説明

地盤の表層処理方法

【課題】袋体内に充填した流動性固化材の固化温度を管理することにより、施工期間の短期化と、剛性補強体の品質を確保することができるようにした地盤の表面処理方法を提供すること。
【解決手段】流動性固化材が充填される袋体1を、地盤上に敷設した面状部材2上に格子状になるように敷設し、袋体1内に流動性固化材を充填、固化させることによって剛性補強体を形成するようにした地盤の表層処理方法において、袋体1と共に温度調整部材3を敷設し、袋体1内に充填した流動性固化材の固化温度を調節するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の表面処理方法に関し、特に、流動性固化材が充填される袋体を、地盤上に格子状になるように敷設し、袋体内に流動性固化材を充填、固化させることによって剛性補強体を形成するようにした地盤の表層処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱な粘性土の地盤上に直接土砂や砕石を敷き均した場合、土砂や砕石の荷重あるいは機械の重量によって、土砂や砕石が粘性土と混合して役に立たなくなったり、地盤が破壊して陥没したりすることがある。
このような現象を防ぐため、表層処理方法として、1966年に繊維製織布を敷設材料に使用したシート工法が発明され、その後、敷設材料として合成樹脂製ネットを用いる敷網工法が開発され(特許文献1参照)、さらに、シートの補強を目的としたロープシート工法、あるいは竹枠とシートやネットを組み合わせた工法など、いくつかの関連工法が開発されてきた。
また、セメント等の固化材を軟弱土に添加・混合することによって表層部分の安定処理を図ろうとする固化処理技術も発展してきている。さらに、陸上又は水中下の軟弱地盤表層改良技術として、強靱で引張強度がある素材で製作された広い面積の透水性を有するジオテキスタイル等の袋を軟弱地盤の表層に展開し、この袋内に貧配合のセメント系等の固化材を充填し、硬化した固化材が引張強度のある袋で一体的に包被された平板状固化層を形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、新たに、軟弱地盤上にシートやネット等の可撓性の面状部材を敷設するとともに、この面状部材の上面と下面の少なくとも一方の面に脱水性を有し引張強度の高いホース等からなる可撓性の線状中空体を配設しあるいは予め取り付けておき、この線状中空体内にモルタル類を充填して格子状等の剛性補強体を形成し、敷設が容易で剛性の高い枠構造の剛性補強体により、面状部材を介して載荷される土砂や砕石の荷重を分散させ、軟弱地盤の破壊や変形を抑制して安定した覆士や盛土の土砂作業を行う工法が開発されている(特許文献3参照)。
さらに、本件出願人等の提案による、軟弱地盤上に可撓性の面状部材を敷設するとともに、この面状部材の上面と下面の少なくとも一方の面に筒状織物からなる格子状袋体を配設して、この格子状袋体内にモルタル等の流動性固化材を充填して剛性補強体を形成する軟弱地盤の表層処理方法も開発されている(特許文献4参照)。
【0003】
ところで、上記特許文献1〜2に記載された地盤の表層処理方法は、鉄道や道路等の構築施設を仮設するために適用した場合、その上を通過する車輌の重量を支持することが困難であったり、施工期間が長くなったり、また、セメント等の固化材が地盤に混入する等によって、仮設の構築施設を簡易に撤去することができないという問題があった。
【0004】
また、特許文献3〜4に記載された地盤の表層処理方法は、剛性補強体による荷重分散の作用により十分な支持力を得ることができるとともに、面状部材により処理材料が地盤に混入することを防止し、仮設の構築施設を撤去する際の処理を簡易に行うことができ、特に、特許文献4記載の方法は、施工性においても優れたものであるという利点を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−227178号公報
【特許文献2】特開平11−152735号公報
【特許文献3】特開2004−137778号公報
