説明

地図情報送信システム、地図情報送信方法および地図情報送信プログラム

【課題】地図情報のバージョンを管理するための管理データの量を抑制する。
【解決手段】送信要求がなされた対象小区画以外の小区画に対応付けられた地図情報である追加送信データを、対象小区画に対応付けられた地図情報に追加して送信先に送信することにより、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画について送信先に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを共通化させる追加送信処理を実行し、追加送信処理によって共通化させられた管理データを大区画に対応付けて記録することにより、当該大区画が含むすべての小区画に個別に管理データを対応付けて記録する場合に記録される管理データの量の総和に対して当該大区画について記録される管理データの量を削減させる共通管理処理を実行し、追加送信データの量である追加送信データ量と、共通管理処理により削減させられる管理データの量である削減管理データ量とに基づいて、追加送信処理を実行するか否かを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の区画ごとに地図情報を送信する地図情報送信システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地図情報を記録および送信する単位である区画を細分化することにより、地図情報の送信データ量を抑制する手法が提案されている(特許文献1、参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−315058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、送信済みの地図情報のバージョンを管理するための管理データを、細分化した区画ごとに記録しなければならず、管理データの量が増大するという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、地図情報のバージョンを管理するための管理データの量を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明において、地図情報取得手段は、大区画を構成する複数の小区画ごとに対応付けられた地図情報を取得する。通常送信手段は、送信要求がなされた小区画である対象小区画に対応付けられた地図情報を送信先に送信する。個別管理手段は、送信先に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを小区画ごとに個別に対応付けて記録する。すなわち、地図情報送信システムは、送信要求がなされた対象小区画に対応付けられた地図情報を送信先に送信し、それにより送信先に送信済みとなった地図情報のバージョンを示す管理データを小区画ごとに記録する。なお、バージョンは、地図情報の新しさを示す指標であればよくリビジョン等も含む。
【0006】
さらに、地図情報送信システムは、追加送信手段と共通管理手段と追加送信制御手段とを備える。追加送信手段は、対象小区画以外の小区画に対応付けられた地図情報である追加送信データを、対象小区画に対応付けられた地図情報に追加して送信先に送信することにより、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画について送信先に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを共通化させる追加送信処理を実行する。本来であれば送信要求がなされた対象小区画に対応付けられた地図情報のみを送信すればよいが、対象小区画以外の小区画に対応付けられた地図情報も追加して送信先に送信する。これにより、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画について送信先に送信済みの地図情報のバージョンを共通化させる。
【0007】
共通管理手段は、追加送信処理によって共通化させられた管理データを大区画に対応付けて記録することにより、当該大区画が含むすべての小区画に個別に管理データを対応付けて記録する場合に記録される管理データの量の総和に対して当該大区画について記録される管理データの量を削減させる共通管理処理を実行する。すなわち、追加送信処理を実行することにより対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画について送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データが共通することとなるため、当該共通する管理データを当該大区画に対応付けて記録する。共通管理手段は、共通管理処理において、大区画につき共通する管理データを一つ対応付けて記録すればよい。これに対して、大区画を構成する複数の小区画のそれぞれに管理データを個別に対応付けて記録する場合、大区画を構成する複数の小区画の個数分の管理データを記録する必要がある。従って、共通管理処理を実行することにより、大区画が含むすべての小区画に個別に管理データを対応付けて記録する場合に記録される管理データの量の総和に対して、共通管理処理にて記録される管理データの量を削減させることができる。従って、地図情報のバージョンを管理するための管理データの量を抑制できる。
【0008】
追加送信制御手段は、追加送信データの量である追加送信データ量と、共通管理処理により削減させられる管理データの量である削減管理データ量とに基づいて、追加送信処理を実行するか否かを決定する。ここで、追加送信データ量は、送信要求がなされた対象小区画以外の小区画に対応付けられた地図情報、すなわち本来送信する必要のない地図情報を送信先に送信した場合に生じる送信データ量を意味する。送信データ量が追加されれば追加的にデータ通信費用等を発生させることとなり、地図情報プロバイダ等にとってのデメリットとなる。従って、追加送信データ量は追加送信処理を行うことによる生じるデメリットの大きさの指標となる。一方、削減管理データ量は、追加送信処理に続いて共通管理処理を実行することにより、削減させることができる管理データの量である。管理データが削減できればデータ記録費用等を削減できるため、地図情報プロバイダ等にとってメリットとなる。従って、削減管理データ量は追加送信処理を行うことのメリットの大きさの指標となる。そのため、追加送信制御手段は、追加送信データ量と削減管理データ量とに基づいて、追加送信処理を行うことにより生じるデメリットの大きさとメリットの大きさとを比較考量することができる。すなわち、追加送信処理を行うことにより生じるデメリットの大きさとメリットの大きさとを比較考量した上で、追加送信処理の実行可否を決定できる。
【0009】
地図情報取得手段は、大区画を構成する複数の小区画ごとに対応付けられた地図情報を取得すればよく、大区画を構成する複数の小区画は互いに隣接していてもよいし、互いに隣接していなくてもよい。ただし、大区画を構成する複数の小区画を規定するためのデータを新たに記録する必要がないように、大区画と小区画とは標準地域メッシュコード等の既存のメッシュコードに準ずることが望ましい。通常送信手段は、送信要求がなされた対象小区画に対応付けられた地図情報を送信先に送信すればよく、送信要求の手法は種々考えられる。例えば、地図情報の送信要求の対象の領域に含まれる小区画を対象小区画としてもよいし、地図情報の送信要求をする対象の小区画の指定を直接受け付けてもよい。なお、送信先とはおもに地図情報を送信する宛先の装置となる。個別管理手段は、送信先に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを小区画ごとに個別に対応付けて記録すればよく、送信先が複数ある場合には複数の送信先ごとに管理データを記録する。従って、複数の送信先ごとに地図上のすべての小区画について管理データを記録すると、管理データの量が膨大となる。
