説明

地図表示装置

【課題】走行しやすい道路を選択して走行することができる地図表示装置を提供する。
【解決手段】道路31および道路32は道路の種別が同じであるが、道路31は片側1車線の道路であるのに対して道路32は片側2車線の道路であるので、道路31の道幅より道路32の道幅の方が広く表示される。道路33は片側2車線の国道であるが、事故が多発している道路であるので、道路31および道路32に比べて道幅が狭く表示される。道路34は一方通行の道路であるので、他の市道に比べて道幅が広く表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路地図を表示する地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の種別などの道路の属性をユーザが認識可能とするために、道路の表示色を変えて道路地図を表示する地図表示装置が従来技術として知られている(たとえば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−121579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユーザは走行しやすい道路であるか否かを道路の種別により判断する場合が多い。たとえば、走行しやすい道路を選択する場合、県道より国道のような道幅が広いと思われる道路を選択する。しかし、道路の種別のみに基づいて道路を選択すると、がけのそばを通るような道路や、事故が多発している道路など、却って走行しづらい道路を選択してしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の地図表示装置は、道路データを含む地図データを記録する地図データ記憶手段と、地図データ記憶手段に記憶された地図データを表示する地図表示手段と、地図データ記憶手段に記憶されている道路データに基づいた走行容易性データを記憶する走行容易性データ記憶手段と、走行容易性データに基づいて走行容易性を判断する走行容易性判断手段と、走行容易性判断手段で判断された内容により、地図表示手段で表示されている地図の道路幅を変更する道路幅変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の地図表示装置によれば、ユーザに走行しやすい道路であるか否かを判断させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明の実施形態によるナビゲーション装置1の構成を示す図で、ナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、スピーカ17、入力装置18およびディスクドライブ19を有する。ディスクドライブ19には、地図データが記憶されたDVD−ROM110が装填される。
【0007】
制御回路11は、マイクロプロセッサおよびその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行して各種の制御を行う。この制御回路11はDVD−ROM110に記憶された地図データに基づいて所定の経路探索処理を行う。その処理結果は推奨経路として表示モニタ16に表示される。
【0008】
現在地検出装置14は車両の現在地を検出する。この現在地装置14は、振動ジャイロ14a、車速センサ14b、GPS(Global Positioning System)センサ14cなどから構成される。振動ジャイロ14aは車両の進行方向を検出し、車速センサ14bは車速を検出し、GPSセンサ14cはGPS衛星からのGPS信号を検出する。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出された車両の現在地に基づいて、地図の表示範囲や経路探索開始点などを決定し、地図上にその現在地を表示する。
【0009】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを格納する。この画像データは、道路地図描画用データや各種の図形データからなり、DVD−ROM110に記憶された地図データに基づいて適宜生成される。ナビゲーション装置1は、以上のようにして生成された画像データを用いて地図表示などを行う。
【0010】
ディスクドライブ19は、DVD−ROM110から地図データを読み出す。地図データは、地図表示用データ(不図示)、経路探索用データ(不図示)、図2に示すような走行容易性判断データ20などを含む。地図表示用データおよび経路探索用データは、道路のリンク情報およびノード情報を含む。リンク情報は、各リンクの旅行時間(以下、リンク旅行時間)の情報を有し、地図表示用データは、広域から詳細まで複数の縮尺の地図データを有する。これにより、ナビゲーション装置1は、ユーザの要求にしたがって表示地図の縮尺を変更できる。なお、DVD−ROM110以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより地図データを読み出してもよい。
【0011】
