説明

地山切削による防護プレート挿入システムにおける制御装置

【課題】地山状況に見合った速度で地山を切削し、防護プレートをけん引することができる制御装置を提供する。
【解決手段】切削装置8,10によって地山を切削しながら、けん引装置13によって防護プレート4をけん引し、切削によって形成された切削溝に防護プレート4を挿入する、地山切削による防護プレート挿入システムにおいて、切削部材8に加わる切削負荷を測定する手段と、防護プレート4のけん引速度Vを測定する手段22と、切削負荷及びけん引速度Vを両者が適合するように設定する手段とを備え、測定された切削負荷及びけん引速度Vが適合しているかを監視し、不適合であるとき両者の設定を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地山切削による防護プレート挿入システムにおける制御装置に関し、より詳細には例えば鉄道線路や道路などの車両走行路の下方の地盤に該走行路を横断するトンネルを構築するに際し、地山を切削してその切削溝に地山を防護するための防護プレートを挿入する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路や道路などの車両走行路の下方の地盤に該走行路を横断するトンネル(地下構造物)を構築するに際し、予め防護プレートを地山に挿入して防護する工法が採用されている。
【0003】
この防護工法の1つとして、先にこの出願人は、地山をワイヤソーなどの可撓性切削部材で水平方向に切削しながら、その切削溝に防護プレート(鋼板)を挿入する工法を提案した(例えば特許文献1参照)。この工法は、地山の変状ひいては鉄道線路の場合は軌道変状を防止することができる極めて有効な工法である。
【0004】
上記工法に適用される従来のシステムでは、ワイヤソーによって地山を切削する切削装置の運転操作と、防護鋼板をけん引するけん引装置の運転操作が独立している。他方、切削対象は地盤であって崩壊しやすいものであることから、ワイヤソーによって切削された切削溝に防護鋼板を遅滞なく挿入しなければならず、ワイヤソーの切削速度が防護鋼板のけん引速度に追従してほぼ等しくなるようにしてある。しかしながら、ワイヤソーによる地山の切削経路の地質は一定ではなく、また障害物等もあることから、地山状況によってワイヤソーに加わる切削負荷が変動し、以下のような問題が生じる。
【0005】
すなわち、切れにくい地山に対して速すぎるけん引速度で防護鋼板をけん引すると、それに伴って切削速度も速すぎるものとなるので、ワイヤソーに加わる切削負荷が大きくなる。その結果、地山切削に寄与しているワイヤソー部分の中央に遅れが生じて防護鋼板側に湾曲し(図1(a)の鎖線で示すワイヤソー部分8a参照)、ワイヤソーと防護鋼板とが干渉する。逆に、切れ易い地山に対して遅すぎるけん引速度で防護鋼板をけん引すると、それに伴って切削速度も遅すぎるものとなり、ワイヤソーに加わる切削負荷が小さくなってその走行速度が大きくなる。その結果、過剰切削が生じ、自立性の乏しい地山では路盤面に変状を与えるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−332733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、切削負荷を検出することによって地山状況を把握し、地山状況に見合った速度で地山を切削し、防護プレートをけん引することにより、切削部材と防護プレートとの干渉を防止するとともに、路盤の変状等を防止することができる、地山切削による防護プレート挿入システムにおける制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、発進孔と到達孔との間の地山に設置された1対のガイド孔間の地山を切削するためのための切削装置であって、到達孔側に設置された主プーリと、この主プーリに巻き掛けられ、送り側が前記ガイド孔の一方に通されて、ガイド孔間を横切り、さらに戻り側が他方のガイド孔を通って前記主プーリに戻される無端状の可撓性切削部材と、前記主プーリに一方向への推力を加えることにより前記切削部材に所定の張力を与える推進アクチュエータと、前記主プーリを回転させる回転アクチュエータとを有し、前記主プーリの回転によって前記切削部材を循環走行させることにより、前記ガイド孔間の地山を切削する切削装置と、
前記1対のガイド孔のそれぞれに通され一端が防護プレートにクランプされる引張材と、到達孔側に設置され、前記引張材の他端が連結されるけん引アクチュエータとを有するけん引装置とを備え、
