説明

地層ガス濃度測定装置および地層ガス濃度測定方法

【課題】シールド掘進やボーリングによる地層の掘削を行いながら、地層内に含まれるガス成分の濃度を短時間で把握することができる地層ガス濃度測定装置および地層ガス濃度測定方法を提供する。
【解決手段】地層ガス濃度測定装置は、地層中の液状物から、または地層を掘削した土砂を含む泥水から、ガス成分を分離する気液分離部と、前記分離されたガス成分を保持するガス保持部と、測定開始後の経過時間に対応する前記ガス保持部内の前記ガス成分の内、目的とするガス成分に対してガス濃度を測定するガス濃度測定部と、前記ガス濃度測定部で測定された前記ガス濃度と、前記経過時間との関係から定まる前記ガス保持部内における前記ガス濃度の変化の傾向に基いて、前記地層中のガス濃度に対応する情報を求める地層ガス濃度対応情報求め手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進やボーリング等による地層の掘削を行う際等に、該地層中に含まれるガス成分の濃度を測定する地層ガス濃度測定装置および地層ガス濃度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
泥水、泥土圧のシールド掘進工事や温泉ボーリング工事を行う際、地層中にメタンガス等の可燃性ガスが多く溜まっていると、シールド掘進やボーリング中に該地層内に溜まっていた前記可燃性ガスが噴出して坑内等の作業領域に可燃性ガスが充満するおそれがある。このため、泥水、泥土圧のシールド工法においては、シールド掘進を行うに際して、掘削した土砂の混入した泥水、泥土試料を採取し、地層中のガス濃度を測定し、ガス濃度の高低に応じて必要な安全措置が講じられている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−311087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1において、泥水、泥土試料中のガス濃度測定手段としては、ガスクロマトグラフが用いられている。このガスクロマトグラフによる従来のガス濃度測定(ガスクロマトグラフィー)は、泥水、泥土試料中からガス成分(メタンガス等)を遊離させて気体の状態にする必要がある。すなわち、採取した泥水、泥土試料中から先ず砂分などの固形成分を取り除き、ガス成分が溶存する液体から該ガス成分を遊離させ、その遊離ガスを捕集する工程が必要である。
そのため、その分離・捕集は、操作が煩雑となり、測定時間が長時間かかる問題があった。また、地層を掘削しながら地層中のガス濃度の測定を行うことはできないので、すなわちスポット的な測定になるので、地層内から湧出するガス成分が坑内等へ充満する虞を予め察知し、工事現場における安全性を高めるためには、充分なガス濃度測定方法とは言えなかった。
【0004】
本発明の課題は、シールド掘進やボーリングによる地層の掘削を行いながら、地層内に含まれるガス成分の濃度を短時間で把握することができる地層ガス濃度測定装置および地層ガス濃度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る地層ガス濃度測定装置の発明は、地層中の液状物から、または地層を掘削した土砂を含む泥水から、ガス成分を分離する気液分離部と、前記分離されたガス成分を保持するガス保持部と、測定開始後の経過時間に対応する前記ガス保持部内の前記ガス成分の内、目的とするガス成分に対してガス濃度を測定するガス濃度測定部と、前記ガス濃度測定部で測定された前記ガス濃度と、前記経過時間との関係から定まる前記ガス保持部内における前記ガス濃度の変化の傾向に基いて、前記地層中のガス濃度に対応する情報を求める地層ガス濃度対応情報求め手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
地層中のガス成分は、地層中の液状物(地下水、温泉水等)に溶解した状態や、土砂に吸着して地層中に分散した状態や、地層中にフリーガスのガス溜まりの状態として存在する場合などがある。本態様に係る地層ガス濃度測定装置では、前記液状物に溶解した状態のガス成分、または泥水に溶解した状態のガス成分、または前記フリーガスが前記液状物や前記泥水中に気泡となって分散した状態のガス成分の濃度を測定するものである。
【0007】