図2を参照して、走行容易性判断データ20について説明する。走行容易性判断データ20は、道路の走行しやすさを評価するためのデータである。走行容易性判断データ20には、リンクID21ごとに幅員情報22、車線情報23、通行規制情報24、事故多発情報25および崖の有無情報26が記憶されている。
【0012】
幅員情報22にはリンクIDに対応した道路の幅が記録されており、本実施例ではリンクID030は5mとなっている。車線情報23にはリンクIDに対応した道路の車線数が記録されており、本実施例では1車線となっている。通行規制情報24にはリンクIDに対応した道路の交通規制情報が記録されており、通行止めや一方通行などの道路の規制情報が記録されている。本実施例ではリンクID030は一方通行として記録されている。事故多発情報25はリンクIDに対応した道路で発生した事故について過去10年間分を集計して1年間の平均をとり、その平均が所定件数以上の場合、事故が多発するとして「○」、所定件数未満の場合は事故があまり発生しないとして「×」が記録される。崖の有無情報26にはリンクIDに対応した道路の脇に崖があるかどうかが記録され、崖がある場合は「有」、崖が無い場合は「無」と記録される。
【0013】
表示モニタ16は、自車位置付近の道路地図などの各種情報を画面表示として運転者に提供する。スピーカ17は、各種入力操作を運転者に指示したり、経路誘導したりするための音声を出力する。入力装置18は、運転者が各種コマンドを設定するための入力スイッチを有し、操作パネルやリモコンなどによって実現される。運転者は、表示モニタ16の表示画面の指示やスピーカ17からの音声指示にしたがって入力装置18を操作することにより、目的地を設定する。
【0014】
目的地がユーザにより設定されると、ナビゲーション装置1は現在地検出装置14により検出された現在地を出発地として目的地までの経路演算を所定のアルゴリズムに基づいて行う。たとえば、出発地から目的地までの間の旅行時間(リンク旅行時間の合計)が最小になるような経路を演算するアルゴリズムで経路演算が行われる。このような経路演算を以下、経路探索と呼ぶ。このようにして求められた経路(以下、推奨経路という)は、表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、ほかの道路とは区別して画面表示される。これにより、ユーザは地図上の推奨経路を画面上で認識することができる。ナビゲーション装置1は、推奨経路にしたがって車両が走行できるように、ユーザに対して画面や音声などによる進行方向の指示を行い、車両を経路誘導する。
【0015】
次に、図2、図3および図4を参照して、本発明の一実施形態における走行しやすい道路の表示方法を説明する。
【0016】
まず、道路の走行のしやすさを評価する方法を以下説明する。道路の走行のしやすさは、走行容易性判断データ20に記録されているデータを元に評価点を算出し、その評価点の点数で評価を行う。最初に、幅員情報22に基づいて評価点が設定される。道幅が広ければ広いほど評価点数は高くなり、例えば、道幅が5mの道路の場合は5点とする。本実施例の場合、幅員情報22には5mとあるので、5点となる。次に、車線情報23に基づいて所定の点数を評価点に加算する。たとえば、道路の車線数に応じて、道路の車線が1車線の場合、1点、2車線の場合、2点を評価点に加算する。本実施例の場合、車線情報23では1車線とあるので1点となる。さらに、通行規制情報24に記録されている通行規制情報に基づいて所定の点数を評価点に加算等する。例えば、一方通行である場合、2点加算し、道路が通行止めである場合、他の情報22,23,25,26に関係なく評価点を1にする。本実施例では通行規制情報24には一方通行と記録されているので2点を加算する。
【0017】
次に、事故多発情報25に記録されている事故多発情報に基づいて所定の点数を評価点に加算する。事故多発情報25に「○」がついている場合、他の情報22,23,24,26に関係なく評価点を1にし、「×」がついている場合、3点加算する。さらに、崖の有無情報26に記録されている崖の有無情報に基づいて所定の点数を評価点に加算する。崖の有無情報26に「有」と記録されている場合、他の情報22,23,24,25に関係なく評価点を1にし、「無」と記録されている場合、評価点を「0」とする。
【0018】
以上のように算出された評価点に応じて、道路の走行のしやすさを評価する。評価点の点数が大きいほど、走行がしやすい道路であると評価し、評価点の点数が低いほど、走行がしづらい道路であると評価される。これにより、道幅が広い道路ほど走行しやすい道路であると評価され、車線数が多い道路ほど走行しやすい道路であると評価される。一方通行の道路であれば、両面通行の道路より走行しやすい道路であると評価されることになる。一方、通行止めの道路や事故が多発する道路、道路の脇に崖のある道路は走行しづらい道路であると評価される。
【0019】
以上のように算出した評価点に応じて、地図上の道路の道幅を変更する処理について説明する。
【0020】
