説明

地図処理装置

【課題】施設が密集する一又は複数の地域をユーザに一覧させることができなかったこと。
【解決手段】地図のスケールSが「800m」である場合、施設密度が表示される。他方、スケールSが「50m」である場合、ランドマークが表示される。ここで、スケールSが「800m」である地図は、スケールSが「50m」である地図よりも広域な地図である。つまり、本実施の形態では、スケールSが基準スケールS0よりも大きければ、施設密度が表示され、他方、スケールSが基準スケールS0より大きくなければ、ランドマークが表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図を処理する地図処理装置に関するものであって、より詳しくは、ロケータ装置やナビゲーション装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、縮尺が1/1000〜1/4万である地図とともにランドマークを表示するものが知られている(非特許文献1)。
【0003】
他方、縮尺が1/1万〜1/4万である地図では、複数のランドマークが重なってしまうことが多い。この課題を解決するための技術として、特許文献1に記載のものは、POIアイコンが重なる又は密集する場合に、1つの代表アイコンを表示している。また、特許文献2に記載のものは、表示画面を複数の区画に分割し、それぞれの区画に存在するランドマークの個数を計数し、区画境界線と区画内の各ランドマークの個数を重ねて表示している。
【非特許文献1】HDDカーナビステーション(CN−HDS955MD/CN−HDS935MD/CN−HD905D)取扱説明書(松下電器産業株式会社、2005年発行、第41頁)
【特許文献1】特開2002−340588号公報(図8及び図9)
【特許文献2】特開2004−191218号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザは、特定の種別に係る施設を探す場合、その施設が存在する地域を大まかに把握してから特定の地域について詳しく知ることを欲する。例えば、ラーメンを食べたいユーザは、ラーメン店が密集する一又は複数の地域を把握し、それらの地域の何れかについてラーメン店の所在を知ろうとする。ところが、背景技術では、地図縮尺の分母が閾値(非特許文献1では閾値が4万である)よりも大きい場合、ランドマーク及びランドマークの個数は表示されないので、施設が密集する一又は複数の地域をユーザに一覧させることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る地図処理装置は、表示装置に対して地図を表示させる地図処理装置であって、前記表示装置に対して施設密度を表示させるか否かを前記地図の縮尺を用いて制御する処理部を備えるものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0006】
「表示装置」とは、画像を表示する装置である。「表示装置」は、「地図処理装置」と一体不可分である(内蔵される)か否かを問わない。
【0007】
「施設密度を表示」とは、単位領域あたりの施設数をその単位領域に相当する表示領域で表示すること及び単位領域あたりの施設数をその単位領域を代表する代表座標に相当する表示座標で表示することを含む概念である。
【0008】
単位領域は、緯度経度等が考慮されて決まる。画像は、数字や図形等である。図形に係る色、濃度又は模様は、施設密度に応じて異なる。図形に係る形状は、2次元形状又は3次元形状である。「施設密度」は、「地図」に重畳表示されてもよい。
【0009】
「地図の縮尺」とは、広く、スケール及び狭義の縮尺を含む概念である。「地図の縮尺」がスケールである場合、例えば、「x(m)/表示上の単位距離」との表現が採用され、xが大きいほど広域になる。他方、「地図の縮尺」が狭義の縮尺である場合、「1/y」との表現が採用され、「y」が大きいほど広域になる。
【0010】
「に応じて」とは、地図の縮尺と基準縮尺との比較で制御内容を決することを含む概念である。例えば、縮尺がスケールである場合、地図のスケールが基準スケールよりも大きければ、施設密度が表示される。
【0011】
「処理部」とは、ハードウエア又はハードウエアとソフトウエアとの協働によって処理を実現するための部位である。
【0012】