前記切削装置によって前記ガイド孔間の地山を切削するとともに、前記けん引装置によって前記防護プレートをけん引し、切削速度とけん引速度とがほぼ等しくなるように保ちながら、切削によって形成された切削溝に前記防護プレートを挿入する、地山切削による防護プレート挿入システムにおいて、
前記切削部材に加わる切削負荷を測定する手段と、
前記防護プレートのけん引速度を測定する手段と、
切削負荷及びけん引速度を両者が適合するように設定する手段とを備え、
測定された切削負荷及びけん引速度が適合しているかを監視し、不適合であるとき両者の設定を変化させることを特徴とする防護プレート挿入システムにおける制御装置にある。
【0009】
より具体的には、前記切削負荷及び前記けん引速度は、施工によって得られたそれらのデータの回帰式に基づいて設定される。前記主プーリの回転アクチュエータは油圧アクチュエータであり、前記切削負荷は油圧アクチュエータの作動圧として測定及び設定される前記主プーリの回転アクチュエータは油圧アクチュエータであり、前記切り込み速度及び設定切り込み速度は、それぞれ油圧アクチュエータの作動圧として測定及び設定される。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、切削負荷を検出することによって地山状況を把握し、けん引速度が地山状況に適合しているかを監視しながら地山を切削し、防護プレートをけん引するので、切削部材と防護プレートとの干渉を防止でき、また路盤の変状等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】防護プレート挿入システムの全体構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図2】アクチュエータの制御系統を示すブロック構成図である。
【図3】切削負荷を説明するための模式的な図である。
【図4】主プーリ圧及びけん引速度の区間割りされた設定範囲を示す図である。
【図5】防護プレート挿入システムおける制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図6】図5に引き続く処理動作を示すフローチャートである。
【図7】図6に引き続く処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明による防護プレート挿入システムの全体構成を示している。鉄道線路や道路などの走行路1を挟む両側には発進立坑2及び到達立坑3が築造されている。これら発進立坑2及び到達立坑3間の地山内には、防護鋼板(防護プレート)4の幅寸法に対応した間隔を置いてガイド孔を形成する1対のガイド管5a,5bが設置されている。これらのガイド管5a,5bとしては、塩化ビニルなどの合成樹脂管が用いられる。
【0013】
各ガイド管5a,5bの内部には管軸方向に移動自在に切削用プーリの支持機構6a,6bと、防護鋼板4のクランプ機構7a,7bとがそれぞれ収容されている。到達立坑3の外部及び内部にはワイヤソー8を循環走行させる主プーリ10、ワイヤソー8のガイド管5a,5b内への送り出し長さを調整する調整プーリ9、ワイヤソー8の方向転換のための方向転換プーリ11が設置されている。
【0014】
これらの主プーリ10や調整プーリ9及び方向転換プーリ11に巻き掛けられたワイヤソー8は、その送り側が一方のガイド管5a内に通され,ガイド管5a,5b間の地山を横切るように支持機構6a,6bの切削用プーリに巻き掛けられたうえ、他方のガイド管5bを通って地山外部の主プーリ10に戻されている。この無端状のワイヤソー8はワイヤに適宜間隔を置いて多数のダイヤモンドビットを取り付けてなる周知のもので、鉄筋コンクリートを切断する際の切断具として知られている。ワイヤソーに代えてチェーンソーを使用することもできる。
【0015】
到達立坑3には反力壁12から反力を得て作動するけん引ジャッキ13が設置されている。このけん引ジャッキ13に把持されるPC鋼撚り線(引張材)14は各ガイド管5a,5bの内部を通って防護鋼板4のクランプ機構7a,7bに連結されている。以上のようなシステム構成において、主プーリ10に推力を加えることによりワイヤソー8に張力を与え、その状態で主プーリ10を回転させることにより、ガイド管5a,5b間の地山を溝状に切削して切り込み部を形成する。同時にけん引ジャッキ13によりPC鋼撚り線14をけん引し、切り込み部に防護鋼板4を挿入する。
【0016】
図2は、各アクチュエータの制御系統を示すブロック構成図である。制御装置23としては、入出力部、演算制御部(CPU)、記憶部を有するパーソナルコンピュータが用いられる。主プーリ推進ジャッキ20は、主プーリ10に推力Ft を加えてワイヤソー8に一定の張力Pt を与える油圧アクチュエータである(図3参照)。主プーリ推進ジャッキ20の作動圧は、その油圧系統において張力Ptとして検出され、その信号は制御装置23に入力される。制御装置23は、張力Ptを制御する制御信号Po2を出力する。
