地山補強工法
【課題】 円滑に地山に埋設でき、埋設の後の作業も円滑に実行でき、良好な地山補強を実現する。
【解決手段】 地山補強用鋼管1、5、6を、前方に、内周面に雌ねじが形成された拡径部2が位置し、後方に、外周面に雄ねじが形成された雄ねじ部3が位置するように連結する。先頭管の前方端に配置されたインナービット16およびリングビット14を回転させて、地山補強用鋼管を地山中に引き込むことにより、地山補強用鋼管を地山中に打設する。打設により複数の地山補強管を、拡径部を除き、その下側において、地山の下面との間で所定の空隙をもった状態で配置する。インナービットおよびロッドを除去した後、地山補強用鋼管中に固結材を注入し、地山補強用鋼管に設けられた、下側に形成された吐出孔を含む複数の吐出孔からほぼ偏りなく吐出させ、吐出した固結材が地山に浸透させて固化させる。
【解決手段】 地山補強用鋼管1、5、6を、前方に、内周面に雌ねじが形成された拡径部2が位置し、後方に、外周面に雄ねじが形成された雄ねじ部3が位置するように連結する。先頭管の前方端に配置されたインナービット16およびリングビット14を回転させて、地山補強用鋼管を地山中に引き込むことにより、地山補強用鋼管を地山中に打設する。打設により複数の地山補強管を、拡径部を除き、その下側において、地山の下面との間で所定の空隙をもった状態で配置する。インナービットおよびロッドを除去した後、地山補強用鋼管中に固結材を注入し、地山補強用鋼管に設けられた、下側に形成された吐出孔を含む複数の吐出孔からほぼ偏りなく吐出させ、吐出した固結材が地山に浸透させて固化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山に補強用鋼管を打設し、該鋼管を通して固結材を注入することにより当該地山を補強して掘削を行う地山補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的軟弱な地盤を対象とした地山補強先受け工、鏡補強工などのトンネル工事においては、地山の内部に地山補強用パイプである地山補強用鋼管(ケーシングパイプ)を打設し、この地山補強用鋼管内に固結材を注入し、鋼管表面に設置された吐出孔から地山に浸透させることで、地山補強・安定化をはかる工法が採用されている。たとえば、AGF工法やFIT工法が、上記工法として知られている。
【0003】
地山に対して打設、埋設される地山補強用鋼管は複数使用され、直列方向に連結される。一般に、地山において進行方向を前方とすると、前方端に位置する先頭管、2つの中間管、最後端に位置する端末管の長さは、それぞれ、3.5m、3.1m、3.1mである。
【0004】
先頭管の前方端には、リングビットが取り付けられている。地山補強用鋼管内部にインナービットが螺子係合されたロッドを挿入し、先頭管の前方端でインナービットとリングビットが係合される。このロッドの後方端の側は削岩機に螺子係合され、このロッドを介してビット(インナービットおよびリングビット)へ打撃、回転および推力を加えながら地山内を削孔するのと同時に、インナービットに設けられた突起部に係合されたケーシングシューに後続する地山補強用鋼管を牽引し、地山内へ引き込む。
【0005】
地山補強用鋼管を順次直列方向に連結して、インナービットおよびリングビットを地山に向かって前方に進めることで、前述して4本の地山補強用鋼管を地山内部に埋設することができる。
【0006】
地山への地山補強用鋼管の埋設が完了すると、地山補強用鋼管内に固結材を送り込む。固結材は、地山補強用鋼管のそれぞれに複数設けられた吐出孔から吐出され、地山内に浸透する。地山内に浸透した固結材は、硬化することで地山の緩みを抑制し、安定化させる。このようにして地山を補強することができる。
【0007】
上記地山補強用鋼管を直列に連結するために、地山補強用鋼管の一方端の外周部に雄ネジが形成され、他方端の内周部に雌ネジが形成される。隣接する地山補強用鋼管の雄ネジと雌ネジとを螺子係合させることで、2つの地山補強用鋼管を連結させることができる。上記構成の地山補強用鋼管として、たとえば、特許文献1や特許文献2に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平7−45676号公報
【特許文献2】特開2004−332242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
地山補強用鋼管内に挿入されたロッドおよび前方端に配置されたビットにより、地山補強用鋼管を円滑にかつできるだけ小さな力で引き込むのが望ましく、したがって、地山補強用鋼管は、軽量でかつ地山の重量に十分に耐えられるだけの強度を有するのが望ましい。その一方、いったん地山に埋設された地山補強用鋼管は、簡単に引き抜けない、つまり、引き抜き抵抗が大きいのが望ましい。さらに、固結材は、孔から全方向に偏りなく吐出できるのが望ましい。
【0010】
本発明は、円滑に地山に埋設でき、埋設の後の作業も円滑に実行でき、良好な地山補強を実現する地山補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、地山の掘削箇所において所定位置にて所定角度で、複数の地山補強用鋼管を直列に連結させて打設し、地山補強用鋼管内部に注入された固結材を、当該地山補強用鋼管に形成された複数の吐出孔から吐出して地山に浸透させて該地山を補強する地山補強用工法であって、
地山補強用鋼管の進行方向である前方の端部に位置する先頭管以外の地山補強用鋼管については、一端に所定の長さにわたって外径が拡径され、かつ、その内周面に雌ねじが形成された拡径部が形成されると共に、他端に所定の長さにわたって、その外周面に雄ねじが形成された雄ねじ部が形成され、
前記先頭管内にはロッドおよび前方端に位置するインナービットが挿入され、
前記ロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットを回転させて、前記先頭管を地山中に引き込むことにより、前記先頭管を前記地山中に打設し、
前記打設中に、前記ロッド内に形成された供給経路に削孔水を供給し、前記供給経路およびインナービット中の供給経路を経て、インナービットの前方から削孔水を吐出させ、
前記先頭管の打設が終了すると、中間管である前記地山補強用鋼管を、前記拡径部を前方に位置させて、前記先頭管の後方端の外周面に形成された雄ねじ部の雄ねじと、前記拡径部の内周面に形成された雌ねじとを螺子係合させて、前記先頭管と前記中間管とを連結させ、
さらに挿入されたロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットを回転させて、前記先頭管および中間管を前記地山中に引き込むことにより、
前記先頭管および中間管を前記地山中に打設し、
さらに、1以上の他の中間管および後方端に位置する端末管を、それぞれ、前記中間管と同様に、前記拡径部を前方に位置させて、前方に位置する地中補強用鋼管と連結して、地中に引き込むことにより、当該1以上の他の中間管および端末管を、地山中に打設し、これにより、前記先頭管、前記中間管および端末管を、前記拡径部を除き、その下側において、前記地山の下面との間で所定の空隙をもった状態で配置し、
前記インナービットおよびロッドを除去した後、前記地山補強用鋼管中に固結材を注入し、前記地山補強用鋼管に設けられた、前記下側に形成された透孔を含む前記複数の透孔からほぼ偏りなく吐出させ、
前記吐出した固結材が地山に浸透し、固化することを特徴とする地山補強工法により達成される。
【0012】
好ましい実施態様においては、前記吐出孔から吐出された固結材が、前記地山と前記地山補強用鋼管との間の空隙に充填されるとともに、この空隙からさらに地山に浸透し、他の部分より外径が大きい前記拡径部は、前記固結材が注入されて固結した後の前記地山に対する付着耐力を向上させ、緩みを抑制し、切羽を安定させる。
【0013】
また、好ましい実施態様においては、前記インナービットの前方から吐出された削孔水は、前記インナービットおよびロッドに形成された溝および前記地山補強用鋼管の内壁との間で形成された排出経路より削孔中に発生した繰り粉とともに排出され、その際に、前記後方端の雄ねじ部は、排出される削孔水により汚染されない。
【0014】
別の好ましい実施態様においては、前記先頭管および先頭管以外の連結された1以上の地山補強用鋼管を前記地山中に引き込む際に、前記拡径部の下面のみが地山に接触し、他の部分は、掘削された地山の孔壁との間で所定の空隙をもって位置する。
【0015】
また、好ましい実施態様においては、前記先頭管以外の地山補強用鋼管において、拡径部の端部にテーパー部が形成される。
