説明

地山補強用打ち込み鋼管における穿孔ビット

【課題】 トンネル内から周囲の緩み地盤に打ち込んで地山の安定化を図る地山補強用打ち込み鋼管における先端に装着した穿孔ビットであって、掘削物を確実且つ効率よく取り込んで、鋼管の外周面と掘削地盤との間に食い込むのを防止しながら、鋼管の円滑な打ち込みを可能にする。
【解決手段】 鋼管1の先端に装着した穿孔ビット2の前端面外周部に環状壁部2a2 を形成すると共にこの環状壁部2a2 の前端面と該環状壁部2a2 によって囲まれた凹部2a1 との前面に掘削チッ7a、7bを突設し、且つ、該凹部2a1 から鋼管1内に連通する掘削物取込孔5を設けて、穿孔ビット2により掘削された掘削物を凹部2a1 内に取り込み、該凹部2a1から掘削物取込孔5を通じて鋼管1内に排出するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緩み地盤等が存在する地山内に打ち込んで地山の安定化を図る地山補強用打ち込み鋼管において、その前端に装着した穿孔ビットの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事においては、地山が軟弱な場合には地山の安定化を図りながらトンネルの掘削を行う必要があり、そのため、一定長さのトンネルを掘削する毎に掘削壁面から地山に、先端に穿孔ビットを装着している複数本の鋼管をトンネル周方向に放射状に打ち込み、これらの鋼管内を通じて地山にセメントミルク或いはウレタン樹脂液などの硬化性材料を注入、硬化させ、この状態で鋼管を穿孔ビットと共に地中に残置させることにより地盤の安定化を図ることが行われている。
【0003】
このような地山安定用打ち込み鋼管としては、例えば、特許文献1に記載されているように、鋼管の先端に装着している穿孔ビットにその前面から鋼管内に連通したスライム送り溝とエア噴出口とを設けると共に鋼管内に上記穿孔ビットと連結したダウンザホールハンマを介して内管を設けて、この内管を通じて上記穿孔ビットのエア噴出口からエアを噴出させながらダウンザホールハンマにより穿孔ビットを駆動して地山を掘削し、掘削物であるスライムを上記スライム送り溝を通じて鋼管内に取り込んで後端側から排出するように構成した構造のものが知られている。
【特許文献1】特開平8−338191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記穿孔ビットは、尖端を前方に向けた円錐形状に形成されてあり、その外周端部に周方向に所定間隔毎に上記スライム送り溝を設けてこれらのスライム送り溝を鋼管内に連通させた掘削物取り込み構造としているため、この穿孔ビットによって掘削された掘削物を全てこのスライム送り溝に取り込むことが困難となり、周方向に隣接するスライム送り溝間の穿孔ビットの傾斜面をガイドとして、掘削物が該傾斜面の外端から鋼管の外周面と掘削孔との間の隙間に入り込んでこの隙間を詰まらせ、そのため、鋼管の前進が拘束されて前進不能となる、所謂、ジャミング現象が生じる虞れがある。
【0005】
特に、鋼管を打ち込むべき地山が脆弱の岩質の地山である場合には掘削物が大割れし易くなり、その大割れした掘削片が鋼管の該外周面と掘削孔との間の隙間に噛み込んで鋼管の打ち込みができなくなる事態が発生し、また、円錐形状の外周端部では大径のスライム送り溝を貫設することが困難となって上記大割れした掘削片を取り込むことができず、又、取り込むことができてもスライム送り溝を詰まらせてその後の掘削物の排出ができなくなるといった問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、掘削物を確実に且つ効率よく取り込みながら地山への鋼管の打ち込みを可能にすると共に、その打ち込みも鋼管内を通じて掘削物を円滑に排出しながら確実に行えるようにした地山補強用打ち込み鋼管における穿孔ビットを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の地山補強用打ち込み鋼管における穿孔ビットは、請求項1に記載したように、地山に打設して地山の安定化を図る地山補強用打ち込み鋼管の前端に装着された穿孔ビットであって、この穿孔ビットはその前面外周部に前方に向かって一定高さの環状壁部を突設していると共に、該環状壁部で囲まれた凹部の奥底面から後面にまで貫通して鋼管内に連通した掘削物取込孔を設けた構造としている。
