説明

地図情報更新支援装置、地図情報更新支援方法及び地図情報更新支援プログラム

【課題】効率的な地図情報の更新作業を可能とする地図情報更新支援装置、地図情報更新支援方法及び地図情報更新支援プログラムを提供する。
【解決手段】通信インターフェース部10が、異なる時刻に取得された同一観測範囲の複数のレーダ画像データを取得し、位置合わせ処理部14が、上記複数のレーダ画像データを相互に位置合わせする。次に、特性値算出部18が位置合わせ後のレーダ画像データから観測範囲の地表面の状態を表す特性値を算出する。地物変化域抽出部19は、上記特性値に基づき、地物変化域を抽出する。次に道路変化候補域抽出部20は、前記地物変化域を観測範囲の地図情報に合成し、道路の変化箇所の候補である道路変化候補域を抽出する。出力部26は、道路変化候補域が合成された地図情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報の更新を支援するための地図情報更新支援装置、地図情報更新支援方法及び地図情報更新支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビゲーションの普及等により、地表の植生、構築物等といった地物の変化、特に道路の変化に関する情報を迅速に地図情報に反映させる要請がある。従来、このような更新作業は、光学画像を使用して変化箇所を目視で確認し、地図情報に反映させることにより行われていた。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、光学画像より全ての地物をエッジ抽出し、従来の地図と見比べて地図を更新する地図情報更新装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−234603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術においては、光学画像を使用するが、光学画像は晴天時にしか取得できないので、地図情報の更新に時間がかかるという問題があった。また、エッジ抽出によっては、全ての地物を抽出するのが困難であるという問題もあった。さらに、地図を更新する際に従来の地図と見比べる必要があるので、作業が煩雑になるという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、効率的な地図情報の更新作業を可能とする地図情報更新支援装置、地図情報更新支援方法及び地図情報更新支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、地図情報更新支援装置であって、異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象地物を含む周辺領域である観測範囲の時系列画像データの各々について所定の特性値を算出する特性値算出手段と、前記所定の特性値に基づいて前記観測範囲の地物変化域を抽出する地物変化域抽出手段と、前記地物変化域と予め記憶している観測範囲の地図情報とを合成し、観測対象地物の変化候補域を抽出する対象変化候補域抽出手段と、前記観測対象地物の変化候補域を含む地図情報を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記地図情報更新支援装置において、前記特性値は散乱強度、相関を示す指標、地表面の高さ情報の何れかであるのが好適である。
【0008】
また、上記地図情報更新支援装置において、前記レーダ装置は、合成開口レーダであるのが好適である。
【0009】
また、上記地図情報更新支援装置において、前記観測対象地物は道路であるのが好適である。
【0010】
また、本発明は、地図情報更新支援方法であって、異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象地物を含む周辺領域である観測範囲の時系列画像データの各々について所定の特性値を算出するステップと、前記所定の特性値に基づいて前記観測範囲の地物変化域を抽出するステップと、前記地物変化域と予め記憶している観測範囲の地図情報とを合成し、観測対象地物の変化候補域を抽出するステップと、前記観測対象地物の変化候補域を含む地図情報を出力するステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、地図情報更新支援プログラムであって、異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象地物を含む周辺領域である観測範囲の時系列画像データの各々について所定の特性値を算出し、前記所定の特性値に基づいて前記観測範囲の地物変化域を抽出し、前記地物変化域と予め記憶している観測範囲の地図情報とを合成して観測対象地物の変化候補域を抽出し、前記観測対象地物の変化候補域を含む地図情報を出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、変化箇所のみの確認により地図情報を更新することができ、大幅に労力を軽減できる。また、衛星に搭載した合成開口レーダ(SAR)を使用して変化個所を抽出することにより、更新頻度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。なお、以下では、観測対象地物を道路とした場合を例に説明する。
【0014】