【0016】
さらに他の好ましい実施態様においては、前記先頭管の前方端には、前記インナービットの回転とともに回転可能であり、先頭管の外径より大きな外径を有し、さらには先頭管の後端に接続される中間管の拡径部よりも大きい外径を有するリングビットが形成され、
前記ロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットおよびリングビットを回転させて、地山補強用鋼管が地山中に引き込まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、円滑に地山に埋設でき、埋設の後の作業も円滑に実行でき、良好な地山補強を実現する地山補強工法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる地山補強工法において使用する地山補強用鋼管の例を示す部分断面側面図である。
【図2】図2は、2つの地山補強用鋼管の螺子係合される端部を示す拡大段面図である。
【図3】図3は、隣接する地山補強用鋼管を連結した状態を示す部分断面図である。
【図4】図4は、掘削のための所定の器具が取り付けられた状態の先頭管の例を示す側面図である。
【図5】図5は、地山補強用鋼管の打設位置およびその方向を説明するための図である。
【図6】図6は、打設が完了した状態の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す断面図である。
【図7】図7は、リーク防止処置が施された端末管の後端部の例を示す側面図である。
【図8】図8は、固結材を注入した際の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す断面図である。
【図9】図9は、固結材を注入した際の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す横断面図である。
【図10】図10は、固結材が固化した状態の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す断面図である。
【図11】図11は、地山補強用鋼管の打設工程を説明する図である。
【図12】図12は、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管の螺子係合される端部を示す拡大断面図である。
【図13】図13は、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管を連結した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる地山補強工法において使用する地山補強用鋼管の例を示す部分断面側面図である。また、図2は、2つの地山補強用鋼管の螺子係合される端部を示す拡大段面図である。なお、本明細書において、切羽に近い方向を「後方」、地山が掘削される方向、つまり地山補強用鋼管の進行方向を「前方」と称する。たとえば、図1、図2に示す地山補強用鋼管のそれぞれにおいては、左側が前方、右側が後方となる。
【0020】
本実施の形態においては、地山補強のために一組あたり4本の地山補強用鋼管が利用される。最前方端に位置する先頭管の長さが3.5m、第1の中間管および第2の中間管の長さが3.1m、再後端に位置する端末管の長さが3.1mである。以下、地山補強用鋼管、特に、中間管および端末管について説明する。
【0021】
図1に示す地山補強用鋼管1は、たとえば、長さLが3100mm(3.1m)、外径Dが76.3mm、肉厚tが4.2mmである。図1に示す地山補強用鋼管1は、特許文献2に記載されたものと同様である。より詳細には、地山補強用鋼管1の一端(図1において前方端)は、略100mmの長さSにわたり、外径Aが81.7mmに拡径され、その肉厚は3.9mmとなっている。この拡径された部分(拡径部2)の内周面には、雌ねじが70mmの長さの範囲で形成されている。なお、上記一方端を拡径する際には、肉厚を3.9〜4.2mmの範囲に維持するため、鋼管の長手方向に圧縮力を加えながら拡径加工するのが望ましい。
【0022】
また、補強用鋼管1の他端(図1において後方端)には、雄ねじが、70mmの長さSの範囲で形成されている。雄ねじが形成された部分を雄ねじ部3とも称する。また、上記雌ねじが形成された部分(拡径部2)を、雌ねじ部とも称し、これら双方をねじ部とも称する。なお、本実施の形態において、地山補強用鋼管1は、図1に示すように、拡径部(雌ねじ部)2が前方に位置し、雄ねじ部3が後方に位置するようにして使用される。
【0023】
ねじ部2、3の残肉部(ねじ残肉部)の断面積は、前方端および後方端で、それぞれ、668mm2 及び665mm2 である。それぞれの断面積に、材料強度(JIS G3444に規定された400N/mm2)を乗じると、ねじ残肉部における強度は、それぞれ269kNおよび268kNとなる。
【0024】
ねじ部2、3に形成されたねじの形状・寸法としては、たとえば、特許文献1に記載されているようなものを採用するのが好ましい。具体的には、雄ねじ部3に形成されたねじ形状は、ピッチpがねじ山の高さhの6倍以上の断面矩形状の角型ねじである。また、雌ねじ部2に形成された雌ねじはこれにうまく螺子係合する形状・寸法である。雄ねじのピッチpとねじ山の高さhとの関係は、6h≦p≦10hとするのが好ましく、8h≦p≦9hとするのがより好ましい。ピッチPが小さ過ぎると、さく孔装置の打撃力と推力によってねじ山が早期に損傷するので好ましくない。また、ピッチPが大き過ぎると、ねじのリ−ド角が大きくなり過ぎ、施工において、振動によるねじ緩みの原因となる。本実施の形態にかかる補強用鋼管1では、ピッチPが6.6mm,ねじ山の高さhが0.75mmである。なお、ねじ形状は、螺子係合を円滑にするため、エッジ部に若干(0.3mm以下)の面取りを施しておいてもよい。
【0025】
地山補強用鋼管1の中間部には、内外に連通する複数の吐出孔4が穿設されている。この吐出孔4は、後述するように、地山補強用鋼管1内に注入された地盤強化用の固結材を外部に流出ないし吐出させるためのもので、地山補強用鋼管1において拡径部2以外の部分の全長にわたって、分散するように設けられている。本実施の形態においては、吐出孔4が内径10mmの小孔として形成される。また、吐出孔4は、所定間隔で互いに交差する直径方向に2個ずつ穿設されている。吐出孔の形状と寸法は、上記実施の形態に示したものに限らず、例えばスリット状など、他の適当なものとすることができる。
【0026】
図3は、隣接する地山補強用鋼管を連結した状態を示す部分断面図である。図2、図3から理解できるように、使用の際には、前方の地山補強用鋼管6の雄ねじ部3に、後方の地山補強用鋼管5の拡径部(雌ねじ部)2が螺入される。したがって、拡径部2の前方端11には、2.7mmだけ、当該拡径部2の側が高くなるように段差dが形成される。この段差dは、後述するように地山補強の際に種々の機能を果たす。また、図3に示すように、連結された地山補強用鋼管5、6の内径は一致している(符号300参照)。後方の地山補強用鋼管5の拡径部2が終了する部分(符号301参照)において僅かな距離だけ、地山補強用鋼管5の内壁と、地山補強用鋼管6の内壁とは離間するが、実質的には、2つの地山補強用鋼管5、6の内壁は段差無く連なる。
【0027】
先頭管は、中間管および端末管(図1、図2に示す地山補強用鋼管1)と比較すると、全長3.5mと長くなっている。また、先頭管においては、前方端も、後方端と同様に、所定長さの範囲で、その外周面に雄ねじが形成されている。
【0028】
このように構成された地山補強用鋼管を利用した地山補強工法について説明する。前述したように、本実施の形態においても、地山補強のために一組あたり4本の地山補強用鋼管が利用される。また、本実施の形態においては、拡径部2を有する地山補強用鋼管(中間管および端末管)は、拡径部2が前方となるように、地山M中に配置される。
【0029】
図4は、掘削のための所定の器具が取り付けられた状態の先頭管の例を示す側面図である。図4に示すように、先頭管12の前方端には、雌ねじ部(図示せず)に形成された雌ねじに、ケーシングシュー13が螺入されて係合される。さらに、ケーシングシュー13には、リングビット14が回転可能に取り付けられる。リングビット14には所定の角度間隔で、超硬合金製のチップ15が取り付けられている。先頭管12の内部には、その前方端にインナービット16が螺子係合されたロッド(図示せず)が挿入され、インナービット16とリングビット14とが係合される。なお、インナービットの前方端にも超硬合金製のチップ17が取り付けられている。インナービット16の所定方向の回転に伴って、リングビット14も所定方向に回転される。