次に走行しやすさを評価された道路について道幅を変えて表示する処理について説明する。図3(a)は、道路の種別に応じて道幅を変えて道路を表示した従来の道路地図の例を示す図ある。道路31、道路32および道路33は国道であり、他の道路に比べて道幅が広く表示される。道路31は片側1車線の道路であり、道路32および道路33は片側2車線の道路である。道路33は、事故が多発している道路である。道路31、道路32および道路33以外の道路は市道であり、道路の種別は同じである。道路34は一方通行の道路である。
【0021】
図3(b)は、本発明の一実施形態における道路の表示方法を適用した道路地図の一例を示す図である。上述したように道路31および道路32は道路の種別は同じである。しかし、走行しやすさを評価すると道路31は1車線で、道路32は2車線の相違があるため、道路31を表示するための変更係数と道路32を表示するための変更係数が異なり道路32の道幅の方が広く表示されることになる。道路33は2車線の国道であるが、事故が多発している道路であるので、道路31および道路32に比べて道路を表示するための変更係数が小さくなり道幅が狭く表示される。道路34は、一方通行の道路であるので、他の市道に比べて道幅が広く表示される。
【0022】
走行しやすさについて評価された道路の評価点に応じて表示する道路の道幅を変更する変更係数を決定し、その変更係数を従来の道路種別に応じた道路の幅に乗じて算出された幅で描画する。
【0023】
例えば、変更係数を評価点が15〜10点のときは1.0、評価点が10〜8のときは0.6、評価点が8〜4のときは0.3のように決めておく。上記実施例のリンク030は評価点が11点となるため、変更係数は1.0となり、道幅の太さは変更せずに表示する。
【0024】
図4(a)は、従来の道路の種別に応じて道幅を変えて道路を表示した道路地図の説明図である。道路35は国道である。道路35のうち、道路35aの脇には崖が存在する。
【0025】
図4(b)は、本発明の一実施形態における道路地図の説明図である。道路35のうち、道路35aの脇には崖が存在するので、道路35aを表示するための変更係数が小さくなり道路35aは、他の部分に比べて道幅が狭く表示される。
【0026】
以上の実施形態によるナビゲーション装置1は次のような作用効果を奏する。
(1)道路における車両の走行のしやすさに基づいて道幅を変更して道路地図の道路を表示するようにした。したがって、ユーザは走行しやすい道路を選択して走行することができる。
【0027】
(2)道路の道幅が広い道路ほど、または車線数が多い道路ほど、その道路を走行しやすいと評価し、道幅を広くして道路を表示するようにした。これにより、ユーザは、走行しやすい道路として道路の道幅が広い道路、または車線数が多い道路を走行することになり、快適に運転できる。
【0028】
(3)一方通行の道路を、両面通行の道路より走行しやすいと評価し、道幅を広くして道路を表示するようにした。これにより、ユーザは、走行しやすい道路として一方通行の道路を走行することになり、快適に運転することができる。
【0029】
(4)事故が多発する道路、または脇に崖のある道路は走行しづらいと評価し、道幅を狭くして道路を表示するようにした。これにより、ユーザは走行しづらい道路を回避して走行することができる。
【0030】
以上の実施の形態のナビゲーション装置1を次のように変形することができる。
(1)ナビゲーション装置1が搭載されている車両の車幅より片側の道路幅員が狭い道路、または車幅に所定値を加算した幅より狭い道路は、道路地図に表示しないようにしてもよい。これにより、車両が通行できない道路、または、対向車が進入したとき進行できなる道路に進入するのを防止することができる。
【0031】
図5(a)は、道路の種別に応じて道幅を変えて道路を表示した従来の道路地図の一例を示す図である。道路31〜34は図3(a)に表示されている道路と同じである。道路36および道路37の道幅は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の車幅より狭いものとする。図5(b)は、本発明の変形例における道路の表示方法を適用した道路地図の一例を示す図である。図5(b)に示すように、道路36および道路37の道幅は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の車幅より狭いので、道路36および道路37は道路地図に表示されない。
【0032】
(2)飛び出し道路や路地が多い道路を走行しづらい道路として道幅を狭くして道路地図に表示するようにしてもよい。飛び出し道路とは、小学生の通学路の道路であり、児童が飛び出す可能性の高い道路である。路地が多い道路とは、細い路地が多数入り組んでいる地域の道路である。これにより、ユーザは走行しづらい道路を回避して走行することができる。
【0033】
(3)
道路の走行のしやすさを評価する評価方法は、道幅が広い道路ほど走行しやすい道路であると評価するもの、車線数が多い道路ほど走行しやすい道路であると評価するもの、または一方通行の道路を両面通行の道路より走行しやすい道路であると評価するものであれば、実施形態に限定されない。また、道路の走行のしやすさを評価する評価方法は、通行止めの道路は走行しづらい道路であると評価するもの、事故が多発する道路は走行しづらい道路であると評価するもの、または脇に崖のある道路は走行しづらい道路であると評価するものであれば、実施形態に限定されない。