本態様によれば、地層中の液状物または地層を掘削した土砂を含む泥水から直接気液分離部で分離されたガス成分をガス保持部で保持し、測定開始後の経過時間に対応する前記ガス保持部内の前記ガス成分のガス濃度を測定し、測定された前記ガス濃度と前記経過時間との関係から定まる前記ガス保持部内における前記ガス濃度の変化の傾向に基いて、前記地層中のガス濃度に対応する情報を求めるので、地層の掘削を行いながら、地層内に含まれるガス成分の濃度に対応する情報を短時間で把握することができる効果が得られる。
【0008】
前記効果が得られる理由を以下に詳説する。
前記液状物又は前記泥水に含まれるガス成分は、前記気液分離部を通過して前記ガス保持部内に保持される。このガス保持部内に保持されるガス成分の濃度と、前記液状物または前記泥水に含まれるガス成分の濃度とが平衡に達するまで、前記ガス成分は前記気液分離部を通過し続け、当該ガス保持部内のガス成分の濃度は増加の傾向をとり続ける。そして、前記平衡に達した状態のとき、前記ガス保持部内のガス濃度が前記液状物または前記泥水に含まれるガス成分の濃度と同じになる。従って、この状態で前記ガス保持部内の目的とするガス成分のガス濃度を測定すれば、その測定結果が前記液状物または前記泥水に含まれるガス成分の濃度と言うことになる。
【0009】
しかし、前記平衡に達するまでの時間は、気液分離膜等の気液分離部を用いた場合、数十分から百数十分程度の長時間がかかる場合がある。気液分離対象の液体が地層を掘削した土砂を含む泥水等のように、気液分離膜を目詰りさせやすいものである場合、一層平衡に達するまでの時間が長くかかる。
【0010】
本発明者等は、気液分離部で分離を開始した後、前記ガス濃度測定部において測定されるガス保持部内のガス濃度は徐々に増加し、数十分から百数十分後に平衡に達するが、測定開始後の数分〜十数分の間における前記ガス濃度の変化の傾向が、最終的に前記平衡に達した状態における前記ガス保持部内のガス濃度と一定の相関を有することを発見した。すなわち、測定開始後の数分〜十数分の間における前記ガス保持部内のガス濃度の変化の傾向から、前記平衡に達した状態のガス濃度を求めることができることを発見した。
【0011】
本態様によれば、前記相関を予め特定しておくことにより、前記平衡に達するまで長時間待つことなく、当該地層ガス濃度対応情報求め手段によって、測定開始後の数分〜十数分の短時間における前記ガス濃度の変化の傾向に基いて前記平衡に達した状態における前記ガス保持部内の目的とするガス成分のガス濃度を求めることが可能となり、もって、地層の掘削を行いながら、地層中のガス濃度に対応する情報を短時間で把握することができる効果が得られるものである。
【0012】
なお、「地層中のガス濃度に対応する情報」は、前記目的ガスのガス濃度の他、目的ガスのガス濃度が所定のガス濃度を超えるか否かを判断しうるグラフやその他の表示等の情報も含む。
【0013】
本発明の第2の態様に係る地層ガス濃度測定装置の発明は、第1の態様において、前記目的とするガス成分は、可燃性ガスであることを特徴とするものである。
【0014】
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、メタン、エタン、プロパン、天然ガス、一酸化炭素、硫化水素等の可燃性ガスを目的ガス成分として測定し、これらの可燃性ガスが坑内へ充満する危険を予測して工事現場における安全性を高めることができる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る地層ガス濃度測定装置の発明は、第1の態様または第2の態様において、前記地層ガス濃度対応情報求め手段は、前記地層中の液状物または前記地層を掘削した土砂を含む泥水を、前記気液分離部に対する目詰りの程度に対応した複数種類に分け、各種類に対応した補正処理がなされて前記情報を求めるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
前記第1の態様において説明した、ガス保持部内に保持されるガス成分の濃度と、前記液状物または前記泥水に含まれるガス成分の濃度とが平衡に達するまでの時間は、同じガス濃度であっても前記液状物または前記泥水の状態によって異なり、例えば、前記気液分離部を詰らせるような細かい粒子を多く含んでいると、より長くなる方向に変わる。すなわち、同じガス濃度であっても目詰りし易い種類の泥水等の方が測定開始後の前記短時間におけるガス濃度の変化の傾向が小さくなる。
【0017】
