地熱発電プラントの熱効率解析方法及び性能評価方法並びに熱効率解析プログラム及び性能評価プログラム
【課題】地熱発電プラントの熱効率解析方法及び性能評価方法並びに熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムを提供する。
【解決手段】地熱発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を得て、状態量とプラント解析モデルとに基づいて熱効率解析を行い地熱発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求め、復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を作成し、(1)条件値を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を熱物質収支解析により算出し、(2)復水器流入蒸気流量を用いて復水器特性関数より第1真空度を算出し、(3)第1真空度、条件値、及び前記性能値を用いて、熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、(4)復水器冷却水温度を用いて復水器特性関数より第2真空度を算出し、第1真空度及び第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図る。
【解決手段】地熱発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を得て、状態量とプラント解析モデルとに基づいて熱効率解析を行い地熱発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求め、復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を作成し、(1)条件値を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を熱物質収支解析により算出し、(2)復水器流入蒸気流量を用いて復水器特性関数より第1真空度を算出し、(3)第1真空度、条件値、及び前記性能値を用いて、熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、(4)復水器冷却水温度を用いて復水器特性関数より第2真空度を算出し、第1真空度及び第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地熱発電プラントの熱効率や機器の性能値を評価する地熱発電プラントの熱効率解析方法及び性能評価方法並びに熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント、地熱発電プラント、原子力発電プラントなどの発電プラントにおいては、燃料節約・発電コスト低減の観点から、熱効率を維持・向上することが重要な課題となっている。このため、発電プラントにおいては、発電プラントを構成する各機器の作動流体の状態量を日々計測したり、定期的な性能試験を実施したり、発電プラントの熱効率及び発電プラントを構成する機器の性能値の管理が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
火力発電プラントの熱効率管理は、損失法や入出熱法により行われ、火力発電プラントの構成に応じた各種指標で管理されており、解析手法が確立されている。一方、地熱発電プラントの熱効率管理については、そのような解析手法が確立されていないのが現状である。
【0004】
地熱発電プラントでは、蒸気井の噴気状態(蒸気量、圧力、ガス含有率)や大気条件が大きく変化するため、火力発電プラントと比べて、地熱発電プラントを構成する機器の性能を個別に正しく見積もることが困難である。さらに地熱発電プラントでは直接接触式復水器を採用しているため、各要因がプラントの熱効率へ及ぼす影響を実測値を用いて解析しようとしても、大気条件、各機器性能、運用状態によって復水器性能(真空度)が変化してしまい、熱効率への影響度を要因毎に正しく算出することが困難である。したがって、地熱発電プラントのどの機器を補修すれば熱効率を効果的に改善できるかを見積もることも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−229820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑み、実測値に基づいて、地熱発電プラントを構成する機器の性能値、当該性能値の変化、及び蒸気井条件や大気条件が地熱発電プラントの熱効率に与える影響を解析することができる地熱発電プラントの熱効率解析方法及び性能評価方法並びに熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、地熱発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を得て、各機器の熱物質収支及び特性を表す式を各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたプラント解析モデルを作成し、前記プラント解析モデルに前記計測値を入力して、当該計測値を得た計測時ごとの実測値基準の熱物質収支解析を行い地熱発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求め、前記性能値より地熱発電プラントを構成する機器の一つである復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を作成し、(1)前記計測値、前記性能値の内、任意の項目(条件値)を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出し、(2)得られた復水器流入蒸気流量を用いて前記復水器特性関数より第1真空度を算出し、(3)得られた第1真空度、前記条件値、及び前記性能値を用いて、地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、(4)得られた復水器冷却水温度を用いて前記復水器特性関数より第2真空度を算出し、前記第1真空度及び前記第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図ることを特徴とする地熱発電プラントの熱効率解析方法にある。
【0008】
かかる第1の態様では、現状の設備構成における要素機器の性能値を評価することができる。また、得られた機器性能値を基に、各熱効率低下要因による復水器性能(真空度)の変化を考慮して、各要因が地熱発電プラントの熱効率に与える影響を評価することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、基準時点及び評価時点を定め、基準時点における請求項1に記載する地熱発電プラントの熱効率解析方法を行うとともに、一の要因にのみ評価時点の状態量および機器性能値を設定して他の要因には基準時点の状態量および機器性能値を設定した請求項1に記載する地熱発電プラントの熱効率解析方法を行い、これら二つの解析結果を比較することで、基準時点から評価時点までの間で、一の要因の変化がプラント熱効率に与えた影響を定量的に評価することを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法にある。
【0010】
かかる第2の態様では、基準時点から評価時点までの間に各要因の変化が地熱発電プラント全体の熱効率にどの程度寄与するかを解析することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する地熱発電プラントの性能評価方法において、複数の要因それぞれについて順次、前記性能評価方法を適用することで、プラント熱効率低下の要因毎の影響量を定量的に明らかにすることを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法にある。
【0012】
かかる第3の態様では、基準時点から評価時点までの間において地熱発電プラント全体の熱効率が、複数の要因それぞれにおいてどの程度変化したかを評価することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第2又は第3の態様に記載する地熱発電プラントの性能評価方法において、計測時ごとに得られた前記実測値基準の熱効率解析結果に基づいて、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す機器性能関数を機器ごとに作成し、機器性能関数の独立変数である前記状態量に標準条件を設定し、前記計測値を機器性能関数の標準条件における値に換算して換算値を求め、前記入出力又は前記状態量が変化することによる影響を排除した地熱発電プラントの熱効率及び地熱発電プラントを構成する機器の性能の変化傾向を把握することを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法にある。
【0014】
かかる第4の態様では、蒸気井条件、大気条件、運用変更など外部要因の影響を排して各機器の性能値の変化を正確に解析することができる。このような解析結果を得ることにより、熱効率を最も向上させる機器を得ることができ、また、各機器の修繕費用と、その熱効率向上による燃料削減比を比較することで、費用対効果の大きい機器を検討することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、コンピュータに、発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を入力する機能と、各機器の熱物質収支及び特性を表す式を各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたプラント解析モデルを作成する機能と、前記プラント解析モデルに前記計測値を入力して、当該計測値を得た計測時ごとの実測値基準の熱物質収支解析を行い発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求める機能と、前記性能値より地熱発電プラントを構成する機器の一つである復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を前記プラント解析モデルに組み込む機能と、(1)前記計測値、前記性能値の内、任意の項目(条件値)を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出し、(2)得られた復水器流入蒸気流量を用いて前記復水器特性関数より第1真空度を算出し、(3)得られた第1真空度、前記条件値、及び前記性能値を用いて、地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、(4)得られた復水器冷却水温度を用いて前記復水器特性関数より第2真空度を算出し、前記第1真空度及び前記第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図る機能とを実現させることを特徴とする地熱発電プラントの熱効率解析プログラムにある。