【0008】
このように構成した地山補強用打ち込み鋼管における穿孔ビットにおいて、請求項2に係る発明は、穿孔ビットの環状壁部の突出前端面を外周縁から凹部に向かって後方に傾斜した傾斜面に形成していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、穿孔ビットにその凹部の奥底面から穿孔ビットの後面に貫通した注水孔を設けている一方、鋼管内の中心部に全長に亘って送水管を配設してこの送水管の前端を上記注水孔の後端に連結、連通させてあり、さらに、送水管の外周面と鋼管の内周面間の空隙部を掘削物排出通路に形成して該掘削物排出通路の前端を穿孔ビットに設けている掘削物取込孔の後端に連結、連通させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、穿孔ビットの前面外周部に前方に向かって一定高さの環状壁部を突設していると共に、この環状壁部で囲まれた凹部の奥底面から穿孔ビットの後面にまで貫通して鋼管内に連通した掘削物取込孔を設けているので、この穿孔ビットによって掘削した掘削物を一旦、環状壁部によって囲まれた凹部内に取り込むことができ、取り込んだ凹部内の掘削物を環状壁部によって凹部外に漏出するのを確実に防止しながら該凹部内から凹部の奥底面に開口している掘削物取込孔を通じて鋼管内の掘削物排出通路に効率よく且つ確実に排出させることができる。従って、この穿孔ビットを装着している地山補強用打ち込み鋼管の外周面と掘削孔間の隙間に掘削物が入って該隙間を詰まらせる虞れが殆どなくなり、地山補強用打ち込み鋼管の打ち込みが円滑且つ確実に行うことができる。
【0011】
その上、掘削物取込孔は穿孔ビットの外周環状壁部で囲まれた凹部の奥底面に設けるので、鋼管内に連通する比較的大径の掘削物取込孔に形成しておくことができ、そのため、脆弱の岩質の地山を掘削した際に発生する大割れした掘削物であっても、詰まることなく該掘削物取込孔内を流通させて鋼管内に確実に排出することができる。
【0012】
さらに、請求項2に係る発明によれば、穿孔ビットの上記環状壁部の突出前端面を外周縁から凹部に向かって後方に傾斜させた傾斜面に形成しているので、この環状壁部の前端面によって掘削された掘削物を該傾斜面を伝って中央部側の凹部へと寄せ集めながら凹部内に確実に取り込むことができ、地山補強用打ち込み鋼管の外周面と掘削孔間の隙間に掘削物が回り込むのを抑制しながら掘削物を効率よく排出することができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明によれば、穿孔ビットにその凹部の奥底面から穿孔ビットの後面に貫通した注水孔を設けている一方、鋼管内の中心部に全長に亘って送水管を配設してこの送水管の前端を上記注水孔の後端に連結、連通させているので、この送水管内に供給した圧力水を穿孔ビットに設けている注水孔から噴射させてこの穿孔ビットにより掘削された掘削物をこの水の流れによって穿孔ビットの凹部内から掘削物取込孔内に円滑に流入させることができる。
【0014】
その上、上記送水管としては、鋼管の後端側から穿孔ビットの注水孔に圧力水を供給する機能のみを有していればよく、従って、小径の送水管を採用して鋼管の内周面とこの送水管の外周面間の空隙部によって形成される掘削物排出通路の断面空間を鋼管の全長に亘って広くしておくことができ、この掘削物排出通路の前端が連通している上述した穿孔ビット側の掘削物取込孔を大径に形成しておくことができることと相まって該掘削物取込孔から掘削物排出通路内を通じての掘削物の排出が効率よく且つ確実に行うことができ、鋼管の打ち込み作業が能率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は地山補強用打ち込み鋼管の半断面図であって、この地山補強用打ち込み鋼管は一定長さを有する鋼管1と、この鋼管1の前端に一体に固着している穿孔ビット2と、鋼管1内の中心部にこの鋼管1の略全長に亘って配設された小径の送水管3とからなり、穿孔ビット2にはその前後面間に亘って貫通した数個(図においては2個)の注水孔4と数個(図においては4個)の掘削物取込孔5とが設けられていて、上記送水管3の前端を注水孔4の後端に連結、連通させていると共に上記鋼管1の内周面と送水管3の外周面間の断面円環状空隙部によって掘削物排出通路6を形成してあり、この掘削物排出通路6の前端を上記掘削物取込孔5の後端に連通させてなる構造を有している。