説明

地図データ検証システム

【課題】地図データと現実世界の地物の違いを短時間で検出可能な技術を提供する。
【解決手段】地図データ検証システムは、自車両(100)の位置を検出する位置検出手段と、道路および地物(301,302,303)のデータを格納した地図データと、道路の脇に存在する地物までの距離(101)を測定するレーザースキャナやステレオカメラなどの測距手段と、エラー箇所検出手段と、送信手段と備える。エラー箇所検出手段は、自車両位置と地図データとから測距手段によって測定される距離の予測値を求め、実際の測定距離と異なる箇所をエラー箇所であると判定する。自車両において検出されたエラー箇所は、送信手段によって地図管理サーバー(200)に通知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データが現実と一致するか否かを検証する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置における地図データの高鮮度化を図るために、地図配信の仕組みなどが整備されている(特許文献1、2など)。ところで、地図データの鮮度を上げるためには、現地調査の頻度を上げなければならないが、更新頻度にも限界があり常に最新の地図データを配信することは困難である。
【0003】
特許文献3には、自車位置の測定精度を向上させるために車載カメラ画像からランドマークを認識して補正に用いること、および、認識したランドマークが内蔵された地図データと異なる場合に、地図配信センターに地図データの更新情報を送ったり、地図配信センターから最新の地図データを取得したりすることが記載されている。特許文献3では、認識結果の確からしさや画像の撮影条件などを考慮した上で、内蔵された地図データが現実と異なる旨の報告を地図配信センターにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−121528号公報
【特許文献2】特開2007−64951号公報
【特許文献3】特開2008−51612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーナビゲーション装置の有する地図データが古くなり実際のデータと異なる場合には、できるだけ早期に、その箇所を検出できることが好ましい。本発明の目的は、地図データと現実世界の地物との違いを短時間で検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明では、地図データと現実世界の地物との違いの検出を、以下の手段または処理によって行う。
【0007】
本発明に係る地図データ検証システムは、互いに無線通信手段によって通信可能な車両とサーバー装置とから構成される。車両は、自車両の位置を検出する位置検出手段と、道路および地物のデータを格納した地図データと、道路の脇に存在する地物までの距離を測定する測距手段と、測距手段によって測定された距離が自車両位置および地図データから予測される値と異なる箇所(エラー箇所)を検出するエラー検出手段と、地図データのエラー箇所の情報をエラー情報としてサーバー装置に送信する送信手段とを有する。サーバー装置は、車両から送信されるエラー情報を受信する受信手段と、受信したエラー情報を蓄積するエラー情報蓄積手段とを有する。
【0008】
測距手段としては、レーザースキャナや、ステレオカメラを用いることができる。レーザースキャナは、計測対象物とセンサーとの間をレーザーパルスが往復する時間を計測することで、計測対象物までの距離を測定する。レーザースキャナは、たとえば、車両の斜め前方向き(左前方および右前方)に固定すれば、車両の移動とともに道路脇に存在する物体までの距離を計測できる。レーザースキャナは垂直方向に所定の周波数(たとえば数十〜数百ヘルツ)で走査することが好ましいが、垂直方向に走査しなくても良い。ステレ
オカメラは、2つのカメラから撮影される画像の視差に基づいて計測対象物までの距離を測定する。ステレオカメラの場合は、1回の撮影で、撮影対象物の全てについての距離が測定可能である。
【0009】
