説明

地盤の掘削方法

【課題】最小限の設備を用いて径の異なる立坑と水平坑とを連続して掘削する地盤の掘削方法を提供すること。
【解決手段】立坑用TBM5を用いて立坑3を掘削した後、立坑3の下端部付近から所定の長さの水平坑33を掘削する。そして、地上から立坑3を介して水平坑33内に水平坑用TBMのカッタヘッド37を搬入した後、立坑用TBM5の前胴の一部を取り外して水平坑33内に引き込み、カッタヘッド37の後方に組み付ける。次に、立坑用TBM5のスラストジャッキ27を取り外して水平坑33内に引き込み、カッタヘッドサポート19の後方に取り付ける。さらに水平坑用TBMの中胴、後胴、テール部等を地上から水平坑33内に搬入して水平坑用TBMを組み立て、立坑用TBM5の後続台車を水平坑33内に引き込みつつ、水平坑用TBMおよび後続台車を用いて水平坑33をさらに掘削する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の掘削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高レベル放射性廃棄物等は、地下深層部の岩盤中に形成された分岐坑道内に埋設されてきた。分岐坑道を形成するには、地表から地下深層部まで掘削した立坑を用いて主要坑道(水平坑)を掘削し、主要坑道を用いて分岐坑道を掘削していた。
【0003】
立坑の掘削には、上方から下方または斜め下方への掘削が可能で、掘削ズリを下方から上方に向けてカプセルで輸送するトンネル掘削機(例えば、特許文献1参照)等が用いられてきた。また、分岐坑道の掘削には、主要坑道内で水平回転可能なトンネル掘削機(例えば、特許文献2参照)が用いられてきた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−328688号公報
【特許文献2】特開2002−106289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、立坑の掘削と、水平坑の掘削とに、それぞれ異なる掘削機が必要であった。また、上述した立坑用のトンネル掘削機は、掘削機内に大容量の掘削物貯留部が設置されるため、設備が大規模であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するための本発明は、第1の掘削機を用いて立坑を掘削する工程(a)と、前記立坑の下端部付近から所定の長さの水平坑を掘削する工程(b)と、前記立坑の上方から前記水平坑内に第2の掘削機のカッタヘッドを搬入する工程(c)と、前記第1の掘削機の前胴の一部およびスラストジャッキを取り外し、前記水平坑内に引き込み、前記第2の掘削機を組み立てる工程(d)と、前記第1の掘削機の後続台車を前記水平坑内に引き込みつつ、前記第2の掘削機および前記後続台車を用いて前記水平坑をさらに掘削する工程(e)と、
を具備することを特徴とする地盤の掘削方法である。
【0007】
工程(d)で第1の掘削機から取り外される前胴の一部は、例えば、カッタヘッドサポートと、カッタヘッドサポートの後方に設置されたカッタヘッド駆動用モータと、カッタヘッドサポートの外周に設置された第1のフロントサイドサポートとを含む。また、立坑の径が水平坑の径より大きい場合、工程(d)では、前胴のうち、第1のフロントサイドサポートの外側に配置された第2のフロントサイドサポートが第1の掘削機に残置される。
【0008】
工程(d)は、前胴の一部を取り外して水平坑内に引き込み、カッタヘッドに接続する工程(f)と、スラストジャッキを取り外して水平坑内に引き込み、前胴の一部に接続する工程(g)とからなる。
【0009】
後続台車は複数の台車からなり、工程(a)から工程(d)の間は、複数の台車を連結して立坑内に吊り下げる。そして、工程(e)では、複数の台車を、連結された台車を下降させる作業と、最下段の台車を切り離して水平移動させる作業とを繰り返して水平坑内に引き込む。
【0010】
本発明では、まず、第1の掘削機を用いて立坑を掘削した後、立坑の下端部付近から所定の長さの水平坑を掘削する。そして、立坑の上方から水平坑内に第2の掘削機のカッタヘッドを搬入する。次に、第1の掘削機の前胴の一部およびスラストジャッキを取り外して水平坑内に引き込み、第2の掘削機を組み立てる。その後、第1の掘削機の後続台車を水平坑内に引き込みつつ、第2の掘削機および後続台車を用いて水平坑をさらに掘削する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、最小限の設備を用いて径の異なる立坑と水平坑とを連続して掘削する地盤の掘削方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、トンネルボーリングマシン(以下、TBMとする)を用いて地盤1に立坑3を掘削する工程を示す図、図2は、立坑用TBM5の断面図である。図2の(a)図は、図2の(b)図のB−Bによる断面図、図2の(b)図は、図2の(a)図のA−Aによる断面図を示す。
【0013】
図1では、立坑用TBM5、後続台車55を用いて、地盤1の上方から下方に向けて立坑3を掘削する。立坑用TBM5は、図2に示すように、カッタヘッド7、前胴13、中胴15、後胴17からなる。
【0014】
カッタヘッド7は、地盤1を掘削するためのディスクカッタ9、ディスクカッタ11を有する。
【0015】
