作成したメッシュ単位データの一群を、地図構成要素の種類毎にまとめて、当該種類毎に、上記複数メッシュについての同一種類のメッシュ単位データを格納したデータファイルを作成することによって、これらデータファイル群によって構成される地図データを作成することを特徴とする地図データ作成方法である。
【0009】
本発明のように、地図構成要素の種類毎に、メッシュ単位データをまとめてデータファイル化すれば、従来の地図データよりも、データファイル数を抑えることができる。換言すると、メッシュ毎にデータファイル化することでデータ量の少ないデータファイルが多数生じる問題を回避することができる。
【0010】
よって、本発明の地図データ作成方法によれば、地図データを、ハードディスク装置などの転送先装置に転送・コピーする際の処理時間を短縮することができ、地図データの転送効率(インストールに係る効率)を向上させることができる。換言すれば、データファイル数が多いことを原因として、ハードディスク装置などの転送先装置に地図データを、転送・コピーする際の処理時間が長くなるのを解消することができる。
【0011】
尚、この発明では、上記種類毎のメッシュ単位データとして、メッシュ毎に、このメッシュに対応する地図の道路要素に関する情報を記述してなる道路要素メッシュ単位データ、及び、このメッシュに対応する地図の背景要素に関する情報を記述してなる背景要素メッシュ単位データを作成することができる。即ち、上記複数メッシュについての道路要素メッシュ単位データをまとめたデータファイル、及び、上記複数メッシュについての背景要素メッシュ単位データをまとめたデータファイルを作成し、これらデータファイル群によって構成される地図データを作成することができる(請求項2)。
【0012】
このように、道路要素のメッシュ単位データをまとめてデータファイル化すると共に背景要素のメッシュ単位データをまとめてデータファイル化すると、ナビゲーション装置等の当該地図データを使用する電子機器において、地図データから目的のデータを読み込む際の効率が向上する。
【0013】
例えば、ナビゲーション装置においては、地図の描画処理の他、目的地までの誘導経路を探索する経路探索処理等が行われるが、誘導経路探索時に背景要素に関するデータは基本的に不要であり、誘導経路探索時における地図データへのアクセスは、道路要素に関するデータに偏る。このような処理動作に対して、メッシュ毎に、道路要素に関するデータ及び背景要素に関するデータをまとめてデータファイル化したのでは、地図データ内で目的データが分散配置されることになるので、道路要素に関するデータを参照して、目的データを読み込むのに時間がかかる。一方、本発明のように、道路要素に関するデータをまとめてデータファイル化すれば、当該データファイルには不要な背景要素に関するデータが含まれないので、効率的に、道路要素に関するデータを参照して、目的データを読み込むことができる。
【0014】
また、第二の発明(請求項3)は、地図データであって、複数メッシュに分割された地図収録エリアのメッシュ毎に、このメッシュに対応する複数種類の地図構成要素に関する情報が夫々記述された上記種類毎のメッシュ単位データを有し、これらメッシュ単位データの一群が、上記地図構成要素の種類毎に、複数メッシュについての同一種類のメッシュ単位データがまとめられたデータファイルの形態で保持されていることを特徴とする地図データである。
【0015】
上記地図データは、複数メッシュに分割された地図収録エリアのメッシュ毎に、このメッシュに対応する地図の道路要素に関する情報が記述された道路要素メッシュ単位データ、及び、このメッシュに対応する地図の背景要素に関する情報が記述された背景要素メッシュ単位データを有し、これらメッシュ単位データの一群が、上記複数メッシュについての道路要素メッシュ単位データがまとめられたデータファイル、及び、上記複数メッシュについての背景要素メッシュ単位データがまとめられたデータファイルの形態で保持された構成にすることができる(請求項4)。
【0016】
この発明によれば、上述した地図データ作成方法の発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】地図データの作成方法に関する説明図である。
【図2】道路要素メッシュ単位データの構成を表す説明図である。
