説明

地山補強材及びグラウト材の注入方法

【課題】複数の袋体をグラウト注入パイプの管軸方向に沿って直列に配置するにあたり、すべての袋体にグラウト材を確実に加圧注入して十分に膨張させる。
【解決手段】本発明に係る地山補強材1は、グラウト注入パイプ3の管軸方向に沿って袋体2a,2b,2cを直列に配置してあるとともに、グラウト注入パイプ3には、その管軸方向に沿って吐出口12a,12b,12cを形成してあり、該吐出口を介してグラウト材を袋体2a,2b,2cに加圧注入できるようになっている。吐出口12b,12cには吐出制御機構11b,11cをそれぞれ設けてあり、吐出口12b,12cからのグラウト材の吐出圧が所定のしきい値を越えたとき、吐出口12b,12cの開閉状態を、閉じた状態から開いた状態に移行させることができるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面や山留め壁の安定化を図る際に用いられる地山補強材及びグラウト材の注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グランドアンカー工法は、法面に配置された法枠等の法面構造体と該法面の背後に拡がる地山に定着されたアンカーとを引張材を介して相互連結するとともに該引張材に緊張力を導入するものであって、引張材に導入された緊張力が法面構造体を介して法面に作用して地山のせん断抵抗が大きくなり、その崩壊を未然に防止することが可能となる。
【0003】
これに対し、ネイリング工法は、地山に芯材となる鉄筋を差し込んでその周囲と地山との間にグラウト材を充填するものであって、鉄筋をその全長にわたって地山に定着することで、地山が動き出そうとするときの変形が鉄筋のせん断、曲げあるいは引張剛性で拘束されるものであり、グランドアンカー工法と同様、法面の崩落を防止しその安定化を図ることができる。
【0004】
一方、芯材とそれを取り囲むように配置された袋体とを、地山に先行形成された補強材挿入孔に挿入し、しかる後、袋体の周面が補強材挿入孔の内面に当接するように該袋体にグラウト材を加圧注入する工法が知られている(特許文献1)。
【0005】
かかる工法においては、袋体は、グラウト注入による膨張に伴い、補強材挿入孔を押し拡げるように周面が削孔内面に当接するので、グラウト材が固化した後は、周辺地山と強固に一体化する。
【0006】
すなわち、同工法は、芯材全長にわたる地山への定着力に、袋体の押し拡げ作用による定着力が加わった形で地山の変形を拘束するものであって、ハイスペックネイリング(登録商標)の名称でもわかる通り、従前のネイリング工法よりも定着力が格段に優れたあらたな工法として大いに期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−188845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハイスペックネイリング工法においては、袋体の押し拡げ作用が削孔軸方向に沿って確実に発揮されるよう、複数の袋体を芯材の材軸方向に沿って直列状に配置することがあり、その場合、グラウト材を注入する方式としては、各袋体の内部空間に共通して連通するように単体のグラウト注入パイプを設置するケースと、各袋体の内部空間に個別に連通するように複数のグラウト注入パイプを設置するケースに大別されるが、後者のケースでは、パイプ構成が複雑になり削孔径も大きくする必要があるので、施工性が低下しがちとなる。
【0009】
一方、単体のパイプ構成においては、ポンプ圧送時の管路に沿った圧力損失に起因して、削孔口に近い側の袋体でグラウト注入が先行するとともに、それに伴い、透水性材料で形成された袋体からグラウト材が滲出する。
【0010】
かかるグラウト材の滲出は、本来、袋体の外側に滲出したグラウト材が削孔内面から地山に浸透し、削孔内に別途充填されたグラウト材とも相俟って、地山との一体化をよりいっそう確実ならしめるものであるが、その反面、グラウト材が滲出する際には、水分がより多く排出されるため、袋体内ではおのずとグラウト材の濃度が高くなる。
【0011】
そのため、削孔口に近い袋体内、さらにはそれに連通するグラウト注入パイプ内でグラウト材の流動性が低下し、その結果、削孔口から遠い側の袋体へは十分な圧力でグラウト材を注入することができないという問題を生じていた。
【0012】
また、削孔口に近い側の袋体が先行して膨張すると、削孔口から遠い側の袋体が膨張する際、その膨張に伴って滲出するグラウト材が、削孔口側で膨張した袋体との間に挟まれて圧力が高くなり、結果として削孔口から遠い側の袋体を十分に膨張させることができないという問題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、複数の袋体をグラウト注入パイプの管軸方向に沿って直列に配置するにあたり、すべての袋体にグラウト材を確実に加圧注入して十分に膨張させることが可能な地山補強材及びグラウト材の注入方法を提供することを目的とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る地山補強材は請求項1に記載したように、管軸方向に沿って複数の吐出口が形成されたグラウト注入パイプと前記各吐出口を介して内部空間が前記グラウト注入パイプ内にそれぞれ連通されるように前記グラウト注入パイプの管軸方向に沿って直列に配置された透水性を有する複数の袋体とを備えるとともに地山に形成された補強材挿入孔に挿入されるようになっている地山補強材において、
