説明

地図データ更新システム

【課題】 地図データ情報を車車間通信により他の車両の車載端末に対して授受でき、センタの負荷を軽減しつつ、しかも低コストで地図データを更新することができるようにする。
【解決手段】 地図データ更新システム1は、地図データベースである記憶装置6を保有するセンタ2と、車車間通信機能を有し且つ地図データ記憶部である記憶装置10を有する車載端末3A、3Bとの間で通信して、未更新地図データを車載端末3A、3Bの記憶装置10に更新するものである。前記車載端末3A、3Bの制御装置11は、前記センタ2と通信して地図データの不足部分を取得して更新する対センタ情報取得更新手段と、車車間通信して自車載端末と他車載端末の地図データの未更新部分を相互に補填する車車間補填手段として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データを保有するセンタと、車車間通信機能を備えた車両との間で通信して自車両の地図データを更新する地図データ更新システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ナビゲーション装置(車載端末)では、CD−ROMやVDV−ROMなどの地図データ記憶手段を備え、この地図データ記憶手段から地図データを読み込んで、経路設定や地図表示を行うようになっている。ところで、実際の道路は、変更されたり新たに敷設されたりすることから、その部分の道路については、前記地図データ記憶手段の地図データでは不足することがある。
その対策として特許文献1では、逐次新しい地図データをデータベースに格納したセンタと車両との間で通信を行って、車両側へ更新すべき地図データを供給するようにしている。
【特許文献1】特開平9−90869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来では、新たな地図データが更新可能になったことをどのようにして利用者や車載端末が認識するかについて考慮されていない。
ここで、例えば、車載端末がセンタと通信して、更新可能な地図データが有るかどうかを確認する場合に、車載端末から問い合わせを行うか、センタから車載端末に通知を逐一行う必要がある。しかし、この場合、センタの負荷が極めて大きくなりすぎて、車載端末数の増加に対応することが困難であった。また、FM放送など一対多の情報展開が可能な放送を利用することも考えられるが、インフラの設備や利用料などでコスト高となる。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車車間通信機能を有する車載端末が普及していることに着目し、センタと車載端末との間で得た更新可能な地図データ情報を車車間通信により他の車両に対して授受でき、センタの負荷を軽減しつつ、しかも低コストで地図データを更新することができる地図データ更新システムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、地図データベースを保有するセンタと、車車間通信機能を有し且つ地図データ記憶部を有する車載端末との間で通信して、地図データの未更新部分を前記車載端末の地図データ記憶部に更新する地図データ更新システムであって、前記車載端末は、前記センタと通信して地図データの未更新部分を取得して更新する対センタ情報取得更新手段と、前記地図データの未更新部分を車車間通信して自車載端末と該他車載端末の地図データの未更新部分を相互に補填する車車間補填手段とを備えたところに特徴を有する。なお、前記地図データとは、道路データや、店舗データ、施設データ、その他のPOI情報などを含むものである。
【0006】
この請求項1の発明においては、車載端末がセンタと通信して地図データの未更新部分を取得して更新する。車載端末では他の車両の車載端末と車車間通信し、自車載端末と他車載端末の地図データの未更新部分を相互に補填する。従って、既存の車車間通信を利用することにより更新可能な地図データが授受されるから、センタの負荷を軽減しつつ、しかも低コストで地図データを更新することができる。
【0007】
この場合、前記車載端末には、自車位置検出手段が備えられ、車車間補填手段は、他車載端末に対して地図データの未更新部分を補填するときには、その未更新部分のうち、該自車位置検出手段により検出した自車位置近くの未更新部分を優先的に補填するようにしても良い(請求項2の発明)。地図データとしては走行時において自車位置近くの地図データの重要性が高いものである。この点請求項2の発明によれば、自車及びこれと近い他車にとって重要な地図データの未更新部分を補填(更新)できる。
