説明

地図表示装置

【課題】地図画像の表示領域が切り替わる場合に、利用者が地図画像に対応する実空間を適切に把握可能とした「地図表示装置」を提供する。
【解決手段】
ディスプレイ70は、地図画像の表示領域が可変である。制御部102は、ディスプレイ70における地図画像の表示領域が切り替わる際に、その表示領域の切り替えの前の地図画像に対応する実空間が切り替えの後の地図画像に対応する実空間に含まれるように、表示領域の切り替えの後の地図画像の縮尺を設定する。地図描画部106は、バッファメモリ104に記憶された地図データに基づいて、設定された縮尺の地図画像を描画する。画像合成部118は、描画された地図画像を、ディスプレイ70における地図画像の表示領域に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載され、地図画像を表示する地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、GPS等により車両の位置及び方位を検出する。そして、車両の位置に応じた地図データが大量の地図データを記録したハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM等の地図データ記録媒体から読み出され、この地図データに基づいて車両位置の周囲の地図画像がディスプレイに表示されるとともに、車両位置マークが重ね合わせて表示され、更には、車両の移動に応じて地図画像がスクロール表示されて、利用者が車両の位置を把握することができるようになっている。
【0003】
また、ナビゲーション装置は、利用者が目的地に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるようにした経路誘導機能を備えている。この経路誘導機能では、地図データを用いて出発地から目的地までを結ぶ最もリンクコストが小さい誘導経路が探索され、その探索された経路が誘導経路として記憶される。そして、車両の走行中には、地図画像上に、誘導経路の画像が他の道路の画像とは色を変えて描画されることにより、車両が目的地まで案内される。
【0004】
また、ナビゲーション装置は、車両が誘導経路上の進行方向を変更すべき交差点から所定距離内に近づいたときに、ディスプレイに、地図画像とともに、進行方向を示す矢印を含んだ交差点の拡大画像が割り込み画像として表示される(例えば、特許文献1及び2参照)。この場合、図9(a)に示すように、誘導経路の画像312が重ねられた地図画像301が、ディスプレイの表示領域全体に表示されている状態から、図9(b)に示すように、地図画像の表示領域が縮小されて、誘導経路の画像312が重ねられた地図画像302と、交差点拡大画像303との双方を含んだ画像が表示されている状態に遷移する。
【特許文献1】特開平10−300497号公報
【特許文献2】特開2001−255165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のナビゲーション装置において、ディスプレイに、地図画像とともに、割り込み画像として交差点拡大画像が表示される場合、地図画像の表示領域が縮小されると、その結果、交差点拡大画像が表示される前のディスプレイの表示領域全体に地図画像が表示されていた状態と比較して、地図画像に対応する実空間が狭くなって、利用者が把握可能な車両位置の周辺の範囲が狭まってしまう。更には、車両位置の周辺の把握可能な範囲が狭まると、利用者は、それまでは見通せていた誘導経路を見通せなくなり、不便である。
【0006】
本発明の目的は、上述した問題を解決するものであり、地図画像の表示領域が切り替わる場合に、利用者が地図画像に対応する実空間を適切に把握可能とした地図表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る地図表示装置は、地図画像の表示領域が可変である表示ユニットと、地図データを取得する地図データ取得手段と、前記表示ユニットにおける地図画像の表示領域が切り替わる際に、前記表示領域の切り替えの前の地図画像に対応する実空間が前記表示領域の切り替えの後の地図画像に対応する実空間に含まれるように、前記表示領域の切り替えの後の地図画像の縮尺を設定する縮尺設定手段と、前記地図データ取得手段により取得された地図データに基づいて、前記縮尺設定手段により設定された縮尺の地図画像を描画する地図描画手段と、前記地図画像描画手段により描画された地図画像を、前記表示ユニットにおける地図画像の表示領域に表示させる表示処理手段とを有する。
