説明

地図更新データ供給装置、バージョンテーブル、地図データ更新システム、及び地図更新データ供給方法

【課題】ナビゲーション装置からの更新要求区画を更新した場合に、隣接する区画間の整合性を保障しつつ更新データファイルのデータ量を少なく抑え、更にそのような更新を実現するために用いるデータテーブルのデータ量を少なく抑える。
【解決手段】 更新用地図データMaの各区画pとそれに隣接する区画pとの組み合わせである区画組gに関連付けて、各区画組gを構成する区画p間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを示す保障バージョンvaの情報が格納されたバージョンテーブルVTと、バージョンテーブルVTに基づいて更新要求区画paを更新した場合に隣接する区画p間の整合性を保障するために更新が必要な区画pbを抽出し、各更新必要区画pbについての保障バージョンvaの情報を取得する手段9と、更新用地図データベースDB1に基づいて、更新データファイルfaを生成する手段10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばナビゲーション装置に用いるナビゲーション用地図データのような更新対象となる対象地図データの更新用の更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置、この地図更新データ供給装置に用いるバージョンテーブル、前記地図更新データ供給装置を用いた地図データ更新システム、及び地図更新データ供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでにも、ナビゲーション装置に使用される道路地図等の地図データの内容を部分的に更新する技術が知られている。例えば、下記の特許文献1に記載の装置では、新たに造られた道路について、当該新設道路が既存の幹線道路と繋がる部分までを1つのデータ群として保持するために、当該新設道路を構成する一連のリンク番号を格納したデータ群テーブルを備えている。そして、ナビゲーション装置から、複数の区画に分割された地図データの一部の区画の更新要求があった場合に、前記データ群テーブルに格納された新設道路が当該更新要求のあった区画以外にも延びている場合には、前記データ群テーブルを参照して当該新設道路の全体の更新情報をナビゲーション装置に提供する構成となっている。
【0003】
これにより、ナビゲーション装置から指定された地図データの一部の区画について更新情報を提供した場合であっても、隣接する区画との間で道路が途切れることを防止できる。したがって、一部の区画についての更新後にも、適切な経路探索が可能となり、更には地図表示の見栄えも良くすることが可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−178248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の装置では、データ群テーブルは、新設道路を構成する一連のリンク番号を格納する構成となっているために、多数の新設道路がある場合や新設道路の長さが長い場合等には、データ群テーブルに登録されるリンク番号等の情報数が多くなり、データ群テーブルのデータ量も多くなるという問題がある。
【0006】
また、データ群テーブルは、新設道路を構成する一連のリンク番号を格納する構成となっているために、更新要求があった区画以外の区画において、当該新設道路に関連して以前から存在する道路が変更されている場合に、その変更箇所までを適切に更新することができないという問題がある。したがって、新設道路と以前から存在する道路との接続関係等が適正とならず、経路探索等が適切に行えない場合が生じ得るという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、更新対象となる対象地図データの更新用の更新データファイルを供給する場合に、更新要求区画を更新した場合における隣接する区画間の整合性を保障しつつ前記更新データファイルのデータ量を少なく抑えるとともに、そのような更新を実現するために用いるデータテーブルのデータ量を少なく抑えることができる地図更新データ供給装置、この地図更新データ供給装置に用いるバージョンテーブル、前記地図更新データ供給装置を用いた地図データ更新システム、及び地図更新データ供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る、更新対象となる対象地図データの更新用の更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置の特徴構成は、複数の区画に分割された更新用地図データが複数の更新バージョンを有して格納された更新用地図データベースと、前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組に関連付けて、各区画組を構成する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを示す保障バージョンの情報が格納されたバージョンテーブルと、前記対象地図データの更新要求の対象となる区画である更新要求区画について、前記バージョンテーブルに基づいて、当該更新要求区画を更新した場合に隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画である更新必要区画を抽出し、当該各更新必要区画についての保障バージョンの情報を取得する更新区画情報取得手段と、前記更新用地図データベースに基づいて、前記更新要求区画についての更新データファイル、及び前記更新区画情報取得手段により抽出された各更新必要区画についての前記保障バージョンに示される更新バージョンの更新データファイルを生成する更新データファイル生成手段と、を備える点にある。
【0009】
ここで、「隣接する区画間の整合性」とは、具体的には、隣接する区画間の境界での地図データが表す内容の接続関係についての整合性のことである。したがって、例えば、地図データが表す内容としての道路や建物等の地物が隣接する区画間にわたって存在する場合には、隣接する区画間の境界での各地物の接続関係についての整合性が、「隣接する区画間の整合性」となる。
【0010】
この特徴構成によれば、区画間の整合性を保障できる保障バージョンの情報が格納された前記バージョンテーブルに基づいて、更新要求区画を更新した場合に隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画を抽出することができる。これにより、更新する区画の数を必要最小限に抑えることができるため、更新後の区画間の整合性を保障しつつ前記更新データファイルのデータ量を少なく抑えることができる。また、このような更新を実現するために用いる前記バージョンテーブルは、前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組と、前記保障バージョンの情報とが格納されているものであり、道路等の地物に関する個別の情報が格納されるものではないため、テーブル全体のデータ量を少なく抑えることができる。
【0011】
ここで、前記バージョンテーブルは、互いに隣接する区画間にわたって存在する一又は二以上の地物を含む区画の組み合わせで構成された区画組の情報が格納されたテーブルであり、前記各区画組に関連付けられた前記保障バージョンの情報は、前記一又は二以上の地物の中の最も新しい地物が初めて前記更新用地図データ中に出現したときの更新バージョンを示す情報であると好適である。
【0012】
この構成によれば、互いに隣接する区画間にわたって存在する一又は二以上の地物を含む区画が、隣接する区画間の整合性を保障するために前記更新区画情報取得手段により抽出すべき候補として前記バージョンテーブルに格納されていることになる。したがって、前記更新区画情報取得手段が前記バージョンテーブルから更新すべき区画を抽出する処理を簡略化できるとともに、前記バージョンテーブルのデータ量を少なくすることができる。また、前記保障バージョンの情報を、前記一又は二以上の地物の中の最も古くから存在する地物が初めて前記更新用地図データ中に出現したときの更新バージョンを示す情報としているので、隣接する区画間にわたって存在する一又は二以上の地物の前記区画間の境界での接続関係を確実に保障しつつ、更新が必要な各区画についての必要最小限の更新データファイルを生成することが可能となる。
【0013】
また、前記更新区画情報取得手段は、前記前記更新必要区画として、互いに隣接する区画間にわたって存在する地物を含む区画であって、前記更新要求区画を更新した場合に、前記互いに隣接する区画間の境界での前記地物の接続関係を保障するために更新が必要となる区画を抽出する構成とすると好適である。
【0014】
この構成によれば、前記更新要求区画を更新した場合に、当該更新要求区画の更新に伴って、隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要となる区画である前記更新必要区画を適切に抽出することができる。
【0015】
また、前記更新区画情報取得手段は、前記バージョンテーブルに基づいて、前記更新要求区画との組み合わせで前記区画組を構成する区画を抽出し、当該抽出された各区画と前記更新要求区画との区画組の前記保障バージョンを前記抽出された各区画の保障バージョンとし、前記抽出された各区画を起点区画とし、この起点区画を含む前記区画組であって前記起点区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの前記区画組を構成する区画を抽出し、当該抽出された各区画と前記起点区画との区画組の前記保障バージョンを前記抽出された各区画の保障バージョンとするとともに、前記抽出された各区画を新たな起点区画とする処理を、前記起点区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの前記区画組がなくなるまで繰り返し、前記抽出された各区画を前記更新必要区画とし、前記各区画の保障バージョンを前記各更新必要区画についての保障バージョンとする構成とすると好適である。
【0016】
この構成によれば、隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画である前記更新必要区画を抽出するに際して、前記保障バージョンに示される、隣接する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンまで更新することを前提として、前記更新要求区画の更新により更新が必要となる区画、及び当該更新が必要となる区画の更新により更新が必要となる区画を探索して抽出することになる。このため、起点区画となる各区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの区画がなくなれば探索を終了することになる。したがって、前記更新要求区画を更新することに伴って更新が必要となる前記更新必要区画の数を必要最小限に抑えて抽出することができるとともに、更新後における隣接する各区画間の整合性を確実に保障することができる。
【0017】
また、前記更新用地図データにおいて特定の主要道路の更新があった場合に、当該主要道路についての更新データファイルを生成する主要道路更新データファイル生成手段と、前記主要道路の更新があった場合に、当該主要道路を地物として含む区画についての当該区画内の他の道路と前記主要道路との接続関係に基づいて、更新が必要な区画を抽出する道路関係区画抽出手段と、を備え、前記更新区画情報取得手段は、前記主要道路の更新があった場合に、前記道路関係区画抽出手段により抽出された区画を、前記更新要求区画とする構成とすると好適である。
【0018】
この構成によれば、前記対象地図データに含まれる特定の主要道路について、常に最新の更新バージョンにより更新された状態とすることが可能となる。また、このような主要道路の更新に伴って更新する必要がある区画を、当該主要道路を地物として含む区画についての当該区画内の他の道路と前記主要道路との接続関係に基づいて抽出し、その区画を前記更新要求区画とする。したがって、更新後の区画間の整合性を保障しつつ、更新する区画の数を必要最小限に抑えることができ、前記更新データファイルのデータ量も少なく抑えることができる。
【0019】
ここで更に、前記道路関係区画抽出手段は、前記主要道路の更新された部分に接続される他の道路が存在する区画を、前記更新の必要がある区画として抽出する構成とすると好適である。