図1には、観測範囲の地物変化域を抽出するためのシステムの構成例が示される。図1において、人工衛星101に搭載された合成開口レーダ等のレーダ装置により、地表面の観測対象地物を含む周辺領域である観測範囲のレーダ画像データを取得し、このレーダ画像データを本実施形態の地図情報更新支援装置102に送信する。地図情報更新支援装置102では、アンテナ103を介して受信したレーダ画像データを処理して観測範囲の地表面の変化を解析する。この場合のレーダ画像データは、異なる時刻にレーダ装置により取得された時系列画像データとなっている。また、地図情報更新支援装置102は、例えばコンピュータ上で所定のプログラムを動作させることにより実現することができる。
【0015】
なお、上記人工衛星101の数は1基に限らず、同一の撮影仕様である複数の人工衛星であってもよい。また、上記レーダ装置は、人工衛星101の他、航空機に搭載してもよい。
【0016】
図2には、本実施形態にかかる地図情報更新支援装置102の構成例の機能ブロック図が示される。図2において、地図情報更新支援装置102は、通信インターフェース部10、レーダ画像保持部12、位置合わせ処理部14、前処理部16、特性値算出部18、道路変化候補域抽出部20及び出力部22を含んで構成されている。
【0017】
通信インターフェース部10は、適宜な通信インターフェースにより構成されており、上記人工衛星101等と通信し、異なる時刻に取得されて時系列画像データとなっているレーダ画像データや撮影時刻、撮影時の入射角データを受信する。
【0018】
レーダ画像保持部12は、磁気記憶装置等により形成され、通信インターフェース部10が受信したレーダ画像データや撮影時刻、入射角データを保持する。
【0019】
また、例えば森林地域は季節により特性値に変化が生じるため、レーダ画像の取得枚数を増やし、特性値の変化を詳細に把握しておくことが好ましい。この場合には、後述する地図情報データベース24の土地被覆情報を元に、取得枚数を決めることも可能である。
【0020】
位置合わせ処理部14は、異なる時刻に取得された同一観測範囲の複数のレーダ画像データを上記レーダ画像保持部12から読み出し、各レーダ画像データを相互に位置合わせする。この位置合わせは、後述する特性値算出処理において、各レーダ画像データの対応する画素を一致させる必要があるために実施される。この位置合わせは、例えばグランドコントロールポイント(GCP)を用いて行うことができる。また、この際に建物の倒れこみの補正(オルソ化)を行うのも好適である。
【0021】
前処理部16は、上記レーダ画像データに含まれるノイズを除去するためのフィルタリング処理を行う。ここで、高解像度SARデータを用いる場合には、観測範囲の土地被覆、スケール(規模)によって、画素サイズを変更してもよい(リサンプリング処理)。このフィルタリング処理には、例えば平均化処理等を使用することができ、ハードウエア、ソフトウエアのいずれで実現してもよい。
【0022】
特性値算出部18は、中央処理装置(CPU)と動作プログラムにより実現され、観測範囲の地表面の状態を表す特性値を算出する。この特性値は、例えば散乱強度とするのが好適である。また、異なる時刻に取得された同一観測範囲の複数のレーダ画像データ間の相関を示す指標(例えばコヒーレンス)または地表面の高さ情報等としてもよい。なお、複数の人工衛星を用いる場合には、各衛星に搭載されたレーダ装置を用いてインターフェロメトリ処理を行うことにより、精度良く高さ情報を得ることができる。
【0023】
地物変化域抽出部19は、中央処理装置(CPU)と動作プログラムにより実現され、特性値算出部18が算出した特性値を使用して地表面の状態が時間の経過とともに変化した変化域を地物変化域として抽出する。合成開口レーダ等のレーダ装置により取得したレーダ画像データを使用する場合、例えば道路周辺の地物の散乱強度の変化から道路の変化を把握することができる。これは、建物からの電磁波の散乱には、建物からの直接の散乱以外にも建物と道路との間の複数の反射成分が含まれるからである。本実施形態では、このようなレーダ画像データの性質を利用して、道路変化候補域をその周辺の地物変化域として抽出している。
【0024】
上記変化域(地物変化域)の抽出は、例えば特性値として散乱強度を使用する場合、異なる時刻に取得された同一地表面の複数のレーダ画像データ間の散乱強度の差分を求め、この差分が所定の閾値より大きいか否かを判定して行う。この際に使用する抽出条件としては、例えば上記差分が所定の閾値より大きい画素が所定数連続しているとき、あるいは上記差分が所定の閾値より大きい画素が所定面積以上となっているときに変化域として抽出するのが好適である。なお、この抽出条件は、観測範囲の地表面の地図のサイズ(縮尺)、道路の幅、地表面の状態等により適宜設定する。
【0025】
次に、道路変化候補域抽出部20は、CPUと動作プログラムにより実現され、上記抽出した地物変化域を観測範囲の地図情報に合成し、道路変化候補域を抽出する。道路変化候補域抽出部20は、例えば地図情報から得られる知見(既存道路との連続性を満たすか、既存道路の延長線上にあるか、道路から所定範囲内にあるか等)を元に、前記地物変化域から道路変化の可能性が高い領域への絞込みを行った後、出力部22にわたす。この道路変化候補域抽出部20が、本発明の対象変化候補域抽出手段として機能する。なお、観測範囲の地図情報は、地図情報データベース24から取得する。
【0026】
出力部22は、上記道路変化候補域抽出部20から渡された、道路変化候補域が合成された地図情報を出力する。出力方法としては、プリントアウト、画面表示等を採用することができる。
【0027】
