説明

地盤変形防止方法およびそれを用いた地中構造物構築方法

【課題】地盤の変形を防止できる新たな地盤変形防止方法およびこれを用いた地中構造物構築方法を提供することを課題とする。
【解決手段】地盤10内に、トンネル(小断面トンネル20)を構築し、トンネル(内に、その下方の地盤1の変形を防止するための押さえ構造体30を構築することを特徴とし、押さえ構造体30は、既存地中構造物(下水用トンネル2)の上方に構築されて、既存地中構造物の浮上りを防止する。さらに、押さえ構造体30が、地盤1内に構築される新設地中構造物(大断面トンネル10)の底版11を構成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤変形防止方法およびそれを用いた地中構造物構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、開削工事等において、盤膨れと呼ばれる地盤変形が発生することがある。この盤膨れは、掘削底面の地盤が膨れ上がる現象である。盤膨れの原因としては、1.掘削による応力解放や楊圧力、2.土塊や岩塊が水に触れて崩壊したことによる体積の膨張、3.地下に埋設された地下構造物の上方の地山が掘削されて軽量化したことによる地下構造物の浮上り、4.地下水圧の上昇による地下構造物の浮上り等が考えられる。従来は、例えば、掘削底面を地盤改良して固化することで、盤膨れを防止するようになっていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−171949号公報
【特許文献2】特開2001−182088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来技術では、掘削工程の前に、固化剤注入用パイプを地上から底版深さまで挿入して地盤改良を行っていた。この方法では、地上からの作業となるため、道路規制などに多くの手間と時間を要する。また、地盤改良領域の上部に既設地中構造物が埋設されて固化剤注入用パイプの挿入が困難な場合等、工事現場の種々の制限によって盤膨れ等の地盤変形を防止する領域の全体に渡って地盤改良を行うことが不可能な場合もある。そこで、従来技術に代わる新たな工法が求められている。
【0005】
このような観点から、本発明は、地盤の変形を防止できる新たな地盤変形防止方法およびこれを用いた地中構造物構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のような課題を解決するために創案された本発明は、地盤内にトンネルを構築し、前記トンネル内に、その下方の地盤の変形を防止するための押さえ構造体を構築することを特徴とする地盤変形防止方法である。
【0007】
このような方法によれば、トンネルの構築後にその内部に押さえ構造体を構築するので、押さえ構造体は地中の作業で構築することができ、地上からの作業を低減できるとともに、地盤変形を防止する領域の全体に渡って地盤改良を行うことが不可能な場合でも盤膨れ等の地盤変形を防止することができる。
【0008】
そして、前記押さえ構造体を既存地中構造物の上方に構築すれば、前記既存地中構造物の浮上りを防止することができるので、地盤変形を防止できる。
【0009】
また、前記押さえ構造体を、前記地盤内に構築される新設地中構造物の底版として利用すれば、新設地中構造物の底版の構築工程を省略できる。
【0010】
さらに、本発明は、地盤内に構築される新設地中構造物の構築予定位置の底部に、トンネルを構築する底部構築工程と、前記トンネル内に押さえ構造体を構築する押さえ構造体構築工程と、前記トンネルの上方を掘削して、前記新設地中構造物の上部を構築する上部構築工程と、を備えたことを特徴とする地中構造物構築方法である。
【0011】
このような方法によれば、トンネルの構築後にその内部に押さえ構造体を構築するので、地上からの作業を低減できる。また、トンネルは断面が小さいので、押さえ構造体の構築前にトンネルを構築しても、盤膨れ等の地盤変形が発生する可能性は少ない。さらには、押さえ構造体を新設地中構造物の底版として有効利用することもできる。
【0012】
また、前記押さえ構造体を、その下方の地盤に埋設したアンカーに接続すれば、押さえ効果の向上を図れる。或いは押さえ構造体の重量が少なくて済むので薄くすることができる。
【0013】
さらに、前記トンネル構築工程で推進工法またはシールド工法によって前記トンネルを構築し、前記上部構築工程で開削工法によって前記新設地中構造物の上部を構築すれば、開削に先立って押さえ構造体が構築されるので、地表から地盤を掘り下げたときでも、押さえ構造体が「重し」となって、盤膨れ等の地盤変形を防止できる。
