説明

地図データ配信装置、電子機器及び地図更新システム

【課題】サーバから電子機器へ差分データを無線配信するための通信量を抑制する技術を提供する。
【解決手段】差分地図配信サーバ1は、複数のリンク及びノードによって道路ネットワークが表現された地図データを記憶するナビゲーション装置2へ、地図データに含まれる情報の更新分を表す差分データを無線配信する。具体的には、同じ時期に発生した同じリンク又はノードについての更新情報を異なる種類に分類され得る複数種類の差分データが差分情報DB12に記憶されている。そして、差分データ抽出部16が、差分情報DB12により記憶されている複数種類の差分データの中から、配信先のナビゲーション装置2へ配信すべき種類の差分データを抽出し、ネットワークI/F11及び配信制御部17を介して配信先のナビゲーション装置2へ無線配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データを配信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データを記憶し、その地図データを用いた処理を実行する電子機器が知られている。例えばナビゲーション装置は、地図データの表す地図画像を表示する地図表示処理や、地図データの表す道路において探索条件に応じた経路を探索する経路探索処理や、現在地から目的地へ誘導する誘導処理などを実行する。
【0003】
一般に、こうした地図データにおいて、地図上の道路はリンク単位で表現され、これらリンク及びリンク同士の接続点であるノードによって、道路ネットワークが表現されている。そして、地図データには、各リンクや各ノードについての情報として、交通規制、リンク形状、道路種別、幅員、車線数、道路構造、制限速度、誘導用画像など、種々の情報が含まれている。
【0004】
ところで、電子機器が記憶する地図データは、実際の道路状況に基づいて作成されたものであるが、道路状況は日々変化することから、地図データの作成時期が古くなるほど、実際の道路状況からの乖離が大きくなってしまう。
【0005】
このため、電子機器に記憶されている地図データを所定の期間ごとに最新のものに差し替える構成が実用化されている。しかしながら、道路状況の変化などに伴い更新される情報は、地図データ全体から見ればごく一部であり、そのために地図データ全体を差し替えることは効率的ではない。
【0006】
一方、最新の地図データを管理するサーバを備え、地図データに含まれる情報の更新分を表す差分データを、サーバからナビゲーション装置へ無線配信する構成が提案されている。例えば特許文献1に記載の地図データ配信システムでは、ナビゲーション端末が、地図配信を要求する領域を含む地図配信要求を、地図配信サーバに送信する。地図配信サーバは、地図配信要求を受信すると、地図配信要求に含まれている要求領域に少なくとも一部が属するリンクを含む更新波及範囲を有する未配信のリンクデータを、地図データ記憶部から抽出して、ナビゲーション端末へ配信する。そして、ナビゲーション端末は、地図配信サーバからリンクデータを受信すると、受信したリンクデータを、自身が記憶する地図データに反映させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4684228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1に記載の構成では、地図データ全体を配信する場合と比較して、配信すべきデータ量を格段に抑えることができる。しかしながら、例えば広い領域を対象として地図の精度を向上するような更新が行われた場合など、更新の内容によっては差分データのデータ量が大きくなり、差分データを無線配信するための通信量が大きくなってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、サーバから電子機器へ差分データを無線配信するための通信量を抑制する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の地図データ配信装置は、複数の道路要素によって道路ネットワークが表現された地図データを記憶するとともにその地図データを用いた地図利用処理を実行する電子機器へ、地図データに含まれる情報の更新分を表す差分データを無線配信するサーバとして機能する。具体的には、この地図データ配信装置は、差分記憶手段、抽出手段及び配信手段を備える。差分記憶手段は、所定の道路要素についての更新情報を異なる種類に分類され得る複数種類の差分データとして記憶する。また、抽出手段は、差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データを抽出する。そして、配信手段は、抽出手段により抽出された差分データを配信先の電子機器へ無線配信する。
【0011】
このような構成によれば、所定の道路要素(例えば同じ時期に発生した同じ道路要素)について、情報の更新分を表す差分データを一度に無線配信する従来の構成と比較して、差分データを無線配信するための通信量を抑制することができる。すなわち、電子機器により実行される地図利用処理では、地図データに含まれるすべての情報が一度に用いられる訳ではなく、地図データに含まれる一部の情報が必要に応じて用いられることが通常である。また、地図データには、各道路要素についての情報として、利用目的の異なる複数種類の情報が含まれており、その種類によって必要とされる時期が異なる。そこで、本発明の地図データ配信装置では、所定の道路要素についての情報の更新分を表す差分データであっても、その種類に応じて配信する時期を異ならせることができるようにしている。このようにすることで、配信する差分データのデータ量が抑えられるため、差分データを無線配信するための通信量を抑制することができる。
【0012】
ここで、配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データは、例えば、配信先の電子機器が実行しようとする地図利用処理に応じて特定することが可能である。すなわち、請求項2に記載の地図データ配信装置は、電子機器が実行しようとする地図利用処理を表す処理実行情報を、電子機器から受信する処理情報受信手段を更に備える。そして、抽出手段は、処理情報受信手段により処理実行情報が受信された場合に、差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、受信した処理実行情報の表す地図利用処理に用いられる種類の差分データを、配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データとして抽出する。
【0013】
このような構成によれば、電子機器が実行しようとする地図利用処理に応じて、その地図利用処理に用いられる種類の差分データをリアルタイムで配信することができる。したがって、電子機器ですぐに用いられない余分な差分データの配信を効果的に抑制することができる。
【0014】
具体的には、電子機器が、地図データの表す道路において探索条件に応じた経路を探索する経路探索処理を、地図利用処理として実行可能である場合には、例えば請求項3に記載のように構成してもよい。すなわち、請求項3に記載の地図データ配信装置において、複数種類の差分データには、経路探索処理に用いられる種類の差分データと経路探索処理に用いられない種類の差分データとが含まれている。そして、抽出手段は、処理情報受信手段により経路探索処理を表す処理実行情報が受信された場合に、差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、経路探索処理に用いられる種類の差分データを、配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データとして抽出する。このような構成によれば、電子機器が経路探索処理を実行しようとするタイミングで、その経路探索処理に用いられる種類の差分データを配信することができる。
【0015】
この場合、請求項4に記載のように、経路探索処理を表す処理実行情報には、探索条件が含まれていてもよい。そして、抽出手段は、処理情報受信手段により経路探索処理を表す処理実行情報が受信された場合には、処理実行情報に含まれる探索条件に応じた経路を探索し、探索した経路上の差分データを抽出対象としてもよい。このような構成によれば、経路探索処理で探索される経路上の差分データを配信することができる。
【0016】