前記吐出口のうち、前記グラウト注入パイプの先端側からi番目(i=1,2,3・・・N)に位置する吐出口からのグラウト材の吐出圧がしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)を越えたときに該吐出口の開閉状態を閉じた状態から開いた状態に移行させることが可能な吐出制御機構を前記吐出口にそれぞれ設けるとともに、該各吐出制御機構を、それらのしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)が前記グラウト注入パイプの先端側で最小となり、該グラウト注入パイプの基端側に沿って大きくなるように構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る地山補強材は、前記各吐出制御機構を、径方向に拡大可能なスリーブを前記各吐出口が覆われるように前記グラウト注入パイプにそれぞれ嵌め込んで構成するとともに、前記グラウト注入パイプの先端側からi番目の吐出口におけるグラウト材の吐出圧がしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)を上回ったとき、該吐出口のスリーブが径方向に拡大するように該スリーブのスリーブ長、スリーブ厚若しくは材質又は前記吐出口の内径を選定したものである。
【0016】
また、本発明に係る地山補強材は、前記吐出制御機構のうち、前記グラウト注入パイプの先端側から1番目に位置する吐出制御機構を省略したものである。
【0017】
また、本発明に係る地山補強材は、前記グラウト注入パイプを中空ボルトで構成するとともに、該中空ボルトを地山安定用の芯材としたものである。
【0018】
また、本発明に係るグラウト材の注入方法は請求項5に記載したように、管軸方向に沿って複数の吐出口が形成されたグラウト注入パイプと前記各吐出口を介して内部空間が前記グラウト注入パイプ内にそれぞれ連通されるように前記グラウト注入パイプの管軸方向に沿って直列に配置された透水性を有する複数の袋体とを備えた地山補強材を地山に形成された補強材挿入孔に挿入し、前記グラウト注入パイプの基端側に接続されたグラウト圧送ポンプを駆動することで前記グラウト注入パイプを介して前記各袋体にグラウト材を加圧注入するグラウト材の注入方法において、
前記吐出口のうち、前記グラウト注入パイプの先端側からi番目(i=1,2,3・・・N)に位置する吐出口での吐出圧がしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)を越えたときに該吐出口の開閉状態を閉じた状態から開いた状態に移行させることが可能な吐出制御機構を前記吐出口にそれぞれ設けるとともに、該各吐出制御機構を、それらのしきい値Ri(i=2,3・・・N)が前記グラウト注入パイプの先端側で最小となり、該グラウト注入パイプの基端側に沿って大きくなるように設定し、前記グラウト圧送ポンプを、そのポンプ圧が時間経過とともに増加するように駆動するものである。
【0019】
また、本発明に係るグラウト材の注入方法は、前記グラウト注入パイプの先端側から1番目に位置する吐出口での吐出圧が該吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値R1を上回るとともに2番目〜N番目に位置する吐出口での吐出圧が該各吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値Ri(i=2,3・・・N)をそれぞれ下回るようにポンプ圧P1を設定し、
前記グラウト注入パイプの先端側から2番目に位置する吐出口での吐出圧が該吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値R2を上回るとともに3番目〜N番目に位置する吐出口での吐出圧が該各吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値Ri(i=3・・・N)をそれぞれ下回るようにポンプ圧P2を設定し、
以下、N番目に位置する吐出口まで上記ポンプ圧設定プロセスを繰り返すことでポンプ圧Pj(j=1,2,3・・・N)を設定し、
前記グラウト圧送ポンプを、ポンプ圧が時間経過とともにP1,P2,P3・・・PNとなるように駆動するものである。
【0020】
本発明に係る地山補強材及びグラウト材の注入方法においては、まず、地山を削孔して補強材挿入孔を形成するとともに、該補強材挿入孔にグラウト材を充填する。
【0021】
次に、グラウト注入パイプを、該グラウト注入パイプに複数の袋体が取り付けられた状態で補強材挿入孔に挿入する。
【0022】
次に、グラウト注入パイプの基端側にグラウト圧送ポンプを接続するとともに、該グラウト圧送ポンプを駆動する。
