説明

地図表示装置および地図表示方法

【課題】
鳥瞰図表示の道路地図を所定の位置からどの程度スクロールしたか容易に把握することができる地図表示装置および地図表示方法を提供する。
【解決手段】
道路地図41がスクロールされると、地平線43は、基準点51を通過する位置を維持したままその両端が下方へ移動する。このとき、地平線43は円弧の形状を保ったまま変形する。この結果、地平線43は撓む。この下方の移動量kはスクロール量、つまり、スクロールする前とスクロールした後の道路地図の表示領域の移動距離に比例して大きくなる。したがって、道路地図41のスクロール量が大きくなると、地平線43の撓み量も大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥瞰図表示の道路地図を表示する地図表示装置および地図表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥瞰図をスクロールするものの従来技術として、次のような地図画像処理装置が知られている。鳥瞰図の表示領域に対応する2次元地図画像の領域よりも大きな領域の2次元地図画像を描画してメモリに格納する。そして、スクロール表示時には、メモリに格納された2次元地図画像の一部を順次読み出し、2次元地図画像を変形処理して鳥瞰図を表示する(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−66944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の地図画像処理装置では、鳥瞰図表示の道路地図を高速にかつ滑らかにスクロールすることができる。したがって、短い時間に広範囲にわたって道路地図の表示領域を移動することができる。しかし、短い時間に広範囲にわたって道路地図の表示領域を移動することができるため、どの程度、道路地図のスクロールを行ったかわからなくなってしまうという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)請求項1の発明は、地平線または水平線が表示される鳥瞰図表示の道路地図を表示モニタに表示する地図表示装置において、道路地図をスクロールするスクロール手段と、道路地図のスクロール量を算出するスクロール量算出手段と、スクロール量に基づいて地平線または水平線を変形して表示する変形表示手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の地図表示装置において、変形表示手段は、地平線または水平線を撓まして表示することを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、地平線または水平線が表示される鳥瞰図表示の道路地図を表示モニタに表示する地図表示方法において、道路地図をスクロールすると地平線または水平線を撓まして表示し、道路地図のスクロール量が大きくなると、地平線または水平線の撓みが大きくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、鳥瞰図表示の道路地図を所定の位置からどの程度スクロールしたか容易に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施形態によるナビゲーション装置の構成を図1に示す。図1のナビゲーション装置1は、所定の高さの視点から眺めた鳥瞰図表示で道路地図を表示する。ナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、入力装置17およびディスクドライブ18を有している。
【0007】
ディスクドライブ18には、道路地図データが記録されたDVD−ROM19が装填される。道路地図データは、道路地図表示用データ、経路探索用データなどを含む。道路地図表示用データは、広域から詳細まで複数の縮尺の地図データを有し、乗員の要求にしたがって、表示地図の縮尺を変更することができる。また、道路地図表示用データは、地図上にビルなどの建造物を立体的に表示するための建造物データを有している。建造物データには、3次元形状データを備え、3次元を構成するポリゴン数、建造物の種別などを表現する属性、1つのポリゴンを形成するための頂点座標列で構成するポリゴンデータなどが含まれる。建造物は、建造物データに格納されている複数のポリゴンを組み合わせることによって、3次元形状として表示される。
【0008】
制御回路11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行して各種の制御を行う。この制御回路11がDVD−ROM19に記憶された道路地図データに基づいて所定の経路探索処理を行うと、その処理結果が探索ルートとして表示モニタ16に表示される。
【0009】
現在地検出装置14は車両の現在地を検出する装置であり、たとえば、車両の進行方向を検出する振動ジャイロ14a、車速を検出する車速センサ14b、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ14cなどからなる。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出された車両の現在地に基づいて、道路地図の表示範囲や経路探索開始点などを決定するとともに、道路地図上にその現在地を表示する。
【0010】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを格納する。この画像データは道路地図描画用データや各種の図形データからなり、それらはディスクドライブ18によって読み込まれるDVD−ROM19に記憶された道路地図データに基づいて、適宜生成される。ナビゲーション装置1は、このようにして生成された画像データを用いることによって表示モニタ16に道路地図表示など行うことができる。
【0011】