【0017】
主プーリ駆動モータ21は、主プーリ10にトルクを与えて主プーリ10を回転させる油圧アクチュエータである。主プーリ駆動モータ21の作動圧は、その油圧系統において主プーリ圧Pmとして検出され、その信号は制御装置23に入力される。ワイヤソー8の地山への切り込み速度は、ワイヤソー8に加わる負荷によって変化し、したがって切り込み速度は主プーリ10の負荷トルクに関連付けることができる。負荷トルクは主プーリ駆動モータ21の作動圧に比例することから、結局、ワイヤソー8の地山への切り込み速度は、主プーリ圧Pmを用いて示すことができる。この主プーリ圧Pmを制御するための制御信号Poを制御装置23は出力する。ここに、切り込み速度とは、ワイヤソー8によって切り込み部(切削溝)が形成される速度、言い換えればワイヤソー8の地山切削に寄与している部分(ガイド管5a,5bを横切っている部分)の発進側から到達側への移動速度である。
【0018】
鋼板けん引ジャッキ13は、前述のように、防護鋼板4をけん引する油圧アクチュエータである。鋼板けん引ジャッキ13の作動圧は、その油圧系統においてけん引圧Pjとして検出され、その信号は制御装置23に入力される。ストローク計22は、防護鋼板4のけん引ストローク(移動量)を検出するためのもので、図1(b)に示すように、発進孔2に設置される。ストローク計22はロータリエンコーダなどが用いられ、検出したストロークLsは制御装置23に入力される。制御装置23はストロークLSと時間Δtとから防護鋼板4のけん引速度Vを算出する。制御装置23は、けん引速度Vを制御する制御信号Voを出力する。
【0019】
ここで、ワイヤソー8に加わる切削負荷について図3を参照して説明する。切削用プーリ6,6の支持機構(図1に示した支持機構6a,6b、図3においては簡略化のため省略)には連結パイプ25,25が連結されている。ワイヤソー8はこの連結パイプ25の内部を通っている。一方、連結パイプ25,25は、ワイヤソー8の地山切削に寄与している部分8aと防護鋼板4の先端との間に一定距離Lを保つように、留め具26によってPC鋼撚り線14に締結されている。このような一定距離Lを保持する手段を設けることにより、地山切削寄与部分8aが発進側から到達側に向けて移動する速度、あるいは切削が進行する速度を切削速度Vとすると、この切削速度Vはけん引ジャッキ13,13による防護鋼板4のけん引速度Vに等しくなり、等しい速度関係が保たれる。
【0020】
ワイヤソー8の切削能力は、その走行速度をVpとするとVp×Vで与えられる。この単位時間当たりの切削面積を意味する切削能力Vp×Vが、切削負荷に相当する。この切削負荷に対する仕事量は、ワイヤソー8が主プーリ10に接している半周部分でπr×Fpとして与えられる。ただし、rは主プーリ10の半径、Fpは主プーリ10の回転トルクにより与えられる作用力である。主プーリ10の回転トルクは、上記した主プーリ駆動モータの作動油圧である主プーリ圧Pmにより与えられる。以上より、主プーリ圧Pmを測定することにより切削負荷を把握することができる。切削負荷は、主プーリ10の回転トルクによって把握することもできるし、あるいは主プーリ10の回転アクチュエータとして電動モータを使用する場合は、その電流値によって把握することもできる。
【0021】
切削負荷の大きさ、つまり主プーリ圧Pmの大きさは地山の切れ易さを意味する。この発明は、主プーリ圧Pmを検出して地山状況を把握し、地山状況に応じた速度で地山を切削し、防護鋼板4をけん引することにより、ワイヤソー8と防護鋼板4との干渉や、過剰切削を防止しようとするものである。
【0022】
このため、制御装置23は、上述のような動作のほか、主プーリ圧Pmの設定値Pb及びけん引速度Vの設定値Vcを設定し、主プーリ圧Pm及びけん引速度Vが設定範囲にあるか否かを判断する動作を実行する。図4に示すように、実験あるいはこれまでの施工から得られたデータの解析によれば、地山状況に適した速度で防護鋼板をけん引し、地山を切削している良好な施工が行われている場合、主プーリ圧Pmと設定けん引速度Vcとの関係は次の回帰式で表される。
Pm=f(Vc)=a・Vc+b
ただし、a,bは定数
【0023】
