説明

地形図作成システム

【課題】観測局等の小規模電気通信設備などの配置検討用に利用する地形図を簡単に得ることである。
【解決手段】地形図作成の対象となる現場1に設置される3個以上のマーカー2と、前記現場1の上空に所定の高度を維持して静止する高度維持装置5と、この高度維持装置5に取り付けられて前記現場の写真をデジタルデータによる現場写真として撮像する撮像装置6と、前記現場写真の前記マーカー位置を基準として3次元変換することにより水準補正と尺度の補正とを行って2値化された地形図データを作成するデータ処理装置9とよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測局等の小規模電気通信設備のような設備の配置計画図を作成する場合などに利用される地形図を作成する場合に利用される地形図作成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、河川近傍、または、山間部や都市部で、観測局等の小規模電気通信設備の配置設計を行う場合、配置する設備と近傍の既設構造物や地形状の特長との位置関係を明確にした図面を地形図として起す必要がある。
【0003】
この場合、対象地区が河川改修工事、道路工事等の大規模施設工事が行われた場所であれば、現況もしくはその工事が完了した後の測量データ、あるいは、地形図の提供を受けることができる。しかしながら、このような測量データや地形図がない場合には、一般的には、都市計画図、住宅地図等をトレースするか、現地で簡単な計測による地形図作成をしなければならないことを余儀なくされている。
【0004】
また、用地買収等の発生が当所より見込まれている場合以外は、小規模電気通信設備の設計に測量業務まで見込まれて予算が組まれていないため、正確な測量を行うことは、期間的にも費用的にも不可能である。そのため、測量データ、あるいは、正確な地形図がない地区においては、簡易な地形データを得るために、前述のように、都市計画図、住宅地図等をトレースするか、現地で簡単な計測による地形図作成をしなければならないことを余儀なくされているものである。
【0005】
さらに、特許文献1及び特許文献2に示されているように、測量データ、あるいは、地形図の作成のために、一般的な測量データとともにデジタルカメラで撮影された画像を利用する技術がある。すなわち、屋外での地形測量をデータ化し、これを持ち帰ってコンピュータ設計支援手段で地形現況図を作成する場合、現地の状態を示す補助資料をデジタル画像の形態で活用する地形現況図作成支援システムが開示されている。しかしながら、この場合に用いられるデジタル画像を得るためのデジタルカメラの設置は、通常の測量のために用いられる測量用ポールなどに取り付けてその下方や近辺の地形等を収録しているものである。
【0006】
【特許文献1】特開2003−148958公報
【特許文献2】特開2003−288006公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
河川近傍、または、山間部や都市部で、観測局等の小規模電気通信設備の配置設計を行う場合、配置する設備と近傍の既設構造物や地形状の特長との位置関係を明確にした地形図が必要になるが、この地形図は測量データ程の精度は不要である。しかしながら、現状に即した地形図である必要はある。この場合、都市計画図、住宅地図等のデータ化した地形図をトレースすることにより平面図、配置図等の設備設計図を作成すると、距離等がアバウトなものとなる。さらに、前述のように、用地買収等の発生が当所より見込まれている場合以外は、小規模電気通信設備の設計に測量業務まで見込まれて予算が組まれていないため、正確な測量を行うことは、期間的にも費用的にも不可能であり、特に、設備設計だけの場合に、地形図データ作成のための設計工期、設計費用が見込まれていないため、迅速で簡易、かつ、安価な方法で地形図のデータ化を可能とするシステムが要望されている。一方、特許文献1または特許文献2に記載された方法によれば、通常の測量業務を遂行することが前提であるため、河川近傍、または、山間部や都市部で、観測局等の小規模電気通信設備の配置設計を行う場合に必要とする地形図としては、測量データ程の精度は不要であり、費用及び時間がかかりすぎるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、地形図作成の対象となる現場に設置される3個以上のマーカーと、前記現場の上空に所定の高度を維持して静止する高度維持装置と、この高度維持装置に取り付けられて前記現場の写真をデジタルデータによる現場写真として撮像する撮像装置と、前記現場写真の前記マーカー位置を基準として3次元変換することにより水準補正と尺度の補正とを行って