説明

地図表示システム、方法およびプログラム

【課題】経路線が表示される場合であっても視認性の高い地図を表示するための技術の提供。
【解決手段】地図上の道路線のいずれかに経路線が重畳表示される場合には、地図情報に基づいて、表示部に前記道路線および前記経路線を含む前記地図を表示するとともに、前記経路線と前記渋滞度を示す渋滞線とが重ならないような前記道路線と前記渋滞線との間の距離を第1オフセット距離とし、前記表示部において前記道路線から前記第1オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示し、前記道路線のいずれにも前記経路線が重畳表示されない場合には、前記地図情報に基づいて、前記表示部に前記道路線を含む前記地図を表示するとともに、前記道路線と前記渋滞線とが重ならないような前記道路線と前記渋滞線との間の距離を第2オフセット距離とし、前記表示部において前記道路線から前記第2オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部に地図を表示する地図表示システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示部に地図を表示することによって利用者に現在地点や走行予定経路等の情報を提供する技術が知られている。このような地図においては、道路区間を示す道路線と渋滞度を示す渋滞線とを地図上で併記することによって道路区間毎の渋滞度を利用者に認識させる機能が提供される場合もある。そして、このような場合において、地図の縮尺が変化することに伴って道路線と渋滞線とを併記する際の視認性が低下することを防止するため、縮尺率が小さいほど道路線と渋滞線との間隔を狭くする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−288796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術においては、縮尺率に基づいて道路線と渋滞線との間隔を調整しているが、走行予定経路を示す経路線が地図上に表示される場合の視認性を向上する技術は開示されていない。
表示部に地図を表示する場合、一般には、道路種別や道路の実際の幅に応じて道路線の幅を変動させる。一方、経路線の幅を道路種別に応じて変動させると、地図の縮尺によっては経路線の視認が困難になる等の不都合が生じるため、一般に、経路線の幅は縮尺に応じて変動し得るものの、道路線の幅に連動しない。従って、ある縮尺の地図に着目すると、道路線の幅が経路線の幅よりも大きい道路区間と、道路線の幅が経路線の幅よりも小さい道路区間とが併存し得る。この結果、従来技術のように、道路線との関係のみに着目して渋滞線の表示位置を決定した場合には、渋滞線と経路線とが重なる場合が生じることがあり、渋滞線や経路線の視認性を低下させ得る。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、経路線が表示される場合であっても視認性の高い地図を表示するための技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに経路線が重畳表示される場合と、道路線のいずれにも重畳表示されない場合とで異なるオフセット距離を利用して渋滞線の表示位置を決定している。具体的には、道路線のいずれかに経路線が重畳表示される場合には、地図情報に基づいて、表示部に道路線および経路線を含む地図を表示するとともに、経路線と渋滞度を示す渋滞線とが重ならないような道路線と渋滞線との間の距離を第1オフセット距離とし、表示部において道路線から第1オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線を表示する。一方、道路線のいずれにも経路線が重畳表示されない場合には、地図情報に基づいて、表示部に道路線を含む地図を表示するとともに、道路線と渋滞線とが重ならないような道路線と渋滞線との間の距離を第2オフセット距離とし、表示部において道路線から第2オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線を表示する。すなわち、地図内に経路線を表示する場合、経路線と渋滞線とが重ならないように、道路線と渋滞線との距離である第1オフセット距離を設定する。一方、地図内に経路線を表示しない場合、道路線と渋滞線とが重ならないように、道路線と渋滞線との距離である第2オフセット距離を設定する。
【0006】
一般に、表示部において表示可能な全ての縮尺において、地図上の道路線の幅と経路線の幅が一致するとは限らないため、地図内の道路線に経路線が重畳表示される場合、道路線の幅が経路線の幅よりも大きい道路区間と、道路線の幅が経路線の幅よりも小さい道路区間とが併存し得る。そして、地図内に経路線を表示する場合に経路線と渋滞線とが重ならないように第1オフセット距離を設定すれば、道路線の幅が経路線の幅よりも大きい道路区間において道路線と渋滞線とが重なる可能性はあるものの、経路線と渋滞線とは重ならないため、経路線と渋滞線とを高い視認性で表示することができる。また、道路線と渋滞線とが重なる場合であっても、道路線には経路線が重畳されており、経路線は道路を示しているため、利用者が道路線を認識することは容易である。むろん、この場合においても経路線と渋滞線とが重なることはないため、経路線と渋滞線とが高い視認性となった状態は維持される。
【0007】
一方、地図内に経路線を表示しない場合には経路線を考慮する必要がないため、道路線と渋滞線とが重ならないように第2オフセット距離を設定すれば、道路線と渋滞線とが重ならないように表示することが可能であり、道路線と渋滞線とを高い視認性で表示することができる。
【0008】
ここで、地図情報取得手段は、表示部に表示される地図を示す地図情報を取得することができればよく、当該地図情報は表示部に地図を表示するために必要な情報を含んでいればよい。すなわち、地図情報は、道路線の表示位置を特定するための情報(例えば、道路区間の端点の座標および道路区間の接続関係を示す情報)を含む。むろん、地図の描画態様に応じて必要な情報を地図情報として定義しておくことは可能であり、道路種別に応じて道路線の幅を変動させて表示する場合には、道路区間毎の道路種別を示す情報が地図情報に含まれる。