【図3】道路管理レコード及びリンクレコード及び座標レコードの各配列の関係を表す図である。
【図4】背景要素メッシュ単位データの構成を表す説明図である。
【図5】道路マップファイル及び背景マップファイルの構成を表す説明図である。
【図6】ナビゲーション装置10の構成を表すブロック図である。
【図7】従来の地図データの構成を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。以下では、まず、地図データの作成方法について図1等を用いて説明し、続いて、この地図データを搭載したナビゲーション装置10の構成について図6を用いて簡単に説明する。
<1 地図データの作成方法>
以下に作成方法を説明する地図データは、車両に搭載されるナビゲーション装置10に用いられる地図データであり、道路がリンク単位で表現され、リンクの接続により道路ネットワークが表現される地図データである。ナビゲーション装置10では、背景画像に道路画像が重ねられて、地図が表現される。このため、作成対象の地図データには、地図構成要素に関する情報として、道路要素及び背景要素に関する情報が記述される。
<1.1 第一段階>
図1に示すフローチャートは、地図データの作成手順を示したフローチャートである。
【0019】
本実施例では、まず地図収録対象のエリア(以下、収録エリアという。)を、複数メッシュ(区画)に分割する(S110)。
そして、収録エリアを構成する複数メッシュの一つを処理対象メッシュに選択し(S120)、このメッシュに対応する地図の道路要素に関する情報として、メッシュ内の各リンクの属性情報を記述したデータを作成する。以下では、このデータを、道路要素メッシュ単位データと表現する。この道路要素メッシュ単位データには、リンクの属性情報として、メッシュ内の各リンクの形状・長さ・位置を表す情報、及び、リンクの接続関係を表す情報等が記述される(S130)。
【0020】
更には、処理対象メッシュに対応する地図の背景要素に関する情報として、このメッシュ内の各背景要素の種別(背景種別)及び位置(レイアウト位置)を記述したデータを作成する。以下では、このデータを、背景要素メッシュ単位データと表現する。ナビゲーション装置10では、背景画像を、細分化されたイメージデータを組み合わせて表現する。背景要素メッシュ単位データでは、地図データに付属するイメージデータにより表現可能な最小単位の背景画像を要素として、この要素の背景種別及び位置に関する情報を記述する(S140)。
【0021】
本実施例では、このようにして道路要素メッシュ単位データ及び背景要素メッシュ単位データを作成する処理(S130,S140)を、処理対象メッシュを切り替えて(S120)、収録エリア内のメッシュ毎に実行する(S120〜S150の処理ループ)。これによって、第一段階では、メッシュ毎に、道路要素メッシュ単位データ及び背景要素メッシュ単位データを作成する。
【0022】
ここで、道路要素メッシュ単位データ及び背景要素メッシュ単位データの具体的な構成例について図2〜図4を用いて説明する。
<1.1.1 道路要素メッシュ単位データ>
本実施例において、道路要素メッシュ単位データは、例えば、図2に形態を採ることができる。同図に示す道路要素メッシュ単位データは、ヘッダ、道路管理レコード1〜B1群から構成される道路管理リストLb1、リンクレコード1〜B2群から構成されるリンクリストLb2、座標レコード1〜B3群から構成される座標リストLb3等を有する。
<1.1.1.1 ヘッダ>
図2に示す道路要素メッシュ単位データのヘッダは、固定長で表現され、道路管理レコード数B1、リンクレコード数B2、座標レコード数B3等の情報が記述されてなる。
<1.1.1.2 道路管理レコード>
道路管理レコードは、レコード毎に固定長で表現され、リンク数等の情報が記述されてなる。道路管理レコードは、同一ストリートを構成する一連のリンク列を管理するレコードであり、上記リンク数は、この道路管理レコードで管理するリンク列を構成するリンクの数を表す。
【0023】
換言すると、道路要素メッシュ単位データの作成に際しては、メッシュ内のリンク群を同一ストリートのリンク列毎にまとめるような思想でグループ化する。そして、道路要素メッシュ単位データには、このグループしたリンク列毎の上記道路管理レコードを記述する。尚、この道路管理レコードには、上記リンク数以外に、対応するストリートの特徴を表すその他のデータを記述することができる。