【0016】
かかる第5の態様では、現状の設備構成における要素機器の性能値を評価することができる。また、得られた機器性能値を基に、各熱効率低下要因による復水器性能(真空度)の変化を考慮して、各要因が地熱発電プラントの熱効率に与える影響を評価することができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、コンピュータに、基準時点及び評価時点を定め、基準時点における請求項5に記載する地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行するとともに、一の要因にのみ評価時点の状態量および機器性能値を設定して他の要因には基準時点の状態量および機器性能値を設定した請求項5に記載する地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行し、これら二つの解析結果を比較することで、基準時点から評価時点までの間で、一の要因の変化がプラント熱効率に与えた影響を定量的に評価する機能を実現させることを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラムにある。
【0018】
かかる第6の態様では、基準時点から評価時点までの間に各要因の変化が地熱発電プラント全体の熱効率にどの程度寄与するかを解析することができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載する地熱発電プラントの性能評価プログラムにおいて、複数の要因それぞれについて順次、前記性能評価方法を適用することで、プラント熱効率低下の要因毎の影響量を定量的に明らかにする機能を備えることを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラムにある。
【0020】
かかる第7の態様では、基準時点から評価時点までの間において地熱発電プラント全体の熱効率が、複数の要因それぞれにおいてどの程度変化したかを評価することができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第6又は第7の態様に記載する地熱発電プラントの性能評価プログラムにおいて、計測時ごとに得られた前記実測値基準の熱効率解析結果に基づいて、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す機器性能関数を機器ごとに作成し、機器性能関数の独立変数である前記状態量に標準条件を設定し、前記計測値を機器性能関数の標準条件における値に換算して換算値を求め、前記入出力又は前記状態量が変化することによる影響を排除した地熱発電プラントの熱効率及び地熱発電プラントを構成する機器の性能の変化傾向を把握することを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラムにある。
【0022】
かかる第8の態様では、蒸気井条件、大気条件、運用変更など外部要因の影響を排して各機器の性能値の変化を正確に解析することができる。このような解析結果を得ることにより、熱効率を最も向上させる機器を得ることができ、また、各機器の修繕費用と、その熱効率向上による燃料削減比を比較することで、費用対効果の大きい機器を検討することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、実測値に基づいて、地熱発電プラントを構成する機器の性能値、当該性能値の変化、及び蒸気井条件や大気条件が地熱発電プラントの熱効率に与える影響を解析することができる地熱発電プラントの熱効率解析方法及び性能評価方法並びに熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】地熱発電プラントの概略構成図である。
【図2】実施形態に係る熱効率解析プログラムが実行されるコンピュータの概略構成図である。
【図3】実施形態に係る地熱発電プラントの熱効率解析プログラムの各処理ステップを表すフロー図である。
【図4】地熱発電プラントのタービンと復水器に関するプラント解析モデルの一部を示す概念図である。
【図5】復水器特性関数を表すグラフである。
【図6】復水器特性関数を表すグラフである。
【図7】実施形態に係る復水器特性関数を用いた機器性能基準解析の各ステップを表すフロー図である。
【図8】機器性能基準解析の結果を示すグラフである。
【図9】本実施形態に係る熱効率解析方法の各ステップを表すフロー図である。
【図10】機器性能関数の概念を示すグラフである。
【図11】実測値基準解析の結果の一例としてタービンの断熱効率を示すグラフである。
【図12】図11の断熱効率を標準条件における断熱効率に換算したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〈実施形態1〉
図1に基づいて、本発明の実施形態に係る熱効率解析プログラムの解析対象となる地熱発電プラントの構成を説明する。
【0026】
[解析対象の地熱発電プラントの構成]
図示するように、地熱発電プラント1(以下、「プラント1」と記載する。)は、地熱流体を噴出する蒸気井2を有している。地熱流体は、水蒸気と非凝縮性ガス、熱水(液体)が混ざり合った二相流体であり、汽水分離器(図示せず)により水蒸気と熱水に分離される。熱水は還元井から地下に戻され、水蒸気はタービン3に供給される。タービン3に供給された水蒸気は、タービン3で膨張され、発電動力が得られる。タービン3には、同軸で発電機4が接続されており、タービン3の発電動力により発電機4が駆動され、発電が行われる。
【0027】
タービン3で仕事を終えた排気蒸気は、復水器5に送られ、冷却水との直接接触で冷却され、凝縮する。排気蒸気が凝縮した水は冷却水と共に、冷却塔6で空冷され、一部は再度復水器5に冷却水として送られ、残りは外部に排出される。
【0028】
また、復水器5には、排気蒸気及び冷却水に含まれる非凝縮性ガスを除去するガス抽出装置7が設けられている。ガス抽出装置7により抽出された非凝縮性ガスは、冷却塔6より、外部に放風される。
【0029】
また、特に図示しないが、各機器には、各機器の入出力、例えば発電機の出力や、作動流体の状態量、すなわち温度や圧力や流量を計測する各種センサーが配置されている。各種センサーで計測された作動流体の温度等の計測値は、後述する解析の入力データとして用いられる。
【0030】
[熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムの目的]
本実施形態に係る熱効率解析プログラムは、このようなプラント1の構成、これを構成する各機器において実測した入出力に関する情報、及び各機器において実測した作動流体の状態量に基づいて、
(1)各機器の性能値を計算し、経年的な性能値の変化の傾向を解析する実測値基準解析(2)復水器の復水器特性関数を作成し、
(3)地熱発電プラントの熱効率に影響を与える要因毎に、復水器特性関数を用いた機器性能基準解析を行い、各要因の変化が熱効率に与える影響を評価する
という各機能をコンピュータに実現させるものである。
【0031】
また、本実施形態に係る性能評価プログラムは、基準時点と評価時点とを定め、基準時点から評価時点までの間に各要因の変化が地熱発電プラント全体の熱効率にどの程度寄与するかを解析する機能をコンピュータに実現させるものである。
【0032】
以下、本実施形態に係る熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムについて詳細に説明する。
【0033】
[ハードウェアの説明]
図2は、本実施形態に係る熱効率解析プログラムが実行されるコンピュータの概略構成図である。図示するように、コンピュータ30は、CPU31、RAM32、ROM33、記憶装置の一例であるハードディスク34、マウスやキーボード等の入力装置35、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置36、外部の機器との接続インタフェース37、通信手段38が設けられている。
【0034】
熱効率解析プログラムは、コンピュータ30で実行可能な命令からなり、インストールされてハードディスク34に記憶されている。実行時には、ハードディスク34からRAM32に読み込まれ、CPU31に命令が実行され、後述する各処理が実現される。
【0035】
[プラント解析モデル]
図3は、熱効率解析プログラムの各処理ステップを表すフロー図である。まず、熱効率解析プログラムは、地熱発電プラントのプラント解析モデルを作成する(ステップS1)。プラント解析モデルとは、各機器の熱物質収支及び特性を表す式を、各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたものである。
【0036】
具体的には、各機器について作動流体の組成、圧力、流量、及び熱量についての収支計算式を作成する。図4に、プラント1のタービン3及び復水器5に関するプラント解析モデルの一部を示す。
【0037】
図示するように、タービン3については、蒸気井2から供給される水蒸気の流量(in1)、タービン3で仕事を終えた水蒸気の流量(out1)、シール蒸気の流量(in2)、リーク蒸気の流量(out2)の流量バランスが示されている。
【0038】
復水器5については、復水器5に供給される排気蒸気の流量(in3)、復水器5で冷却され凝縮された水の流量(out3)、復水器5に供給される冷却水の流量(in4)、復水器5から抽出された気体の流量(out4)の流量バランスが示されている。
【0039】
また、実際のプラント1の構成に基づいて、タービン3からの排気蒸気(out2)が、復水器5に供給される(in3)という接続情報を作成する。このようにして、他の全ての機器についても同様に流量バランスを作成し、また、全ての機器間について接続情報を作成し、流量式に接続情報を代入し、各式を連立させてプラント解析モデルを作成する。同様に、作動流体の圧力及び熱量に関してもプラント解析モデルを作成する。
【0040】
[入力データ]
次に、熱効率解析プログラムは、プラント1の機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値の入力を行う(ステップS2)。
【0041】
作動流体の状態量の具体例としては、蒸気井2からの蒸気の流量、タービン3の出入口温度・圧力、復水器5の真空度、発電機4の出力などである。
【0042】