地図データは、3次元地図データであることが好ましい。すなわち、道路や地物の3次元形状が格納されていることが好ましい。ただし、2次元地図データであっても、道路の情報以外に、地物の平面形状や、地物と道路との間の距離が含まれていれば本発明において利用可能である。すなわち、道路上の任意の点とその地物との間の距離が算出可能なデータが含まれていれば良い。なお、地物とは、地上に存在する物体のうち、移動体を除き、地表において位置が固定されている非移動体を意味する。地物は人工物であっても自然物であっても良く、人工物にはたとえば、建築物、各種施設、橋、鉄道などが含まれ、自然物にはたとえば、山、海、河川などが含まれる。
【0010】
自車両の位置は位置検出手段によって検出できる。位置検出手段は、典型的にはGPS装置であるが、加速度センサーやジャイロセンサーを利用して自車両の位置情報を補完的に求めても良い。また、位置検出には、GPS以外の無線通信、道路に埋め込まれたマーカー(磁気マーカー、画像マーカーなど)などを用いても良い。また、自車両の位置の履歴から走行方向も検出可能である。
【0011】
自車両の位置および走行方向が分かると、測距手段による測定方向に位置する地物までの距離を地図データから算出可能である。地図データから算出される地物までの距離と、実際に測距手段によって測定される地物までの距離が異なる場合は、地図データが現実と異なることが分かる。具体的には、地図データによると道路の脇近くに地物があるにもかかわらず、測距手段による測定距離が予測値よりも大きい場合には、地図データには存在するとされている地物が消滅したと判断できる。一方、地図データには道路の脇近くには地物が無く、したがって、より遠くの地物までの距離が測定される判断されるにもかかわらず、測距手段による測定距離が短い場合には、その位置に新たに地物が生成されたと判断できる。このように、エラー検出手段は、地図データにエラーのある箇所(エラー箇所と呼ぶ)を検出可能である。
【0012】
なお、測距手段による地物までの距離の測定は、ある程度の測定期間(たとえば車両が数メートル進む間の時間)の、平均測定距離を採用しても良い。一点のみによる測定では誤差の影響があったり、障害物までの距離を測定することもあり得るからである。また、測距手段としてレーザースキャナを用いて垂直方向にも走査する場合、走査周波数に比較して車両の速度が遅ければ地物の3次元形状を測定可能である。地図データも3次元である場合には、地図データ中の地物の形状と測定結果を比較して同一の地物であるか否かを判断して、地図データにエラーがあるが判断しても良い。
【0013】
エラー検出手段によって検出されたエラー箇所の情報は、送信手段によってサーバー装置にエラー情報として送信される。このような通信手段(路車間通信手段)には、モバイルWiMAX、携帯通信網、無線LAN、DSRC(専用狭域通信)などの無線通信や、可視光通信や赤外光通信などの光通信を採用できる。このように路車間通信によってエラー箇所の情報をサーバー装置に送信するため、サーバー装置には複数の車両が検出したエラー情報が集約される。すなわち、サーバー装置は、多くのエラー箇所を短時間に収集することができる。これにより、地図データが現実と異なる箇所を短時間で検出可能である。
【0014】
測距手段として、レーザースキャナやステレオカメラを利用することができる。レーザースキャナは照明による影響はあまり受けないが、降雨時には雨滴による影響を受け測定性能が低下する。したがって、降雨時にはレーザースキャナによる測定を行わないか、ま
たは、降雨時の測定であることをエラー情報に加えることが好ましい。雨が降っているか否かは、たとえば、ワイパーが動作しているか否かによって判断しても良いし、天気に関する情報を無線通信などによって取得して判断しても良い。また、測距手段としてステレオカメラを利用する場合は、日中の測定性能は良好であるが、それ以外(夜間等)は測定性能が低下する。したがって、日中以外にはステレオカメラによる測定を行わないか、または、日中以外の測定であることをエラー情報に加えることが好ましい。ここで、日中として、たとえば、日出および日没時刻を基準として、日出1時間後から日没1時間前の間として定義することができる。
【0015】