【0020】
この構成によれば、主要道路の更新に伴って更新する必要がある区画を適切に抽出することが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る地図データ更新システムの特徴構成は、上記特徴構成を備えた地図更新データ供給装置と、ナビゲーション装置とを有して構成され、前記ナビゲーション装置は、前記対象地図データとしての複数の区画に分割されたナビゲーション用地図データが格納されたナビゲーション用地図データベースと、前記更新要求区画についての更新要求データファイルを生成する更新要求生成手段と、前記地図更新データ供給装置から供給された前記更新データファイルを取得する更新データファイル取得手段と、前記更新データファイルに基づいて、前記ナビゲーション用地図データの更新を行う地図データ更新手段と、を備える点にある。
【0022】
この特徴構成によれば、前記ナビゲーション装置は、前記地図データ供給装置から供給される更新データファイルにより前記ナビゲーション用地図データの更新を行う。この際、上記のとおり、前記地図データ供給装置から供給する前記更新データファイルのデータ量を少なく抑えることができる。したがって、前記地図データ供給装置と前記ナビゲーション装置との間で前記更新データファイルを送受信する際の通信速度及び通信コストを低く抑えることが可能となる。
【0023】
また、本発明に係るバージョンテーブルの特徴構成は、複数の区画に分割された更新用地図データが複数の更新バージョンを有して格納された更新用地図データベースを備え、更新対象となる対象地図データの更新用の更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置で、前記対象地図データの更新要求の対象となる区画である更新要求区画を更新した場合に隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画である更新必要区画を抽出し、当該各更新必要区画についての保障バージョンの情報を取得するために用いるものであって、前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組に関連付けて、各区画組を構成する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを示す保障バージョンの情報が格納された点にある。
【0024】
この特徴構成を有するバージョンテーブルを用いることにより、地図更新データ供給装置が、更新要求区画を更新した場合に隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画を抽出するに際して、更新後の区画間の整合性を保障しつつ、更新する区画の数を必要最小限に抑えて前記更新データファイルのデータ量を少なく抑えることが可能となる。また、このバージョンテーブルは、前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組と、前記保障バージョンの情報とが格納されているものであり、道路等の地物に関する個別の情報が格納されるものではないため、テーブル全体のデータ量を少なく抑えることができる。
【0025】
ここで、互いに隣接する区画間にわたって存在する一又は二以上の地物を含む区画の組み合わせで構成された区画組の情報が格納され、前記各区画組に関連付けられた前記保障バージョンの情報は、前記一又は二以上の地物の中の最も古くから存在する地物が初めて前記更新用地図データ中に出現したときの更新バージョンを示す情報であると好適である。
【0026】
この構成によれば、互いに隣接する区画間にわたって存在する一又は二以上の地物を含む区画が、隣接する区画間の整合性を保障するために前記更新区画情報取得手段により抽出すべき候補として格納される。したがって、前記地図更新データ供給装置がこのバージョンテーブルから更新すべき区画を抽出する処理を簡略化できるとともに、このバージョンテーブルのデータ量を少なくすることができる。また、前記保障バージョンの情報を、前記一又は二以上の地物の中の最も古くから存在する地物が初めて前記更新用地図データ中に出現したときの更新バージョンを示す情報としているので、隣接する区画間にわたって存在する一又は二以上の地物の前記区画間の境界での接続関係を確実に保障しつつ、更新が必要な各区画についての必要最小限の更新データファイルを、前記地図更新データ供給装置が生成することが可能となる。
【0027】
また、本発明に係る、更新対象となる対象地図データの更新用の更新データファイルを供給する地図更新データ供給方法の特徴構成は、複数の区画に分割された更新用地図データが複数の更新バージョンを有して格納された更新用地図データベースを用い、前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組に関し、各区画組を構成する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを示す保障バージョンとし、前記対象地図データの更新要求の対象となる区画である更新要求区画について、当該更新要求区画を更新した場合に隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画である更新必要区画を抽出し、当該各更新必要区画についての前記保障バージョンの情報を取得する更新区画情報取得ステップと、前記更新用地図データベースに基づいて、前記更新要求区画についての更新データファイル、及び前記更新区画情報取得手段により抽出された各更新必要区画についての前記保障バージョンに示される更新バージョンの更新データファイルを生成する更新データファイル生成ステップと、生成した前記更新データファイルを前記対象地図データ側に供給する更新データファイル供給ステップと、を備える点にある。
【0028】
この特徴構成によれば、更新要求区画を更新した場合に隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画を抽出することができる。これにより、更新する区画の数を必要最小限に抑えることができるため、更新後の区画間の整合性を保障しつつ前記更新データファイルのデータ量を少なく抑えることができる。
【0029】
ここで、前記更新区画情報取得ステップにおいて、前記更新要求区画との組み合わせで前記区画組を構成する区画を抽出し、当該抽出された各区画と前記更新要求区画との区画組の前記保障バージョンを前記抽出された各区画の保障バージョンとし、前記抽出された各区画を起点区画とし、この起点区画を含む前記区画組であって前記起点区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの前記区画組を構成する区画を抽出し、当該抽出された各区画と前記起点区画との区画組の前記保障バージョンを前記抽出された各区画の保障バージョンとするとともに、前記抽出された各区画を新たな起点区画とする処理を、前記起点区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの前記区画組がなくなるまで繰り返し、前記抽出された各区画を前記更新必要区画とし、前記各区画の保障バージョンを前記各更新必要区画についての保障バージョンとする処理を行う構成とすると好適である。
【0030】
この構成によれば、隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画である前記更新必要区画を抽出するに際して、前記保障バージョンに示される、隣接する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンまで更新することを前提として、前記更新要求区画の更新により更新が必要となる区画、及び当該更新が必要となる区画の更新により更新が必要となる区画を探索して抽出することになる。このため、起点区画となる各区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの区画がなくなれば探索を終了することになる。したがって、前記更新要求区画を更新することに伴って更新が必要となる前記更新必要区画の数を必要最小限に抑えて抽出することができるとともに、更新後における隣接する各区画間の整合性を確実に保障することができる。
【0031】
また、特定の主要道路の更新があった場合には、前記更新区画情報取得ステップの前に、前記主要道路についての更新データファイルを生成する主要道路更新データファイル生成ステップと、前記主要道路を地物として含む区画についての当該区画内の他の道路と前記主要道路との接続関係に基づいて、前記主要道路の更新に伴って更新する必要がある区画を抽出する道路関係区画抽出ステップと、を実行し、前記道路関係区画抽出ステップにより抽出された区画を、前記更新要求区画とする構成とすると好適である。
【0032】
この構成によれば、前記対象地図データに含まれる特定の主要道路について、常に最新の更新バージョンにより更新された状態とすることが可能となる。また、このような主要道路の更新に伴って更新する必要がある区画を抽出し、その区画を前記更新要求区画とする。したがって、更新後の区画間の整合性を保障しつつ、更新する区画の数を必要最小限に抑えることができ、前記更新データファイルのデータ量も少なく抑えることができる。
【0033】
また、本発明に係る、複数の区画に分割された地図データの特定の更新要求区画を少なくとも更新する地図データ更新方法の特徴構成は、複数の更新バージョンの更新用地図データが格納された更新用地図データベースを用い、前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組に関し、各区画組を構成する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを保障バージョンとし、前記更新要求区画を起点区画として、整合性の保障が必要な関係にある区画組を順次追跡し、その追跡順に見て前記保障バージョンが同じ又は古い関係にある区画組を順次抽出し、抽出された区画組を構成する区画を、前記更新要求区画の更新に伴って更新が必要である更新必要区画とする点にある。
【0034】
この特徴構成によれば、更新要求区画を更新したことに伴い、隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画を必要最小限の数だけ抽出して更新することが可能となる。したがって、更新後の地図データの区画間の整合性を保障しつつ、地図データの更新処理を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
〔第一の実施形態〕
本発明の第一の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る地図更新データ供給装置1の構成を模式的に示すブロック図である。また、図2は、本実施形態に係るナビゲーション装置2の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態では、地図更新データ供給装置1とナビゲーション装置2とは、それぞれに通信装置6、26を備え、各種の通信ネットワークを介してデータの送受信が可能に接続されており、全体として地図データ更新システムを構成している。そして、地図更新データ供給装置1は、ナビゲーション装置2に対して、ナビゲーション用地図データMbの更新用の更新データファイルfaを供給する。更新データファイルfaの供給を受けたナビゲーション装置2は、この更新データファイルfaに基づいてナビゲーション用地図データMbの更新を行う。以下、本実施形態に係る地図更新データ供給装置1及びナビゲーション装置2の構成について詳細に説明する。
【0036】
1.地図更新データ供給装置1
図1に示すように、地図更新データ供給装置1は、更新用地図データベースDB1、バージョンテーブルVT、制御装置3、入力装置4、表示装置5、及び通信装置6を備えている。また、制御装置3は、データベース更新手段7、バージョンテーブル更新手段8、更新区画情報取得手段9、更新データファイル生成手段10、及び通信制御手段11を備えている。ここで、制御装置3は、CPU等の演算処理装置、及びソフトウエア(プログラム)やデータ等を格納するためのRAMやROM等の記憶媒体等を備えて構成されている。そして、制御装置3が備える各手段7〜11は、この制御装置3の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア或いはその両方により実装されて構成されている。また、更新用地図データベースDB1及びバージョンテーブルVTは、例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の書き換え可能な記憶媒体に格納されている。以下、地図更新データ供給装置1の各部の構成について順に説明する。