【特許文献4】特開2005−163309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、特許文献3〜4に記載された地盤の表層処理方法は、従来の地盤の表層処理方法にはなかった多くの利点を有するものの、例えば、低温期には、流動性固化材の養生に時間を要し、施工期間が長くなるという問題に加え、未硬化の流動性固化材の凍害を防止するための施工管理が必要であった。一方、高温期には、流動性固化材の乾燥、凝結促進のため、袋体内への流動性固化材の充填不良や流動性固化材の乾燥収縮に対応するため、通常期(中温期)と比べて施工管理に多くの手間を要していた。
【0007】
本発明は、上記従来の地盤の表面処理方法の有する問題点に鑑み、特許文献3〜4に記載された地盤の表層処理方法が有する多くの利点を享有しながら、袋体内に充填した流動性固化材の固化温度を管理することにより、施工期間の短期化と、剛性補強体の品質を確保することができるようにした地盤の表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の地盤の表面処理方法は、流動性固化材が充填される袋体を、地盤上に敷設した面状部材上に格子状になるように敷設し、袋体内に流動性固化材を充填、固化させることによって剛性補強体を形成するようにした地盤の表層処理方法において、袋体と共に温度調整部材を敷設し、袋体内に充填した流動性固化材の固化温度を調節するようにしたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、温度調整部材を、熱媒体を循環させるようにしたチューブ部材から構成することができる。
【0010】
また、袋体及び温度調整部材の上に養生シートを敷設し、袋体及び温度調整部材の全体を覆うようにすることができる。
【0011】
また、袋体内に充填した流動性固化材が固化した後、温度調整部材を回収することができる。
【0012】
また、袋体を、縦断方向に配置される流動性固化材が充填される基端側袋体及び該基端側袋体に対して直角方向に間隔をあけて複数列に並んで横断方向に配置され、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が充填されるようにした分岐側袋体からなる櫛状袋体と、櫛状袋体の基端側袋体と間隔をあけて平行に縦断方向に配置される直線状袋体とで構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の地盤の表面処理方法によれば、流動性固化材が充填される袋体を、地盤上に敷設した面状部材上に格子状になるように敷設し、袋体内に流動性固化材を充填、固化させることによって剛性補強体を形成するようにした地盤の表層処理方法において、袋体と共に温度調整部材を敷設し、袋体内に充填した流動性固化材の固化温度を調節するようにすることにより、袋体内に充填した流動性固化材が固化してなる剛性補強体による荷重分散の作用により十分な支持力を得ることができるとともに、面状部材により処理材料が地盤に混入することを防止し、仮設の構築施設を撤去する際の処理を簡易に行うことができるという、特許文献3〜4に記載された地盤の表層処理方法が有する利点を享有しながら、袋体内に充填した流動性固化材の固化温度を管理、具体的には、低温期には、温度調整部材によって流動性固化材を充填した袋体の周囲の温度を上昇させることで施工期間の短期化を図り、高温期には、温度調整部材によって流動性固化材を充填した袋体の周囲の温度を低下させることで流動性固化材の急激な乾燥や異常凝結を防止し、剛性補強体の品質を確保することができる。
【0014】
また、温度調整部材を、熱媒体を循環させるようにしたチューブ部材から構成することにより、温度調整部材の敷設作業や温度管理を簡易に行うことができる。
【0015】
また、袋体及び温度調整部材の上に養生シートを敷設し、袋体及び温度調整部材の全体を覆うようにすることにより、温度管理を簡易に行うことができる。
【0016】
また、袋体内に充填した流動性固化材が固化した後、温度調整部材を回収することにより、温度調整部材を再利用することができる。
【0017】
また、袋体を、縦断方向に配置される流動性固化材が充填される基端側袋体及び該基端側袋体に対して直角方向に間隔をあけて複数列に並んで横断方向に配置され、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が充填されるようにした分岐側袋体からなる櫛状袋体と、櫛状袋体の基端側袋体と間隔をあけて平行に縦断方向に配置される直線状袋体とで構成することにより、鉄道や道路等の縦断方向の長さが長く、横断方向の長さが短い構築施設の場合における袋体の敷設作業や袋体内への流動性固化材の充填作業を簡易かつ正確に行うことができ、また、横断方向に配置した袋体と縦断方向に配置した袋体との密着性を良好にし、剛性補強体の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の地盤の表面処理方法の施工の一実施例を示す説明図である。