一方、電子機器が、地図データの表す道路において現在地から目的地へ誘導する誘導処理を、地図利用処理として実行可能である場合には、例えば請求項5に記載のように構成してもよい。すなわち、請求項5に記載の地図データ配信装置において、複数種類の差分データには、誘導処理に用いられる種類の差分データと誘導処理に用いられない種類の差分データとが含まれている。そして、抽出手段は、処理情報受信手段により誘導処理を表す処理実行情報が受信された場合に、差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、誘導処理に用いられる種類の差分データを、配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データとして抽出する。このような構成によれば、電子機器が誘導処理を実行しようとするタイミングで、その誘導処理に用いられる種類の差分データを配信することができる。
【0017】
この場合、請求項6に記載のように、誘導処理を表す処理実行情報には、現在地の位置情報が含まれていてもよい。そして、抽出手段は、処理情報受信手段により誘導処理を表す処理実行情報が受信された場合には、処理実行情報に含まれる現在地の位置情報に基づいて現在地を基準とする領域を設定し、設定した領域内の差分データを抽出対象としてもよい。このような構成によれば、誘導処理で誘導される領域内の差分データを配信することができる。
【0018】
一方、電子機器が、地図データの表す地図画像を表示する地図表示処理を、地図利用処理として実行可能である場合には、例えば請求項7に記載のように構成してもよい。すなわち、請求項7に記載の地図データ配信装置では、地図表示処理を表す処理実行情報には、地図画像の表示態様を表す表示態様情報が含まれている。そして、抽出手段は、処理情報受信手段により地図表示処理を表す処理実行情報が受信された場合には、処理実行情報に含まれる表示態様情報に基づいて表示される地図画像の領域を設定し、設定した領域内の差分データを抽出対象とする。このような構成によれば、地図画像で表示される地図画像の領域の差分データを配信することができる。
【0019】
ところで、電子機器ごとに差分データの配信時期が異なる場合、差分データを配信したか否かを電子機器ごとに管理することが有用である。そこで、例えば請求項8に記載の地図データ配信装置は、電子機器ごとに差分データの配信履歴を記憶する履歴記憶手段を更に備える。そして、抽出手段は、履歴記憶手段により記憶されている配信履歴に基づいて、配信先の電子機器へ配信済みの差分データを抽出対象から除外する。このような構成によれば、配信先の電子機器へ配信済みの差分データが重複して配信されてしまうことを生じにくくすることができる。
【0020】
また、各電子機器が差分データの配信履歴を管理するようにしてもよい。すなわち、請求項9に記載の地図データ配信装置は、電子機器に配信した差分データの配信履歴を、電子機器から受信する履歴受信手段を更に備える。そして、抽出手段は、履歴受信手段により受信された配信履歴に基づいて、配信先の電子機器へ配信済みの差分データを抽出対象から除外する。このような構成によっても、配信先の電子機器へ配信済みの差分データが重複して配信されてしまうことを生じにくくすることができる。しかも、この構成によれば、地図データ配信装置が配信したにもかかわらず、電子機器側で正常に取得できなかった差分データが、再度配信されるようにすることができる。
【0021】
また、差分データによっては、単独では配信する必要がないものであっても、他の差分データを地図データに反映させる場合に、地図データにおける整合をとるために必要になるものもある。そこで、例えば請求項10に記載の地図データ配信装置では、差分記憶手段は、差分データごとに、当該差分データを地図データに反映させるために必要となる他の差分データである関連差分データを記憶する。そして、抽出手段は、差分記憶手段から差分データを抽出する場合に、その差分データの関連差分データも抽出する。このような構成によれば、単独では配信する必要のない差分データを配信しないことによって、他の差分データを地図データに反映した場合に、地図データにおける整合がとれなくなってしまうことを生じにくくすることができる。
【0022】
ところで、電子機器で実行される地図利用処理の相違などにより、ある電子機器では利用される情報が、別の電子機器では利用されないことも生じ得る。そこで、例えば請求項11に記載の地図データ配信装置は、地図データに含まれる情報のうち利用されない情報の種類を電子機器ごとに記憶する機器情報記憶手段を備える。そして、抽出手段は、配信先の電子機器で利用されない種類の情報を表す差分データを抽出対象から除外する。このような構成によれば、配信先の電子機器で利用されない種類の情報を配信しないようにすることで、通信量を抑制することができる。
【0023】
一方、請求項11に記載の構成に代えて、例えば請求項12に記載のように構成してもよい。すなわち、請求項12に記載の地図データ配信装置は、地図データに含まれる情報のうち利用されない情報の種類を電子機器ごとに記憶する機器情報記憶手段を備える。そして、抽出手段は、配信先の電子機器で利用されない種類の情報を表す差分データを、配信先の電子機器で利用される種類の情報を表す差分データよりも、遅い時期に配信する。このような構成によれば、配信先の電子機器で利用されない種類の情報を、配信先の電子機器で利用される種類の情報とともに配信しないようにすることで、通信量を抑制することができる。
【0024】
次に、請求項13に記載の電子機器は、複数の道路要素によって道路ネットワークが表現された地図データを記憶するとともに地図データを用いた地図利用処理を実行するものである。具体的には、この電子機器は、処理情報送信手段及び処理手段を備える。処理情報送信手段は、地図利用処理を実行する場合に、実行しようとする地図利用処理を表す処理実行情報を、地図データに含まれる情報の更新分を表す差分データを無線配信するサーバへ送信する。そして、処理手段は、所定の道路要素についての更新情報を異なる種類に分類され得る複数種類の差分データの中から、処理情報送信手段により送信された処理実行情報に対する応答として、その処理実行情報の表す地図利用処理に用いられる種類の差分データをサーバから受信した場合に、受信した差分データが反映された地図データを用いて地図利用処理を行う。
【0025】
このような構成によれば、所定の道路要素(例えば同じ時期に発生した同じ道路要素)について、情報の更新分を表す差分データが一度に無線配信される従来の構成と比較して、差分データを無線配信するための通信量を抑制することができる。しかも、実行しようとする地図利用処理に応じて、その地図利用処理に用いられる種類の差分データがリアルタイムで配信されるため、すぐに用いない余分な差分データの配信を効果的に抑制することができる。
【0026】
次に、請求項14に記載の地図更新システムは、複数の道路要素によって道路ネットワークが表現された地図データを記憶するとともに地図データを用いた地図利用処理を実行する電子機器と、地図データに含まれる情報の更新分を表す差分データを電子機器へ無線配信するサーバとを備える。
【0027】
そして、電子機器は、処理情報送信手段及び処理手段を備える。処理情報送信手段は、地図利用処理を実行する場合に、実行しようとする地図利用処理を表す処理実行情報をサーバへ送信する。そして、処理手段は、処理実行情報に対する応答としてサーバから差分データを受信した場合に、受信した差分データが反映された地図データを用いて地図利用処理を行う。
【0028】
一方、サーバは、差分記憶手段、処理情報受信手段、抽出手段及び配信手段を備える。差分記憶手段は、所定の道路要素についての更新情報を異なる種類に分類され得る複数種類の差分データとして記憶する。また、処理情報受信手段は、電子機器から処理実行情報を受信する。また、抽出手段は、処理情報受信手段により電子機器からの処理実行情報が受信された場合に、差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、受信した処理実行情報の表す地図利用処理に用いられる種類の差分データを、配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データとして抽出する。そして、配信手段は、抽出手段により抽出された差分データを配信先の電子機器へ無線配信する。
【0029】
このような構成によれば、所定の道路要素(例えば同じ時期に発生した同じ道路要素)について、情報の更新分を表す差分データを一度に無線配信する従来の構成と比較して、差分データを無線配信するための通信量を抑制することができる。しかも、電子機器が実行しようとする地図利用処理に応じて、その地図利用処理に用いられる種類の差分データをリアルタイムで配信することができるため、電子機器ですぐに用いられない余分な差分データの配信を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態の地図更新システムの構成を示すブロック図である。
