説明

地盤埋設杭体及びその製造方法

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的な地盤埋設杭体を提供することを目的とする。
【解決手段】地盤1に埋設して該地盤1を補強する地盤埋設杭体であって、ホットメルト樹脂2と炭材3と繊維6を混合して構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を補強するための地盤埋設杭体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、益々耐震構造への関心が高まる中、例えば特開平10−204876号に開示されるような建築物を構築する地盤を補強するための地盤補強工法が提案されている。
【0003】
この地盤補強工法は、地盤の複数箇所に形成した掘削穴夫々に、例えば掘削土に固化材としてのセメントを混ぜた地盤補強材を打設して地盤に杭状体を設けることで、地盤を補強するものである。この地盤に設けた杭状体の上部に建築物(基礎)を設ける。
【0004】
ところで、この地盤補強工法で使用される地盤補強材は、前述したように掘削土に混ぜる固化材としてセメントを使用するのが一般的であるが、このセメント含有の地盤補強材を埋設した地盤から人体や自然環境に悪影響を及ぼす有害物質(例えば6価クロム)が発生するという問題点が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−204876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、前述した問題点に着目し、種々の実験研究を繰り返し行い、その結果、従来にない作用効果を発揮する画期的な地盤埋設杭体及びその製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
地盤1に埋設して該地盤1を補強する地盤埋設杭体であって、ホットメルト樹脂2と炭材3と繊維6を混合して構成したものであることを特徴とする地盤埋設杭体に係るものである。
【0009】
また、地盤1に埋設して該地盤1を補強する地盤埋設杭体であって、ロジン2と炭材3と繊維6を混合して構成したものであることを特徴とする地盤埋設杭体に係るものである。
【0010】
また、前記炭材3として粉状若しくは粒状の炭材を採用したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の地盤埋設杭体に係るものである。
【0011】
また、前記繊維6として生糸や綿糸や麻糸などの天然繊維を採用したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤埋設杭体に係るものである。
【0012】
また、地盤1に埋設して該地盤1を補強する地盤埋設杭体の製造方法であって、加熱溶融したホットメルト樹脂2に繊維6を混合するとともに炭材3を混合し、続いて、このホットメルト樹脂2と炭材3と繊維6の混合物Mを圧縮するとともに固化せしめて杭状に成形することを特徴とする地盤埋設杭体の製造方法に係るものである。
【0013】
また、加熱溶融したホットメルト樹脂2に繊維6を混合した後、このホットメルト樹脂2と繊維6とを混合したものに炭材3を混合して前記混合物Mを作出することを特徴とする請求項5記載の地盤埋設杭体の製造方法に係るものである。
【0014】
また、地盤1に埋設して該地盤1を補強する地盤埋設杭体の製造方法であって、加熱溶融したロジン2に繊維6を混合するとともに炭材3を混合し、続いて、このロジン2と炭材3と繊維6の混合物Mを圧縮するとともに固化せしめて杭状に成形することを特徴とする地盤埋設杭体の製造方法に係るものである。
【0015】
また、加熱溶融したロジン2に繊維6を混合した後、このロジン2と繊維6とを混合したものに炭材3を混合して前記混合物Mを作出することを特徴とする請求項7記載の地盤埋設杭体の製造方法に係るものである。
【0016】
また、前記炭材3として粉状若しくは粒状の炭材を採用したことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の地盤埋設杭体の製造方法に係るものである。
【0017】
また、前記繊維6として生糸や綿糸や麻糸などの天然繊維を採用したことを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の地盤埋設杭体の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、例えば地盤を補強するに十分な強度を有し、しかも、前述した従来のように有害物質(例えば6価クロム)を発生する材料(セメント)は使用せず、環境に優しい樹脂材料を使用する為、人体や自然環境に対する影響を可及的に抑制することができ、そして更に、軽量であり取り扱い性が良く、例えば現場までの搬送もコスト安に良好に行え、施工性も良いなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な地盤埋設杭体及びその製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例に係る地盤補強杭体を示す斜視図である。
【図2】本実施例に係る地盤補強杭体の製造方法の説明図である。
【図3】本実施例の施工状態説明図である。
【図4】本実施例の施工状態説明図である。
【図5】本実施例により補強が行われた地盤の説明図である。