本態様によれば、第1の態様または第2の態様と同様の作用効果に加え、地層ガス濃度対応情報求め手段において、地層中の液状物または前記地層を掘削した土砂を含む泥水を、該液状物または該泥水の状態(気液分離部に対する目詰りの程度)に対応した複数種類に分け、その各種類に応じた補正処理を行って地層ガス濃度対応情報を求めるので、掘削中の地層に含まれるガス濃度に対応する情報をより正確に得ることができる。
【0018】
本発明の第4の態様に係る地層ガス濃度測定装置の発明は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記液状物または前記泥水を移送する移送管に開口部を設け、該移送管中を液状物または泥水が上流から下流に移送される際に、前記開口部を介して前記液状物または前記泥水が前記気液分離部に接するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様と同様の作用効果に加え、地層中の液状物または地層を掘削した土砂を含む泥水を移送する移送管内を流通する前記液状物または前記泥水のガス濃度を測定することができる。このとき、前記気液分離部は、前記移送管に開口部を設け、該移送管中を液状物または泥水が上流から下流に移送される際に、前記開口部を介して前記液状物または前記泥水が前記気液分離部に接するように構成されているので、移送管内を流通する前記液状物または前記泥水中のガス濃度を効率よく連続的に測定することができる。
【0020】
本発明の第5の態様に係る地層ガス濃度測定方法の発明は、地層中の液状物から、または地層を掘削した土砂を含む泥水から、気液分離部によってガス成分を分離し、前記分離されたガス成分をガス保持部に保持し、測定開始後の経過時間に対応する前記ガス保持部内の前記ガス成分の内、目的とするガス成分に対してガス濃度を測定し、測定された前記ガス濃度と、前記経過時間との関係から定まる前記ガス保持部内における前記ガス濃度の変化の傾向に基いて、前記地層中のガス濃度に対応する情報を求めることを特徴とするものである。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シールド掘進やボーリングによる地層の掘削を行いながら、地層内に含まれるガス成分の濃度を短時間で把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施例1>
図1は、本発明の実施形態に係る地層ガス濃度測定装置を示す図である。
【0023】
本発明に係る地層ガス濃度測定装置1は、図1に示されるように、気液分離部2と、ガス保持部3と、ガス濃度測定部4と、地層ガス濃度対応情報求め手段5とによって構成されている。地層ガス濃度対応情報求め手段5は、ケーブル6を介してガス濃度測定部4と接続されている。
【0024】
気液分離部2は、地層中の液状物または地層を掘削した土砂を含む泥水からガス成分を分離するものである。気液分離部2としては、気体を通し、液体を通さない気液分離膜を用いることができる。気液分離膜を用いることによって、地層中の液状物または地層を掘削した土砂を含む泥水中のガス成分のみが該気液分離膜を通過するので、ガス成分が前記液状物または前記泥水から分離されてガス保持部3に保持される。
【0025】
ここで、このガス保持部3内に保持されるガス成分の濃度と、前記液状物または前記泥水に含まれるガス成分の濃度とが平衡に達するまで、前記ガス成分は前記気液分離部2を通過し続け、当該ガス保持部3内のガス成分の濃度は増加の傾向をとり続ける。そして、前記平衡に達した状態のとき、前記ガス保持部3内のガス濃度が前記液状物または前記泥水に含まれるガス成分の濃度と同じになる。従って、この状態で前記ガス保持部3内の目的とするガス成分のガス濃度をガス濃度測定部4において測定すれば、その測定結果が前記液状物または前記泥水に含まれるガス成分の濃度と言うことになる。
【0026】
しかし、前記平衡に達するまでの時間は、気液分離膜等の気液分離部2を用いた場合、数十分から百数十分程度の長時間がかかる場合がある。気液分離対象の液体が地層を掘削した土砂を含む泥水等のように、気液分離膜を目詰りさせやすいものである場合、一層平衡に達するまでの時間が長くかかる。
【0027】
本発明に係る地層ガス濃度測定装置1は、気液分離部2で分離を開始した後、前記ガス濃度測定部4において測定されるガス保持部3内のガス濃度は徐々に増加し、数十分から百数十分後に平衡に達するが、測定開始後の数分〜十数分の間における前記ガス濃度の変化の傾向が、最終的に前記平衡に達した状態における前記ガス保持部3内のガス濃度と一定の相関を有することに基いて、地層ガス濃度対応情報求め手段5によって、測定開始後の数分〜十数分の間における前記ガス保持部3内のガス濃度の変化の傾向から、前記平衡に達した状態のガス濃度を求めることができるものである。