【0008】
この構成によれば、地図画像の表示領域が可変である表示ユニットにおいて、その表示領域が切り替わる場合、切り替えの前後で所定範囲の実空間に対応する地図画像が表示されるように地図画像の縮尺が設定され、その縮尺で地図データに基づく地図画像が描画、表示される。これにより、表示ユニットにおける地図画像の表示領域が切り替わっても、切り替え前の地図画像に対応する実空間を、切り替え後の地図画像に対応する実空間に含ませることができ、切り替え後に地図画像に対応する実空間が狭くなることが防止される。
【0009】
同様の観点から、本発明に係る地図表示装置は、前記縮尺設定手段が、前記表示ユニットにおける地図画像の表示領域が第1の表示領域から第2の表示領域に切り替わる場合に、前記第1の表示領域の縦幅に対する前記第2の表示領域の縦幅の比率と、前記第1の表示領域の横幅に対する前記第2の表示領域の横幅の比率とのうちの小さい方の比率と、前記第1の表示領域に表示される地図画像の縮尺とを乗算して、前記第2の表示領域に表示されるべき地図画像の縮尺を設定する。
【0010】
また、本発明に係る地図表示装置は、車両に搭載されるものであり、前記車両の目的地までの誘導経路の画像を描画する誘導経路描画手段を有し、前記表示処理手段が、前記地図画像描画手段により描画された地図画像に、前記誘導経路画像描画手段により描画された誘導経路画像を重ねて表示させる。
【0011】
この構成によれば、表示ユニットにおける地図画像の表示領域が切り替わっても、切り替え前の地図画像に対応する実空間を、切り替え後の地図画像に対応する実空間に含ませることができ、切り替え後に地図画像に対応する実空間が狭くなることが防止され、更には、利用者が把握可能な車両位置の周辺の範囲が狭まることがなく、切り替え前と同様に、誘導経路を先まで見通せることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る地図表示装置は、前記表示ユニットにおける地図画像の表示領域が、前記表示ユニットに、前記地図画像とともに、該地図画像以外の他の画像が表示される際に切り替わる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表示ユニットにおける地図画像の表示領域が切り替わっても、切り替え前の地図画像に対応する実空間を、切り替え後の地図画像に対応する実空間に含ませることができ、切り替え後に地図画像に対応する実空間が狭くなることが防止され、利用者が地図画像に対応する実空間を適切に把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る地図表示装置が適用されたナビゲーション装置の構成を示す図である。図1に示すナビゲーション装置100は、車両に搭載されており、本体10、ハードディスクドライブ(HDD)20、操作部30、VICS受信部40、GPS受信部50、自律航法センサ60、ディスプレイ70及びスピーカ80により構成される。
【0015】
HDD20は、ハードディスク22を搭載しており、当該ハードディスク22に記録された地図データを読み出す。なお、地図データの記録媒体は、ハードディスク22に限られず、DVD、CD−ROM等であってもよく、記録媒体に応じたドライブが用意される。
【0016】
地図データは、図葉と称される、四隅の実空間上の経度及び緯度によって特定される矩形領域毎に設けられている。図2は、図葉毎の地図データの構成を示す図である。図2に示す図葉毎の地図データは、図葉に対応する実空間である矩形領域の四隅の経度及び緯度と、図葉に対応する地図画像データと、図葉に対応する矩形領域内に存在する道路の道路情報とを含む。
【0017】
図3は、道路情報の一例を示す図である。道路は、始点及び終点(ノード)とこれらノードを結ぶ直線(道路リンク)によって表される。そして、道路情報は、図3(a)に示すノードレコードと、図3(b)に示すリンクレコードからなる。図3(a)に示すノードレコードは、ノード毎に設けられるものであり、当該ノードの識別情報であるノード番号と、当該ノードの座標(実空間上の経度及び緯度)と、当該ノードが端部となるリンク(接続リンク)の識別情報である接続リンク番号とを含む。