【0014】
また、前記上部構築工程で、前記小断面トンネルの幅方向外側に形成された土留壁と、前記小断面トンネルとの間を止水すれば、施工領域への浸水を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地盤改良に代わる新たな工法によって地盤の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る地盤変形防止方法および地中構造物構築方法を適用する地盤を示した断面図である。
【図2】本発明に係る地盤変形防止方法および地中構造物構築方法の実施形態において、小断面トンネルを構築した状態を示した断面図である。
【図3】掘削機を示した正面図である。
【図4】本発明に係る地盤変形防止方法および地中構造物構築方法の実施形態において、押さえ構造体を構築した状態を示した断面図である。
【図5】本発明に係る地盤変形防止方法および地中構造物構築方法の実施形態において、小断面トンネルの上方を開削した状態を示した断面図である。
【図6】本発明に係る地盤変形防止方法および地中構造物構築方法の実施形態において、小断面トンネルの上部を切除した状態を示した断面図である。
【図7】本発明に係る地盤変形防止方法および地中構造物構築方法の実施形態において、大断面トンネルの上部を構築した状態を示した断面図である。
【図8】本発明に係る地盤変形防止方法および地中構造物構築方法の実施形態において、大断面トンネルが完成した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、大断面トンネルの下部を、小断面トンネルを利用して構築する場合を例に挙げて、地盤変形防止方法およびこれを用いた地中構造物構築方法を説明する。
【0018】
地盤変形防止方法は、盤膨れ等の地盤変形を防止するための方法であって、地盤内にトンネル(後記する小断面トンネル)を構築し、トンネル内に、その下方の地盤の変形を防止するための押さえ構造体を構築することを特徴とする。
【0019】
本実施形態に係る地中構造物構築方法は、新設地中構造物である大断面トンネル10の下部(底版11)を、小断面トンネル20(請求項におけるトンネル)を利用して構築する大断面トンネルの構築方法であって、地盤内に構築される新設地中構造物の構築予定位置の底部に、トンネルを構築する底部構築工程と、大断面トンネル10の構築予定位置12の底部に、小断面トンネル20を構築する底部構築工程と、小断面トンネル20内に、押さえ構造体30を構築する押さえ構造体構築工程と、小断面トンネル20の上方を掘削して、大断面トンネル10の上部14を構築する上部構築工程と、を備えている。本実施形態に係る地中構造物構築方法は、押さえ構造体30を、その下方に埋設したアンカー22に接続するアンカー接続工程と、小断面トンネル10の幅方向外側に形成された土留壁55と、小断面トンネル10との間を止水する止水工程と、をさらに備えている。
【0020】
なお、本実施形態では、大断面トンネル10の下部のみを小断面トンネル20を利用して構築しているが、本発明に係る地中構造物構築方法は、これに限定されるものではない。つまり、大断面トンネルの少なくとも下部を、小断面トンネルを利用して構築していればよく、大断面トンネルの下部よりも上方部分までを、推進工法またはシールド工法で構築される小断面トンネルを利用して構築するようにしてもよい。
【0021】
本実施形態では、図1に示すように、大断面トンネル10(図8参照)を構築する地盤1内に、下水用トンネル(暗渠)2が既存地中構造物として埋設されている。下水用トンネル2は、大断面トンネル10の延長方向に沿って二本並列して埋設されている。大断面トンネル10は、下水用トンネル2の上方で、下水用トンネル2に沿って構築される。
【0022】
(底部構築工程)
まず、図2に示すように、地盤1内で、下水用トンネル2の上方に小断面トンネル20を構築する。小断面トンネル20は、大断面トンネル10の構築予定位置12の底部に構築する。小断面トンネル20は、複数並列して構築され、幅方向に隣接して直線状に配置されている(本実施形態では五列)。小断面トンネル20の断面積は、小断面トンネル20の断面分の地盤土砂が取り除かれても、小断面トンネル20とその周囲の地盤土砂の重量によって下水用トンネル2の浮上りを防止できる値となるように算出する。
【0023】