【0023】
このようにすると、グラウト圧送ポンプによってグラウト注入パイプの基端側に供給されたグラウト材は、グラウト注入パイプを経て、該グラウト注入パイプに形成された各吐出口からそれぞれの袋体に吐出されるが、各吐出口には、吐出口からのグラウト材の吐出圧が所定のしきい値を越えたときにその開閉状態を閉じた状態から開いた状態に移行させることが可能な吐出制御機構をそれぞれ設けてあるとともに、該各吐出制御機構は、それらのしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)がグラウト注入パイプの先端側で最小となり、該グラウト注入パイプの基端側に沿って大きくなるように構成してある。
【0024】
ここで、吐出制御機構のしきい値が一律である場合には、圧力損失の関係上、グラウト注入パイプの基端側に位置する吐出口での吐出圧が最大となり、先端側に向かうについれて吐出圧が順次低下するので、先端側に位置する袋体から加圧注入を行うことはできない。
【0025】
しかし、上述したように、グラウト注入パイプの先端側から基端側に沿ってしきい値を増加させた場合には、それらの値を、圧力損失の勾配より十分に大きく増加させることにより、グラウト圧送ポンプを、そのポンプ圧が時間経過とともに増加するように駆動することにより、吐出制御機構を先端側から順に作動させることが可能となる。
【0026】
具体例としてはまず、グラウト注入パイプの先端側から1番目に位置する吐出口での吐出圧が、該吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値R1を上回るとともに、2番目〜N番目に位置する吐出口での吐出圧が、該各吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値Ri(i=2,3・・・N)をそれぞれ下回るようにポンプ圧P1を設定する。
【0027】
また、グラウト注入パイプの先端側から2番目に位置する吐出口での吐出圧が、該吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値R2を上回るとともに、3番目〜N番目に位置する吐出口での吐出圧が、該各吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値Ri(i=3・・・N)をそれぞれ下回るようにポンプ圧P2を設定する。
【0028】
以下、N番目に位置する吐出口まで上記ポンプ圧設定プロセスを繰り返すことでポンプ圧Pj(j=1,2,3・・・N)を設定する。
【0029】
このように設定すれば、開始直後のポンプ圧をP1とし、以降、時間経過とともに、P2,P3・・・とポンプ圧を引き上げていくと、ポンプ圧がP1のときは、先頭の吐出口だけが開いた状態、2番目以降の吐出口が閉じた状態となるため、グラウト材は、先頭の袋体だけに注入される。
【0030】
そのため、先頭の袋体から滲出したグラウト材のうち、地山に浸透せずに補強材挿入孔に残留した余剰分は、スムーズに削孔口側へと押し出されるとともに、先頭の袋体もスムーズに膨張を続ける。
【0031】
また、適当なタイミングでグラウト圧送ポンプのポンプ圧をP2に引き上げると、先頭の吐出口と2番目の吐出口が開いた状態、3番目以降の吐出口が閉じた状態となるため、グラウト材は、先頭の袋体と2番目の袋体に注入され、3番目以降の袋体には注入されない。
【0032】
そのため、先頭の袋体は、膨張の余地が残っている場合には膨張を続け、2番目の袋体はあらたに膨張を開始する。
【0033】
ここで、2番目の袋体から滲出したグラウト材のうち、地山に浸透せずに補強材挿入孔に残留した余剰分は、3番目以降の袋体が未だ膨張を開始していないため、スムーズに削孔口側へと押し出される。
【0034】
また、2番目の袋体が遅れて膨張するため、先頭の袋体から滲出したグラウト材は、2番目の袋体と補強材挿入孔の削孔内面との隙間を通って削孔口へと容易に移動し、かくして先頭の袋体も、膨張余地がある場合にはスムーズに膨張し続ける。
【0035】
なお、2番目の袋体が遅れて膨張することにより、グラウト注入パイプ挿入前に充填されたグラウト材が先頭の袋体と2番目の袋体の間に閉じこめられることはない。
【0036】
さらに、適当なタイミングでグラウト圧送ポンプのポンプ圧をP3に引き上げると、先頭の吐出口から3番目の吐出口までが開いた状態、4番目以降の吐出口が閉じた状態となるため、グラウト材は、先頭の袋体から3番目の袋体まで注入され、4番目以降の袋体には注入されない。
【0037】
そのため、先頭から2番目までの袋体は、膨張の余地が残っている場合には膨張を続け、3番目の袋体はあらたに膨張を開始する。
【0038】
ここで、3番目の袋体から滲出したグラウト材のうち、地山に浸透せずに補強材挿入孔に残留した余剰分は、4番目以降の袋体が未だ膨張を開始していないため、スムーズに削孔口側へと押し出される。
【0039】
また、3番目の袋体が遅れて膨張するため、2番目の袋体から滲出したグラウト材は、3番目の袋体と補強材挿入孔の削孔内面との隙間を通って削孔口へと容易に移動し、かくして2番目の袋体も、膨張余地がある場合にはスムーズに膨張し続ける。