【0008】
この場合、前記優先的に補填する未更新部分の地図データに他の地図データに依存する関連付けがなされている場合には、その関連付けされた地図データも補填するようにしても良い(請求項3の発明)。例えば、道路が順に延伸(新設)された場合、その最新区間(延伸先端区間)の地図データは、準最新区間(延伸元側の区間)に依存する関連付けがなされている。このような場合に、最新区間のみの地図データを更新したのでは、そこだけが孤立してしまう。この点、この請求項3の発明によれば、前記優先的に補填する未更新部分の地図データに他の地図データに依存する関連付けがなされている場合には、その関連付けされた地図データも補填するから、道路が延伸されたような場合でも、関連する地図データを更新することができる。
【0009】
また、前記車載端末には、対センタ間通信の実行タイミング条件が満足されたか否かを判断する対センタ間通信タイミング判断手段を備え、この対センタ間通信タイミング判断手段により対センタ間通信の実行タイミング条件が満足されたときに対センタ間通信を行うようにしても良く(請求項4の発明)、このようにすると、センタに対して適正なタイミングで対センタ間通信つまり地図データの更新を行うことが可能となる。
【0010】
この場合、前記地図データには鮮度情報が付加されており、前記実行タイミング条件として、この鮮度情報に基づいて設定された複数の実行タイミング条件を備え、前記対センタ間通信タイミング判断手段は、この複数の実行タイミング条件のいずれかに該当したときに対センタ間通信を行うようにしても良い(請求項5の発明)。このようにすると、地図データの鮮度情報に応じて、重要性に応じて早めにあるいは遅めのタイミングで、センタからの地図データの更新を行うことができる。
【0011】
また、前記車載端末には、車車間通信の実行タイミング条件が満足されたか否かを判断する車車間通信タイミング判断手段を備え、この車車間通信タイミング判断手段により車車間通信の実行タイミング条件が満足されたときに車車間通信を行うようにしても良い(請求項6の発明)。このようにすると、車車間での地図データの更新を適正なタイミングで行うことができる。
【0012】
この場合前記地図データには鮮度情報が付加されており、前記実行タイミング条件として、この鮮度情報に基づいて設定された複数の実行タイミング条件を備え、車車間通信タイミング判断手段は、この複数の実行タイミング条件のいずれかに該当したときに車車間通信を行うようにしても良い(請求項7の発明)。このようにすると、地図データの鮮度情報に応じて、重要性に応じて早めにあるいは遅めのタイミングで車車間での地図データの更新を行うことができる。
また、この場合、前記鮮度情報には、更新した地図データのうちの鮮度を示す最新データ番号や、センタとの最終通信時刻や、他の車載端末との通信による最終通信時刻などを含むようにしても良い(請求項8の発明)。このようにすると、適正な鮮度情報を用いて対センタ間あるいは車車間での地図データの更新が図れる。
【0013】
また、前記対センタ情報取得更新手段及び車車間補填手段の通信は、車車間通信による他の制御処理がなされないときに行うようにしても良い(請求項9の発明)。車車間通信は、車両間で通信して追突防止などの制御処理に用いられるものである。しかし、車車間通信が常に制御処理の動作しているわけではなく、動作待機状態であることも多い。従って、上記請求項5の発明のように、動作待機時間に上述の対センタ情報取得更新手段及び車車間補填手段の通信を行えば、他の制御処理(上述した追突防止などの制御処理)に支障を来たさずに、車車間通信を有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施例について図1ないし図8を参照して説明する。図1には地図データ更新システム1を示している。この地図データ更新システム1は、センタ2と多数の車載端末(便宜上2つ)3A、3Bを備えて構成されている。センタ2はサーバーから構成されており、これは一つでも、複数分散して設けても良い。このセンタ2には、ネットワーク(広域通信網)4を介して各車載端末3A、3Bと通信する通信装置5、全ての更新可能な地図データ情報(以下更新可能情報という)を保持する地図データベースたる記憶装置6、通信やデータ授受を制御する制御装置7を備えて構成されている。この制御装置7はCPUやROM、RAMを含んで構成されている。