【図2】温度調整部材に熱媒体を循環させる経路の実施例を示す説明図である。
【図3】本発明の地盤の表面処理方法の施工工程の一実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の地盤の表面処理方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1〜図3に、本発明の地盤の表面処理方法を、鉄道や道路等の縦断方向の長さが長く、横断方向の長さが短い構築施設に適用した場合の一実施例を示す。
【0021】
この地盤の表面処理方法は、流動性固化材が充填される袋体1を、地盤G上に敷設した織布や合成樹脂(繊維と合成樹脂の複合材料を含む)製のシート材からなる面状部材2上に格子状になるように敷設し、袋体1内にモルタル類等の流動性固化材を充填、固化させることによって剛性補強体を形成するようにした地盤の表層処理方法において、袋体1と共に温度調整部材3を敷設し、袋体1内に充填した流動性固化材の固化温度を調節するようにしたものである。
この場合、必要に応じて、袋体1及び温度調整部材3の上に織布や合成樹脂(繊維と合成樹脂の複合材料を含む)製のシート材からなる養生シート4を敷設し、袋体1及び温度調整部材3の全体を覆うようにすることができ、これにより、温度管理を簡易に行うことができる。
【0022】
この場合において、袋体1を地盤G上に敷設した面状部材2上に格子状になるように敷設するに当たっては、地盤G(構築施設)の形状等に合わせて種々の方法(袋体1の態様)を採用することができるが、ここでは、袋体1を、構築施設の縦断方向に配置される流動性固化材が充填される基端側袋体11a及びこの基端側袋体11aに対して直角方向に間隔(例えば、1500mm)をあけて複数列に並んで構築施設の横断方向に配置され、基端側袋体11aに連通して基端側袋体11aから流動性固化材が充填されるようにした分岐側袋体11bからなる櫛状袋体11(構築施設の横断方向に配置される袋体)と、櫛状袋体11の基端側袋体11aと間隔(例えば、1000mm)をあけて平行に構築施設の縦断方向に櫛状袋体11の分岐側袋体11bの上を跨ぐように配置される直線状袋体12(構築施設の縦断方向に配置される袋体)とで構成するようにしている。
これにより、鉄道や道路等の縦断方向の長さが長く、横断方向の長さが短い構築施設の場合における袋体1の敷設作業や袋体1内への流動性固化材の充填作業を簡易かつ正確に行うことができ、また、構築施設の横断方向に配置した袋体(櫛状袋体11の分岐側袋体11b)と縦断方向に配置した袋体(直線状袋体12)との密着性を良好にし、剛性補強体の品質を向上することができる。
なお、本実施例において、直線状袋体12として構成した縦断方向に配置する袋体を、横断方向に配置した袋体と同様、櫛状袋体として構成することもできる(図示省略)。これにより、複数列に並んで構築施設の縦断方向に配置された袋体内へ基端側袋体から流動性固化材が充填されるようにすることによって、流動性固化材の充填作業を簡易に行うことができる。
【0023】
また、袋体1を地盤G上に敷設した面状部材2と、面状部材2上に格子状になるように敷設した袋体1とを、袋体1の格子点等の任意の位置でベルトやコード等により結合することができる。
これにより、面状部材2上の袋体1内に充填した流動性固化材が固化してなる剛性補強体とその周囲の一体性を高め、支持力を向上することができる。
【0024】
温度調整部材3は、熱媒体としての水(温水又は冷水)を循環させるようにした、例えば、可撓性を有する合成樹脂製のチューブ部材から構成し、本実施例においては、構築施設の縦断方向に配置される直線状袋体12(構築施設の縦断方向に配置される袋体)に沿って平行に敷設するようにしている。
これにより、温度調整部材の敷設作業や温度管理を簡易に行うことができる。
【0025】
温度調整部材3は、熱媒体としての水(温水又は冷水)を供給するプラント31には、ボイラーやチラー等の適宜設備を用いることができる。
【0026】