【0009】
渋滞度取得手段は、地図内の道路区間毎の渋滞度を取得することができればよく、通信等によって道路区間毎の渋滞の程度を示す情報を取得する構成等を採用可能である。渋滞度が取得される道路区間は地図内の道路区間の全てであっても良いし一部であっても良い。経路線表示判定手段は、地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されるか否かを判定することができればよく、少なくとも、道路線のいずれかに経路線が重畳表示され得る状態であるか否かを判定することができればよい。
【0010】
表示制御手段は、経路線を重畳表示するか否かに基づいて表示部における渋滞線の表示位置を調整して地図を表示することができればよい。すなわち、地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに経路線が重畳表示される場合のオフセット距離である第1オフセット距離と、重畳表示されない場合のオフセット距離である第2オフセット距離とを異なる論理によって導出することで、それぞれの場合の地図の視認性を高めることができればよい。
【0011】
なお、第1オフセット距離や第2オフセット距離は、線間の距離を示していればよく、例えば、一方の線の幅方向の中心と他方の線の幅方向の中心との間の、幅方向に平行な方向への距離等をオフセット距離とする構成等を採用可能である。また、ここでは、各線が幅を持つ状態において2個の線が重ならないような距離をオフセット距離として定義することができればよい。従って、2個の線が重ならないようにオフセット距離を定義するためには、2個の線の境界が接し、かつ、2個の線が重なっていない状態におけるオフセット距離をオフセット距離の最小値とし、当該最小値以上の値をオフセット距離として定義すればよい。
【0012】
さらに、地図表示システムを実際に運用する際に好ましい構成の例として、現在地点から目的地点までの走行予定経路が設定されている場合に、経路線表示判定手段において、地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されると判定する構成としても良い。すなわち、現在地点から目的地点までの走行予定経路は、現在地点から目的地点までの経路線を地図上に示しつつ経路案内を行うことを目的として設定される。従って、当該走行予定経路が設定されている場合には、走行予定経路となる道路区間を示す道路線に経路線が重畳表示されると見なすことができる。このような構成を採用することにより、地図内の道路区間を示す道路線の全てについて経路線が重畳表示されるか否かを判定する必要はなく、容易に経路線が表示されるか否かを判定することが可能になる。
【0013】
さらに、道路線のいずれかに経路線が重畳表示される場合に、地図内の道路区間の全てにおいて、道路線から第1オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線を表示する構成を採用しても良い。すなわち、経路線が重畳表示される道路線と経路線が重畳表示されない道路線との双方について道路線から第1オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線が表示される構成とする。この構成によれば、地図内の道路区間を示す道路線の全てについて経路線が重畳表示されるか否かを判定する必要はなくなり、容易に渋滞線の表示位置を決定することが可能になる。
【0014】
さらに、表示部に表示される地図は地図情報に基づいて表示されればよいが、縮尺によって道路線の幅が変動する構成としても良い。この場合に好適な構成例として、道路線の幅が地図の縮尺および当該道路線が示す道路区間の道路種別によって決定され、経路線の幅は地図の縮尺によって決定される構成としても良い。すなわち、道路線の幅は、縮尺と道路種別によって変動し、経路線の幅は縮尺によって変動する。この場合、ある縮尺の地図において経路線の幅は一定であるが、道路線の幅は道路種別によって変動するため、同一の地図内で道路線の幅と経路線の幅との差分が変動し得る。そこで、このような構成において経路線を表示するか否かに応じて道路線と渋滞線とのオフセット距離を調整すれば、経路線を表示する場合であっても視認性の高い地図を表示することができる。
【0015】
さらに、渋滞線と他の線(道路線および経路線)とが重ならないようにオフセット距離を決定する構成としても良い。具体的には、道路線のいずれかに経路線が重畳表示される場合には、道路線と経路線とで幅が広い方の線と渋滞線とが重ならず、かつ、幅が広い方の線と接する位置に渋滞線を表示する場合の道路線と渋滞線との間の距離を地図内の道路区間毎に特定して道路区間毎の第1オフセット距離を取得する。そして、表示部において道路線から当該道路線が示す道路区間に対応した第1オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線を表示する構成とする。この構成によれば、渋滞線と他の線(道路線および経路線)とが重なることを防止しつつも、第1オフセット距離を最小の距離とすることができ、渋滞線の表示のために過度に広い領域を必要とすることがない。
【0016】
また、道路線のいずれにも経路線が重畳表示されない場合には、道路線と渋滞線とが重ならず、かつ、道路線と接する位置に渋滞線を表示する場合の道路線と渋滞線との間の距離を地図内の道路区間毎に特定して道路区間毎の第2オフセット距離を取得する。そして、表示部において道路線から当該道路線が示す道路区間に対応した第2オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線を表示する構成とする。この構成によれば、渋滞線と道路線との間に隙間がない状態で地図を表示することができる。
【0017】
さらに、本発明のように経路線が道路線に重畳表示される場合と重畳表示されない場合とで異なる論理でオフセット距離を導出する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の装置によって実現される場合、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーションシステムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】地図表示システムを含むナビゲーションシステムのブロック図である。