【0030】
本実施の形態においては、図3に示すように、連結された地山補強用鋼管5、6の内径は一致している。つまり、地山補強用鋼管の内部には突出部が存在しない。したがって、ロッドなど打設資材の挿入時に、地山補強用鋼管の内部の何れかの部分と接触することで、挿入の邪魔になるようなおそれが生じない。他の部材を挿入する際も同様である。
【0031】
ロッドの後方端は、削岩機(図示せず)に螺子係合され、削岩機からロッドに与えられる打撃力、回転力、推力は、ロッドからインナービット16にも伝達される。削岩機からの打撃力、回転力および推力により、インナービット16およびリングビット14は、地山内を削孔するとともに、リングビット14と回転可能に取り付けられたケーシングシュー13および先頭管12を牽引して、これらを地山内に引き込む。このようにして、先頭管12は地山中に打設される。図5、図11(a)に示すように、トンネルTの切羽において、トンネル断面に対して円周方向に所定の角度(たとえば120度)にわたって、所定の上向き角度(たとえば約8度)で、地山M中に地山補強用鋼管P(先頭管12)が打設される。
【0032】
インナービット16およびロッドには、削孔および掘削を容易にし、かつ、掘削された繰り粉(破砕された岩など)を排出するための削孔水を通すための供給経路(図示せず)が設けられている。地山Mを掘削して、地山補強用鋼管を打設する際に、供給経路を介して削孔水が供給され、たとえば、インナービット16の前方端に設けられた吐出口から削孔水が吐出される。また、インナービット16およびロッドには、長手方向に繰り粉および排泥水の排出経路となる溝(図示せず)が形成されている。したがって、形成された溝と地山補強用鋼管の内壁との間が排水経路となり、繰り粉および排泥水が、後方に排出される。
【0033】
先頭管12が所定の位置まで打設されると、いったん、ロッドと削岩機との螺子係合が解除される。この状態では、ロッドはそのまま先頭管12内に残置されている。したがって、地山の切羽面には、先頭管12の後方端の雄ネジ部が露出した状態となる。次に接続される中間管21は、拡径部2が前方となるように配置され、先頭管12の雄ネジに、中間管21の拡径部2の雌ネジが螺子係合される。また、鋼管内に残置させているロッドへ新たなロッドが継ぎ足される。図11(b)に示すように、先頭管12と中間管21との連結、並びに、2つのロッド(図示せず)の連結が完了すると、さきほどと同様に打設を再開する。
【0034】
先頭管12と中間管21とを螺子係合した状態では、図2および図3に示すように、中間管の前方端11は、先頭管の後方端よりも若干(d=2.7mm)だけ半径が大きく、段差が生じている。しかしながら、図4に示すように、先頭管12の前方端に配置されるリングビット14の外径は、中間管21の拡径部2の外径より十分に大きい。したがって、先頭管12および中間管21が連結した状態で、これらが地山M内に引き込まれるときに、中間管21の拡径部2が、地山Mからの抵抗を受けて、引き込み際の負荷が大きくなるような事態は生じない。
【0035】
第1の中間管21の打設が終了すると、図11(c)に示すように、第1の中間管21の後方端に、第2の中間管22が、拡径部2が前方に位置するように連結される。同時に、ロッドも継ぎ足され、第2の中間管22が地山M内に打設される。端末管(図示せず)も、それぞれ、同様に連結、打設される。全ての地山補強用鋼管の打設が完了すると、4つの地山補強用鋼管内に設置されていた、インナービット、ロッドなどの打設資材が回収される。これにより、地山への4つの地山補強用鋼管(先頭管、2つの中間管および端末管)の打設(埋設)が完了する。なお、図3に示すように、連結された地山補強用鋼管5、6の内径は一致している。つまり、地山補強用鋼管の内部には突出部が存在しない。したがって、ロッドなどの打設資材の回収時にも、これら資材が地山補強用鋼管の内部の何れかの部分と接触することで、回収の邪魔になるような事態が生じない。
【0036】
図6は、打設が完了した状態の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す断面図である。図6においては、左側が前方である。後方の地山補強用鋼管32の前方端11に連なる拡径部の壁部33は、前方の地山補強用鋼管31の壁部34と比較して外側に突出している。したがって、地山補強用鋼管が地山M中に打設されたときに、後方の地山補強用鋼管32における拡径部の壁部33の下面が地山Mに接触する。その一方、前方の地山補強用鋼管31の壁部34は、上記拡径部の壁部33より、その外径が小さいため、地山補強用鋼管31の下側において、壁部34は、地山Mとの間で一定の空隙G1をもって位置する。
【0037】
なお、上述したように、リングビット14の外径は、後方の地山補強用鋼管32の拡径部の外径より十分に大きい。したがって、前方の地山補強用鋼管31の上側において、壁部34は、地山Mとの間で一定の空隙G2をもって位置するとともに、後方の地山補強用鋼管32の上側においても、壁部33は、地山Mとの間で一定の空隙G3をもって位置する。
【0038】
地山補強用鋼管の打設が完了すると、固結材を連結された地山補強用鋼管の前方端まで注入するために、インサート管(図示せず)が挿入される。また、端末管の後端部は、ゴム栓およびキャップカバー等で閉塞され、リーク防止処置が施される。図7は、リーク防止処置が施された端末管の後端部の例を示す側面図である。図7に示すように、端末管41の後端部の内径と略等しい外径を有するゴム栓42が取り付けられる。さらに、端末管41の後端部の外周面に形成された雄ねじと螺子係合するように内周面に雌ねじが形成されたキャップカバー43取り付けられる。キャップカバー43の後端には、ゴム栓42の脱落を防止するためのフランジ44が形成される。ゴム栓42には、貫通孔45が形成されている。インサート管(図示せず)は、貫通孔45と連通しており、端末管から前方端に位置する先端管にわたって延びる。
【0039】
次いで、端末管41の貫通孔45から外部に突出しているカプラ(図示せず)にホース(図示せず)が接続される。ホースの端部にはポンプ(図示せず)が接続されており、このポンプから地山補強用鋼管内へ固結材が送り込まれる。固結材としては、セメント系やレジン系のものを用いることができる。
【0040】
ポンプから固結材を送り込むと、インサート管を経由して、固結材が地山補強用鋼管のそれぞれの内部に充填される。さらに、図8および図9に示すように、地山補強用鋼管(符号31、32参照)に設けられている複数の吐出孔4から、地山補強用鋼管31、32の周囲に吐出され(符号801〜804、符号901、902参照)、さらに地山Mに浸透される(符号811〜814、符号911、912参照)。地山Mに浸透した固結材は、硬化し、鋼管と一体化することで地山Mの緩みを抑制し、地山Mを安定化させる。図10に示すように、固結材は、地山と地山補強用鋼管31、32との間の空隙に充填される(符号1000参照)されるとともに、この空隙からさらに地山Mに浸透している(図示せず)。
【0041】
本実施の形態においては、連結された地山補強用鋼管の内径は一致している。つまり、地山補強用鋼管の内部には突出部が存在しない。したがって、インナービットやロッドなどの打設資材の挿入時および回収時に、これら資材が地山補強用鋼管の内部の何れかの部分と接触することで、回収の邪魔になるような事態が生じない。
【0042】
また、本実施の形態においては、地山補強用鋼管には拡径部が設けられている。固結材が注入されると、固結材は、地山と地山補強用鋼管との間の空隙に充填されるとともに、この空隙からさらに地山Mに浸透する。空隙に充填され或いは地山に浸透した固結材が硬化すると、地山補強用鋼管の拡径部が引き抜き抵抗となり、軸力が向上する。
【0043】
また、前記実施の形態において、継ぎ足される地山補強用鋼管(中間管および端末管)は、前方に拡径部が位置するように配置され、打設される。このような向きで配置することにより、以下のような作用効果を奏する。
【0044】