【0040】
なお、3番目の袋体が遅れて膨張することにより、グラウト注入パイプ挿入前に充填されたグラウト材が2番目の袋体と3番目の袋体の間に閉じこめられることはない。
【0041】
以下、同様にして、P4,・・・,PNとポンプ圧を順次引き上げながら、グラウト注入パイプの基端側に向かう方向、すなわち削孔口に向かう方向に沿って各袋体にグラウト材を次々に注入する。
【0042】
このように本発明によれば、グラウト注入パイプの先端側に位置する袋体から順にグラウト材の加圧注入を行うことが可能となり、かくしてすべての袋体にグラウト材を確実に加圧注入して十分に膨張させることができるとともに、袋体から滲出したグラウト材はスムーズに削孔口へと移動するので、袋体と削孔内面との間に閉じこめられて袋体の膨張が阻害されるといった懸念もない。
【0043】
また、膨張開始直後の袋体においては、水分を多く含んだ状態でグラウト材が滲出するため、袋体内が脱水状態となってグラウト材の濃度が高まり、該袋体内及びその近傍のグラウト注入パイプ内ではグラウト材の流動性が低下するが、該袋体よりも奥側に位置する袋体は、奥に行くほど既に十分な大きさに膨張しているため、流動性が低下したとしても、ほとんど問題にはならない。
【0044】
そのため、袋体の膨張とそれによる補強材挿入孔の押し拡げが確実に行われるとともに、その結果、袋体と一体化するように別途配置される芯材を介した引張力や引抜力に対し、十分な抵抗力が確保される。
【0045】
グラウト圧送ポンプのポンプ圧Pj(j=1,2,3・・・N)は、連続的に増加する場合における瞬間値となる場合と、段階的に増加する場合における各ステップ値となる場合の2つが考えられるが、しきい値Ri(i=1,2,3・・・N)は、それらのいずれが前提であってもかまわない。
【0046】
しきい値Ri(i=1,2,3・・・N)は、それを上回る圧力がすなわちi番目の袋体への吐出圧となるものであって、そのときの吐出圧でi番目の袋体が膨張を開始するものであるため、ポンプ圧が段階的に増加する場合においては、例えばi番目の袋体が補強材挿入孔の削孔内面に当接するときの吐出圧をしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)として定めることができるし、ポンプ圧が連続的に増加する場合においては、例えばi番目の袋体が補強材挿入孔の削孔内面に当接するときの吐出圧を、(i+1)番目の吐出制御機構に係るしきい値Ri+1(i=1,2,3・・・N)とすることができる。
【0047】
このようにすれば、膨張開始直後の吐出圧や膨張途中の吐出圧を目安とするよりも、より確実に膨張を進行させることが可能となり、グラウト注入パイプ内の流動性低下に起因する注入不足の問題がほぼ完全に解消される。
【0048】
吐出制御機構は、グラウト材の吐出圧が所定のしきい値を越えたときに、吐出口の開閉状態を移行させることができる限り、どのように構成するかは任意であるが、圧力制御弁とは異なり、吐出圧が戻ったときに再び閉じた状態に移行する必要はない。
【0049】
吐出制御機構は例えば、径方向に拡大可能なスリーブを各吐出口が覆われるようにグラウト注入パイプにそれぞれ嵌め込んで構成するとともに、グラウト注入パイプの先端側からi番目の吐出口におけるグラウト材の吐出圧がしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)を上回ったとき、該吐出口のスリーブが径方向に拡大するように該スリーブのスリーブ長、スリーブ厚若しくは材質又は吐出口の内径を選定して構成することができる。
【0050】
なお、かかるスリーブは上述したように、拡大後に元に戻る必要はないため、弾性材以外に塑性材で構成することも可能である。
【0051】
グラウト注入パイプの先頭に位置する袋体は、全体の注入工程において最初にグラウト材の注入が行なわれるものであるため、該袋体へのグラウト材の吐出を制限する必要はない。そのため、先頭位置の吐出制御機構については、これを省略することができる。
【0052】
本発明に係る地山補強材は、地山安定用の芯材を介して法面に設置された法枠等の法面構造体や土留め壁と連結することで地山の安定化を図ることができるが、これら法面構造体や土留め壁を設けなくても、上述した芯材の曲げ、引張あるいはせん断剛性を利用して地山の安定化を図ることは可能であり、ネイリング工法、ハイスペックネイリング工法その他の地山補強工法に広く適用が可能であるとともに、芯材のうち、該芯材と一体化される袋体の全長や補強材挿入孔へのグラウト材の充填深さ(定着長)を除く範囲において緊張力導入のための自由長を確保できるのであれば、グランドアンカー工法のアンカーとしても使用することが可能である。
【0053】
ここで、鉄筋等の補強材を地山安定用の芯材とし、かかる芯材がグラウト材の硬化後に複数の袋体と一体化するように構成してもよいが、グラウト注入パイプを中空ボルトで構成するとともに、該中空ボルトを地山安定用の芯材とした場合、グラウト注入パイプを芯材と兼用することができるため、工事コストの低減や工期の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態に係る地山補強材の全体斜視図。