「処理部」は、好ましくは、「前記表示装置に対して前記施設密度を前記地図に重畳表示させ、他方、個々の施設に係る図形を前記地図よりも狭域な他の地図に重畳表示させる」ものである。ここで、「個々の施設に係る図形」としては、いわゆるランドマーク(HDDカーナビステーション(CN−HDS955MD/CN−HDS935MD/CN−HD905D)取扱説明書(松下電器産業株式会社、2005年発行、第41頁)を参照)であって、例えば、レストランやコンビニエンスストア等のロゴなどである。また、「重畳表示」においては、施設密度の背景で表示されている地図が透過されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、施設が密集する一又は複数の地域をユーザに一覧させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る地図処理装置を実施するための最良の形態は、図1ないし図5で示される。
【0015】
<表示例>本実施の形態に係る表示例は、図1で示される。本実施の形態では、地図の縮尺は、スケール表示である。スケールSが「800m」である場合、施設密度(その程度は色で表現される)が表示される(図1(a)を参照)。他方、スケールSが「50m」である場合、ランドマーク(「施設に係る図形」に相当する)が表示される(図1(b)を参照)。ここで、スケールSが「800m」である地図は、スケールSが「50m」である地図よりも広域な地図である。つまり、本実施の形態では、スケールSが基準スケールS0よりも大きければ、施設密度が表示され(図1(a)を参照)、他方、スケールSが基準スケールS0よりも大きくなければ、ランドマークが表示される(図1(b)を参照)。当該表示例は、以下のハードウエア及びソフトウエアによって実現される。
【0016】
<ハードウエア構成について>本実施の形態に係る地図処理装置のハードウエア構成は、図2で示される。地図処理装置1は、I/O2、HDD3、ROM4、CPU5、RAM6、描画IC7、VRAM8及び音声IC9を備える。各ハードウエアは、システムバスで接続されている。
【0017】
I/O2には、速度センサや方位センサ等の航法センサ11、タッチパネル12、表示装置21及びスピーカ22が接続されている。I/O2とその接続先との間には、図示されないA/D回路及びD/A回路が適宜設けられる。
【0018】
HDD3には、各種プログラム及びこれらのプログラムに必要なテーブルが記憶されている。本実施の形態では、施設密度を表示するための処理とランドマークを表示するための処理とを切り替えるための切替処理プログラムが記憶されている。
【0019】
HDD3には、地図データが記憶されている。地図データは、地物形状等の地図並びに地図を管理するための緯度経度及び縮尺を要素とする。
【0020】
HDD3には、施設データが記憶されている。施設データは、種別K、施設座標P及びランドマークを要素とする。施設座標P、緯度経度系で定義される。また、ランドマークとは、施設を表す画像である。
【0021】
ROM4には、起動時や緊急時などに必要な基本的な処理プログラム(BIOS等)が記憶されている。
【0022】
CPU5は、HDD3に記憶された切替処理プログラム等をRAM6に展開し、切替処理等を実行する。
【0023】
描画IC7は、CPU5で出力された命令に従って、VRAM8に対して画像を記憶させ、VRAM8に記憶された画像を表示装置21側に出力する。
【0024】
音声IC9は、CPU5で出力された命令に従って、RAM6に記憶された音声をスピーカ22側に出力する。
【0025】
<切替処理>本実施の形態に係る切替処理は、図3で示される。タッチパネル12によってスケールSが指示されると、切替処理は実行される。
【0026】
RAM6に記憶されたスケールS(図4参照)が基準スケールS0より大きいか否かが判定される(ステップS1)。スケールSが基準スケールS0より大きければ(S1のYes)、施設密度表示命令が出力される(ステップS2)。他方、スケールSが基準スケールS0以下であれば(S1のNo)、ランドマーク表示命令が出力される(ステップS3)。
【0027】
<施設密度表示命令による処理>前提として、スケールSの地図が表示される場合、スケールS及び表示領域の中心となる地図の緯度経度(以下、中心座標Cという)はRAM6に記憶される(図4及び図5(a)参照)。
【0028】
CPU5は、施設密度表示命令があると、主に、区分領域作成処理、施設数算出処理及び表示態様決定処理を実行する。
【0029】
区分領域作成処理は、スケールS及び中心座標Cを入力とし、区分領域Rを出力とする処理である。具体的には、スケールS及び中心座標Cで定義される緯度経度系の領域が等しい大きさ(例えば、一辺100m以下とする)に区分される。区分によって得られた区分領域Rは、左上角の座標である基点座標Rs及びサイズSzで定義される(図5(b)参照)。基点座標Rs及びサイズSzは、RAM6に記憶される。