<1.1.1.3 リンクレコード>
リンクレコードは、レコード毎に固定長で表現され、リンクに関する主たる属性情報が記述されてなる。上記道路要素メッシュ単位データには、メッシュ内の各リンクに対応するリンクレコードが記述される。
【0024】
このリンクレコードには、リンクに関する主たる属性情報として、リンク種別、リンク長、自リンクの始点から終点までの座標点数の情報、自リンクの始点に接続される他リンクの情報、及び、自リンクの終点に接続される他リンクの情報等が記述される。
【0025】
この例では、リンクの両端にノード(図3(a)に示す黒丸)が設定され、その間に、形状補間点(図3(a)に示す白丸)が設定される。形状補間点は、リンク両端の間で湾曲するリンクの形状を表現するための点である。リンクレコードに記述される座標点数は、リンクに設定されたこれらノード及び形状補間点の数に対応する。
【0026】
また、自リンクの始点に接続される他リンクの情報、及び、自リンクの終点に接続される他リンクの情報は、接続相手が、リンクリストLb2におけるリンクレコード1〜B2の配列番号で記述されてなる。本実施例の地図データでは、従来の地図データのように、リンクに対して絶対的なリンクIDが付与されない。このため、他リンクの情報は、リンクリストLb2におけるリンクレコード1〜B2の配列番号で記述される。例えば、リンクの始点に、リンクリストLb2における配列番号2番のリンクレコードに対応するリンクが接続される場合には、配列番号「2」がリンクの始点に接続される他リンクの情報として記述される。
【0027】
ちなみに、リンクの始点や終点に同一メッシュ内の他リンクが接続されない場合には、上記他リンクの情報として、自リンクの配列番号が記述される。同一メッシュ内の他リンクがないケースとしては、行き止まりである場合や、リンクの端点(始点又は終点)が隣接メッシュとの境界に位置するノード(後述する境界ノード)であって隣接メッシュのリンクにのみに接続される場合などが挙げられる。本実施例では、メッシュ単位データを閉じたデータとするため、隣接メッシュとの境界に位置する境界ノードを挟むリンク接続関係については、自己のメッシュ内のリンク接続関係についてのみが記述される。
<1.1.1.4 座標レコード>
道路要素メッシュ単位データにおける上記座標レコード1〜B3群からなる座標リストLb3は、リンクリストLb2に登録された各リンクに設定されたノード及び形状補間点の座標(緯度・経度)が、ノード及び形状補間点毎に記述されてなるものである。各座標レコード1〜B3は、対応するノード又は形状補間点の座標を表す。
【0028】
詳述すると、この座標レコードは、固定長で表現され、座標種別、X座標(経度方向の座標)及びY座標(緯度方向の座標)等の情報が記述されてなる。座標種別は、対応する点が、境界ノード、境界ノードを除くノード、ダミーノード及び形状補間点のいずれに該当するか否かを表す情報である。
【0029】
この他、座標レコードには、境界ノードが接続する隣接メッシュの識別情報が記述される。この情報は、座標種別が「境界ノード」である座標レコードのみ、有効な値を示し、他の座標レコードには、空値が記述される。境界ノードは、隣接メッシュとの境界に位置するノードのことを示すが、「境界ノードが接続する隣接メッシュの識別情報」は、境界ノードが、このメッシュ単位データに対応する矩形メッシュの四辺及び四角のいずれの位置に存在するかを表す情報で記述される。
<1.1.1.5 データ配列>
ここで、道路管理リストLb1における道路管理レコード1〜B1の配列、リンクリストLb2におけるリンクレコード1〜B2の配列、座標リストLb3における座標レコード1〜B3の配列について図3を用いて説明する。
【0030】
上述したように道路管理レコードは、リンク列を管理するものであり、リンクレコードは、リンクの主たる属性情報を有するものであり、座標レコードは、リンクに設定された各点(ノード及び形状補間点)の座標情報を有するものである。即ち、座標レコードの夫々は、リンクレコードに関連付けられるべきデータであり、リンクレコードは、道路管理レコードに関連付けられるべきデータである。
【0031】