【図2】地図表示処理を示すフローチャートである。
【図3】(3A)は地図表示の例を示す図、(3B)〜(3J)は道路線と経路線と渋滞線との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーションシステムの構成:
(2)地図表示処理:
(3)他の実施形態:
【0020】
(1)ナビゲーションシステムの構成:
図1は、本発明にかかる地図表示システムを含むナビゲーションシステム10の構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することが可能である。本実施形態においては、このプログラムとして図示しないナビゲーションプログラムを実行可能であり、当該ナビゲーションプログラムは地図表示プログラム21を含んでいる。ナビゲーションプログラムは、制御部20に車両の現在地点や目的地点までの走行予定経路を案内する機能を実現させるプログラムモジュールである。また、地図表示プログラム21は、ナビゲーションプログラムによって制御部20が各機能をを実現する過程において、制御部20に地図を表示させる機能を実現させるプログラムモジュールである。
【0021】
本実施形態における車両は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43と通信部44とユーザI/F部45とを備えており、各部を必要に応じて利用して制御部20がナビゲーションプログラムによる機能を実現する。
【0022】
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在地点を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在地点を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の現在車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両に作用する角速度に対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の走行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43等は、GPS受信部41の出力信号から特定される車両の現在地点を補正するなどのために利用される。また、車両の現在地点は、当該車両の走行軌跡に基づいて適宜補正される。
【0023】
通信部44は、車両の外部の図示しない渋滞情報管理装置と通信を行う回路を備えており、制御部20は、通信部44を介して当該渋滞情報管理装置と通信を行い、任意の道路区間の渋滞度を示す渋滞情報を取得する。なお、本実施形態において、渋滞情報は、道路区間毎の渋滞度を段階的に示す情報(平均車速が大きい順に「空き」「混雑」「渋滞」)である。
【0024】
ユーザI/F部45は、ユーザに各種の情報を提供し、またはユーザの指示を入力するためのインタフェース部であり、本実施形態においては図示しないタッチパネルディスプレイからなる表示部と音声を出力するスピーカーを備えている。制御部20は、当該ユーザI/F部45に対して制御信号を出力して任意の画像を表示部に表示させ、任意の音声をスピーカーから出力させる。また、制御部20は、ユーザI/F部45の出力信号に基づいて利用者の指示内容を特定する。
【0025】
記録媒体30には地図情報30aが記録されている。地図情報30aは、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物の位置を示すデータ等を含んでいる。本実施形態において、ノードを端点とするリンクが道路区間を示している。また、本実施形態においては、各道路区間の道路種別が予め規定されており、リンクデータに道路種別を示すデータが対応づけられている。なお、本実施形態における道路種別は細街路、一般道路、高速道路である。
【0026】
制御部20は、ナビゲーションプログラムの処理により、利用者からの指示に応じて地図情報30aを参照し、車両の現在地点から目的地点までの経路を探索し、探索された経路を走行予定経路として取得する。また、制御部20は、走行予定経路を示す情報を経路情報30bとして記録媒体30に記録する。さらに、制御部20は、ナビゲーションプログラムの処理により、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在地点を特定する。また、走行予定経路が設定されている場合、制御部20は、ナビゲーションプログラムの処理により、車両が走行予定経路を沿って走行できるように経路案内を行う。
【0027】
現在地点や経路を案内するため、制御部20は、ユーザI/F部45の表示部に地図を表示する構成となっており、地図表示プログラム21は、当該地図を表示する際に実行される。当該地図を表示するため、地図表示プログラム21は、地図情報取得部21aと渋滞度取得部21bと経路線表示判定部21cと表示制御部21dとを備えている。
【0028】
地図情報取得部21aは、記録媒体30を参照して地図情報30aを取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。渋滞度取得部21bは、通信部44を介して渋滞情報を取得し、当該渋滞情報に基づいて地図内の道路区間毎の渋滞度を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。
【0029】