そして、鋼管1の内周面と送水管3の外周面間で形成されたこの掘削物排出通路6は全長に亘ってその円環条空隙部が略一定の面積でもって連続させている。
【0016】
上記穿孔ビット2の構造をさらに詳しく述べると、この穿孔ビット2は図2〜図4に示すように、鋼管1の外径よりも大径の肉厚円板形状のヘッド部2aの後面外周部に後方に向かって内径が鋼管1の外径に等しい短筒部2bを突設した外観形状を有し、この短筒部2bを鋼管1の前端部に被嵌して固定ピン9により鋼管1に一体に固着してある。なお、固定ピン9に代えて溶接により穿孔ビット2の短筒部2bを鋼管1の前端部に一体に固着してもよい。さらに、この穿孔ビット2の上記ヘッド部2aの前半部には、該ヘッド2aの外周部を残して前面から後方に向かって一定深さを有する円形の凹部2a1 が形成されていると共に上記残存させた外周部によってこの凹部2a1 の外周から前方に向かって突出した一定高さの環状壁部2a2 を形成している。
【0017】
この環状壁部2a2 の内径は上記鋼管1の内径に略等しい径に形成されていると共にその前面を掘削チップ7aの台座面として該台座面に周方向に小間隔毎に先端が先鋭な複数個の山形状の掘削チップ7aを突設している。同様に、上記円形の凹部2a1 の奥底面を内側掘削チップ7bの台座面として該台座面に複数個の半円球状の内側チップ7bを突設している。さらに、穿孔ビット2の上記凹部2a1 のチップ台座面からこの穿孔ビット2の後端面に貫通して上述した数個の小径の注水孔4と大径の掘削物取込孔5とを設けている。
【0018】
穿孔ビット2の後面中央部に後方に向かって上記送水管3の取付座2a3 を突設してあり、この取付座2a3 の後端面中央部には通水穴部2a4 が形成されていて上記注水孔4、4の後端をこの通水穴部2a4 に連通させている一方、鋼管1内の中心部に配設している上記小径の送水管3の前端開口部を取付座2a3 の後端面中央部に当接させて溶接等により一体に固着し、該開口端を通水穴部2a4 に連通させている。この送水管3は、その長さ方向の数カ所を支持ブラケット8によって鋼管1の内周面に支持されている。詳しくは、この支持ブラケット8は図5に示すように、送水管3よりも僅かに大径の中央部8aから鋼管1の内周面に向かって数片(図においては3片)の支持アーム片8bを放射状に突設してなり、その中央部8aに送水管3を挿通、固着させていると共に支持アーム片8bの外端面を鋼管1の内周面に固着して、送水管3を鋼管1の中心部に全長に亘って支持している。
【0019】
鋼管1はその管壁の複数箇所に内外周面に貫通する硬化性材料の注入孔10を設けていると共に後端部外周面に平面矩形状の係合突起11を突設している。さらに、鋼管1の外周面に図1に示すように、螺旋状又はリング状の突条12を一体に突設して、地山に打ち込んだのちにおける該鋼管1の引き抜き抵抗を増大させている。なお、このような突条12は必ずしも設けておく必要はない。
【0020】
鋼管1の後端部に連結して鋼管1に打ち込み機からの打撃回転力を伝達するための打撃・回転伝達部材20は、図6に示すように、一定長さを有する円筒形状に形成されたスイベル体20A と、このスイベル体20A の前端に着脱自在に螺合した鋼管連結筒体20B とからなり、スイベル体20A においては、その後半部における中心部には小径接続管30の後端部を着脱自在に螺合させる前側螺子孔部21と後端が打撃・回転伝達部材20の後端面から後方に向かって開口している後側螺子孔部22とをこれらの螺子孔部21、22に前後端を連通させた通水孔部23を介して同軸線上に形成している一方、前半部には、その前端部側に上記鋼管連結筒体20B の後端部を着脱自在に螺合させた大径螺子孔部24を設けていると共に、この大径螺子孔部24の後端と上記前側螺子孔部21との間に掘削物受入孔部25を形成し、この掘削物受入孔部24内からスイベル体20A の外周面に開口した掘削物排出口25a を形成している。なお、上記通水孔部23は後述するドリフタ40の前端面から突出している作動軸41内の給水路(図示せず)に連通していてこの給水路から給水を受けるように構成されている。