表示モニタ16は、道路地図データなどの各種情報に基づいて、自車位置付近の道路地図などの各種情報を画面表示としてナビゲーション装置1の乗員に提供する。入力装置17は、乗員が目的地の設定などを行うための各種入力スイッチを有し、これは操作パネルやリモコンなどによって実現される。乗員は、入力装置17を操作することによって表示モニタ16に表示された道路地図をスクロールすることができる。また、乗員は表示モニタ16に表示される画面指示に従って入力装置17を操作することにより、地名や地図上の位置を指定して目的地を設定し、その目的地までの経路探索をナビゲーション装置1に開始させることができる。
【0012】
目的地が乗員により設定されると、ナビゲーション装置1は、GPSセンサ14cにより検出された現在地を出発地として目的地までの経路演算を所定のアルゴリズムに基づいて行う。このようにして求められたルート(以下、探索ルートという)は、表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、ほかの道路とは区別して画面表示される。これにより、乗員は地図上の探索ルートを画面上で認識することができる。また、ナビゲーション装置1は、探索ルートに従って車両が走行できるように、乗員に対して画面や音声などによる進行方向指示を行い、車両を誘導する。
【0013】
ディスクドライブ18は、装填されたDVD−ROM19から、表示モニタ16に道路地図を表示させるための道路地図データを読み出す。なお、DVD−ROM以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより道路地図データを読み出してもよい。
【0014】
次に、表示モニタ16に道路地図として表示される鳥瞰図の概要を図2を参照して説明する。図2は平面道路地図をXY平面とし、XYへ面に直交するZ軸上に視点Mを置き、見下ろし角がθ、見開き角がψである場合を示した例である。図示の長方形abcdは図3に拡大表示するように表示モニタ16の表示範囲16aを示し、図4の台形ABCDは表示モニタ16に表示される道路地図範囲22を示す。また、点oは長方形abcdの中心を示す。点Oは道路地図上の点oに対応する位置を示す。
【0015】
図2に示すように、表示モニタ16の表示範囲16aの下辺ab側の道路地図は上辺cd側よりも大きい縮尺率で表示されるため、車両の現在地を下辺ab側に表示すれば、現在地周辺をより拡大して表示できる。したがって、乗員は現在地周辺の道路地図情報を詳細に把握できるとともに、目的地方向の広範囲の道路地図も同時に把握できる。
【0016】
道路地図を鳥瞰図表示する場合、鳥瞰図表示形式の道路地図データを予めDVD−ROM19に格納することも考えられるが、データ量が膨大になってしまう。そこで、DVD−ROM19に格納されている道路地図データをソフトウェア処理によって鳥瞰図データに変換して表示モニタ16に表示する。データ変換は、道路地図上の座標を表示モニタ16の表示範囲16a上の座標に座標変換することによって行う。
【0017】
次に、本発明の実施形態のナビゲーション装置1に表示される鳥瞰図表示の道路地図のスクロールについて図4を参照して説明する。図4(a)は、道路地図41をスクロールしていないときの表示モニタ16の表示画面である。表示画面には、道路地図41のほかに表示画面の上4分の1の領域に空42が表示される。道路地図41と空42との境目には地平線43が表示される。地平線43は、道路地図41のスクロール量にしたがって上に凸の方向に円弧の形状で撓む。道路地図41には、道路44とともに道路44に重ねて表示された自車位置マーク45が表示される。また、道路地図には立体的表示されたビル46〜48が表示される。スクロールをしていないときの地平線43は直線である。
【0018】
図4(b)は、自車位置マーク45が表示されている道路地図41をビル46が表示画面の手前に表示されるまでスクロールしたときの表示モニタ16の表示画面である。道路地図41のスクロールによって自車位置マーク45は、道路地図範囲22の範囲外に移動し、表示されない。道路地図41はスクロールされたので、地平線41は上に凸の方向に撓んでいる。図4(c)は、さらに道路地図41をスクロールし、ビル47が表示画面の手前に表示されるまでスクロールしたときの表示モニタ16の表示画面である。道路地図41のスクロール量はさらに増えたので、地平線41の撓み量もさらに大きくなる。
【0019】
次に、本発明の実施形態のナビゲーション装置1に表示される鳥瞰図表示の道路地図の地平線43の撓み表示方法について図5を参照して説明する。図5(a)は、道路地図41をスクロールしていないときの道路地図41、空42および地平線43を示す図である。地平線43は、表示画面の中央、上から4分の1の高さに位置する基準点51を通過するように直線で表示される。
【0020】
道路地図41がスクロールされると、図5(b)に示すように、地平線43は、基準点51を通過する位置を維持したままその両端が下方へ移動することによって変形する。このとき、地平線43は円弧の形状を保ったまま変形する。この結果、地平線43は撓むように表示される。この下方の移動量kはスクロール量、つまり、スクロールする前とスクロールした後の道路地図の道路地図範囲22の移動距離に比例して大きくなる。また、地平線43の両端が下方に移動するに伴い、空42の領域も変化する。この結果、空42と道路地図41とが表示の重なる領域が生じる。この重なる領域を発生しないようにするため、道路地図41も撓ませると、道路地図データからの変換の処理に時間がかかる。したがって、重なる領域は、空42が道路地図41を隠して表示される。
【0021】
次に、本発明の実施形態によるナビゲーション装置1における鳥瞰図表示の道路地図の地平線の表示処理を図6のフローチャートを参照して説明する。図6の処理は、乗員が鳥瞰図表示の道路地図を表示モニタ16に表示したときにスタートするプログラムを制御回路11で実行して行われる。
【0022】