本発明において、サーバー装置は、エラー情報をエラー判定の信頼度ともエラー情報蓄積手段に蓄積することが好ましい。ここで、エラー判定の信頼度とは、地図データの情報と実際の測定とが異なるという判断が信頼できる確かさをいう。たとえば、測距手段による測定精度を信頼度として利用することができる。上述のように、測距手段がレーザースキャナの場合は、晴天時の測定に基づくエラー判定の方が、降雨時の測定に基づくエラー判定よりも信頼度が高い。測距手段がステレオカメラの場合に、日中の測定に基づくエラー判定の方が、夜間(日中以外)の測定に基づくエラー判定よりも信頼度が高い。
【0016】
また、多くの車両によってエラー判定されている箇所は、そのエラー判定の信頼度を高いものと判断できる。したがって、サーバー装置は、多くの車両からエラー情報として送信されるエラー箇所についてのエラー判定の信頼度は高いものと判断できる。
【0017】
また、同一の箇所について、異なる方向に走行する車両からエラーであると判定された箇所は、そのエラー判定の信頼度を高いものと判断できる。そのために、エラー情報をサーバー装置に送信する際に、このエラー箇所の距離測定を行ったときの自車両の走行方向をあわせて送信することが好ましい。
【0018】
また、エラー箇所の距離測定を行ったときの、エラー箇所と自車両との距離が短いほど、距離測定の精度が高く、したがってエラー判定の信頼度が高いと判断できる。そのために、エラー情報をサーバー装置に送信する際に、このエラー箇所の距離測定を行った際のエラー箇所と自車両との間の距離をあわせて送信することが好ましい。
【0019】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する地図データ検証システムとして捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む地図データ検証方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地図データと現実世界の地物との違いを短時間で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本実施形態に係る地図データ検証システムの概要を説明する図である。
【図2】図2は、本実施形態における車載装置の機能構成を示す図である。
【図3】図3は、地図データのエラー検出を説明する図である。
【図4】図4は、エラー情報のフォーマットを示す図である。
【図5】図5は、地図データのエラー箇所検出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。なお、以下では地物が建築物である例を用いて説明を行うが、地物は建築物以外のものであっ
ても構わない。
【0023】
(概要)
図1は本実施形態に係る地図データ検証システムの概略を説明する図である。図中右方向に走行する車両100は、符号101,102の示す方向を対象にレーザースキャナによる距離測定を行いながら走行する。距離測定を行う方向は、車両の斜め前方であり、道路脇に存在する建築物までの距離を測定可能である。車両100は、ナビゲーション用に地図データを有している。この地図データには道路のデータ以外に、建築物のデータも含まれる。したがって、自車両の位置が分かると、測定方向101,102に存在する建築物までの距離が地図データから予測可能である。地図データから予測される距離と、レーザースキャナによる実際の測定距離とが異なる場合は、地図データが現実と異なることが分かる。たとえば、地図データには建築物301,302,303が存在しているが、実際には建築物302が取り壊されている状況を考える。図に示すように車両100の測定方向101が建築物302の方向と一致する場合、測定方向101についての実際の測定距離は建築物303までの距離となり、地図データから予測される距離よりも長いため、建築物302が消滅したことが分かる。つまり、車両100は地図データに含まれる建築物302が消滅したことが分かる。逆に、地図データには建築物が存在しない場所に新たに建築物ができた場合も、レーザースキャナによる測定距離が地図データから予測される距離と異なるため、建築物の生成を把握可能である。車両100は、このように地図データが現実を反映していない箇所(エラー箇所)を検出すると、エラー箇所の情報を地図管理サーバー200に路車間通信によって通知する。エラー情報の送信は複数の車両から行われ、地図管理サーバー200は受け取ったエラー情報を蓄積する。そして、蓄積したエラー情報に基づいて、地図データが誤っている旨の判定や、地図データ更新のために現地計測を行うべきという判定や、あるいはエラー情報に基づいて地図データの更新などを行ったりすることができる。