前述するように、地山の掘削および地山補強用鋼管の打設の際に、供給経路を介して削孔水が供給され、インナービットおよびロッドに形成された溝と地山補強用鋼管の内壁との間に形成された排水経路を介して、繰り粉および排泥水が排出される。したがって、打設された地山補強用鋼管の内壁は、繰り粉や排泥水が付着している。したがって、打設された内周面(内壁)にネジ(雌ねじ)が形成されていると、後方に新たに地山補強用鋼管を螺子係合させることが不可能となる。しかしながら、本実施の形態においては、連結される2本の地山補強用鋼管において、前方に位置する地山補強用鋼管の後方端には、その外周面に雄ネジが形成され、後方に連結される地山補強緒用鋼管の前方端に、拡径部が形成されるとともにその内周面に雌ネジが形成されている。したがって、打設された(前方に位置する)地山補強雄用鋼管の内周面に、繰り粉や排泥水が付着していても、円滑に後方に地山補強用鋼管を、螺子係合により連結させることが可能となる。
【0045】
さらに、本実施の形態においては、拡径部を設けることにより、地山補強用鋼管の肉厚を増加させることなくネジ部強度を強くできる。また、肉厚が従来の地山補強用鋼管と比較して薄いことから、地山補強用鋼管を軽量でき、地山補強用鋼管の運搬、連結、打設などを含む施工時におけるハンドリングを向上することが可能となる。
【0046】
また、従来の地山補強用鋼管を用いると、自重により鋼管表面と、削孔された孔壁とが接触し、底部に位置する吐出孔が塞がるために安定した固結材の注入が困難となる。これに対して、本実施の形態によれば、後方に位置する地山補強用鋼管における拡径部の壁部の下面が地山Mに接触する一方、前方に位置する地山補強用鋼管の壁部は、拡径部の壁部よりその外径が小さいため、地山補強用鋼管の下側において、壁部は、地山Mとの間で一定の空隙G1をもって位置する。つまり、拡径部以外では、地山補強用鋼管の周表面は全周にわたって、地山Mの孔壁に対して、一定のクリアランスを確保することができる。したがって、良好で偏りのない理想的な固結材の注入を行うことが可能となる。また、地山補強用鋼管の周表面は全周にわたって、地山Mの孔壁に対して、一定のクリアランスを確保するために、専用の部品を用いる必要が無い。
【0047】
さらに、本実施の形態においては、地山Mに浸透した固結材は、硬化することで地山Mの緩みを抑制し、地山Mを安定化させる。特に、固結材は、地山と地山補強用鋼管との間の空隙に充填される(たとえば、図10の符号1000参照)とともに、この空隙からさらに地山Mに浸透している。他の部分より外径が僅かに大きく設定された拡径部は、固結材が注入されて固結した後の地山に対する付着耐力を向上させ、緩みを抑制し、切羽を安定させることが可能となる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態においては、地中補強用鋼管の拡径部の形状が、第1の実施の形態と異なる。図12は、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管の螺子係合される端部を示す拡大断面図、図13は、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管を連結した状態を示す部分断面図である。
【0049】
図12および図13に示すように、第2の実施の形態においても、地山補強用鋼管55の一端(前方端)には外径が拡張された部分(拡径部)52が設けられている。拡径部52の内周面には雌ねじが形成され、隣接する地山補強用鋼管56の他端(後方端)に配置された雄ねじ部53の外周面に形成された雄ねじと螺子係合するようになっている。第1の実施の形態と同様に、拡径部52は、2.7mm(図13の符号d参照)だけ拡径されている。また、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管55では、拡径部52の端部(前方端)が傾斜してテーパー部57が形成される。
【0050】
図13から理解できるように、第2の実施の形態においては、地山補強用鋼管55、56を螺子係合させると、前方の地山補強用鋼管56の外周面58から、後方の地山補強用鋼管55のテーパー部57が滑らかに連なって拡径部52に至る。また、第1の実施の形態と同様に、連結された地山補強用鋼管55、56の内径は一致している(符号1300参照)。
【0051】
第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管の地山への打設は、第1の実施の形態と同様である。特に、第2の実施の形態では、地山補強用鋼管の前方端の拡径部にテーパー部が形成されている。したがって、地山補強用鋼管を連結した状態で、インナービットおよびリングビットにより地山補強用鋼管が引き込まれる際に、地山補強用鋼管の連結部における地山Mとの抵抗、特に、連結部の下側における地山Mとの抵抗をより小さくすることできる。
【符号の説明】
【0052】
1 地山補強用鋼管
2 拡径部(雌ねじ部)
3 雄ねじ部
4 吐出孔
5、6 地山補強用鋼管
11 前方端
12 先頭管
13 ケーシングシュー
14 リングビット
15、17 チップ
16 インナービット
31、32 地山補強用鋼管
33,34 壁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山に補強用鋼管を打設し、該鋼管を通して固結材を注入することにより当該地山を補強して掘削を行う地山補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的軟弱な地盤を対象とした地山補強先受け工、鏡補強工などのトンネル工事においては、地山の内部に地山補強用パイプである地山補強用鋼管(ケーシングパイプ)を打設し、この地山補強用鋼管内に固結材を注入し、鋼管表面に設置された吐出孔から地山に浸透させることで、地山補強・安定化をはかる工法が採用されている。たとえば、AGF工法やFIT工法が、上記工法として知られている。
【0003】
地山に対して打設、埋設される地山補強用鋼管は複数使用され、直列方向に連結される。一般に、地山において進行方向を前方とすると、前方端に位置する先頭管、2つの中間管、最後端に位置する端末管の長さは、それぞれ、3.5m、3.1m、3.1mである。
【0004】
先頭管の前方端には、リングビットが取り付けられている。地山補強用鋼管内部にインナービットが螺子係合されたロッドを挿入し、先頭管の前方端でインナービットとリングビットが係合される。このロッドの後方端の側は削岩機に螺子係合され、このロッドを介してビット(インナービットおよびリングビット)へ打撃、回転および推力を加えながら地山内を削孔するのと同時に、インナービットに設けられた突起部に係合されたケーシングシューに後続する地山補強用鋼管を牽引し、地山内へ引き込む。
【0005】
地山補強用鋼管を順次直列方向に連結して、インナービットおよびリングビットを地山に向かって前方に進めることで、前述して4本の地山補強用鋼管を地山内部に埋設することができる。
【0006】
地山への地山補強用鋼管の埋設が完了すると、地山補強用鋼管内に固結材を送り込む。固結材は、地山補強用鋼管のそれぞれに複数設けられた吐出孔から吐出され、地山内に浸透する。地山内に浸透した固結材は、硬化することで地山の緩みを抑制し、安定化させる。このようにして地山を補強することができる。
【0007】
上記地山補強用鋼管を直列に連結するために、地山補強用鋼管の一方端の外周部に雄ネジが形成され、他方端の内周部に雌ネジが形成される。隣接する地山補強用鋼管の雄ネジと雌ネジとを螺子係合させることで、2つの地山補強用鋼管を連結させることができる。上記構成の地山補強用鋼管として、たとえば、特許文献1や特許文献2に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平7−45676号公報
【特許文献2】特開2004−332242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
地山補強用鋼管内に挿入されたロッドおよび前方端に配置されたビットにより、地山補強用鋼管を円滑にかつできるだけ小さな力で引き込むのが望ましく、したがって、地山補強用鋼管は、軽量でかつ地山の重量に十分に耐えられるだけの強度を有するのが望ましい。その一方、いったん地山に埋設された地山補強用鋼管は、簡単に引き抜けない、つまり、引き抜き抵抗が大きいのが望ましい。さらに、固結材は、孔から全方向に偏りなく吐出できるのが望ましい。
【0010】
本発明は、円滑に地山に埋設でき、埋設の後の作業も円滑に実行でき、良好な地山補強を実現する地山補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、地山の掘削箇所において所定位置にて所定角度で、複数の地山補強用鋼管を直列に連結させて打設し、地山補強用鋼管内部に注入された固結材を、当該地山補強用鋼管に形成された複数の吐出孔から吐出して地山に浸透させて該地山を補強する地山補強用工法であって、