前胴13は、スキンプレート31aの内部に、カッタヘッドサポート19、スキンプレート20、オイルパック式フロントサイドサポート21、カッタヘッド駆動用モータ25等を有する。
【0016】
カッタヘッドサポート19は、カッタヘッド7の後方に配置される。スキンプレート20は、カッタヘッドサポート19の外側に設けられる。スキンプレート20の径は、図5に示す水平坑用TBM53の径に応じて設定される。オイルパック式フロントサイドサポート21は、第1のフロントサイドサポートであり、スキンプレート20に固定される。カッタヘッド駆動用モータ25は、カッタヘッドサポート19の後方に固定される。
【0017】
前胴13は、スキンプレート31aに油圧ジャッキ式フロントサイドサポート23を有する。油圧ジャッキ式フロントサイドサポート23は、第2のフロントサイドサポートであり、オイルパック式フロントサイドサポート21の外側に配置される。油圧ジャッキ式フロントサイドサポート23は、スキンプレート31aに固定される。
【0018】
中胴15は、スキンプレート31bの内部にスラストジャッキ27を有する。スラストジャッキ27は、油圧ジャッキ式フロントサイドサポート23の後方に配置される。
【0019】
後胴17は、スキンプレート31cにグリッパ29を有する。グリッパ29は、スキンプレート31cに固定される。
スラストジャッキ27は、一端が前胴13に、他端が後胴17に固定される。
【0020】
立坑用TBM5は、カッタヘッド駆動用モータ25でカッタヘッド7を駆動させて地盤1を掘削する。立坑用TBM5は、スキンプレート31c、スキンプレート31aからそれぞれグリッパ29、油圧ジャッキ式フロントサイドサポート23を外周方向に張り出して立坑3の壁面に押し付けて反力を取る。立坑用TBM5は、前胴13と後胴17とをスラストジャッキ27で互いに接近離間させることで下方へ推進する。
【0021】
カッタヘッド7による掘削ズリは、立坑用TBM5の内部に設けられたバケットコンベア(図示せず)により機体後方すなわち上方へ排出され、気送カプセル式揚土設備(図示せず)を用いて地上に搬送される。
【0022】
後続台車55は、複数の台車を上下に連結したものである。後続台車55は、立坑3内に吊り下げられ、立坑3の吹付材料の運搬等に用いられる。
【0023】
図3は、所定の長さの水平坑33を掘削する工程を示す図である。図3では、図1に示す工程で掘削した立坑3の下端部付近から、発破等により所定の長さの水平坑33を掘削する。そして、水平坑33内に水平坑用TBM組立発進架台35を設置する。なお、図3に示す工程では、水平坑33は、内部で水平坑用TBMを組み立てられる長さまで掘削される。
【0024】
図4は、水平坑TBM用カッタヘッド37を搬入する工程を示す図である。図4では、矢印Cに示すように、地上から立坑3を介して水平坑33内に水平坑TBM用カッタヘッド37を搬入し、水平坑用TBM組立発進架台35上に据え付ける。また、フード部39を地上から立坑3を介して水平坑33内に搬入し、水平坑TBM用のカッタヘッド37に取り付ける。
【0025】
図5は、水平坑用TBM53の断面図である。図5の(a)図は、図5の(b)図のH−Hによる断面図、図5の(b)図は、図5の(a)図のG−Gによる断面図を示す。
【0026】
水平坑用TBM53は、図5に示すように、カッタヘッド37、フード部39、前胴43、中胴45、後胴47、テール部49からなる。カッタヘッド37は、地盤1を掘削するためのディスクカッタ41を有する。
【0027】
図6は、立坑用TBM5の前胴13の一部を取り外して水平坑33内に引き込む工程を示す図である。図6では、まず、立坑用TBM5の前胴13から、カッタヘッドサポート19、オイルパック式フロントサイドサポート21、カッタヘッド駆動モータ25、スキンプレート20(図2)を一体化した状態で取り外す。
【0028】
次に、取り外した部分を、矢印Dに示すように立坑3と水平坑33とが分岐する高さまで吊り上げ、点線で示す位置で矢印Eに示すように反転させる。そして、矢印Fに示すように水平坑33内に引き込み、カッタヘッド37の後方に組み付ける。立坑用TBM5の第2のフロントサイドサポートである油圧ジャッキ式フロントサイドサポート23は、前胴13に残置される。
【0029】
図5の(a)図に示すように、カッタヘッドサポート19、オイルパック式フロントサイドサポート21、カッタヘッド駆動モータ25、スキンプレート20は、水平坑用TBM53の前胴43を形成する。
【0030】
図7は、立坑用TBM5のスラストジャッキ27を取り外して水平坑33内に引き込む工程を示す図である。図7では、立坑用TBM5の中胴15内のスラストジャッキ27を取り外す。そして、矢印Iに示すように、スラストジャッキ27を立坑3内で吊り上げて水平坑33内に引き込み、カッタヘッドサポート19の後方に配置する。
【0031】
図8は、水平坑用TBM53の中胴45、後胴47、テール部49を組み付ける工程を示す図である。図8では、中胴45、後胴47、テール部49を地上から立坑3を介して水平坑33内に搬入し、組み付ける。中胴45、後胴47、テール部49のスキンプレート51(図5)は、上下に2分割して搬入する。
なお、図5の(a)図に示すように、スラストジャッキ27は、一端が前胴43に、他端が後胴47に固定される。
【0032】