【0024】
(機能構成)
図2は、本実施形態における車載装置および地図管理サーバーの機能構成を示す図である。レーザースキャナ1は、レーザーパルスを照射し、その反射パルスが帰ってくるまでの時間を計測することで、計測対象物までの距離を計測する。本実施形態では、レーザースキャナ1を利用して、自車両と道路の脇に存在している建築物までの距離を計測する。レーザースキャナ1は車両に2つ搭載され、それぞれ左斜め前方および右斜め前方に向けられている。測定方向の水平面内方向は固定されているが、垂直方向には所定の角度範囲で走査する。たとえば、0度(水平)から70度の範囲を走査周波数100Hzで走査する。もちろん、走査角度の範囲や走査周波数は適宜設定可能である。走査角度の範囲を大きくするほど、より高い位置に存在する建築物までの距離を測定可能である。また、走査周波数が高いほど分解能の高い測定が可能であり、建築物の詳細な3次元形状を取得可能である。計測対象物の距離と車両の移動速度によっても変化するが、距離10m、時速50km、走査周波数100Hzであれば10〜20cm程度の間隔で計測できる。
【0025】
なお、レーザースキャナ1の設置条件は上記のものに限定されない。たとえば、レーザースキャナの測定方向は斜め前方に限定されず、横方向や斜め後方であっても構わない。また、レーザースキャナの数は2つである必要はなく、3つ以上利用しても良く、また1つのみのレーザースキャナで走査角度範囲を大きく(たとえば、180度以上)することで、道路の両側の建築物までの距離を計測できる。また、建築物の3次元形状を計測せずに車両と建築物との間の距離を測定するのであれば、走査を行わない測距センサーを用いても構わない。測距センサーとしてレーザー式以外のものを用いて構わない。
【0026】
測距手段としてステレオカメラを用いても良い。ステレオカメラは、2つのカメラによって1対の画像を撮影し、視差に基づいて撮影対象物までの距離を算出する。ステレオカ
メラは毎秒30フレーム程度のフレーム速度で画像取得を行う。ステレオカメラを用いる場合もレーザースキャナと同様に、左斜め前方と右斜め前方を向いた2組のステレオカメラを用いることが好ましいが、これに限られるものではない。また、ステレオカメラの撮像素子(CCDやCMOSなど)は、夜間にも撮影可能なように、可視光領域だけでなく近赤外領域まで検出可能な撮像素子を用いても良い。
【0027】
自車位置検出部2は、GPS装置3、ジャイロセンサー4、加速度センサー5などを利用して自車両の位置および走行方向を検出する。GPS装置3が受信するGPS衛星信号に基づいて自車両の絶対座標を取得するとともに、ジャイロセンサー4から得られる走行方向や加速度センサー5から得られる移動距離に基づいて補正を行うことで自車両の位置を精度良く検出できる。その他、地図データとのマッチング(マップマッチング)により位置補正を行っても良い。なお、自車両の位置検出は上記の構成によるものに限られず、無線通信による位置情報の取得、道路に埋め込まれた磁気マーカーの検知、カメラ画像の画像認識などの手段を併用して自車両の位置を検出しても良い。
【0028】
3次元地図データ6は、道路やその周辺の構造物の3次元形状を記憶する。エラー箇所検出部7は、3次元地図データ6が現実と異なる箇所を検出する。自車位置検出部2から得られる自車両の位置および走行方向と3次元地図データ6とから、現在の車両位置からレーザースキャナの測定方向にある建築物までの距離が算出できる。すなわち、地図データが正しい場合のレーザースキャナによる測定の予測値が算出できる。そこで、エラー箇所検出部7は、レーザースキャナ1による実測値と、自車両位置と地図データとから算出される予測値を比較して、これらが一致するか否かを判断することで、地図データが正しいか否か判定する。
【0029】