【0010】
なお、地図情報を送信する対象小区画以外の小区画をどのように選択しても、管理データが共通化させることができない場合も考えられる。従って、追加送信制御手段は、追加送信処理によって管理データが共通化させることができるか否かを判定し、管理データが共通化させることができる場合に、追加送信データ量と削減管理データ量とに基づいて追加送信処理を実行するか否かを決定してもよい。また、追加送信処理を行わなくても、対象小区画以外の小区画に対応付けられた地図情報のみを送信すれば、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画についての管理データが共通する場合も考えられる。このような場合にも、大区画に対して共通する管理データを対応付けてもよい。なお、通常送信手段と追加送信手段とによる地図情報の送信は同時に行われてもよいし、それぞれ別のタイミングで行われてもよい。
【0011】
追加送信制御手段は、追加送信データ量と削減管理データ量とに基づいて追加送信処理を実行するか否かを決定すればよく、追加送信データ量が削減管理データ量以下である場合に追加送信処理を実行すると決定してもよい。すなわち、追加送信処理を行うことにより生じるデメリットの大きさに対応する追加送信データ量が、追加送信処理を行うことにより生じるメリットの大きさに対応する削減管理データ量以下であれば、追加送信処理を実行することの優位性があると判断できる。さらに、追加送信制御手段は、単位データ量あたりのデータ送信コストと追加送信データ量とに基づくデメリット指標量が、単位データ量あたりのデータ記録コストと削減管理データ量とに基づくメリット指標量以下である場合に、追加送信処理を実行させてもよい。単位データ量あたりのデータ送信コストと追加送信データ量とに基づいて、追加送信処理にて追加送信データ量の地図情報を送信することにより生じるデメリットの大きさの指標量としてデメリット指標量を得ることができる。同様に、単位データ量あたりのデータ記録コストと削減管理データ量とに基づいて、共通管理処理にて削減管理データ量だけ記録する管理データを削減することにより生じるメリットの大きさの指標量としてメリット指標量を得ることができる。デメリット指標量がメリット指標量以下である場合には、追加送信処理を実行することの優位性があるとして、追加送信処理を実行させる。
【0012】
ここで、データ送信コストとデータ記録コストとにおける"コスト"とは、処理負荷コストと環境コストと料金コストと処理時間コストのいずれを意味してもよい。ただし、デメリット指標量とメリット指標量との比較が可能となるように、単位データ量あたりのデータ送信コストとデータ記録コストとは共通の単位で表されることが望ましい。
【0013】
さらに、追加送信制御手段は、所定の更新タイミングで更新された単位データ量あたりのデータ送信コストに基づいてデメリット指標量を取得してもよい。データ送信技術等の進歩に応じて単位データ量あたりのデータ送信コストが変化し得るが、所定の更新タイミングで更新された単位データ量あたりのデータ送信コストを使用すれば、データ送信技術等の進歩に対応したデメリット指標量を得ることができる。同様に、追加送信制御手段は、所定の更新タイミングで更新された単位データ量あたりのデータ記録コストに基づいてメリット指標量を取得してもよい。所定の更新タイミングで更新された単位データ量あたりのデータ記録コストを使用すれば、データ記録技術等の進歩に対応したメリット指標量を得ることができる。所定の更新タイミングは、周期的なタイミングであってもよいし、非周期的なタイミングであってもよい。
【0014】
また、共通管理手段と個別管理手段とが地図情報のバージョンを管理する手法は種々考えられる。例えば、地図情報のバージョンに対して固有の管理値を定義しておき、共通管理手段と個別管理手段とがバージョンの管理値を示す管理データを大区画と小区画とのそれぞれに対応付けて記録してもよい。この場合、追加送信手段は、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画について送信済みの地図情報のバージョンの管理値を共通化させることにより、管理データを共通化させることができる。
【0015】
さらに、共通管理手段と個別管理手段とは、送信先に送信済みの地図情報が最新のバージョンである場合、最新のバージョンであることを示す管理データを大区画と小区画とのそれぞれに対応付けて記録してもよい。これにより、地図情報の最新のバージョンの管理値が小区画ごとに互いに異なる場合であっても、最新のバージョンであることを示す管理データを小区画間で共通化させることができる。この場合、追加送信手段は、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画について送信済みの地図情報のバージョンが最新となるように、追加送信処理を実行すればよい。
【0016】
さらに、本発明のように共通する管理データを大区画に対応付ける手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような地図情報送信システム、プログラム、方法は、単独の地図情報送信システムとして実現される場合もあれば、複数の実体的な装置を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。すなわち、地図情報送信システムを構成する各手段が複数の実体的な装置に分散して備えられてもよい。各手段が複数の実体的な装置に分散して備えられる場合に、各手段を機能させるために必要なデータを送受信する通信手段が備えられてもよい。さらに、以上のような地図情報送信システムの少なくとも一部を備えた地図情報管理方法や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、地図情報送信システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】地図情報送信システムのブロック図である。
【図2】地図情報送信処理のフローチャートである。
【図3】(3A)は送信要求を説明する図、(3B)〜(3Q)は地図情報のバージョンを示す図である。
【図4】(4A)は第2実施形態の地図情報送信処理のフローチャート、(4B)は第4実施形態の地図情報送信処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)地図情報送信システムの構成:
(2)地図情報送信処理:
(3)第2実施形態:
(4)第3実施形態:
(5)第4実施形態:
【0019】
(1)地図情報送信システムの構成:
図1は、本発明の第1実施形態にかかる地図情報送信システム10のブロック図である。地図情報送信システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部11と記録媒体12と通信部13とを備えており、制御部11は記録媒体12やROMに記憶されたプログラムを実行する。記録媒体12は、地図DB12aと管理DB12bと単位コスト情報12cとを記録する。地図DB12aは、地図上に設けられた複数の小区画ごとに地図情報を対応付けて記録するデータベースである。地図情報は、区画上に存在する道路や交差点や建物等の地物に関する情報を含んでいる。なお、小区画ごとに地物が存在する量が異なるため、地図情報のデータ量は小区画ごとに異なる。