【0028】
前記相関を予め特定しておくことにより、前記平衡に達するまで長時間待つことなく、地層ガス濃度対応情報求め手段5によって、測定開始後の数分〜十数分の短時間における前記ガス濃度の変化の傾向に基いて前記平衡に達した状態における前記ガス保持部3内の目的とするガス成分のガス濃度を求めることが可能となり、もって、地層の掘削を行いながら、地層中のガス濃度に対応する情報を短時間で把握することができる効果を得ることができる。
【0029】
なお、「地層中のガス濃度に対応する情報」は、前記目的ガスのガス濃度の他、目的ガスのガス濃度が所定のガス濃度を超えるか否かを判断しうるグラフやその他の表示等の情報も含む。
【0030】
ガス濃度測定部4は、測定開始後の経過時間に対応する前記ガス保持部3内の前記ガス成分の内、目的とするガス成分に対してガス濃度を測定するものである。ガス濃度測定部4において測定する目的ガスは、例えば、メタン、エタン、プロパン、天然ガス、一酸化炭素、硫化水素等の可燃性ガスが挙げられる。ガス濃度測定部4としては、半導体式センサーや接触燃焼式センサー等を用いた公知のガス濃度測定器を用いることができる。また、気液分離部2と、ガス保持部3と、ガス濃度測定部4とによって構成される公知のガスセンサーを用いることもできる。例えばメタンガスセンサーとしては、METSメタンセンサー(Franatech社製)を用いることができる。
【0031】
ガス濃度測定部4においてメタンガス等の可燃性ガスを目的ガスとして測定することによって、該可燃性ガスが坑内へ充満する危険を予測して工事現場における安全性を高めることができる。
【0032】
<実施例2>
次に、本発明の他の実施形態に係る地層ガス濃度測定装置について説明する。本実施例は、実施例1において説明した地層ガス濃度測定装置1において、地層ガス濃度対応情報求め手段5を、前記地層中の液状物または前記地層を掘削した土砂を含む泥水を、前記気液分離部に対する目詰りの程度に対応した複数種類に分け、各種類に対応した補正処理がなされて前記情報を求めるように構成したものである。気液分離部2と、ガス保持部3と、ガス濃度測定部4と、地層ガス濃度対応情報求め手段5とを備える構成は、実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
【0033】
前述の実施例1において説明した、ガス保持部内に保持されるガス成分の濃度と、前記液状物または前記泥水に含まれるガス成分の濃度とが平衡に達するまでの時間は、同じガス濃度であっても前記液状物または前記泥水の状態によって異なり、例えば、前記気液分離部を詰らせるような細かい粒子を多く含んでいると、より長くなる方向に変わる。すなわち、同じガス濃度であっても目詰りし易い種類の泥水等の方が測定開始後の前記短時間におけるガス濃度の変化の傾向が小さくなる。これを具体的に示した実験例を以下に示す。
【0034】
図2のガス濃度測定実験装置10を用い、清水、土木用粘土泥水(粗い泥粒子の泥水)、ベントナイト泥水(細かい泥粒子の泥水)にそれぞれ一定濃度になるようにメタンガスを注入し、METSメタンセンサー(図2におけるメタンガスセンサー11)を用いてメタンガス濃度を測定する実験を行った。前記ガス濃度測定実験装置10は、所定量のメタンガスを注入した水、土木用粘土泥水、ベントナイト泥水を、循環ポンプ15によって循環させ(図2中のガス濃度測定実験装置10内の矢印は液体の循環方向である)、それぞれの液体が循環系の上流から下流に流通する際に、当該液体がメタンガスセンサー11の気液分離部12に接するように構成されている。所定量のメタンガスを注入したそれぞれの液体(清水、土木用粘土泥水、ベントナイト泥水)について、前記メタンガスセンサー11によるメタンガス測定値が、実際に注入したメタンガス量に対応するメタンガス濃度に達するまでの経過時間を、図3(清水)、図4(土木用粘土泥水)、図5(ベントナイト泥水)に示す。
【0035】
清水(図3)に90μmol/リットルとなるようにメタンガスを注入した場合には、メタンガス濃度測定に約100分を要するが、同じく90μmol/リットルとなるようにメタンガスを注入した土木用粘土泥水(図4)では約180分を要する。土木用粘土泥水は、比較的粗い泥粒子の泥水である。更に、土木用粘土泥水よりも細かい泥粒子の泥水であるベントナイト泥水(図5)においては、200分経過後も90μmol/リットルのメタンガスは測定されず、正確なメタンガス濃度測定には250分程度かかると思われる結果となった。