【図2】地図データの更新例を示す図である。
【図3】差分データの配信タイミングを示す図である。
【図4】リンク及びノードで表現された道路ネットワークの更新例を示す図である。
【図5】差分データの依存関係を示す図である。
【図6】差分データIDの構成を示す図である。
【図7】地図表示処理が実行されている状態での処理を示すフローチャートである。
【図8】経路探索処理の開始操作に伴い実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.全体構成]
図1は、実施形態の地図更新システムの構成を示すブロック図である。この地図更新システムは、差分地図配信サーバ1とナビゲーション装置2とを備える。差分地図配信サーバ1は、複数のユーザが所有する複数のナビゲーション装置2(図1では1つの装置を示す。)のそれぞれと、無線通信網(携帯電話網)を介して無線通信可能に構成されている。なお、複数のナビゲーション装置2には、車両に着脱不能に装着されたタイプのものや、車外へ持ち出して徒歩でも使用可能なタイプのものなどが含まれる。
【0032】
ナビゲーション装置2は、地図データを記憶し、その地図データを用いた種々の処理を実行可能に構成されている。一方、差分地図配信サーバ1は、最新の地図データを管理しており、地図データに含まれる情報の更新分を表す差分データを、配信対象である複数のナビゲーション装置2へ無線配信するサーバとして機能する。
【0033】
[2.差分地図配信サーバの構成]
次に、差分地図配信サーバ1の具体的な構成について説明する。図1に示すように、差分地図配信サーバ1は、ネットワークインタフェース(以下「ネットワークI/F」という。)11と、差分情報データベース(以下「差分情報DB」という。)12と、ユーザ配信履歴データベース(以下「ユーザ配信履歴DB」という。)13と、ユーザ履歴管理部14と、経路探索部15と、差分データ抽出部16と、配信制御部17とを備える。
【0034】
ネットワークI/F11は、無線通信網(携帯電話網)を介してナビゲーション装置2と無線通信を行うためのインタフェースである。
差分情報DB12は、過去から現在までの差分データを蓄積するためのデータベースである。すなわち、差分地図配信サーバ1で管理される最新の地図データは、道路状況の変化などに伴い定期的に更新され、その更新分(地図データに含まれる情報であって、追加、修正、削除等された部分)を表す差分データが、更新時期の情報とともに差分情報DB12に蓄積(記憶)される。
【0035】
ユーザ配信履歴DB13は、ナビゲーション装置2に配信した差分データの配信履歴を、ナビゲーション装置2ごと(ユーザごと)に蓄積するためのデータベースである。
ユーザ履歴管理部14は、ユーザ配信履歴DB13に蓄積されている配信履歴を差分データの配信ごとに更新する処理や、不要になった配信履歴を削除する処理などを行う。ここで、不要になった配信履歴とは、例えば、最新の地図データがメンテナンス版地図データとしてDVDやSDカードなどのメディアでユーザに配布されることにより、それ以前の差分データがナビゲーション装置2の地図データに反映された場合などが挙げられる。
【0036】
経路探索部15は、ナビゲーション装置2で経路探索処理を開始するための操作がユーザによって行われると、そのナビゲーション装置2から経路探索処理に必要な情報(現在地や目的地などの探索条件)を受信して、最新の地図データ(すべての差分データ)を用いた経路探索処理を行う。
【0037】
差分データ抽出部16は、差分情報DB12に蓄積されている差分データの中から、ナビゲーション装置2へ配信すべき差分データを抽出する。例えば、経路探索部15による経路探索処理の処理結果に基づいて差分データを抽出する処理や、ユーザ配信履歴DB13に蓄積されている差分データの配信履歴に基づいて、ナビゲーション装置2へ配信済みの差分データを除外する処理などを行う。
【0038】
配信制御部17は、ネットワークI/F11を介したナビゲーション装置2との通信のための制御を行う。具体的には、差分データ抽出部16によって抽出された差分データをナビゲーション装置2へ配信する処理を行うとともに、ユーザ配信履歴DB13に蓄積されている配信履歴の更新などをユーザ履歴管理部14に指示する。また、ナビゲーション装置2から経路探索処理に必要な情報を受信し、受信した情報に基づく経路探索処理を経路探索部15に指示する。
【0039】
なお、ナビゲーション装置2は、差分地図配信サーバ1へ送信する情報に、ナビゲーション装置2ごとに固有の識別情報(ユーザID)を含めて送信するように構成されており、差分地図配信サーバ1は、受信した情報に含まれるユーザIDに基づいて複数のユーザ(複数のナビゲーション装置2)を識別する。
【0040】
[3.ナビゲーション装置の構成]
次に、ナビゲーション装置2の具体的な構成について説明する。図1に示すように、ナビゲーション装置2は、ネットワークインタフェース(以下「ネットワークI/F」という。)21と、ベース地図記憶部22と、差分データ記憶部23と、差分マージ部24と、差分管理部25と、ナビゲーション処理部26と、ヒューマンマシンインタフェース部(以下「HMI部」という。)27と、配信要求部28とを備える。
【0041】
ネットワークI/F21は、無線通信網(携帯電話網)を介して差分地図配信サーバ1と無線通信を行うためのインタフェースである。
ベース地図記憶部22には、地図データが記憶されている。この地図データにおいて、地図上の道路はリンク単位で表現され、これらリンク及びリンク同士の接続点であるノードによって道路ネットワークが表現されている。そして、地図データには、各リンクや各ノードについての情報として、交通規制、リンク形状、道路種別、幅員、車線数、道路構造、制限速度、誘導用画像など、種々の情報が含まれている。
【0042】
差分データ記憶部23には、差分地図配信サーバ1から受信した差分データが蓄積(記憶)される。
差分マージ部24は、ベース地図記憶部22に記憶されている地図データをベース(基礎)として、差分データ記憶部23に蓄積されている差分データをその地図データにマージすることで、差分データが反映された地図データを生成する。そして、差分マージ部24は、生成した地図データをナビゲーション処理部26へ提供する。
【0043】
差分管理部25は、ベース地図記憶部22に記憶されている地図データが、メンテナンス版地図データなどによって更新された場合に、その更新によって不要になった差分データを差分データ記憶部23から削除する処理を行うとともに、ネットワークI/F21を介して差分地図配信サーバ1へ通知する処理を行う。
【0044】
ナビゲーション処理部26は、差分マージ部24により生成された地図データを用いた種々の処理を実行する。具体的には、地図データの表す地図画像を表示する地図表示処理や、地図データの表す道路において探索条件に応じた経路を探索する経路探索処理や、地図データの表す道路において現在地から目的地へ誘導する誘導処理などを実行可能に構成されている。
【0045】
HMI部27は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力部と、地図画像などを表示するための表示部と、経路案内などの音声情報を出力するためのスピーカと、ユーザの音声を入力するためのマイクとを備えている。
【0046】
配信要求部28は、ネットワークI/F21を介した差分地図配信サーバ1との通信のための制御を行う。具体的には、差分データの配信を差分地図配信サーバ1へ要求する処理を行うとともに、差分地図配信サーバ1から受信した差分データを差分データ記憶部23に蓄積させる。
【0047】
[4.処理]
次に、本実施形態の地図更新システムで行われる地図データの更新処理について説明する。
【0048】
差分地図配信サーバ1では、実際の道路状況の変化などに伴い地図データに含まれる情報の一部が更新されると、その情報の更新分を表す差分データが、更新時期の情報とともに差分情報DB12に蓄積される。図2は、地図データの更新例であり、6箇所が更新されている(更新1〜6)。なお、細線は一般道路を示し、太線は高速道路を示している。
【0049】
更新1は、一般道路における区間1に存在していたバイパス路が通行止めになったことを示しており、更新時期は2010年10月である。更新2は、高速道路における区間2の道幅が広くなったこと及び道路改修により道路形状が変化したことを示しており、更新時期は2010年10月である。更新3は、一般道路における区間3をバイパスするバイパス路(区間4)が開通したことを示しており、更新時期は2010年11月である。更新4は、高速道路がB−IC(インターチェンジ)からC−ICまで延伸して区間5が形成されたことを示しており、更新時期は2010年12月である。更新5は、C−ICが開通したことを示しており、更新時期は2010年12月である。更新6は、C−ICのイメージ図(誘導処理用の画像)が追加されたことを示しており、更新時期は2010年12月である。