図3には、本実施形態にかかる地図情報更新支援装置102の動作例のフローが示される。図3において、通信インターフェース部10が、異なる時刻に取得された同一観測範囲の複数のレーダ画像データを取得してレーダ画像保持部12に格納する(S1)。位置合わせ処理部14は、上記複数のレーダ画像データをレーダ画像保持部12から読み出し、各レーダ画像データを相互に位置合わせする(S2)。
【0028】
位置合わせ後のレーダ画像データは、前処理部16によりノイズが除去される。次に、ノイズ除去後のレーダ画像データを使用して特性値算出部18が観測範囲の地表面の状態を表す特性値を算出する(S3)。
【0029】
地物変化域抽出部19は、上記特性値に基づいて観測範囲の地表面の状態が変化している変化域を地物変化域として抽出する(S4)。
【0030】
次に、道路変化候補域抽出部20は、地図情報データベース24から取得した観測範囲の地図情報に上記抽出した地物変化域を合成し(S5)、道路変化候補域を抽出する(S6)。道路変化候補域抽出部20は、地図情報から得られる上述した知見等を元に、前記地物変化域から道路変化の可能性が高い領域を抽出し、道路変化候補域とする。
【0031】
出力部22は、上記道路変化候補域抽出部20が出力した合成後の地図情報を、画面表示、プリントアウト等により出力する(S7)。
【0032】
以上のようにして出力された地図には、道路の変化個所の候補である道路変化候補域が表示されているので、地図を更新する際には、当該道路変化候補域のみ光学画像あるいは現地調査により変化個所を特定すればよく、地図の更新作業の労力を大幅に軽減することができる。なお、田園地帯等といった地表面の高さの変化が少ない地域において、道路幅の広い道路の変化を抽出する際には、光学画像や現地調査を実施することなく、レーダ画像から道路変化候補域を抽出することもできる。この場合には、レーダ画像に対してエッジ抽出等の処理を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかる地図情報更新支援装置を使用した観測範囲の道路変化候補域抽出システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明にかかる地図情報更新支援装置の構成例の機能ブロック図である。
【図3】本発明にかかる地図情報更新支援装置の動作例のフロー図である。
【符号の説明】
【0034】
10 通信インターフェース部、12 レーダ画像保持部、14 位置合わせ処理部、16 前処理部、18 特性値算出部、19 地物変化域抽出部、20 道路変化候補域抽出部、22 出力部、24 地図情報データベース、101 人工衛星、102 地図情報更新支援装置、103 アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象地物を含む周辺領域である観測範囲の時系列画像データの各々について所定の特性値を算出する特性値算出手段と、
前記所定の特性値に基づいて前記観測範囲の地物変化域を抽出する地物変化域抽出手段と、
前記地物変化域と予め記憶している観測範囲の地図情報とを合成し、観測対象地物の変化候補域を抽出する対象変化候補域抽出手段と、
前記観測対象地物の変化候補域を含む地図情報を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする地図情報更新支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の地図情報更新支援装置において、前記特性値は散乱強度、相関を示す指標、地表面の高さ情報の何れかであることを特徴とする地図情報更新支援装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の地図情報更新支援装置において、前記レーダ装置は、合成開口レーダであることを特徴とする地図情報更新支援装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項記載の地図情報更新支援装置において、前記観測対象地物は道路であることを特徴とする地図情報更新支援装置。
【請求項5】
異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象地物を含む周辺領域である観測範囲の時系列画像データの各々について所定の特性値を算出するステップと、
前記所定の特性値に基づいて前記観測範囲の地物変化域を抽出するステップと、
前記地物変化域と予め記憶している観測範囲の地図情報とを合成し、観測対象地物の変化候補域を抽出するステップと、
前記観測対象地物の変化候補域を含む地図情報を出力するステップと、
を備えることを特徴とする地図情報更新支援方法。
【請求項6】
異なる時刻にレーダ装置により取得された観測対象地物を含む周辺領域である観測範囲の時系列画像データの各々について所定の特性値を算出し、
前記所定の特性値に基づいて前記観測範囲の地物変化域を抽出し、
前記地物変化域と予め記憶している観測範囲の地図情報とを合成して観測対象地物の変化候補域を抽出し、
前記観測対象地物の変化候補域を含む地図情報を出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする地図情報更新支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−39848(P2008−39848A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210168(P2006−210168)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】