各機器の状態量は、所定期間に亘り計測日時と共に熱効率解析プログラムの入力データとされる。例えば計測器が各機器から作動流体の状態を計測し、そのデータをCSVなどの所定フォーマットのファイルとし、そのファイルをリムーバブルメディアに記録して、当該リムーバブルメディアからコンピュータ30に状態量を入力する。なお、入力手段はファイルを通信手段38からネットワークを介して計測器から取得してもよいし、計測器から接続インタフェース37を介して直接的に状態量をコンピュータ30のハードディスク34に記憶するようにしてもよい。
【0043】
ここで、シール蒸気・リーク蒸気以外の流量は、上述したように各機器に設けられた各種センサーにより得られる計測値が入力される。一方、センサーで直接的に計測できないシール蒸気・リーク蒸気については、タービン3の特性として入力される。
【0044】
特性とは、各機器の作動流体の状態量同士の関係や、状態量と各機器の性能値との関係をいう。例えば、熱平衡線図に基づいて、タービン3の入口流量(in1)とリーク蒸気の流量(out2)との関係を求めて関数を作成し、この関数と実際のタービン3の入口流量から、リーク蒸気の流量を計算し、その値をタービン3のリーク蒸気としてプラント解析モデルに入力することで、タービン3の正味の効率を得ることができる。
【0045】
このように、直接的に計測値が得られないものについては、機器の特性に基づいた値を入力する。例えば、冷却塔6における冷却水への空気溶解度は、冷却水温度の関数として設定することができる。
【0046】
[実測値基準解析]
このように実測して得た各機器の状態量と、プラント解析モデルとに基づいて、熱物質収支解析を行う(図3ステップS3)。実測した状態量を用いて熱物質収支解析を行うことを、本発明では実測値基準解析と称する。
【0047】
具体的には、状態量を計測した時刻ごとに、その状態量を用いてプラント解析モデルを解く。解法は、従来からの逐次計算法や線形計算法を用いることもできるが、本願発明者らが開発した手法(特開2001−101159号公報)を用いることが好ましい。
【0048】
プラント解析モデルは、各機器の作動流体の温度・圧力・流量・組成等が満たすべき関係式を表しており、これを解くことで各機器の作動流体の状態が計算される。ここで、各機器については、作動流体の状態から機器の性能値を求める式が定義されており、熱効率解析プログラムは、当該式に基づいて計算により求めた作動流体から各機器の性能値を計算する。
【0049】
表1に、実測値基準解析を行う、すなわち、プラント解析モデルを解くに際して用いる各機器の入力項目と、実測値基準解析により得られる出力項目を例示する。これらの入出力項目は、表1のものに限定されず、地熱発電プラントの構成や得られる計測値に応じて適宜設定する。
【0050】
【表1】
【0051】
プラント解析モデルからプラント1全体の熱効率や各機器の性能値(出力項目)が計算できる。上述したように、状態量は所定期間に亘り蓄積されているので、ここで得られる熱効率や性能値も、時系列で得られることとなる。
【0052】
[復水器特性関数の作成]
次に、復水器特性関数を作成する(図3ステップS4)。これ以降の計算は性能評価プログラムが主体的に実行する。復水器特性関数とは、復水器5に流入する蒸気流量及び冷却塔より供給される冷却水温度と、復水器5の真空度との特性を表す関数をいう。
【0053】
図5に復水器特性関数を例示する。横軸に復水器5の冷却水温度、縦軸に真空度をとり、実測値基準解析の結果が十字型の各点として示されている。
【0054】
本事例では、十字型の点は、大きく3つの群X1〜X3を構成している。この結果から、復水器5の冷却水量がポンプ、バルブ等によって制御されていない場合には、蒸気井2から復水器5に流入する蒸気流量よって冷却水温度と真空度の関係の傾向が異なる、との知見を得た。そこで、流入する蒸気流量が所定の範囲にある時の冷却水温度と真空度(群X1)について、基準となる復水器特性関数を作成した。具体的には、群X1について最小二乗法を適用して得られた曲線が復水器特性関数fである。
【0055】
[機器性能基準解析]
次に、プラント1の各要因の変化がプラント1の熱効率に及ぼす影響を、復水器特性関数を用いた機器性能基準解析により計算する(図3ステップS5)。
【0056】
プラント1の熱効率に影響を与える要因としては、復水器特性、蒸気井特性、タービン性能、大気条件、冷却塔性能が挙げられ、表2に示すような項目の変化がプラント1の熱効率に影響を与える。また、各要因の変化がプラント1の熱効率に及ぼす影響とは、基準となる時点(基準時点)と評価対象となる時点(評価時点)とを定め、基準時点から評価時点までの間に、表2に示すような特性の一つが変化したとき、プラント1の熱効率が変化した量をいう。
【0057】
【表2】
【0058】
ここで、地熱発電プラントにおいては、各要因の変化は、それぞれ、復水器の真空度に影響を与えるので、各要因の変化が復水器の真空度に与える影響を復水器特性関数に基づいて機器性能基準による熱物質収支解析(機器性能基準解析と称する。)を行う。具体的には次のように行う。
【0059】
まず、復水器特性関数を定める。具体的には、図5に示したように、復水器の真空度と冷却水温度の関係は、復水器5に流入する蒸気流量で傾向が異なるため、復水器特性関数fは、蒸気の流量によって垂直に遷移すると仮定する。そして、図6に示すように、基準時点及び評価時点における冷却水温度及び真空度(点P、点Q)を通るように遷移(例えば平行移動など)させた復水器特性関数f1、f2を作成し、基準時点においてはf1を、評価時点においてはf2を用いる。
【0060】
次に、或る一つの要因、例えば、蒸気井2の蒸気量の変化がプラント1に与える影響を評価する場合、表1の入力項目のうち蒸気井2の蒸気量にのみ評価時点の値を設定し、他の入力項目については基準時点の条件値及び機器性能値を設定し、また、復水器の真空度については、復水器特性関数f1、f2を設定し、プラント解析モデルについて解く。条件値とは、計測値、性能値のうち任意の項目をいう。
【0061】
具体的には、図7に示すように、条件値の変化、本例では蒸気井2の蒸気量が変化した際における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出する(ステップS10)。次に、得られた復水器流入蒸気流量を用いて復水器特性関数より復水器5の真空度(第1真空度と呼ぶ)を算出する(ステップS11)。次に、得られた第1真空度、蒸気井2の蒸気量、及び各構成機器の性能値を用いて、地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出する(ステップS12)。そして、得られた復水器冷却水温度を用いて復水器特性関数より復水器5の真空度(第2真空度と呼ぶ)を算出する(ステップS13)。第1真空度及び第2真空度の値を比較し(ステップS14)、これらが等しくなるまでステップS10〜ステップS13の計算を繰り返して収束を図り、プラント全体の熱平衡状態を算出する(ステップS15)。
【0062】
これにより、復水器の真空度に基づいて各要因がプラント1の熱効率に与える影響を機器性能基準解析の結果より評価することができる。すなわち、各要因の変化が復水器の真空度に与えた影響を加味した上で、一つの要因について基準時点から評価時点に至る間に性能変化した場合に、プラント1の熱効率がどの程度変化するかを得ることができる。
【0063】
図8に、機器性能基準解析の結果を示す。同図の点線より右側には、基準時点から評価時点までの間に、各要因の変化がプラント1の熱効率に与える影響を表す棒グラフが示されている。例えば、蒸気井特性の変化は、プラント1の熱効率にプラスの影響を及ぼし、定量的には、基準時点から評価時点までの間に約0.2%向上していると評価できる。このように、一つの要因の変化がプラント1の熱効率に与える影響を評価できる。
【0064】
同様に、タービン性能、大気条件、冷却塔性能、復水器冷却水流量についても機器性能基準解析を行って、プラント1の熱効率への影響を計算する。同図に示すように、各要因の変化がプラント1の熱効率に、正又は負の影響を及ぼし、定量的には、要因ごとに様々であることが分かる。
【0065】
このように各要因の変化がプラント1の熱効率に与える影響を定量的に評価したのち、プラント1の熱効率低下要因の要因ごとの影響を定量的に明らかにする。すなわち、同図の点線の左側に示すように、各要因の変化を合計することで、基準時点から評価時点までの間においてプラント1全体の熱効率がどの程度変化したかを評価する。同図に示す場合には、+0.05%程度であることが分かる。
【0066】
[出力]
以上のステップで計算した結果、プラント1の熱効率、及び当該熱効率に対して各要因が及ぼす影響(図8参照)を出力装置36に出力する(図3ステップS6)。
【0067】
[熱効率解析プログラムの効果]
以上に説明した地熱発電プラントの熱効率解析プログラムでは、実測した状態量とプラント解析モデルに基づいて実測値基準解析を行うことにより、各機器の性能値や熱効率を経年的に計算することができる。
【0068】
そして、この結果から、復水器特性関数を作成し、これを用いて、機器性能基準解析を行うことにより、基準時点から評価時点までの間に各要因の変化がプラント1全体の熱効率にどの程度寄与するかを解析することができる。このような解析結果を得ることにより、熱効率を最も向上させる機器を得ることができ、また、各機器の修繕費用と、その熱効率の向上による燃料削減費を比較することで、費用対効果の大きい機器を検討することができる。
【0069】
[熱効率解析方法]
なお、上述したように、コンピュータ30で地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行させる場合に限らず、以下のステップを実行することによっても同様の効果を得ることができる。すなわち、図9に示すように、プラント1を構成する各機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を得る(ステップS20)。また、プラント解析モデルの作成を行う(ステップS21)。次に、これらの状態量、プラント解析モデルに基づいて実測値基準解析を行って各機器の性能値及びプラント1の熱効率を得る(ステップS22)。次に、復水器特性関数の作成を行い(ステップS23)、該復水器特性関数と、計測した状態量と、各機器の性能値と、プラント解析モデルとに基づいて機器性能基準解析を行って(ステップS24)、プラント1の熱効率に対する各要因の変化の影響を得る。このようにして得られた結果から、どの機器について補修をすれば全体の熱効率が向上するかを評価することができる。
【0070】
〈実施形態2〉
[機器性能関数の作成]
実施形態1においては、実測値基準解析を実施して得られた結果を用いて、復水器特性関数を作成し、機器性能基準解析を行ったが、実測値基準解析で得られた結果を標準条件における値に換算してもよい。