【0036】
清水中のメタンガス濃度を測定するための経過時間よりも、土木用粘土泥水中やベントナイト泥水中のメタンガス濃度を測定するための経過時間の方が長くかかるのは、土木用粘土泥水やベントナイト泥水に含まれる泥粒子によって気液分離部2が目詰りするためであると考えられる。そして、ベントナイト泥水に含まれる泥粒子は、土木用粘土泥水に含まれる泥粒子よりも細かい泥粒子であるので、更に気液分離部2の目詰りが起こりやすいため、前記経過時間がより長くなると考えられる。
【0037】
このように、測定する液体、すなわち、地層中の液状物または地層を掘削した土砂を含む泥水は、気液分離部2に対する目詰りの程度に応じてガス濃度を測定するための経過時間が変わる。本実施例では、地層ガス濃度対応情報求め手段5において求められる情報について、前記液状物または前記泥水の気液分離部2に対する目詰りの程度に応じた種類に対応した補正処理を行うように構成されているので、掘削中の地層に含まれるガス濃度をより正確に推測することができる。
【0038】
<実施例3>
図6は、シールド坑20内において、本発明に係る地層ガス濃度測定装置を設置する場合の概念図である。図7は、泥水シールド掘削機21の排泥管に、本発明に係る地層ガス濃度測定装置を設置する場合の例を示す図である。
【0039】
図6のように、トンネル等を泥水シールド掘削機21を用いて掘削する場合には、掘削した土砂に添加する粘土、ベントナイト、水等の作泥材を送泥管22によって送り、前記土砂と作泥材を練り混ぜた泥土の不透水性と塑性流動性によって切り羽土圧と地下水圧に対抗して掘削部の崩壊を防止しながら、泥水シールド掘削機21の掘進量と排土量のバランスを計りながら掘進して行われる。排土(地層を掘削した土砂を含む泥水)は、排泥管23(地層を掘削した土砂を含む泥水を移送する移送管)によって移送され、シールド坑20内外へ排出される。
【0040】
本発明に係る地層ガス濃度測定装置1を、前記排泥管23に設けることによって、掘削を行っている地層中に含まれるガス成分の濃度をリアルタイムで測定することができる。地層ガス濃度測定装置1の地層ガス濃度対応情報求め手段5は、シールド坑20の外部の管理棟などに設け、例えば、ガス濃度が上昇した場合には坑内へ注意を促す信号を出したり、掘削作業を中止する等の対応を取れるようにすることが望ましい。シールド坑20内に地層ガス濃度対応情報求め手段5を設置するための十分なスペースが確保できる場合には、シールド坑20内に設けることもできる。
【0041】
地層ガス濃度測定装置1は、図7のように、前記排泥管23に開口部24を設け、該排泥管23中を泥水25が上流から下流に移送される際に、前記開口部24を介して前記泥水25が前記気液分離部2に接するように構成されていることが望ましい。このことによって、排泥管23内を流通する前記泥水25中のガス濃度を効率よく連続的に測定することができる。また、排出弁27は、気液分離部2周辺に溜まった気泡を排出したり、開口部24に設けた地層ガス濃度測定装置1を取り外す際に、排泥管23内の泥水25を排出するために用いることができる。
【0042】
更に、開口部24には、図8のように砂礫防止プレート26を設けることが望ましい。前記砂礫防止プレート26によって、気液分離部2近傍に砂礫が堆積するのを防ぐことができる。図9は、砂礫防止プレート26の平面図、図10は、図9のA−A断面図である。
【0043】
記砂礫防止プレート26には大きな砂礫を除くための砂礫防止穴28が設けられている。砂礫防止穴28は、図8のように、砂礫防止穴28を通過した泥水が前記気液分離部2に接する流れを形成し易い形状に設けられていることが好ましい。また、砂礫防止穴28の断面(図9のA−A断面)が図10のように形成されていることによって、砂礫を防止しつつ、泥水25を効率よく排泥管23側から気液分離部2側へ送り込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、シールド掘進やボーリングによる地層の掘削を行いながら、該地層中に含まれるガス成分の濃度を測定する地層ガス濃度測定装置および地層ガス濃度測定方法として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る地層ガス濃度測定装置を示す図である。