【0020】
地図DB12aが示す地図において正方形状の複数の小区画が行列状に配列し、行方向と列方向とのそれぞれに2個ずつ配列する4個(2×2)の小区画により正方形状の大区画が構成される。本実施形態において、大区画と小区画とは、標準地域メッシュコード(昭48.7.12 行政管理庁告示第143号)に準ずる。大区画は第2次地域区画(2次メッシュ)であり約10km四方の大きさを有する、小区画は5倍地域メッシュであり約5km四方の大きさを有する。地図DB12aにおいて地図情報のバージョンアップが行われ、本実施形態において地図DB12aが規定するすべての小区画について一様に最新かつ共通のバージョンの地図情報がバージョンアップされることとする。すなわち、本実施形態において地図DB12aに記録された最新の地図情報のバージョンは、すべての小区画について共通することとする。
【0021】
管理DB12bは、送信先としてのナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを記録するデータベースである。管理DB12bにおいて、管理データは、原則として地図DB12aと同様に規定された複数の小区画ごとに対応付けられて記録される。ただし、後述する共通管理処理の対象となった大区画については、単一の管理データが大区画に対応付けられて記録される。大区画に対応付けられた管理データは、当該大区画が含むすべての小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンを共通して示す。従って、制御部11は、管理データが対応付けられた小区画、および、管理データが対応付けられた大区画を構成する小区画のいずれについてもナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンを特定できる。なお、本実施形態において、管理データは地図情報のバージョンに固有の管理値を示すデータである。図示しないが、ナビゲーション装置20は複数存在し、管理DB12bは、複数のナビゲーション装置20のそれぞれについて送信済みの地図情報のバージョンを示す。
【0022】
単位コスト情報12cは、データ送信コストとデータ記録コストとを示す情報である。データ送信コストは、地図情報送信システム10がナビゲーション装置20に対して単位データ量だけデータを送信することにより生じる料金を示す。また、データ記録コストは、地図情報送信システム10が記録媒体12にてデータを単位データ量だけ記録することにより生じる料金を示す。
通信部13は、ナビゲーション装置20と無線通信を行うための回路を有する。
【0023】
制御部11は、地図情報送信プログラム100を実行する。地図情報送信プログラム100は、地図情報取得部110と通常送信部120と個別管理部130と追加送信部140と共通管理部150と追加送信制御部160とを含む。
地図情報取得部110は、大区画を構成する複数の小区画ごとに対応付けられた地図情報を取得する機能を制御部11に実行させるモジュールである。すなわち、地図情報取得部110の機能により制御部11は、小区画ごとに対応付けられた地図情報を地図DB12aから読み出して取得する。
【0024】
通常送信部120は、送信要求がなされた小区画である対象小区画に対応付けられた地図情報をナビゲーション装置20に送信する機能を制御部11に実行させるモジュールである。すなわち、通常送信部120の機能により制御部11は、ナビゲーション装置20による送信要求の対象とされた小区画を対象小区画として特定し、当該対象小区画に対応付けられた最新のバージョンの地図情報をナビゲーション装置20に送信する。これにより、ナビゲーション装置20は記録媒体21に記録された地図データ21aにおいて、送信要求の対象とした対象小区画について最新のバージョンの地図情報を記録することができる。
【0025】
なお、通常送信部120の機能により制御部11は、対象小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンが最新であるか否かを管理DB12bに基づいて判定し、ナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンが最新でない対象小区画についてのみ最新のバージョンの地図情報をナビゲーション装置20に送信する。すなわち、最新のバージョンの地図情報がナビゲーション装置20にすでに送信済みである対象小区画については、地図情報を新たに送信しない。本実施形態において地図DB12aに記録された最新の地図情報のバージョンはすべての小区画について共通するため、対象小区画について最新のバージョンの地図情報をナビゲーション装置20に送信することにより、すべての対象小区画について送信済みの地図情報のバージョンが最新かつ共通となる。
【0026】
個別管理部130は、ナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを小区画ごとに個別に対応付けて記録する機能を制御部11に実行させるモジュールである。すなわち、通常送信部120の機能により制御部11は、管理DB12bにおいて複数のナビゲーション装置20のそれぞれについて送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを小区画のそれぞれに対応付けて記録する。
【0027】
追加送信部140は、対象小区画以外の小区画に対応付けられた地図情報である追加送信データを、対象小区画に対応付けられた地図情報に追加してナビゲーション装置20に送信することにより、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを共通化させる追加送信処理を実行する機能を制御部11に実行させるモジュールである。すなわち、本来であればナビゲーション装置20から送信要求がなされた対象小区画に対応付けられた地図情報のみを送信すればよいが、制御部11は、対象小区画以外の小区画(以下、非対象小区画)に対応付けられた地図情報である追加送信データもナビゲーション装置20に送信する。これにより、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを共通化させる。本実施形態において、管理データが共通するとは、地図情報のバージョンに固有の管理値が共通することと同義である。
【0028】
本実施形態において追加送信部140の機能により制御部11は、対象小区画を含む大区画を構成する非対象小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンが最新であるか否かを管理DB12bに基づいて判定し、ナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンが最新でない非対象小区画について最新のバージョンの地図情報をナビゲーション装置20に送信する。すなわち、制御部11は、すでに最新のバージョンの地図情報がナビゲーション装置20に送信済みの非対象小区画については、新たに地図情報を送信しない。ここで、本実施形態において地図DB12aに記録された最新の地図情報のバージョンはすべての小区画について共通するため、非対象小区画について最新のバージョンの地図情報をナビゲーション装置20に送信することにより、すべての非対象小区画について送信済みの地図情報のバージョンが最新かつ共通となる。また、上述したように通常送信部120の機能により大区画に含まれるすべての対象小区画について送信済みの地図情報のバージョンが最新かつ共通とされるため、非対象小区画についても最新のバージョンの地図情報を送信することにより、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画について送信済みの地図情報のバージョンを最新かつ共通とすることができる。