図9は、後続台車55および水平坑用TBM53を用いて水平坑33をさらに掘削する工程を示す図である。図9では、立坑3の掘削時に用いた立坑用TBM5の後続台車55を水平坑33内に引き込みつつ、水平坑用TBM53および後続台車55を用いて水平坑33をさらに掘削する。
【0033】
図1から図8に示す工程で立坑3内に吊り下げられていた後続台車55を水平坑33内に引き込むには、連結された複数の台車を下降させる作業と、最下段の台車55aを切り離して水平移動させる作業とを繰り返す。後続台車55は、水平坑33の吹付材料の運搬等に用いられる。
【0034】
水平坑用TBM53は、カッタヘッド駆動用モータ25でカッタヘッド7を駆動させて地盤1を掘削する。水平坑用TBM53は、スキンプレート20からオイルパック式フロントサイドサポート21を外周方向に張り出して水平坑33の壁面に押し付けて反力を取る。水平坑用TBM53は、前胴43と後胴47とをスラストジャッキ27で互いに接近離間させることで前方へ推進する。
【0035】
カッタヘッド37による掘削ズリは、水平坑用TBM53の内部に設けられたベルトコンベア(図示せず)等により機体後方へ排出される。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、立坑用TBM5のカッタヘッドサポート19、オイルパック式フロントサイドサポート21、カッタヘッド駆動モータ25、スキンプレート20、スラストジャッキ27を水平坑用TBM53に転用する。また、掘削ズリの搬出には気送カプセル式揚土設備を用いる。これにより、最小限の設備で径の異なる立坑3と水平坑33とを連続して掘削することができる。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる地盤の掘削方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】トンネルボーリングマシンを用いて地盤1に立坑3を掘削する工程を示す図
【図2】立坑用TBM5の断面図
【図3】所定の長さの水平坑33を掘削する工程を示す図
【図4】水平坑TBM用カッタヘッド37を搬入する工程を示す図
【図5】水平坑用TBM53の断面図
【図6】立坑用TBM5の前胴13の一部を取り外して水平坑33内に引き込む工程を示す図
【図7】立坑用TBM5のスラストジャッキ27を取り外して水平坑33内に引き込む工程を示す図
【図8】水平坑用TBM53の中胴45、後胴47、テール部49を組み付ける工程を示す図
【図9】後続台車55および水平坑用TBM53を用いて水平坑33をさらに掘削する工程を示す図
【符号の説明】
【0039】
1………地盤
3………立坑
5………立坑用TBM
7、37………カッタヘッド
13、43………前胴
19………カッタヘッドサポート
20、31、51………スキンプレート
21………オイルパック式フロントサイドサポート
23………油圧ジャッキ式フロントサイドサポート
25………カッタヘッド駆動用モータ
27………スラストジャッキ
29………グリッパ
33………水平坑
53………水平坑用TBM
55………後続台車
55a………台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の掘削機を用いて立坑を掘削する工程(a)と、
前記立坑の下端部付近から所定の長さの水平坑を掘削する工程(b)と、
前記立坑の上方から前記水平坑内に第2の掘削機のカッタヘッドを搬入する工程(c)と、
前記第1の掘削機の前胴の一部およびスラストジャッキを取り外し、前記水平坑内に引き込み、前記第2の掘削機を組み立てる工程(d)と、
前記第1の掘削機の後続台車を前記水平坑内に引き込みつつ、前記第2の掘削機および前記後続台車を用いて前記水平坑をさらに掘削する工程(e)と、
を具備することを特徴とする地盤の掘削方法。
【請求項2】
前記前胴の一部が、
カッタヘッドサポートと、
前記カッタヘッドサポートの後方に設置されたカッタヘッド駆動用モータと、
前記カッタヘッドサポートの外周に設置された第1のフロントサイドサポートと、
を有することを特徴とする請求項1記載の地盤の掘削方法。
【請求項3】
前記工程(d)で、前記前胴のうち、前記第1のフロントサイドサポートの外側に配置された第2のフロントサイドサポートが前記第1の掘削機に残置されることを特徴とする請求項2記載の地盤の掘削方法。
【請求項4】
前記工程(d)が、
前記前胴の一部を取り外して前記水平坑内に引き込み、前記カッタヘッドに接続する工程(f)と、
前記スラストジャッキを取り外して前記水平坑内に引き込み、前記前胴の一部に接続する工程(g)と、
からなることを特徴とする請求項1記載の地盤の掘削方法。
【請求項5】
前記後続台車は複数の台車からなり、
前記工程(a)から前記工程(d)の間は、前記複数の台車を連結して前記立坑内に吊り下げ、
前記工程(e)で、前記複数の台車を、連結された前記台車を下降させる作業と、最下段の前記台車を切り離して水平移動させる作業とを繰り返して前記水平坑内に引き込むことを特徴とする請求項1記載の地盤の掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−314939(P2007−314939A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142386(P2006−142386)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】