本実施例では、このような道路管理リストLb1、リンクリストLb2、及び、座標リストLb3間の各レコードの関連付けを、リスト内の配列順序を揃えることで実現している。図3(b)は、図3(a)に示すストリート、リンク、ノード及び形状補間点の関係にある地図に対して構成する道路管理リストLb1及びリンクリストLb2及び座標リストLb3の関係を表す図である。
【0032】
本実施例では、図3(b)に示すように、道路管理リストLb1における配列番号1番の道路管理レコード1に対応するリンク列のリンクレコード群を、リンクリストLb2において先頭から配置し、道路管理リストLb1における配列番号2番の道路管理レコード2に対応するリンク列のリンクレコード群を、リンクリストLb2において、道路管理リストLb1における配列番号1番の道路管理レコード1に対応するリンク列のリンクレコード群に続けて配列することにより、道路管理リストLb1とリンクリストLb2との間において、ストリート(リンク列)の配列が同一順序となるように、道路管理リストLb1とリンクリストLb2とを作成し、ストリートに関する複数の属性を関連付ける。
【0033】
本実施例では、このように道路管理リストLb1内の道路管理レコード1〜B1の配列に対応するストリートの配列と、リンクリストLb2内のリンクレコード1〜B2の配列に対応するストリートの配列とを揃える(同一順序とする)ことにより、道路管理リストLb1及びリンクリストLb2の各レコードを関連付ける。
【0034】
尚、道路管理レコードにはリンク数の情報が記述されているので、単一の道路管理レコードに対して複数のリンクレコードが関連付けられる場合にも、道路管理リストLb1及びリンクリストLb2の先頭から順にレコードを参照/読み込むことにより、道路管理レコード1〜B1とリンクレコード1〜B2との関係については、特定することができる。
【0035】
また、本実施例では、図3(b)に示すように、リンクリストLb2における配列番号1番のリンクレコード1に対応するリンクに設定された点の座標レコード群を、座標リストLb3において先頭から配置し、リンクリストLb2における配列番号2番のリンクレコード2に対応するリンクに設定された点の座標レコード群を、座標リストLb3において、リンクリストLb2におけるリンクレコード1に対応する座標レコード群に続けて配列することにより、リンクリストLb2と座標リストLb3との間において、リンクの配列が同一順序となるように、リンクリストLb2と座標リストLb3とを作成している。
【0036】
即ち、本実施例では、このように座標リストLb3内の座標レコード1〜B3の配列に対応するリンクの配列を、リンクリストLb2と揃える(同一順序とする)ことにより、リンクリストLb2及び座標リストLb3の各レコードを関連付けている。尚、リンクレコードには座標点数の情報が記述されているので、このように単一のリンクレコードに対して複数の座標レコードが関連付けられる場合にも、リンクリストLb2及び座標リストLb3の先頭から順にレコードを参照/読み込むことにより、リンクレコード1〜B2と座標レコード1〜B3との関係を特定することができる。ちなみに、単一のリンクレコードに対応する座標レコード群は、座標リストLb3内において、そのリンクの始点から終点への点の並び順に、配列される。また、リンク終点の座標レコードについては、隣接するリンク始点の座標レコードと同座標を示すレコードとなるため、その登録を省略することが可能である。
<1.1.2 背景要素メッシュ単位データ>
背景要素メッシュ単位データは、図4(a)に示すように、ヘッダ、背景管理レコード1〜C1群から構成される背景管理リストLc1、座標レコード1〜C2群から構成される座標リストLc2、背景名称ID1〜C3群から構成される背景名称IDリストLc3、及び、背景名称辞書登録語1〜C4群から構成される背景名称辞書Lc4等を有する。
<1.1.2.1 ヘッダ>
背景要素メッシュ単位データにおけるヘッダは、固定長で表現され、背景管理レコード数C1等が記述されてなる。
<1.1.2.2 背景管理レコード>