距離測定の結果に基づいて地図データの正しさを判定する処理について、図3を参照してより詳細に説明する。図3は3次元地図データ6に含まれる地図の例を示す。たとえば、図3(a)に示すように、3次元地図データ6上では交差点付近に建築物51,52,53が存在している場合を考える。図中の車両Aのエラー箇所検出部7は、自車両の位置・走行方向および地図データに基づいて、左前方向きのレーザースキャナ1による測定の結果が距離61になるものと判断(予測)できる。車両Bも同様に、左前方向きのレーザースキャナ1による測定の結果は距離62になるものと判断できる。地図データが現実と一致する場合には、レーザースキャナによる実際の計測結果は、地図データから予測される距離61,62と等しくなる。
しかしながら、図3(b)に示すように、建築物51が消滅している場合は、車両A,Bからは本来見えないはずの建築物53、52との間の距離63、64が計測される。このように、3次元地図データ6に基づいて予測される測定値よりも、実際の測定結果の方が大きい場合は、建築物が消滅したと判断できる。
逆に、3次元地図データ6には建築物51が存在しないと記録されている場合は、車両A,Bはそれぞれ図3(b)の距離63,64が測定されると予測されるが、実際の計測結果としては距離61,62が得られる。このように、3次元地図データ6に基づいて予測される測定値よりも、実際の測定結果の方が小さい場合は、建築物が生成したと判断できる。
エラー箇所検出部7は以上のようにして、地図データに記録されているデータが現実と異なる箇所(エラー箇所)を検出する。
【0030】
なお、レーザースキャナ1の測定方向に、他の車両や人物など地図データには含まれず一時的に現れる物体が存在する場合には、この物体までの距離が計測される。このような測定距離に基づく地図データの検証は誤検出につながるので、レーザースキャナによる計測結果が、自車両と道路脇(歩道も含む)との距離よりも小さい場合は、その測定結果を地図の検証に用いないことが好ましい。すなわち、レーザースキャナ1の測定方向につい
て建築物が存在可能な領域までの最短距離を地図データから算出し、実際の測定結果が算出した最短距離よりも短い場合は、その計測を無効とする(エラー判定に利用しない)ことが好ましい。このようにすれば、一時的に存在する物体の影響を受けずに、地図データの検証を行える。
【0031】
エラー箇所を判定する際に、車両と対象物との距離以外の情報を用いても良い。たとえば、建築物の高さが一致するか否かを判定に利用しても良い。レーザースキャナによって垂直方向に走査している場合は建築物の高さを判断可能である。地図データに記録されている建築物の高さと、実際の測定による高さが異なる場合には、その位置に別の建築物が建てられたと判断することができる。また、レーザースキャナ1が分解能高く測定できる場合には、測定結果として得られる建築物の3次元形状が、地図データに含まれる建築物の3次元形状と一致するか否かによって、地図データが正しいか判断できる。
【0032】
なお、ここでは地図データとして3次元地図データ6を利用することを想定しているが、建築物の3次元形状のマッチングによる地図データの検証を行わない場合は、2次元地図データを利用しても構わない。この場合、2次元地図データに、建築物の平面形状または道路脇からの距離などが含まれていれば、道路上の任意の点からその建築物までの距離を算出できるので、上記の判定が実行可能である。また、建築物の属性データとして高さが含まれていれば、高さを利用する判定も実行可能である。
【0033】
エラー箇所検出部7によって、現実と異なると判定された箇所に関する情報(エラー情報)は、路車間通信部9によって地図管理サーバーに送信される。路車間通信部9、10は、無線通信や光通信(可視光通信、赤外光通信)など任意の通信媒体を用いることができ、また通信方式も特に限定されない。車両から地図管理サーバーに送信されたエラー情報は、地図管理サーバーのエラー情報蓄積部11に蓄積される。なお、エラー箇所検出部7によって検出されたエラー箇所の情報は、直ちに地図管理サーバーに送信する必要はなく、まずは車内にエラー情報を蓄積しておいて、あるい程度の量が溜まった時点や、運転停止時などに一括して地図管理サーバーに送信するようにしても良い。
【0034】