【図2】本実施形態に係る地山補強材の詳細図であり、(a)は縦断面図、(b)は吐出口及びそれを覆う吐出制御機構の詳細斜視図、(c)は横断面図。
【図3】本実施形態に係るグラウト材の注入方法の実施手順を示した説明図。
【図4】引き続き実施手順を示した図。
【図5】引き続き実施手順を示した図。
【図6】吐出圧pijとしきい値Ri(i=1,2,3)との関係を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明に係る地山補強材及びグラウト材の注入方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0056】
図1は、本実施形態に係る地山補強材を示した全体斜視図、図2は詳細図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る地山補強材1は、グラウト注入パイプ3の管軸方向に沿って袋体2a,2b,2cを直列に配置してなる。
【0057】
グラウト注入パイプ3は、その管軸方向に沿って吐出口12a,12b,12cを形成してあるとともに、該吐出口を介して袋体2a,2b,2cの内部空間がグラウト注入パイプ3内にそれぞれ連通されるようになっており、グラウト注入パイプ3の基端側に接続されたグラウト圧送ポンプ(図示せず)を駆動することにより、吐出口12a,12b,12cを介してグラウト材を袋体2a,2b,2cに加圧注入できるようになっている。なお、グラウト注入パイプ3は、中空ボルトで構成してあり、地山安定用の芯材を兼用する。
【0058】
袋体2a,2b,2cは、透水性材料である織布からなるチューブ材にグラウト注入パイプ3を挿通した上、該チューブ材の両端を拘束バンド4,4でグラウト注入パイプ3に縛り付けることにより、グラウト材が加圧注入される袋状の内部空間を形成してなる。
【0059】
グラウト注入パイプ3の吐出口12a,12b,12cのうち、先頭に位置する吐出口12aを除く吐出口12b,12cには吐出制御機構11b,11cをそれぞれ設けてある。
【0060】
吐出制御機構11b,11cは図2(b)及び(c)でよくわかるように、径方向に拡大可能なスリーブ13を吐出口12b,12cが覆われるようにグラウト注入パイプ3にそれぞれ嵌め込んで構成してあり、吐出口12b,12cからのグラウト材の吐出圧が所定のしきい値を越えたとき、スリーブ3が径方向に拡大して該スリーブの内面とグラウト注入パイプ3の周面との間に隙間が形成されることにより、吐出口12b,12cの開閉状態を、閉じた状態から開いた状態に移行させることができるようになっている。
【0061】
吐出制御機構11b,11cのしきい値Ri(i=2,3)は、グラウト注入パイプ3の先端側で最小となり、該グラウト注入パイプの基端側に沿って大きくなるように、本実施形態では、R2よりもR3の方が大きくなるように構成してある。
【0062】
これらのしきい値は、スリーブ3のスリーブ長、スリーブ厚若しくは材質又は吐出口12b,12cの内径を適宜変更することで調整が可能であり、しきい値を高くするのであれば、スリーブ長やスリーブ厚を大きくしたり強度が高い材料を用いたり、あるいは吐出口12b,12cの内径を小さくすることで径方向に拡大しにくくすればよいし、逆にしきい値を低くしたいのであれば、スリーブ長やスリーブ厚を小さくしたり強度が低い材料を用いたり、あるいは吐出口12b,12cの内径を大きくすることで径方向に拡大しやすくすればよい。スリーブ3は、例えば熱収縮チューブで構成することができる。
【0063】
図3乃至図5は、地山補強材1を構成する袋体2a,2b,2cへのグラウト材の注入手順を示した説明図である。これらの図でわかるように、地山補強材1を用いて地山を補強するにあたり、各袋体2a,2b,2cにグラウト材を注入するには、まず、地山31を削孔して内径が100mm程度の補強材挿入孔32を形成し(図3(a))、次いで、補強材挿入孔32にグラウト材33を充填する(図3(b))。
【0064】
次に、図4に示すように補強材挿入孔32に地山補強材1を挿入するとともに、該地山補強材を構成するグラウト注入パイプ3の基端側にグラウト圧送ポンプ41を接続し、しかる後、グラウト圧送ポンプ41を、そのポンプ圧が時間経過とともに段階的に増加するように駆動する。
【0065】
グラウト圧送ポンプ41を駆動するにあたっては、まず、グラウト注入パイプ3の先頭に位置する吐出口12aでの吐出圧が袋体2aを十分に膨張させる程度、例えば補強材挿入孔32に当接する程度の圧力となり、2,3番目に位置する吐出口12b,12cでの吐出圧が、該各吐出口に設けられた吐出制御機構11b,11cのしきい値R2,R3をそれぞれ下回るようにポンプ圧P1を設定する。
【0066】