地山補強用鋼管の進行方向である前方の端部に位置する先頭管以外の地山補強用鋼管については、一端に所定の長さにわたって外径が拡径され、かつ、その内周面に雌ねじが形成された拡径部が形成されると共に、他端に所定の長さにわたって、その外周面に雄ねじが形成された雄ねじ部が形成され、
前記先頭管内にはロッドおよび前方端に位置するインナービットが挿入され、
前記ロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットを回転させて、前記先頭管を地山中に引き込むことにより、前記先頭管を前記地山中に打設し、
前記打設中に、前記ロッド内に形成された供給経路に削孔水を供給し、前記供給経路およびインナービット中の供給経路を経て、インナービットの前方から削孔水を吐出させ、
前記先頭管の打設が終了すると、中間管である前記地山補強用鋼管を、前記拡径部を前方に位置させて、前記先頭管の後方端の外周面に形成された雄ねじ部の雄ねじと、前記拡径部の内周面に形成された雌ねじとを螺子係合させて、前記先頭管と前記中間管とを連結させ、
さらに挿入されたロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットを回転させて、前記先頭管および中間管を前記地山中に引き込むことにより、
前記先頭管および中間管を前記地山中に打設し、
さらに、1以上の他の中間管および後方端に位置する端末管を、それぞれ、前記中間管と同様に、前記拡径部を前方に位置させて、前方に位置する地中補強用鋼管と連結して、地中に引き込むことにより、当該1以上の他の中間管および端末管を、地山中に打設し、これにより、前記先頭管、前記中間管および端末管を、前記拡径部を除き、その下側において、前記地山の下面との間で所定の空隙をもった状態で配置し、
前記インナービットおよびロッドを除去した後、前記地山補強用鋼管中に固結材を注入し、前記地山補強用鋼管に設けられた、前記下側に形成された透孔を含む前記複数の透孔からほぼ偏りなく吐出させ、
前記吐出した固結材が地山に浸透し、固化することを特徴とする地山補強工法により達成される。
【0012】
好ましい実施態様においては、前記吐出孔から吐出された固結材が、前記地山と前記地山補強用鋼管との間の空隙に充填されるとともに、この空隙からさらに地山に浸透し、他の部分より外径が大きい前記拡径部は、前記固結材が注入されて固結した後の前記地山に対する付着耐力を向上させ、緩みを抑制し、切羽を安定させる。
【0013】
また、好ましい実施態様においては、前記インナービットの前方から吐出された削孔水は、前記インナービットおよびロッドに形成された溝および前記地山補強用鋼管の内壁との間で形成された排出経路より削孔中に発生した繰り粉とともに排出され、その際に、前記後方端の雄ねじ部は、排出される削孔水により汚染されない。
【0014】
別の好ましい実施態様においては、前記先頭管および先頭管以外の連結された1以上の地山補強用鋼管を前記地山中に引き込む際に、前記拡径部の下面のみが地山に接触し、他の部分は、掘削された地山の孔壁との間で所定の空隙をもって位置する。
【0015】
また、好ましい実施態様においては、前記先頭管以外の地山補強用鋼管において、拡径部の端部にテーパー部が形成される。
【0016】
さらに他の好ましい実施態様においては、前記先頭管の前方端には、前記インナービットの回転とともに回転可能であり、先頭管の外径より大きな外径を有し、さらには先頭管の後端に接続される中間管の拡径部よりも大きい外径を有するリングビットが形成され、
前記ロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットおよびリングビットを回転させて、地山補強用鋼管が地山中に引き込まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、円滑に地山に埋設でき、埋設の後の作業も円滑に実行でき、良好な地山補強を実現する地山補強工法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる地山補強工法において使用する地山補強用鋼管の例を示す部分断面側面図である。
【図2】図2は、2つの地山補強用鋼管の螺子係合される端部を示す拡大段面図である。
【図3】図3は、隣接する地山補強用鋼管を連結した状態を示す部分断面図である。
【図4】図4は、掘削のための所定の器具が取り付けられた状態の先頭管の例を示す側面図である。
【図5】図5は、地山補強用鋼管の打設位置およびその方向を説明するための図である。
【図6】図6は、打設が完了した状態の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す断面図である。
【図7】図7は、リーク防止処置が施された端末管の後端部の例を示す側面図である。
【図8】図8は、固結材を注入した際の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す断面図である。
【図9】図9は、固結材を注入した際の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す横断面図である。
【図10】図10は、固結材が固化した状態の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す断面図である。
【図11】図11は、地山補強用鋼管の打設工程を説明する図である。
【図12】図12は、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管の螺子係合される端部を示す拡大断面図である。
【図13】図13は、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管を連結した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる地山補強工法において使用する地山補強用鋼管の例を示す部分断面側面図である。また、図2は、2つの地山補強用鋼管の螺子係合される端部を示す拡大段面図である。なお、本明細書において、切羽に近い方向を「後方」、地山が掘削される方向、つまり地山補強用鋼管の進行方向を「前方」と称する。たとえば、図1、図2に示す地山補強用鋼管のそれぞれにおいては、左側が前方、右側が後方となる。
【0020】
本実施の形態においては、地山補強のために一組あたり4本の地山補強用鋼管が利用される。最前方端に位置する先頭管の長さが3.5m、第1の中間管および第2の中間管の長さが3.1m、再後端に位置する端末管の長さが3.1mである。以下、地山補強用鋼管、特に、中間管および端末管について説明する。
【0021】
図1に示す地山補強用鋼管1は、たとえば、長さLが3100mm(3.1m)、外径Dが76.3mm、肉厚tが4.2mmである。図1に示す地山補強用鋼管1は、特許文献2に記載されたものと同様である。より詳細には、地山補強用鋼管1の一端(図1において前方端)は、略100mmの長さSにわたり、外径Aが81.7mmに拡径され、その肉厚は3.9mmとなっている。この拡径された部分(拡径部2)の内周面には、雌ねじが70mmの長さの範囲で形成されている。なお、上記一方端を拡径する際には、肉厚を3.9〜4.2mmの範囲に維持するため、鋼管の長手方向に圧縮力を加えながら拡径加工するのが望ましい。
【0022】
また、補強用鋼管1の他端(図1において後方端)には、雄ねじが、70mmの長さSの範囲で形成されている。雄ねじが形成された部分を雄ねじ部3とも称する。また、上記雌ねじが形成された部分(拡径部2)を、雌ねじ部とも称し、これら双方をねじ部とも称する。なお、本実施の形態において、地山補強用鋼管1は、図1に示すように、拡径部(雌ねじ部)2が前方に位置し、雄ねじ部3が後方に位置するようにして使用される。
【0023】
ねじ部2、3の残肉部(ねじ残肉部)の断面積は、前方端および後方端で、それぞれ、668mm2 及び665mm2 である。それぞれの断面積に、材料強度(JIS G3444に規定された400N/mm2)を乗じると、ねじ残肉部における強度は、それぞれ269kNおよび268kNとなる。
【0024】
ねじ部2、3に形成されたねじの形状・寸法としては、たとえば、特許文献1に記載されているようなものを採用するのが好ましい。具体的には、雄ねじ部3に形成されたねじ形状は、ピッチpがねじ山の高さhの6倍以上の断面矩形状の角型ねじである。また、雌ねじ部2に形成された雌ねじはこれにうまく螺子係合する形状・寸法である。雄ねじのピッチpとねじ山の高さhとの関係は、6h≦p≦10hとするのが好ましく、8h≦p≦9hとするのがより好ましい。ピッチPが小さ過ぎると、さく孔装置の打撃力と推力によってねじ山が早期に損傷するので好ましくない。また、ピッチPが大き過ぎると、ねじのリ−ド角が大きくなり過ぎ、施工において、振動によるねじ緩みの原因となる。本実施の形態にかかる補強用鋼管1では、ピッチPが6.6mm,ねじ山の高さhが0.75mmである。なお、ねじ形状は、螺子係合を円滑にするため、エッジ部に若干(0.3mm以下)の面取りを施しておいてもよい。