【0029】
共通管理部150は、追加送信処理によって共通化させられた管理データを大区画に対応付けて記録することにより、当該大区画が含むすべての小区画に個別に管理データを対応付けて記録する場合に記録される管理データの量の総和に対して当該大区画について記録される管理データの量を削減させる共通管理処理を実行する機能を制御部11に実行させるモジュールである。すなわち、追加送信処理を実行することにより対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データが共通することとなり、制御部11は、当該共通する管理データを当該大区画に対応付けて記録する。ここで、共通管理処理を実行しない場合には大区画が含むすべての小区画ごとに管理データ(小区画の個数分だけ)を記録する必要があるのに対して、共通管理処理を実行した場合には大区画につき単一の管理データを記録すればよいため、記録する管理データの量を削減させることができる。
【0030】
追加送信制御部160は、追加送信データの量である追加送信データ量と、共通管理処理により削減させられる管理データの量である削減管理データ量とに基づいて、追加送信処理を実行するか否かを決定する機能を制御部11に実行させるモジュールである。追加送信制御部160の機能により制御部11は、追加送信処理における送信データの量である追加送信データ量と、単位コスト情報12cが示す単位データ量あたりのデータ送信コストとを乗算することによりデメリット指標量を取得する。デメリット指標量は、追加送信処理において送信データが追加されることにより増加するデータ送信費用を示す。
【0031】
また、追加送信制御部160の機能により制御部11は、共通管理処理により削減させられる管理データの量である削減管理データ量と、単位コスト情報12cが示す単位データ量あたりのデータ記録コストとを乗算することによりメリット指標量を取得する。メリット指標量は、追加送信処理を実行し、かつ、共通管理処理を実行することにより、記録する管理データを削減することによって軽減されるデータ記録費用を示す。追加送信制御部160の機能により制御部11は、追加送信処理を実行するデメリット指標量とメリット指標量とを比較し、デメリット指標量がメリット指標量以下である場合に、追加送信処理を実行すると決定する。また、本実施形態において制御部11は、所定の更新周期(例えば、1ヶ月)ごとに単位コスト情報12cに記録されたデータ送信コストとデータ記録コストとを更新することとする。データ送信コストは、地図情報を送信する通信回線の提供業者の料金改正に対応した値とされる。データ記録コストは、管理DB12bを記録する記録装置の単位データ量あたりの単価等に応じて更新された値が適用される。
【0032】
以上説明した本実施形態の構成において、共通管理部150の機能により制御部11は、大区画が含むすべての小区画に個別に管理データを対応付けて記録する場合に記録される管理データ量の総和に対して記録される管理データの量を削減させる。従って、地図情報のバージョンを管理するための管理データの量を抑制できる。また、追加送信制御部160の機能により制御部11は、追加送信処理を実行することにより生じるデメリット指標量とメリット指標量とを比較し、デメリット指標量がメリット指標量以下であり追加送信処理を実行することの優位性がある場合に、追加送信処理を実行させることができる。また、追加送信制御部160の機能により制御部11は、所定の更新周期で更新された単位データ量あたりのデータ送信コストを使用するため、データ送信技術等の進歩に対応したデメリット指標量を得ることができる。同様に、追加送信制御部160の機能により制御部11は、所定の更新周期で更新されたデータ記録コストを使用するため、データ記録技術等の進歩に対応したメリット指標量を得ることができる。
【0033】
(2)地図情報送信処理:
図2は、地図情報送信システム10が実行する地図情報送信処理のフローチャートである。ステップS100において制御部11は、ナビゲーション装置20から地図情報の送信要求を受信する。図3Aは、ナビゲーション装置20から受信する送信要求を説明する図である。本実施形態において、ナビゲーション装置20を使用するユーザの自宅の位置H(白丸)がナビゲーション装置20または地図情報送信システム10に登録されており、ナビゲーション装置20は当該自宅の位置Hを重心とした所定の矩形形状の要求範囲R(境界が破線)について地図情報を送信することを要求する送信要求を地図情報送信システム10に送信する。
【0034】
ステップS105において制御部11は、対象小区画を特定する。すなわち、制御部11は、要求範囲Rに少なくとも一部が含まれるすべての小区画を対象小区画として特定する。ステップS110において追加送信部140の機能により制御部11は、地図DB12aにて対象小区画に対応付けられたナビゲーション装置20に未送信かつ最新のバージョンの地図情報で構成される通常送信対象を抽出する。すなわち、制御部11は、要求範囲Rに少なくとも一部が含まれる対象小区画であって、ナビゲーション装置20に最新のバージョンの地図情報が未送信であるすべての対象小区画についての最新の地図情報によって構成される通常送信対象を抽出する。ここで、通常送信対象は、本来、地図情報送信システム10がナビゲーション装置20に送信すべき地図情報で構成されるということができる。
【0035】
ステップS115において制御部11は、通常送信対象の地図情報が抽出された対象小区画と、対象小区画でない小区画である非対象小区画とを含む大区画の1つを選択大区画として選択する。すなわち、制御部11は、要求範囲Rの境界が存在しており、少なくとも一つの対象小区画(ステップS105にて通常送信対象が抽出された対象小区画に限る)と、少なくとも一つの非対象小区画とを含む大区画の一つを選択大区画として選択する。すなわち、送信要求に応じて最新の地図情報が送信される小区画と、本来、送信要求に応じて最新の地図情報を送信する必要のない小区画とが混在する大区画の一つを選択大区画として選択する。
【0036】
図3Aに示す大区画Mにおいて要求範囲Rの境界が存在しており、要求範囲Rの境界の内側の小区画m1,m2が対象小区画として特定される。図3Bは、地図DB12aにおいて図3Aの大区画Mを構成する小区画m1〜m4に対応付けて記録された最新の地図情報のバージョンの管理値を示す。図3Cは、管理DB12bにおいて図3Aの大区画Mを構成する小区画m1〜m4に対応付けて記録された管理データが示すナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値を示す。図3Aにおいて太枠で囲まれた小区画m1,m2が対象小区画を示し、細枠で囲まれた小区画m3,m4が非対象小区画を示す。地図情報のバージョンの管理値は大きいほど新しい地図情報であることを示す。図3B,3Cの例では、対象小区画m1,m2についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値は"3"であり、地図DB12aにて対象小区画m1,m2に対応付けられた最新の地図情報のバージョンの管理値は"4"であるため、対象小区画m1,m2についての最新の地図情報は通常送信対象を構成する。また、大区画Mは、非対象小区画m3,m4も含むため、大区画Mは選択大区画として選択される。
【0037】