また、グラウト注入パイプ3の先端側から2番目に位置する吐出口12bでの吐出圧が、該吐出口に設けられた吐出制御機構11bのしきい値R2を上回るとともに、3番目に位置する吐出口12cでの吐出圧が、該吐出口に設けられた吐出制御機構11cのしきい値R3を下回るようにポンプ圧P2を設定する。しきい値R2は、袋体2bを十分に膨張させる程度、例えば補強材挿入孔32に当接する程度の圧力として設定しておく。
【0067】
また、グラウト注入パイプ3の先端側から3番目に位置する吐出口12cでの吐出圧が、該吐出口に設けられた吐出制御機構11cのしきい値R3を上回るようにポンプ圧P3を設定する。しきい値R3は、袋体2cを十分に膨張させる程度の圧力、、例えば補強材挿入孔32に当接する程度の圧力として設定しておく。
【0068】
図6は、ポンプ圧がPj(j=1,2,3)として順次増加していくのに伴い、各吐出口12a,12b,12cでの吐出圧pij(i=1,2,3, j=1,2,3)の変化と、かかる吐出圧pijとしきい値Ri(i=2,3)との関係を示したものであり、添字iは、吐出口の位置に関するパラメータ、添字jは、時間とともに増加するポンプ圧の大きさに関するパラメータを表す。なお、同図では、管路長に沿った圧力損失によってポンプ圧が直線的に減少するものとして吐出圧を表現してある。
【0069】
ここで、同図上段は、ポンプ圧P1をグラウト注入パイプ3の基端側に作用させることで、吐出口12aを介してグラウトを袋体2aに加圧注入している様子を示したものであるとともに、各吐出口12a,12b,12cに生じる吐出圧が、p11,p21,p31であって、吐出口12b,12cに設けられた吐出制御機構11b,11cのしきい値がこれらより上回っているために、吐出口12b,12cは未だ閉じていることを示している。なお、吐出口12aには吐出制御機構が設けられておらず、常に開いた状態である。
【0070】
また、同図中段は、ポンプ圧P2をグラウト注入パイプ3の基端側に作用させることで、吐出口12bを介してグラウトを袋体2bに加圧注入している様子を示したものであるとともに、各吐出口12a,12b,12cに生じる吐出圧が、p12,p22,p32であって、p22が吐出口12bに設けられた吐出制御機構11bのしきい値R2を上回ったために該吐出制御機構が作動して吐出口12bが開いた状態に移行し、吐出口12cは未だ閉じていることを示している。
【0071】
また、同図下段は、ポンプ圧P3をグラウト注入パイプ3の基端側に作用させることで、吐出口12cを介してグラウトを袋体2cに加圧注入している様子を示したものであるとともに、各吐出口12a,12b,12cに生じる吐出圧が、p13,p23,p33であって、p33が吐出口12cに設けられた吐出制御機構11cのしきい値R3を上回ったために該吐出制御機構が作動して吐出口12cが開いた状態に移行したことを示している。
【0072】
一例としては、開始直後のポンプ圧P1が0.2MPaの場合における吐出圧p11を0.1MPa、吐出圧p21を0.12MPa、吐出圧p31を0.14MPaと定め、ポンプ圧P2が0.4MPaの場合における吐出圧p12を0.3MPa、吐出圧p22を0.32MPa、吐出圧p32を0.34MPaと定め、ポンプ圧P3が0.6MPaの場合における吐出圧p13を0.5MPa、吐出圧p23を0.52MPa、吐出圧p33を0.54MPaと定めた上、これらを前提として吐出制御機構11bのしきい値R2を0.32MPaより若干小さな0.31MPa、吐出制御機構11cのしきい値R3を0.54MPaよりも若干小さな0.53MPaと設定することができる。
【0073】
このように設定されたポンプ圧Pj(j=1,2,3)に従ってグラウト圧送ポンプ41を駆動すると、ポンプ圧がP1のときは、先頭の吐出口12aだけが開いた状態、2番目以降の吐出口が閉じた状態となるため、グラウト材は図4(a)に示すように、先頭の袋体2aだけに注入される。
【0074】
そのため、先頭の袋体2aから滲出したグラウト材のうち、地山31に浸透せずに補強材挿入孔32に残留した余剰分は、スムーズに削孔口側へと押し出されるとともに、先頭の袋体2aもスムーズに膨張を続ける。
【0075】
上述したポンプ圧P1で一定時間グラウト注入を行った後、適当なタイミングでグラウト圧送ポンプ41のポンプ圧をP2に引き上げると、先頭の吐出口12aと2番目の吐出口12bが開いた状態、3番目の吐出口12cが閉じた状態となるため、グラウト材は図4(b)に示すように、先頭の袋体2aと2番目の袋体2bに注入され、3番目の袋体2cには注入されない。
【0076】
そのため、先頭の袋体2aは、膨張の余地が残っている場合には膨張を続け、2番目の袋体2bはあらたに膨張を開始する。
【0077】
ここで、2番目の袋体2bから滲出したグラウト材のうち、地山31に浸透せずに補強材挿入孔32に残留した余剰分は、3番目の袋体2cが未だ膨張を開始していないため、スムーズに削孔口側へと押し出される。
【0078】
また、2番目の袋体2bが遅れて膨張するため、先頭の袋体2aから滲出したグラウト材は、2番目の袋体2bと補強材挿入孔32の削孔内面との隙間を通って削孔口へと容易に移動し、かくして先頭の袋体2aも、膨張余地がある場合にはスムーズに膨張し続ける。
【0079】