図4は、地図管理サーバー200に送信され蓄積されるエラー情報に含まれる属性情報を示す。判定結果31には、どのようなエラーが発生しているのか、すなわち、対象物体の消滅、物体の生成、対象物体の変化のいずれであるかを示す情報を格納する。また、対象物体の位置座標32には、エラー箇所の位置を表す情報を格納する。エラー箇所の位置は、位置座標として格納されても良いし、地図データにおいて建築物に識別子が割り当てられている場合はその識別子を利用しても良い。また、エラー検出を行った地図のバージョン33も含ませる。エラーが発生するかしないかは車両が有する地図データのバージョンに大きく依存するため、どのバージョンの地図データについてエラー情報であるのかが重要となる。エラー情報には、さらに、エラー検出を行った際の測定条件34が含まれる。
測定条件34としては、たとえば、測定手段35、測定日時36、測定時の自車両の位置37、測定時の走行方向38、測定時の天気39などを含めることができる。車両によって距離測定の手段が異なることが考えられるため、どのような種類の測定機器(たとえば、レーザースキャナ、赤外線測距センサー、ステレオカメラなど)を利用したか、また、その測定性能を測定手段35に格納する。測定日時36は、どの時点でエラーであると判定されたかを把握するために用いられる。また、測定日時36は、測定手段の測定精度が時間帯によって異なる場合には、エラー判定の信頼度に関係する。測定時の自車両の位置37は、どの地点からの測定であるか、あるいは対象物との距離を判別するために用いられる。対象物との距離が近い位置からの測定ほど測定精度が良く、したがってエラー判定の信頼度も高いものと判断できる。測定時の走行方向38を利用するのは、特定の方向に走行している場合だけでなく、異なる方向に走行している場合に同じエラーが検出でき
れば、エラー検出の信頼度が高いと判断できるためである。測定時の天気39を用いるのは、天候によって測定精度が変わる場合に、エラー判定の信頼度に影響を与えるからである。たとえば、レーザースキャナは降雨時には測定精度が落ちるので、天気39として少なくとも雨が降っていたか否かを含めることが好ましい。
【0035】
このようにエラー情報に含まれる測定条件などの情報から、個々のエラー検出の確かしさ(信頼度)を判定することができる。したがって、車両から送信するエラー情報に、測定条件などの属性情報だけでなく、信頼度を付与しても良い。また、信頼度の付与は、エラー情報に含まれる情報に基づいて、地図管理サーバーが行っても良い。個々のエラー検出については、距離の測定精度が高いほどエラー検出の信頼度も高いと判断できる。このようにして、地図管理サーバーは、測定日時や測定時の天気などの情報や、測定対象物との距離などに基づいて、エラー検出の信頼度を把握できる。
【0036】
(処理フロー)
次に、図5を参照して車両が実施する地図データのエラー検出処理について説明する。まず、車両が走行しているか否か判定する(S102)。車両が停止している場合(S102−NO)は何も処理を行わず終了する。車両が走行している場合(S102−YES)は、自車位置検出部2によって自車両の位置を推定する(S104)。また、レーザースキャナ1による距離計測を行う(S106)。エラー箇所検出部7は、自車両の位置と、3次元地図データ6に含まれる周囲の情報とから、レーザースキャナ1による測定方向に存在する地物までの距離、すなわち、レーザースキャナ1による計測結果の予測値を算出する(S108)。そして、レーザースキャナによる計測結果と、地図データからの予測値との差が閾値以上であるか判定する(S110)。閾値は、レーザースキャナ1の測定誤差よりも大きい値である。
【0037】
測定結果と予測値の差が閾値よりも大きい場合(S110−YES)は、地図データが誤りであるので、エラー情報を一時的に記憶する。エラー情報の属性のうち判定結果31は、測定結果と予測値の大小によって判断可能であり、測定結果が予測値よりも小さい場合は建築物の生成であると判断でき、測定結果が予測値よりも大きい場合は建築物の消滅であると判断できる。対象物体の位置座標32は、建築物の消滅である場合にはその建築物の識別子を利用することが簡便である。もちろん、この位置座標32に絶対座標を用いても良い。測定時の日時36,自車位置37、走行方向38は内蔵クロックや自車位置検出部2から得られる。測定時の天気39は、無線通信によって外部から取得しても良いが、雨が降っているか否かを記録するだけであればワイパーの動作の有無によって判断することが簡便である。
【0038】