背景管理レコードは、レコード毎に固定長で表現され、背景名称有無フラグ、背景種別コード等の情報が記述されてなる。背景種別コードは、地図上に表示する背景画像の種別を表すものである。具体的に、背景種別コードは、銀行・図書館・美術館・公園・ショッピングセンタ・鉄道・空港等の施設や、海・湖・島等の地形によって分類される背景画像の種別を表す。この背景種別コードに対応する背景画像は、この背景管理レコードに関連付けられた座標レコードが示す地図上の座標にレイアウトされて表示される。
【0037】
また、背景名称有無フラグは、このように地図上にレイアウトされる背景の名称が背景名称辞書Lc4に登録されているか否かを表すものである。例えば、地図上には背景画像と併せて、背景に対応する施設等の名称が表示されるが、背景名称は、このような目的で用いられる。
<1.1.2.3 座標レコード>
背景要素メッシュ単位データに記述される各座標レコードは、背景管理リストLc1に登録された各背景管理レコードに対応する背景画像のレイアウト位置(座標)を表すものである。この座標レコードは、固定長で表現され、X座標(経度方向の座標)及びY座標(緯度方向の座標)の情報を有する。
【0038】
この背景要素メッシュ単位データにおける座標リストLc2は、背景管理リストLc1に登録された背景管理レコード1〜C1と同数の座標レコード1〜C2を有する。即ち、座標レコード1〜C2は、背景管理レコード1〜C1と、一対一に対応して、座標リストLc2に記述される。
【0039】
具体的に、座標リストLc2は、図4(b)に示すように、背景管理リストLc1に背景管理レコードが登録されたレイアウト対象の背景画像(単位画像)毎に、背景管理リストLc1における背景管理レコードと同配列で、対応する背景画像の座標レコード1〜C2が配列された構成にされている。本実施例では、このようにして、背景管理レコード1〜C1と座標レコード1〜C2とを関連付けている。
<1.1.2.4 背景名称ID>
背景名称IDは、背景管理レコードに対応する背景の名称を背景名称辞書Lc4から読み出すためのものであり、背景名称辞書Lc4の先頭位置からのオフセット(バイト位置)で表現されるものである。この背景名称IDは固定長である。本実施例の手法で作成される上記地図データによっては、この背景名称IDに基づき、背景名称辞書Lc4から背景名称が読み込まれる。
【0040】
尚、この背景名称ID1〜C3は、図4(b)に示すように、背景名称IDリストLc3内において、背景管理リストLc1における背景管理レコード1〜C1と一対一に対応するように、背景管理レコード1〜C1の配列に合わせて配列されている。
【0041】
換言すると、背景名称IDリストLc3の作成に当っては、背景管理リストLc1において配列番号の若い背景管理レコードの順に、当該背景管理レコードに対応する道路名称IDを配列する。但し、背景管理レコードに対応する背景名称を一部省略する場合には、その背景管理レコードに対応する背景名称IDを格納すべき位置に、配列番号が次の背景管理レコードに対応する背景名称IDを詰めて配置する。
【0042】
上述したように、背景名称IDリストLc3において背景名称IDが登録されない背景に対応する背景管理レコード内では、背景名称有無フラグが「情報無し」との値を示すので、この背景名称情報有無フラグを参照しつつ、背景名称IDリストLc3の先頭から背景名称IDを参照/読み込むことにより、背景管理レコード1〜C1と背景名称ID1〜C3との対応関係については把握することができる。
<1.1.2.5 背景名称辞書登録語>
背景名称辞書Lc4は、可変長の背景名称辞書登録語1〜C4の一群からなるものであり、背景名称辞書登録語1〜C4は、背景名称を表す文字列で構成される。
<1.2 第二段階>
地図データ作成方法の第一段階が完了すると、上述したように、メッシュ毎の道路要素メッシュ単位データ及び背景要素メッシュ単位データが完成する。
【0043】
本実施例では、これらメッシュ単位データの一群を種類毎にまとめて、図1に示すように、収録エリアに対応する複数メッシュについての同一種類のメッシュ単位データを格納したデータファイルを、種類毎に作成する(S160,S170)。即ち、収録エリアに対応する複数メッシュについての道路要素メッシュ単位データをまとめたデータファイルを、道路マップファイルとして作成し(S160)、複数メッシュについての背景要素メッシュ単位データをまとめたデータファイルを、背景マップファイルとして作成する(S170)。従来では、メッシュ毎に、道路要素メッシュ単位データ及び背景要素メッシュ単位データをまとめてデータファイル化していたが、本実施例では、このようにして、メッシュ単位データ群を、種類毎にデータファイル化する点に特徴がある。
