説明

地山の地質評価方法

【課題】高精度に切羽前方の地質状況を予測できる地山の地質評価方法を提供すること。
【解決手段】地山1の既掘削部5において、距離程に応じて、切羽9aの前方に削孔した際の削孔速度11および打撃圧13と、切羽9aの切羽評価点15とを取得する。次に、削孔速度11および打撃圧13を多変量解析により分析し、地質予測式(式1)を作成して地山評価点(A)を算出する。そして、地山評価点(A)と切羽評価点15との変動幅の調整を行って、地質予測式(式2)を作成し、地山評価点(B)を算出する。さらに、地山1の未掘削部7において、距離程に応じて、切羽9の前方に孔10を削孔して削孔速度17および打撃圧19を取得する。その後、地質予測式(式1)および地質予測式(式2)と削孔速度17および打撃圧19とを用いて、地山1の未掘削部7における地山評価点(B)を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山の地質評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳トンネル工事では、掘削方法や支保パターンを適切に選定するために、切羽の地質状況の判定が行われてきた。切羽の地質状況の判定には、経験を積んだ技術者が切羽岩盤を観察し、観察結果を点数化する「切羽評価点法」が用いられてきた。
【0003】
また、切羽前方の地質状況の予測も行われてきた。トンネル掘削の際に一般的に用いられるジャンボには、油圧式パーカッションドリルが搭載されている。地質状況の予測は、このドリルを用いて切羽から30〜50m程度前方まで削孔し、削孔深度に応じて種々の削孔データを得ることにより行われてきた。
【0004】
削孔データを用いた地質状況の予測方法としては、(1)削孔データ(削孔深度における瞬間削孔速度・打撃エネルギ・打撃回数・孔断面積)から「破壊エネルギ係数」を算出し、確率・統計的手法により岩盤等級と破壊エネルギ係数との対応付けを行って岩盤評価をし、切羽前方の地質予測を行う方法があった。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、類似の技術として、(2)多くの削孔データ(フィード圧・打撃圧・ビット磨耗など)を計測して、「標準せん孔速度」および「標準回転圧」を求め、地山弾性波速度との相関により換算弾性波速度を得て、従来の地山分類に基づき、地山を定量的に評価する方法があった(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
他に、(3)削孔によって得られた「ビット回転数」の平均値を地山強度判定図上にプロットすることにより地質の硬軟を判別し、軟岩と判別した場合には、ビット回転数の小刻みな変動により生じる周波数成分を分析した結果から軟岩中の礫分の多少を判断し、礫分が少ない場合には、削孔水の濁り度合から泥質か砂質かを判断する方法があった(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、(4)削孔データ(打撃エネルギ・単位時間あたりの打撃数・穿孔速度・孔断面積)から、削孔深度に応じて「穿孔エネルギ」を算出し、地質性状を予測する方法もあった(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平4−161588号公報
【特許文献2】特開平8−144682号公報
【特許文献3】特開平10−252051号公報
【特許文献4】特開2002−13381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の(1)の方法では、地山状況を適切に評価できない例が多く生じている。図7は、(1)の方法による地質状況の予測結果のグラフである。図7の横軸は距離程を、縦軸は切羽評価点および破壊エネルギ係数を示す。破壊エネルギ係数は削孔深度ごとに得られるが、ある幅を持ったデータとして取り扱う方が地山の地質状況を的確に表すので、図7では2〜12m程度の幅の移動平均値を採用している。
【0010】
図7に示す結果では、破壊エネルギ係数201のばらつきが大きく、切羽評価点203との相関係数は0.3で、実際の地山状況を適切に評価していないと思われる。これは、(1)の方法では、個々の削孔データを組み合わせた式を一義的に「破壊エネルギ係数」として定めて地山評価をしており、地質による個々のデータの寄与度の違いを考慮していないためと考えられる。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高精度に切羽前方の地質状況を予測できる地山の地質評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するための本発明は、地山の既掘削部において、切羽前方の複数種類の削孔データを取得する工程(a)と、前記地山の既掘削部における地質情報を取得する工程(b)と、前記削孔データを多変量解析により分析し、第1の地質予測式を作成する工程(c)と、前記第1の地質予測式を用いて算出した地質情報と前記工程(b)で取得した地質情報との変動幅の調整を行って、第2の地質予測式を作成する工程(d)と、を具備することを特徴とする地山の地質評価方法である。