【0025】
地山補強用鋼管1の中間部には、内外に連通する複数の吐出孔4が穿設されている。この吐出孔4は、後述するように、地山補強用鋼管1内に注入された地盤強化用の固結材を外部に流出ないし吐出させるためのもので、地山補強用鋼管1において拡径部2以外の部分の全長にわたって、分散するように設けられている。本実施の形態においては、吐出孔4が内径10mmの小孔として形成される。また、吐出孔4は、所定間隔で互いに交差する直径方向に2個ずつ穿設されている。吐出孔の形状と寸法は、上記実施の形態に示したものに限らず、例えばスリット状など、他の適当なものとすることができる。
【0026】
図3は、隣接する地山補強用鋼管を連結した状態を示す部分断面図である。図2、図3から理解できるように、使用の際には、前方の地山補強用鋼管6の雄ねじ部3に、後方の地山補強用鋼管5の拡径部(雌ねじ部)2が螺入される。したがって、拡径部2の前方端11には、2.7mmだけ、当該拡径部2の側が高くなるように段差dが形成される。この段差dは、後述するように地山補強の際に種々の機能を果たす。また、図3に示すように、連結された地山補強用鋼管5、6の内径は一致している(符号300参照)。後方の地山補強用鋼管5の拡径部2が終了する部分(符号301参照)において僅かな距離だけ、地山補強用鋼管5の内壁と、地山補強用鋼管6の内壁とは離間するが、実質的には、2つの地山補強用鋼管5、6の内壁は段差無く連なる。
【0027】
先頭管は、中間管および端末管(図1、図2に示す地山補強用鋼管1)と比較すると、全長3.5mと長くなっている。また、先頭管においては、前方端も、後方端と同様に、所定長さの範囲で、その外周面に雄ねじが形成されている。
【0028】
このように構成された地山補強用鋼管を利用した地山補強工法について説明する。前述したように、本実施の形態においても、地山補強のために一組あたり4本の地山補強用鋼管が利用される。また、本実施の形態においては、拡径部2を有する地山補強用鋼管(中間管および端末管)は、拡径部2が前方となるように、地山M中に配置される。
【0029】
図4は、掘削のための所定の器具が取り付けられた状態の先頭管の例を示す側面図である。図4に示すように、先頭管12の前方端には、雌ねじ部(図示せず)に形成された雌ねじに、ケーシングシュー13が螺入されて係合される。さらに、ケーシングシュー13には、リングビット14が回転可能に取り付けられる。リングビット14には所定の角度間隔で、超硬合金製のチップ15が取り付けられている。先頭管12の内部には、その前方端にインナービット16が螺子係合されたロッド(図示せず)が挿入され、インナービット16とリングビット14とが係合される。なお、インナービットの前方端にも超硬合金製のチップ17が取り付けられている。インナービット16の所定方向の回転に伴って、リングビット14も所定方向に回転される。
【0030】
本実施の形態においては、図3に示すように、連結された地山補強用鋼管5、6の内径は一致している。つまり、地山補強用鋼管の内部には突出部が存在しない。したがって、ロッドなど打設資材の挿入時に、地山補強用鋼管の内部の何れかの部分と接触することで、挿入の邪魔になるようなおそれが生じない。他の部材を挿入する際も同様である。
【0031】
ロッドの後方端は、削岩機(図示せず)に螺子係合され、削岩機からロッドに与えられる打撃力、回転力、推力は、ロッドからインナービット16にも伝達される。削岩機からの打撃力、回転力および推力により、インナービット16およびリングビット14は、地山内を削孔するとともに、リングビット14と回転可能に取り付けられたケーシングシュー13および先頭管12を牽引して、これらを地山内に引き込む。このようにして、先頭管12は地山中に打設される。図5、図11(a)に示すように、トンネルTの切羽において、トンネル断面に対して円周方向に所定の角度(たとえば120度)にわたって、所定の上向き角度(たとえば約8度)で、地山M中に地山補強用鋼管P(先頭管12)が打設される。
【0032】
インナービット16およびロッドには、削孔および掘削を容易にし、かつ、掘削された繰り粉(破砕された岩など)を排出するための削孔水を通すための供給経路(図示せず)が設けられている。地山Mを掘削して、地山補強用鋼管を打設する際に、供給経路を介して削孔水が供給され、たとえば、インナービット16の前方端に設けられた吐出口から削孔水が吐出される。また、インナービット16およびロッドには、長手方向に繰り粉および排泥水の排出経路となる溝(図示せず)が形成されている。したがって、形成された溝と地山補強用鋼管の内壁との間が排水経路となり、繰り粉および排泥水が、後方に排出される。
【0033】
先頭管12が所定の位置まで打設されると、いったん、ロッドと削岩機との螺子係合が解除される。この状態では、ロッドはそのまま先頭管12内に残置されている。したがって、地山の切羽面には、先頭管12の後方端の雄ネジ部が露出した状態となる。次に接続される中間管21は、拡径部2が前方となるように配置され、先頭管12の雄ネジに、中間管21の拡径部2の雌ネジが螺子係合される。また、鋼管内に残置させているロッドへ新たなロッドが継ぎ足される。図11(b)に示すように、先頭管12と中間管21との連結、並びに、2つのロッド(図示せず)の連結が完了すると、さきほどと同様に打設を再開する。
【0034】
先頭管12と中間管21とを螺子係合した状態では、図2および図3に示すように、中間管の前方端11は、先頭管の後方端よりも若干(d=2.7mm)だけ半径が大きく、段差が生じている。しかしながら、図4に示すように、先頭管12の前方端に配置されるリングビット14の外径は、中間管21の拡径部2の外径より十分に大きい。したがって、先頭管12および中間管21が連結した状態で、これらが地山M内に引き込まれるときに、中間管21の拡径部2が、地山Mからの抵抗を受けて、引き込み際の負荷が大きくなるような事態は生じない。
【0035】
第1の中間管21の打設が終了すると、図11(c)に示すように、第1の中間管21の後方端に、第2の中間管22が、拡径部2が前方に位置するように連結される。同時に、ロッドも継ぎ足され、第2の中間管22が地山M内に打設される。端末管(図示せず)も、それぞれ、同様に連結、打設される。全ての地山補強用鋼管の打設が完了すると、4つの地山補強用鋼管内に設置されていた、インナービット、ロッドなどの打設資材が回収される。これにより、地山への4つの地山補強用鋼管(先頭管、2つの中間管および端末管)の打設(埋設)が完了する。なお、図3に示すように、連結された地山補強用鋼管5、6の内径は一致している。つまり、地山補強用鋼管の内部には突出部が存在しない。したがって、ロッドなどの打設資材の回収時にも、これら資材が地山補強用鋼管の内部の何れかの部分と接触することで、回収の邪魔になるような事態が生じない。
【0036】
図6は、打設が完了した状態の隣接する地山補強用鋼管の連結部を示す断面図である。図6においては、左側が前方である。後方の地山補強用鋼管32の前方端11に連なる拡径部の壁部33は、前方の地山補強用鋼管31の壁部34と比較して外側に突出している。したがって、地山補強用鋼管が地山M中に打設されたときに、後方の地山補強用鋼管32における拡径部の壁部33の下面が地山Mに接触する。その一方、前方の地山補強用鋼管31の壁部34は、上記拡径部の壁部33より、その外径が小さいため、地山補強用鋼管31の下側において、壁部34は、地山Mとの間で一定の空隙G1をもって位置する。
【0037】
なお、上述したように、リングビット14の外径は、後方の地山補強用鋼管32の拡径部の外径より十分に大きい。したがって、前方の地山補強用鋼管31の上側において、壁部34は、地山Mとの間で一定の空隙G2をもって位置するとともに、後方の地山補強用鋼管32の上側においても、壁部33は、地山Mとの間で一定の空隙G3をもって位置する。
【0038】