温度調整部材3に熱媒体としての水(温水又は冷水)を循環させる経路は、図2に示すように、地盤G(構築施設)の形状等に合わせて適宜設定することができる。
ここで、図2(a)は、循環経路を簡易に構成する例を、図2(b)は、構築施設の横断方向に温度分布が生じないようにする例を、図2(c)は、構築施設の縦断方向に温度分布が生じないようにする例を、それぞれ示す。
【0027】
そして、袋体1内に充填した流動性固化材の固化温度を管理、具体的には、低温期には、ボイラーを備えたプラント31から温度調整部材3に温水(例えば、30〜40℃程度の温水)を循環させることによって流動性固化材を充填した袋体1の周囲の温度を上昇させる(例えば、5℃程度以上の温度にする)ことで施工期間の短期化を図り、高温期には、チラーを備えたプラント31から温度調整部材3に冷水(例えば、10〜20℃程度の温水)を循環させることによって流動性固化材を充填した袋体1の周囲の温度を低下させる(例えば、35℃程度以下の温度にする)ことで流動性固化材の水分の蒸発速度を管理して剛性補強体の品質を確保することができる。
これにより、低温期や高温期においても、通常期(中温期)と変わらない品質の剛性補強体を構築することができる。
【0028】
また、温度調整部材3は、袋体1内に充填した流動性固化材が固化した後、回収することにより、再利用に供することができる。
【0029】
以上、本発明の地盤の表面処理方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の地盤の表面処理方法は、袋体内に充填した流動性固化材の固化温度を管理することにより、施工期間の短期化と、剛性補強体の品質を確保することができるという特性を有していることから、鉄道や道路を仮設する場合の地盤の表面処理に好適に用いることができるほか、軟弱な地盤に駐車場を仮設する場合の地盤の表面処理等、地盤の表面処理の用途に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 袋体
11 櫛状袋体(構築施設の横断方向に配置される袋体)
11a 基端側袋体
11b 分岐側袋体
12 直線状袋体(構築施設の縦断方向に配置される袋体)
2 面状部材
3 温度調整部材
31 プラント
4 養生シート
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性固化材が充填される袋体を、地盤上に敷設した面状部材上に格子状になるように敷設し、袋体内に流動性固化材を充填、固化させることによって剛性補強体を形成するようにした地盤の表層処理方法において、袋体と共に温度調整部材を敷設し、袋体内に充填した流動性固化材の固化温度を調節するようにしたことを特徴とする地盤の表層処理方法。
【請求項2】
温度調整部材が、熱媒体を循環させるようにしたチューブ部材からなることを特徴とする請求項1に記載の地盤の表層処理方法。
【請求項3】
袋体及び温度調整部材の上に養生シートを敷設し、袋体及び温度調整部材の全体を覆うようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤の表層処理方法。
【請求項4】
袋体内に充填した流動性固化材が固化した後、温度調整部材を回収することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の地盤の表層処理方法。
【請求項5】
袋体が、縦断方向に配置される流動性固化材が充填される基端側袋体及び該基端側袋体に対して直角方向に間隔をあけて複数列に並んで横断方向に配置され、基端側袋体に連通して基端側袋体から流動性固化材が充填されるようにした分岐側袋体からなる櫛状袋体と、櫛状袋体の基端側袋体と間隔をあけて平行に縦断方向に配置される直線状袋体とからなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の地盤の表層処理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−31596(P2012−31596A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170284(P2010−170284)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】