【0050】
差分地図配信サーバ1は、このように更新された情報を差分データとしてナビゲーション装置2へ配信する。具体的には、ナビゲーション装置2ごとに、土地勘のある自宅周辺(例えば自宅を中心とする所定距離以内の範囲)や、自宅のある都道府県などが、周辺エリアとして設定されている。そして、差分地図配信サーバ1は、周辺エリア内の差分データについては、アクセサリスイッチ(ACCスイッチ)がオン又はオフにされた時点や、決まった時刻など、所定のタイミングで、未配信の差分データをすべて配信する。
【0051】
一方、差分地図配信サーバ1は、遠方エリア(周辺エリア以外のエリア)内の差分データについては、すべての差分データを配信するのではなく、ナビゲーション装置2における地図データの利用状況に応じて、そのナビゲーション装置2が必要とする差分データをリアルタイムで配信する。特に、本実施形態の地図更新システムでは、同じ時期に発生した同じリンク又はノードについての情報の更新分を表す差分データであっても、その種類に応じて配信する時期を異ならせることができるようにしている。
【0052】
すなわち、差分情報DB12に蓄積される差分データは、その内容に応じて、ネットワーク変更(以下「NW変更」という。)、形状変更、属性変更及び誘導情報変更といった異なる種類に分類される。具体的には、リンクやノードの追加又は削除、交通規制(例えば、通行禁止や右左折禁止等)の変更を示す差分データは、NW変更に分類される。また、リンク自体の形状の変更を示す差分データは、形状変更に分類される。また、道路種別(例えば、高速道路や国道等)、幅員、車線数、道路構造(例えば、橋やトンネルや高架等)、制限スピードなどの変更を示す差分データは、属性変更に分類される。また、イメージ図、案内音声(例えば、方面やICや道路名称等)、交差点のレーン図などの変更を示す差分データは、誘導情報変更に分類される。このような分類によれば、同じ時期に発生した同じリンク又はノードについての情報の更新であっても、異なる種類の差分データに分類され得る。
【0053】
例えば、図2に示す更新1でバイパス路が通行止めになったことを示す差分データ、更新3でバイパス路が開通したことを示す差分データ、更新4で高速道路が延伸したことを示す差分データ、及び、更新5でC−ICが開通したことを示す差分データは、NW変更に分類される。また、更新2で道幅が広くなったことを示す差分データは、属性変更に分類され、更新2で道路改修により道路形状が変化したことを示す差分データは、形状変更に分類される。また、更新6でイメージ図が追加されたことを示す差分データは、誘導情報変更に分類される。
【0054】
そして、差分地図配信サーバ1は、ナビゲーション装置2に記憶されている地図データが、地図表示処理(閲覧)に利用されている状態、経路探索処理に利用されている状態、経路探索後の誘導処理に利用されている状態、といった地図データの利用状況に応じて、そのナビゲーション装置2で用いられる種類の差分データをリアルタイムで配信する。
【0055】
具体的には、図3に示すように、NW変更に分類された差分データは、地図データの利用状況に関係なく無条件で配信される。これに対し、属性変更に分類された差分データは、経路探索処理で必要となった場合に配信され、誘導情報変更に分類された差分データは、誘導処理で必要となった場合に配信される。つまり、経路探索処理を実行しようとするタイミングでは、経路探索処理に用いられる種類の差分データを優先して配信し、経路探索処理に用いられない種類の差分データの配信を抑制する。同様に、誘導処理を実行しようとするタイミングでは、誘導処理に用いられる種類の差分データを優先して配信し、誘導処理に用いられない種類の差分データの配信を抑制する。
【0056】
また、形状変更に分類された差分データは、単独では配信されず、他の差分データを地図データに反映させる場合に、地図データにおける整合をとるために必要となった場合に配信される。
【0057】
この点について、具体例を挙げて説明する。図4は、リンク及びノードで表現された道路ネットワークの更新例であり、2010年春を基礎として、2010年秋に4箇所が更新され(更新1〜4)、その後の2011年春にも4箇所が更新されている(更新1〜4)。
【0058】
2010年秋の更新において、更新1は、直列に接続された3本のリンクからなるグループについての情報であって、各リンクの属性変更を示す。更新2は、4本のリンク及びそれらの接続点である1個のノードからなるグループについての情報であって、ノードの位置変更及びそれに伴う各リンクの形状変更を示す。更新3は、1本のリンクについての情報であって、リンクの形状変更を示す。更新4は、T字状に接続された3本のリンク及び各リンクの端点である4個のノードからなるグループについての情報であって、道路開通に伴うリンク4本分の変更(既存リンク1本の削除及び新規リンク3本の追加)及びノード4個分の変更(新規ノード1個の追加及び既存ノード3個の情報更新)を示す。
【0059】
一方、2011年春の更新において、更新1は、縦横に接続された8本のリンク及び各リンクの端点である9個のノードからなるグループについての情報であって、道路開通に伴うリンク11本分の変更(既存リンク3本の削除及び新規リンク8本の追加)及びノード9個分の変更(新規ノード3個の追加及び既存ノード6個の情報更新)を示す。更新2及び更新3は、それぞれ、直列に接続された2本のリンク及び各リンクの端点である3個のノードからなるグループについての情報であって、歩道開通に伴うリンク3本分の変更(既存リンク1本の削除及び新規リンク2本の追加)及びノード3個分の変更(新規ノード1個の追加及び既存ノード2個の情報更新)を示す。更新4は、リンク1本及びその端点である2個のノードからなるグループについての情報であって、歩道開通に伴う歩道リンク1本の追加及び新規ノード2個の追加を示す。
【0060】
図4の例において、2010年秋の更新2及び更新3は、リンク自体の形状の変更を示すものであり、通常の精度のナビゲーション装置2では必要がないため、単独では配信しない。ただし、2010年秋の更新3の対象であるリンクに対し、2011年春の更新1でNW変更が発生しているため、2011年春の更新1を地図データに反映する場合には、地図データにおける整合をとるためにリンク形状の変更が必要になる。このため、2011年春の更新1を表す差分データを配信する際には、2010年秋の更新3を表す差分データも配信する必要がある。
【0061】
つまり、2011年春の更新1は、2010年秋の更新3を依存先とする依存関係にある。図5は、図4の例における各更新の依存先を示したものであり、この情報は差分情報DB12に記憶されている。2011年春の更新1は、前述した2010年秋の更新3及び2010年秋の更新4を依存先とする依存関係にある。つまり、2011年春の更新1を表す差分データを配信する際には、2010年秋の更新3及び更新4が合わせて配信される。また、2011年春の更新4は、2011年秋の更新2及び更新3を依存先とする依存関係にある。つまり、2011年春の更新4を表す差分データを配信する際には、2011年春の更新2及び更新3が合わせて配信される。
【0062】
例えば、2010年春の地図データを記憶するナビゲーション装置2において、A地点を出発地、B地点を目的地に設定した場合、2010年秋の更新2で形状が変更されたリンクを通過するが、更新2を表す差分データは不要であるため配信されない。一方、A地点を出発地、C地点を目的地に設定した場合には、2010年秋の更新1を表す差分データと、2011年春の更新1を表す差分データとが必要となる。加えて、2011年春の更新1の依存先である2011年秋の更新3及び更新4を表す差分データも必要となる。このため、これらの差分データが差分地図配信サーバ1からナビゲーション装置2へ配信される。
【0063】
なお、形状変更に分類される差分データであっても、高精度のナビゲーション装置2では地図データを用いた車両制御処理などに利用され得る。そこで、配信対象のナビゲーション装置2ごとに、形状変更に分類される差分データを利用するか否かをユーザ配信履歴DB13に記憶しておき、形状変更に分類される差分データを利用するナビゲーション装置2に対してはその差分データ単独であっても配信する。
【0064】