車両が走行中は上記のエラー検出を繰り返し、検出されたエラー情報は一時的に記憶される。そして、車両が停止したとき(S114−YES)に、エラー情報を地図管理サーバー200に送信する。なお、地図管理サーバー200にエラー情報を送信するタイミングは、走行を停止するときに限られず、任意のタイミングであって良い。たとえば、エラーが検出されると同時に送信しても良いし、一定時間おきに通信しても良い。なお、ここでは車両と地図管理サーバー200とは基本的に常時通信可能であることを前提としているが、地図管理サーバー200との通信可能な箇所が限られる場合には、車両が地図管理サーバー200と通信可能となる度にエラー情報を送信するようにしても良い。
【0039】
(地図管理サーバーの処理)
次に、周囲の車両からエラー情報を受信した地図管理サーバー200の動作について説明する。地図管理サーバー200では、種々の車両から送信されるエラー情報を蓄積し、蓄積したエラー情報に基づいてエラー報告がなされたそれぞれの箇所について地物の生成・消滅を判断する。エラー報告は図4に示すような属性データが含まれているので、これ
らに基づいて、以下のような判断を行う。
【0040】
まず考慮すべき事項は、エラー情報に含まれる地図バージョンである。すなわち、エラー情報がどのバージョンの地図データのエラーを報告するものであるかを、地図バージョン33に基づいて判断する。地図管理サーバーは、最新バージョンの地図データに関するエラー情報のみを判断に利用しても良い。最新バージョンのエラー情報のみを利用する場合は、古いバージョンの地図データに関するエラー情報は無視すればよい。また、エラー情報が古いバージョンの地図データに関するものであっても、エラー発生箇所の地物データがエラー報告の対象のバージョンと最新バージョンとで同一である場合は、そのエラー情報を最新バージョンの地図データに対するものであるとして扱える。すなわち、地図管理サーバーは、最新版の地図データと、それよりも古い1または複数のバージョンの地図データを備えており、古いバージョンの地図データに基づくエラー情報を受信した場合に、エラー発生箇所の地物データが古いバージョンと最新バージョンとで同一である場合は、このエラー情報を最新バージョンの地図データに対するエラー情報として扱う。このようにすれば、古いバージョンの地図データを利用している車両からのエラー報告も有効活用できる。
【0041】
エラー情報の信頼性は、同一箇所についてのエラー報告数に基づいて判断することができる。すなわち、多くの車両によってエラーが検出されている箇所は、実際にエラーが生じている可能性が高い。どの程度のエラー報告数であれば信頼できるかは、その場所を通る車両数に応じて変化するので、各場所における交通量を参考にしても良い。また、周囲の箇所と比較して明らかにエラー報告数が少ない場所は、誤検出によるエラー報告であると判断することもできる。
【0042】
また、個々のエラー判定について、測定手段と測定条件の関係によって信頼度を判定できる。測定手段がレーザースキャナであれば降雨時の測定誤差が大きくなる場合もあるので、降雨時のエラー判定は信頼度が低いと判断できる。また、測定手段がステレオカメラなどによる場合は、測定精度が照明の影響を受けるので、夜間や降雨時のエラー判定は信頼度が低いと判断できる。また、車両と測定対象物との間の距離が近いほど測定精度も高いので、対象物体の位置と測定時の位置とに基づいてエラー判定の信頼度を判断しても良い。
【0043】
多くの車両から送信されるエラー情報を蓄積していくと、同一の地点についてのエラー情報が複数蓄積される。そこで、個々のエラー情報だけに着目してエラー判定の信頼度を算出するだけでなく、蓄積した複数のエラー情報に基づいてエラー判定の信頼度を算出しても良い。最も簡単には、上述したように同一内容のエラー情報が数多く蓄積されている箇所は、実際にエラーが起きている可能性が高いと判断できる。また、異なる方向に走行中の車両がエラーであると判定している箇所は、実際にエラーが起きている可能性が高い。また、異なる測定手段を有する車両がともにエラーであると判定している箇所も、実際にエラーが起きている可能性が高い。このように、複数のエラー情報を蓄積することで、報告されるエラーの信頼度を評価することもできる。
【0044】