【0018】
一方、図3(b)に示すリンクレコードは、道路リンク毎に設けられる。このリンクレコードは、対応する道路リンクの識別情報であるリンク番号と、当該道路リンクが一般道であるか高速道であるか等のリンク属性と、当該道路リンクの始点であるノードの識別情報である始点ノード番号と、当該道路リンクの終点であるノードの識別情報である終点ノード番号とを含む。これらノードレコード及びリンクレコードによって、始点及び終点の2つのノードとこれらノードを結ぶ道路リンクからなる道路の位置が特定可能となる。
【0019】
再び、図1に戻って説明する。操作部30は、図示しない操作ボタンやジョイスティック等を有しており、誘導経路検索時の目的地の設定等において、利用者によって操作される。VICS受信部40は、電波ビーコンや光ビーコンから送信され、あるいは、FM放送に多重されて送信される、交通情報を含むVICS情報を受信する。このVICS情報は、5分間隔等の所定の周期で更新され、送信される。
【0020】
GPS受信部50は、車両の位置の検出に必要なGPS衛星からのGPS信号を受信する。自律航法センサ60は、車両の進行方向を検出するためのジャイロ等と、一定の走行距離毎にパルス(車速パルス)を発生する距離センサとにより構成される。
【0021】
本体10は、制御部102、バッファメモリ104、地図描画部106、操作画面・マーク描画部108、誘導経路記憶部110、誘導経路描画部112、交通情報描画部114、案内部116及び画像合成部118により構成される。
【0022】
制御部102は、CPU等によって構成され、ナビゲーション装置100の全体を制御する。具体的には、制御部102は、GPS受信部50によって受信されたGPS信号や、自律航法センサ60によって検出された車両の進行方向、車速パルスの出力間隔に基づいて、車両の位置及び速度を算出する。また、制御部102は、HDD20に対して、ハードディスク22に記録された地図データの読み出しを指示する。制御部102の指示に応じてHDD104が読み出した地図データは、バッファメモリ104に記憶される。地図描画部106は、バッファメモリ104に記憶された地図データを読み出し、当該地図データに基づいてディスプレイ70の表示領域に対応する地図画像を描画する。
【0023】
また、制御部102は、利用者による操作部30の操作や、地図表示装置10の動作状態に応じて、操作画面・マーク描画部108に画像描画の指示を出す。操作画面・マーク描画部108は、この指示に応じて、各種メニュー画面や自車位置マーク、カーソル位置の画像を描画する。
【0024】
また、制御部102は、利用者による操作部30の誘導経路検索のための操作に応じて、バッファメモリ104に記憶された地図データを読み出し、当該地図データに基づいて、所定の経路探索アルゴリズム、例えば、横型探索法又はダイクストラ法等のシミュレーション計算を用いて、出発地から目的地までを結ぶ最もリンクコストが小さい誘導経路を探索する。誘導経路の情報は、誘導経路記憶部110に記憶される。
【0025】
図4は、誘導経路の一例を示す図であり、図5は、誘導経路情報の一例を示す図である。図4に示すように、出発地から目的地まで#1、#5、#3、#8及び#7の各ノード番号のノードをこの順で通過すべき誘導経路が探索される場合、図5に示すように、誘導経路情報には、これらのノードのノード番号とノード座標とを対応付けて構成される誘導経路上ノード情報が、その通過すべき順に配置される。
【0026】
再び、図1に戻って説明する。誘導経路描画部112は、誘導経路記憶部110に記憶された誘導経路情報に基づいて、誘導経路画像を描画する。
【0027】
また、制御部102は、交通情報描画部114に対して、VICS受信部40によって受信されたVICS情報で示される交通情報に対応する画像の態様を指示する。交通情報描画部114は、この指示に応じた態様の交通情報に対応する画像を描画する。
【0028】
また、制御部102は、誘導経路情報に基づく経路誘導中に、車両が誘導経路上の進行方向を変更すべき交差点から所定距離内に近づいたときに、案内部116に対して、案内のための画像描画及び音声生成を指示する。案内部116は、この制御部102の指示に応じて、進行方向を示す矢印を含んだ交差点拡大画像の描画や、進行方向の案内音声の生成を行う。案内音声はスピーカ80から出力される。
【0029】