【0030】
施設数算出処理は、RAM6に記憶された基点座標Rs、サイズSz(区分領域R)及び施設座標Pを入力とし、RAM6に記憶されるべき施設数Nを出力とする処理である(図4参照)。具体的には、施設座標P及び区分領域Rが比較される。施設座標Pが区分領域Rに属すれば、「1」が区分領域Rに対応付けられた施設数Nに加算される。他方、施設座標Pが区分領域Rに属しなければ、区分領域Rが新たに読み出され、比較する手続以降の手続が実行される。
【0031】
表示態様決定処理は、RAM6に記憶された施設数Nを入力とし、RAM6に記憶されるべき表示態様を出力とする処理である。施設数Nから表示態様への変換は、テーブル又は演算式を用いて行われる。テーブル又は演算式は、HDD2に予め記憶されており、起動時などにRAM6に展開されている。本実施の形態では、表示態様が色であるので、施設数Nの範囲と色とを対応付けたテーブル(例えば、「1≦N<10」と「青色」とが対応付けられる)が用いられる。
【0032】
描画IC7は、CPU5による処理が終了すると、次の処理を実行する。RAM6に記憶された基点座標Rs及びサイズSz(以下、単に区分領域Rという)は、緯度経度系から表示座標系に変換される。施設密度は、変換前の区分領域Rに対応付けられた表示態様(本実施の形態の形態では、色である)に従って作成され、変換後の区分領域に対応するVRAM8の領域に記憶される。VRAM8に記憶された施設密度は、VRAM8の他の領域(施設密度に係る領域とは異なる領域)に記憶された地図とともに表示装置21側に出力される。
【0033】
<ランドマーク表示命令による処理>描画IC7は、出力されたランドマーク表示命令を受けて、次の処理を実行する。施設座標Pは、緯度経度系から表示座標系に変換される。ランドマークは、変換後の施設座標に対応するVRAM8の領域に記憶される。VRAM8に記憶されたランドマークは、VRAM8の他の領域(ランドマークに係る領域とは異なる領域)に記憶された地図とともに表示装置21側に出力される。
【0034】
<本実施の形態における効果>本実施の形態によれば、スケールSが基準スケールS0よりも大きければ、施設密度が表示される(図1(a)を参照)ので、施設が密集する一又は複数の地域をユーザに一覧させることができる。
【0035】
本実施の形態によれば、スケールSが基準スケールS0よりも大きければ、施設密度が表示され(図1(a)を参照)、他方、スケールSが基準スケールS0よりも大きくなければ、ランドマークが表示される(図1(b)を参照)ので、ユーザは、スケールSを切り替える操作によって、地域の選択から施設の決定までをシームレスに行うことができる。
【0036】
<他の実施の形態>本実施の形態では、施設密度は、任意の領域(以下では、定義領域Dという)を代表する代表座標Dpごとに表示され、全体として濃淡をなす(図6参照)。具体的な処理は、次のとおりである
代表座標DpがスケールS及び中心座標Cで定義される緯度経度系の領域に定義される。前述の定義領域Dは、代表座標Dp及びRAM6に記憶された(図示されない)サイズによって定義される(図7参照)。ここで、代表座標Dpを表示座標系に変換して得られる座標は、連続して配置された画素(ピクセル)に対応している。
【0037】
定義領域D及び施設座標Pが比較される。施設座標Pが定義領域Dに属すれば、「1」が、定義領域Dを代表する代表座標Dpに対応付けられた施設数Nに加算される。他方、施設座標Pが定義領域Dに属しなければ、「1」は、施設数Nに加算されない。以上の手続は、代表座標DpをスケールS及び中心座標Cで定義される緯度経度系の領域内で移動させながら、各施設座標Pに対して行われる。
【0038】
施設数Nから表示態様への変換は、テーブル又は演算式を用いて行われる。例えば、施設密度が同一色で濃淡をなして表示される場合、濃度が施設数Nに比例して大きくなる演算式が用いられる。
【0039】
表示態様が求まると、RAM6に記憶された代表座標Dpは、緯度経度系から表示座標系に変換される。施設密度は、変換前の代表座標Dpに対応付けられた表示態様(例えば、濃度)に従って作成され、変換後の代表座標に対応するVRAM8の領域に記憶される。VRAM8に記憶された施設密度は、VRAM8の他の領域(施設密度に係る領域とは異なる領域)に記憶された地図とともに表示装置21側に出力される。
【0040】
本実施の形態によれば、施設密度は代表座標Dpごとに表示され全体として濃淡をなす(図6参照)ので、施設密度の表示が実際の施設密度に近づくとともに、見た目の美しさが向上する。
【0041】
<変形例1>前述の実施の形態では、施設密度は、2次元形状で表示されているが、3次元形状で表示されてもよい。