制御装置23には、この回帰式をもとにPm±σ(σ:標準偏差)の範囲で、複数の区間割りされた範囲(図4にNo.1,No.2,No.3・・・として示す)が設定記憶され、制御装置23は主プーリ圧Pm及びけん引速度Vの双方共がいずれかの区間割りに入るように制御を行う。例えば、測定された主プーリ圧Pm及びけん引速度Vが図4のX(Vx,Pmx)で示される値であるとすると、このときの稼働状態は区間割りNo.2の設定けん引速度は満足するが、主プーリ圧Pmについては満足しない状態、すなわちワイヤソー8の切削負荷が小さく切り易い地山であるにも拘わらず、けん引速度(切削速度)が小さいことを意味する。この場合、制御装置23は設定けん引速度をVc+ΔVcに増加させる、区間割りNo.3への変更を行う。
【0024】
以下、防護プレート挿入システムにおける制御装置の処理動作を図5〜図7に示すフローチャートを参照して説明する。けん引装置及び地盤切削装置を起動する(ステップS1,S2)。具体的には、けん引装置については鋼板けん引ジャッキ13の起動、地盤切削装置については主プーリ推進ジャッキ20及び主プーリ駆動モータ21の起動である。初期状態ではワイヤソー8の張力Ptはゼロであり(ステップS3)、張力が所定の張力Paになるように調整する(ステップS4)。すなわち、制御装置23は張力Ptが張力Paに達したか否かを判断し(ステップS5)、Paに達していなければ、制御装置23は制御信号Po2を出力して主プーリ推進ジャッキ20を増速させる。ここで、設定張力Paはワイヤソー8が主プーリ10との間ですべりを生じない張力であり、装置の稼働中は一定である。
【0025】
また、初期状態では主プーリ圧Pmもゼロであり(ステップS6)、主プーリ圧Pmが初期設定値Pbになるように調整する(ステップS7)。すなわち、制御装置23は、主プーリ圧Pmが初期設定値Pbに達したか否かを判断し(ステップS8)、Pbに達していなければ、制御信号Poを出力して主プーリ駆動モータ21を増速させる。
【0026】
主プーリ圧Pmが初期設定値Pbに達し、鋼板けん引ジャッキ13がストロークエンドに達していないと制御装置23が判断すると(ステップS9)、鋼板けん引ジャッキ13は伸長を続行する(ステップS10(図6))。鋼板けん引ジャッキ13の作動中は、ストローク計22により鋼板4のストロークすなわち地山へのけん引移動量が計測され(ステップS11)、制御装置23はストロークLsと時間Δtとからけん引速度Vを演算する(ステップS12)。
【0027】
そして、制御装置23はけん引速度Vが設定けん引速度Vcの範囲内にあるか否かを判断し(ステップS13)、けん引速度Vが最大設定けん引速度Vc(max)よりも大きければ、減速制御信号Voを出力し、鋼板けん引ジャッキ13の伸長速度を減速する。他方、けん引速度Vが最小設定けん引速度Vc(min)よりも小さければ、増速制御信号Voを出力し、鋼板けん引ジャッキ13の伸長速度を増速する。
【0028】
また、制御装置23は、けん引速度Vが設定けん引速度Vcの範囲内にあると判断すると、次に、主プーリ圧Pmと設定主プーリ圧Pbとを比較し、その範囲内にあるか否かを判断する(ステップS14)。そして、主プーリ圧Pmが最大設定主プーリ圧Pb(max)よりも大きい場合、すなわち切削負荷Pmが大きく切れにくい地山に対して、それに適合しない速すぎる切削速度(=けん引速度)で切削し、防護鋼板をけん引していると判断した場合には、制御装置23は設定けん引速度Vcを小さくする(Vc=Vc−ΔVc)区間割りの変更(図4参照)を行い、ステップS9以下の処理を再度実行する。また、これとは逆に、主プーリ圧Pmが最小設定主プーリ圧Pb(min)よりも小さい場合、すなわち切削負荷Pmが小さく切れ易い地山に対して、それに適合しない遅すぎる切削速度(=けん引速度)で切削し、防護鋼板をけん引していると判断した場合には、制御装置23は設定けん引速度Vcを大きくする(Vc=Vc+ΔVc)区間割りの変更を行い、ステップS9以下の処理を再び実行する。
【0029】
次いで、制御装置23は主プーリ圧Pmが制御範囲にあるか否かを判断し(ステップS15)、主プーリ圧Pmが制御可能な最大圧Pmaxよりも大きい、あるいは最小圧Pminよりも小さいと判断したときは、制御範囲外とし図7に示す減速・停止処理を実行する(これについては後述する)。他方、制御装置23は主プーリ圧Pmが制御可能と判断したときは、引き続き設定けん引速度Vcが制御範囲にあるか否かを判断する(ステップS16)。
【0030】
そして、設定けん引速度Vcが制御可能な最大速度Vmaxよりも大きい、あるいは最小速度Vminよりも小さいと判断したときは、制御範囲外とし図7に示す減速・停止処理を実行する。他方、制御装置23は設定けん引速度Vcが制御可能と判断したときは、引き続きワイヤソー8が切断されているか否かを判断する。そして、張力Ptがゼロである場合にはワイヤソー切断とし、図7に示す減速・停止処理を実行する。他方、張力Ptがゼロでない場合には、ステップS9以下の処理を再び実行する。