【0013】
本発明は、地山の未掘削部において、切羽前方の削孔データを取得する工程(e)と、工程(c)で作成した第1の地質予測式および工程(d)で作成した第2の地質予測式と工程(e)で取得した削孔データとを用いて、地山の未掘削部における地質情報を予測する工程(f)と、をさらに具備する場合もある。
【0014】
工程(a)で取得される削孔データと工程(e)で取得される削孔データとは同種であり、削孔速度、打撃圧、トルク、フィード圧等ののうちのいくつかとするのが望ましい。また、工程(b)で取得される地質情報は、切羽評価点、一軸圧縮強度、弾性係数、弾性波速度等のうちのいずれか1つとするのが望ましい。工程(f)で予測される地質情報は、工程(b)で取得される地質情報と同種である。
【0015】
本発明では、地山の既掘削部において、切羽前方の複数種類の削孔データを取得する。また、削孔データの取得と前後して、地山の既掘削部における地質情報を取得する。そして、既掘削部における削孔データを多変量解析により分析し、第1の地質予測式を作成した後、第1の地質予測式を用いて算出した地質情報と既掘削部における地質情報との変動幅の調整を行って、第2の地質予測式を作成する。さらに、地山の未掘削部において、切羽前方の削孔データを取得し、第1の地質予測式および第2の地質予測式と地山の未掘削部における削孔データとを用いて、地山の未掘削部における地質情報を予測する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高精度に切羽前方の地質状況を予測できる地山の地質評価方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、掘削中のトンネル3周辺の地山1の断面図を、図2は、サーバ31のハードウェア構成図を、図3は、本実施の形態における地山の地質評価方法のフローチャートを示す。
【0018】
本実施の形態では、図3のフローチャートに示す地質評価方法により、図2に示すようなシステムを用いて、図1に示すトンネル3の周辺の地山1の地質状況、特に未掘削部7の地質状況を予測する。
【0019】
次に、サーバ31のハードウェア構成を説明する。サーバ31は、制御部33、記憶部35、メディア入出力部37、通信制御部39、入力部41、表示部43、印刷部45等が、システムバス47を介して接続されて構成される。
【0020】
制御部33は、CPU(Central Processing Unit )、ROM(Read Only Memory )、RAM(Random
Access Memory)等で構成される。
【0021】
CPUは、記憶部35、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、システムバス47を介して接続された各装置を駆動制御する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラムやデータ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部35、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部33が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0022】
記憶部35は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部33が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。各プログラムコードは、制御部33により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0023】
メディア入出力部37(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、フロッピディスクドライブ、PDドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置等を有する。
【0024】
通信制御部39は、通信制御装置、通信ポート等を有し、サーバ31とネットワーク49間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワーク49を介して、サーバ31と、クライアント端末(図示せず)間の通信制御を行う。
【0025】
入力部41は、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部41を介して、サーバ31に対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。表示部43は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置等である。印刷部45は、プリンタであり、印刷出力処理を行う。システムバス47は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0026】