また、別の例として、歩道を表す差分データが挙げられる。すなわち、車両に着脱不能に装着されたタイプのナビゲーション装置2は、歩道では用いられないため、歩道を表す差分データ(例えば、図4に示す2011年春の更新2〜4を表す差分データ)は対象外のコンテンツとなる。このため、このようなタイプのナビゲーション装置2に対しては、歩道を表す差分データを抽出対象から除外し、単独では配信しないようにする。ただし、車外へ持ち出して徒歩でも使用可能なタイプのナビゲーション装置2のように、歩道でも用いられるものもある。そこで、配信対象のナビゲーション装置2ごとに、歩道を表す差分データを利用するか否かをユーザ配信履歴DB13に記憶しておき、歩道を表す差分データを利用するナビゲーション装置2に対してはその差分データ単独であっても配信する。なお、配信先のナビゲーション装置2で全く必要のない差分データ(対象外のコンテンツであって、配信対象の差分データとの間に依存関係を有しないものなど)については、抽出対象から除外し、配信しないようにする。
【0065】
また、差分地図配信サーバ1は、同一のナビゲーション装置2へ同一の差分データが重複して配信されないように、ユーザ配信履歴DB13に記憶されている差分データの配信履歴に基づいて、配信先のナビゲーション装置2へ配信済みの差分データを抽出対象から除外する。具体的には、ナビゲーション装置2ごとに、配信した差分データに固有の識別情報(差分データID)を付与する。差分データIDは、DVDやSDカードなどのメディアでユーザに配布されるメンテナンス版地図データ(例えば全国版や地域版)との関連を持ったIDとする。
【0066】
例えば図6に示すように、差分データIDは、差分データの属する都道府県を表す地域コードと、対応するメンテナンス版地図データの番号を表すメンテナンス版連番と、メンテナンス版地図データ以降にリリースされた回数を表す差分発行回数と、1回の差分リリース内の差分データの連番を表す差分連番とで構成される。
【0067】
そして、差分地図配信サーバ1は、ナビゲーション装置2ごとに、差分データの配信履歴を差分データIDでユーザ配信履歴DB13に蓄積する。そして、配信しようとする差分データの差分データIDとユーザ配信履歴DB13に蓄積されている差分データIDとを比較して、配信しようとする差分データが配信済みであるか否かを判定し、未配信の差分データを配信する。
【0068】
[5.地図表示処理に利用される差分データの配信]
次に、ナビゲーション装置2で地図表示処理が実行されている状態において、差分地図配信サーバ1及びナビゲーション装置2のそれぞれが実行する処理の一例について、図7のフローチャートを用いて説明する。なお、ここでは、表示されている地図画像において所望の場所(例えば経路探索用の目的地)を探すための操作がユーザによって行われている状態について説明する。表示されている地図画像において所望の場所を探す場合、ユーザは、まず、広域表示の地図画像をスクロールして大まかな場所を探し、次に、地図画像を拡大して、詳細表示の地図画像で正確な場所を特定する。
【0069】
ナビゲーション装置2のナビゲーション処理部26は、HMI部27の表示部に地図画像を広域表示する(S101)。この状態で、ナビゲーション処理部26は、地図画像をスクロールするためのスクロール操作(大まかな場所を探す操作)がHMI部27の入力部で行われたか否かを判定する(S102)。
【0070】
そして、ナビゲーション処理部26は、スクロール操作が行われたと判定した場合には(S102:YES)、スクロール後の地図画像の中心が遠方エリア内(例えば自宅のある都道府県外)に位置するか否かを判定する(S103)。そして、ナビゲーション処理部26は、スクロール後の地図画像の中心が遠方エリア内に位置すると判定した場合には(S103:YES)、差分地図配信サーバ1に差分データを要求する(S104)。具体的には、ナビゲーション処理部26は、地図表示処理に用いる差分データの要求であることを示す情報であって、スクロール後の地図画像の中心座標及び縮尺の情報が含まれた要求情報を、配信要求部28及びネットワークI/F21を介して差分地図配信サーバ1へ送信する。
【0071】
差分地図配信サーバ1の差分データ抽出部16は、ネットワークI/F11及び配信制御部17を介してナビゲーション装置2からの要求情報を受信すると、その要求情報に含まれる地図画像の中心座標及び縮尺の情報に基づいて、差分情報DB12に記憶されている複数種類の差分データの中から、地図表示処理に必要となる差分データを抽出する(S105)。なお、差分データの抽出方法の詳細は、前述したとおりであり、ここでは、表示される地図画像の領域内の差分データであって、NW変更に分類された未配信の差分データが抽出される。
【0072】
そして、差分データ抽出部16は、抽出した差分データを、配信制御部17及びネットワークI/F11を介して要求元のナビゲーション装置2へ配信する(S106)。なお、配信すべき差分データが存在しなければ、その旨をナビゲーション装置2へ通知する。
【0073】
ナビゲーション装置2の配信要求部28は、要求情報に対する応答として、差分地図配信サーバ1からの差分データをネットワークI/F21を介して受信すると、受信した差分データを差分データ記憶部23に蓄積させる(S107)。そして、ナビゲーション処理部26は、差分マージ部24により生成された地図データ(差分データ記憶部23に蓄積されている差分データをベース地図記憶部22に記憶されている地図データにマージした地図データ)を用いて、スクロール後の地図画像をHMI部27の表示部に表示する(S108)。
【0074】
つまり、差分地図配信サーバ1から差分データが受信された場合には、その差分データが反映された地図画像が表示される。なお、配信すべき差分データが存在しない旨が差分地図配信サーバ1から通知された場合や、前述の判定処理でスクロール後の地図画像の中心が遠方エリア内に位置しない(周辺エリア内に位置する)と判定した場合には(S103:NO)、差分データ記憶部23に既に蓄積されていた差分データが反映された地図画像が表示される。
【0075】
このように地図画像を表示した後、又は、前述の判定処理でスクロール操作が行われていないと判定した場合(S102:NO)、ナビゲーション処理部26は、地図画像の縮尺を詳細表示に変更するための拡大操作がHMI部27の入力部で行われたか否かを判定する(S109)。そして、拡大操作が行われていないと判定した場合には(S109:NO)、前述した処理(S102〜S108)が繰り返される。
【0076】
一方、ナビゲーション処理部26は、拡大操作が行われたと判定した場合には(S109:YES)、詳細表示に変更後の地図画像の中心が遠方エリア内に位置するか否かを判定する(S110)。そして、ナビゲーション処理部26は、詳細表示に変更後の地図画像の中心が遠方エリア内に位置すると判定した場合には(S110:YES)、差分地図配信サーバ1に差分データを要求する(S111)。具体的には、ナビゲーション処理部26は、地図表示処理に用いる差分データの要求であることを示す情報であって、詳細表示に変更後の地図画像の中心座標及び縮尺の情報が含まれた要求情報を、配信要求部28及びネットワークI/F21を介して差分地図配信サーバ1へ送信する。
【0077】
差分地図配信サーバ1の差分データ抽出部16は、ネットワークI/F11及び配信制御部17を介してナビゲーション装置2からの要求情報を受信すると、その要求情報に含まれる地図画像の中心座標及び縮尺の情報に基づいて、差分情報DB12に記憶されている複数種類の差分データの中から、地図表示処理に必要となる差分データを抽出する(S112)。そして、差分データ抽出部16は、抽出した差分データを、配信制御部17及びネットワークI/F11を介して要求元のナビゲーション装置2へ配信する(S113)。
【0078】
ナビゲーション装置2の配信要求部28は、要求情報に対する応答として、差分地図配信サーバ1からの差分データをネットワークI/F21を介して受信すると、受信した差分データを差分データ記憶部23に蓄積させる(S114)。そして、ナビゲーション処理部26は、差分マージ部24により生成された地図データを用いて、詳細表示に変更後の地図画像をHMI部27の表示部に表示する(S115)。
【0079】
続いて、ナビゲーション処理部26は、地図画像をスクロールするためのスクロール操作(正確な場所を特定する操作)がHMI部27の入力部で行われたか否かを判定する(S116)。
【0080】
そして、ナビゲーション処理部26は、スクロール操作が行われたと判定した場合には(S116:YES)、スクロール後の地図画像の中心が遠方エリア内に位置するか否かを判定する(S110)。そして、ナビゲーション処理部26は、スクロール後の地図画像の中心が遠方エリア内に位置すると判定した場合には(S110:YES)、広域表示の場合と同様、差分地図配信サーバ1に差分データを要求する(S111)。
【0081】