【0021】
また、上記鋼管連結筒体20B の前半部内を鋼管1の後端部受入筒部26に形成していると共にこの鋼管連結筒体20B の後半部の筒部内径を鋼管1の後端部受入筒部26の内径よりも小径で且つ上記掘削物受入孔部25と略同径に形成して該受入筒部26内の後端に鋼管1の後端面を当接、受止する環状の受止端面26a に形成している。さらに、鋼管連結筒体20B の後端部を上記スイベル体20A の大径螺子孔部24に螺合する螺筒部27に形成していると共にこの螺子部27の前端側に該螺子部27の前端から外径方向に突出した環状の受止端面28を形成してあり、この受止端面28に上記スイベル体20A の大径螺子孔部24の前端面を当接受止させ、螺子山に打ち込み機側からの打撃力を殆ど伝達することなく該受止端面28から鋼管連結筒体20B に打撃力を伝達させ、さらに、鋼連結筒体20B から上記受止端面26a を介して鋼管1に打撃力を伝達するように構成している。
【0022】
さらに、鋼管連結筒体20B における鋼管受入筒部26の周壁の一部に前端が前方に向かって開口したL字状の切欠係止部29を形成してあり、この切欠係止部29に上記鋼管1の後端外周面に突設している係合突起11を挿入、係合させて打撃・回転伝達部材20の回転を鋼管1に伝達するようにしている。
【0023】
上記小径接続管30は外径をスイベル体20A の掘削物受入孔部25や鋼管連結筒体20B の後半部の筒部内径よりも小径に形成してその外周面とこれらの掘削物受入孔部25及び連結筒体20B の後半部の筒部内との間を、鋼管1内の上記掘削物排出通路6の後端に連通した掘削物排出用隙間6aに形成していると共に該小径接続管30の中心部を全長に亘って通水孔31に形成してあり、さらに、後端部を上記スイベル体20A の後端部内に設けている前側螺子孔21に着脱自在に螺合した螺子部32に形成している。
【0024】
また、この小径接続管30の前端部には筒状頭部33が固着されてあり、この筒状頭部33内に、中心部に上記通水孔31と略同径の中心孔34a を有する円環形状の緩衝部材34と、中心部に鋼管1の後端から後方に突出したた送水管3の後端部を水密状に挿嵌させる中心孔35a を有する止水シール材35とを該止水シール材35を前側にして前後に重ね合わせた状態で内装している。そして、緩衝部材34を小径接続管30の前端面に当接させた状態にして筒状頭部33の後部を小径接続管30の前端部外周面に被着させている。
【0025】
次に、この小径接続管30を内装している打撃・回転伝達部材20を用いて鋼管1を地山に打ち込む方法について説明する。トンネル内に配設した鋼管打ち込み機におけるドリフタ40には図7に示すように、このドリフタ40の前端面から突出している作動軸41の後端面を打撃する打撃機構(図示せず)と該作動軸41を回転させる回転機構(図示せず)とが内装されてあり、この作動軸41を上記スイベル体20A の後側螺子孔部22に螺合させてその先端面をこの螺子孔部22の奥底端面に当接させた状態にすることにより、作動軸41に打撃・回転伝達部材20を接続する。
【0026】
一方、この打撃・回転伝達部材20の鋼管連結筒体20B における鋼管受入筒部26に鋼管1の後端部を挿入し、該鋼管1の後端部外周面に突設している係合突起11を鋼管受入筒部26の前端部に形成しているL字状切欠係止部29に挿入し、この鋼管1の後端面を受止端面26a に当接、受止させると共に鋼管1を周方向に回動させることによって上記係合突起11をL字状切欠係止部29に抜け止め状態に係合させる。さらに、鋼管受入筒部26に鋼管1の後端部を挿入するに従って、この鋼管1内の中心部に配設している送水管3における鋼管1の後端から突出した突出端部が打撃・回転伝達部材20の中心部内に配設している上記小径接続管30の前端筒状頭部33内に設けている止水シール材35の中心孔35a に前後摺動移動可能に挿通してその後端面を緩衝部材34の前端面に弾性的に押接し、該送水管3内を小径接続管30の通水孔31の前端に連通させる。