経路線表示判定部21cは、地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されるか否かを判定する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。当該判定は、少なくとも、道路線のいずれかに経路線が重畳表示され得る状態であるか否かを判定することができればよく、本実施形態において制御部20は、ナビゲーションプログラムの処理によって上述の走行予定経路が設定済である場合に、地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されると判定する。すなわち、現在地点から目的地点までの走行予定経路は、現在地点から目的地点までの経路線を地図上に示しつつ経路案内を行うことを目的として設定される。従って、当該走行予定経路が設定されている場合には、走行予定経路となる道路区間を示す道路線に経路線が重畳表示されると見なすことができる。そこで、本実施形態においては、走行予定経路が設定済である場合に、地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されると判定する構成を採用している。この結果、地図内の道路区間を示す道路線の全てについて経路線が重畳表示されるか否かを判定する必要はなく、容易に経路線が表示されるか否かを判定することが可能になる。
【0030】
表示制御部21dは、経路線を重畳表示するか否かに基づいて表示部における渋滞線の表示位置を調整して地図を表示する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態において制御部20は、地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに経路線が重畳表示される場合のオフセット距離である第1オフセット距離と、重畳表示されない場合のオフセット距離である第2オフセット距離とを異なる論理によって導出する。そして、制御部20は、各オフセット距離によって道路線と渋滞線との距離を規定して渋滞線の表示位置を決定し、表示部に地図を表示する。
【0031】
具体的には、道路線のいずれかに経路線が重畳表示される場合、制御部20は、表示制御部21dの処理により、地図情報30aに基づいて、表示部に道路線および経路線を含む地図を表示する。すなわち、制御部20は、予め利用者によって指示された地図の縮尺を特定し、当該縮尺および各道路区間の道路種別によって道路線の幅を決定し、表示部上で表示対象となる各道路区間を示す道路線を道路種別に対応した幅で表示するための制御信号をユーザI/F部45に対して出力する。また、制御部20は、地図の縮尺によって経路線の幅を決定し、経路情報30bを参照し、現在地点以後における車両の走行予定経路を示す経路線を決定された幅で道路線に重畳して表示するための制御信号をユーザI/F部45に対して出力する。この結果、ユーザI/F部45の表示部に道路線および経路線を含む地図が表示される。
【0032】
以上のようにして表示された地図において、地図上の道路線の幅は縮尺と道路種別によって変動し、経路線の幅は縮尺によって変動する。従って、ある縮尺の地図において経路線の幅は一定である一方、ある縮尺の地図において、道路線の幅は道路種別によって変動する。従って、同一の地図内で道路線の幅と経路線の幅との差分が変動し得る。このため、表示部において表示可能な全ての縮尺において、地図上の道路線の幅と経路線の幅が一致するとは限らず、道路線の幅が経路線の幅よりも大きい道路区間と、道路線の幅が経路線の幅よりも小さい道路区間とが併存し得る。そこで、本実施形態においては、経路線を表示するか否かに応じて道路線と渋滞線とのオフセット距離を調整することにより、経路線を表示する場合であっても視認性の高い地図を表示できるように構成している。
【0033】
すなわち、本実施形態において制御部20は、経路線と渋滞度を示す渋滞線とが重ならないような道路線と渋滞線との間の距離を第1オフセット距離とし、表示部において道路線から第1オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線を表示する。ここで、第1オフセット距離は、経路線と渋滞線とが重ならないように設定されればよいが、本実施形態において制御部20は、道路線と経路線とで幅が広い方の線と渋滞線とが重ならず、かつ、幅が広い方の線と接する位置に渋滞線を表示する場合の道路線と渋滞線との間の距離を地図内の道路区間毎に特定して道路区間毎の第1オフセット距離としている。
【0034】
第1オフセット距離を特定すると、制御部20は、渋滞度取得部21bの処理により渋滞度が特定された道路区間を渋滞線の表示対象の道路区間とする。そして、制御部20は、表示制御部21dの処理により、渋滞線の表示対象の道路区間において、道路線から当該道路線が示す道路区間に対応した第1オフセット距離だけ離れた位置に、渋滞度毎に着色された渋滞線を表示するための制御信号をユーザI/F部45に対して出力する。この結果、ユーザI/F部45の表示部上の地図において、道路線と経路線とで幅が広い方の線と渋滞線とが重ならず、かつ、幅が広い方の線と接する位置に渋滞線が表示される。以上の構成によれば、渋滞線と他の線(道路線および経路線)とが重なることを防止することができ、高い視認性の地図を表示することができる。また、第1オフセット距離を最小の距離とすることができ、渋滞線の表示のために過度に広い領域を使わずに地図を表示することができる。
【0035】
一方、道路線のいずれにも経路線が重畳表示されない場合、制御部20は、表示制御部21dの処理により、地図情報30aに基づいて、表示部に道路線を含む地図を表示する。すなわち、制御部20は、表示部上で表示対象となる各道路区間を示す道路線を道路種別に対応した幅で表示するための制御信号をユーザI/F部45に対して出力する。この結果、ユーザI/F部45の表示部に道路線を含む地図が表示される。以上のようにして表示された地図に経路線は表示されないため、この場合には、道路線と渋滞線との関係で視認性が低下しないように渋滞線のオフセット距離を設定すればよく、制御部20は、道路線と渋滞線とが重ならないような道路線と渋滞線との間の距離を第2オフセット距離とし、表示部において道路線から第2オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線を表示する。
【0036】