2値化された地形図データを作成するデータ処理装置とよりなる地形図作成システムである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の地形図作成システムにおいて、前記高度維持装置と前記データ処理装置とには撮像した現場写真のデータを無線により送受信する無線通信装置が設けられている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の地形図作成システムにおいて、前記高度維持装置は、ラジコンヘリコプタや小型気球等の飛翔物体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、高度維持装置に取り付けられた撮像装置により現場の地形をデジタルデータによる現場写真として撮像し、その現場写真には3個以上のマーカーの画像が含まれていることにより、予め相互の位置関係が定められている3個以上のマーカーの映像を基準に現場写真の水準と方位と尺度とを規定することにより現場の地形図を簡単にえることができ、この地形図に作図した観測局等の小規模電気通信設備の配置設計図を重ね合わせることにより、設計結果をより具体的に検証する資料の作成が可能となったものである。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、地上にてリアルタイムで現場写真のデータを得ることができ、これにより、現場の地形図を得るための最も好ましい現場写真を簡単に得ることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、ラジコンヘリコプタや小型気球等の飛翔物体により高度維持装置が構成されているため、デジタルカメラによる現場写真の撮像を行う地点の高さや位置を地上から任意に設定することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の態様を図面に基づいて説明する。まず、観測局等の小規模電気通信設備の配置設計を行う河川近傍、または、山間部や都市部などの現場1には、予めA、B、Cと表示された発光マーカーによる三個のマーカー2が互いに位置決めされて設置されている。すなわち、マーカー2は必要とする領域3をカバーするに十分な配置をもって設置されるものである。また、前記マーカー2は、それぞれの距離が予め定めた基準離隔Lを満たすものとしてそれらの位置が規定されている。
【0015】
ついで、ラジコンヘリコプタや小型気球等の飛翔物体4により構成される高度維持装置5が設けられている。前記飛翔物体4には、デジタルカメラによる撮像装置6とこの撮像装置6により撮像された写真のデジタルデータを送信し、また、地上からの制御信号等を受信する無線通信装置7とが配設されている。前記撮像装置6は、その撮像方向が常に下向きになるように図示しない姿勢制御装置を備えており、撮像された画像はデジタルデータに変換されて必要に応じて内蔵したメモリに記録される。さらに、前記無線通信装置7は、前記撮像装置6からリアルタイムに画像のデジタルデータを受け取って送信する機能を有すると共に、必要に応じて前記撮像装置6のメモリに記憶された画像のデジタルデータを受け取って送信する機能を有する。
【0016】
地上においては、ノートパソコン8が設けられ、このノートパソコン8の一つの機能部として構成されるデータ処理装置9と前記無線通信装置7と交信可能な無線通信装置10とが設けられている。これらのデータ処理装置9と無線通信装置10とは互いに接続されている。また、前記データ処理装置9は、画像データ変換装置11を備え、この画像データ変換装置11により画像データから線データとしての地形(ベクトル)データが作成されるとともに、この画像データ変換装置11は、CADパッケージソフト12に接続されている。このCADパッケージソフト12は、市販の汎用ソフトであり、地形データ3次元変換装置13と尺度補正装置14とを備えている。また、前記画像データ変換装置11と前記CADパッケージソフト12は、地形(ベクトル)データと画像データとを記憶する記憶装置15に接続されている。
【0017】