【0071】
具体的には、実測値基準解析の後、その解析結果に基づいて、機器ごとに機器性能関数を作成する。機器性能関数とは、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す関数である。
【0072】
図10に機器性能関数の概念を示す。図示するように、横軸にタービン3の作動流体の状態量、縦軸に断熱効率をとり、実測値基準解析の結果を十字型の各点に示した。上側の一群は第L年目の計測値に基づく結果であり、下側の一群は第M年目の計測値に基づく結果である。
【0073】
第L年目のある時点での断熱効率Aと、第M年目のある時点での断熱効率Bの値は同程度であるが、作動流体の状態量が異なっている。
【0074】
そこで、例えば、第L年目、第M年目の各群について、断熱効率から最小二乗法などにより関数f1、f2の傾きを求める。それらの関数f1、f2がA、Bを通るように定数項を求めて機器性能関数f1’、f2’とする。
【0075】
なお、第L年目、第M年目のように年ごとに区切って機器性能関数を求めたが、範囲は任意である。例えば、経年劣化、設備改造、運転状態の違いによって、各機器の任意の状態量と性能値との関係に差異が生じる場合(図5に示すように性能値が傾きの異なる複数の群となるような場合など)、その差異ごとに機器性能関数を求めてもよい。これにより、傾きの異なる性能値群ごとに適切な傾きの機器性能関数を得ることができる。
【0076】
[機器性能関数を用いた性能値の換算]
次に、機器性能関数を用いて標準条件における性能値の換算を行う。すなわち、状態量のうち、任意の値を標準条件として設定し、その標準条件における各機器の性能値を機器性能関数から求める。すなわち、各機器の機器性能関数に標準条件の値を入力することで、標準条件における性能値が得られる。この標準条件における性能値を換算値と称する。
【0077】
例えば、図10に示したように、ある時点においては点Aに示す断熱効率である場合、機器性能関数f1’を用い、標準条件における断熱効率A’を求める。同様に点Bに示す断熱効率である場合、機器性能関数f2’を用い、標準条件における断熱効率B’を求める。
【0078】
特に、タービンにおいては、蒸気井2の噴気条件によってタービン入口圧力が、大気温度の変化によりタービン排気圧力が変化するため、それらの状態量は上述の外部変動の影響を受けやすく、結果として性能値は外部変動の影響を含んだものとなる。
【0079】
しかしながら、性能値を標準条件におけるものに換算することで作動流体を同じ条件としたときの性能値(以下、換算値と称する。)が得られることになり、外部変動の影響を排した性能の比較を行えることとなる。
【0080】
図11及び図12に、実測値基準解析で求めた性能値と、当該性能値を機器性能関数で換算した結果を示す。図11は、横軸に日時を取り、縦軸に実測値基準解析により得られた断熱効率を取り、その結果をプロットしたグラフである。
【0081】
図示するように、断熱効率は、第L、M、N年目のそれぞれで実施した補修により、それぞれ異なる傾きの群を成している。第M年目、第N年目の始めにおいてはそれ以前に比べて向上しているものの、全体的に断熱効率は劣化傾向にある。ただし、上述したように実測値基準解析により得られた性能値は、標準条件におけるものではなく、様々な状態量におけるものとなっている。例えば、AとBとでは、全く異なる状態量における断熱効率となっている。
【0082】
図12に、図10の機器性能関数を用いて、図11に示した断熱効率を換算したものを示す。図12における第L年目の断熱効率(点A)は、図10の関数f1の傾きとその断熱効率(点A)を通る点とに基づいて作成された機器性能関数f1’において、標準条件のときの断熱効率(点A’)に換算され、図12に示されている(第L年目の点A以外の断熱効率についても同様)。第M、N年目についても同様であり、図11における断熱効率(点B)もB’に換算されて示されている。
【0083】
図示するように、断熱効率が標準条件におけるものに換算された結果、劣化傾向の程度が緩やかであることがわかる。すなわち、標準条件に換算する前においては、劣化傾向にあると思われたものは、季節変動によるものが大きく、季節変動を除けば実際には、機器自体の性能はそれほど劣化していないことが分かる。
【0084】
このようにして得られた換算値を用いて、実施形態1に説明したように復水器特性関数を作成し、さらに機器性能基準解析を行う。これにより、外部要因を排除して、各要因の変化がプラント1の熱効率に与える影響を評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
地熱発電プラントを運転し、保守、点検等を行う産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 地熱発電プラント
2 蒸気井
3 タービン
4 発電機
5 復水器
6 冷却塔
7 ガス抽出装置
30 コンピュータ
31 CPU
32 RAM
33 ROM
34 ハードディスク
35 入力装置
36 出力装置
37 接続インタフェース
38 通信手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、地熱発電プラントの熱効率や機器の性能値を評価する地熱発電プラントの熱効率解析方法及び性能評価方法並びに熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント、地熱発電プラント、原子力発電プラントなどの発電プラントにおいては、燃料節約・発電コスト低減の観点から、熱効率を維持・向上することが重要な課題となっている。このため、発電プラントにおいては、発電プラントを構成する各機器の作動流体の状態量を日々計測したり、定期的な性能試験を実施したり、発電プラントの熱効率及び発電プラントを構成する機器の性能値の管理が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
火力発電プラントの熱効率管理は、損失法や入出熱法により行われ、火力発電プラントの構成に応じた各種指標で管理されており、解析手法が確立されている。一方、地熱発電プラントの熱効率管理については、そのような解析手法が確立されていないのが現状である。
【0004】
地熱発電プラントでは、蒸気井の噴気状態(蒸気量、圧力、ガス含有率)や大気条件が大きく変化するため、火力発電プラントと比べて、地熱発電プラントを構成する機器の性能を個別に正しく見積もることが困難である。さらに地熱発電プラントでは直接接触式復水器を採用しているため、各要因がプラントの熱効率へ及ぼす影響を実測値を用いて解析しようとしても、大気条件、各機器性能、運用状態によって復水器性能(真空度)が変化してしまい、熱効率への影響度を要因毎に正しく算出することが困難である。したがって、地熱発電プラントのどの機器を補修すれば熱効率を効果的に改善できるかを見積もることも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−229820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑み、実測値に基づいて、地熱発電プラントを構成する機器の性能値、当該性能値の変化、及び蒸気井条件や大気条件が地熱発電プラントの熱効率に与える影響を解析することができる地熱発電プラントの熱効率解析方法及び性能評価方法並びに熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、地熱発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を得て、各機器の熱物質収支及び特性を表す式を各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたプラント解析モデルを作成し、前記プラント解析モデルに前記計測値を入力して、当該計測値を得た計測時ごとの実測値基準の熱物質収支解析を行い地熱発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求め、前記性能値より地熱発電プラントを構成する機器の一つである復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を作成し、(1)前記計測値、前記性能値の内、任意の項目(条件値)を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出し、(2)得られた復水器流入蒸気流量を用いて前記復水器特性関数より第1真空度を算出し、(3)得られた第1真空度、前記条件値、及び前記性能値を用いて、地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、(4)得られた復水器冷却水温度を用いて前記復水器特性関数より第2真空度を算出し、前記第1真空度及び前記第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図ることを特徴とする地熱発電プラントの熱効率解析方法にある。
【0008】
かかる第1の態様では、現状の設備構成における要素機器の性能値を評価することができる。また、得られた機器性能値を基に、各熱効率低下要因による復水器性能(真空度)の変化を考慮して、各要因が地熱発電プラントの熱効率に与える影響を評価することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、基準時点及び評価時点を定め、基準時点における請求項1に記載する地熱発電プラントの熱効率解析方法を行うとともに、一の要因にのみ評価時点の状態量および機器性能値を設定して他の要因には基準時点の状態量および機器性能値を設定した請求項1に記載する地熱発電プラントの熱効率解析方法を行い、これら二つの解析結果を比較することで、基準時点から評価時点までの間で、一の要因の変化がプラント熱効率に与えた影響を定量的に評価することを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法にある。
【0010】
かかる第2の態様では、基準時点から評価時点までの間に各要因の変化が地熱発電プラント全体の熱効率にどの程度寄与するかを解析することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する地熱発電プラントの性能評価方法において、複数の要因それぞれについて順次、前記性能評価方法を適用することで、プラント熱効率低下の要因毎の影響量を定量的に明らかにすることを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法にある。
【0012】