ここでは、道路線と渋滞線とが重ならないように、道路線と渋滞線との距離である第2オフセット距離を設定すればよいが、本実施形態においては、道路線と渋滞線とが重ならず、かつ、道路線と接する位置に渋滞線を表示する場合の道路線と渋滞線との間の距離を地図内の道路区間毎に特定して道路区間毎の第2オフセット距離とし、表示部において道路線から当該道路線が示す道路区間に対応した第2オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線を表示する。すなわち、制御部20は、渋滞度取得部21bの処理により渋滞度が特定された道路区間を渋滞線の表示対象の道路区間とする。そして、制御部20は、表示制御部21dの処理により、渋滞線の表示対象の道路区間において、道路線から当該道路線が示す道路区間に対応した第2オフセット距離だけ離れた位置に、渋滞度毎に着色された渋滞線を表示するための制御信号をユーザI/F部45に対して出力する。この結果、ユーザI/F部45の表示部上の地図において、道路線と渋滞線とが重ならず、かつ、道路線と接する位置に渋滞線が表示される。この構成によれば、渋滞線と道路線との間に隙間がない状態で地図を表示することができ、視認性の高い地図を表示することができる。
【0037】
(2)地図表示処理:
次に、本実施形態にかかる地図表示処理を詳細に説明する。図2は、地図表示処理を示すフローチャートであり、ナビゲーションプログラムが実行されると所定の時間間隔(例えば、100ms)毎に当該地図表示処理も実行される。
【0038】
地図表示処理において、まず制御部20は、地図の縮尺に基づいて表示対象となる道路区間を特定する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、表示制御部21dの処理により、予め利用者によって指示された縮尺の地図であって、表示部の所定位置に車両の現在地点を表示するような地図を表示部に表示する場合に、当該表示部に表示される地図の範囲を特定する。さらに、制御部20は、地図情報取得部21aの処理により、当該範囲に関する地図情報30aを参照し、当該範囲に含まれる道路区間を表示対象となる道路区間として特定する。
【0039】
図3Aは、表示部の表示画面Sに表示される地図の例を示しており、同例においては、車両の現在地点をCで示すとともに道路区間を示す道路線を曲線によって示している。このような地図を表示部に表示する場合、ステップS100において、制御部20は、道路区間R11〜R17,R21〜R27,R31〜R33を表示対象となる道路区間として特定することになる。
【0040】
次に、制御部20は、地図情報に基づいて表示対象となる道路区間の道路種別を特定する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、地図情報取得部21aの処理により、地図情報30aを参照し、ステップS100にて特定された表示対象となる道路区間の道路種別を特定する。
【0041】
次に、制御部20は、表示対象となる道路区間を示す道路線の幅を道路種別毎に特定する(ステップS110)。本実施形態において、道路線の幅は地図の縮尺および道路種別によって予め決められており、制御部20は、表示制御部21dの処理により、表示部に表示される地図の縮尺を特定するとともに、表示対象となる道路区間のそれぞれについて道路種別を特定する。そして、縮尺および道路種別に対応する道路線の幅を道路区間毎に決定する。なお、本実施形態においては、細街路、一般道路、高速道路の順に道路線の幅が太くなり、かつ、地図の縮尺がより狭域の地図を表示するための値となるほど道路線の幅が太くなるように予め設定されている。
【0042】
図3Aに示す例においては、道路区間R11〜R17が細街路、道路区間R21〜R27が一般道路、道路区間R31〜R33が高速道路である。また、図3Aにおいては、道路区間R11〜R17を細い曲線、道路区間R31〜R33を太い曲線、道路区間R21〜R27を道路区間R11〜R17をより太く、道路区間R31〜R33より細い曲線で示しており、いずれの縮尺においても道路種別毎の道路線の関係が図3Aに示す例と類似の関係になる。
【0043】
次に、制御部20は、地図の縮尺に基づいて経路線の幅を特定する(ステップS115)。本実施形態において、経路線の幅は地図の縮尺によって予め決められており、制御部20は、表示制御部21dの処理により、表示部に表示される地図の縮尺を特定する。そして、縮尺に対応する経路線の幅を決定する。以上のように本実施形態において、経路線の幅と道路線の幅は互いに異なる論理によって導出され、互いに依存しない状態で決定される。
【0044】
図3B〜3Jは、道路線と経路線と渋滞線との関係を説明するための図である。これらの図において、道路線Rは白抜きの線、経路線Pはハッチングを付した線、渋滞線Jは太い破線で示している。なお、経路線Pは、理解の容易のため、道路線Rや渋滞線Jよりも短い状態で図示している。また、渋滞線Jは道路上での車両の進行方向毎に定義されるため、道路線Rの幅方向の両側に併記され、対面通行を行う道路の互いに逆向きの方向に走行する際の渋滞度を示すように構成されている。また、図3B,3E,3Hに示す道路線Rは細街路を示し、図3C,3F,3Iに示す道路線Rは一般道路を示し、図3D,3G,3Jに示す道路線Rは高速道路を示している。本実施形態において、経路線の幅と道路線の幅が互いに異なる論理によって導出されるため、図3B〜3Gに示すように、道路種別により、道路線Rの幅の方が経路線Pの幅より大きい場合と、道路線Rの幅の方が経路線Pの幅より小さい場合とが一枚の地図内に併存し得る。
【0045】
ステップS115までの処理によって道路線の幅と経路線の幅とが特定されると、制御部20は、表示制御部21dの処理により、オフセット距離の設定対象となる道路区間を特定する(ステップS120)。本実施形態においては、道路区間のそれぞれについてオフセット距離を設定する構成となっており、ここでは、ステップS100にて特定された表示対象となる道路区間のうち、オフセット距離が設定されていない道路区間を一つ抽出し、オフセット距離の設定対象とする。
【0046】
オフセット距離の設定対象となる道路区間を特定すると、制御部20は、経路線表示判定部21cの処理により、走行予定経路が設定済であるか否かを判定する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、記録媒体30に現在地点から目的地点までの走行予定経路を示す経路情報30bが記録されている場合に、利用者が現在地点から目的地点までの走行予定経路を設定済であると判定する。
【0047】