【0015】
車載端末3Aは、車両に搭載されるもので、車車間通信のための通信装置8、前記センタ2とネットワーク3を介して通信する通信装置9、更新可能情報とその鮮度情報を保持する地図データ記憶部たる記憶装置10、通信やデータ授受を制御する制御装置11を備えて構成されている。前記車車間通信のための通信装置8は、Bluetoothや無線LANなどから構成されている。前記制御装置11はCPUやROM、RAMを含んで構成されている。
【0016】
他の車両に搭載される車載端末3Bも、この車載端末3Aと同じ構成である。
前記センタ2の記憶装置6に記憶されている更新可能情報は、管理のために順序づけされた番号(データ番号)で管理されている。この実施例では単に連番とし、番号が大きいほど新しい更新可能情報である。センタ2における更新可能情報の一例を図5に示す。この図5から分かるように、更新可能情報は、前記管理のための番号、データ作成日時、データサイズ、更新に必要な料金、更新の発生する中心経緯度、地域、更新に関する簡易な説明、更新対象が道路である場合には概要形状を含んでいる。なお、車載端末3A、3Bで保存する更新可能情報には鮮度情報が付加されるものであり、この鮮度情報には、センタ2や車車間通信により知り得た最新の更新可能情報の番号を既知最新番号とし、それ以前に保持していた更新可能情報の番号を単に最新番号として有し、センタ2との最終通信時刻、他の端末との通信による最終通信時刻なども有している。
【0017】
前記車載端末3A、3Bの制御装置11は、対センタ情報取得更新手段、車車間補填手段、対センタ間通信タイミング判断手段、車車間通信タイミング判断手段として機能するものであり、図2〜6を参照して説明する。図2には車載端末3Aにおける制御装置11の制御内容を示している(車載端末3Bも同じ制御内容で動作するものである)。図3にはセンタ2の制御装置7の制御内容を示している。なお、図4にはセンタ2、車載端末3A、3B間の通信シーケンスを示している。
【0018】
図2において、車車間通信が前述した「衝突防止のための制御」などの他の制御で通信中であるか否かを判断し(ステップS1)、他の制御で通信中でなければ、他の車載端末(この場合、車載端末3Bとする)から最新番号通知を受信したか否かを判断する(ステップS2)。受信している場合には、受信した番号と当該車載端末3A自身が保持している番号とを比較する(ステップS3)。受信番号の方が大きい場合にはステップS4に移行して鮮度情報(既知最新番号、最新番号、通信日時)を更新し、自車載端末3Aが保持している更新可能情報内の最新番号を付加した更新可能情報要求を送信し(ステップS5)、応答を待つ(ステップS6)。この応答内容は、更新可能情報とこの更新可能情報の最後に付帯する送信終了通知である。
【0019】
ここで送信の際には、「衝突防止のための制御」などの他の制御で通信中でないことを条件に当該送信及び受信(車車間通信)を行うものであり、所定時間以上他の制御で通信が継続されている場合には、タイムアウトしてこの更新制御を終了する。これは、以下の車車間通信時においても同様である。
ステップS6では、自車載端末3Aに、更新可能情報が送信されれば、ステップS7で当該更新可能情報を記憶装置10に保存(記憶)する。そして送信終了通知を受け取れば(つまりデータ通信が終了すれば)ステップS1に戻る。
【0020】
前記ステップS3で受信番号より自車載端末3Aの保持番号が大きいときには、他の車載端末3Bの更新可能情報が自車載端末3Aの更新可能情報よりも古いと判断して、最新番号通知を送信する(ステップS8)。そして、ステップS9で、送信対象の番号(送信開始番号)を受信番号の次(送信対象の番号=受信番号+1)とする。つまり、他の車載端末では、自車載端末3Aが受信した番号までは更新可能情報を持っているわけであるから、自車載端末3Aは、その次の番号の更新可能情報から送信すれば良い。
ステップS10では、送信対象の番号の更新可能情報を送信し、この後、全番号の更新可能情報を送信完了するまで送信を継続する(ステップS11、ステップS12)。そして、全番号の更新可能情報を送信すればステップS1に戻る。