差分地図配信サーバ1の差分データ抽出部16は、ネットワークI/F11及び配信制御部17を介してナビゲーション装置2からの要求情報を受信すると、その要求情報に含まれる地図画像の中心座標及び縮尺の情報に基づいて、差分情報DB12に記憶されている複数種類の差分データの中から、地図表示処理に必要となる差分データを抽出する(S112)。そして、差分データ抽出部16は、抽出した差分データを、配信制御部17及びネットワークI/F11を介して要求元のナビゲーション装置2へ配信する(S113)。
【0082】
ナビゲーション装置2の配信要求部28は、要求情報に対する応答として、差分地図配信サーバ1からの差分データをネットワークI/F21を介して受信すると、受信した差分データを差分データ記憶部23に蓄積させる(S114)。そして、ナビゲーション処理部26は、差分マージ部24により生成された地図データを用いて、スクロール後の地図画像をHMI部27の表示部に表示する(S115)。その後、ユーザが所望の場所を見つけると、スクロール操作が終了する(S116:NO)。
【0083】
以上のように、差分地図配信サーバ1は、ナビゲーション装置2で地図表示処理に必要となる差分データを、そのナビゲーション装置2へ配信する。ただし、表示される地図画像の領域内の差分データであって、NW変更に分類された未配信の差分データであっても、縮尺によっては地図画像に用いられない情報も存在し得るため、そのような情報は抽出しないようにしてもよい。例えば、図2に示す更新5でC−ICが開通したことを示す差分データのように、広域表示の地図画像では小さいため表示されない差分データについては、縮尺に応じて抽出しないようにすることができる。
【0084】
[6.経路探索処理に利用される差分データの配信]
次に、ナビゲーション装置2で経路探索処理を開始するための操作がユーザによって行われた場合に、差分地図配信サーバ1及びナビゲーション装置2のそれぞれが実行する処理の一例について、図8のフローチャートを用いて説明する。なお、経路探索処理の探索条件として設定される目的地は、図7で説明したように地図表示処理で地図画像において特定されたものであってもよく、また、POI情報(Point of Interest:施設情報)などを手掛かりに検索されたものであってもよい。
【0085】
ナビゲーション装置2のナビゲーション処理部26は、経路探索処理を開始するための操作がHMI部27の入力部で行われたことを検出すると(S201)、差分地図配信サーバ1に差分データを要求する(S202)。具体的には、ナビゲーション処理部26は、経路探索処理に用いる差分データの要求であることを示す情報であって、経路探索処理に必要な情報(現在地や目的地などの探索条件)が含まれた要求情報を、配信要求部28及びネットワークI/F21を介して差分地図配信サーバ1へ送信する。なお、現在地及び目的地を表す情報としては、例えば、緯度、経度などの座標(位置情報)が用いられる。また、探索条件としては、現在地及び目的地以外にも、例えば、一般道路優先、高速道路優先、距離優先といった優先条件や、経由地などが挙げられる。
【0086】
差分地図配信サーバ1の経路探索部15は、ネットワークI/F11及び配信制御部17を介してナビゲーション装置2からの差分データの要求情報を受信すると、その要求情報に含まれる探索条件に基づいて、最新の地図データ(差分情報DB12に蓄積されているすべての差分データが反映された地図データ)を用いた経路探索処理を行う(S203)。そして、差分地図配信サーバ1の差分データ抽出部16は、探索された経路上の差分データであって、NW変更又は属性変更に分類された未配信の差分データを、差分情報DB12に記憶されている複数種類の差分データの中から抽出する(S204)。そして、差分データ抽出部16は、抽出した差分データを、配信制御部17及びネットワークI/F11を介して要求元のナビゲーション装置2へ配信する(S205)。例えば図2の例で、B−ICからC−ICまで高速道路を利用して現在地から目的地へ至る経路が探索された場合、更新1、更新4及び更新5の差分データが配信される。
【0087】
ナビゲーション装置2の配信要求部28は、要求情報に対する応答として、差分地図配信サーバ1からの差分データをネットワークI/F21を介して受信すると、受信した差分データを差分データ記憶部23に蓄積させる(S206)。そして、ナビゲーション処理部26は、差分マージ部24により生成された地図データを用いて、探索条件に基づく経路探索処理を実行する(S207)。なお、差分地図配信サーバ1によって探索された経路の情報を差分地図配信サーバ1から受信して利用するようにしてもよい。
【0088】
そして、ナビゲーション処理部26は、探索された経路に沿った誘導処理を開始するための操作がHMI部27の入力部で行われたことを検出すると(S208)、ナビゲーション処理部26は、ナビゲーション装置2を搭載した車両等が一定距離移動したか否かを判定する(S209)。そして、一定距離移動したと判定した場合に、差分地図配信サーバ1に差分データを要求する(S210)。具体的には、ナビゲーション処理部26は、誘導処理に用いる差分データの要求であることを示す情報であって、現在地の座標及び表示されている地図画像の縮尺の情報が含まれた要求情報を、配信要求部28及びネットワークI/F21を介して差分地図配信サーバ1へ送信する。
【0089】
差分地図配信サーバ1の差分データ抽出部16は、ネットワークI/F11及び配信制御部17を介してナビゲーション装置2からの要求情報を受信すると、その要求情報に含まれる現在地の座標及び地図画像の縮尺の情報に基づいて、誘導処理に必要となる差分データ(現在地から所定距離先までの誘導経路上の差分データであって、NW変更又は誘導情報変更に分類された未配信の差分データ)を、差分情報DB12に記憶されている複数種類の差分データの中から抽出する(S211)。なお、誘導経路は、前述した経路探索処理(S203)から特定される。また、ここでいう所定距離先までの誘導経路は、例えば、受信した縮尺で表示される地図画像の領域内の誘導経路として設定してもよい。
【0090】
そして、差分データ抽出部16は、抽出した差分データを、配信制御部17及びネットワークI/F11を介して要求元のナビゲーション装置2へ配信する(S212)。例えば図2の例で、B−ICからC−ICまで高速道路を利用して現在地から目的地へ至る経路に従い誘導処理が行われている場合、現在地に応じて更新6の差分データが配信される。
【0091】
ナビゲーション装置2の配信要求部28は、要求情報に対する応答として、差分地図配信サーバ1からの差分データをネットワークI/F21を介して受信すると、受信した差分データを差分データ記憶部23に蓄積させる(S213)。そして、ナビゲーション処理部26は、差分マージ部24により生成された地図データを用いて、誘導処理を実行する(S214)。
【0092】
その後、目的地に到着するまで前述した処理(S209〜S214)が繰り返され(S215:NO)、目的地に到着すると誘導処理が終了する(S215:YES)。
つまり、誘導処理の実行中は、定期的に差分データの要求を行う。なお、差分データの要求を行うタイミングは一定距離移動するごとに限ったものではなく、例えば、一定時間が経過するごとに要求するようにしてもよい。
【0093】
[7.効果]
以上説明したように、本実施形態の地図更新システムによれば、同じ時期に同じリンク又はノードに発生した更新情報を、NW変更、形状変更、属性変更、誘導情報変更等、地図データの利用用途(更新情報の種別)に応じて分類される複数種類の差分データに分けて無線配信することができる。このため、同じ時期に同じリンク又はノードに発生した情報の更新を同じタイミングで無線配信する従来の構成と比較して、差分データを無線配信するための通信量を抑制することができる。
【0094】
特に、本実施形態の地図更新システムによれば、ナビゲーション装置2のユーザが地図データを利用するシーンに合わせて、必要となる差分データを無線配信することができる。例えば、ナビゲーション装置2が経路探索処理を実行する場合には、形状変更や誘導情報に分類される差分データは用いられないため、こうした差分データを配信することは通信量を不要に増加させることになる。このため、本実施形態の地図更新システムでは、ナビゲーション装置2が、地図データを用いた処理を実行する場合に、実行しようとする処理を表す要求情報を差分地図配信サーバ1へ送信し、差分地図配信サーバ1が、ナビゲーション装置2から受信した要求情報の表す処理に用いられる種類の差分データを抽出して配信する。そして、ナビゲーション装置2は、受信した差分データが反映された地図データを用いて処理を行う。このような仕組みにより、差分地図配信サーバ1は、ナビゲーション装置2が実行しようとする処理に応じて、その処理に用いられる種類の差分データをリアルタイムで配信することができる。例えば、ナビゲーション装置2が経路探索処理を実行しようとするタイミングで、その経路探索処理に用いられる種類の差分データを配信し、誘導処理を実行しようとするタイミングで、その誘導処理に用いられる種類の差分データを配信することができる。したがって、ナビゲーション装置2ですぐに用いられない余分な差分データの配信を効果的に抑制することができ、その結果、地図更新の時間が短時間に抑えられ、リアルタイムでの地図更新が実現される。