ステップS125にて走行予定経路が設定済であると判定されない場合、地図内の道路線のいずれにも経路線が重畳表示されないとみなし、制御部20は、表示制御部21dの処理により、オフセット距離の設定対象となる道路区間において当該道路区間を示す道路線と重ならず、当該道路線と接する位置に渋滞線を表示するための第2オフセット距離を特定する(ステップS140)。特定された第2オフセット距離は、オフセット距離の設定対象となる道路区間に対して対応づけられる。
【0048】
なお、本実施形態においては、一方の線の幅方向の中心と他方の線の幅方向の中心との間の、幅方向に平行な方向への距離をオフセット距離として特定する。すなわち、制御部20は、道路区間毎の道路線の幅Wrと渋滞線の幅Wj(既定値)を特定し、(Wr/2)+(Wj/2)を第2オフセット距離とする。ステップS125において、走行予定経路設定済であると判定されなかった場合、表示対象となる道路区間の全てにおいて経路線が重畳表示されず、ステップS140にて第2オフセット距離が対応づけられる。そして、道路幅Wrは道路区間の道路種別によって変動するため、この場合において第2オフセット距離は道路区間毎の道路線の幅によって変動する値として定義される。なお、図3H〜3Jにおいては第2オフセット距離をL2として示し、図3Jにおいては道路線の幅Wrおよび渋滞線の幅Wjも示している。ステップS125において、走行予定経路設定済であると判定されなかった場合、第2オフセット距離L2は図3H〜3Jに示すように道路区間によって変動する。
【0049】
一方、ステップS125にて走行予定経路が設定済であると判定された場合、制御部20は、表示制御部21dの処理により、経路線の幅が道路線の幅よりも大きいか否かを判定する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、ステップS115にて特定された経路線の幅とステップS110にて特定された道路線の幅とを比較する。なお、図3E〜3Gに示す例のうち、図3E,3Fは経路線の幅が道路線の幅より大きい状態、図3Gは経路線の幅が道路線の幅より小さい状態を示している。
【0050】
ステップS130にて、経路線の幅が道路線の幅よりも大きいと判定されない場合、制御部20は、表示制御部21dの処理により、ステップS140を実行する。すなわち、ステップS130にて、経路線の幅が道路線の幅よりも大きいと判定されない場合、経路線の幅と道路線の幅とが等しいか、あるいは、道路線の幅の方が経路線の幅よりも大きいため、経路線ではなく道路線に着目してオフセット距離の設定対象となる道路区間のオフセット距離(第2オフセット距離)を特定する。ここでも、特定された第2オフセット距離は、オフセット距離の設定対象となる道路区間に対して対応づけられる。図3Gは、経路線の幅が道路線の幅より小さい例であり、この場合、渋滞線の位置を特定するためのオフセット距離が同図3Gに示す第2オフセット距離L2となる。
【0051】
一方、ステップS130にて、経路線の幅が道路線の幅よりも大きいと判定された場合、制御部20は、表示制御部21dの処理により、オフセット距離の設定対象となる道路区間において、経路線と道路線とで幅が広い方の線と重ならず、当該幅が広い方の線と接する位置に渋滞線を表示するための第1オフセット距離を特定する(ステップS135)。特定された第1オフセット距離は、オフセット距離の設定対象となる道路区間に対して対応づけられる。
【0052】
ここでも一方の線の幅方向の中心と他方の線の幅方向の中心との間の、幅方向に平行な方向への距離がオフセット距離とされる。従って、制御部20は、経路線の幅Wpと渋滞線の幅Wjを特定し、(Wp/2)+(Wj/2)を第1オフセット距離とする。ステップS125において走行予定経路設定済であると判定され、かつ、ステップS130において経路線の幅が道路線の幅よりも大きいと判定された場合、オフセット距離の設定対象となる道路区間において道路線に経路線が重畳表示され、経路線で道路線が隠された状態となるため、ここでは道路線ではなく経路線に着目してオフセット距離の設定対象となる道路区間のオフセット距離(第1オフセット距離)を特定する。本実施形態において、経路線の幅は地図の縮尺によって特定され、一枚の地図内で経路線の幅は変動しないため、経路線の幅が道路線の幅よりも大きい場合、第1オフセット距離は道路区間によって変動しない値として定義される。なお、図3E,3Fにおいては第1オフセット距離をL1として示し、図3Eにおいては経路線の幅Wpおよび渋滞線の幅Wjも示している。図3E,3Fに示すように、経路線の幅が道路線の幅よりも大きい場合、道路線の幅が変化しても第1オフセット距離は変動しない。
【0053】
なお、ステップS135は、ステップS130において経路線の幅が道路線の幅よりも大きいと判定された場合に実行されるが、当該ステップS130を実行する条件となるステップS125においては、走行予定経路が設定されているか否かを判定しているのであって、道路区間のそれぞれにおいて道路線に経路線が重畳表示されるか否かを判定しているのではない。このため、地図内に経路線が重畳表示されない道路線が存在していたとしてもステップS135により、当該道路線が示す道路区間について第1オフセット距離が特定されることになる。従って、当該道路区間についても第1オフセット距離だけ離れた位置に渋滞線が表示されることになるが、この構成を採用することにより、地図内の道路区間を示す道路線の全てについて一つずつ経路線が重畳表示されるか否かを判定する必要はなくなり、容易に渋滞線の表示位置を決定することが可能である。
【0054】
ステップS135あるいはS140においてオフセット距離の設定対象となる道路区間についてのオフセット距離が特定されると、制御部20は、表示制御部21dの処理により、表示対象となる全道路区間についてオフセット距離を設定済であるか否かを判定する(ステップS145)。そして、ステップS145にて全道路区間についてオフセット距離を設定済であると判定されない場合、制御部20は、ステップS120以降の処理を繰り返す。すなわち、オフセット距離が未設定の道路区間の一つを新たにオフセット距離の設定対象に設定し、オフセット距離を特定する処理を実行する。
【0055】