【0021】
なお、前記ステップS3で受信番号と保持番号とが同じであるときには、更新可能情報のやり取りは必要がないので、何もしないでステップS1に戻る。
また前記ステップS2で他の車載端末3Bから更新番号通知受信がない場合には、ステップS13に移行し、他車載端末との通信タイミングが設定された複数の実行タイミング条件(1)〜(3)のいずれかであるかどうかを判断する。この設定された実行タイミング条件は、鮮度情報に応じて設定されたものであり、図6に示すタイミングとなっている。すなわち、実行タイミング条件(1)は、センタ2との最終通信時刻と現在時刻との差が一日未満であるときには、前回他車載端末との通信タイミングから30分を経過したことである。また、実行タイミング条件(2)は、センタ2との最終通信時刻と現在時刻との差が一週間未満であるときには、前回他車載端末との通信タイミングから一日を経過したことである。さらにまた、実行タイミング条件(3)は、センタ2との最終通信時刻と現在時刻との差が一週間以上であるときには、他車載端末との通信は開始しないというものである。なお、この実行タイミング条件の設定の趣旨は、センタ2との最終通信時点から時間が経過していないほど、自車載端末3Aが最新の更新可能情報を保持しているわけであるから、他車載端末に対する最新番号通知は頻繁にしたほうが良い、という考え方である。
【0022】
前記ステップS13で他車載端末との通信タイミングがいずれかの実行タイミング条件を満足していることが判断されると、ステップS14で最新番号を送信し、ステップS15で通信相手の車載端末から更新可能情報要求または最新番号通信の受信があるか否かを判断し、更新可能情報要求の受信があれば前述のステップS9に移行し、最新番号通知であれば、前述のステップS4に移行する。
【0023】
また前記ステップS13で他車載端末との実行タイミング条件を満足していないと判断されるとステップS16に移行してセンタ2との通信タイミングが設定された複数の実行タイミング条件のいずれかとなったか否かを判断する。この実行タイミング条件は、鮮度情報応じて複数設定されており、図7に示す実行タイミング条件(A)〜(D)となっている。
【0024】
この場合、実行タイミング条件(A)は、鮮度情報のうち、既知最新番号と最新番号との差が「0」で、且つ他車載端末との最終通信時刻が1週間前で且つセンタ2との最終通信時刻が2週間前であることを満足することである。実行タイミング条件(B)は、既知最新番号と最新番号との差が「5未満」で、且つ他車載端末との最終通信時刻が1日前で且つセンタ2との最終通信時刻が2週間前であることを満足することである。実行タイミング条件(C)は、既知最新番号と最新番号との差が「5未満」で、且つ他車載端末との最終通信時刻が3日前で且つセンタ2との最終通信時刻が1週間前であることを満足することである。実行タイミング条件(D)は、既知最新番号と最新番号との差が「5以上」であることを満足することである。この場合の実行タイミング条件の設定の趣旨は、既知最新番号と最新番号との差が大きいほど、また、他車載端末との最終通信時刻が現在時刻に近いほど、また、センタ2との最終通信時刻が現在時刻に近いほど、より頻繁にセンタ2と通信するようにして、更新可能情報を早く取得できるようにするためである。
このステップS16でセンタ2との通信タイミングが前記実行タイミング条件(A)〜(D)のいずれかの条件を満足すれば、ステップS17に移行し、センタ2に対して更新可能情報要求を行う。
【0025】
センタ2の制御装置7の制御内容を図3のフローチャートに示す。ステップT1では更新可能情報要求受信待ちをしており、更新可能情報要求があれば、ステップT2で受信番号(車載端末からの最新番号)が当該センタ2の保持番号未満(未満か等しいかしかない)であれば、更新可能情報を送信し、等しければ、何もしない。
ステップS18で、上述のセンタ2からの更新可能情報を受信すると、ステップS19で当該更新可能情報を保存すると共に鮮度情報を更新する。
この車載端末3Aの制御は、車載端末3Bなどの他の車載端末でも実行されるものであり、車車間通信により更新可能情報が逐次各車載端末に更新されてゆく。
【0026】