このように多くの車両によって報告されるエラー情報に基づいて地図データのエラーを判断しているので、個々の車両による誤検出による影響を統計的に排除することができ、信頼に足るエラー情報を自動的に集約することができる。地図管理サーバーでは、実際にエラーが発生していると判断できる箇所が目視によって把握できる態様でディスプレイ(表示手段)に表示すれば、管理者が地図データにどれくらいエラーが含まれているか(地図データがどれだけ古くなっているか)を容易に判断できる。すなわち、地図データと現実世界のズレを把握することができ、どのタイミングでどの地域の再調査を行うべきか判断可能となる。もちろん、地図管理サーバー自体が、地域内のエラー箇所の数(たとえば
、単位面積あたりの数)が閾値を越えた場合に再調査を促すようなメッセージを表示するようにしても良い。
【0045】
(本実施形態の作用・効果)
地図データのエラー情報を、複数の車両からの測定に基づいて、地図管理サーバーに蓄積するので、移動する車両から測定では不可避な誤検知・誤検出を統計的に排除することができ、信頼できるエラー情報を自動的に蓄積できる。このようにして蓄積したエラー情報を用いることで、再測量の頻度やタイミングを、地域的に合理的に決定することができる。これにより、再測量回数を最適化でき、地図作製コストの低減と、地図データの高鮮度化を合理的に両立することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 レーザースキャナ
2 自車位置検出部
7 エラー箇所検出部
9、10 路車間通信部
11 エラー情報蓄積部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに通信可能な車両とサーバー装置とから構成される地図データ検証システムであって、
前記車両は、
自車両の位置を検出する位置検出手段と、
道路および地物のデータを格納した地図データと、
道路の脇に存在する地物までの距離を測定する測距手段と、
前記測距手段によって測定された距離が、自車両位置および地図データから予測される値と異なるエラー箇所を検出するエラー検出手段と、
前記地図データのエラー箇所の情報をエラー情報として前記サーバー装置に送信する送信手段と、
を有し、
前記サーバー装置は、
前記車両から送信されるエラー情報を受信する受信手段と、
受信したエラー情報を蓄積するエラー情報蓄積手段と、
を有することを特徴とする地図データ検証システム。
【請求項2】
前記測距手段はレーザースキャナであることを特徴とする請求項1に記載の地図データ検証システム。
【請求項3】
前記測距手段はステレオカメラであることを特徴とする請求項1に記載の地図データ検証システム。
【請求項4】
前記サーバー装置は、エラー情報をエラー判定の信頼度とともに前記エラー情報蓄積手段に蓄積する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地図データ検証システム。
【請求項5】
多くの車両から送信されるエラー箇所ほど、前記信頼度を大きくすることを特徴とする請求項4に記載の地図データ検証システム。
【請求項6】
前記車両は、前記エラー情報を前記サーバー装置に送信する際には、当該エラー箇所の距離測定を行ったときの自車両の走行方向をあわせて送信し、
前記サーバー装置は、一つのエラー箇所について、異なる方向への走行中の距離測定によって地図データと実際の測定が異なると判定された場合に、当該エラー箇所の前記信頼度をより大きくする
ことを特徴とする請求項4または5に記載の地図データ検証システム。
【請求項7】
前記車両は、前記エラー情報を前記サーバー装置に送信する際には、当該エラー箇所と自車両との間の距離をあわせて送信し、
前記サーバー装置は、エラー箇所との距離が短いほど、エラー箇所の前記信頼度をより大きくする
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の地図データ検証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−27594(P2011−27594A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174573(P2009−174573)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【Fターム(参考)】