【0037】
1−1.更新用地図データベースDB1
図3は、更新用地図データベースDB1内に格納された更新用地図データMaの構成を説明するための説明図である。この図に示すように、更新用地図データベースDB1には、複数の区画pに分割された更新用地図データMaが複数の更新バージョンを有して格納されている。本例では、最初に作成された最も古い更新用地図データMaをバージョン1としている。そして、新たな情報に基づいて更新用地図データMaを更新する毎にバージョン2、バージョン3、・・・とバージョンアップし、現時点で最新のバージョン6まで、6つの更新バージョンの更新用地図データMaが更新用地図データベースDB1に格納されている。なお、本願の実施形態の説明において、各バージョン1〜6の更新用地図データMaを区別する場合には、例えば「バージョン1の更新用地図データMa1」のように、更新用地図データの符号として、バージョン番号を付したMa1〜Ma6の符号を用いる。一方、単に「更新用地図データMa」というときは、各バージョンの更新用地図データMa1〜Ma6を総称するものとする。また、本願の実施形態の説明において、「区画p」というときは、更新用地図データMa及びナビゲーション用地図データMbの複数の区画を総称するものとし、個別の区画を指定する場合には、区画1、区画2、・・・等(図10参照)のような区画番号を用いることとする。また、後述するように、複数の区画pの中から特に選択された区画が「更新要求区画pa」又は「更新必要区画pb」となる。
【0038】
また、本例では、更新用地図データMaを構成する複数の区画pは、各区画pが同じ大きさの矩形となるように分割されている。例えば、日本全土の地図データを対象とする場合、更新用地図データMaは、全体として日本全土を含む範囲を有し、それをm×n(m、nは自然数)分割して各区画pを構成する。そして、更新用地図データMaは、道路、道路に沿って設けられるペイント標示や信号機等、建築物(家屋やビル等)や橋梁やトンネル等の建造物、河川や海岸線等の自然物、及び行政区域等の各種の地物の配置及び形状等の情報を有している。図4は、更新用地図データMaが有する情報の内容を説明するための説明図である。この図に示すように、更新用地図データMaは、各区画p内及び複数の区画p間にわたって存在する多数の道路等の地物の情報を有している。なお、図示は省略するが、更新用地図データMaは、道路以外の前記各種の地物の情報も有しており、これらの地物についても隣接する区画p間にわたって存在する場合がある。但し、以下では説明の簡略化のため、前記各種地物の中で、ナビゲーション装置2に供給する地図データの内容として特に重要な「道路」の情報を例として説明する。
【0039】
1−2.バージョンテーブルVT
図5は、本実施形態に係るバージョンテーブルVTの一例を示す図である。この図に示すように、バージョンテーブルVTには、更新用地図データMaの各区画pとそれに隣接する区画pとの組み合わせである区画組gに関連付けて、各区画組gを構成する区画p間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを示す保障バージョンvaの情報が格納されている。本例では、バージョンテーブルVTには、互いに隣接する区画p間にわたって存在する一又は二以上の道路(地物の一例)を含む2つの区画pの組み合わせで構成された区画組gについての情報が格納されている。したがって、バージョンテーブルVTには、互いに隣接する区画p間にわたって存在する地物がない区画組gの情報は格納されていない。また、このバージョンテーブルVTには、保障バージョンvaが「1」の区画組gについての情報も格納されていない。これは、保障バージョンvaが「1」の区画組gは、当該区画組gを構成する区画間にわたって存在する道路の全てがバージョン1の更新用地図データMa1から存在するため、当該区画組gを構成する一方の区画pが更新された場合であっても他方の区画pを更新する必要がなく、後述する更新区画情報取得手段9により更新必要区画pbとして抽出する必要がないからである。
【0040】
また、本例では、バージョンテーブルVTは、2つの区画pの組み合わせが同じ区画組gであっても、一方の区画pを基準とするものと他方の区画pを基準とするものとで異なる区画組gとして格納した構成となっている。したがって、例えば、区画7と区画8との組み合わせで構成される区画組gとしては、区画7を基準とする区画組gと、区画8を基準とする区画組gとの2つがバージョンテーブルVTに格納されている。そして、このバージョンテーブルVTは、各区画組gを構成する2つの区画pの内の基準となる区画pの区画番号順に区画組gを配列した構成となっている。これにより、バージョンテーブルVT内の区画組gの検索が容易になり、その検索速度を高めることが可能となっている。
【0041】
そして、バージョンテーブルVTの各区画組gに関連付けられた保障バージョンvaの情報は、各区画組gを構成する2つの隣接する区画p間にわたって存在する一又は二以上の道路(地物の一例)の中の最も新しい道路が初めて更新用地図データMa中に出現したときの更新バージョンを示す情報となっている。図6は、この保障バージョンvaの決定方法を説明するための説明図である。この図に示す区画組gの例では、バージョン1の更新用地図データMa1において、道路r1が隣接する2つの区画p間にわたって存在している。そして、バージョン1の更新用地図データMa1からバージョン2の更新用地図データMa2に更新された際に道路r2が新たに設けられて出現し、バージョン2の更新用地図データMa2からバージョン3の更新用地図データMa3に更新された際に道路r3が新たに設けられて出現している。なお、更新バージョンがバージョン4以降、最新のバージョン6までの更新では、区画組gを構成する区画p間にわたって存在する道路についての更新は無かったものとする。この例の場合、区画組gを構成する区画p間にわたって存在する道路として3つの道路r1〜r3があり、その中の最も新しいものは道路r3であり、この道路r3が初めて更新用地図データMa中に出現したときの更新バージョンはバージョン3である。したがって、この図6の例に示す区画組gの保障バージョンvaは「3」となる。なお、区画組gを構成する区画p間にわたって存在する道路が一つの場合には、その道路が初めて更新用地図データMa中に出現したときの更新バージョンが保障バージョンvaとなる。
【0042】
1−3.入力装置4、表示装置5、及び通信装置6
次に、図1に戻り、地図更新データ供給装置1の入力装置4、表示装置5、及び通信装置6について説明する。入力装置4は、キーボード、マウス、タッチパネル、スキャナ等の各種の入力用機器を有して構成されている。そして、作業者が、この入力装置4を用いて、更新用地図データMaのバージョンアップのための地図情報の追加、変更、削除といった更新入力等を行うことができるようになっている。表示装置5は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等を有して構成されている。そして、作業者が、入力装置4を用いた作業を行う場合等に、更新用地図データMaの状態やその更新作業の内容等の表示を行うことができるようになっている。通信装置6は、有線又は無線の公知の各種の通信ネットワークを介して、ナビゲーション装置2の通信装置26との間で通信してデータの送受信を行うことができる構成となっている。このような通信ネットワークとしては、例えば、インターネット、有線又は無線の公衆電話網、有線又は無線LAN(Local Area Network)、専用回線等を用いることができる。
【0043】
1−4.制御装置3
上記のとおり、制御装置3は、データベース更新手段7、バージョンテーブル更新手段8、更新区画情報取得手段9、更新データファイル生成手段10、及び通信制御手段11を備えている。データベース更新手段7は、入力装置4を用いた更新用地図データMaのバージョンアップのための地図情報の追加、変更、削除といった更新入力の処理、及び当該更新入力に基づいた新しいバージョンの更新用地図データMaの生成及びその更新用地図データベースDB1への格納の処理を行う手段である。また、バージョンテーブル更新手段8は、データベース更新手段7により新しいバージョンの更新用地図データMaが生成された際に、その新しい更新用地図データMaの内容に従って、バージョンテーブルVTを更新する処理を行う手段である。これらデータベース更新手段7及びバージョンテーブル更新手段8による処理については、後に図11に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0044】
更新区画情報取得手段9は、後述するナビゲーション装置2からのナビゲーション用地図データMbの更新要求の対象となる区画pである更新要求区画paについて、バージョンテーブルVTに基づいて、当該更新要求区画paを更新した場合に隣接する区画p間の整合性を保障するために更新が必要な区画である更新必要区画pbを抽出し(図10参照)、当該各更新必要区画pbについての保障バージョンvaの情報を取得する手段である。ここでは、更新区画情報取得手段9は、前記更新必要区画pbとして、互いに隣接する区画p間にわたって存在する道路(地物の一例)を含む区画pであって、更新要求区画paを更新した場合に、互いに隣接する区画p間の境界での道路の接続関係を保障するために更新が必要となる区画pを抽出する処理を行う。そして、このように抽出された更新必要区画pbの保障バージョンvaの情報を、バージョンテーブルVTから取得する。この更新区画情報取得手段9による処理については、後に図9に示すフローチャート等に基づいて詳細に説明する。
【0045】
更新データファイル生成手段10は、更新用地図データベースDB1に基づいて、更新要求区画pa及び更新区画情報取得手段9により抽出された各更新必要区画pbについての更新データファイルfaを生成する手段である。具体的には、更新データファイル生成手段10は、更新要求区画paについては最新の更新バージョン(本例ではバージョン6)の更新データファイルfaを生成し、更新区画情報取得手段9により抽出された各更新必要区画pbについては保障バージョンvaに示される更新バージョンの更新データファイルfaを生成する。本例では、各更新データファイルfaは、ナビゲーション用地図データMbの更新要求区画pa又は更新必要区画pbについての上記所定の更新バージョンの地図データ、及び当該更新データファイルfaに含まれる地図データの区画pを特定するための情報、例えばナビゲーション装置2のナビゲーション用地図データMbと共通で使用する区画ID情報等を含んだデータファイルとして生成される。
【0046】
通信制御手段11は、通信装置6の動作制御を行う手段である。具体的には、通信制御手段11は、通信装置6による地図更新データ供給装置1とナビゲーション装置2との通信を制御し、ナビゲーション装置2から送信される更新要求データファイルfbの受信、及びナビゲーション装置2への更新データファイルfaの送信等のための動作を通信装置6に行わせる。よって、本実施形態においては、この通信制御手段11及び通信装置6が、ナビゲーション装置2に更新データファイルfaを供給する「更新データファイル供給手段」を構成する。
【0047】
2.ナビゲーション装置2