なお、2番目の袋体2bが遅れて膨張することにより、グラウト注入パイプ3の挿入前に充填されたグラウト材が先頭の袋体2aと2番目の袋体2bの間に閉じこめられることはない。
【0080】
上述したポンプ圧P2で一定時間グラウト注入を行った後、適当なタイミングでグラウト圧送ポンプのポンプ圧をP3に引き上げると、吐出口12a,12b,12cがすべて開いた状態となるため、グラウト材は図5に示すように、袋体2a,2b,2cに注入される。
【0081】
そのため、袋体2a,2bは、膨張の余地が残っている場合には膨張を続け、3番目の袋体2cはあらたに膨張を開始する。
【0082】
ここで、袋体2cから滲出したグラウト材のうち、地山31に浸透せずに補強材挿入孔32に残留した余剰分は、スムーズに削孔口側へと押し出される。
【0083】
また、袋体2cが遅れて膨張するため、袋体2bから滲出したグラウト材は、袋体2bと補強材挿入孔32の削孔内面との隙間を通って削孔口へと容易に移動し、かくして袋体2bも、膨張余地がある場合にはスムーズに膨張し続ける。
【0084】
なお、3番目の袋体2cが遅れて膨張することにより、グラウト注入パイプ3の挿入前に充填されたグラウト材が2番目の袋体2bと3番目の袋体2cの間に閉じこめられることはない。
【0085】
袋体2a,2b,2cへのグラウト注入が終了したならば、グラウト圧送ポンプ41を撤去するとともに、グラウト注入パイプ3に対し、地山安定用の芯材として頭部処理を行う。グラウト注入パイプ3の頭部処理については、基端側にナットを螺着することで補強材挿入孔32からのグラウト材の流失を防止したり、土留め壁に連結したりといった処理が想定されるが、ここでは詳細な説明を省略する。
【0086】
以上説明したように、本実施形態に係る地山補強材1及びグラウト材の注入方法によれば、袋体2a,2b,2cへのグラウト材の加圧注入が、グラウト注入パイプ3の先端側に位置するものから順に行われるので、袋体2a,2b,2cから滲出したグラウト材はスムーズに削孔口へと移動し、袋体2a,2b,2cと補強材挿入孔32の削孔内面との間に閉じこめられることはない。
【0087】
また、膨張開始直後の袋体2a,2b,2cにおいては、水分を多く含んだ状態でグラウト材が滲出するため、袋体2a,2b,2c内が脱水状態となってグラウト材の濃度が高まり、該袋体内及びその近傍のグラウト注入パイプ3内ではグラウト材の流動性が低下するが、該袋体よりも奥側に位置する袋体においては、奥に行くほど既に十分な大きさに膨張しているため、上述した流動性低下はほとんど問題にはならない。
【0088】
そのため、袋体2a,2b,2cの膨張とそれによる補強材挿入孔32の押し拡げが確実に行われるとともに、その結果、地山安定用の芯材であるグラウト注入パイプ3を介した引張力や引抜力に対し、十分な抵抗力が確保される。ちなみに、補強材挿入孔32の内径が100mm程度であるのに対し、袋体2a,2b,2cの外径は概ね150mm程度となる。
【0089】
また、本実施形態に係る地山補強材1によれば、グラウト注入パイプ3を中空ボルトで構成するとともに、該中空ボルトを地山安定用の芯材としたので、グラウト注入パイプ3を芯材と兼用することが可能となり、かくして工事コストの低減や工期の短縮を図ることができる。
【0090】
本実施形態では、先頭に位置する吐出口12aについては、吐出制御機構を省略するようにしたが、吐出制御機構11b,11cと同様の吐出制御機構を吐出口12aに設けるようにしてもかまわない。
【0091】
また、本実施形態では、複数の袋体を3つの袋体2a,2b,2cで構成した例で説明したが、個数に制限がないことは言うまでもない。
【0092】
また、本実施形態では、グラウト注入パイプ3を中空ボルトで構成することで地山安定用の芯材と兼用するように構成したが、これに代えて、鉄筋等の芯材を地山安定用の芯材として別途備えるようにしてもかまわない。
【0093】
この場合においては、グラウト注入パイプと芯材とを抱き合わせた上、袋体2a,2b,2cと同様に、グラウト注入パイプ及び芯材を不織布等の透水性材料からなるチューブ材に挿通した上、該チューブ材の両端を拘束バンド4,4で縛り付けるようにすればよい。
【0094】
また、本実施形態では、袋体の数と吐出口の数とを一致させたが、一つの袋体に対し、複数の吐出口を設ける構成を採用することも可能である。
【0095】
また、本実施形態では、袋体を透水性材料である織布からなるチューブ材で構成したが、織布に代えて不織布を用いてもよいし、グラウト注入パイプに配置された状態で袋体である限り、チューブ材に代えて任意の部材を用いて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 地山補強材
2a,2b,2c 袋体
3 グラウト注入パイプ(芯材)
11a,11b,11c 吐出制御機構
12a,12b,12c 吐出口
13 スリーブ
31 地山
32 補強材挿入孔
41 グラウト圧送ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向に沿って複数の吐出口が形成されたグラウト注入パイプと前記各吐出口を介して内部空間が前記グラウト注入パイプ内にそれぞれ連通されるように前記グラウト注入パイプの管軸方向に沿って直列に配置された透水性を有する複数の袋体とを備えるとともに地山に形成された補強材挿入孔に挿入されるようになっている地山補強材において、