【0044】
ここで、S160,S170で作成する道路マップファイル及び背景マップファイルの詳細構成について説明する。図5(a)は、道路マップファイルの構成を表す図であり、図5(b)は、背景マップファイルの構成を表す図である。
【0045】
図5(a)に示すように、S160では、収録エリア内の各メッシュに対応する道路要素メッシュ単位データ群の先頭に管理データを挿入して、道路マップファイルを作成する。
【0046】
管理データは、このデータファイルに登録された道路要素メッシュ単位データの個数であるメッシュ数Mが固定長で記述され、続いて、各道路要素メッシュ単位データへのオフセット情報が固定長で記述されてなるものである。この道路要素メッシュ単位データへのオフセット情報は、収録エリアを構成するメッシュ毎に設けられ、対応するメッシュの道路要素メッシュ単位データの格納位置を表す。
【0047】
具体的に、オフセット情報は、対応する道路要素メッシュ単位データが格納された道路マップファイル上の位置を、基準位置からのバイト位置で表すものである。基準位置としては、このデータファイルの先頭位置や、このオフセット情報の記述開始位置や、管理データの末尾直後である道路要素メッシュ単位データ群の記述開始位置等を挙げることができる。
【0048】
尚、これら各メッシュに対応するオフセット情報については、道路マップファイル内において、予め定めたメッシュの並びに対応する順序で記述する。また、これに合わせて、道路マップファイル内には、上記道路要素メッシュ単位データの一群を、上記予め定めたメッシュの並びに対応する順序で配列する。
【0049】
同様に、S170では、各メッシュに対応する背景要素メッシュ単位データ群の先頭に管理データを挿入して、背景マップファイルを作成する。即ち、背景マップファイルにおいては、管理データとして、このデータファイルに登録する背景要素メッシュ単位データの個数であるメッシュ数Mを固定長で記述し、続いて、各背景要素メッシュ単位データへのオフセット情報を固定長で記述する。そして、この管理データに続いて、収録エリアに対応する各メッシュの背景要素メッシュ単位データの一群を配列する。
【0050】
但し、上記管理データにおいては、背景要素メッシュ単位データへのオフセット情報(背景要素メッシュ単位データが格納された背景マップファイル上の位置を、基準位置からのバイト位置で表す情報)を、道路マップファイルと同じメッシュの並びに対応する順序で記述する。更に、背景マップファイル内には、上記背景要素メッシュ単位データの一群を、上記予め定められたメッシュの並びに対応する順序で配列する。
【0051】
即ち、本実施例においては、道路マップファイル及び背景マップファイルにおいて、
同じメッシュの並びで、道路要素メッシュ単位データ及び背景要素メッシュ単位データを、データファイル内に格納することで、同一メッシュについての道路要素メッシュ単位データ及び背景要素メッシュ単位データを相互に関連付ける。
【0052】
そして、このように作成した道路マップファイル及び背景マップファイルに、道路要素及び背景要素の表示に用いるイメージファイル等の必要データを組み合わせて、これらのデータセット(データファイル群)を、地図データとして作成する。即ち、本実施例では、道路マップファイル及び背景マップファイルと、イメージファイル等のその他必要データの組合せによって、地図データを構成する。
【0053】
尚、ナビゲーション装置10において地図を俯瞰図等の形態で三次元表示可能に構成する場合には、更に、建造物等の種類・形状に対応するポリゴンとその座標(レイアウト位置)とを記述したメッシュ単位データを作成し、このメッシュ単位データを収録エリアに対応する複数メッシュ分まとめて、三次元マップファイルを作成し、これを上記地図データに組み合わせることができる。
【0054】
以上が、本実施例の地図データ作成方法の説明である。このように作成した地図データについては、例えば、ハードディスク装置やDVD等のメディアに記録して、この地図データ(オリジナルデータ)を記録した記録媒体としてのマスタディスクを作成する。そして、このマスタディスクを用いて、製品(ナビゲーション装置10)に搭載するハードディスク装置に、地図データをインストール(転送)する。