【0031】
ステップS9の処理において鋼板けん引ジャッキ13がストロークエンドに達したと判断された場合、あるいはステップS15,S16において制御範囲外と判断された場合、あるいはステップS17においてワイヤソー切断と判断された場合には、制御装置23は図7に示す減速・停止処理を実行する。すなわち、鋼板けん引ジャッキ13の作動を停止させ(ステップS18)、制御装置23はけん引速度がゼロになったか否かを判断し(ステップS19)、ゼロでなければ制御信号Voを出力して鋼板けん引ジャッキ13を減速させる。
【0032】
また、主プーリ10に関しても、制御装置23は主プーリ圧がゼロになった否かを判断し(ステップS20)、ゼロでなければ制御信号Poを出力して主プーリ駆動モータ21を減速させる。これによって、主プーリ10の回転が停止する(ステップS21)。また、主プーリ推進ジャッキ20についても、制御装置23は張力がゼロになったか否かを判断し(S22)、ゼロでなければ制御信号Po2を出力し、主プーリ推進ジャッキ20を減速させる。これによって、張力が解除される(ステップS23)。以上により、鋼板けん引ジャッキの1ストローク分の処理が終了する。なお、鋼板けん引ジャッキ13がストロークエンドに達し(ステップS9)ワイヤソーに余長が出た場合には、減速・停止処理後、ワイヤの掛け替え作業を行う。主プーリ圧、けん引速度が制御範囲外と判断された場合(ステップS15,S16)は、減速・停止処理後、手動運転に切り換える。また、ワイヤが破断と判断された場合(ステップS17)は、ワイヤソーの再接続を行う。
【符号の説明】
【0033】
2 発進立坑
3 到達立坑
5a,5b ガイド管
8 ワイヤソー
10 主プーリ
13 鋼板けん引ジャッキ
20 主プーリ推進ジャッキ
21 主プーリ駆動モータ
22 ストローク計
23 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進孔と到達孔との間の地山に設置された1対のガイド孔間の地山を切削するためのための切削装置であって、到達孔側に設置された主プーリと、この主プーリに巻き掛けられ、送り側が前記ガイド孔の一方に通されて、ガイド孔間を横切り、さらに戻り側が他方のガイド孔を通って前記主プーリに戻される無端状の可撓性切削部材と、前記主プーリに一方向への推力を加えることにより前記切削部材に所定の張力を与える推進アクチュエータと、前記主プーリを回転させる回転アクチュエータとを有し、前記主プーリの回転によって前記切削部材を循環走行させることにより、前記ガイド孔間の地山を切削する切削装置と、
前記1対のガイド孔のそれぞれに通され一端が防護プレートにクランプされる引張材と、到達孔側に設置され、前記引張材の他端が連結されるけん引アクチュエータとを有するけん引装置とを備え、
前記切削装置によって前記ガイド孔間の地山を切削するとともに、前記けん引装置によって前記防護プレートをけん引し、切削速度とけん引速度とがほぼ等しくなるように保ちながら、切削によって形成された切削溝に前記防護プレートを挿入する、地山切削による防護プレート挿入システムにおいて、
前記切削部材に加わる切削負荷を測定する手段と、
前記防護プレートのけん引速度を測定する手段と、
切削負荷及びけん引速度を両者が適合するように設定する手段とを備え、
測定された切削負荷及びけん引速度が適合しているかを監視し、不適合であるとき両者の設定を変化させることを特徴とする防護プレート挿入システムにおける制御装置。
【請求項2】
前記切削負荷及び前記けん引速度は、施工によって得られたそれらのデータの回帰式に基づいて設定されることを特徴とする請求項1記載の防護プレート挿入システムにおける制御装置。
【請求項3】
前記主プーリの回転アクチュエータは油圧アクチュエータであり、前記切削負荷は油圧アクチュエータの作動圧として測定及び設定されることを特徴とする請求項1又は2記載の地山切削による防護プレート挿入システムにおける制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−31604(P2012−31604A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170657(P2010−170657)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(399101337)株式会社ジェイテック (20)
【出願人】(505450940)株式会社ホクト (3)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【Fターム(参考)】