かかる第3の態様では、基準時点から評価時点までの間において地熱発電プラント全体の熱効率が、複数の要因それぞれにおいてどの程度変化したかを評価することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第2又は第3の態様に記載する地熱発電プラントの性能評価方法において、計測時ごとに得られた前記実測値基準の熱効率解析結果に基づいて、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す機器性能関数を機器ごとに作成し、機器性能関数の独立変数である前記状態量に標準条件を設定し、前記計測値を機器性能関数の標準条件における値に換算して換算値を求め、前記入出力又は前記状態量が変化することによる影響を排除した地熱発電プラントの熱効率及び地熱発電プラントを構成する機器の性能の変化傾向を把握することを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法にある。
【0014】
かかる第4の態様では、蒸気井条件、大気条件、運用変更など外部要因の影響を排して各機器の性能値の変化を正確に解析することができる。このような解析結果を得ることにより、熱効率を最も向上させる機器を得ることができ、また、各機器の修繕費用と、その熱効率向上による燃料削減比を比較することで、費用対効果の大きい機器を検討することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、コンピュータに、発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を入力する機能と、各機器の熱物質収支及び特性を表す式を各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたプラント解析モデルを作成する機能と、前記プラント解析モデルに前記計測値を入力して、当該計測値を得た計測時ごとの実測値基準の熱物質収支解析を行い発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求める機能と、前記性能値より地熱発電プラントを構成する機器の一つである復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を前記プラント解析モデルに組み込む機能と、(1)前記計測値、前記性能値の内、任意の項目(条件値)を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出し、(2)得られた復水器流入蒸気流量を用いて前記復水器特性関数より第1真空度を算出し、(3)得られた第1真空度、前記条件値、及び前記性能値を用いて、地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、(4)得られた復水器冷却水温度を用いて前記復水器特性関数より第2真空度を算出し、前記第1真空度及び前記第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図る機能とを実現させることを特徴とする地熱発電プラントの熱効率解析プログラムにある。
【0016】
かかる第5の態様では、現状の設備構成における要素機器の性能値を評価することができる。また、得られた機器性能値を基に、各熱効率低下要因による復水器性能(真空度)の変化を考慮して、各要因が地熱発電プラントの熱効率に与える影響を評価することができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、コンピュータに、基準時点及び評価時点を定め、基準時点における請求項5に記載する地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行するとともに、一の要因にのみ評価時点の状態量および機器性能値を設定して他の要因には基準時点の状態量および機器性能値を設定した請求項5に記載する地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行し、これら二つの解析結果を比較することで、基準時点から評価時点までの間で、一の要因の変化がプラント熱効率に与えた影響を定量的に評価する機能を実現させることを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラムにある。
【0018】
かかる第6の態様では、基準時点から評価時点までの間に各要因の変化が地熱発電プラント全体の熱効率にどの程度寄与するかを解析することができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載する地熱発電プラントの性能評価プログラムにおいて、複数の要因それぞれについて順次、前記性能評価方法を適用することで、プラント熱効率低下の要因毎の影響量を定量的に明らかにする機能を備えることを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラムにある。
【0020】
かかる第7の態様では、基準時点から評価時点までの間において地熱発電プラント全体の熱効率が、複数の要因それぞれにおいてどの程度変化したかを評価することができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第6又は第7の態様に記載する地熱発電プラントの性能評価プログラムにおいて、計測時ごとに得られた前記実測値基準の熱効率解析結果に基づいて、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す機器性能関数を機器ごとに作成し、機器性能関数の独立変数である前記状態量に標準条件を設定し、前記計測値を機器性能関数の標準条件における値に換算して換算値を求め、前記入出力又は前記状態量が変化することによる影響を排除した地熱発電プラントの熱効率及び地熱発電プラントを構成する機器の性能の変化傾向を把握することを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラムにある。
【0022】
かかる第8の態様では、蒸気井条件、大気条件、運用変更など外部要因の影響を排して各機器の性能値の変化を正確に解析することができる。このような解析結果を得ることにより、熱効率を最も向上させる機器を得ることができ、また、各機器の修繕費用と、その熱効率向上による燃料削減比を比較することで、費用対効果の大きい機器を検討することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、実測値に基づいて、地熱発電プラントを構成する機器の性能値、当該性能値の変化、及び蒸気井条件や大気条件が地熱発電プラントの熱効率に与える影響を解析することができる地熱発電プラントの熱効率解析方法及び性能評価方法並びに熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】地熱発電プラントの概略構成図である。
【図2】実施形態に係る熱効率解析プログラムが実行されるコンピュータの概略構成図である。
【図3】実施形態に係る地熱発電プラントの熱効率解析プログラムの各処理ステップを表すフロー図である。
【図4】地熱発電プラントのタービンと復水器に関するプラント解析モデルの一部を示す概念図である。
【図5】復水器特性関数を表すグラフである。
【図6】復水器特性関数を表すグラフである。
【図7】実施形態に係る復水器特性関数を用いた機器性能基準解析の各ステップを表すフロー図である。
【図8】機器性能基準解析の結果を示すグラフである。
【図9】本実施形態に係る熱効率解析方法の各ステップを表すフロー図である。
【図10】機器性能関数の概念を示すグラフである。
【図11】実測値基準解析の結果の一例としてタービンの断熱効率を示すグラフである。
【図12】図11の断熱効率を標準条件における断熱効率に換算したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〈実施形態1〉
図1に基づいて、本発明の実施形態に係る熱効率解析プログラムの解析対象となる地熱発電プラントの構成を説明する。
【0026】
[解析対象の地熱発電プラントの構成]
図示するように、地熱発電プラント1(以下、「プラント1」と記載する。)は、地熱流体を噴出する蒸気井2を有している。地熱流体は、水蒸気と非凝縮性ガス、熱水(液体)が混ざり合った二相流体であり、汽水分離器(図示せず)により水蒸気と熱水に分離される。熱水は還元井から地下に戻され、水蒸気はタービン3に供給される。タービン3に供給された水蒸気は、タービン3で膨張され、発電動力が得られる。タービン3には、同軸で発電機4が接続されており、タービン3の発電動力により発電機4が駆動され、発電が行われる。
【0027】
タービン3で仕事を終えた排気蒸気は、復水器5に送られ、冷却水との直接接触で冷却され、凝縮する。排気蒸気が凝縮した水は冷却水と共に、冷却塔6で空冷され、一部は再度復水器5に冷却水として送られ、残りは外部に排出される。
【0028】
また、復水器5には、排気蒸気及び冷却水に含まれる非凝縮性ガスを除去するガス抽出装置7が設けられている。ガス抽出装置7により抽出された非凝縮性ガスは、冷却塔6より、外部に放風される。
【0029】
また、特に図示しないが、各機器には、各機器の入出力、例えば発電機の出力や、作動流体の状態量、すなわち温度や圧力や流量を計測する各種センサーが配置されている。各種センサーで計測された作動流体の温度等の計測値は、後述する解析の入力データとして用いられる。
【0030】
[熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムの目的]
本実施形態に係る熱効率解析プログラムは、このようなプラント1の構成、これを構成する各機器において実測した入出力に関する情報、及び各機器において実測した作動流体の状態量に基づいて、
(1)各機器の性能値を計算し、経年的な性能値の変化の傾向を解析する実測値基準解析(2)復水器の復水器特性関数を作成し、
(3)地熱発電プラントの熱効率に影響を与える要因毎に、復水器特性関数を用いた機器性能基準解析を行い、各要因の変化が熱効率に与える影響を評価する
という各機能をコンピュータに実現させるものである。
【0031】
また、本実施形態に係る性能評価プログラムは、基準時点と評価時点とを定め、基準時点から評価時点までの間に各要因の変化が地熱発電プラント全体の熱効率にどの程度寄与するかを解析する機能をコンピュータに実現させるものである。
【0032】
以下、本実施形態に係る熱効率解析プログラム及び性能評価プログラムについて詳細に説明する。
【0033】
[ハードウェアの説明]
図2は、本実施形態に係る熱効率解析プログラムが実行されるコンピュータの概略構成図である。図示するように、コンピュータ30は、CPU31、RAM32、ROM33、記憶装置の一例であるハードディスク34、マウスやキーボード等の入力装置35、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置36、外部の機器との接続インタフェース37、通信手段38が設けられている。