ステップS120において追加送信制御部160の機能により制御部11は、選択大区画において最新の地図情報がナビゲーション装置20に未送信の非対象小区画があるか否かを判定する。図3B,3Cの例では、大区画Mの非対象小区画m3,m4についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値は"3"であり、地図DB12aにて対象小区画m3,m4に対応付けられた最新の地図情報のバージョンの管理値は"4"であるため、ステップS120は肯定される。
【0038】
ステップS120にて選択大区画において最新の地図情報がナビゲーション装置20に未送信の非対象小区画があると判定された場合、制御部11はステップS125を実行する。ステップS125において追加送信制御部160の機能により制御部11は、選択大区画において最新の地図情報がナビゲーション装置20に未送信の非対象小区画に対応付けられた最新の地図情報で構成される追加送信候補を抽出し、そのデータ量を追加送信データ量として取得する。図3B,3Cの例では、大区画Mの非対象小区画m3,m4についてナビゲーション装置20に対して未送信かつ最新の地図情報(管理値"4")のデータ量の合計が追加送信データ量として取得される。なお、追加送信候補が抽出される非対象小区画の個数は選択大区画ごとに異なり、最新の地図情報のデータ量は非対象小区画ごとに異なるため、追加送信データ量は選択大区画ごとに異なることとなる。
【0039】
ステップS130において追加送信制御部160の機能により制御部11は、通常送信対象のみを送信した場合に選択大区画を構成するすべての小区画のそれぞれに対して個別に記録される管理データの量の総和から、通常送信対象に追加して追加送信候補も送信した場合に選択大区画に対して共通して記録される管理データの量を減算した削減管理データ量を取得する。
【0040】
図3Dは、図3B,3Cの例において通常送信対象のみをナビゲーション装置20に送信した場合に、ナビゲーション装置20に送信済みとなる地図情報のバージョンの管理値を示す。選択大区画Mについて通常送信対象のみをナビゲーション装置20に送信した場合には、図3Dに示すように対象小区画m1,m2についてのみ送信済みの地図情報のバージョンの管理値がそれぞれ"4"となり、非対象小区画m3,m4について送信済みの地図情報のバージョンの管理値はそれぞれ"3"となる。従って、個別管理部130の機能により制御部11が選択大区画Mを構成するすべての小区画m1〜m4のそれぞれに対して個別に管理DB12bに記録する管理データの量の総和は、対象小区画m1,m2のそれぞれについて管理値"4"を示す管理データの量と、非対象小区画m3,m4のそれぞれについて管理値"3"を示す管理データの量との総和となる。
【0041】
図3Eは、図3B,3Cの例において通常送信対象のみならず追加送信候補もナビゲーション装置20に送信した場合に、ナビゲーション装置20に送信済みとなる地図情報のバージョンの管理値を示す。非対象小区画m3,m4についての最新の地図情報も送信済みとなるため、図3Eに示すように対象小区画m1〜m4のすべてについてもナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値が"4"となり、互いに共通することとなる。従って、共通管理部150の機能により制御部11が選択大区画Mに対応付けて管理DB12bに記録する管理データの量は、管理値"4"を示す単一の管理データの量となる。従って、選択大区画Mに対して共通して記録される管理データの量は、選択大区画Mを構成するすべての小区画m1〜m4のそれぞれに対して個別に記録される管理データの量の総和よりも小さくなる。制御部11は、前者の管理データの量から後者の管理データの量を減算することにより削減管理データ量を取得する。
【0042】
ステップS135において追加送信制御部160の機能により制御部11は、追加送信データ量に基づくデメリット指標量が削減管理データ量に基づくメリット指標量以下であるか否かを判定する。すなわち、制御部11は、削減管理データ量と単位コスト情報12cが示すデータ記録コストとを乗算することによりメリット指標量を取得するとともに、追加送信データ量と単位コスト情報12cが示すデータ送信コストとを乗算することによりデメリット指標量を取得する。そして、制御部11は、デメリット指標量がメリット指標量以下であるか否かを判定する。
【0043】
ステップS135において追加送信データ量に基づくデメリット指標量が削減管理データ量に基づくメリット指標量以下であると判定された場合、追加送信部140の機能により制御部11はステップS140を実行する。ステップS140において制御部11は、追加送信候補を送信対象に追加する。すなわち、ステップS110において要求範囲Rに少なくとも一部が含まれる対象小区画であって、ナビゲーション装置20に最新のバージョンの地図情報が未送信であるすべての対象小区画についての地図情報がすでに送信対象(通常送信対象)とされているが、この送信対象に選択大区画から抽出した追加送信候補を追加する。上述のように、メリット指標量は追加送信処理を実行した上で共通管理処理にて管理DB12bに記録する管理データの量を削減することにより軽減できるデータ送信費用を示し、デメリット指標量は追加送信処理を実行することにより追加される送信データ量により増加するデータ記録費用を示す。従って、デメリット指標量がメリット指標量以下であれば、追加送信処理を実行することの優位性があると判断できる。従って、追加送信制御部160の機能により制御部11は、デメリット指標量がメリット指標量以下である場合には、選択大区画について追加送信処理を実行すると決定し、ステップS140において加送信候補を送信対象に追加することとする。また、ステップS140において共通管理部150の機能により制御部11は、選択大区画について共通管理フラグを立てておく。
【0044】
ステップS145において追加送信制御部160の機能により制御部11は、通常送信対象の地図情報が抽出された対象小区画と、非対象小区画とを含む大区画をすべて選択大区画として選択したか否かを判定する。すなわち、制御部11は、ステップS115において選択大区画として選択することができる大区画のすべてを選択したか否かを判定する。通常送信対象の地図情報が抽出された対象小区画と、非対象小区画とを含む大区画をすべて選択大区画として選択していない場合には、ステップS115において次の選択大区画を選択する。
【0045】
ここで、ステップS135において追加送信データ量に基づくデメリット指標量が削減管理データ量に基づくメリット指標量以下であると判定されなかった場合には、制御部11はステップS140において追加送信候補を送信対象に追加することなく、ステップS145を実行する。すなわち、選択大区画について追加送信処理を実行することの優位性がない場合には、送信対象に当該選択大区画から抽出した追加送信候補を追加することなく、当該選択大区画については対象小区画に対応付けられた地図情報のみを送信することとする。また、ステップS120において選択大区画に最新の地図情報がナビゲーション装置20に未送信の非対象小区画があると判定されなかった場合には、制御部11はステップS125〜S140をスキップし、ステップS145を実行する。この場合、ステップS125にて追加送信候補を抽出し得ず、追加送信候補を送信対象に追加し得ないからである。
【0046】
以上説明したステップS115〜S145のループ処理を実行することにより、要求範囲Rの境界が存在する選択大区画を順次選択していき、当該選択大区画について追加送信処理を実行することの優位性がある場合には、通常送信対象に当該選択大区画から抽出した追加送信候補を順次追加していくことができる。
【0047】