なお、センタ2と各車載端末3A、3Bとは、図8に示す更新可能情報の配信及び更新可能情報要求、更新可能情報提供も行うものである。例えば、センタ2からの更新可能情報の配信を受けた車載端末3A、3Bは、図示しない表示装置により当該配信内容を提示し、利用者が図示しない操作装置により要求をすれば、センタ2が更新可能情報を提供し、車載端末3A、3Bでは更新可能情報で示された地図データを更新する。この場合、上述の制御がなされるから、センタ2の更新可能情報の配信頻度は低くても良い。
【0027】
このように本実施例によれば、車載端末3A及び3Bがセンタ2と通信して更新可能情報(地図データの不足部分)を取得して更新する。車載端末3Aと、あるいは車載端末3Bと、さらには他の車両の車載端末とで車車間通信し、自車と該他車の更新可能情報を相互に補填する。従って、既存の車車間通信を利用することにより更新可能情報が授受されるから、センタ2の負荷を軽減しつつ、しかも低コストで更新可能情報を更新することができる。
【0028】
また、前記車載端末3A、3Bにおいては、対センタ間通信の実行タイミング条件が満足されたか否かを判断するようにし、この対センタ間通信タイミング判断により対センタ間通信の実行タイミング条件が満足されたときに対センタ間通信を行うようにしたから、センタ2に対して適正なタイミングで対センタ間通信つまり地図データの更新を行うことができる。
【0029】
この場合、更新可能情報には鮮度情報が付加されており、前記実行タイミング条件として、この鮮度情報に基づいて設定された複数の実行タイミング条件(A)〜(D)を備え、前記対センタ間通信タイミング判断を、この複数の実行タイミング条件(A)〜(D)のいずれかに該当したときに対センタ間通信を行うようにしたから、更新可能情報の鮮度情報に基づき、重要性に応じ早めにあるいは遅めのタイミングで、センタ2からの更新可能情報の更新を行うことができる。
また、前記車載端末3A、3Bにおいては、車車間通信の実行タイミング条件(1)〜(3)のいずれかが満足されたか否かを判断し、この実行タイミング条件のいずれかが満足されたときに車車間通信を行うようにしたから、車車間での更新可能情報タの更新を適正なタイミングで行うことができる。
【0030】
この場合も更新可能情報に鮮度情報が付加されているから、更新可能情報の鮮度情報に基づき、重要性に応じ早めにあるいは遅めのタイミングで車車間での地図データの更新を行うことができる。
また、センタ2と車載端末との通信(対センタ情報取得更新手段)と、車車間通信(車車間補填手段の通信)とは、車車間通信による他の制御処理がなされないときに行うようにしたから、他の制御処理(前述した追突防止などの制御処理)に支障を来たさずに、車車間通信を有効利用できる。
【0031】
図8ないし図12は本発明の第2の実施例を示しており、次の点が第1の実施例と異なる。第1の実施例では、更新可能情報を番号の小さいものから順番に送信するようにしたが、車両間の距離が離れてしまった場合など、車車間通信で全ての更新可能情報を送信できるとは限らないため、重要度の高い更新可能情報から送信するよう順番を変更するようにしている。この重要度は利用者にとっては、自車位置に近い更新可能情報ほど重要であると考えられる。この場合、その更新可能情報に依存する関連付けがなされている場合には、単にその更新可能情報のみでは、孤立した情報となってしまう。
【0032】
まず、この更新可能情報間の依存関係について簡単に述べる。例えば、道路が順に延伸(新設)された場合、その最新区間(延伸先端区間)の地図データは、準最新区間(延伸元側の区間)に依存する関連付けがなされている。このような場合に、最新区間のみの地図データを更新したのでは、そこだけが孤立してしまう。図12に依存関係を模式的に示している。この図において矢印の根元の更新可能情報が、矢印先端側の更新可能情報に依存している。つまり、番号9の更新可能情報は、番号8と番号2の更新可能情報に依存しており、この番号8の更新可能情報は番号3と番号5の更新可能情報に依存している。さらに番号3の更新可能情報は番号1の更新可能情報に依存している。これらの依存関係は各更新可能情報に含まれている。従って、自車位置に近い更新可能情報がある場合に、当該自車位置に近い更新可能情報に依存関係があれば、当該更新可能情報を送信する前に、依存関係にある更新可能情報を送信すると良い。
【0033】