一方、ステップS145にて全道路区間についてオフセット距離を設定済であると判定された場合、制御部20は、表示部に地図を表示する(ステップS150)。すなわち、制御部20は、渋滞度取得部21bの処理により、表示対象となっている道路区間についての渋滞度を取得するための要求を通信部44によって渋滞情報管理装置に送信し、当該要求に応じて渋滞情報管理装置から渋滞情報が送信された場合には、制御部20が通信部44を介して当該渋滞情報を取得する。渋滞情報を取得した場合、制御部20は、渋滞情報が対応づけられた道路区間の渋滞度を特定する。渋滞情報が取得されなかった場合、渋滞線は表示されない。
【0056】
さらに、制御部20は、表示制御部21dの処理により、地図情報30aを参照して表示対象となる道路区間のノードの位置を特定するとともにリンクデータが示すノード間の接続関係に基づいてノードの位置同士を結ぶ道路線の描画位置を特定する。さらに、制御部20は、ステップS110にて特定された道路区間毎の道路線の幅を取得し、当該幅によって当該描画位置に道路線を描画するための制御信号をユーザI/F部45の表示部に出力する。この結果、表示部に道路線が表示される。
【0057】
走行予定経路が設定済である場合、制御部20は、表示制御部21dの処理により、経路情報30bに基づいて経路線を重畳表示すべき道路区間を特定する。さらに、制御部20は、ステップS115にて特定された経路線の幅を取得し、当該幅の経路線を重畳対象の道路区間に重畳表示するための制御信号をユーザI/F部45の表示部に出力する。この結果、表示部において道路線に経路線が重畳表示される。
【0058】
さらに、制御部20は、表示制御部21dの処理により、渋滞情報が取得された道路区間に対してステップS135あるいはS140にて対応づけられたオフセット距離を取得する。また、制御部20は、当該道路区間の渋滞度および渋滞線の幅(既定値)を取得し、渋滞情報が取得された道路区間を示す道路線の幅方向の中心から当該オフセット距離だけ離れた位置に渋滞度に対応した色の渋滞線を描画するための制御信号をユーザI/F部45の表示部に出力する。この結果、表示部において道路線に対してオフセット距離だけ離れた位置に渋滞線が表示される。
【0059】
以上の処理により、道路線に経路線が重畳表示される場合においては、道路線と経路線とで幅が大きい方の境界に合わせて渋滞線が表示される。例えば、経路線の幅が細街路の道路線の幅および一般道路の道路線の幅よりも大きく、高速道路の道路線の幅よりも小さい場合、細街路においては図3E、一般道路においては図3Fに示すように経路線に接するように渋滞線が表示される。一方、高速道路においては、図3Gに示すように道路線に接するように渋滞線が表示される。一方、従来技術のように、道路線に重畳表示される経路線を考慮せず、道路線と渋滞線の関係のみに着目して渋滞線の位置を決める場合、道路線の幅が経路線の幅よりも大きい場合には道路線に接する渋滞線を表示しても図3Dのように線同士が重なることがなく視認性を損なわない。しかし、道路線の幅よりも経路線の幅が大きい場合に、図3B,3Cのように経路線と渋滞線が重なることがあり、視認性を低下させてしまう。しかし、本実施形態においては、上述のように道路線と経路線とで幅が大きい方の境界に合わせて渋滞線が表示されるため、図3E〜3Gのように線同士を重ねることなく表示することができ、視認性を低下させることはない。
【0060】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、経路線が道路線に重畳表示される場合と重畳表示されない場合とで異なる論理でオフセット距離を導出する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。
【0061】
上述の実施形態においては、現在地点から目的地点までの走行予定経路が設定されているか否かを直接的に判定し、走行予定経路が設定されている場合に地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されると判定していたが、走行予定経路が設定されていることを間接的に判定する構成であっても良い。例えば、走行予定経路に基づく経路案内が実行されている場合に、走行予定経路が設定されており、地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されると判定する構成であっても良い。
【0062】
さらに、ナビゲーションシステムが複数の装置によって実現される構成であっても良い。すなわち、地図表示プログラム21によって実現される各手段が複数の装置に分散して配置され、別体の装置間の情報の授受を通信によって実現する構成等を採用可能である。むろん、各手段において一部がある装置、他の部分が他の装置に分散して配置される構成であっても良い。
【0063】
さらに、第1オフセット距離は、地図内に経路線を表示する場合に経路線と渋滞線とが重ならないように設定されればよく、道路線と渋滞線とが重なる状態を許容する構成であっても良い。例えば、経路線と渋滞線とが重ならず、かつ、接する状態となるような渋滞線の位置を示すオフセット距離をオフセット距離の最小値とし、当該最小値以上の値を第1オフセット距離として定義することによって実現可能である。
【0064】
この場合、道路線の幅が経路線の幅よりも大きい道路区間において道路線と渋滞線とが重なる可能性はあるものの、経路線と渋滞線とは重ならないため、経路線と渋滞線とを高い視認性で表示することができる。また、道路線と渋滞線とが重なる場合であっても、道路線には経路線が重畳されており、経路線は道路を示しているため、利用者が道路線を認識することは容易である。むろん、この場合においても経路線と渋滞線とが重なることはないため、経路線と渋滞線とが高い視認性となった状態は維持される。
【符号の説明】
【0065】
10…ナビゲーションシステム、20…制御部、21…地図表示プログラム、21a…地図情報取得部、21b…渋滞度取得部、21c…経路線表示判定部、21d…表示制御部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…経路情報、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…通信部、45…ユーザI/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部に表示される地図を示す地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記地図内の道路区間毎の渋滞度を取得する渋滞度取得手段と、