図2に示すように、ナビゲーション装置2は、ナビゲーション用地図データベースDB2、制御装置21、自位置検出装置22、表示装置23、音声出力装置24、入力装置25、及び通信装置26を備えている。また、制御装置21は、ナビゲーション用演算手段27、更新要求生成手段28、地図データ更新手段29、及び通信制御手段30を備えている。ここで、ナビゲーション用演算手段27は、ナビゲーション装置2としての基本的な案内機能を実現するための演算手段である。このナビゲーション装置2の基本的な案内機能としては、例えば、自位置や指定した位置の周辺の地図表示、出発地から目的地までの経路計算、目的地までの経路誘導、自位置を道路上に補正するマップマッチング、目的地の検索等の機能がある。このナビゲーション装置2の制御装置21は、CPU等の演算処理装置、及びソフトウエア(プログラム)やデータ等を格納するためのRAMやROM等の記憶媒体等を備えて構成されている。そして、制御装置21が備える各手段27〜30は、この制御装置21の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア或いはその両方により実装されて構成されている。また、ナビゲーション用地図データベースDB2は、例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の書き換え可能な記憶媒体に格納されている。以下、ナビゲーション装置2の各部の構成について順に説明する。
【0048】
2−1.ナビゲーション用地図データベースDB2
ナビゲーション用地図データベースDB2には、ナビゲーション装置2の案内機能を実現するために、ナビゲーション用演算手段27により参照される地図データであるナビゲーション用地図データMbが格納されている。本実施形態においては、このナビゲーション用地図データMbが、本発明における「対象地図データ」に相当する。図7は、ナビゲーション用地図データベースDB2に格納されたナビゲーション用地図データMbの構成を説明するための説明図である。この図に示すように、ナビゲーション用地図データMbは、主要地図データMb1、経路計算データMb2、及び経路誘導データMb3を備えている。ここで、主要地図データMb1は、格納される道路等の地物の情報の詳細度に応じて複数のレイヤ(階層)に分けられている。本例では、主要地図データMb1は、下位から上位に向かって順に、レイヤ1、レイヤ2、レイヤ3の3つのレイヤを有している。ここで、下位のレイヤほど詳細な道路等の地物の情報を含んでいる。また、主要地図データMb1の各レイヤは、複数の区画pに分割されている。この際、上位のレイヤほど、広い領域に対応した区画pが設定されている。したがって、上位のレイヤの一つの区画pには、それより下位のレイヤの複数の区画pに対応する領域が含まれる。主要地図データMb1の各レイヤには、リンク及びノードにより構成される道路ネットワークの情報が含まれる。この主要地図データMb1は、自位置や指定した位置の周辺の地図表示や、自位置を道路上に補正するマップマッチング等に際して、ナビゲーション用演算手段27により参照される。
【0049】
経路計算データMb2は、主要地図データMb1に関連付けられており、前記道路ネットワークを構成する各リンクのコスト、通行条件、上位レイヤとの間でのノードの対応関係等の情報を有して構成されている。この経路計算データMb2は、出発地から目的地までの経路計算に際して、ナビゲーション用演算手段27により参照される。経路誘導データMb3は、主要地図データMb1に関連付けられており、目的地までの経路誘導に際して必要となる画像や音声等の情報を有して構成されている。したがって、この経路誘導データMb3は、目的地までの経路誘導に際して、ナビゲーション用演算手段27により参照される。
【0050】
以上のように、ナビゲーション用地図データMbの主要地図データMb1では、各レイヤより一つの区画pに対応する現実世界の領域の大きさが異なっている。本例では、主要地図データMb1のレイヤ1の各区画pに含まれる領域の大きさが、更新用地図データMaの各区画pの領域の大きさに対応している。したがって、地図更新データ供給装置1から供給される更新データファイルfaは、主要地図データMb1のレイヤ1の区画pに対応する区画単位のデータファイルとなる。そして、主要地図データMb1のレイヤ2及びレイヤ3、並びに経路計算データMb2及び経路誘導データMb3は、この更新データファイルfaによる更新後の主要地図データMb1のレイヤ1のデータに基づいて、地図データ更新手段により生成されて更新される。
【0051】
2−2.自位置検出装置22
自位置検出装置22は、ナビゲーション装置2の現在位置を検出するための装置である。そのため、自位置検出装置22は、図示は省略するが、例えば、GPS受信機、方位センサ、及び距離センサ等を有して構成されている。そして、これらにより取得された情報に基づいて現在の位置を示す座標や進行方位等の情報を取得して、制御装置21に出力する。制御装置21では、ナビゲーション用演算手段27が、この自位置検出装置22により検出された自位置情報とナビゲーション用地図データMbとに基づいて、自位置表示やマップマッチング等の処理を行う。
【0052】
2−3.表示装置23、音声出力装置24、入力装置25、及び通信装置26
表示装置23は、液晶ディスプレイ等を有して構成されている。音声出力装置24は、スピーカ及びアンプ等を備えて構成される。これらの表示装置23及び音声出力装置24は、ナビゲーション用演算手段27により制御されて動作し、自位置表示、2地点間の経路計算、進路案内、目的地検索等のための表示や音声出力等を行う。入力装置25は、表示装置23と一体的に配置されたタッチパネル、操作スイッチ、リモートコントローラ等を備えて構成されている。この入力装置25は、ユーザによる操作入力を受け付け、その内容を制御装置21へ出力する。通信装置6は、有線又は無線の公知の各種の通信ネットワークを介して、地図更新データ供給装置1の通信装置6との間で通信してデータの送受信を行うことができる構成となっている。
【0053】
2−4.制御装置21
上記のとおり、制御装置21は、ナビゲーション用演算手段27、更新要求生成手段28、地図データ更新手段29、及び通信制御手段30を備えている。ナビゲーション用演算手段27は、上記のとおり、例えば、自位置や指定した位置の周辺の地図表示、出発地から目的地までの経路計算、目的地までの経路誘導、自位置を道路上に補正するマップマッチング、目的地の検索等のナビゲーション装置2としての基本的な案内機能を実現するための演算手段である。本例では、ナビゲーション用演算手段27は、図示は省略するが、ナビゲーション用の動作プログラムとして、表示プログラム、マップマッチングプログラム、経路計算プログラム、案内プログラム、及び検索プログラムの5つのアプリケーションプログラムを有している。ここで、表示プログラムは、表示装置23の表示画面に自位置や目的地等の周辺の地図表示や当該地図上への自位置表示等を行うためのプログラムである。マップマッチングプログラム、自位置検出装置22により検出された自位置を地図の道路上に合わせるマップマッチング処理を行うためのプログラムである。経路計算プログラムは、例えば自位置等の出発地から入力装置25により入力された目的地までの案内経路等を探索する経路計算を行うためのプログラムである。案内プログラムは、経路計算プログラムにより決定された目的地までの経路に従って、表示装置23の表示画面による案内表示や音声出力装置24による音声案内等により、ユーザに対して適切な進路を案内する処理を行うためのプログラムである。検索プログラムは、目的地や地図表示のための地点等を、住所、電話番号、施設名称、ジャンル等に基づいて検索するためのプログラムである。またその他の各アプリケーションプログラムによるナビゲーション装置2の動作処理は公知であるので詳細な説明は省略する。そして、これらの各アプリケーションプログラムにおいて、ナビゲーション用地図データMbが参照されて用いられる。
【0054】
更新要求生成手段28は、更新要求区画paについての更新要求データファイルfbを生成する手段である。ここでは、更新要求生成手段28は、更新要求区画paを決定し、当該更新要求区画paについての更新データファイルfaを地図更新データ供給装置1に要求するための更新要求データファイルfbを生成する。本例では、更新要求区画paは、ナビゲーション装置2のナビゲーション用演算手段27が参照するために必要なナビゲーション用地図データMbの区画pであり、主要地図データMb1のレイヤ1の区画pの中から一又は二以上が選択される。ここで、ナビゲーション用演算手段27が参照するために必要な区画pとしては、現に必要な区画p及び将来必要となる可能性が高い区画が含まれる。したがって、更新要求区画paとしては、例えば、自宅として登録している位置周辺、自位置検出装置22により検出される現在の自位置周辺、目的地周辺、設定された目的地までの経路周辺等を含む区画pが該当する。また、このような更新要求区画paを決定するに際して、例えば、自宅位置周辺については更新する領域を広くして多くの区画pを選択し、目的地までの経路周辺については更新する領域を狭くして必要最小限の区画pを選択する構成としても好適である。また、ナビゲーション装置2の使用者による地域を指定した地図更新処理の要求を受け付ける場合には、その際に指定された地域に含まれる区画pを更新要求区画paとする。そして、更新要求データファイルfbは、決定された一又は二以上の更新要求区画paを特定するための情報、例えば地図更新データ供給装置1の更新用地図データMaと共通で使用する区画ID情報等を含んだデータファイルとして生成される。
【0055】
地図データ更新手段29は、地図更新データ供給装置1から供給された更新データファイルfaに基づいて、ナビゲーション用地図データMbの更新を行う手段である。上記のとおり、本例では、各更新データファイルfaは、更新要求区画pa又は更新必要区画pbについての地図データを含むファイルとなっている。したがって、地図データ更新手段29は、ナビゲーション用地図データMbの主要地図データMb1のレイヤ1における、更新要求区画pa及び更新必要区画pbに対応する区画pの地図データを、更新データファイルfaに含まれる更新要求区画pa及び更新必要区画pbの地図データに変更することにより、ナビゲーション用地図データMbの更新を行う。
【0056】
通信制御手段30は、通信装置26の動作制御を行う手段である。具体的には、通信制御手段30は、通信装置26による地図更新データ供給装置1とナビゲーション装置2との通信を制御し、地図更新データ供給装置1への更新要求データファイルfbの送信、及び地図更新データ供給装置1から送信される更新データファイルfaの受信等のための動作を通信装置26に行わせる。したがって、本実施形態においては、この通信制御手段30及び通信装置26が、地図更新データ供給装置から供給された前記更新データファイルを取得する「更新データファイル取得手段」を構成する。
【0057】
3.地図更新データ供給装置1の動作処理
次に、地図更新データ供給装置1の動作処理についてフローチャートに基づいて詳細に説明する。ここでは、地図更新データ供給装置1による、ナビゲーション装置2からのナビゲーション用地図データMbの更新要求に応じて更新データファイルfaを生成し送信する処理、及びその処理に際して、更新が必要な区画の情報を取得するための処理、並びに更新用地図データMaの更新とそれに伴うバージョンテーブルVTの更新の処理について説明する。
【0058】
3−1.更新データファイルfaの生成・送信処理
図8は、地図更新データ供給装置1による更新データファイルfaの生成方法を示すフローチャートである。この図に示すように、地図更新データ供給装置1は、ナビゲーション装置2からの更新要求があった場合、すなわち更新要求データファイルfbを受信した場合に(ステップ#01:Yes)、更新区画情報取得手段9により、更新区画情報を取得する処理を行う(ステップ#02)。このステップ#02の更新区画情報を取得する処理は、バージョンテーブルVTに基づいて、更新用地図データMaの各区画pとそれに隣接する区画pとの組み合わせである区画組gに関し、各区画組gを構成する区画p間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを保障バージョンとし、更新要求区画paを更新した場合に隣接する区画p間の整合性を保障するために更新が必要な更新必要区画pbを抽出し、当該各更新必要区画pbについての保障バージョンvaの情報を取得する処理である。この処理については、後に図9に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0059】