【0042】
<変形例2>前述の実施の形態では、施設密度は、地図に重畳表示されているが、地図自体の表示態様に反映されてもよい。
【0043】
<変形例3>前述の実施の形態では、施設密度は地図に重畳表示されているので、表示時の透過度は適宜設定されうる(例えば、不透過あっても半透過であってもよい)。
【0044】
<変形例4>前述の実施の形態では、各代表座標Dpでの施設密度は、同一色に係る濃淡で表示されているが、単に異なる色で表現されてもよい。この場合、施設密度は、全体として斑模様をなす。
【0045】
<変形例5>前述の実施の形態では、代表座標Dpでの施設密度は、点における濃度で表示されているが、当該点を中心として作図される図形で表示されてもよい。この場合、代表座標Dpを表示座標系に変換して得られる座標は、前述の実施の形態とは異なり、連続して配置された画素(ピクセル)のうち離散的に選択された画素(例えば、隣り合う画素は10ピクセル分の間隔をもっている)に対応している。また、作図される図形は、円、球又は多角形である。円及び多角形は、2次元形状であるか3次元形状であるかを問わない。そして、作図される図形が円又は球であれば、それらの半径は施設密度に比例して大きくなる。作図される図形が多角形であれば、多角形の対角線が施設密度に比例して大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、施設が密集する一又は複数の地域をユーザに一覧させることができるという効果を有し、ロケータ装置やナビゲーション装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】(a)本実施の形態に係る施設密度の表示例(広域)を示す図(b)本実施の形態に係るランドマークの表示例(狭域)を示す図
【図2】本実施の形態に係る地図処理装置のハードウエア構成を示す構成図
【図3】本実施の形態に係る切替処理の流れを示す図
【図4】本実施の形態に係るRAMの記憶領域(メモリマップ)を示す図
【図5】本実施の形態に係る区分領域の概念を示す図
【図6】他の実施の形態に係る施設密度の表示例を示す図
【図7】他の実施の形態に係る代表座標の概念を示す図
【符号の説明】
【0048】
1 地図処理装置
3 HDD(処理部)
5 CPU(処理部)
6 RAM(処理部)
21 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に対して地図を表示させる地図処理装置であって、
前記表示装置に対して施設密度を表示させるか否かを前記地図の縮尺を用いて制御する処理部を備える地図処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記地図の縮尺がスケールである場合、前記スケールが基準スケールよりも大きければ、前記表示装置に対して前記施設密度を表示させることを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記表示装置に対して前記施設密度を数字として表示させることを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記表示装置に対して前記施設密度を図形として表示させることを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記図形に係る色、濃度又は模様を前記施設密度に応じて異ならせることを特徴とする請求項4に記載の地図処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記図形に係る形状を2次元形状又は3次元形状とすることを特徴とする請求項4に記載の地図処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記表示装置に対して前記施設密度を前記地図に重畳表示させることを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記表示装置に対して前記施設密度を前記地図に重畳表示させ、他方、個々の施設に係る図形を前記地図よりも狭域な他の地図に重畳表示させることを特徴とする請求項1に記載の地図処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−26001(P2008−26001A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195263(P2006−195263)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】