【0034】
熱効率解析プログラムは、コンピュータ30で実行可能な命令からなり、インストールされてハードディスク34に記憶されている。実行時には、ハードディスク34からRAM32に読み込まれ、CPU31に命令が実行され、後述する各処理が実現される。
【0035】
[プラント解析モデル]
図3は、熱効率解析プログラムの各処理ステップを表すフロー図である。まず、熱効率解析プログラムは、地熱発電プラントのプラント解析モデルを作成する(ステップS1)。プラント解析モデルとは、各機器の熱物質収支及び特性を表す式を、各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたものである。
【0036】
具体的には、各機器について作動流体の組成、圧力、流量、及び熱量についての収支計算式を作成する。図4に、プラント1のタービン3及び復水器5に関するプラント解析モデルの一部を示す。
【0037】
図示するように、タービン3については、蒸気井2から供給される水蒸気の流量(in1)、タービン3で仕事を終えた水蒸気の流量(out1)、シール蒸気の流量(in2)、リーク蒸気の流量(out2)の流量バランスが示されている。
【0038】
復水器5については、復水器5に供給される排気蒸気の流量(in3)、復水器5で冷却され凝縮された水の流量(out3)、復水器5に供給される冷却水の流量(in4)、復水器5から抽出された気体の流量(out4)の流量バランスが示されている。
【0039】
また、実際のプラント1の構成に基づいて、タービン3からの排気蒸気(out2)が、復水器5に供給される(in3)という接続情報を作成する。このようにして、他の全ての機器についても同様に流量バランスを作成し、また、全ての機器間について接続情報を作成し、流量式に接続情報を代入し、各式を連立させてプラント解析モデルを作成する。同様に、作動流体の圧力及び熱量に関してもプラント解析モデルを作成する。
【0040】
[入力データ]
次に、熱効率解析プログラムは、プラント1の機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値の入力を行う(ステップS2)。
【0041】
作動流体の状態量の具体例としては、蒸気井2からの蒸気の流量、タービン3の出入口温度・圧力、復水器5の真空度、発電機4の出力などである。
【0042】
各機器の状態量は、所定期間に亘り計測日時と共に熱効率解析プログラムの入力データとされる。例えば計測器が各機器から作動流体の状態を計測し、そのデータをCSVなどの所定フォーマットのファイルとし、そのファイルをリムーバブルメディアに記録して、当該リムーバブルメディアからコンピュータ30に状態量を入力する。なお、入力手段はファイルを通信手段38からネットワークを介して計測器から取得してもよいし、計測器から接続インタフェース37を介して直接的に状態量をコンピュータ30のハードディスク34に記憶するようにしてもよい。
【0043】
ここで、シール蒸気・リーク蒸気以外の流量は、上述したように各機器に設けられた各種センサーにより得られる計測値が入力される。一方、センサーで直接的に計測できないシール蒸気・リーク蒸気については、タービン3の特性として入力される。
【0044】
特性とは、各機器の作動流体の状態量同士の関係や、状態量と各機器の性能値との関係をいう。例えば、熱平衡線図に基づいて、タービン3の入口流量(in1)とリーク蒸気の流量(out2)との関係を求めて関数を作成し、この関数と実際のタービン3の入口流量から、リーク蒸気の流量を計算し、その値をタービン3のリーク蒸気としてプラント解析モデルに入力することで、タービン3の正味の効率を得ることができる。
【0045】
このように、直接的に計測値が得られないものについては、機器の特性に基づいた値を入力する。例えば、冷却塔6における冷却水への空気溶解度は、冷却水温度の関数として設定することができる。
【0046】
[実測値基準解析]
このように実測して得た各機器の状態量と、プラント解析モデルとに基づいて、熱物質収支解析を行う(図3ステップS3)。実測した状態量を用いて熱物質収支解析を行うことを、本発明では実測値基準解析と称する。
【0047】
具体的には、状態量を計測した時刻ごとに、その状態量を用いてプラント解析モデルを解く。解法は、従来からの逐次計算法や線形計算法を用いることもできるが、本願発明者らが開発した手法(特開2001−101159号公報)を用いることが好ましい。
【0048】
プラント解析モデルは、各機器の作動流体の温度・圧力・流量・組成等が満たすべき関係式を表しており、これを解くことで各機器の作動流体の状態が計算される。ここで、各機器については、作動流体の状態から機器の性能値を求める式が定義されており、熱効率解析プログラムは、当該式に基づいて計算により求めた作動流体から各機器の性能値を計算する。
【0049】
表1に、実測値基準解析を行う、すなわち、プラント解析モデルを解くに際して用いる各機器の入力項目と、実測値基準解析により得られる出力項目を例示する。これらの入出力項目は、表1のものに限定されず、地熱発電プラントの構成や得られる計測値に応じて適宜設定する。
【0050】
【表1】
【0051】
プラント解析モデルからプラント1全体の熱効率や各機器の性能値(出力項目)が計算できる。上述したように、状態量は所定期間に亘り蓄積されているので、ここで得られる熱効率や性能値も、時系列で得られることとなる。
【0052】
[復水器特性関数の作成]
次に、復水器特性関数を作成する(図3ステップS4)。これ以降の計算は性能評価プログラムが主体的に実行する。復水器特性関数とは、復水器5に流入する蒸気流量及び冷却塔より供給される冷却水温度と、復水器5の真空度との特性を表す関数をいう。
【0053】
図5に復水器特性関数を例示する。横軸に復水器5の冷却水温度、縦軸に真空度をとり、実測値基準解析の結果が十字型の各点として示されている。
【0054】
本事例では、十字型の点は、大きく3つの群X1〜X3を構成している。この結果から、復水器5の冷却水量がポンプ、バルブ等によって制御されていない場合には、蒸気井2から復水器5に流入する蒸気流量よって冷却水温度と真空度の関係の傾向が異なる、との知見を得た。そこで、流入する蒸気流量が所定の範囲にある時の冷却水温度と真空度(群X1)について、基準となる復水器特性関数を作成した。具体的には、群X1について最小二乗法を適用して得られた曲線が復水器特性関数fである。
【0055】
[機器性能基準解析]
次に、プラント1の各要因の変化がプラント1の熱効率に及ぼす影響を、復水器特性関数を用いた機器性能基準解析により計算する(図3ステップS5)。
【0056】
プラント1の熱効率に影響を与える要因としては、復水器特性、蒸気井特性、タービン性能、大気条件、冷却塔性能が挙げられ、表2に示すような項目の変化がプラント1の熱効率に影響を与える。また、各要因の変化がプラント1の熱効率に及ぼす影響とは、基準となる時点(基準時点)と評価対象となる時点(評価時点)とを定め、基準時点から評価時点までの間に、表2に示すような特性の一つが変化したとき、プラント1の熱効率が変化した量をいう。
【0057】
【表2】
【0058】
ここで、地熱発電プラントにおいては、各要因の変化は、それぞれ、復水器の真空度に影響を与えるので、各要因の変化が復水器の真空度に与える影響を復水器特性関数に基づいて機器性能基準による熱物質収支解析(機器性能基準解析と称する。)を行う。具体的には次のように行う。
【0059】
まず、復水器特性関数を定める。具体的には、図5に示したように、復水器の真空度と冷却水温度の関係は、復水器5に流入する蒸気流量で傾向が異なるため、復水器特性関数fは、蒸気の流量によって垂直に遷移すると仮定する。そして、図6に示すように、基準時点及び評価時点における冷却水温度及び真空度(点P、点Q)を通るように遷移(例えば平行移動など)させた復水器特性関数f1、f2を作成し、基準時点においてはf1を、評価時点においてはf2を用いる。
【0060】
次に、或る一つの要因、例えば、蒸気井2の蒸気量の変化がプラント1に与える影響を評価する場合、表1の入力項目のうち蒸気井2の蒸気量にのみ評価時点の値を設定し、他の入力項目については基準時点の条件値及び機器性能値を設定し、また、復水器の真空度については、復水器特性関数f1、f2を設定し、プラント解析モデルについて解く。条件値とは、計測値、性能値のうち任意の項目をいう。
【0061】
具体的には、図7に示すように、条件値の変化、本例では蒸気井2の蒸気量が変化した際における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出する(ステップS10)。次に、得られた復水器流入蒸気流量を用いて復水器特性関数より復水器5の真空度(第1真空度と呼ぶ)を算出する(ステップS11)。次に、得られた第1真空度、蒸気井2の蒸気量、及び各構成機器の性能値を用いて、地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出する(ステップS12)。そして、得られた復水器冷却水温度を用いて復水器特性関数より復水器5の真空度(第2真空度と呼ぶ)を算出する(ステップS13)。第1真空度及び第2真空度の値を比較し(ステップS14)、これらが等しくなるまでステップS10〜ステップS13の計算を繰り返して収束を図り、プラント全体の熱平衡状態を算出する(ステップS15)。
【0062】
これにより、復水器の真空度に基づいて各要因がプラント1の熱効率に与える影響を機器性能基準解析の結果より評価することができる。すなわち、各要因の変化が復水器の真空度に与えた影響を加味した上で、一つの要因について基準時点から評価時点に至る間に性能変化した場合に、プラント1の熱効率がどの程度変化するかを得ることができる。
【0063】
図8に、機器性能基準解析の結果を示す。同図の点線より右側には、基準時点から評価時点までの間に、各要因の変化がプラント1の熱効率に与える影響を表す棒グラフが示されている。例えば、蒸気井特性の変化は、プラント1の熱効率にプラスの影響を及ぼし、定量的には、基準時点から評価時点までの間に約0.2%向上していると評価できる。このように、一つの要因の変化がプラント1の熱効率に与える影響を評価できる。
【0064】
同様に、タービン性能、大気条件、冷却塔性能、復水器冷却水流量についても機器性能基準解析を行って、プラント1の熱効率への影響を計算する。同図に示すように、各要因の変化がプラント1の熱効率に、正又は負の影響を及ぼし、定量的には、要因ごとに様々であることが分かる。
【0065】