前記吐出口のうち、前記グラウト注入パイプの先端側からi番目(i=1,2,3・・・N)に位置する吐出口からのグラウト材の吐出圧がしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)を越えたときに該吐出口の開閉状態を閉じた状態から開いた状態に移行させることが可能な吐出制御機構を前記吐出口にそれぞれ設けるとともに、該各吐出制御機構を、それらのしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)が前記グラウト注入パイプの先端側で最小となり、該グラウト注入パイプの基端側に沿って大きくなるように構成したことを特徴とする地山補強材。
【請求項2】
前記各吐出制御機構を、径方向に拡大可能なスリーブを前記各吐出口が覆われるように前記グラウト注入パイプにそれぞれ嵌め込んで構成するとともに、前記グラウト注入パイプの先端側からi番目の吐出口におけるグラウト材の吐出圧がしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)を上回ったとき、該吐出口のスリーブが径方向に拡大するように該スリーブのスリーブ長、スリーブ厚若しくは材質又は前記吐出口の内径を選定した請求項1記載の地山補強材。
【請求項3】
前記吐出制御機構のうち、前記グラウト注入パイプの先端側から1番目に位置する吐出制御機構を省略した請求項1又は請求項2記載の地山補強材。
【請求項4】
前記グラウト注入パイプを中空ボルトで構成するとともに、該中空ボルトを地山安定用の芯材とした請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の地山補強材。
【請求項5】
管軸方向に沿って複数の吐出口が形成されたグラウト注入パイプと前記各吐出口を介して内部空間が前記グラウト注入パイプ内にそれぞれ連通されるように前記グラウト注入パイプの管軸方向に沿って直列に配置された透水性を有する複数の袋体とを備えた地山補強材を地山に形成された補強材挿入孔に挿入し、前記グラウト注入パイプの基端側に接続されたグラウト圧送ポンプを駆動することで前記グラウト注入パイプを介して前記各袋体にグラウト材を加圧注入するグラウト材の注入方法において、
前記吐出口のうち、前記グラウト注入パイプの先端側からi番目(i=1,2,3・・・N)に位置する吐出口での吐出圧がしきい値Ri(i=1,2,3・・・N)を越えたときに該吐出口の開閉状態を閉じた状態から開いた状態に移行させることが可能な吐出制御機構を前記吐出口にそれぞれ設けるとともに、該各吐出制御機構を、それらのしきい値Ri(i=2,3・・・N)が前記グラウト注入パイプの先端側で最小となり、該グラウト注入パイプの基端側に沿って大きくなるように設定し、前記グラウト圧送ポンプを、そのポンプ圧が時間経過とともに増加するように駆動することを特徴とするグラウト材の注入方法。
【請求項6】
前記グラウト注入パイプの先端側から1番目に位置する吐出口での吐出圧が該吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値R1を上回るとともに2番目〜N番目に位置する吐出口での吐出圧が該各吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値Ri(i=2,3・・・N)をそれぞれ下回るようにポンプ圧P1を設定し、
前記グラウト注入パイプの先端側から2番目に位置する吐出口での吐出圧が該吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値R2を上回るとともに3番目〜N番目に位置する吐出口での吐出圧が該各吐出口に設けられた吐出制御機構のしきい値Ri(i=3・・・N)をそれぞれ下回るようにポンプ圧P2を設定し、
以下、N番目に位置する吐出口まで上記ポンプ圧設定プロセスを繰り返すことでポンプ圧Pj(j=1,2,3・・・N)を設定し、
前記グラウト圧送ポンプを、ポンプ圧が時間経過とともにP1,P2,P3・・・PNとなるように駆動する請求項5記載のグラウト材の注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241386(P2012−241386A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111197(P2011−111197)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(000149206)株式会社大阪防水建設社 (44)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【出願人】(592016784)守谷鋼機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】