このような構成において、観測局等の小規模電気通信設備の配置設計を行う河川近傍、または、山間部や都市部などの現場1の上空に飛翔物体4を飛ばし、一定の高度を保たせる。すなわち、撮像装置6による撮像範囲が現場1の必要とする領域3をカバーできる範囲の高度まで上昇させ、一枚の画像に領域3の全体が写るようにする。この領域3内には、予め三個のマーカー2が設置されており、撮像装置6により撮像された画像には、これらのマーカー2が写し込まれている。しかしながら、飛翔物体4を領域3の中心点の垂直上空に位置させることは現実には不可能であるので、撮影された画像はある程度傾斜した状態になっている。なお、撮像装置6による領域3の撮像のタイミングは、無線通信装置7、10を介してデータ処理装置9としてのノートパソコン8に送信されており、このノートパソコン8のディスプレイで画像を確認しながら、適当と思われるタイミングで撮像指令を送り出す。すなわち、ノートパソコン8からの動作指令は、無線通信装置7、10を介して撮像装置6に送り出され、撮像装置6はその指令のタイミングで領域3の撮像をする。そして、撮像後の画像データは、画像データ変換装置11で2値化され、記憶装置15に記憶される。また、CADパッケージソフト12においては、地形データ3次元変換装置13によりマーカー2の画像を基準にして水準調整がなされ、水平な地形図としてのデータに変換される。また、尺度補正装置14により、領域3の実際の尺度データも付加され、かつ、地形(ベクトル)データにより方位も規定される。このようにして水平度を持ち、方位と尺度が規定された概略の地形図が作成される。
【0018】
このような地形図作成の過程において、マーカー2による水準調整が可能なことから、撮像時に撮像装置6の高度な姿勢制御を行う必要がなく、また、尺度や方位に関してもマーカー2が写し込まれた画像を利用することにより、撮像後に決定することができるものである。
【0019】
さらに、撮像装置6により、広角の撮像をした場合には、撮像画像の内側と外側との誤差が広がるため、画像データの補正に凹面化処理を行うものとする。
【0020】
このようにして得られた地形図に観測局等の小規模電気通信設備の配置を重ね合わせることにより、観測局等の小規模電気通信設備の配置設計を行う河川近傍、または、山間部や都市部などの現場1における地形上の特長や位置関係を明確にすることができる。
【0021】
なお、実施に当たっては、撮像装置6により撮像された画像を飛翔物体4の撮像装置6に付属するメモリに記憶させておき、その飛翔物体4を地表に下ろしてから記録された画像データを取り出すようにしても良いものである。また、飛翔物体4を用いることなく、高度維持装置5としては、高圧線用の鉄塔のように高さのある建造物等を利用することも可能である。すなわち、鉄塔等に撮像装置6を固定することによりその下方の現場1を撮像して画像データを簡易に得ることが可能である。この場合、撮像された画像データが傾斜していることは避けられないが、三個のマーカー2が存することにより、地形データ3次元変換装置13により水平化が可能であるため、必要とする地形図を得ることに関しては全く問題はない。さらに、マーカー2としては、3個使用した状態について説明したが、これらのマーカー2としては、設置する現場1の地形に応じて4個以上を設置するようにしても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の態様を示すもので、現場の撮像をしている状態を概念的に示す説明図である。
【図2】本発明の実施の態様におけるシステムの概略を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1 現場
2 マーカー
5 高度維持装置
6 撮像装置
9 データ処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地形図作成の対象となる現場に設置される3個以上のマーカーと、前記現場の上空に所定の高度を維持して静止する高度維持装置と、この高度維持装置に取り付けられて前記現場の写真をデジタルデータによる現場写真として撮像する撮像装置と、前記現場写真の前記マーカー位置を基準として3次元変換することにより水準補正と尺度の補正とを行って2値化された地形図データを作成するデータ処理装置とよりなることを特徴とする地形図作成システム。
【請求項2】
前記高度維持装置と前記データ処理装置とには撮像した現場写真のデータを無線により送受信する無線通信装置が設けられていることを特徴とする請求項1記載の地形図作成システム。
【請求項3】
前記高度維持装置は、ラジコンヘリコプタや小型気球等の飛翔物体であることを特徴とする請求項1又は2記載の地形図作成システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−264562(P2007−264562A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93257(P2006−93257)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(591260672)中電技術コンサルタント株式会社 (58)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】