また、制御部102は、利用者による操作部30の操作や、ナビゲーション装置100の動作状態に応じて、画像合成部118に、画像合成を指示する。画像合成部118は、この指示に応じて、地図描画部106、操作画面・マーク描画部108、誘導経路描画部112、交通情報描画部114及び案内部116によって描画された各種画像を適宜合成し、得られた画像を表示ユニットとしてのディスプレイ70に表示させる。
【0030】
また、制御部102は、利用者による操作部30の操作や、ナビゲーション装置100の動作状態に応じて、音声を生成し、案内部116を介してスピーカ80に出力させる。
【0031】
次に、ナビゲーション装置100における地図画像表示の詳細について説明する。本実施形態において、ナビゲーション装置100は、誘導経路情報に基づく経路誘導が行われ、ディスプレイ70の表示領域全体に車両位置周辺の地図画像が表示されている状態において、車両が誘導経路上の進行方向を変更すべき交差点から所定距離内に近づいたときに、ディスプレイ70における地図画像の表示領域を縮小し、当該地図画像とともに、交差点拡大画像を割り込み画像として表示させる。
【0032】
図6は、経路誘導中に、ディスプレイ70に地図画像とともに交差点拡大画像を割り込み画像として表示させる際の動作を示すフローチャートである。
【0033】
制御部102は、誘導経路記憶部110に記憶された誘導経路情報に基づいて、経路誘導を開始し、ディスプレイ70の表示領域全体に、その時点で利用者が操作部30を操作することによって設定されている地図画像の縮尺、あるいは、初期設定されている地図画像の縮尺(以下、これらをまとめて「第1の縮尺」と称する)の車両位置周辺の地図画像を表示させるとともに、当該地図画像に重ねて第1の縮尺の誘導経路の画像を表示させる(S101)。
【0034】
具体的には、制御部102は、GPS受信部50によって受信されたGPS信号等に基づいて、車両の位置を算出する。次に、制御部102は、HDD20に対して、ハードディスク22からの車両位置周辺の図葉に対応する地図データの読み出しを指示する。その後、HDD20によってハードディスク22から読み出された地図データがバッファメモリ104に記憶されると、制御部102は、算出した車両位置と、自律航法センサ60によって検出された車両の進行方向と、第1の縮尺とを地図描画部106へ出力し、地図画像の描画を指示する。地図描画部106は、この指示に応じて、バッファメモリ104に記憶された地図データを読み出し、当該地図データに基づいて、第1の縮尺の地図画像を描画する。更に、地図描画部106は、描画した第1の縮尺の地図画像から、ディスプレイ70の表示領域全体に対応する範囲であり、且つ、車両位置がその表示領域の所定位置(例えば中心より若干下の位置)となって、車両の進行方向が上となる範囲の地図画像を切り出して、画像合成部118へ出力する。
【0035】
更には、制御部102は、算出した車両位置と、自律航法センサ60によって検出された車両の進行方向と、第1の縮尺とを誘導経路描画部112へ出力し、誘導経路画像の描画を指示する。誘導経路描画部106は、この指示に応じて、誘導経路記憶部110に記憶された誘導経路情報を読み出し、当該誘導経路情報に基づいて、第1の縮尺の誘導経路画像を描画する。更に、誘導経路描画部112は、描画した第1の縮尺の誘導経路画像から、ディスプレイ70の表示領域全体に対応する範囲であり、且つ、車両位置がその表示領域の所定位置(例えば中心より若干下の位置)となって、車両の進行方向が上となる範囲の誘導経路画像を切り出して、画像合成部118へ出力する。
【0036】
その後、制御部102は、画像合成部118に対して、ディスプレイ70の表示領域全体に、地図画像と誘導経路画像が表示されるように、画像合成を指示する。画像合成部118は、この指示に応じて、地図描画部106からの第1の縮尺の地図画像に誘導経路描画部112からの第1の縮尺の誘導経路画像を重ねるように画像合成を行い、その合成画像をディスプレイ70の表示領域全体に表示させる。これにより、ディスプレイ70には、表示領域全体に、第1の縮尺で、車両位置が所定位置となって車両の進行方向が上となる車両位置周辺の地図画像と、当該第1の縮尺の地図画像に重ねられた第2の縮尺の誘導経路画像とが表示される。
【0037】