その後、地図更新データ供給装置1は、更新データファイル生成手段10により、更新データファイルfaを生成する処理を行う(ステップ#03)。この処理は、具体的には、更新用地図データベースDB1に格納されている各バージョンの更新用地図データMa(Ma1〜Ma6)に基づいて、更新要求区画paについての最新の更新バージョン(本例ではバージョン6)の更新データファイルfa、及びステップ#02で更新必要区画pbが抽出された場合には、当該抽出された各更新必要区画pbについての保障バージョンvaに示される更新バージョンの更新データファイルfaを生成する処理となる。そして、地図更新データ供給装置1は、通信制御手段11により通信装置6を制御して、ステップ#03で生成された更新データファイルfaをナビゲーション装置2に送信する(ステップ#04)。以上により、更新データファイルfaがナビゲーション装置2(対象地図データ側)に供給される。
【0060】
3−2.更新区画情報の取得処理
次に、上記ステップ#02の更新区画情報の取得処理について説明する。本例では、更新区画情報取得手段9は、上記のとおり、更新要求区画paを更新した場合に隣接する区画p間の整合性を保障するために更新が必要な更新必要区画pbとして、互いに隣接する区画p間にわたって存在する道路(地物の一例)を含む区画pであって、更新要求区画paを更新した場合に、互いに隣接する区画p間の境界での道路の接続関係を保障するために更新が必要となる区画pを抽出する処理を行う。また更新必要区画pbの抽出は、更新要求区画paを起点区画として、整合性の保障が必要な関係にある区画組gを順次追跡し、その追跡順に見て保障バージョンvaが同じ又は古い関係にある区画組gを順次抽出し、抽出された区画組gを構成する区画pを、更新必要区画pbとすることにより行う。そして、このように抽出された更新必要区画pbの保障バージョンvaの情報を、バージョンテーブルVTから取得する。図9は、このような更新区画情報の取得処理を示すフローチャートであり、図10は、更新必要区画pbの抽出処理の具体例を説明するための説明図である。この図10において、各区画pの中央に配置された四角形で囲んだ数字は、更新要求区画paの更新バージョン及び各更新必要区画pbの保障バージョンvaを表している。また、複数の区画p間にわたって配置されている線は道路(地物の一例)を表しており、各道路の近くに配置された括弧内の数字は、各道路が初めて更新用地図データMa中に出現したときの更新バージョンを表している。以下では、図10に示す区画7が更新要求区画paである場合を例として説明する。ここで、更新要求区画paについては、最新の更新バージョンの更新データファイルfaをナビゲーション装置2に供給するため、本例では、更新要求区画paの更新バージョンはバージョン6となる。
【0061】
図9に示すように、更新区画情報取得手段9は、まず、バージョンテーブルVTに基づいて、更新要求区画pa(ここでは区画7)を起点区画とし、この更新要求区画paとの組み合わせで区画組gを構成する区画pを抽出する(ステップ#11)。図5に示すバージョンテーブルVTを参照すると、更新要求区画paである区画7との組み合わせで区画組gを構成する区画pとして、区画8と区画12が格納されている。したがって、本例では、このステップ#11で区画8と区画12が抽出される。このように抽出された各区画p(ここでは区画8及び区画12)は、更新必要区画pbとなる。次に、更新区画情報取得手段9は、ステップ#11で抽出された区画pが有るか否かについて判断する(ステップ#12)。抽出された区画pがない場合には(ステップ#12:No)、更新必要区画pbがないことになるので、処理は終了する。
【0062】
一方、本例のように、ステップ#11で抽出された区画p(すなわち更新必要区画pb)が有る場合には(ステップ#12:Yes)、当該抽出された各更新必要区画pbの保障バージョンvaを決定する(ステップ#13)。この際、更新区画情報取得手段9は、抽出された各更新必要区画pbと更新要求区画paとの区画組gの保障バージョンva(図5参照)を、各更新必要区画pbの保障バージョンvaとする。本例では、更新要求区画paが区画7であり、更新必要区画pbが区画8及び区画12であるので、区画8の保障バージョンvaは区画7と区画8との区画組gの保障バージョンvaである「2」となり、区画12の保障バージョンvaは区画7と区画12との区画組gの保障バージョンvaである「5」となる。図10の各更新必要区画pbの中央に配置した四角形で囲んだ数字は、各更新必要区画pbの保障バージョンvaを表している。
【0063】
次に、ステップ#11で抽出された各更新必要区画pb(ここでは区画8及び区画12)を起点区画とし、この起点区画を含む区画組gであって起点区画の保障バージョンvaと同じ又はそれより古い保障バージョンvaの区画組gを構成する区画pを抽出する(ステップ#14)。この際、当然ながら、既に抽出された区画p(ここでは更新要求区画paである区画7)は対象外とする。図5に示すバージョンテーブルVTを参照すると、起点区画の一つである区画8を含む区画組gを構成する区画pは、既に抽出された区画7のみであるため、区画8を起点区画として抽出される区画pはない。一方、同じく起点区画である区画12を含む区画組gを構成する区画pとしては、既に抽出された区画7を除いても、区画13が格納されている。そして、この区画12と区画13との区画組gの保障バージョンvaは「5」であり、ステップ#13で決定された区画12の保障バージョンvaと同じである。したがって、本例では、図10に示すように、このステップ#14で区画12を起点区画として区画13が抽出される。このように抽出された各区画p(ここでは区画13)は、更新必要区画pbとなる。次に、更新区画情報取得手段9は、ステップ#14で抽出された区画pが有るか否かについて判断する(ステップ#15)。抽出された区画pがない場合には(ステップ#15:No)、そこで処理は終了する。
【0064】
一方、本例のように、ステップ#14で抽出された区画p(すなわち更新必要区画pb)が有る場合には(ステップ#15:Yes)、更新区画情報取得手段9は、当該抽出された各更新必要区画pbの保障バージョンvaを決定する(ステップ#16)。この際、更新区画情報取得手段9は、抽出された各更新必要区画pbと前記起点区画との区画組gの保障バージョンva(図5参照)を、各更新必要区画pbの保障バージョンvaとする。本例では、区画12を起点区画として区画13が抽出されているので、区画13の保障バージョンvaは、区画12と区画13との区画組gの保障バージョンvaである「5」となる。
【0065】
そして、更新区画情報取得手段9は、ステップ#14で抽出された各更新必要区画pbを新たな起点区画とし、ステップ#14〜#16の処理を、前記起点区画の保障バージョンvaと同じ又はそれより古い保障バージョンvaの区画組gがなくなるまで、すなわちステップ#15の判断が「No」となるまで繰り返す。本例では、次に、区画13を起点区画とし、この起点区画を含む区画組gであって起点区画の保障バージョンvaと同じ又はそれより古い保障バージョンvaの区画組gを構成する区画pを抽出する(ステップ#14)。図5に示すバージョンテーブルVTを参照すると、起点区画である区画13を含む区画組gを構成する区画としては、既に抽出された区画12を除いて、区画14と区画18が格納されている。そして、区画13と区画14との区画組gの保障バージョンvaは「3」であり、区画13と区画18との区画組gの保障バージョンvaは「4」である。これらはいずれも起点区画である区画13の保障バージョンvaである「5」より古い。したがって、ここでは図10に示すように、区画13を起点区画として区画14及び区画18が抽出される。このように抽出された区画14及び区画18は、更新必要区画pbとなる。そして、更新区画情報取得手段9は、当該抽出された更新必要区画pbである区画14及び区画18の保障バージョンvaを決定する(ステップ#16)。本例では、区画14の保障バージョンvaは、区画13と区画14との区画組gの保障バージョンvaである「3」となり、区画18の保障バージョンvaは、区画13と区画18との区画組gの保障バージョンvaである「4」となる。
【0066】
なお、図10に示すように、区画13と区画14との間にわたって存在する道路は2本あり、各道路が初めて更新用地図データMa中に出現したときの更新バージョンは、一方がバージョン3で他方がバージョン2である。したがって、図5のバージョンテーブルVTでは、それらの道路(地物の一例)の中の最も新しい道路が初めて更新用地図データMa中に出現したときの更新バージョンであるバージョン3が、区画13と区画14との区画組gの保障バージョンvaとなっている。
【0067】
次に、区画14及び区画18のそれぞれを新たな起点区画として上記と同様に区画pの抽出を行う。まず、区画14を起点区画とする処理について説明する。まず、起点区画である区画14を含む区画組gであって起点区画の保障バージョンvaと同じ又はそれより古い保障バージョンvaの区画組gを構成する区画pを抽出する(ステップ#14)。図5に示すバージョンテーブルVTを参照すると、起点区画である区画14を含む区画組gを構成する区画としては、既に抽出された区画13を除いて、区画9と区画19が格納されている。そして、区画14と区画9との区画組gの保障バージョンvaは「5」であり、起点区画である区画14の保障バージョンvaである「3」より新しい。一方、区画14と区画19との区画組gの保障バージョンvaは「2」であり、起点区画である区画14の保障バージョンvaである「3」より古い。したがって、ここでは図10に示すように、区画14を起点区画として区画19が抽出される。このように抽出された区画19は、更新必要区画pbとなる。そして、更新区画情報取得手段9は、当該抽出された更新必要区画pbである区画19の保障バージョンvaを決定する(ステップ#16)。本例では、区画19の保障バージョンvaは、区画14と区画19との区画組gの保障バージョンvaである「2」となる。
【0068】
次に、区画18を起点区画とする処理について説明する。まず、起点区画である区画18を含む区画組gであって起点区画の保障バージョンvaと同じ又はそれより古い保障バージョンvaの区画組gを構成する区画pを抽出する(ステップ#14)。図5に示すバージョンテーブルVTを参照すると、起点区画である区画18を含む区画組gを構成する区画としては、既に抽出された区画13を除いて、区画23が格納されている。そして、区画18と区画23との区画組gの保障バージョンvaは「4」であり、起点区画である区画18の保障バージョンvaである「4」と同じである。したがって、ここでは図10に示すように、区画14を起点区画として区画23が抽出される。このように抽出された区画23は、更新必要区画pbとなる。そして、更新区画情報取得手段9は、当該抽出された更新必要区画pbである区画23の保障バージョンvaを決定する(ステップ#16)。本例では、区画23の保障バージョンvaは、区画18と区画23との区画組gの保障バージョンvaである「4」となる。
【0069】
なお、図10に示すように、区画18と区画23との間にわたって存在する道路は2本あり、各道路が初めて更新用地図データMa中に出現したときの更新バージョンは、一方がバージョン4で他方がバージョン3である。したがって、図5のバージョンテーブルVTでは、それらの道路(地物の一例)の中の最も新しい道路が初めて更新用地図データMa中に出現したときの更新バージョンであるバージョン4が、区画18と区画23との区画組gの保障バージョンvaとなっている。
【0070】
次に、上記のようにして、区画14を起点区画して抽出された区画19、及び区画18を起点区画して抽出された区画23のそれぞれを新たな起点区画として上記と同様に区画pの抽出を行う。まず、区画19を起点区画とする処理について説明する。まず、起点区画である区画19を含む区画組gであって起点区画の保障バージョンvaと同じ又はそれより古い保障バージョンvaの区画組gを構成する区画pを抽出する(ステップ#14)。図5に示すバージョンテーブルVTを参照すると、起点区画である区画19を含む区画組gを構成する区画としては、既に抽出された区画14を除いて、区画20が格納されている。そして、区画19と区画20との区画組gの保障バージョンvaは「4」であり、起点区画である区画19の保障バージョンvaである「2」より新しい。したがって、ここでは図10に示すように、区画19を起点区画として抽出される区画pはない。
【0071】
次に、区画23を起点区画とする処理について説明する。まず、起点区画である区画23を含む区画組gであって起点区画の保障バージョンvaと同じ又はそれより古い保障バージョンvaの区画組gを構成する区画pを抽出する(ステップ#14)。図5に示すバージョンテーブルVTを参照すると、起点区画である区画23を含む区画組gを構成する区画としては、既に抽出された区画18を除いて、区画24が格納されている。そして、区画23と区画24との区画組gの保障バージョンvaは「6」であり、起点区画である区画23の保障バージョンvaである「4」より新しい。したがって、ここでは図10に示すように、区画23を起点区画として抽出される区画pはない。