【0055】
尚、本実施例では、道路マップファイル及び背景マップファイルとして、道路要素及び背景要素に関するデータが用意されるが、従来の地図データでは、メッシュ毎に道路及び背景要素に関するデータがまとめられて、これがデータファイル化されていたため(図7参照)、地図データを構成するデータファイル数が膨大で、地図データをハードディスク装置等にインストールする際には、インストールに時間がかかるといった問題や、メッシュ毎のデータファイルがハードディスク装置のクラスタサイズよりも小さいために、地図データの実サイズよりも冗長に大きな領域が、インストール先のハードディスク装置に必要であるといった問題があった。
【0056】
これに対し、本実施例によれば、各メッシュのデータをまとめて道路マップファイル及び背景マップファイルを作成しているので、データファイル数を少なくすることができ、地図データのインストール作業(地図データのハードディスク装置への転送作業)を短時間で効率的に行うことができる。
【0057】
また、ナビゲーション装置10による処理では、例えば、誘導経路の探索時に道路要素に関するデータのみを地図データから読み込んで使用することになるが、このような読込対象のデータが道路要素及び背景要素のいずれか一方に偏った処理においては、従来のように、道路要素及び背景要素がまとめてデータファイル化された地図データよりも、本実施例の地図データ構造のほうが、目的のデータにアクセスしやすいといった利点がある。
<2 ナビゲーション装置の構成及び動作>
続いては、上記構成の地図データを搭載するナビゲーション装置10の構成について説明する。
【0058】
図6に示すナビゲーション装置10は、位置検出装置11、地図データ入力装置13、操作デバイス15、音声出力デバイス16、表示デバイス17、及び、制御回路19を備えた構成にされている。位置検出装置11は、ナビゲーション装置10を搭載した車両の現在位置を検出するためのものであり、例えば、周知のジャイロスコープ、距離センサ及びGPS受信機等を有した構成にされる。
【0059】
一方、地図データ入力装置13は、地図データがインストールされたハードディスク装置により構成されるものであり、地図データを制御回路19に入力可能に構成されたものである。この地図データ入力装置13を構成するハードディスク装置には、専用機を通じて、製品出荷時に上述の地図データがインストールされる。即ち、この地図データ入力装置13は、上述の道路マップファイル及び背景マップファイル及びその他必要データファイルにより構成される地図データを、ハードディスク装置に記憶した構成にされている。
【0060】
また、操作デバイス15は、ユーザからの指示を制御回路19に入力するためのものであり、表示デバイス17に配置されたタッチパネルや、ナビゲーション装置10の本体表面やリモートコントローラに設けられた操作スイッチ群等により構成される。この操作デバイス15を通じて、ユーザは、地図の縮尺変更やスクロール等の操作や目的地設定などナビゲーション装置10のあらゆる操作を行うことが可能である。
【0061】
また、音声出力デバイス16は、スピーカ等から構成され、制御回路19からの信号を受けてユーザへの案内音声等を出力するものである。この他、表示デバイス17は、フルカラー表示が可能なものであり、この表示デバイス17には、例えば、位置検出装置11により検出された車両の現在位置を表す現在位置マークや誘導経路等が、地図データ入力装置13より入力された地図データに基づく地図画像に重ねて表示される。
【0062】
また、制御回路19は、周知のマイクロコンピュータと同様の構成にされており、内部にCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備える。この制御回路19は、ROMに記憶されているプログラムに従って、ナビゲーション装置10としての機能を実現するための各種処理をCPUにより実行する。
【0063】
具体的に、制御回路19は、地図を表示デバイス17に表示するための描画処理や、操作デバイス15を通じてユーザから指定された目的地までの誘導経路を探索する経路探索処理や、車両の走行道路周辺の道路案内を行う経路案内処理を実行する。