前記地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されるか否かを判定する経路線表示判定手段と、
前記道路線のいずれかに前記経路線が重畳表示される場合には、
前記地図情報に基づいて、前記表示部に前記道路線および前記経路線を含む前記地図を表示するとともに、前記経路線と前記渋滞度を示す渋滞線とが重ならないような前記道路線と前記渋滞線との間の距離を第1オフセット距離とし、前記表示部において前記道路線から前記第1オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示し、
前記道路線のいずれにも前記経路線が重畳表示されない場合には、
前記地図情報に基づいて、前記表示部に前記道路線を含む前記地図を表示するとともに、前記道路線と前記渋滞線とが重ならないような前記道路線と前記渋滞線との間の距離を第2オフセット距離とし、前記表示部において前記道路線から前記第2オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示する
表示制御手段と、
を備える地図表示システム。
【請求項2】
前記経路線表示判定手段は、現在地点から目的地点までの走行予定経路が設定されている場合に、前記地図内の道路区間を示す前記道路線のいずれかに走行予定経路を示す前記経路線が重畳表示されると判定し、
前記表示制御手段は、前記道路線のいずれかに前記経路線が重畳表示される場合には、前記地図内の道路区間の全てにおいて、前記道路線から前記第1オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示する、
請求項1に記載の地図表示システム。
【請求項3】
前記道路線の幅は前記地図の縮尺および当該道路線が示す道路区間の道路種別によって決定され、前記経路線の幅は前記地図の縮尺によって決定される、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の地図表示システム。
【請求項4】
前記表示制御手段は、
前記道路線のいずれかに前記経路線が重畳表示される場合には、
前記道路線と前記経路線とで幅が広い方の線と前記渋滞線とが重ならず、かつ、前記幅が広い方の線と接する位置に前記渋滞線を表示する場合の前記道路線と前記渋滞線との間の距離を前記地図内の道路区間毎に特定して道路区間毎の前記第1オフセット距離を取得し、前記表示部において前記道路線から当該道路線が示す道路区間に対応した前記第1オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示し、
前記道路線のいずれにも前記経路線が重畳表示されない場合には、
前記道路線と前記渋滞線とが重ならず、かつ、前記道路線と接する位置に前記渋滞線を表示する場合の前記道路線と前記渋滞線との間の距離を前記地図内の道路区間毎に特定して道路区間毎の前記第2オフセット距離を取得し、前記表示部において前記道路線から当該道路線が示す道路区間に対応した前記第2オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の地図表示システム。
【請求項5】
表示部に表示される地図を示す地図情報を取得する地図情報取得工程と、
前記地図内の道路区間毎の渋滞度を取得する渋滞度取得工程と、
前記地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されるか否かを判定する経路線表示判定工程と、
前記道路線のいずれかに前記経路線が重畳表示される場合には、
前記地図情報に基づいて、前記表示部に前記道路線および前記経路線を含む前記地図を表示するとともに、前記経路線と前記渋滞度を示す渋滞線とが重ならないような前記道路線と前記渋滞線との間の距離を第1オフセット距離とし、前記表示部において前記道路線から前記第1オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示し、
前記道路線のいずれにも前記経路線が重畳表示されない場合には、
前記地図情報に基づいて、前記表示部に前記道路線を含む前記地図を表示するとともに、前記道路線と前記渋滞線とが重ならないような前記道路線と前記渋滞線との間の距離を第2オフセット距離とし、前記表示部において前記道路線から前記第2オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示する
表示制御工程と、
を含む地図表示方法。
【請求項6】
表示部に表示される地図を示す地図情報を取得する地図情報取得機能と、
前記地図内の道路区間毎の渋滞度を取得する渋滞度取得機能と、
前記地図内の道路区間を示す道路線のいずれかに走行予定経路を示す経路線が重畳表示されるか否かを判定する経路線表示判定機能と、
前記道路線のいずれかに前記経路線が重畳表示される場合には、
前記地図情報に基づいて、前記表示部に前記道路線および前記経路線を含む前記地図を表示するとともに、前記経路線と前記渋滞度を示す渋滞線とが重ならないような前記道路線と前記渋滞線との間の距離を第1オフセット距離とし、前記表示部において前記道路線から前記第1オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示し、
前記道路線のいずれにも前記経路線が重畳表示されない場合には、
前記地図情報に基づいて、前記表示部に前記道路線を含む前記地図を表示するとともに、前記道路線と前記渋滞線とが重ならないような前記道路線と前記渋滞線との間の距離を第2オフセット距離とし、前記表示部において前記道路線から前記第2オフセット距離だけ離れた位置に前記渋滞線を表示する
表示制御機能と、
をコンピュータに実現させる地図表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−19848(P2013−19848A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155129(P2011−155129)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】