この点を考慮した当該第2の実施例では、次のようにしている。図8に示すように、車載端末3A、3Bは位置検出手段たる位置検出装置21が設けられている。この位置検出装置21はGPS受信機、ジャイロ、車速センサなどを備えて構成されており、自車位置を検出するものである。この実施例では車載端末3A、3Bの制御装置11の制御内容が若干第1の実施例の場合と異なる。すなわち、図9におけるステップU9〜ステップU12が前記図2のステップS9〜ステップS12と異なる。ステップS9〜ステップS12では、小さい番号の更新可能情報から送信するようにしたが、ステップU9〜ステップS12では、送信済みフラグ初期化及び送信番号選択処理を実行するようにしている。また、最新番号としては、単に保持している更新可能情報のうちの最新番号ではなく、抜けがなく連続して保持している更新可能情報のうちの最新番号を用いる。すなわち、その番号以下の更新可能情報は全て保持しているという番号のうち最大のものを最新番号として用いる。ステップU9では、受信番号以下の番号について送信済みフラグを設定(初期化)する。つまり、図12(a)に示すように、受信番号が3であったとするとそれ以下の番号に対して全てフラグを設定する。ステップU10の送信選択番号処理の処理内容は図10に示している。まず、位置検出装置21によって自車位置を取得する(ステップV1)。そして、更新可能情報に含まれる経緯度などの位置情報から最も近傍の更新可能情報を検索する(ステップV2)。次に当該更新可能情報に依存関係があるかどうかを判断し(ステップV3)、依存関係があれば、ステップV4に移行し、依存関係がなければ、リターンする(ステップU11に移行する)。
【0034】
ステップV4では、検出された更新可能情報が依存し、且つ送信済みフラグが未設定の更新可能情報を全て抽出する。今、番号8の更新可能情報が自車位置の最も近傍の更新可能情報とすると、図11から分かるように番号8が依存する更新可能情報の番号として1、3、5がある。このうちフラグが未設定である更新可能情報として番号5、8が抽出される。図12(b)参照。抽出された更新可能情報のうち最も小さな番号をもつ更新可能情報を選択し(ステップV5)、ステップV6で送信済みフラグを設定する(図12(c)参照)。この場合には、番号5の更新可能情報が送信対象として設定される。
【0035】
このように本実施例によれば、自車位置検出装置21を設け、他車に対して更新可能情報の未更新部分を補填するときには、その未更新部分のうち、該自車位置検出装置21により検出した自車位置近くの未更新部分を優先的に補填するようにしたから、自車及びこれと近い他車にとって必要で重要性の高い更新可能情報の未更新部分を補填(更新)できる。
特に、この実施例によれば、優先的に補填する未更新部分の更新可能情報に他の更新可能情報に依存する関連付けがなされている場合には、その関連付けされた更新可能情報も補填するようにしたから、道路が延伸されたような場合でも、関連する更新可能情報を更新することができる。
なお、本発明は、上記した各実施例に限定されるものではなく、例えば鮮度情報も更新した地図データのうちの鮮度を示す最新データ番号や、センタとの最終通信時刻や、他の車載端末との通信による最終通信時刻などから必要なものを選択しても良いし、これら以外の要素を追加しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例を示す地図データ更新システムの電気的構成のブロック図
【図2】車載端末の制御内容を示すフローチャート
【図3】センタの制御内容を示すフローチャート
【図4】センタと二つの車載端末との間の情報授受のシーケンス
【図5】更新可能情報の内容を示す図
【図6】車車間通信の実行タイミング条件を示す図
【図7】対センタ間通信の実行タイミング条件を示す図
【図8】センタから更新可能情報配信の場合の車載端末とのシーケンス
【図9】本発明の第2の実施例を示す図1相当図
【図10】図2相当図
【図11】送信番号選択のフローチャート
【図12】更新可能情報の依存関係を模式的に示した図
【図13】(a)〜(c)は更新可能情報の送信を説明するための図
【符号の説明】
【0037】
図面中、1は地図データ更新システム、2はセンタ、3A、3Bは車載端末、6は記憶装置(地図データベース)、10は記憶装置(地図データ記憶部)、11は制御装置(対センタ情報取得更新手段、車車間補填手段)、21は自車位置検出装置(自車位置検出手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データベースを保有するセンタと、車車間通信機能を有し且つ地図データ記憶部を有する車載端末との間で通信して、地図データの未更新部分を前記車載端末の地図データ記憶部に更新する地図データ更新システムであって、