【0072】
したがって、本例の場合、以上により起点区画の保障バージョンvaと同じ又はそれより古い保障バージョンvaの区画組gがなくなり、ステップ#14により抽出された区画pがない(ステップ#15:No)状態となる。したがって、図8のステップ#02の更新区画情報の取得処理は以上で終了する。その結果、本例では、更新区画情報の取得処理により区画8、区画12、区画13、区画14、区画18、区画19、区画23が更新必要区画pbとして抽出されるとともに、各更新必要区画pbの保障バージョンvaの情報が取得される。
【0073】
3−3.更新用地図データMa及びバージョンテーブルVTの更新処理
図11は、更新用地図データMa及びバージョンテーブルVTの更新処理方法を示すフローチャートである。この図に示すように、地図更新データ供給装置1は、入力装置4を介して更新用地図データMaのバージョンアップのための地図情報の追加、変更、削除といった更新入力が有ったか否かを判定する(ステップ#21)。そして、更新用地図データMaの更新入力があった場合には(ステップ#21:Yes)、地図更新データ供給装置1は、データベース更新手段7により、当該更新入力の内容に基づいて更新後の新しいバージョンの更新用地図データMaを生成し、更新用地図データベースDB1に格納する(ステップ#22)。ここで、更新後の新しいバージョンの更新用地図データMaは、更新用地図データベースDB1に格納されている既存の最も新しいバージョンの更新用地図データMaに対して、前記更新入力の内容に含まれる地図情報の追加、変更、削除等を行うことにより生成される。
【0074】
その後、地図更新データ供給装置1は、バージョンテーブル更新手段8により、バージョンテーブルVTを更新する(ステップ#23)。この際、バージョンテーブル更新手段8は、データベース更新手段7により生成された更新後の新しいバージョンの更新用地図データMaに基づいて、互いに隣接する区画p間にわたって存在する一又は二以上の道路(地物の一例)であって、更新により新たに追加、変更、又は削除された道路に関する情報をバージョンテーブルVTに反映させる処理を行う。具体的には、例えば、互いに隣接する2つの区画p間にわたって存在する道路が新たに設けられ又は変更された場合であって、その2つの区画pにより構成される区画組gがバージョンテーブルVTに格納されていなかった場合には、バージョンテーブル更新手段8は、バージョンテーブルVTに当該区画組gの情報を追加するとともに、その区画組gに関連付けて更新後の新しい更新用地図データMaの更新バージョンと同じ保障バージョンvaの情報を格納する。一方、同じ場合であって、その2つの区画pにより構成される区画組gが既にバージョンテーブルVTに格納されていた場合には、バージョンテーブル更新手段8は、バージョンテーブルVTの当該区画組gに関連付けて更新後の新しい更新用地図データMaの更新バージョンと同じ保障バージョンvaの情報を格納する。また、例えば、互いに隣接する2つの区画p間にわたって存在する道路が廃止された場合には、当該2つの区画p間にわたって存在する他の道路を考慮して、当該2つの区画p間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを示す保障バージョンvaの情報を、当該2つの区画pにより構成される区画組gに関連付けてバージョンテーブルVTに格納する。
【0075】
4.ナビゲーション装置2における地図更新のための動作処理
次に、ナビゲーション装置2における地図更新のための動作処理について図12に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。この図に示すように、ナビゲーション装置2は、ナビゲーション用地図データMbの更新に際して、更新要求生成手段28による更新要求データファイルfbを生成して地図更新データ供給装置1へ送信し、当該更新要求データファイルfbを受けた地図更新データ供給装置1により生成された更新データファイルfaを取得し、当該更新データファイルfaに基づいて、ナビゲーション用地図データMbの更新を行う。
【0076】
具体的には、図12に示すように、ナビゲーション装置2は、まず、地図更新処理が開始されたか否かを判定する(ステップ#31)。この地図更新処理の開始は、例えば、ナビゲーション装置2が予め定められた期間で定期的に地図更新処理を行う場合、ナビゲーション用演算手段27により所定の条件を満たす形態でのナビゲーション用地図データMbの参照があった場合、或いは、ナビゲーション装置2の使用者による地図更新処理の開始要求操作があった場合等に開始される。
【0077】
そして、地図更新処理が開始された場合には(ステップ#31:Yes)、ナビゲーション装置2は、更新要求生成手段28により、更新要求区画paを決定する(ステップ#32)。ここで、更新要求区画paとしては、ナビゲーション用演算手段27による処理のために現に必要な区画p及び将来必要となる可能性が高い区画が含まれる。したがって、更新要求区画paとしては、例えば、自宅として登録している位置周辺、自位置検出装置22により検出される現在の自位置周辺、目的地周辺、設定された目的地までの経路周辺等を含む区画pが該当する。また、このような更新要求区画paを決定するに際して、例えば、自宅位置周辺については更新する領域を広くして多くの区画pを選択し、目的地までの経路周辺については更新する領域を狭くして必要最小限の区画pを選択する構成としても好適である。また、ナビゲーション装置2の使用者による地域を指定した地図更新処理の要求を受け付ける場合には、その際に指定された地域に含まれる区画pを更新要求区画paとする。なお、本例では、更新要求区画paは、主要地図データMb1のレイヤ1の区画pの中から一又は二以上が選択される。
【0078】
次に、ナビゲーション装置2は、更新要求生成手段28により、更新要求データファイルfbを生成する(ステップ#33)。ここで、更新要求データファイルfbは、ステップ#32において決定された一又は二以上の更新要求区画paを特定するための情報、例えば地図更新データ供給装置1の更新用地図データMaと共通で使用する区画ID情報等を含んだデータファイルとして生成される。そして、ナビゲーション装置2は、通信制御手段30により通信装置26を制御して、ステップ#33で生成された更新要求データファイルfbを地図更新データ供給装置1に送信する(ステップ#34)。この更新要求データファイルfbを受信した地図更新データ供給装置1では、上記のとおり、更新データファイルfaを生成してナビゲーション装置2に送信する処理が行われる。ナビゲーション装置2は、所定の時間を経過しても地図更新データ供給装置1からの更新データファイルfaを受信できない場合には(ステップ#35:No)、通信異常と判断して更新要求データファイルfbの送信(ステップ#34)を再度行う。
【0079】
そして、ナビゲーション装置2は、地図更新データ供給装置1からの更新データファイルfaを受信した場合には(ステップ#35:Yes)、更新データファイルfaを取得し(ステップ#36)、地図データ更新手段29により、当該更新データファイルfaに基づいて、ナビゲーション用地図データMbの更新を行う(ステップ#37)。本例では、上記のとおり、各更新データファイルfaは、更新要求区画pa又は更新必要区画pbについての地図データを含むファイルとなっている。したがって、地図データ更新手段29は、ナビゲーション用地図データMbの主要地図データMb1のレイヤ1における、更新要求区画pa及び更新必要区画pbに対応する区画pの地図データを、更新データファイルfaに含まれる更新要求区画pa及び更新必要区画pbの地図データに変更することにより、ステップ#37のナビゲーション用地図データMbの更新を行う。以上により、ナビゲーション装置2における地図更新のための動作処理が終了する。
【0080】
〔第二の実施形態〕
次に、本発明の第二の実施形態について図面に基づいて説明する。図13は、本実施形態に係る地図更新データ供給装置1の構成を模式的に示すブロック図である。この図に示すように、本実施形態に係る地図更新データ供給装置1は、上記第一の実施形態に係る地図更新データ供給装置1の構成に加えて、制御装置3が主要道路更新データファイル生成手段12及び道路関係区画抽出手段13を備えた構成となっている。この地図更新データ供給装置1は、更新用地図データMaにおいて特定の主要道路の更新があった場合に、ナビゲーション装置2からの更新要求とは無関係に、前記主要道路についての更新データファイルfaを生成するとともに、前記主要道路の更新に伴って更新する必要がある区画pを抽出する。また、地図更新データ供給装置1は、このように抽出された区画pを更新要求区画paとし、上記第一の実施形態における更新要求区画paと同様に取り扱う。すなわち、当該更新要求区画paを更新した場合に隣接する区画p間の整合性を保障するために更新が必要な更新必要区画pbを抽出し、当該各更新必要区画pbについての保障バージョンvaの情報を取得する。そして、地図更新データ供給装置1は、更新要求区画paについての更新データファイルfa、及び前記抽出された各更新必要区画pbについての保障バージョンvaに示される更新バージョンの更新データファイルfaを生成する。また、地図更新データ供給装置1は、このように生成された、前記主要道路、更新要求区画pa、及び更新必要区画pbについての更新データファイルfaをナビゲーション装置2に送信する。なお、特に説明しない点については、本実施形態に係る地図更新データ供給装置1は、上記第一の実施形態の構成と同様とする。
【0081】
図14は、特定の主要道路raについて更新があった場合における、主要道路raと他の道路rbとの接続関係の一例を示す図である。以下では、この図に示す例を用いて、地図更新データ供給装置1の各部の構成について説明する。ここで、特定の主要道路raには、ナビゲーション装置2のナビゲーション用演算手段27による経路計算や経路誘導等のために参照する可能性が高い主要な道路が該当する。このような特定の主要道路raとしては、特に遠距離の経路計算や経路誘導等のために参照する可能性が高い主要道路であって、例えば、高速道路及び有料道路が該当する構成とすると好適である。また、場合によっては、高速道路及び有料道路に加えて、国道及び主要な県道等を含めることもできる。
【0082】
主要道路更新データファイル生成手段12は、更新用地図データMaにおいて特定の主要道路raの更新があった場合に、ナビゲーション装置2からの更新要求とは無関係に、主要道路raについての更新データファイルfaを生成する手段である。ここで、主要道路更新データファイル生成手段12は、更新用地図データベースDB1に格納されている各バージョンの更新用地図データMa(Ma1〜Ma6)に基づいて、主要道路raについての最新の更新バージョン(本例ではバージョン6)の更新データファイルfaを生成する。この主要道路更新データファイル生成手段12により生成される主要道路raについての更新データファイルfaは、上記第一の実施形態において説明した区画単位の更新データファイルfaとは異なり、各区画p内における当該主要道路のみを対象とした道路単位のデータである。本例では、主要道路raについての更新データファイルfaは、主要道路raの更新があった区画pについての更新後の主要道路raの配置及び形状等のデータ、及び当該更新があった区画pを特定するための情報、例えばナビゲーション装置2のナビゲーション用地図データMbと共通で使用する区画ID情報等を含んだデータファイルとして生成される。図14に示す例では、区画9、10、13、14、及び18についての主要道路raの更新データファイルfaが生成される。なお、更新があった主要道路raが含まれる区画pであっても、その区画p内の主要道路raの状態に変更がない区画、本例では区画16及び17については更新データファイルfaは生成されない。
【0083】