【0064】
描画処理では、地図データを構成する道路マップファイルを参照して、道路ネットワークを表す道路画像データを作成すると共に、地図データを構成する背景マップファイルを参照して、背景画像データを作成し、これら道路画像データ及び背景画像データを合成して得られる地図画像データに基づく地図を、表示デバイス17に表示する。
【0065】
一方、経路探索処理では、背景マップファイルを参照せずに道路マップファイルを参照して、リンク長等の経路コスト演算に必要な情報を読み込み、これに基づいて、経路コストを演算して、目的地までの最適な誘導経路を探索する。この探索により得られた誘導経路は、経路案内処理により、表示デバイス17や音声出力デバイス16を通じて、ユーザに案内される。
<3 最後に>
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上述した地図データの作成方法は、車両に搭載されるナビゲーション装置用の地図データ以外の地図データにも適用することができる。具体的には、携帯電話等の携帯端末にインストールされる地図データにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
10…ナビゲーション装置、11…位置検出装置、13…地図データ入力装置、15…操作デバイス、16…音声出力デバイス、17…表示デバイス、19…制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データの作成方法であって、
地図収録対象のエリアを複数メッシュに分割し、
前記メッシュ毎に、このメッシュに対応する地図構成要素に関する情報を、地図構成要素の種類毎に記述してなる前記種類毎のメッシュ単位データを作成し、
前記作成した前記メッシュ単位データの一群を、前記地図構成要素の種類毎にまとめて、前記種類毎に、前記複数メッシュについての同一種類のメッシュ単位データを格納したデータファイルを作成する
ことによって、これらデータファイル群によって構成される地図データを作成することを特徴とする地図データ作成方法。
【請求項2】
地図データの作成方法であって、
地図収録対象のエリアを複数メッシュに分割し、
前記メッシュ毎に、このメッシュに対応する地図の道路要素に関する情報を記述してなる道路要素メッシュ単位データ、及び、このメッシュに対応する地図の背景要素に関する情報を記述してなる背景要素メッシュ単位データを作成し、
更に、前記複数メッシュについての道路要素メッシュ単位データをまとめたデータファイル、及び、前記複数メッシュについての背景要素メッシュ単位データをまとめたデータファイルを作成する
ことによって、これらデータファイル群によって構成される地図データを作成することを特徴とする地図データ作成方法。
【請求項3】
複数メッシュに分割された地図収録エリアの前記メッシュ毎に、このメッシュに対応する複数種類の地図構成要素に関する情報が夫々記述された前記種類毎のメッシュ単位データを有し、
これらメッシュ単位データの一群は、前記地図構成要素の種類毎に、前記複数メッシュについての同一種類の前記メッシュ単位データがまとめられたデータファイルの形態で保持されていること
を特徴とする地図データ。
【請求項4】
複数メッシュに分割された地図収録エリアの前記メッシュ毎に、このメッシュに対応する地図の道路要素に関する情報が記述された道路要素メッシュ単位データ、及び、このメッシュに対応する地図の背景要素に関する情報が記述された背景要素メッシュ単位データを有し、
これらメッシュ単位データの一群は、前記複数メッシュについての道路要素メッシュ単位データがまとめられたデータファイル、及び、前記複数メッシュについての背景要素メッシュ単位データがまとめられたデータファイルの形態で保持されていること
を特徴とする地図データ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−158638(P2011−158638A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19097(P2010−19097)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】