このように各要因の変化がプラント1の熱効率に与える影響を定量的に評価したのち、プラント1の熱効率低下要因の要因ごとの影響を定量的に明らかにする。すなわち、同図の点線の左側に示すように、各要因の変化を合計することで、基準時点から評価時点までの間においてプラント1全体の熱効率がどの程度変化したかを評価する。同図に示す場合には、+0.05%程度であることが分かる。
【0066】
[出力]
以上のステップで計算した結果、プラント1の熱効率、及び当該熱効率に対して各要因が及ぼす影響(図8参照)を出力装置36に出力する(図3ステップS6)。
【0067】
[熱効率解析プログラムの効果]
以上に説明した地熱発電プラントの熱効率解析プログラムでは、実測した状態量とプラント解析モデルに基づいて実測値基準解析を行うことにより、各機器の性能値や熱効率を経年的に計算することができる。
【0068】
そして、この結果から、復水器特性関数を作成し、これを用いて、機器性能基準解析を行うことにより、基準時点から評価時点までの間に各要因の変化がプラント1全体の熱効率にどの程度寄与するかを解析することができる。このような解析結果を得ることにより、熱効率を最も向上させる機器を得ることができ、また、各機器の修繕費用と、その熱効率の向上による燃料削減費を比較することで、費用対効果の大きい機器を検討することができる。
【0069】
[熱効率解析方法]
なお、上述したように、コンピュータ30で地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行させる場合に限らず、以下のステップを実行することによっても同様の効果を得ることができる。すなわち、図9に示すように、プラント1を構成する各機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を得る(ステップS20)。また、プラント解析モデルの作成を行う(ステップS21)。次に、これらの状態量、プラント解析モデルに基づいて実測値基準解析を行って各機器の性能値及びプラント1の熱効率を得る(ステップS22)。次に、復水器特性関数の作成を行い(ステップS23)、該復水器特性関数と、計測した状態量と、各機器の性能値と、プラント解析モデルとに基づいて機器性能基準解析を行って(ステップS24)、プラント1の熱効率に対する各要因の変化の影響を得る。このようにして得られた結果から、どの機器について補修をすれば全体の熱効率が向上するかを評価することができる。
【0070】
〈実施形態2〉
[機器性能関数の作成]
実施形態1においては、実測値基準解析を実施して得られた結果を用いて、復水器特性関数を作成し、機器性能基準解析を行ったが、実測値基準解析で得られた結果を標準条件における値に換算してもよい。
【0071】
具体的には、実測値基準解析の後、その解析結果に基づいて、機器ごとに機器性能関数を作成する。機器性能関数とは、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す関数である。
【0072】
図10に機器性能関数の概念を示す。図示するように、横軸にタービン3の作動流体の状態量、縦軸に断熱効率をとり、実測値基準解析の結果を十字型の各点に示した。上側の一群は第L年目の計測値に基づく結果であり、下側の一群は第M年目の計測値に基づく結果である。
【0073】
第L年目のある時点での断熱効率Aと、第M年目のある時点での断熱効率Bの値は同程度であるが、作動流体の状態量が異なっている。
【0074】
そこで、例えば、第L年目、第M年目の各群について、断熱効率から最小二乗法などにより関数f1、f2の傾きを求める。それらの関数f1、f2がA、Bを通るように定数項を求めて機器性能関数f1’、f2’とする。
【0075】
なお、第L年目、第M年目のように年ごとに区切って機器性能関数を求めたが、範囲は任意である。例えば、経年劣化、設備改造、運転状態の違いによって、各機器の任意の状態量と性能値との関係に差異が生じる場合(図5に示すように性能値が傾きの異なる複数の群となるような場合など)、その差異ごとに機器性能関数を求めてもよい。これにより、傾きの異なる性能値群ごとに適切な傾きの機器性能関数を得ることができる。
【0076】
[機器性能関数を用いた性能値の換算]
次に、機器性能関数を用いて標準条件における性能値の換算を行う。すなわち、状態量のうち、任意の値を標準条件として設定し、その標準条件における各機器の性能値を機器性能関数から求める。すなわち、各機器の機器性能関数に標準条件の値を入力することで、標準条件における性能値が得られる。この標準条件における性能値を換算値と称する。
【0077】
例えば、図10に示したように、ある時点においては点Aに示す断熱効率である場合、機器性能関数f1’を用い、標準条件における断熱効率A’を求める。同様に点Bに示す断熱効率である場合、機器性能関数f2’を用い、標準条件における断熱効率B’を求める。
【0078】
特に、タービンにおいては、蒸気井2の噴気条件によってタービン入口圧力が、大気温度の変化によりタービン排気圧力が変化するため、それらの状態量は上述の外部変動の影響を受けやすく、結果として性能値は外部変動の影響を含んだものとなる。
【0079】
しかしながら、性能値を標準条件におけるものに換算することで作動流体を同じ条件としたときの性能値(以下、換算値と称する。)が得られることになり、外部変動の影響を排した性能の比較を行えることとなる。
【0080】
図11及び図12に、実測値基準解析で求めた性能値と、当該性能値を機器性能関数で換算した結果を示す。図11は、横軸に日時を取り、縦軸に実測値基準解析により得られた断熱効率を取り、その結果をプロットしたグラフである。
【0081】
図示するように、断熱効率は、第L、M、N年目のそれぞれで実施した補修により、それぞれ異なる傾きの群を成している。第M年目、第N年目の始めにおいてはそれ以前に比べて向上しているものの、全体的に断熱効率は劣化傾向にある。ただし、上述したように実測値基準解析により得られた性能値は、標準条件におけるものではなく、様々な状態量におけるものとなっている。例えば、AとBとでは、全く異なる状態量における断熱効率となっている。
【0082】
図12に、図10の機器性能関数を用いて、図11に示した断熱効率を換算したものを示す。図12における第L年目の断熱効率(点A)は、図10の関数f1の傾きとその断熱効率(点A)を通る点とに基づいて作成された機器性能関数f1’において、標準条件のときの断熱効率(点A’)に換算され、図12に示されている(第L年目の点A以外の断熱効率についても同様)。第M、N年目についても同様であり、図11における断熱効率(点B)もB’に換算されて示されている。
【0083】
図示するように、断熱効率が標準条件におけるものに換算された結果、劣化傾向の程度が緩やかであることがわかる。すなわち、標準条件に換算する前においては、劣化傾向にあると思われたものは、季節変動によるものが大きく、季節変動を除けば実際には、機器自体の性能はそれほど劣化していないことが分かる。
【0084】
このようにして得られた換算値を用いて、実施形態1に説明したように復水器特性関数を作成し、さらに機器性能基準解析を行う。これにより、外部要因を排除して、各要因の変化がプラント1の熱効率に与える影響を評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
地熱発電プラントを運転し、保守、点検等を行う産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 地熱発電プラント
2 蒸気井
3 タービン
4 発電機
5 復水器
6 冷却塔
7 ガス抽出装置
30 コンピュータ
31 CPU
32 RAM
33 ROM
34 ハードディスク
35 入力装置
36 出力装置
37 接続インタフェース
38 通信手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を得て、
各機器の熱物質収支及び特性を表す式を各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたプラント解析モデルを作成し、
前記プラント解析モデルに前記計測値を入力して、当該計測値を得た計測時ごとの実測値基準の熱物質収支解析を行い地熱発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求め、
前記性能値より地熱発電プラントを構成する機器の一つである復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を作成し、
(1)前記計測値、前記性能値の内、任意の項目(条件値)を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出し、
(2)得られた復水器流入蒸気流量を用いて前記復水器特性関数より第1真空度を算出し、
(3)得られた第1真空度、前記条件値、及び前記性能値を用いて、地地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、
(4)得られた復水器冷却水温度を用いて前記復水器特性関数より第2真空度を算出し、
前記第1真空度及び前記第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図る
ことを特徴とする地熱発電プラントの熱効率解析方法。
【請求項2】
基準時点及び評価時点を定め、
基準時点における請求項1に記載する地熱発電プラントの熱効率解析方法を行うとともに、
一の要因にのみ評価時点の状態量および機器性能値を設定して
他の要因には基準時点の状態量および機器性能値を設定した請求項1に記載する地熱発電プラントの熱効率解析方法を行い、
これら二つの解析結果を比較することで、基準時点から評価時点までの間で、一の要因の変化がプラント熱効率に与えた影響を定量的に評価する
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法。
【請求項3】
請求項2に記載する地熱発電プラントの性能評価方法において、
複数の要因それぞれについて順次、前記性能評価方法を適用することで、プラント熱効率低下の要因毎の影響量を定量的に明らかにする
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載する地熱発電プラントの性能評価方法において、
計測時ごとに得られた前記実測値基準の熱効率解析結果に基づいて、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す機器性能関数を機器ごとに作成し、
機器性能関数の独立変数である前記状態量に標準条件を設定し、前記計測値を機器性能関数の標準条件における値に換算して換算値を求め、
前記入出力又は前記状態量が変化することによる影響を排除した地熱発電プラントの熱効率及び地熱発電プラントを構成する機器の性能の変化傾向を把握する
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法。