【0095】
また、本実施形態の地図更新システムでは、差分地図配信サーバ1が、経路探索処理を表す要求情報を受信すると、その要求情報に含まれる探索条件に応じた経路を探索し、探索した経路上の差分データを抽出対象とする。このため、ナビゲーション装置2において経路探索処理で探索される経路上の差分データを配信することができる。
【0096】
また、本実施形態の地図更新システムでは、差分地図配信サーバ1が、誘導処理を表す要求情報を受信すると、その要求情報に含まれる現在地の座標及び地図画像の縮尺に基づく現在地を基準とする領域内(上記例では、現在地から所定距離先までの誘導経路上)の差分データを抽出対象とする。このため、ナビゲーション装置2において誘導処理に用いられる差分データを配信することができる。特に、目的地に到達するまでの誘導処理に必要となる差分データを複数回に分けて配信することで、目的地に到達する前に誘導経路から離脱した場合にも無駄な差分データの配信を抑えることができる。
【0097】
また、本実施形態の地図更新システムでは、差分地図配信サーバ1が、地図表示処理を表す要求情報を受信すると、その要求情報に含まれる表示態様情報(上記例では、地図画像の中心座標及び縮尺の情報)に基づいて表示される地図画像の領域を設定し、設定した領域内の差分データを抽出対象とする。このため、ナビゲーション装置2において地図表示処理に用いられる差分データを配信することができる。
【0098】
また、本実施形態の地図更新システムでは、差分地図配信サーバ1が、ナビゲーション装置2ごとに差分データの配信履歴を記憶し、その配信履歴に基づいて、配信先のナビゲーション装置2へ配信済みの差分データを抽出対象から除外する。このため、配信先のナビゲーション装置2へ配信済みの差分データが重複して配信されてしまうことを生じにくくすることができる。
【0099】
また、本実施形態の地図更新システムでは、差分地図配信サーバ1が、差分データごとに、当該差分データを地図データに反映させるために必要となる他の差分データとの依存関係を記憶し、差分データを抽出する場合には、その差分データが依存先とする差分データも抽出する。このため、単独では配信する必要のない差分データを配信しないことによって、他の差分データを地図データに反映した場合に、地図データにおける整合がとれなくなってしまうことを生じにくくすることができる。
【0100】
また、本実施形態の地図更新システムでは、差分地図配信サーバ1が、地図データに含まれる情報のうち利用されない情報の種類をナビゲーション装置2ごとに記憶し、配信先のナビゲーション装置2で利用されない差分データについては単独では配信しない(抽出対象から除外する)。このため、配信される差分データのデータ量を抑えることができ、通信量を抑制することができる。
【0101】
[8.特許請求の範囲との対応]
なお、本実施形態では、差分地図配信サーバ1が地図データ配信装置に相当し、ナビゲーション装置2が電子機器に相当する。また、ネットワークI/F11及び配信制御部17が配信手段及び処理情報受信手段に相当し、差分情報DB12が差分記憶手段に相当し、ユーザ配信履歴DB13が履歴記憶手段及び機器情報記憶手段に相当し、差分データ抽出部16が抽出手段に相当する。また、ネットワークI/F21及び配信要求部28が処理情報送信手段に相当し、ナビゲーション処理部26が処理手段に相当する。また、リンク及びノードが道路要素に相当し、地図表示処理、経路探索処理及び誘導処理が地図利用処理に相当し、要求情報が処理実行情報に相当し、ある差分データが依存先とする差分データが、その差分データの関連差分データに相当する。
【0102】
[9.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0103】
(1)上記実施形態では、配信先のナビゲーション装置2で利用されない差分データについては単独では配信せず(抽出対象から除外し)、依存関係にある他の差分データを配信する場合に合わせて配信する例について説明したが、これに代えて、時期を遅らせて配信するようにしてもよい。つまり、配信先のナビゲーション装置2で利用されない種類の情報を表す差分データを、配信先のナビゲーション装置2で利用される種類の情報を表す差分データよりも、遅い時期に配信する。例えば、夜中に自動更新するようにすれば、通常走行中の通信量を抑制することができる。
【0104】
(2)上記実施形態では、ナビゲーション装置2に配信したナビゲーション装置2ごと(ユーザごと)の差分データの配信履歴が、差分地図配信サーバ1側で管理される構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、ナビゲーション装置2側で、当該ナビゲーション装置2が取得済みの差分データ(配信履歴)を管理し、差分地図配信サーバ1へ差分データを要求する場合には、ナビゲーション装置2から差分地図配信サーバ1へ配信履歴(差分データのバージョンなど)の情報を送信するようにしてもよい。このようにすれば、差分地図配信サーバ1は、ナビゲーション装置2から配信履歴を受信し、受信した配信履歴に基づいて、配信済みの差分データを抽出対象から除外することができる。しかも、この構成によれば、差分地図配信サーバ1が配信したにもかかわらず、ナビゲーション装置2側で正常に取得できなかった(例えば受信やマージに失敗した)差分データが、再度配信されるようにすることができる。なお、この場合、差分地図配信サーバ1のネットワークI/F11及び配信制御部17が履歴受信手段に相当する。
【0105】
(3)上記実施形態では、差分データの分類として、NW変更、形状変更、属性変更及び誘導情報変更を例示したが、これ以外の分類であってもよい。例えば、VICS(Vehicle Information and Communication System:登録商標)やRDS−TMC(Radio Data System - Traffic Message Channel)といった交通情報配信システムの定義(例えばデータを提供するために紐づけられた道路情報)の変更を示す差分情報を、インフラ情報変更に分類してもよい。そして、インフラ情報変更に分類される差分データは、例えば、該当エリアの走行中や、経路探索を行う場合などに配信されるようにしてもよい。
【0106】
(4)上記実施形態では、地図データを用いた処理を行う電子機器としてナビゲーション装置2を例示したが、これに限定されるものではなく、ナビゲーション装置以外の電子機器にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1…差分地図配信サーバ、2…ナビゲーション装置、11…ネットワークI/F、12…差分情報DB、13…ユーザ配信履歴DB、14…ユーザ履歴管理部、15…経路探索部、16…差分データ抽出部、17…配信制御部、21…ネットワークI/F、22…ベース地図記憶部、23…差分データ記憶部、24…差分マージ部、25…差分管理部、26…ナビゲーション処理部、27…HMI部、28…配信要求部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の道路要素によって道路ネットワークが表現された地図データを記憶するとともに前記地図データを用いた地図利用処理を実行する電子機器へ、前記地図データに含まれる情報の更新分を表す差分データを無線配信するサーバとして機能する地図データ配信装置であって、
所定の道路要素についての更新情報を異なる種類に分類され得る複数種類の差分データとして記憶する差分記憶手段と、
前記差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された差分データを前記配信先の電子機器へ無線配信する配信手段と、
を備えることを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図データ配信装置であって、
前記電子機器が実行しようとする地図利用処理を表す処理実行情報を、前記電子機器から受信する処理情報受信手段を更に備え、