小断面トンネル20は、推進工法やシールド工法等の公知のトンネル構築工法(本実施形態では推進工法)によって構築されている。小断面トンネル20は、その断面形状が、長方形の上側の二つのコーナー部が直線状に面取りされた六角形を呈している。なお、小断面トンネル20の断面形状は、六角形に限定されるものではなく、地盤の状態に応じて適宜決定される。
【0024】
小断面トンネル20の推進函体21の先端には、図3に示した掘削機50が設けられている。掘削機50は、図示しない発進立坑から到達立坑に向かって推進する。掘削機50は、正面にメインカッタ51とコーナーカッタ52を備えて構成されている。メインカッタ51は、掘削機50の正面の中心に軸部が配置されており、小断面トンネル20の大部分を掘削する。コーナーカッタ52は、正面下部の両側のコーナー部に配置されており、小断面トンネル20の下側の二つの出隅部を掘削する。なお、地盤1に礫が多く含まれている場合において、本実施形態のように、上側のコーナー部を面取りし、コーナーカッタを省略して、コスト低減を図っている。但し、大断面トンネルの上部も小断面トンネルを利用して構築する場合は、コーナーカッタを四隅に設けて断面矩形の掘削機とする。また、地盤が比較的掘削しやすい場合も、断面矩形の掘削機としてもよい。
【0025】
(アンカー接続工程)
次に、中央の小断面トンネル20の底部に孔をあけて、図4に示すように、この孔から下方の地盤に向けてアンカー22を挿入する。アンカー22は、トンネルの長手方向に沿って所定ピッチで複数形成される。アンカー22は、押さえ構造体30を小断面トンネル20内に構築する際に、押さえ構造体30に接続される。なお、本実施形態では、アンカー22を形成した後に、押さえ構造体30を構築しているが、この施工順序に限定されるものではなく、押さえ構造体を構築した後にアンカーを形成するようにしてもよい。
【0026】
(押さえ構造体構築工程)
押さえ構造体構築工程では、小断面トンネル20内に、押さえ構造体30を構築する。押さえ構造体30は、鉄筋コンクリート製のスラブにて構成されている。本実施形態では、押さえ構造体30は、小断面トンネル20の上部を開削したときに下水用トンネル2の浮上りを防止できる重量に形成される。押さえ構造体30を構築するに際しては、隣接する推進函体21,21の接触部分の鋼殻のスキンプレートを撤去し、複数の小断面トンネル20,20・・・の内部を連通させる。そして、連通された各小断面トンネル20内部に、配筋を連続的に施して、所定の厚さになるようにコンクリートを打設する。コンクリートは、発進立坑または到達立坑から小断面トンネル20内を通って供給され、小断面トンネル20内で打設される。
【0027】
このとき、アンカー22の頭部の周囲にも適宜配筋が施されており、押さえ構造体30とアンカー22が一体化される(アンカー接続工程)。押さえ構造体30は、小断面トンネル20内に一体形成されたコンクリート構造体31と、推進函体21の下部21aとで構成される。このように押さえ構造体30を、小断面トンネル20内に構築することで、下水用トンネル2上方の重量を確保し、上から押さえることで、押さえ構造体30が「重し」となり、下水用トンネル2の浮き上がりを防止する。
【0028】
(上部構築工程)
次に、上部構築工程に移行する。図5乃至図7に示すように、本実施形態の上部構築工程では、開削工法によって大断面トンネル10の上部14を構築する。
【0029】
まず、図5に示すように、押さえ構造体構築工程と前後あるいは並行して、並列された複数の小断面トンネル20,20・・・の幅方向外側に、土留壁55を形成する。土留壁55は、開削工程にて地盤を掘り下げる前に、大断面トンネル10の構築予定位置の両側に形成しておく。土留壁55は、例えば、H形鋼等からなる土留杭を複数打ち込んで、隣り合う土留杭の間に矢板をはめ込んで形成される。
【0030】
その後、小断面トンネル20の上方を地上から開削する。地盤1を掘り下げたら、互いに対向する土留壁55,55間に梁等を組み付けて山留支保工56を形成し、開削溝の内側から土留壁55を支持する。開削と並行して、土留壁55と小断面トンネル20との間を止水する(止水工程)。この止水は、土留壁55と小断面トンネル20との間およびその下方の地盤57を地盤改良することで行う。地盤改良は、地盤57内にセメントミルクや固化薬液などの注入材を注入して、透水係数を小さくする。ここで、下水用トンネル2の上方の地盤1が取り除かれることとなるが、押さえ構造体30が下水用トンネル2を上から押さえているので、下水用トンネル2が浮き上がることはない。
【0031】