【0027】
この状態にして鋼管1の前端に装着している穿孔ビット2の前端面をトンネル周壁面から地山に向けた状態にして該壁面に当接させたのち、ドリフタ40の作動軸41に打撃回転力を与えながらドリフタ40を前進させると、作動軸41の回転は打撃・回転伝達部材20を介してこの打撃・回転伝達部材20の上記鋼管受入筒部26に形成しているL字状切欠係止部29に係合した係合突起11を介して鋼管1に伝達されると共に、作動軸41の打撃力は該作動軸41の前端面を受止している打撃・回転伝達部材20における後側螺子孔部22の奥底端面を介してこの打撃・回転伝達部材20のスイベル体20A に伝達される。
【0028】
さらに、このスイベル体20A の前端面を受止している鋼管連結筒体20B の外周面側の受止端面28を介して該鋼管連結筒体20B に伝達されると共にこの鋼管連結筒体20B の内周面側の受止端面26a を介してこの受止端面26a に後端面を当接、受止されている鋼管1に伝達され、穿孔ビット2の前端面に突設している掘削チップ7a、7bによって地山を掘進しながら鋼管1を地山の所定深さまで打設していく。
【0029】
この鋼管1の打設時には、作動軸41内の給水路を通じて打撃・回転伝達部材20のスイベル体20A 内の上記通水孔部23に水が供給され、該通水孔部23から小径接続管30の通水孔31を通じて鋼管1内の上記送水管3内を流通させて穿孔ビット2の注水孔4から該穿孔ビット2による掘削面に水を噴射させ、穿孔ビット2の掘削チップ7a、7bによって掘削された掘削物を穿孔ビット2に設けている掘削物取込孔5を通じて鋼管1と送水管3間の掘削物排出通路6内に送り込み、この排出通路6内を流通して鋼管1の開口後端から打撃・回転伝達部材20内の掘削物排出用隙間6a内に流出し、掘削物受入孔部25から排出口25a を通じて外部に排出される。
【0030】
このように、鋼管1に打撃回転力を付与しながら地山に打設していくものであるが、穿孔ビット2の前端部には環状壁部2a2 によって囲まれた円形凹部2a1 が設けられてあり、この円形凹部2a1 に鋼管1内の掘削物排出通路6に連通する掘削物取込孔5を設けていると共に、掘削物排出通路6を全長に亘って略同一断面の広い通路に形成しているので、穿孔ビット2によって掘削された掘削物は一旦、円形凹部2a1 内に取り込まれたのち、環状壁部2a2 によって外部に流出することなく該円形凹部2a1 から上記広い掘削物排出通路6に見合った大径孔に形成されている掘削物取込孔5から鋼管1内の掘削物排出通路6内に円滑に且つ確実に浸入させることができ、従って、鋼管1の外周面と掘削孔間の隙間に掘削物が入って該隙間を詰まらせる虞れが殆どなくなり、鋼管1の打ち込みが能率よく確実に行うことができる。
【0031】
こうして、鋼管1を地山の所定深さまで打ち込んだのち、打撃・回転伝達部材20を上記とは反対方向に回動させることにより鋼管1の後端部に突設している係合突起11を打撃・回転伝達部材20のL字状切欠係止部29から離脱させ、該打撃・回転伝達部材20を鋼管1から取り外す。図8は鋼管1を地山に打ち込んだ状態を示す簡略側面図である。しかるのち、トンネルの壁面から突出している鋼管1の後端部を硬化性材料注入用キャップ(図示せず)によって密閉し、このキャップに接続した注入ホースを通じてセメントミルク或いはウレタン樹脂液などの硬化性材料を鋼管1内に供給すると、硬化性材料は鋼管1内に充満すると共に該鋼管1の管壁に設けている注入孔10から鋼管周囲の地山中に注入されると共に穿孔ビット2の掘削物取込孔5からも地山中に注入され、この硬化性材料の硬化によって地盤の安定化を図るものである。
【0032】