道路関係区画抽出手段13は、更新用地図データMaにおいて主要道路raの更新があった場合に、当該主要道路raを地物として含む区画pについての当該区画p内の他の道路rbと主要道路raとの接続関係に基づいて、更新が必要な区画pを抽出する手段である。本例では、道路関係区画抽出手段13は、主要道路raの更新された部分に接続される他の道路rbが存在する区画pを、更新の必要がある区画pとして抽出する構成としている。本例では、図14に示すように、区画1〜25の中で、区画9、10、13、14、16、17、及び18内に主要道路raが含まれている。また、これらの区画pの中で、区画9、10、13、14、及び18に主要道路raの更新された部分が含まれている。そして、本例では、主要道路raの更新された部分に接続される他の道路rbが存在するのは区画10及び18である。したがって、本例では、道路関係区画抽出手段13は、区画10及び区画18を、更新の必要がある区画pとして抽出する。道路関係区画抽出手段13をこのような構成とすることにより、主要道路raのみを更新しても、区画p内の他の道路rbとの接続関係がないために、区画p内の道路の整合性を保障することができる区画pを更新対象から除外する構成とすることができる。したがって、主要道路raの更新をナビゲーション用地図データMbに迅速に反映させ、かつ更新後の各区画間の整合性を保障しつつ、後述する更新データファイル生成手段10により生成される更新データファイルfaのデータ量を少なくすることが可能となる。
【0084】
また、本実施形態においては、更新区画情報取得手段9は、主要道路raの更新があった場合に、道路関係区画抽出手段13により抽出された区画pを更新要求区画paとする。すなわち、更新区画情報取得手段9は、道路関係区画抽出手段13により抽出された区画pを更新要求区画paとし、当該更新要求区画paを更新した場合に隣接する区画p間の整合性を保障するために更新が必要な更新必要区画pbを抽出し、当該各更新必要区画pbについての保障バージョンvaの情報を取得する。そして、更新データファイル生成手段10は、更新要求区画paについての最新の更新バージョン(本例ではバージョン6)の更新データファイルfa、及び前記抽出された各更新必要区画pbについての保障バージョンvaに示される更新バージョンの更新データファイルfaを生成する。その後、通信制御手段11は、通信装置6の動作制御を行い、主要道路更新データファイル生成手段12により生成された主要道路raについての最新の更新バージョンの更新データファイルfa、並びに、更新データファイル生成手段10により生成された、更新要求区画paについての最新の更新バージョンの更新データファイルfa、及び更新必要区画pbについての保障バージョンvaに示される更新バージョンの更新データファイルfaをナビゲーション装置2に送信する処理を行う。
【0085】
このようにして送信された更新データファイルfaを受信したナビゲーション装置2では、上記第一の実施形態と同様に、ナビゲーション用地図データMbの更新が行われる。但し、本実施形態においては、ナビゲーション用地図データMbの更新の際、主要道路raについての更新データファイルfaに関しては、区画pの全体の地図データの更新を行わず、各区画pの地図データに含まれる当該主要道路raのデータのみの更新を行う。
【0086】
次に、本実施形態に係る地図更新データ供給装置1における、主要道路raの更新があった場合の更新データファイルfaの生成・送信処理について、図15に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。この図15に示すように、地図更新データ供給装置1は、更新用地図データMaにおいて特定の主要道路raの更新があった場合に(ステップ#51:Yes)、まず、主要道路更新データファイル生成手段12により、主要道路raについての更新データファイルfaを生成する処理を行う(ステップ#52)。この処理は、具体的には、更新用地図データベースDB1に格納されている各バージョンの更新用地図データMa(Ma1〜Ma6)に基づいて、上記のとおり、主要道路raの更新があった区画pについての主要道路raの最新の更新バージョンの更新データファイルfaを生成する処理となる。次に、地図更新データ供給装置1は、道路関係区画抽出手段13により、主要道路raを地物として含む区画pについての当該区画p内の他の道路rbと主要道路raとの接続関係に基づいて、主要道路raの更新に伴って更新する必要がある区画pを抽出する(ステップ#53)。具体的には、道路関係区画抽出手段13は、主要道路raの更新された部分に接続される他の道路rbが存在する区画pを、更新の必要がある区画pとして抽出する。したがって、図14に示す例では、区画10と区画18が抽出される。
【0087】
そして、地図更新データ供給装置1は、更新区画情報取得手段9により、道路関係区画抽出手段13により抽出された区画pを更新要求区画paとし(ステップ#54)、上記第一の実施形態と同様に、更新区画情報を取得する処理を行う(ステップ#55)。このステップ#55の更新区画情報を取得する処理は、バージョンテーブルVTに基づいて、更新要求区画paを更新した場合に隣接する区画p間の整合性を保障するために更新が必要な更新必要区画pbを抽出し、当該各更新必要区画pbについての保障バージョンvaの情報を取得する処理である。この処理については、上記第一の実施形態において、図9に示すフローチャートに基づいて既に説明したので、ここでは説明しない。
【0088】
その後、地図更新データ供給装置1は、更新データファイル生成手段10により、更新要求区画pa及び抽出された各更新必要区画pbについての更新データファイルfaを生成する処理を行う(ステップ#56)。この処理は、具体的には、更新用地図データベースDB1に格納されている各バージョンの更新用地図データMa(Ma1〜Ma6)に基づいて、更新要求区画paについての最新の更新バージョン(本例ではバージョン6)の更新データファイルfa、及びステップ#55で更新必要区画pbが抽出された場合には、当該抽出された各更新必要区画pbについての保障バージョンvaに示される更新バージョンの更新データファイルfaを生成する処理となる。そして、地図更新データ供給装置1は、通信制御手段11により通信装置6を制御して、ステップ#52で生成された主要道路raについての最新の更新バージョンの更新データファイルfa、並びにステップ#56で生成された更新要求区画paについての最新の更新バージョンの更新データファイルfa、及び更新必要区画pbについての保障バージョンvaに示される更新バージョンの更新データファイルfaを、ナビゲーション装置2に送信する(ステップ#57)。なお、以上の処理は、ナビゲーション装置2からの更新要求とは無関係に実行される。
【0089】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態では、更新用地図データベースDB1内の更新用地図データMaは、図3に示すように、各更新バージョンについて、更新用地図データMaを構成する全ての区画pの地図データが格納される場合を例として説明した。しかし、更新用地図データMaの構成はこれに限定されない。すなわち、例えば、区画p毎に更新があったものをバージョンアップし、内容に変更がない区画については新たな更新バージョンのデータを生成しない構成とすることにより、区画p毎に最新の更新バージョンが異なる構成とすることも好適な実施形態の一つである。このように構成すれば、更新用地図データベースDB1の全体のデータ量を少なく抑えることが可能となる。
【0090】
(2)上記の各実施形態では、更新データファイルfaは、区画p毎の地図データのファイルとする場合を例として説明した。しかし、更新データファイルfaの構成はこれに限定されない。例えば、この更新データファイルfaを、更新前のナビゲーション用地図データMbの内容に対して変更すべき内容を表す区画p毎の差分データとすることも好適な実施形態の一つである。このような構成とすれば、更新データファイルfaとして各区画pの地図データを全て含む場合と比較して、ファイルのデータ量を少なくすることができる。なお、このような構成とする場合、地図更新データ供給装置1は、ナビゲーション装置2から、ナビゲーション用地図データMbにおける更新要求区画pa又は更新必要区画pbについてのバージョン情報を取得し、当該ナビゲーション用地図データMbのバージョンの地図データと、更新すべきバージョンの地図データとの比較を行い、差分データを生成する構成とすると好適である。
【0091】
(3)また、上記の各実施形態では、更新データファイルfaを、更新要求区画pa又は更新必要区画pbの区画p毎(上記第二の実施形態に係る主要道路raについての更新データファイルfaでは道路毎)に、それぞれ生成する場合を例として説明した。しかし、更新データファイルfaの構成はこれに限定されるものではなく、一つのナビゲーション装置2に対して送信する複数の区画pや主要道路raについての更新データを一つのファイルにまとめた構成とすることも好適な実施形態の一つである。
【0092】
(4)上記の各実施形態では、バージョンテーブルVTは、互いに隣接する2つの区画pにより構成される区画組gの一部のみが格納される場合の例について説明した。しかし、バージョンテーブルVTの構成は上記のようなものに限定されない。したがって、例えば、バージョンテーブルVTは、更新用地図データMa内において互いに隣接する2つの区画pにより構成される区画組gの全てについての情報を格納した構成とすることも好適な実施形態の一つである。
【0093】
(5)上記の各実施形態では、地図更新データ供給装置1は、更新データファイルfaを通信ネットワークを介してナビゲーション装置2に送信する場合の例について説明した。しかし、更新データファイルfaの供給方法はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、地図更新データ供給装置1は、更新データファイルfaを、通信手段を介さず、記録媒体記録手段を用いて所定の記録媒体に更新データファイルfaを記録し、郵送等によりナビゲーション装置2の使用者に提供する構成とすることも好適な実施形態の一つである。この場合、地図更新データ供給装置1は、ナビゲーション装置2からの更新要求を、上記の各実施形態と同様の通信の他、郵送等の他の手段を用いて取得する構成とできる。
【0094】
(6)上記の各実施形態では、更新要求区画paを更新した場合に隣接する区画p間の整合性を保障するために更新が必要な区画である更新必要区画pbを抽出し、更新要求区画pa及び更新必要区画pbについての更新データファイルfaを生成する構成について説明した。一方、上記の実施形態に係る更新必要区画pbの抽出方法は、ナビゲーション装置2の地図データ等のように、複数の区画に分割された地図データの特定の更新要求区画を少なくとも更新する地図データ更新方法にも適用することができる。すなわち、この地図データ更新方法では、上記各実施形態と同様の更新用地図データベースDB1を用いる。また、上記各実施形態と同様のバージョンテーブルVT等に基づいて、更新用地図データMaの各区画pとそれに隣接する区画pとの組み合わせである区画組gに関し、各区画組gを構成する区画p間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを保障バージョンvaとする。そして、更新要求区画paを起点区画として、整合性の保障が必要な関係にある区画組gを順次追跡し、その追跡順に見て保障バージョンvaが同じ又は古い関係にある区画組gを順次抽出し、抽出された区画組gを構成する区画pを更新必要区画pbとする。そして、地図データにおける更新要求区画pa及び更新必要区画pbについての更新を行う。なお、この際の更新要求区画pa及び更新必要区画pbの更新バージョンは、上記各実施形態と同様に決定すると好適である。
【0095】
(7)上記の各実施形態では、地図更新データ供給装置1により供給される更新データファイルfaが、ナビゲーション装置2のナビゲーション用地図データMbを更新対象とする場合を例として説明した。しかし、更新データファイルfaが更新対象とする対象地図データは、ナビゲーション用地図データMbに限定されるものではなく、複数の区画に分割された地図データであれば、各種の用途の地図データを更新対象とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、複数の区画に分割されたナビゲーション用地図データを用いるナビゲーション装置に、前記ナビゲーション用地図データの更新用の更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置等に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る地図更新データ供給装置のブロック図