止水工事が完了したら、図6に示すように、小断面トンネル20の推進函体21の上部21b(押さえ構造体30のコンクリート構造体31よりも上方に突出している部分)を切断して撤去する。推進函体21は、押さえ構造体30の上面と同等の高さで切断する。押さえ構造体30と推進函体21の下部21aとで、大断面トンネル10の下部(底版11)が構成される。
【0032】
その後、底版11の上部にアンカー筋(図示せず)を設置するとともに、型枠(図示せず)を形成する。そして、トンネル長手方向の所定長さのエリアごとに、山留支保工56を撤去して、型枠内にコンクリートを打設し大断面トンネル10の上部14を構築する。所定の養生期間を経て大断面トンネル10の強度が発現したら、大断面トンネル10と土留壁55間に山留支保工56’形成する。その後、大断面トンネル10の上部14の構築が完了した隣のエリアで、前記工程を順次繰り返し行って、大断面トンネル10の上部14を構築する。このように、所定長さのエリア毎に、山留支保工56,56’を盛り替えていくことで、コンクリートの打設時に山留支保工56が取り除かれる長さを短くできるので、地盤1の壁面の山留めを行うことができる。
【0033】
大断面トンネル10の全長に渡って上部14の構築が完了したら、埋め戻しを行いつつ、山留支保工56’を撤去して、トンネル構築が完了する。このとき、土留壁55も埋設する。
【0034】
以上説明したような地盤変形防止方法および地中構造物構築方法によれば、地盤1内に、小断面トンネル20を構築し、その小断面トンネル20内に、押さえ構造体30を構築しているので、地盤1内の工事で、地盤1の変形を防止できる。特に、本実施形態では、下水用トンネル2の上方に押さえ構造体30を形成しているので、下水用トンネル2の浮き上がりを防止することができる。また、地盤変形防止のための工事における地上からの作業を地中に形成した小断面トンネル10の内部で行うので、地上から固化剤を注入していた従来と比較して、大幅に低減することができる。これによって、道路規制等の地上での影響を最小限にすることができる。
【0035】
また、本実施形態のように地中で押さえ構造体30を構築する新たな地盤変形防止方法および地中構造物構築方法によれば、従来の工法において地盤改良領域の上部に既設地中構造物が埋設されて固化剤注入用パイプの挿入が困難な場合等の、地盤変形を防止する領域の全体に渡って地盤改良を行うことが不可能な場合であっても、地盤1の変形を防止することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、押さえ構造体30は、推進函体21の下部21aと合わせて、後の工程で地盤1内に構築される大断面トンネル10の底版11を構成するので、押さえ構造体30を有効利用することができる。これによって、大断面トンネル10の工期短縮とコストダウンが達成できる。言い換えれば、大断面トンネル10の底版11を利用して地盤の変形を防止しているので、従来の固化剤注入のような地盤変形防止のためのみの工事を行う必要がなく、その分の工期やコストを省略することができる。
【0037】
また、本実施形態では、押さえ構造体30を、その下方の地盤1に埋設したアンカー22に接続しているので、地盤1の変形を防止する押さえ効果の向上を図れる。また、押さえ構造体30をアンカー22に接続することで、押さえ構造体30の重量を減らすことができるので、押さえ構造体30本体を薄くすることができる。これによって、押さえ構造体30の構築に必要なコストおよび工期を低減することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、開削工法によって大断面トンネル10の上部を構築しているので、上部構築工程における工期短縮およびコストダウンを図ることができる。また、開削工事における土留杭54の打ち込みを、押さえ構造体30の構築後に行っているので、地上からの作業(土留杭54の打ち込み)を、開削工程の日程と連続して行える。これによって、道路規制の期間を最小限に抑えることができる。
【0039】
さらに、上部構築工程では、小断面トンネル20の幅方向外側に形成された土留壁55と、小断面トンネル20との間を止水しているので、施工領域への浸水を防止でき、施工環境の向上を図れる。なお、地盤1の状態(地下水が少ない場合等)によっては、止水工事を行わなくてもよい場合もある。