図9、図10は、本発明地山補強用打ち込み鋼管における穿孔ビットの変形例を示すもので、上記実施の形態においては、穿孔ビット2の前端面外周部に前方に向かった突設している環状壁部2a2 は、その突設端面(前端面)を管軸に対して略直角な垂直面に形成しているが、この穿孔ビット2Aにおいてはその環状壁部2a2'の前端面における周方向に隣接する掘削チップ7a、7a間の端面を外周縁からこの環状壁部2a2'で囲まれた凹部2a1 に向かって後方に傾斜した傾斜端面2a5 に形成している。その他の構造については上記実施の形態の穿孔ビット2と同じであるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0033】
このように、穿孔ビット2Aの環状壁部2a2'の前端面を外周縁からこの環状壁部2a2'で囲まれた凹部2a1 に向かって後方に傾斜した傾斜端面2a5 に形成しておくと、この穿孔ビット2Aによって掘削された掘削物を該環状壁部2a2'の傾斜端面2a5 によって穿孔ビット2Aの中央部、即ち、凹部2a1 の開口端周縁に向かって寄せ集めながら該凹部2a1 内に取り込むことができ、掘削物が地山補強用打ち込み鋼管の外周面と掘削孔間の隙間に回り込むのを一層確実に防止しながら鋼管の打ち込みを円滑に行うことができる。なお、以上の実施の形態においては、上記地山補強用打ち込み鋼管は、一定長さを有する一本の鋼管1より形成しているが、例えば、前端に穿孔ビット2を固着している先頭側鋼管と、後端部外周面に打撃・回転伝達部材に連結させるための係合突起11を突設している最後尾側鋼管と、これらの先頭側鋼管と最後尾側鋼管との間に介在、連結させる継ぎ足し鋼管とに複数分割した地山補強用打ち込み鋼管であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】地山補強用打ち込み鋼管の上半部を断面した一部省略縦断側面図。
【図2】穿孔ビット部分の縦断側面図。
【図3】穿孔ビットの正面図。
【図4】穿孔ビットの斜視図。
【図5】送水管の支持構造を示す縦断正面図。
【図6】打撃・回転伝達部材の縦断側面図。
【図7】ドリフタによる鋼管打ち込み状態を示す一部の簡略縦断側面図。
【図8】地山に打ち込んだ状態を示す簡略側面図。
【図9】本発明の別な実施の形態を示す穿孔ビット部分の縦断側面図。
【図10】その正面図。
【符号の説明】
【0035】
1 鋼管
2 穿孔ビット
2a1 凹部
2a2 環状壁部
2a5 傾斜端面
3 送水管
4 注水孔
5 掘削物取込孔
6 掘削物排出通路
8 支持ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に打設して地山の安定化を図る地山補強用打ち込み鋼管の前端に装着された穿孔ビットであって、この穿孔ビットはその前面外周部に前方に向かって一定高さの環状壁部を突設していると共に、該環状壁部で囲まれた凹部の奥底面から後面にまで貫通して鋼管内に連通した掘削物取込孔を設けていることを特徴とする地山補強用打ち込み鋼管における穿孔ビット。
【請求項2】
穿孔ビットの環状壁部の突出前端面を外周縁から凹部に向かって傾斜した傾斜面に形成していることを特徴とする請求項1に記載の地山補強用打ち込み鋼管における穿孔ビット。
【請求項3】
穿孔ビットにその凹部の奥底面から穿孔ビットの後面に貫通した注水孔を設けている一方、鋼管内の中心部に全長に亘って送水管を配設してこの送水管の前端を上記注水孔の後端に連結、連通させてあり、さらに、送水管の外周面と鋼管の内周面間の空隙部を掘削物排出通路に形成して該掘削物排出通路の前端を穿孔ビットに設けている掘削物取込孔の後端に連結、連通させていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地山補強用打ち込み鋼管における穿孔ビット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−16785(P2006−16785A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193365(P2004−193365)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000221889)東邦金属株式会社 (28)
【Fターム(参考)】