ステップS150において、通常送信部120と追加送信部140との機能により制御部11は、送信対象について送信データ作成する。すなわち、制御部11は、すべての選択大区画の選択が完了した段階で、追加送信候補を通常送信対象に加えた送信対象を確定し、当該送信対象についての地図情報を含む送信データを生成する。ステップS155において、通常送信部120と追加送信部140との機能により制御部11は、送信データをナビゲーション装置20に送信する。
【0048】
ステップS160において、個別管理部130と共通管理部150との機能により制御部11は、管理DB12bを更新する。すなわち、共通管理部150の機能により制御部11は、共通管理フラグが立てられた大区画については、当該大区画について共通する地図情報のバージョンの管理値を示す管理データを対応付けて管理DB12bに記録する(共通管理処理)。一方、共通管理フラグが立てられなかった大区画については、当該大区画を構成するすべての小区画に対して個別に地図情報のバージョンの管理値を示す管理データを対応付けて管理DB12bに記録する。
【0049】
なお、要求範囲Rに全体が含まれる大区画を構成するすべての小区画は対象小区画となる。要求範囲Rに全体が含まれる大区画は、ステップS115にて選択大区画として選択され得ず、ステップS140にて共通管理フラグが立てられる対象とならないが、すべての小区画が対象小区画となる大区画について共通管理処理を実行してもよい。本実施形態において地図DB12aに記録された最新の地図情報のバージョンはすべての小区画について共通するため、通常送信対象を含む送信データをナビゲーション装置20に送信することにより、すべての対象小区画について送信済みの地図情報のバージョンが最新かつ共通することとなるからである。
【0050】
(3)第2実施形態:
前記実施形態においては、地図DB12aが規定するすべての小区画について一様に最新かつ共通のバージョンの地図情報がバージョンアップされ、地図DB12aに記録された最新の地図情報のバージョンがすべての小区画について共通することとしたが、小区画ごとに最新の地図情報のバージョンが異なる場合でも本発明を適用できる。図3Fは、図3Aの大区画Mを構成する小区画m1〜m4に対応付けられた最新の地図情報のバージョンの管理値を示す。図3Fに示すように、小区画m1〜m4ごとに最新の地図情報のバージョンの管理値が異なっている。このような場合、図2のステップS125において、選択大区画において最新の地図情報がナビゲーション装置20に未送信の非対象小区画に対応付けられた最新の地図情報で構成される追加送信候補を抽出し、当該追加送信候補を送信したとしても、選択大区画を構成するすべての小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値は必ずしも共通することとならない。
【0051】
図3Fの例では、非対象小区画m3について最新の地図情報(管理値"5")を送信し、非対象小区画m4について最新の地図情報(管理値"4")を送信したとしても、非対象小区画m3,m4とでナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値は共通しない。そこで、本実施形態では、図4Aに示すステップS122,S123を図2の処理に追加し、さらに図2のステップS125の代わりに図4AのステップS125Aを実行することとする。図4Aに示すように、ステップS122は、ステップS120が肯定された場合に実行される。ステップS122において追加送信制御部160の機能により制御部11は、選択大区画を構成するすべての対象小区画について最新の地図情報のバージョンが共通するか否かを判定する。
【0052】
図3Gは図3Fの大区画Mについてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値を示し、図3Hは通常送信対象のみをナビゲーション装置20に送信した場合にナビゲーション装置20に対して送信済みとなる地図情報のバージョンの管理値を示し、図3Iは通常送信対象のみならず追加送信候補もナビゲーション装置20に送信した場合にナビゲーション装置20に対して送信済みとなる地図情報のバージョンの管理値を示す。図3Fに示すように選択大区画Mを構成するすべての対象小区画m1,m2についての最新の地図情報のバージョンの管理値が"4"であり、図3Hに示すように通常送信対象を送信することによりナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値が対象小区画m1,m2のそれぞれについて"4"となり、互いに共通することとなる。ここで、送信要求があった対象小区画については最新の地図情報を送信する必要があるため、選択大区画を構成するすべての対象小区画についての最新の地図情報のバージョンの管理値が共通しない場合には、選択大区画を構成するすべての小区画についての地図情報のバージョンの管理値が共通し得ないこととなる。従って、ステップS122において選択大区画を構成するすべての対象小区画について最新の地図情報のバージョンが共通しないと判定されなかった場合には、選択大区画を構成するすべての小区画について地図情報のバージョンを共通化させる追加送信候補が抽出できないとして、図2のステップS145へ進む。すなわち、追加送信処理を実行する場合にメリット指標量とデメリット指標量とに基づく判定を行うことなく、次の選択大区画を選択する。
【0053】
一方、ステップS122において選択大区画を構成するすべての対象小区画について最新の地図情報のバージョンの管理値が共通すると判定された場合には、追加送信部140の機能により制御部11はステップS123を実行する。ステップS123において制御部11は、通常送信対象を送信した場合に選択大区画を構成する対象小区画について送信済みとなる地図情報のバージョンと共通するバージョンの地図情報を選択大区画のすべての非対象小区画について抽出し、追加送信候補とする。ただし、制御部11は、通常送信対象を送信した場合に選択大区画を構成する対象小区画について送信済みとなる地図情報のバージョンと共通するバージョンの地図情報がすでに送信済みとなっている非対象小区画については地図情報を追加送信候補としない。図3Hに示すように通常送信対象を送信することによりナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値が対象小区画m1,m2のそれぞれについて"4"となり、図3Iに示すように非対象小区画m3についてバージョンの管理値が"4"の地図情報が追加送信候補とされる。図3Fに示すように非対象小区画m3について最新の地図情報のバージョンの管理値は"5"であるが、本実施形態では非対象小区画m3について最新でないバージョンの地図情報(管理値"5")を追加送信候補とすることとする。図3Gに示すように非対象小区画m4についてバージョンの管理値が"4"の地図情報がすでに送信済みとなっているため、非対象小区画m4についての地図情報は追加送信候補とされない。以上のようにして抽出した追加送信候補を通常送信対象に追加して送信することにより、図3Iに示すように選択大区画を構成するすべての小区画について送信済みの地図情報のバージョンの管理値を共通化させることができる。
【0054】