その後、制御部102は、GPS受信部50によって受信されたGPS信号等に基づいて、随時算出される車両位置と、図5に示す誘導経路情報内のノードの座標とに基づいて、車両が進行方向を変更すべき交差点まで所定距離内の位置に到達したか否かを判定する(S102)。
【0038】
車両が進行方向を変更すべき交差点まで所定距離内の位置に到達していない場合には、S101における、ディスプレイ70の表示領域全体に車両位置周辺の地図画像を表示させるとともに、当該地図画像に重ねて誘導経路の画像を表示させる処理が継続される。
【0039】
一方、車両が進行方向を変更すべき交差点まで所定距離内の位置に到達した場合には、制御部102は、ディスプレイ70における、誘導経路画像が重ねられた車両位置周辺の地図画像の表示領域(切り替え前の地図画像の表示領域)を縮小して、新たな地図画像の表示領域(切り替え後の地図画像の表示領域)を設定するとともに、ディスプレイ70における交差点拡大画像の表示領域を設定する(S103)。
【0040】
図7は、ディスプレイ70における表示領域の遷移の一例を示す図である。図7の例では、車両が進行方向を変更すべき交差点まで所定距離内の位置に到達するまでは、図7(a)に示すように、ディスプレイ70の表示領域全体が地図画像の表示領域となる。一方、車両が進行方向を変更すべき交差点まで所定距離内の位置に到達すると、図7(b)に示すように、地図画像の表示領域の横幅が1/2となり、残りの表示領域が交差点拡大画像の表示領域となる。
【0041】
次に、制御部102は、地図画像の表示領域の切り替え前の地図画像に対応する実空間が、地図画像の表示領域の切り替え後の地図画像に対応する実空間に含まれるように、地図画像の新たな縮尺(第2の縮尺)を設定する(S104)。
【0042】
具体的には、制御部102は、ディスプレイ70における、切り替え前の地図画像の表示領域の縦幅に対する切り替え後の地図画像の表示領域の縦幅の比率を算出するとともに、切り替え前の地図画像の表示領域の横幅に対する切り替え後の地図画像の表示領域の横幅の比率を算出する。更に、制御部102は、これら2つの比率のうち、小さいほうの比率を特定する。例えば、図7の例の場合、切り替え前の地図画像の表示領域の縦幅に対する切り替え後の地図画像の表示領域の縦幅の比率は、縦幅が不変であるので1となり、切り替え前の地図画像の表示領域の横幅に対する切り替え後の地図画像の表示領域の横幅の比率は、横幅がLから1/2Lに切り替わるため、1/2となり、その1/2が特定される。
【0043】
更に、制御部102は、特定した比率と、切り替え前の地図画像の縮尺である第1の縮尺とを乗算して第2の縮尺を設定する。例えば、特定した比率が1/2であって、第1の縮尺が1/10000である場合には、これら1/2と1/10000とを乗算した1/20000が第2の縮尺となる。なお、地図画像の縮尺が段階的なものである場合には、制御部102は、その段階的な縮尺のうち、特定した比率と第1の縮尺との乗算値以下であって、且つ、当該乗算値に最も近い縮尺を第2の縮尺として設定する。
【0044】
このようにして第2の縮尺が設定された後、第2の縮尺の地図画像の描画と、当該第2の縮尺の地図画像に重ねられる誘導経路画像の描画が行われるとともに、交差点拡大画像の描画が行われる(S105)。
【0045】
具体的には、制御部102は、GPS受信部50によって受信されたGPS信号等に基づいて、車両の位置を算出し、その算出した車両位置と、自律航法センサ60によって検出された車両の進行方向と、第2の縮尺と、ディスプレイ70における切り替え後の地図画像の表示領域の範囲とを地図描画部106へ出力し、地図画像の描画を指示する。地図描画部106は、この指示に応じて、バッファメモリ104に記憶された地図データを読み出し、当該地図データに基づいて、第2の縮尺の地図画像を描画する。更に、地図描画部106は、描画した第2の縮尺の地図画像から、ディスプレイ70における切り替え後の地図画像の表示領域に対応する範囲であり、且つ、車両位置がその表示領域の所定位置(例えば中心より若干下の位置)となって、車両の進行方向が上となる地図画像を切り出して、画像合成部118へ出力する。
【0046】