【図6】本実施例に係る地盤補強杭体と比較試験体A,Bの強度試験の結果を示す表である。
【図7】比較試験体Aのひずみ試験の結果を示すグラフである。
【図8】比較試験体Bのひずみ試験の結果を示すグラフである。
【図9】本実施例に係る地盤補強杭体(比較試験体C)のひずみ試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
本発明に係る地盤埋設杭体を地盤1に埋設する。
【0022】
具体的には、例えば地盤1に形成した掘削穴1aに、本発明に係る地盤埋設杭体を配設して地盤1を補強する。
【0023】
この本発明に係る地盤埋設杭体は、ホットメルト樹脂2と炭材3と繊維6を混合して構成したものであり、従来から使用されるセメントで構成されたものと異なり、地盤1に配した後での有害物質の発生は可及的に抑制される。
【0024】
また、ホットメルト樹脂2は適度な強度を有する為、このホットメルト樹脂2を主材料として構成された地盤埋設杭体は地盤1を補強するに十分な強度が得られる。
【0025】
ところで、ホットメルト樹脂2(例えばロジン)は圧縮強度はあるが、ぶつかるなどの衝撃に対して脆い性質があり、よって、実際に製品化した場合の取り扱い性(搬送性や施工性)を考慮すると、ホットメルト樹脂2だけで構成するのは現実難しい。
【0026】
そこで、本発明は、炭材3及び繊維6を混ぜることでホットメルト樹脂2の脆弱性は低減され、飛躍的に耐久性を向上することができ、前述した問題点が解消される。この点は本発明者が行った実験により確認済み。
【0027】
また、ホットメルト樹脂2は樹脂故に成形し易く、しかも、ホットメルト樹脂2は加熱による再生が可能であるから、例えば万一、施工現場への搬送途中や施工現場での施工の際に破損した場合でも加熱することで再加工が可能となる。つまり、その場で簡易且つ確実に破損箇所を補修することができる。
【0028】
また、ホットメルト樹脂2は軽量であり、地盤埋設杭体全体が軽量となるからより扱い性(搬送性及び施工性)が極めて良好となる。
【実施例】
【0029】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0030】
本実施例は、地盤1の補強(改良)を目的として地盤1に埋設する地盤埋設杭体Pである。
【0031】
具体的には、本実施例は、図1に図示したようにホットメルト樹脂2(ロジン)と炭材3と繊維6を混合して地盤埋設杭体Pを構成しており、予め工場で二次成形品として形成している。
【0032】
この地盤埋設杭体Pのサイズは様々であり、例えば直径約150mm〜300mm,長さ約2〜5mである。
【0033】
尚、地盤埋設杭体Pの径や長さは前述したものに限らず様々であり、また、地盤埋設杭体Pは例えば1mの長さに分割された複数本で一本の杭体を構成する分割タイプとしても良い。
【0034】
また、本実施例では、ホットメルト樹脂2(熱可塑性樹脂・ホットメルト接着剤)として天然樹脂のロジン(ガムロジン2)を採用しており、熱を加えると溶融し、温度が下がれば、固化してもとの物質に戻り、再加熱も可能である。
【0035】
また、本実施例では、炭材3として竹の端材や間伐材を炭化した木炭から成る粉状の炭材を採用している。
【0036】
尚、炭材3は粉状に限らず粒状でも良く、また、木炭に限られるものではない。また、この炭材3は後述する地盤埋設杭体Pの製造時に、ガムロジン2を加熱溶融する際や、溶融したガムロジン2と炭材3と繊維6を混合した混合物Mを加熱する際に加熱炉で熱源とした木材で生じた炭材3でも良い。
【0037】
また、本実施例では、繊維6として天然繊維としての麻糸を採用している。
【0038】
尚、繊維6としては、生糸や綿糸などの天然繊維の他、化学繊維でも良いなど本実施例の特性を発揮するものであれば適宜採用し得るものである。
【0039】
また、本実施例では、ガムロジン2と炭材3との配合割合は1:1〜2:1としており、具体的には、ガムロジン2を130g、炭材3を100gとした際、繊維6(麻糸)を1〜2g添加している。
【0040】
以上の構成から成る地盤埋設杭体Pの製造方法について説明する。
【0041】
先ず、加熱手段7を有する容体8内にて固形状のガムロジン2を加熱して溶融する(図2中の(a)参照)。
【0042】
続いて、溶融した液状のガムロジン2に繊維6(麻糸)を入れて混合して、ガムロジン2中に繊維6を均一状態とし(図2中のb参照)、その後、このガムロジン2と繊維6(麻糸)を混合させたものに炭材3を入れて混合して混合物Mを得、この混合物Mを暫く加熱する(図2−(c),(d)参照)。尚、ガムロジン2に繊維6(麻糸)を混ぜる前に炭材3(木炭)を先に入れた場合、炭材3(木炭)が混ざりにくく均一に混ざらないことを確認した。
【0043】
続いて、複数に分割可能な金型4内に混合物Mを入れる(図2−(e)参照)。この金型4は加熱手段9で加熱可能であり、この金型4内に混合物Mを入れている最中にも金型4を加熱して部分的に固まってしまうことを防止している。
【0044】
続いて、この金型4内の混合物Mを押圧体5で押圧(加圧)して圧縮しつつ常温で冷却(若しくは急速冷却)して固化し、その後、脱型して地盤埋設杭体Pが完成する(図2−(f),(g)参照)。
【0045】
以上の構成から成る本実施例に係る地盤埋設杭体Pを用いた地盤補強工法について説明する。
【0046】
先ず、地盤1の所定箇所に掘削機10にて複数の掘削穴1aを形成する(図3参照)。
【0047】
続いて、掘削穴1a夫々に地盤埋設杭体Pを挿入配設することで地盤補強工法は完了する(図4参照)。