ステップS125Aにおいては、ステップS123において抽出した追加送信候補のデータ量を追加送信データ量として取得する。ステップS125Aを実行した後は、図2ステップS130以降の処理を実行する。以上説明したように、選択大区画を構成するすべての小区画についての地図情報のバージョンの管理値を共通化させることができるか否かを判定し(S122)、当該管理値を共通化させることができる場合に限り、追加送信処理の実行可否を決定する処理を行うようにしてもよい。また、非対象小区画は送信要求の対象となっていないため、必ずしも非対象小区画について最新の地図情報を送信する必要がない。従って、非対象小区画について最新でない地図情報も追加送信候補として抽出することにより、選択大区画を構成するすべての小区画についての地図情報のバージョンの管理値を共通化させることができる可能性を大きくすることができる。
【0055】
(4)第3実施形態:
前記実施形態では、管理DB12bにて地図情報のバージョンの管理値を示す管理データを記録することとしたが、地図情報が最新であるか否かを示すデータを管理データとして記録してもよい。図3Jは、図3Aの大区画Mを構成する小区画m1〜m4に対応付けられた最新の地図情報のバージョンの管理値を示す。図3Kは図3Jの大区画Mについてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンについて管理データが示す内容を示し、図3Lは通常送信対象のみを送信した場合にナビゲーション装置20に送信済みとなる地図情報のバージョンが最新であるか否(非最新である)を示し、図3Mは通常送信対象のみならず追加送信候補も送信した場合にナビゲーション装置20に送信済みとなる地図情報のバージョンが最新であるか否を示す。
【0056】
図3Kに示すように、選択大区画Mを構成する対象小区画m1〜m4のそれぞれについて地図情報が最新であるか否かを示す管理データが管理DB12bに記録されている。また、管理DB12bには図2のステップS155にて地図データを最後にナビゲーション装置20に送信した送信時刻が記録されている。従って、対象小区画m1〜m4について送信済みの地図情報が地図データを送信した送信時刻において最新であったか否かを特定できる。一方、地図DB12aにおいては、各バージョンの地図情報のバージョンアップ時刻が記録されている。従って、図3Kにおいて管理DB12bにて最新であることを示す管理データが対応付けられた小区画m1〜m3について、送信データの送信時刻よりも後のバージョンアップ時刻に地図情報がバージョンアップされている場合には、小区画m1〜m3について送信済みの地図情報が現実には最新でない(図3Kにて括弧書きで示す最新は偽である)と特定できる。一方、制御部11は、管理DB12bにて非最新であることを示す管理データが対応付けられた小区画m4については、送信データの送信時刻とバージョンアップ時刻との関係に拘わらず、送信済みの地図情報が最新でないことが特定できる。
【0057】
通常送信部120の機能により制御部11は、第1実施形態と同様に対象小区画m1,m2について最新の地図情報が送信済みでなければ、対象小区画m1,m2について最新の地図情報を通常送信対象とする。図3Lに示すように、通常送信対象のみをナビゲーション装置20に送信した場合、個別管理部130の機能により制御部11は、小区画のそれぞれについて地図情報が最新であるか否かを示す管理データを対応付けて管理DB12bに記録する。大区画を構成する小区画のうち対象小区画については、図3Lにて括弧書きで示すバージョンの管理値に拘わらず、必ず最新であることを示す管理データが対応付けられることとなる。
【0058】
本実施形態において追加送信部140の機能により制御部11は、第1実施形態と同様に最新の地図情報が送信済みでない非対象小区画について、最新の地図情報を追加送信候補とする。図3J〜3Lの例の場合、制御部11は、非対象小区画m3,m4についての最新の地図情報を追加送信候補とする。図3Mに示すように、通常送信対象に追加して追加送信候補もナビゲーション装置20に送信した場合、ナビゲーション装置20に送信済みとなる地図情報のバージョンの管理値(括弧書き)は小区画m1〜m4について共通しないが、小区画m1〜m4について送信済みの地図情報のバージョンが地図データの送信時刻において最新であることは必ず共通する。そのため、共通管理部150の機能により制御部11は、共通して最新であることを示す管理データを選択大区画Mに対応付けて管理DB12bに記録する。また、共通管理部150の機能により制御部11は、地図データの送信時刻を管理DB12bに記録する。
【0059】
以上のように、地図情報が最新であるか否かを示す管理データを管理DB12bにて記録することにより、最新の地図情報のバージョンの管理値が小区画ごとに異なっている場合でも、大区画を構成するすべての小区画についての管理データを共通化させることができる。
【0060】
(5)第4実施形態:
以上の実施形態においては、追加送信処理を実行することにより、対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データを共通化させたが、追加送信処理を実行しなくても対象小区画を含む大区画を構成するすべての小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンを示す管理データが共通し得る。そのため、共通管理部150の機能により制御部11は、追加送信処理を実行しない場合にも、共通する管理データを大区画に対応付けて記録することにより、大区画が含むすべての小区画に個別に管理データを対応付けて記録するよりも記録される管理データの量を減少させる共通管理処理を実行してもよい。
【0061】
本実施形態では、図4Bに示すステップS117,S118を図2の処理に追加することとする。図4Bに示すように、ステップS117は、ステップS115の次に実行される。ステップS117において追加送信制御部160の機能により制御部11は、通常送信対象を送信した場合に選択大区画を構成するすべての小区画について送信済みとなる地図情報のバージョンが共通するか否かを判定する。図3Oは、図3Aの大区画Mを構成する小区画m1〜m4に対応付けられた最新の地図情報のバージョンの管理値を示す。図3Pは図3Oの大区画Mについてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値を示し、図3Qは通常送信対象のみをナビゲーション装置20に送信した場合にナビゲーション装置20に送信済みとなる地図情報のバージョンの管理値を示す。図3Qに示すように対象小区画m1,m2について最新の地図情報を送信することにより、選択大区画Mを構成するすべての小区画についてナビゲーション装置20に送信済みの地図情報のバージョンの管理値が"4"となり、互いに共通することとなる。
【0062】
通常送信対象を送信した場合に選択大区画を構成するすべての小区画について送信済みとなる地図情報のバージョンが共通する場合、共通管理部150の機能により制御部11は、ステップS118において選択大区画に共通管理フラグを立て、図2のステップS120〜S140をスキップし、ステップS145を実行する。図2のステップS160において、共通管理部150の機能により制御部11は、共通管理フラグが立てられた大区画については、当該大区画について共通する地図情報のバージョンの管理値を示す管理データを対応付けて管理DB12bに記録する共通管理処理を実行する。通常送信対象のみを送信した場合にすべての小区画についての管理データが共通する選択大区画についても共通管理処理により管理データを削減することができる。
【0063】
地図情報取得部110の機能により制御部11は、大区画を構成する複数の小区画ごとに対応付けられた地図情報を取得すればよく、大区画を構成する複数の小区画は互いに隣接していなくてもよい。通常送信部120の機能により制御部11は、地図情報の送信要求をする対象の小区画の指定を直接受け付けてもよい。追加送信制御部160の機能により制御部11がデメリット指標量とメリット指標量とをそれぞれ取得するために使用するデータ送信コストとデータ記録コストとにおける"コスト"とは、処理負荷コストと環境コストと処理時間コストのいずれを意味してもよい。なお、本発明の地図情報送信方法の各工程の請求項における記載順序は、各工程の実行順序を意味するものではない。