前記抽出手段は、前記処理情報受信手段により前記処理実行情報が受信された場合に、前記差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、受信した処理実行情報の表す地図利用処理に用いられる種類の差分データを、前記配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データとして抽出する
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の地図データ配信装置であって、
前記電子機器は、前記地図データの表す道路において探索条件に応じた経路を探索する経路探索処理を、前記地図利用処理として実行可能であり、
前記複数種類の差分データには、前記経路探索処理に用いられる種類の差分データと前記経路探索処理に用いられない種類の差分データとが含まれており、
前記抽出手段は、前記処理情報受信手段により前記経路探索処理を表す処理実行情報が受信された場合に、前記差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、前記経路探索処理に用いられる種類の差分データを、前記配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データとして抽出する
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地図データ配信装置であって、
前記経路探索処理を表す処理実行情報には、前記探索条件が含まれており、
前記抽出手段は、前記処理情報受信手段により前記経路探索処理を表す処理実行情報が受信された場合には、前記処理実行情報に含まれる探索条件に応じた経路を探索し、探索した経路上の差分データを抽出対象とする
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の地図データ配信装置であって、
前記電子機器は、前記地図データの表す道路において現在地から目的地へ誘導する誘導処理を、前記地図利用処理として実行可能であり、
前記複数種類の差分データには、前記誘導処理に用いられる種類の差分データと前記誘導処理に用いられない種類の差分データとが含まれており、
前記抽出手段は、前記処理情報受信手段により前記誘導処理を表す処理実行情報が受信された場合に、前記差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、前記誘導処理に用いられる種類の差分データを、前記配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データとして抽出する
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の地図データ配信装置であって、
前記誘導処理を表す処理実行情報には、前記現在地の位置情報が含まれており、
前記抽出手段は、前記処理情報受信手段により前記誘導処理を表す処理実行情報が受信された場合には、前記処理実行情報に含まれる現在地の位置情報に基づいて現在地を基準とする領域を設定し、設定した領域内の差分データを抽出対象とする
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の地図データ配信装置であって、
前記電子機器は、地図データの表す地図画像を表示する地図表示処理を、前記地図利用処理として実行可能であり、
前記地図表示処理を表す処理実行情報には、地図画像の表示態様を表す表示態様情報が含まれており、
前記抽出手段は、前記処理情報受信手段により前記地図表示処理を表す処理実行情報が受信された場合には、前記処理実行情報に含まれる表示態様情報に基づいて表示される地図画像の領域を設定し、設定した領域内の差分データを抽出対象とする
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の地図データ配信装置であって、
前記電子機器ごとに前記差分データの配信履歴を記憶する履歴記憶手段を更に備え、
前記抽出手段は、前記履歴記憶手段により記憶されている配信履歴に基づいて、配信先の電子機器へ配信済みの差分データを抽出対象から除外する
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の地図データ配信装置であって、
前記電子機器に配信した差分データの配信履歴を、前記電子機器から受信する履歴受信手段を更に備え、
前記抽出手段は、前記履歴受信手段により受信された配信履歴に基づいて、配信先の電子機器へ配信済みの差分データを抽出対象から除外する
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の地図データ配信装置であって、
前記差分記憶手段は、前記差分データごとに、当該差分データを前記地図データに反映させるために必要となる他の差分データである関連差分データを記憶し、
前記抽出手段は、前記差分記憶手段から差分データを抽出する場合に、その差分データの関連差分データも抽出する
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の地図データ配信装置であって、
前記地図データに含まれる情報のうち利用されない情報の種類を前記電子機器ごとに記憶する機器情報記憶手段を備え、
前記抽出手段は、配信先の電子機器で利用されない種類の情報を表す差分データを抽出対象から除外する
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項12】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の地図データ配信装置であって、
前記地図データに含まれる情報のうち利用されない情報の種類を前記電子機器ごとに記憶する機器情報記憶手段を備え、
前記抽出手段は、配信先の電子機器で利用されない種類の情報を表す差分データを、配信先の電子機器で利用される種類の情報を表す差分データよりも、遅い時期に配信する
ことを特徴とする地図データ配信装置。
【請求項13】
複数の道路要素によって道路ネットワークが表現された地図データを記憶するとともに前記地図データを用いた地図利用処理を実行する電子機器であって、
前記地図利用処理を実行する場合に、実行しようとする地図利用処理を表す処理実行情報を、前記地図データに含まれる情報の更新分を表す差分データを無線配信するサーバへ送信する処理情報送信手段と、
所定の道路要素についての更新情報を異なる種類に分類され得る複数種類の差分データの中から、前記処理情報送信手段により送信された処理実行情報に対する応答として、その処理実行情報の表す地図利用処理に用いられる種類の差分データを前記サーバから受信した場合に、受信した差分データが反映された地図データを用いて前記地図利用処理を行う処理手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項14】
複数の道路要素によって道路ネットワークが表現された地図データを記憶するとともに前記地図データを用いた地図利用処理を実行する電子機器と、
前記地図データに含まれる情報の更新分を表す差分データを前記電子機器へ無線配信するサーバと、
を備える地図更新システムであって、
前記電子機器は、
前記地図利用処理を実行する場合に、実行しようとする地図利用処理を表す処理実行情報を前記サーバへ送信する処理情報送信手段と、
前記処理実行情報に対する応答として前記サーバから前記差分データを受信した場合に、受信した差分データが反映された地図データを用いて前記地図利用処理を行う処理手段と、を備え、
前記サーバは、
所定の道路要素についての更新情報を異なる種類に分類され得る複数種類の差分データとして記憶する差分記憶手段と、
前記電子機器から前記処理実行情報を受信する処理情報受信手段と、
前記処理情報受信手段により前記電子機器からの処理実行情報が受信された場合に、前記差分記憶手段により記憶されている複数種類の差分データの中から、受信した処理実行情報の表す地図利用処理に用いられる種類の差分データを、配信先の電子機器へ配信すべき種類の差分データとして抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された差分データを前記配信先の電子機器へ無線配信する配信手段と、を備える
ことを特徴とする地図更新システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−72787(P2013−72787A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213004(P2011−213004)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】