【請求項5】
コンピュータに、
発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を入力する機能と、
各機器の熱物質収支及び特性を表す式を各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたプラント解析モデルを作成する機能と、
前記プラント解析モデルに前記計測値を入力して、当該計測値を得た計測時ごとの実測値基準の熱物質収支解析を行い発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求める機能と、
前記性能値より地熱発電プラントを構成する機器の一つである復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を前記プラント解析モデルに組み込む機能と、
(1)前記計測値、前記性能値の内、任意の項目(条件値)を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出し、
(2)得られた復水器流入蒸気流量を用いて前記復水器特性関数より第1真空度を算出し、
(3)得られた第1真空度、前記条件値、及び前記性能値を用いて、地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、
(4)得られた復水器冷却水温度を用いて前記復水器特性関数より第2真空度を算出し、
前記第1真空度及び前記第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図る機能とを実現させる
ことを特徴とする地熱発電プラントの熱効率解析プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
基準時点及び評価時点を定め、
基準時点における請求項5に記載する地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行するとともに、
一の要因にのみ評価時点の状態量および機器性能値を設定して
他の要因には基準時点の状態量および機器性能値を設定した請求項5に記載する地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行し、
これら二つの解析結果を比較することで、基準時点から評価時点までの間で、一の要因の変化がプラント熱効率に与えた影響を定量的に評価する機能を実現させる
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載する地熱発電プラントの性能評価プログラムにおいて、
複数の要因それぞれについて順次、前記性能評価方法を適用することで、プラント熱効率低下の要因毎の影響量を定量的に明らかにする機能を備える
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラム。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載する地熱発電プラントの性能評価プログラムにおいて、
計測時ごとに得られた前記実測値基準の熱効率解析結果に基づいて、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す機器性能関数を機器ごとに作成し、
機器性能関数の独立変数である前記状態量に標準条件を設定し、前記計測値を機器性能関数の標準条件における値に換算して換算値を求め、
前記入出力又は前記状態量が変化することによる影響を排除した地熱発電プラントの熱効率及び地熱発電プラントを構成する機器の性能の変化傾向を把握する
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラム。
【請求項1】
地熱発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を得て、
各機器の熱物質収支及び特性を表す式を各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたプラント解析モデルを作成し、
前記プラント解析モデルに前記計測値を入力して、当該計測値を得た計測時ごとの実測値基準の熱物質収支解析を行い地熱発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求め、
前記性能値より地熱発電プラントを構成する機器の一つである復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を作成し、
(1)前記計測値、前記性能値の内、任意の項目(条件値)を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出し、
(2)得られた復水器流入蒸気流量を用いて前記復水器特性関数より第1真空度を算出し、
(3)得られた第1真空度、前記条件値、及び前記性能値を用いて、地地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、
(4)得られた復水器冷却水温度を用いて前記復水器特性関数より第2真空度を算出し、
前記第1真空度及び前記第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図る
ことを特徴とする地熱発電プラントの熱効率解析方法。
【請求項2】
基準時点及び評価時点を定め、
基準時点における請求項1に記載する地熱発電プラントの熱効率解析方法を行うとともに、
一の要因にのみ評価時点の状態量および機器性能値を設定して
他の要因には基準時点の状態量および機器性能値を設定した請求項1に記載する地熱発電プラントの熱効率解析方法を行い、
これら二つの解析結果を比較することで、基準時点から評価時点までの間で、一の要因の変化がプラント熱効率に与えた影響を定量的に評価する
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法。
【請求項3】
請求項2に記載する地熱発電プラントの性能評価方法において、
複数の要因それぞれについて順次、前記性能評価方法を適用することで、プラント熱効率低下の要因毎の影響量を定量的に明らかにする
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載する地熱発電プラントの性能評価方法において、
計測時ごとに得られた前記実測値基準の熱効率解析結果に基づいて、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す機器性能関数を機器ごとに作成し、
機器性能関数の独立変数である前記状態量に標準条件を設定し、前記計測値を機器性能関数の標準条件における値に換算して換算値を求め、
前記入出力又は前記状態量が変化することによる影響を排除した地熱発電プラントの熱効率及び地熱発電プラントを構成する機器の性能の変化傾向を把握する
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価方法。
【請求項5】
コンピュータに、
発電プラントを構成する機器の入出力及び作動流体の状態量の計測値を入力する機能と、
各機器の熱物質収支及び特性を表す式を各機器間の接続を表す接続情報に基づいて連立させたプラント解析モデルを作成する機能と、
前記プラント解析モデルに前記計測値を入力して、当該計測値を得た計測時ごとの実測値基準の熱物質収支解析を行い発電プラントの熱効率及び各機器の性能値を求める機能と、
前記性能値より地熱発電プラントを構成する機器の一つである復水器について真空度と流入蒸気流量及び冷却水温度との関係式である復水器特性関数を前記プラント解析モデルに組み込む機能と、
(1)前記計測値、前記性能値の内、任意の項目(条件値)を変化させた場合における復水器流入蒸気流量を地熱発電プラントの熱物質収支解析により算出し、
(2)得られた復水器流入蒸気流量を用いて前記復水器特性関数より第1真空度を算出し、
(3)得られた第1真空度、前記条件値、及び前記性能値を用いて、地熱発電プラントの熱物質収支解析を行って復水器冷却水温度を算出し、
(4)得られた復水器冷却水温度を用いて前記復水器特性関数より第2真空度を算出し、
前記第1真空度及び前記第2真空度の値が等しくなるまで(1)〜(4)の計算を繰り返して収束を図る機能とを実現させる
ことを特徴とする地熱発電プラントの熱効率解析プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
基準時点及び評価時点を定め、
基準時点における請求項5に記載する地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行するとともに、
一の要因にのみ評価時点の状態量および機器性能値を設定して
他の要因には基準時点の状態量および機器性能値を設定した請求項5に記載する地熱発電プラントの熱効率解析プログラムを実行し、
これら二つの解析結果を比較することで、基準時点から評価時点までの間で、一の要因の変化がプラント熱効率に与えた影響を定量的に評価する機能を実現させる
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載する地熱発電プラントの性能評価プログラムにおいて、
複数の要因それぞれについて順次、前記性能評価方法を適用することで、プラント熱効率低下の要因毎の影響量を定量的に明らかにする機能を備える
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラム。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載する地熱発電プラントの性能評価プログラムにおいて、
計測時ごとに得られた前記実測値基準の熱効率解析結果に基づいて、任意の状態量と各機器の性能値との関係を表す機器性能関数を機器ごとに作成し、
機器性能関数の独立変数である前記状態量に標準条件を設定し、前記計測値を機器性能関数の標準条件における値に換算して換算値を求め、
前記入出力又は前記状態量が変化することによる影響を排除した地熱発電プラントの熱効率及び地熱発電プラントを構成する機器の性能の変化傾向を把握する
ことを特徴とする地熱発電プラントの性能評価プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−31799(P2012−31799A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172965(P2010−172965)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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