図3に示すように、地質評価方法は、トンネル3の既掘削部5の分析を行うためのステップ(ステップ101〜ステップ105)と、未掘削部7の予測を行うためのステップ(ステップ106〜ステップ108)からなる。図3に示すステップ101、ステップ103、ステップ106以外の各ステップは、サーバ31の制御部33によって、記憶部35等に格納された実行プログラムに従って行われる。
【0027】
図3に示す地質評価方法では、まず、トンネル3の既掘削部5の分析を行う。既掘削部5の分析では、まず、地山1の既掘削部5の削孔速度11および打撃圧13を得る(ステップ101)。ステップ101では、掘削中のトンネル3の既掘削部5について、距離程に応じて、削孔速度11および打撃圧13を得る。削孔速度11および打撃圧13は、切羽9aに孔10aを削孔した際の削孔データである。ステップ101では、例えば、作業者がメディア入力部37、入力部41等を介して入力するなどして、削孔速度11および打撃圧13を記憶部35に保存する。
【0028】
そして、削孔速度11および打撃圧13の平均値、標準偏差、その比を算出する(ステップ102)。ステップ102では、制御部33が、ステップ101で得た削孔速度11を用いて、削孔速度11の平均値、標準偏差、平均値と標準偏差の比を算出する。また、ステップ101で得た打撃圧13を用いて、打撃圧13の平均値、標準偏差、平均値と標準偏差の比を算出する。
【0029】
ステップ101、ステップ102と並行して、トンネル3の既掘削部5の切羽評価点15を得る(ステップ103)。ステップ103では、従来の切羽評価点法を用い、既掘削部5の切羽9aを観察して切羽評価点15を得る。切羽評価点15は、既掘削部5の地質情報である。ステップ103では、例えば、作業者がメディア入力部37、入力部41等を介して入力するなどして、切羽評価点15を記憶部35に保存する。
【0030】
次に、多変量解析を行って、地山評価点(A)の予測式(式1)を作成する(ステップ104)。ステップ104では、制御部33が、ステップ102で算出した削孔速度11の平均値μVp、標準偏差σVp、平均値と標準偏差の比(μ/σ)Vp、打撃圧13の平均値μPp、標準偏差σPp、平均値と標準偏差の比(μ/σ)Ppを使用して多変量解析を行い、地山評価点(A)の予測式(式1)を作成する。地山評価点(A)の予測式(式1)は、第1の地質予測式である。図1に示すトンネル3の周辺の地山1の例では、次のような(式1)が得られた。
【0031】
地山評価点(A)=−0.261×μVp+0.270×σVp+0.9549×(μ/σ)Vp+0.009×μPp+0.230×(μ/σ)Pp+16.643………(式1)
【0032】
ステップ104では、制御部33が、(式1)を用いて、既掘削部5の距離程に応じて地山評価点(A)を算出する。図4は、ステップ104で算出した地山1の地質状況の評価結果である。ステップ104では、制御部33が、必要に応じて、図4に示す地質状況の評価結果を表示部43や印刷部45に出力する。
【0033】
図4の横軸は距離程、縦軸は地山評価点を示す。図4では、ステップ103で得た切羽評価点を実際の地山評価点23としている。図4に示すように、ステップ104で算出した地山評価点(A)21と実際の地山評価点23とは、相関係数が0.5であり、図7に示す従来の方法による予測結果よりも高い相関で地山1の状況を予測できていることがわかる。
【0034】
ただし、図4において、実際の地山評価点23の標準偏差と算出した地山評価点(A)21の標準偏差とを比較してみると、実際の地山評価点23の標準偏差が10.147であるのに対し、算出した地山評価点(A)21の標準偏差は4.579と小さい。そのため、算出した地山評価点(A)21は、値が平均値の近くで変動するのみで、地山1の状況を的確に評価しているとはいえない。
【0035】
次に、変動幅の調整を行って、地山評価点(B)の予測式(式2)を作成する(ステップ105)。ステップ105では、制御部33が、図4に示す実際の地山評価点23の変動幅(標準偏差)と算出した地山評価点(A)21の変動幅(標準偏差)とを合わせるため、地質評価点(B)の予測式(式2)を作成する。地質評価点(B)の予測式(式2)は、第2の地質予測式である。なお、(式2)において、σは標準偏差を、μは平均値を表す。また、(添え字)は実際の地山評価点を、(添え字)多変量は多変量解析によって算出した地山評価点(A)を表す。
【0036】
地山評価点(B)=σ/σ多変量×(地山評価点(A)−μ多変量)+μ………(式2)
【0037】
以下に、(式2)の各項目について説明する。(地山評価点(A)−μ多変量)は、地山評価点(A)の入力値と算出した地山評価点(A)21の平均値との差であり、図4に示す例では(地山評価点(A)−49.313)となる。
【0038】