地山補強用鋼管の打設が完了すると、固結材を連結された地山補強用鋼管の前方端まで注入するために、インサート管(図示せず)が挿入される。また、端末管の後端部は、ゴム栓およびキャップカバー等で閉塞され、リーク防止処置が施される。図7は、リーク防止処置が施された端末管の後端部の例を示す側面図である。図7に示すように、端末管41の後端部の内径と略等しい外径を有するゴム栓42が取り付けられる。さらに、端末管41の後端部の外周面に形成された雄ねじと螺子係合するように内周面に雌ねじが形成されたキャップカバー43取り付けられる。キャップカバー43の後端には、ゴム栓42の脱落を防止するためのフランジ44が形成される。ゴム栓42には、貫通孔45が形成されている。インサート管(図示せず)は、貫通孔45と連通しており、端末管から前方端に位置する先端管にわたって延びる。
【0039】
次いで、端末管41の貫通孔45から外部に突出しているカプラ(図示せず)にホース(図示せず)が接続される。ホースの端部にはポンプ(図示せず)が接続されており、このポンプから地山補強用鋼管内へ固結材が送り込まれる。固結材としては、セメント系やレジン系のものを用いることができる。
【0040】
ポンプから固結材を送り込むと、インサート管を経由して、固結材が地山補強用鋼管のそれぞれの内部に充填される。さらに、図8および図9に示すように、地山補強用鋼管(符号31、32参照)に設けられている複数の吐出孔4から、地山補強用鋼管31、32の周囲に吐出され(符号801〜804、符号901、902参照)、さらに地山Mに浸透される(符号811〜814、符号911、912参照)。地山Mに浸透した固結材は、硬化し、鋼管と一体化することで地山Mの緩みを抑制し、地山Mを安定化させる。図10に示すように、固結材は、地山と地山補強用鋼管31、32との間の空隙に充填される(符号1000参照)されるとともに、この空隙からさらに地山Mに浸透している(図示せず)。
【0041】
本実施の形態においては、連結された地山補強用鋼管の内径は一致している。つまり、地山補強用鋼管の内部には突出部が存在しない。したがって、インナービットやロッドなどの打設資材の挿入時および回収時に、これら資材が地山補強用鋼管の内部の何れかの部分と接触することで、回収の邪魔になるような事態が生じない。
【0042】
また、本実施の形態においては、地山補強用鋼管には拡径部が設けられている。固結材が注入されると、固結材は、地山と地山補強用鋼管との間の空隙に充填されるとともに、この空隙からさらに地山Mに浸透する。空隙に充填され或いは地山に浸透した固結材が硬化すると、地山補強用鋼管の拡径部が引き抜き抵抗となり、軸力が向上する。
【0043】
また、前記実施の形態において、継ぎ足される地山補強用鋼管(中間管および端末管)は、前方に拡径部が位置するように配置され、打設される。このような向きで配置することにより、以下のような作用効果を奏する。
【0044】
前述するように、地山の掘削および地山補強用鋼管の打設の際に、供給経路を介して削孔水が供給され、インナービットおよびロッドに形成された溝と地山補強用鋼管の内壁との間に形成された排水経路を介して、繰り粉および排泥水が排出される。したがって、打設された地山補強用鋼管の内壁は、繰り粉や排泥水が付着している。したがって、打設された内周面(内壁)にネジ(雌ねじ)が形成されていると、後方に新たに地山補強用鋼管を螺子係合させることが不可能となる。しかしながら、本実施の形態においては、連結される2本の地山補強用鋼管において、前方に位置する地山補強用鋼管の後方端には、その外周面に雄ネジが形成され、後方に連結される地山補強緒用鋼管の前方端に、拡径部が形成されるとともにその内周面に雌ネジが形成されている。したがって、打設された(前方に位置する)地山補強雄用鋼管の内周面に、繰り粉や排泥水が付着していても、円滑に後方に地山補強用鋼管を、螺子係合により連結させることが可能となる。
【0045】
さらに、本実施の形態においては、拡径部を設けることにより、地山補強用鋼管の肉厚を増加させることなくネジ部強度を強くできる。また、肉厚が従来の地山補強用鋼管と比較して薄いことから、地山補強用鋼管を軽量でき、地山補強用鋼管の運搬、連結、打設などを含む施工時におけるハンドリングを向上することが可能となる。
【0046】
また、従来の地山補強用鋼管を用いると、自重により鋼管表面と、削孔された孔壁とが接触し、底部に位置する吐出孔が塞がるために安定した固結材の注入が困難となる。これに対して、本実施の形態によれば、後方に位置する地山補強用鋼管における拡径部の壁部の下面が地山Mに接触する一方、前方に位置する地山補強用鋼管の壁部は、拡径部の壁部よりその外径が小さいため、地山補強用鋼管の下側において、壁部は、地山Mとの間で一定の空隙G1をもって位置する。つまり、拡径部以外では、地山補強用鋼管の周表面は全周にわたって、地山Mの孔壁に対して、一定のクリアランスを確保することができる。したがって、良好で偏りのない理想的な固結材の注入を行うことが可能となる。また、地山補強用鋼管の周表面は全周にわたって、地山Mの孔壁に対して、一定のクリアランスを確保するために、専用の部品を用いる必要が無い。
【0047】
さらに、本実施の形態においては、地山Mに浸透した固結材は、硬化することで地山Mの緩みを抑制し、地山Mを安定化させる。特に、固結材は、地山と地山補強用鋼管との間の空隙に充填される(たとえば、図10の符号1000参照)とともに、この空隙からさらに地山Mに浸透している。他の部分より外径が僅かに大きく設定された拡径部は、固結材が注入されて固結した後の地山に対する付着耐力を向上させ、緩みを抑制し、切羽を安定させることが可能となる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態においては、地中補強用鋼管の拡径部の形状が、第1の実施の形態と異なる。図12は、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管の螺子係合される端部を示す拡大断面図、図13は、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管を連結した状態を示す部分断面図である。
【0049】
図12および図13に示すように、第2の実施の形態においても、地山補強用鋼管55の一端(前方端)には外径が拡張された部分(拡径部)52が設けられている。拡径部52の内周面には雌ねじが形成され、隣接する地山補強用鋼管56の他端(後方端)に配置された雄ねじ部53の外周面に形成された雄ねじと螺子係合するようになっている。第1の実施の形態と同様に、拡径部52は、2.7mm(図13の符号d参照)だけ拡径されている。また、第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管55では、拡径部52の端部(前方端)が傾斜してテーパー部57が形成される。
【0050】
図13から理解できるように、第2の実施の形態においては、地山補強用鋼管55、56を螺子係合させると、前方の地山補強用鋼管56の外周面58から、後方の地山補強用鋼管55のテーパー部57が滑らかに連なって拡径部52に至る。また、第1の実施の形態と同様に、連結された地山補強用鋼管55、56の内径は一致している(符号1300参照)。
【0051】
第2の実施の形態にかかる地山補強用鋼管の地山への打設は、第1の実施の形態と同様である。特に、第2の実施の形態では、地山補強用鋼管の前方端の拡径部にテーパー部が形成されている。したがって、地山補強用鋼管を連結した状態で、インナービットおよびリングビットにより地山補強用鋼管が引き込まれる際に、地山補強用鋼管の連結部における地山Mとの抵抗、特に、連結部の下側における地山Mとの抵抗をより小さくすることできる。
【符号の説明】
【0052】
1 地山補強用鋼管
2 拡径部(雌ねじ部)
3 雄ねじ部
4 吐出孔
5、6 地山補強用鋼管
11 前方端
12 先頭管
13 ケーシングシュー
14 リングビット
15、17 チップ
16 インナービット
31、32 地山補強用鋼管
33,34 壁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山の掘削箇所において所定位置にて所定角度で、複数の地山補強用鋼管を直列に連結させて打設し、地山補強用鋼管内部に注入された固結材を、当該地山補強用鋼管に形成された複数の吐出孔から吐出して地山に浸透させて該地山を補強する地山補強用工法であって、
地山補強用鋼管の進行方向である前方の端部に位置する先頭管以外の地山補強用鋼管については、一端に所定の長さにわたって外径が拡径され、かつ、その内周面に雌ねじが形成された拡径部が形成されると共に、他端に所定の長さにわたって、その外周面に雄ねじが形成された雄ねじ部が形成され、
前記先頭管内にはロッドおよび前方端に位置するインナービットが挿入され、