【図2】液体中に含まれるメタンガス濃度測定のための実験装置である。
【図3】清水中に含まれるメタンガス濃度測定に要する経過時間を示す図である。
【図4】土木用粘土泥水に含まれるメタンガス濃度測定に要する経過時間を示す図である。
【図5】ベントナイト泥水に含まれるメタンガス濃度測定に要する経過時間を示す図である。
【図6】シールド坑内において、本発明に係る地層ガス濃度測定装置を設置する場合の概念図である。
【図7】泥水シールド掘削機の排泥管に、本発明に係る地層ガス濃度測定装置を設置する場合の一例を示す図である。
【図8】泥水シールド掘削機の排泥管に、本発明に係る地層ガス濃度測定装置を設置する場合の他の一例を示す図である。
【図9】砂礫防止プレート26の平面図である。
【図10】図9の砂礫防止プレート26のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 地層ガス濃度測定装置、2 気液分離部、 3 ガス保持部、
4 ガス濃度測定部、 5 地層ガス濃度対応情報求め手段、6 ケーブル、
10 ガス濃度測定実験装置、11 メタンガスセンサー、
12 気液分離部、 13 ガス保持部、14 ガス濃度測定部、
15 循環ポンプ、
20 シールド坑、 21 泥水シールド掘削機、
22 送泥管、 23 排泥管、 24 開口部、
25 泥水、 26 砂礫防止プレート、
27 排出弁、 28 砂礫防止穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地層中の液状物から、または地層を掘削した土砂を含む泥水から、ガス成分を分離する気液分離部と、
前記分離されたガス成分を保持するガス保持部と、
測定開始後の経過時間に対応する前記ガス保持部内の前記ガス成分の内、目的とするガス成分に対してガス濃度を測定するガス濃度測定部と、
前記ガス濃度測定部で測定された前記ガス濃度と、前記経過時間との関係から定まる前記ガス保持部内における前記ガス濃度の変化の傾向に基いて、前記地層中のガス濃度に対応する情報を求める地層ガス濃度対応情報求め手段と、を備えたことを特徴とする、地層ガス濃度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載された地層ガス濃度測定装置において、前記目的とするガス成分は、可燃性ガスであることを特徴とする、地層ガス濃度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された地層ガス濃度測定装置において、前記地層ガス濃度対応情報求め手段は、前記地層中の液状物または前記地層を掘削した土砂を含む泥水を、前記気液分離部に対する目詰りの程度に対応した複数種類に分け、各種類に対応した補正処理がなされて前記情報を求めるように構成されていることを特徴とする、地層ガス濃度測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された地層ガス濃度測定装置において、前記液状物または前記泥水を移送する移送管に開口部を設け、該移送管中を液状物または泥水が上流から下流に移送される際に、前記開口部を介して前記液状物または前記泥水が前記気液分離部に接するように構成されていることを特徴とする、地層ガス濃度測定装置。
【請求項5】
地層中の液状物から、または地層を掘削した土砂を含む泥水から、気液分離部によってガス成分を分離し、
前記分離されたガス成分をガス保持部に保持し、
測定開始後の経過時間に対応する前記ガス保持部内の前記ガス成分の内、目的とするガス成分に対してガス濃度を測定し、
測定された前記ガス濃度と、前記経過時間との関係から定まる前記ガス保持部内における前記ガス濃度の変化の傾向に基いて、前記地層中のガス濃度に対応する情報を求めることを特徴とする、地層ガス濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−114733(P2009−114733A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288805(P2007−288805)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(591284601)株式会社演算工房 (22)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【Fターム(参考)】