σ/σ多変量は、実際の地山評価点23の標準偏差と算出した地山評価点(A)21の標準偏差との比である。これにより、算出した地山評価点(A)21の平均値からの変動幅を、実際の地山評価点23の平均値からの変動幅にあわせることができる。図4に示す例では、σ/σ多変量=10.147/4.579=2.216となる。
【0039】
+μは、実際の地山評価点23の平均値である。(式2)に示すように、σ/σ多変量×(地山評価点(A)−μ多変量)にこの項目を加えることで、地山評価点(B)が得られる。図4に示す例では、μ=49.313である。
【0040】
ステップ105では、制御部33が、(式2)を用いて、既掘削部5の距離程に応じて地山評価点(B)を算出する。図5は、(式2)を用いて算出した地山1の地質状況の評価結果である。ステップ105では、制御部33が、必要に応じて、図5に示す地質状況の評価結果を表示部43や印刷部45に出力する。
【0041】
図5の横軸は距離程、縦軸は地山評価点を示す。図5でも、ステップ103で得た切羽評価点を実際の地山評価点23としている。図5に示すように、(式2)により変動幅を調整して算出した地山評価点(B)25は、実際の地山評価点23と極めてよく適合する。
【0042】
ステップ105の後、トンネル3の未掘削部7の予測を行う。未掘削部7の予測を行うには、まず、未掘削部7の削孔速度17および打撃圧19を得る(ステップ106)。ステップ106では、作業者が、掘削中のトンネル3の未掘削部7について、切羽9から前方の未掘削部7に向けて孔10を削孔する。そして、距離程に応じて、削孔データである削孔速度17および打撃圧19を得る。ステップ106では、例えば、作業者がメディア入力部37、入力部41等を介して入力するなどして、削孔速度17および打撃圧19を記憶部35に格納する。
【0043】
次に、(式1)を用いて未掘削部7の地山評価点(A)を予測する(ステップ107)。ステップ107では、制御部33が、ステップ106で得た削孔速度17および打撃圧19について、それぞれ、平均値、標準偏差、平均値と標準偏差との比を算出する。そして、制御部33が、ステップ104で得た地山評価点(A)の予測式(式1)を用いて、未掘削部7の地山評価点(A)を予測する。ステップ107では、必要に応じて、制御部33が、地山評価点(A)の予測結果を表示部43や印刷部45に出力する。
【0044】
ステップ107の後、(式2)を用いて未掘削部7の地山評価点(B)を予測する(ステップ108)。ステップ108では、制御部33が、ステップ105で得た地山評価点(B)の予測式(式2)を用いて、ステップ107で予測した未掘削部7の地山評価点(A)とステップ103で取得した切羽評価点15の変動幅の調整を行って、未掘削部7の地山評価点(B)を予測する。ステップ108では、必要に応じて、制御部33が、地山評価点(B)の予測結果を表示部43や印刷部45に出力する。ステップ107で予測する地山評価点(A)、ステップ108で予測する地山評価点(B)は、未掘削部7の地質情報である。
【0045】
このように、本実施の形態では、既掘削部5の分析を行う際に、既掘削部5の削孔速度11および打撃圧13を多変量解析により分析し、個々のデータが地山1の地質にどの程度寄与しているかを定量的に評価して、適切な地山評価点(A)の予測式(式1)を作成する。さらに、(式1)により算出した地山評価点(A)と既掘削部5の切羽評価点15との変動幅の調整を行うため、地山評価点(B)の予測式(式2)を作成する。未掘削部7の予測を行う際には、未掘削部7の地山1について削孔速度17および打撃圧19を取得し、(式1)、(式2)を用いて地山1の地山評価点(B)を予測する。
【0046】
これにより、切羽9の前方の未掘削部7について、実際の切羽評価点23と予測した地山評価点(B)25とをよく適合させることができる。未掘削部7の地山1の地質を高い精度で予測することにより、トンネル3の品質確保や施工の安全性向上が可能となる。
【0047】
なお、地質評価方法は、図3に示すものに限らない。図6は、本発明の地質評価方法の概要を示す図である。図6に示すように、本発明の地質評価方法は、トンネル3の既掘削部5の分析を行うためのステップ(ステップ201〜ステップ204)と、未掘削部7の予測を行うためのステップ(ステップ205〜ステップ207)からなる。
【0048】
本実施の形態では、図3に示すように、ステップ101で既掘削部5の削孔データとして削孔速度11と打撃圧13を取得し、ステップ106で未掘削部7の削孔データとして削孔速度17と打撃圧19を取得したが、本発明の地質評価方法では、図6のステップ201およびステップ205に示すように、既掘削部5や未掘削部7の削孔データとして、削孔速度、打撃圧、トルク、フィード圧等のうちいくつかを取得すればよい。但し、ステップ201で取得する削孔データと、ステップ205で取得する削孔データとは、同種のものとする。
【0049】