前記ロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットを回転させて、前記先頭管を地山中に引き込むことにより、前記先頭管を前記地山中に打設し、
前記打設中に、前記ロッド内に形成された供給経路に削孔水を供給し、前記供給経路およびインナービット中の供給経路を経て、インナービットの前方から削孔水を吐出させ、削孔中に発生した繰り粉を鋼管内部経由で外部へ排出し、
前記先頭管の打設が終了すると、中間管である前記地山補強用鋼管を、前記拡径部を前方に位置させて、前記先頭管の後方端の外周面に形成された雄ねじ部の雄ねじと、前記拡径部の内周面に形成された雌ねじとを螺子係合させて、前記先頭管と前記中間管とを連結させ、
さらに挿入されたロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットを回転させて、前記先頭管および中間管を前記地山中に引き込むことにより、
前記先頭管および中間管を前記地山中に打設し、
さらに、1以上の他の中間管および後方端に位置する端末管を、それぞれ、前記中間管と同様に、前記拡径部を前方に位置させて、前方に位置する地中補強用鋼管と連結して、地中に引き込むことにより、当該1以上の他の中間管および端末管を、地山中に打設し、これにより、前記先頭管、前記中間管および端末管を、前記拡径部を除き、その下側において、前記地山の下面との間で所定の空隙をもった状態で配置し、
前記インナービットおよびロッドを除去した後、前記地山補強用鋼管中に固結材を注入し、前記地山補強用鋼管に設けられた、前記下側に形成された吐出孔を含む前記複数の透孔からほぼ偏りなく吐出させ、
前記吐出した固結材が地山に浸透し、固化することを特徴とする地山補強工法。
【請求項2】
前記吐出孔から吐出された固結材が、前記地山と前記地山補強用鋼管との間の空隙に充填されるとともに、この空隙からさらに地山Mに浸透し、他の部分より外径が大きい前記拡径部は、前記固結材が注入されて固結した後の前記地山に対する付着耐力を向上させ、緩みを抑制し、切羽を安定させることを特徴とする請求項1に記載の地山補強工法。
【請求項3】
前記インナービットの前方から吐出された削孔水は、前記インナービットおよびロッドに形成された溝および前記地山補強用鋼管の内壁との間で形成された排出経路より排出され、その際に、前記後方端の雄ねじ部は、排出される削孔水により汚染されないことを特徴とする請求項1または2に記載の地山補強工法。
【請求項4】
前記先頭管および先頭管以外の連結された1以上の地山補強用鋼管を前記地山中に引き込む際に、前記拡径部の下面のみが地山に接触し、他の部分は、掘削された地山の孔壁との間で所定の空隙をもって位置することを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の地山補強工法。
【請求項5】
前記先頭管以外の地山補強用鋼管において、拡径部の端部にテーパー部が形成されることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の地山補強工法。
【請求項6】
前記先頭管の前方端には、前記インナービットの回転とともに回転可能であり、先頭管の外径より大きな外径を有するリングビットが形成され、
前記ロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットおよびリングビットを回転させて、地山補強用鋼管が地山中に引き込まれることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の地山補強工法。
【請求項1】
地山の掘削箇所において所定位置にて所定角度で、複数の地山補強用鋼管を直列に連結させて打設し、地山補強用鋼管内部に注入された固結材を、当該地山補強用鋼管に形成された複数の吐出孔から吐出して地山に浸透させて該地山を補強する地山補強用工法であって、
地山補強用鋼管の進行方向である前方の端部に位置する先頭管以外の地山補強用鋼管については、一端に所定の長さにわたって外径が拡径され、かつ、その内周面に雌ねじが形成された拡径部が形成されると共に、他端に所定の長さにわたって、その外周面に雄ねじが形成された雄ねじ部が形成され、
前記先頭管内にはロッドおよび前方端に位置するインナービットが挿入され、
前記ロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットを回転させて、前記先頭管を地山中に引き込むことにより、前記先頭管を前記地山中に打設し、
前記打設中に、前記ロッド内に形成された供給経路に削孔水を供給し、前記供給経路およびインナービット中の供給経路を経て、インナービットの前方から削孔水を吐出させ、削孔中に発生した繰り粉を鋼管内部経由で外部へ排出し、
前記先頭管の打設が終了すると、中間管である前記地山補強用鋼管を、前記拡径部を前方に位置させて、前記先頭管の後方端の外周面に形成された雄ねじ部の雄ねじと、前記拡径部の内周面に形成された雌ねじとを螺子係合させて、前記先頭管と前記中間管とを連結させ、
さらに挿入されたロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットを回転させて、前記先頭管および中間管を前記地山中に引き込むことにより、
前記先頭管および中間管を前記地山中に打設し、
さらに、1以上の他の中間管および後方端に位置する端末管を、それぞれ、前記中間管と同様に、前記拡径部を前方に位置させて、前方に位置する地中補強用鋼管と連結して、地中に引き込むことにより、当該1以上の他の中間管および端末管を、地山中に打設し、これにより、前記先頭管、前記中間管および端末管を、前記拡径部を除き、その下側において、前記地山の下面との間で所定の空隙をもった状態で配置し、
前記インナービットおよびロッドを除去した後、前記地山補強用鋼管中に固結材を注入し、前記地山補強用鋼管に設けられた、前記下側に形成された吐出孔を含む前記複数の透孔からほぼ偏りなく吐出させ、
前記吐出した固結材が地山に浸透し、固化することを特徴とする地山補強工法。
【請求項2】
前記吐出孔から吐出された固結材が、前記地山と前記地山補強用鋼管との間の空隙に充填されるとともに、この空隙からさらに地山Mに浸透し、他の部分より外径が大きい前記拡径部は、前記固結材が注入されて固結した後の前記地山に対する付着耐力を向上させ、緩みを抑制し、切羽を安定させることを特徴とする請求項1に記載の地山補強工法。
【請求項3】
前記インナービットの前方から吐出された削孔水は、前記インナービットおよびロッドに形成された溝および前記地山補強用鋼管の内壁との間で形成された排出経路より排出され、その際に、前記後方端の雄ねじ部は、排出される削孔水により汚染されないことを特徴とする請求項1または2に記載の地山補強工法。
【請求項4】
前記先頭管および先頭管以外の連結された1以上の地山補強用鋼管を前記地山中に引き込む際に、前記拡径部の下面のみが地山に接触し、他の部分は、掘削された地山の孔壁との間で所定の空隙をもって位置することを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の地山補強工法。
【請求項5】
前記先頭管以外の地山補強用鋼管において、拡径部の端部にテーパー部が形成されることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の地山補強工法。
【請求項6】
前記先頭管の前方端には、前記インナービットの回転とともに回転可能であり、先頭管の外径より大きな外径を有するリングビットが形成され、
前記ロッドの後方端に取り付けられた削岩機によりインナービットおよびリングビットを回転させて、地山補強用鋼管が地山中に引き込まれることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の地山補強工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−149458(P2012−149458A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10024(P2011−10024)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(593172131)株式会社トーキンオール (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(593172131)株式会社トーキンオール (12)
【Fターム(参考)】
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