【0040】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、押さえ構造体30は、下水用トンネル2の上方に設けられ、その浮上りを防止するように構成されているがこれに限定されるものではない。下水用トンネルが埋設されていない地盤1内であっても、地盤の浮上りや変形の虞がある地盤、例えば、地下水圧が高い地盤等において、大断面トンネルを構築する場合に、その大断面トンネルの構築予定位置の底部に小断面トンネルを構築して、その小断面トンネル内に押さえ構造体を形成するようにしてもよい。また、既存地中埋設物は下水用トンネル2に限定されるものではなく、地下鉄の函体や建築物の布基礎等、地中に埋設されている構造物であっても、本発明は適用可能である。
【0041】
さらに、本実施形態の上部構築工程では、開削工法によって大断面トンネル10の上部14を構築しているが、これに限定されるものではなく、上部14も小断面トンネルを利用して構築するようにしてもよい。このようにすれば、地上からの作業をさらに低減することができる。
【0042】
また、前記実施形態では、大断面トンネル10が地盤1内に構築される新設地下構造物であったが、これに限定されるものではない。例えば、地下に埋設される地下タンク等の他の地下構造物であってもよい。この場合、地下タンクの下方に形成される基礎部分にトンネルを形成して、そのトンネル内に押さえ構造体を構築することとなる。これによって、基礎部分およびその下方の地盤の変形を防止することができる。
【0043】
さらに、本発明に係る地盤変形防止方法においては、小断面トンネルの構築位置は、大断面トンネルの構築予定位置の底部に限定されるものではない。具体的には、トンネル等の地下構造物を構築する場所でなくても、例えば地下水圧の上昇等の理由によって地盤変形が発生する虞のある地盤の内部に、小断面トンネルを構築して押さえ構造体を構築するようにしてもよい。この場合においても、地上からの作業を省略できるので、道路規制等の地上への影響を低減することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 地盤
10 大断面トンネル(新設地中構造物)
11 底版
12 (大断面トンネルの)構築予定位置
14 (大断面トンネルの)上部
20 小断面トンネル(トンネル)
21a (小断面トンネルの)下部
21b (小断面トンネルの)上部
22 アンカー
30 押さえ構造体
55 土留壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内にトンネルを構築し、
前記トンネル内に、その下方の地盤の変形を防止するための押さえ構造体を構築する
ことを特徴とする地盤変形防止方法。
【請求項2】
前記押さえ構造体は、既存地中構造物の上方に構築され、前記既存地中構造物の浮上りを防止する
ことを特徴とする請求項1に記載の地盤変形防止方法。
【請求項3】
前記押さえ構造体は、前記地盤内に構築される新設地中構造物の底版を構成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地盤変形防止方法。
【請求項4】
地盤内に構築される新設地中構造物の構築予定位置の底部に、トンネルを構築する底部構築工程と、
前記トンネル内に押さえ構造体を構築する押さえ構造体構築工程と、
前記トンネルの上方を掘削して、前記新設地中構造物の上部を構築する上部構築工程と、を備えた
ことを特徴とする地中構造物構築方法。
【請求項5】
前記押さえ構造体を、その下方の地盤に埋設したアンカーに接続するアンカー接続工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項4に記載の地中構造物構築方法。
【請求項6】
前記底部構築工程では、推進工法またはシールド工法によって前記トンネルを構築し、
前記上部構築工程では、開削工法によって前記新設地中構造物の上部を構築する
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の地中構造物構築方法。
【請求項7】
前記トンネルの幅方向外側に形成された土留壁と、前記トンネルとの間を止水する止水工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項6に記載の地中構造物構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−26211(P2012−26211A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167743(P2010−167743)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)