更には、制御部102は、算出した車両位置と、自律航法センサ60によって検出された車両の進行方向と、第2の縮尺と、ディスプレイ70における切り替え後の地図画像の表示領域の範囲とを誘導経路描画部112へ出力し、誘導経路画像の描画を指示する。誘導経路描画部106は、この指示に応じて、誘導経路記憶部110に記憶された誘導経路情報を読み出し、当該誘導経路情報に基づいて、第2の縮尺の誘導経路画像を描画する。更に、誘導経路描画部112は、描画した第2の縮尺の誘導経路画像から、ディスプレイ70における切り替え後の地図画像の表示領域に対応する範囲であり、且つ、車両位置がその表示領域の所定位置(例えば中心より若干下の位置)となって、車両の進行方向が上となる誘導経路画像を切り出して、画像合成部118へ出力する。
【0047】
また、制御部102は、バッファメモリ104に記憶された地図データと、誘導経路記憶部110に記憶された誘導経路情報とを読み出す。更に、制御部102は、これら地図データ及び誘導経路情報を案内部116へ出力し、交差点拡大画像の描画を指示する。案内部116は、この指示に応じて、進行方向を示す矢印を含んだ交差点拡大画像を描画し、画像合成部118へ出力する。
【0048】
次に、ディスプレイ70における、切り替え後の地図画像の表示領域に、第2の縮尺の地図画像が表示されるとともに、当該第2の縮尺の地図画像に重ねて、第2の縮尺の誘導経路画像が表示され、ディスプレイ70における交差点拡大画像の表示領域に、交差点拡大画像が表示される(S106)。
【0049】
具体的には、制御部102は、画像合成部118に対して、ディスプレイ70における切り替え後の地図画像の表示領域の範囲と、交差点拡大画像の表示領域の範囲とを出力し、画像合成を指示する。画像合成部118は、この指示に応じて、地図描画部106からの第2の縮尺の地図画像に、誘導経路描画部112からの第2の縮尺の誘導経路画像を重ねるように画像合成を行い、その合成画像をディスプレイ70における切り替え後の地図画像の表示領域に表示させる。更に、画像合成部116は、案内部116からの交差点拡大画像を、ディスプレイ70における交差点拡大画像の表示領域に表示させる。
【0050】
これにより、ディスプレイ70には、切り替え後の地図画像の表示領域に、第2の縮尺で、車両位置が所定位置となって車両の進行方向が上となる車両位置周辺の地図画像と、当該第2の縮尺の地図画像に重ねられた第2の縮尺の誘導経路画像とが表示され、交差点拡大画像の表示領域に、交差点拡大画像が表示される。
【0051】
図8は、ディスプレイ70に表示される画像の遷移の一例を示す図である。図8の例では、車両が進行方向を変更すべき交差点まで所定距離内の位置に到達するまでは、図8(a)に示すように、ディスプレイ70の表示領域全体が地図画像の表示領域となっており、その表示領域に、第1の縮尺の誘導経路画像212が重ねられた、第2の縮尺の地図画像201が表示される。一方、車両が進行方向を変更すべき交差点まで所定距離内の位置に到達すると、図8(b)に示すように、ディスプレイ70における地図画像の表示領域が縮小され、その表示領域に、第1の縮尺よりも小さい縮尺である第2の縮尺の誘導経路画像213が重ねられた、第2の縮尺の地図画像202が表示されるとともに、残りの表示領域に交差点拡大画像203が表示される。
【0052】
その後、制御部102は、GPS受信部50によって受信されたGPS信号等に基づいて、随時算出される車両位置と、図5に示す誘導経路情報内のノードの座標とに基づいて、車両が進行方向を変更すべき交差点を通過したか否かを判定する(S107)。車両が進行方向を変更すべき交差点を通過した場合には、S101における動作が行われ、ディスプレイ70における、地図画像の表示領域を、再び、ディスプレイ70の表示領域全体に戻して、その表示領域全体に、第1の縮尺の車両位置周辺の地図画像を表示させるとともに、当該地図画像に重ねて第1の縮尺の誘導経路の画像を表示させる。その後は、S102以降の動作が繰り返される。
【0053】
このように、本発明の実施の形態に係る地図表示装置が適用されたナビゲーション装置100では、車両が交差点に接近し、交差点拡大画像の表示のためにディスプレイ70における地図画像の表示領域が縮小される場合、地図画像の縮尺を小さくして表示することにより、地図画像の表示領域の切り替え前に表示されていた地図画像に対応する実空間を、切り替え後の地図画像に対応する実空間に含ませることができ、切り替え後に地図画像に対応する実空間が狭くなることが防止される。従って、地図画像の表示領域の切り替え後において、利用者が把握可能な車両位置の周辺の範囲が狭まることがなく、切り替え前と同様に、誘導経路を先まで見通せることが可能となる。