【0048】
その後、地盤1の上面にして地盤埋設杭体P夫々の上端部が一体となるように基礎11を設け、この基礎11上に建築物12を設ける(図5参照)。
【0049】
本実施例では、地盤1として上部に建築物12を構築する地盤1であるが、本実施例に係る地盤埋設杭体Pを使用する地盤1としては法面や護岸などの補強が必要な土地・土壌領域を広く含むものである。
【0050】
本実施例は上述のように構成したから、本実施例に係る地盤埋設杭体Pは地盤1を補強するに十分な強度を有する。
【0051】
即ち、前述のようにして得られた本実施例に係る地盤埋設杭体Pの強度について試験したところ、実際の使用に十分な強度が得られた。
【0052】
図6の表は、ガムロジン2に混合する部材の異なる各試験体A,B及びCの強度を計測したものである。この試験体A−1,A−2及びA−3はガムロジンとパラフィンを混合して成形したもの、試験体B−1,B−2及びB−3はガムロジンと木炭を混合して成形したもの、試験体C−1,B−2及びB−3はガムロジンと木炭と麻糸を混合して成形した本実施例に係る地盤埋設杭体Pである。
【0053】
図6の表から、試験体Cは最も強度(平均強度36.6)があり、この数値は実際に地盤1を補強するに十分対応することができる数値である。
【0054】
また、図7〜9は各試験体A,B及びCのひずみを調べたものであり、試験体Cは他の試験体A,Bに比べて強度がありひずみが小さいことが分かる。
【0055】
従って、本実施例に係る地盤埋設杭体Pは地盤1を補強するに十分な強度を有する。
【0056】
また、本実施例は、前述した従来のように有害物質(例えば6価クロム)を発生する材料(セメント)は使用せず、天然材料を使用する為、人体や自然環境に対する影響を可及的に抑制することができ、そして更に、軽量であり取り扱い性が良く、例えば現場までの搬送もコスト安に良好に行え、施工性も良いことになり、また、環境に優しいものとなる。
【0057】
また、本実施例は、ガムロジン2に混合する炭材3として、ガムロジン2を溶融する際などに熱源として使用する木材3’を燃焼して成る炭材3を使用するものであるから、極めて効率的であり、この点においても環境に優しいものとなる。
【0058】
また、本実施例は、加工が容易故に加工時間を短縮でき、二酸化炭素の排出も可及的に削減される為、この点においても環境に優しくてエコロジーである。
【0059】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0060】
M 混合物
1 地盤
2 ホットメルト樹脂・ロジン
3 炭材
6 繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設して該地盤を補強する地盤埋設杭体であって、ホットメルト樹脂と炭材と繊維を混合して構成したものであることを特徴とする地盤埋設杭体。
【請求項2】
地盤に埋設して該地盤を補強する地盤埋設杭体であって、ロジンと炭材と繊維を混合して構成したものであることを特徴とする地盤埋設杭体。
【請求項3】
前記炭材として粉状若しくは粒状の炭材を採用したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の地盤埋設杭体。
【請求項4】
前記繊維として生糸や綿糸や麻糸などの天然繊維を採用したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤埋設杭体。
【請求項5】
地盤に埋設して該地盤を補強する地盤埋設杭体の製造方法であって、加熱溶融したホットメルト樹脂に繊維を混合するとともに炭材を混合し、続いて、このホットメルト樹脂と炭材と繊維の混合物を圧縮するとともに固化せしめて杭状に成形することを特徴とする地盤埋設杭体の製造方法。
【請求項6】
加熱溶融したホットメルト樹脂に繊維を混合した後、このホットメルト樹脂と繊維とを混合したものに炭材を混合して前記混合物を作出することを特徴とする請求項5記載の地盤埋設杭体の製造方法。
【請求項7】
地盤に埋設して該地盤を補強する地盤埋設杭体の製造方法であって、加熱溶融したロジンに繊維を混合するとともに炭材を混合し、続いて、このロジンと炭材と繊維の混合物を圧縮するとともに固化せしめて杭状に成形することを特徴とする地盤埋設杭体の製造方法。
【請求項8】
加熱溶融したロジンに繊維を混合した後、このロジンと繊維とを混合したものに炭材を混合して前記混合物を作出することを特徴とする請求項7記載の地盤埋設杭体の製造方法。
【請求項9】
前記炭材として粉状若しくは粒状の炭材を採用したことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の地盤埋設杭体の製造方法。
【請求項10】
前記繊維として生糸や綿糸や麻糸などの天然繊維を採用したことを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の地盤埋設杭体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−36198(P2013−36198A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171816(P2011−171816)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(500140312)有限会社 錐建 (1)
【Fターム(参考)】