【図2】本発明の第一の実施形態に係るナビゲーション装置のブロック図
【図3】更新用地図データの構成を説明するための説明図
【図4】更新用地図データが有する情報の内容を説明するための説明図
【図5】バージョンテーブルの一例を示す図
【図6】保障バージョンの決定方法を説明するための説明図
【図7】ナビゲーション用地図データの構成を説明するための説明図
【図8】地図更新データ供給装置による更新データファイルの生成方法を示すフローチャート
【図9】地図更新データ供給装置による更新区画情報の取得処理を示すフローチャート
【図10】更新必要区画の抽出処理の具体例を説明するための説明図
【図11】更新用地図データ及びバージョンテーブルの更新処理方法を示すフローチャート
【図12】ナビゲーション装置における地図更新のための動作処理を示すフローチャート
【図13】本発明の第二の実施形態に係る地図更新データ供給装置のブロック図
【図14】特定の主要道路について更新があった場合における、主要道路と他の道路との接続関係の一例を示す図
【図15】主要道路の更新があった場合の更新データファイルの生成・送信処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0098】
1:地図更新データ供給装置
2:ナビゲーション装置
9:更新区画情報取得手段
10:更新データファイル生成手段
12:主要道路更新データファイル生成手段
13:道路関係区画抽出手段
26:通信装置(更新データファイル取得手段)
28:更新要求生成手段
29:地図データ更新手段
30:通信制御手段(更新データファイル取得手段)
fa:更新データファイル
DB1:更新用地図データベース
Ma:更新用地図データ
DB2:ナビゲーション用地図データベース
Mb:ナビゲーション用地図データ
VT:バージョンテーブル
va:保障バージョン
p:区画
g:区画組
pa:更新要求区画
pb:更新必要区画
ra:主要道路
rb:他の道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
更新対象となる対象地図データの更新用の更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置であって、
複数の区画に分割された更新用地図データが複数の更新バージョンを有して格納された更新用地図データベースと、
前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組に関連付けて、各区画組を構成する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを示す保障バージョンの情報が格納されたバージョンテーブルと、
前記対象地図データの更新要求の対象となる区画である更新要求区画について、前記バージョンテーブルに基づいて、当該更新要求区画を更新した場合に隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画である更新必要区画を抽出し、当該各更新必要区画についての保障バージョンの情報を取得する更新区画情報取得手段と、
前記更新用地図データベースに基づいて、前記更新要求区画についての更新データファイル、及び前記更新区画情報取得手段により抽出された各更新必要区画についての前記保障バージョンに示される更新バージョンの更新データファイルを生成する更新データファイル生成手段と、
を備える地図更新データ供給装置。
【請求項2】
前記バージョンテーブルは、互いに隣接する区画間にわたって存在する一又は二以上の地物を含む区画の組み合わせで構成された区画組の情報が格納されたテーブルであり、
前記各区画組に関連付けられた前記保障バージョンの情報は、前記一又は二以上の地物の中の最も新しい地物が初めて前記更新用地図データ中に出現したときの更新バージョンを示す情報である請求項1に記載の地図更新データ供給装置。
【請求項3】
前記更新区画情報取得手段は、前記更新必要区画として、互いに隣接する区画間にわたって存在する地物を含む区画であって、前記更新要求区画を更新した場合に、前記互いに隣接する区画間の境界での前記地物の接続関係を保障するために更新が必要となる区画を抽出する請求項1又は2に記載の地図更新データ供給装置。
【請求項4】
前記更新区画情報取得手段は、前記バージョンテーブルに基づいて、
前記更新要求区画との組み合わせで前記区画組を構成する区画を抽出し、当該抽出された各区画と前記更新要求区画との区画組の前記保障バージョンを前記抽出された各区画の保障バージョンとし、
前記抽出された各区画を起点区画とし、この起点区画を含む前記区画組であって前記起点区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの前記区画組を構成する区画を抽出し、当該抽出された各区画と前記起点区画との区画組の前記保障バージョンを前記抽出された各区画の保障バージョンとするとともに、前記抽出された各区画を新たな起点区画とする処理を、前記起点区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの前記区画組がなくなるまで繰り返し、
前記抽出された各区画を前記更新必要区画とし、前記各区画の保障バージョンを前記各更新必要区画についての保障バージョンとする請求項1から3のいずれか一項に記載の地図更新データ供給装置。
【請求項5】
前記更新用地図データにおいて特定の主要道路の更新があった場合に、当該主要道路についての更新データファイルを生成する主要道路更新データファイル生成手段と、
前記主要道路の更新があった場合に、当該主要道路を地物として含む区画についての当該区画内の他の道路と前記主要道路との接続関係に基づいて、更新が必要な区画を抽出する道路関係区画抽出手段と、を備え、
前記更新区画情報取得手段は、前記主要道路の更新があった場合に、前記道路関係区画抽出手段により抽出された区画を、前記更新要求区画とする請求項1から4のいずれか一項に記載の地図更新データ供給装置。
【請求項6】
前記道路関係区画抽出手段は、前記主要道路の更新された部分に接続される他の道路が存在する区画を、前記更新の必要がある区画として抽出する請求項5に記載の地図更新データ供給装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の地図更新データ供給装置と、ナビゲーション装置とを有して構成され、
前記ナビゲーション装置は、前記対象地図データとしての複数の区画に分割されたナビゲーション用地図データが格納されたナビゲーション用地図データベースと、前記更新要求区画についての更新要求データファイルを生成する更新要求生成手段と、前記地図更新データ供給装置から供給された前記更新データファイルを取得する更新データファイル取得手段と、前記更新データファイルに基づいて、前記ナビゲーション用地図データの更新を行う地図データ更新手段と、を備える地図データ更新システム。
【請求項8】
複数の区画に分割された更新用地図データが複数の更新バージョンを有して格納された更新用地図データベースを備え、更新対象となる対象地図データの更新用の更新データファイルを供給する地図更新データ供給装置で、前記対象地図データの更新要求の対象となる区画である更新要求区画を更新した場合に隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画である更新必要区画を抽出し、当該各更新必要区画についての保障バージョンの情報を取得するために用いるバージョンテーブルであって、
前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組に関連付けて、各区画組を構成する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを示す保障バージョンの情報が格納されたバージョンテーブル。
【請求項9】
互いに隣接する区画間にわたって存在する一又は二以上の地物を含む区画の組み合わせで構成された区画組の情報が格納され、
前記各区画組に関連付けられた前記保障バージョンの情報は、前記一又は二以上の地物の中の最も古くから存在する地物が初めて前記更新用地図データ中に出現したときの更新バージョンを示す情報である請求項8に記載のバージョンテーブル。
【請求項10】
更新対象となる対象地図データの更新用の更新データファイルを供給する地図更新データ供給方法であって、
複数の区画に分割された更新用地図データが複数の更新バージョンを有して格納された更新用地図データベースを用い、
前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組に関し、各区画組を構成する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを保障バージョンとし、
前記対象地図データの更新要求の対象となる区画である更新要求区画について、当該更新要求区画を更新した場合に隣接する区画間の整合性を保障するために更新が必要な区画である更新必要区画を抽出し、当該各更新必要区画についての前記保障バージョンの情報を取得する更新区画情報取得ステップと、
前記更新用地図データベースに基づいて、前記更新要求区画についての更新データファイル、及び前記更新区画情報取得手段により抽出された各更新必要区画についての前記保障バージョンに示される更新バージョンの更新データファイルを生成する更新データファイル生成ステップと、
生成した前記更新データファイルを前記対象地図データ側に供給する更新データファイル供給ステップと、
を備える地図更新データ供給方法。
【請求項11】
前記更新区画情報取得ステップにおいて、
前記更新要求区画との組み合わせで前記区画組を構成する区画を抽出し、当該抽出された各区画と前記更新要求区画との区画組の前記保障バージョンを前記抽出された各区画の保障バージョンとし、
前記抽出された各区画を起点区画とし、この起点区画を含む前記区画組であって前記起点区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの前記区画組を構成する区画を抽出し、当該抽出された各区画と前記起点区画との区画組の前記保障バージョンを前記抽出された各区画の保障バージョンとするとともに、前記抽出された各区画を新たな起点区画とする処理を、前記起点区画の保障バージョンと同じ又はそれより古い保障バージョンの前記区画組がなくなるまで繰り返し、
前記抽出された各区画を前記更新必要区画とし、前記各区画の保障バージョンを前記各更新必要区画についての保障バージョンとする処理を行う請求項10に記載の地図更新データ供給方法。
【請求項12】
特定の主要道路の更新があった場合には、前記更新区画情報取得ステップの前に、
前記主要道路についての更新データファイルを生成する主要道路更新データファイル生成ステップと、
前記主要道路を地物として含む区画についての当該区画内の他の道路と前記主要道路との接続関係に基づいて、更新が必要な区画を抽出する道路関係区画抽出ステップと、を実行し、
前記道路関係区画抽出ステップにより抽出された区画を、前記更新要求区画とする請求項10又は11に記載の地図更新データ供給方法。
【請求項13】
複数の区画に分割された地図データの特定の更新要求区画を少なくとも更新する地図データ更新方法であって、
複数の更新バージョンの更新用地図データが格納された更新用地図データベースを用い、
前記更新用地図データの各区画とそれに隣接する区画との組み合わせである区画組に関し、各区画組を構成する区画間の整合性を保障できる最も古い更新バージョンを保障バージョンとし、
前記更新要求区画を起点区画として、整合性の保障が必要な関係にある区画組を順次追跡し、その追跡順に見て前記保障バージョンが同じ又は古い関係にある区画組を順次抽出し、
抽出された区画組を構成する区画を、前記更新要求区画の更新に伴って更新が必要である更新必要区画とする地図データ更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−89852(P2008−89852A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269313(P2006−269313)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】