前記車載端末は、
前記センタと通信して地図データの未更新部分を取得して更新する対センタ情報取得更新手段と、
前記地図データの未更新部分を車車間通信して自車載端末と該他車載端末の地図データの未更新部分を相互に補填する車車間補填手段と
を備えたことを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項2】
請求項1に記載の地図データ更新システムにおいて、
前記車載端末には、自車位置検出手段が備えられ、
車車間補填手段は、他車載端末に対して地図データの未更新部分を補填するときには、その未更新部分のうち、該自車位置検出手段により検出した自車位置近くの未更新部分を優先的に補填するようにしたことを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項3】
請求項2に記載の地図データ更新システムにおいて、
前記優先的に補填する未更新部分の地図データに他の地図データに依存する関連付けがなされている場合には、その関連付けされた地図データも補填するようにしたことを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の地図データ更新システムにおいて、
前記車載端末には、対センタ間通信の実行タイミング条件が満足されたか否かを判断する対センタ間通信タイミング判断手段を備え、この対センタ間通信タイミング判断手段により対センタ間通信の実行タイミング条件が満足されたときに対センタ間通信を行うことを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項5】
請求項4に記載の地図データ更新システムにおいて、
前記地図データには鮮度情報が付加されており、
前記実行タイミング条件として、この鮮度情報に基づいて設定された複数の実行タイミング条件を備え、
前記対センタ間通信タイミング判断手段は、この複数の実行タイミング条件のいずれかに該当したときに対センタ間通信を行うことを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項6】
請求項1ないし5に記載の地図データ更新システムにおいて、
前記車載端末には、
車車間通信の実行タイミング条件が満足されたか否かを判断する車車間通信タイミング判断手段を備え、この車車間通信タイミング判断手段により車車間通信の実行タイミング条件が満足されたときに車車間通信を行うことを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項7】
請求項6に記載の地図データ更新システムにおいて、
前記地図データには鮮度情報が付加されており、
前記実行タイミング条件として、この鮮度情報に基づいて設定された複数の実行タイミング条件を備え、
車車間通信タイミング判断手段は、この複数の実行タイミング条件のいずれかに該当したときに車車間通信を行うことを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項8】
請求項5又は7に記載の地図データ更新システムにおいて、
前記鮮度情報には、更新した地図データのうちの鮮度を示す最新データ番号や、センタとの最終通信時刻や、他の車載端末との通信による最終通信時刻などが含まれていることを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の地図データ更新システムにおいて、
前記対センタ情報取得更新手段及び車車間補填手段の通信は、車車間通信による他の制御処理がなされないときに行うようになっていることを特徴とする地図データ更新システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−65042(P2007−65042A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247685(P2005−247685)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】