【0034】
(4)道路の走行のしやすさに基づいて道路の表示態様を変更するものであれば、道路地図上の道路の道幅の変更に限定されない。たとえば、図6に示すように、道路の走行のしやすさに基づいて道路の表示色を変更するようにしてもよい。この場合、走行しやすい道路であればあるほど、道路の表示色を鮮やかな色彩にし、走行しづらい道路であればあるほど道路の表示色を暗い灰の色彩にする。道路の表示色に代りに、または道路の表示色とともに、道路の表示パターンを変更するようにしてもよい。たとえば、走行しやすい道路を水玉模様で表示し、走行しづらい道路を格子状模様で表示するようにしてもよい。また、走行しづらい道路に車両が進入するのを防止するため、走行しづらい道路を表示しないようにしてもよい。
【0035】
道路地図を表示できる地図表示装置であれば、本発明はナビゲーション装置1に限定されない。たとえば、本発明は道路地図を表示することができる携帯電話端末にも適用できる。
【0036】
実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0037】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0038】
特許請求の範囲の要素と実施の形態との対応関係を説明する。
本願発明の地図データ記憶手段はディスクドライブ19およびDVD−ROM110に対応し、地図表示手段は制御回路11および表示モニタ16に対応する。走行容易性データ記憶手段はディスクドライブ19およびDVD−ROM110に対応し、走行容易性判断手段および道幅変更手段は制御回路11に対応する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素の対応関係になんら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】走行容易性判断データを説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態における走行しやすい道路の表示方法を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態における走行しやすい道路の表示方法を説明するための図である。
【図5】ナビゲーション装置が搭載された車両の車幅より狭い道路を表示しない道路地図を説明するための図である。
【図6】走行しやすい道路の表示方法の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ナビゲーション装置
11 制御回路
16 表示モニタ
19 ディスクドライブ
20 走行容易性判断データ
31〜37,35a 道路
110 DVD−ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路データを含む地図データを記録する地図データ記憶手段と、
前記地図データ記憶手段に記憶された地図データを表示する地図表示手段と、
前記地図データ記憶手段に記憶されている道路データに基づいた走行容易性データを記憶する走行容易性データ記憶手段と、
前記走行容易性データに基づいて走行容易性を判断する走行容易性判断手段と、
前記走行容易性判断手段で判断された内容により、前記地図表示手段で表示されている地図の道路幅を変更する道路幅変更手段と、
を備えたことを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図表示装置において、
前記走行容易性判断手段は、道幅が広い道路ほど、または車線数が多い道路ほど、走行容易であると判断することを特徴とする地図表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の地図表示装置において、
前記走行容易性判断手段は、一方通行の道路を両面通行の道路より走行容易であると判断することを特徴とする地図表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の地図表示装置において、
前記走行容易性判断手段は、事故が多発する道路、脇に崖のある道路、飛び出し道路および路地が多い道路を走行容易でないと判断することを特徴とする地図表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の地図表示装置において、
前記道路幅変更手段は、前記走行容易性判断手段により判断された走行容易性に応じて前記道幅を変更することを特徴とする地図表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−8271(P2010−8271A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168838(P2008−168838)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】