【0054】
なお、上述した実施形態では、車両が交差点に接近し、交差点拡大画像の表示のためにディスプレイ70における地図画像の表示領域が縮小される場合について説明したが、交差点拡大画像以外の他の画像が割り込み画像となって、ディスプレイ70における地図画像の表示領域が縮小される場合にも、同様に、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上、説明したように、本発明に係る地図表示装置は、地図画像の表示領域が切り替わる場合に、利用者が地図画像に対応する実空間を適切に把握可能であり、地図表示装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】地図表示装置を適用したナビゲーション装置の構成を示す図である。
【図2】地図画像の構成を示す図である。
【図3】道路情報の一例を示す図である。
【図4】誘導経路の一例を示す図である。
【図5】誘導経路情報の一例を示す図である。
【図6】ディスプレイに地図画像とともに、交差点拡大画像を割り込み画像として表示させる際の動作を示すフローチャートである。
【図7】ディスプレイにおける地図画像の表示領域の遷移を示す図である。
【図8】ディスプレイに表示される画像の遷移を示す図である。
【図9】従来のナビゲーション装置においてディスプレイに表示される画像の遷移を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10 本体
20 ハードディスクドライブ(HDD)
22 ハードディスク
30 操作部
40 通信部
50 GPS受信部
60 自律航法センサ
70 ディスプレイ
80 スピーカ
100 ナビゲーション装置
102 制御部
104 バッファメモリ
106 地図描画部
108 操作画面・マーク描画部
110 誘導経路記憶部
112 誘導経路描画部
114 交通情報描画部
116 案内部
118 画像合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図画像の表示領域が可変である表示ユニットと、
地図データを取得する地図データ取得手段と、
前記表示ユニットにおける地図画像の表示領域が切り替わる際に、前記表示領域の切り替えの前の地図画像に対応する実空間が前記表示領域の切り替えの後の地図画像に対応する実空間に含まれるように、前記表示領域の切り替えの後の地図画像の縮尺を設定する縮尺設定手段と、
前記地図データ取得手段により取得された地図データに基づいて、前記縮尺設定手段により設定された縮尺の地図画像を描画する地図描画手段と、
前記地図画像描画手段により描画された地図画像を、前記表示ユニットにおける地図画像の表示領域に表示させる表示処理手段とを有する地図表示装置。
【請求項2】
前記縮尺設定手段は、前記表示ユニットにおける地図画像の表示領域が第1の表示領域から第2の表示領域に切り替わる場合に、前記第1の表示領域の縦幅に対する前記第2の表示領域の縦幅の比率と、前記第1の表示領域の横幅に対する前記第2の表示領域の横幅の比率とのうちの小さい方の比率と、前記第1の表示領域に表示される地図画像の縮尺とを乗算して、前記第2の表示領域に表示されるべき地図画像の縮尺を設定する請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記地図表示装置は、車両に搭載されるものであり、
前記車両の目的地までの誘導経路の画像を描画する誘導経路描画手段を有し、
前記表示処理手段は、前記地図画像描画手段により描画された地図画像に、前記誘導経路画像描画手段により描画された誘導経路画像を重ねて表示させる請求項1又は2に記載の地図表示装置。
【請求項4】
前記表示ユニットにおける地図画像の表示領域は、前記表示ユニットに、前記地図画像とともに、該地図画像以外の他の画像が表示される際に切り替わる請求項1乃至3のいずれかに記載の地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−54219(P2010−54219A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216646(P2008−216646)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】