【符号の説明】
【0064】
10…地図情報送信システム、11…制御部、12…記録媒体、12a…地図DB、12b…管理DB、12c…単位コスト情報、13…通信部、20…ナビゲーション装置、21…記録媒体、21a…地図データ、100…地図情報送信プログラム、110…地図情報取得部、120…通常送信部、130…個別管理部、140…追加送信部、150…共通管理部、160…追加送信制御部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大区画を構成する複数の小区画ごとに対応付けられた地図情報を取得する地図情報取得手段と、送信要求がなされた前記小区画である対象小区画に対応付けられた前記地図情報を送信先に送信する通常送信手段と、前記送信先に送信済みの前記地図情報のバージョンを示す管理データを前記小区画ごとに個別に対応付けて記録する個別管理手段と、を備える地図情報送信システムであって、
前記対象小区画以外の前記小区画に対応付けられた前記地図情報である追加送信データを、前記対象小区画に対応付けられた前記地図情報に追加して前記送信先に送信することにより、前記対象小区画を含む前記大区画を構成するすべての前記小区画について前記送信先に送信済みの前記地図情報のバージョンを示す前記管理データを共通化させる追加送信処理を実行する追加送信手段と、
前記追加送信処理によって共通化させられた前記管理データを前記大区画に対応付けて記録することにより、当該大区画が含むすべての前記小区画に個別に前記管理データを対応付けて記録する場合に記録される前記管理データの量の総和に対して当該大区画について記録される前記管理データの量を削減させる共通管理処理を実行する共通管理手段と、
前記追加送信データの量である追加送信データ量と、前記共通管理処理により削減させられる前記管理データの量である削減管理データ量とに基づいて、前記追加送信処理を実行するか否かを決定する追加送信制御手段と、
を備える地図情報送信システム。
【請求項2】
前記追加送信制御手段は、単位データ量あたりのデータ送信コストと前記追加送信データ量とに基づくデメリット指標量が、単位データ量あたりのデータ記録コストと前記削減管理データ量とに基づくメリット指標量以下である場合に、前記追加送信処理を実行すると決定する、
請求項1に記載の地図情報送信システム。
【請求項3】
前記追加送信制御手段は、所定の更新タイミングで更新された前記単位データ量あたりのデータ送信コストに基づいて前記デメリット指標量を取得する、
請求項2に記載の地図情報送信システム。
【請求項4】
前記追加送信制御手段は、所定の更新タイミングで更新された前記単位データ量あたりのデータ記録コストに基づいて前記メリット指標量を取得する、
請求項2または請求項3のいずれかに記載の地図情報送信システム。
【請求項5】
前記共通管理手段と前記個別管理手段とは、前記送信先に送信済みの前記地図情報のバージョンに固有の管理値を示す前記管理データをそれぞれ前記大区画と前記小区画とに対応付けて記録し、
前記追加送信手段は、前記対象小区画を含む前記大区画を構成するすべての前記小区画について前記送信先に送信済みの前記地図情報のバージョンの前記管理値を共通化させるように、前記追加送信処理を実行する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の地図情報送信システム。
【請求項6】
前記共通管理手段と前記個別管理手段とは、前記送信先に送信済みの前記地図情報が最新バージョンである場合、最新バージョンであることを示す前記管理データをそれぞれ前記大区画と前記小区画とに対応付けて記録し、
前記追加送信手段は、前記対象小区画を含む前記大区画を構成するすべての前記小区画について前記送信先に送信済みの前記地図情報のバージョンが最新となるように、前記追加送信処理を実行する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の地図情報送信システム。
【請求項7】
大区画を構成する複数の小区画ごとに対応付けられた地図情報を取得する地図情報取得工程と、送信要求がなされた前記小区画である対象小区画に対応付けられた前記地図情報を送信先に送信する通常送信工程と、前記送信先に送信済みの前記地図情報のバージョンを示す管理データを前記小区画ごとに個別に対応付けて記録する個別管理工程と、を含む地図情報送信方法であって、
前記対象小区画以外の前記小区画に対応付けられた前記地図情報である追加送信データを、前記対象小区画に対応付けられた前記地図情報に追加して前記送信先に送信することにより、前記対象小区画を含む前記大区画を構成するすべての前記小区画について前記送信先に送信済みの前記地図情報のバージョンを示す前記管理データを共通化させる追加送信処理を実行する追加送信工程と、
前記追加送信処理によって共通化させられた前記管理データを前記大区画に対応付けて記録することにより、当該大区画が含むすべての前記小区画に個別に前記管理データを対応付けて記録する場合に記録される前記管理データの量の総和に対して当該大区画について記録される前記管理データの量を削減させる共通管理処理を実行する共通管理工程と、
前記追加送信データの量である追加送信データ量と、前記共通管理処理により削減させられる前記管理データの量である削減管理データ量とに基づいて、前記追加送信処理を実行するか否かを決定する追加送信制御工程と、
を含む地図情報送信方法。
【請求項8】
大区画を構成する複数の小区画ごとに対応付けられた地図情報を取得する地図情報取得機能と、送信要求がなされた前記小区画である対象小区画に対応付けられた前記地図情報を送信先に送信する通常送信機能と、前記送信先に送信済みの前記地図情報のバージョンを示す管理データを前記小区画ごとに個別に対応付けて記録する個別管理機能と、をコンピュータに実行させる地図情報送信プログラムであって、
前記対象小区画以外の前記小区画に対応付けられた前記地図情報である追加送信データを、前記対象小区画に対応付けられた前記地図情報に追加して前記送信先に送信することにより、前記対象小区画を含む前記大区画を構成するすべての前記小区画について前記送信先に送信済みの前記地図情報のバージョンを示す前記管理データを共通化させる追加送信処理を実行する追加送信機能と、
前記追加送信処理によって共通化させられた前記管理データを前記大区画に対応付けて記録することにより、当該大区画が含むすべての前記小区画に個別に前記管理データを対応付けて記録する場合に記録される前記管理データの量の総和に対して当該大区画について記録される前記管理データの量を削減させる共通管理処理を実行する共通管理機能と、
前記追加送信データの量である追加送信データ量と、前記共通管理処理により削減させられる前記管理データの量である削減管理データ量とに基づいて、前記追加送信処理を実行するか否かを決定する追加送信制御機能と、
をコンピュータに実行させる地図情報送信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−37259(P2013−37259A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174623(P2011−174623)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】