S601では、現在地検出装置14によって自車位置である車両の現在位置を検出する。ステップS602では、車両の現在位置から図2の道路地図範囲22を算出し、道路地図範囲22の道路地図データを読み込む。ステップS603では、図2および図3に示す表示モニタ16の中心位置oに対応する平面道路地図上の位置Oの位置座標を読み込む。ステップS604では、道路地図データを鳥瞰図データに変換する。そして、ステップS605では、鳥瞰図表示の道路地図を表示モニタ16に表示する。
【0023】
ステップS606では、道路地図をスクロールしたときの表示モニタ16の中心位置oに対応する平面道路地図上の位置Pの位置座標に読み込む。ステップS607では、位置Oと位置Pとの間の距離を算出する。この距離の算出がスクロール量の算出に相当する。ステップS608ではスクロールしたときの道路地図範囲22の道路地図データを読み込む。ステップS609では、道路地図データを鳥瞰図データに変換する。ステップS610では、ステップS607で算出した距離に基づいて、地平線43の両端の下方への移動量を算出する。ステップS611では、円弧の形状を保ったまま地平線43の両端を下げることによって、地平線43を撓まして鳥瞰図表示の道路地図を表示モニタ16に表示する。
【0024】
ステップS612では、スクロールが完了したか、つまり、スクロールする前の表示画面に戻ったか判定を行う。表示画面に戻ったか否かは、位置Oと位置Pが同じ位置になったか否かによって判断する。スクロール前の表示画面に戻った場合は、処理を終了する。戻らない場合は、ステップS606に戻る。
【0025】
以上の実施の形態によるナビゲーション装置1は次のような作用効果を奏する。
(1)鳥瞰図表示の道路地図のスクロール量に基づいて、道路地図の地平線を撓ませたので、その撓み量によって道路地図をどの程度スクロールしたかを把握することができる。
(2)道路地図をどの程度スクロールしたかを表示するためのインジケータなどを新たに設ける必要がない。
(3)道路地図に表示されている地平線は、乗員の目に入りやすい。また、地平線全体を見なくても地平線の一部分の曲がり具合を見れば道路地図をどの程度スクロールしたか把握することができる。したがって、本発明の実施の形態は、スクロール量の視認性に優れている。
【0026】
以上の実施の形態を次のように変形することができる。
(1)以上の実施の形態では、表示モニタ16に表示されている道路地図の表示方向を変えずにスクロールしていたが、鳥瞰図表示の道路地図の表示方向を変更してスクロールした場合もスクロール量に応じて地平線は撓み、地平線の撓み量によってスクロール量を把握することができる。
(2)以上の実施の形態では、道路地図のスクロール量に基づいて地平線を撓ませたが、道路地図のスクロール量に基づいて地平線の形状を変化させるものであれば撓みに限定されない。たとえば、道路地図をスクロールすると地平線が波状になり、スクロール量が増えるにしたがって波の数が増えるようにしてもよい。
(3)以上の実施の形態では道路地図をスクロールすると地平線が変形したが、地平線に限らず、水平線も変形するようにしてもよい。
【0027】
特許請求の範囲の要素と実施の形態との対応関係を説明する。
本発明のスクロール手段は制御回路11と入力装置17に対応し、スクロール量算出手段は制御回路11に対応する。変形表示手段は制御回路11と表示モニタ16に対応し、地図表示装置はナビゲーション装置1に対応する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の対応関係になんら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】鳥瞰図の概要を説明するための図である。
【図3】図2の視点Mと長方形abcdとを拡大表示した図である。
【図4】鳥瞰図表示の道路地図のスクロールについて説明するための図である。
【図5】鳥瞰図表示の道路地図の地平線の撓み表示方法について説明するための図である。
【図6】鳥瞰図表示の道路地図の地平線の表示処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 ナビゲーション装置
11 制御回路
12 ROM
13 RAM
14 現在地検出装置
15 画像メモリ
16 表示モニタ
16a 表示モニタの表示範囲
17 入力装置
18 ディスクドライブ
19 DVD−ROM
21 視線
22 表示モニタに表示される道路地図範囲
41 道路地図
42 空
43 地平線
44 道路
45 自車位置マーク
46〜48 ビル
51 基準点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地平線または水平線が表示される鳥瞰図表示の道路地図を表示モニタに表示する地図表示装置において、
前記道路地図をスクロールするスクロール手段と、
前記道路地図のスクロール量を算出するスクロール量算出手段と、
前記スクロール量に基づいて前記地平線または水平線を変形して表示する変形表示手段とを備えることを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図表示装置において、
前記変形表示手段は、前記地平線または水平線を撓まして表示することを特徴とする地図表示装置。
【請求項3】
地平線または水平線が表示される鳥瞰図表示の道路地図を表示モニタに表示する地図表示方法において、
前記道路地図をスクロールすると前記地平線または水平線を撓まして表示し、
前記道路地図のスクロール量が大きくなると、前記地平線または水平線の撓みが大きくなることを特徴とする地図表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−284675(P2006−284675A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101280(P2005−101280)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】