また、本実施の形態では、図3に示すように、ステップ103で既掘削部5の地質情報として切羽評価点を取得し、ステップ108で未掘削部7の地質情報として切羽評価点に相当する地山評価点(B)を予測したが、本発明の地質評価方法では、図6のステップ202およびステップ207に示すように、既掘削部5で取得する地質情報や未掘削部7について予測する地質情報は、切羽評価点、一軸圧縮強度、弾性係数、弾性波速度等のうちのいずれか1つとする。但し、ステップ202で取得する地質情報と、ステップ205で予測する地質情報とは、同種のものとする。
【0050】
既掘削部5の分析を行う際には、ステップ204で、第1の地質予測式(式3)と第2の地質予測式(式4)とを作成する。ステップ204では、まず、多変量解析を行って地質情報(A)を予測するための地質予測式(式3)を作成する。そして、(式3)を用いて地質情報(A)を算出する。(式3)において、μは平均値を、σは標準偏差を表し、(添え字)はデータの種類を表す。
【0051】
地質情報(A)=a×μ+b×σ+c×(μ/σ)+d×μ+e×σ+f×(μ/σ)+・・・………(式3)
【0052】
ステップ204では、地質情報(A)を算出した後、地質情報(A)とステップ202で取得した地質情報との変動幅を調整して地質情報(B)を予測するための地質予測式(式4)を作成する。(式4)において、(添え字)は実際の地山評価点を、(添え字)多変量は多変量解析によって算出した地質情報(A)を表す。
【0053】
地質情報(B)==σ/σ多変量×(地質情報(A)−μ多変量)+μ………(式4)
【0054】
未掘削部7の予測を行う際には、ステップ206で、(式3)を用いて地質情報(A)を予測した後、(式4)を用いて変動幅を調整して地質情報(B)を予測する。
【0055】
図6に示すように、図3に示す以外の種類の削孔データや地質情報を用いた場合にも、既掘削部5の分析を行う際に、削孔データを多変量解析により分析して適切な第1の地質予測式(式3)を作成し、(式3)により算出した地質情報と既掘削部5で取得した地質情報との変動幅の調整を行うための第2の地質予測式(式4)を作成する。そして、未掘削部7の予測を行う際には、未掘削部7の地山1について削孔データを得て、(式3)、(式4)を用いて地山の地質情報を予測する。これにより、切羽9の前方の未掘削部7について、実際の地質情報とよく適合した地質情報を予測できる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる地山の地質評価方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】掘削中のトンネル3周辺の地山1の断面図
【図2】サーバ31のハードウェア構成図
【図3】地山の地質評価方法のフローチャート
【図4】(式1)を用いて算出した地山1の地質状況の評価結果
【図5】(式2)を用いて算出した地山1の地質状況の評価結果
【図6】本発明の地質評価方法の概要を示す図
【図7】従来の方法による地質状況の予測結果のグラフ
【符号の説明】
【0058】
1………地山
3………トンネル
5………既掘削部
7………未掘削部
9、9a………切羽
10、10a………孔
11、17………削孔速度
13、19………打撃圧
21、25………予測した切羽評価点(A)
23………実際の切羽評価点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山の既掘削部において、切羽前方の複数種類の削孔データを取得する工程(a)と、
前記地山の既掘削部における地質情報を取得する工程(b)と、
前記削孔データを多変量解析により分析し、第1の地質予測式を作成する工程(c)と、
前記第1の地質予測式を用いて算出した地質情報と前記工程(b)で取得した地質情報との変動幅の調整を行って、第2の地質予測式を作成する工程(d)と、
を具備することを特徴とする地山の地質評価方法。
【請求項2】
前記地山の未掘削部において、切羽前方の削孔データを取得する工程(e)と、
前記第1の地質予測式および前記第2の地質予測式と前記工程(e)で取得した削孔データとを用いて、前記地山の未掘削部における地質情報を予測する工程(f)と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の地山の地質評価方法。
【請求項3】
前記工程(a)で取得される削孔データと前記工程(e)で取得される削孔データとが同種であり、削孔速度、打撃圧、トルク、フィード圧等ののうちのいくつかであることを特徴とする請求項2記載の地山の地質評価方法。
【請求項4】
前記工程(b)で取得される地質情報が、切羽評価点、一軸圧縮強度、弾性係数、弾性波速度等のうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の地山の地質評価方法。
【請求項5】
前記工程(f)で予測される地質情報が、前記工程(b)で取得される地質情報と同種であることを特徴とする請求項2記載の地山の地質評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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