説明

地盤安定化用混和剤、地盤安定化材料およびそれを用いた地盤安定化工法

【課題】粘性を低減させる効果が大きく、経時的に粘性が上昇することが抑制され、かつ、高い強度発現性が可能となる地盤安定化用混和剤、地盤安定化材料及びそれを用いた安定的な圧送が可能となる地盤安定化工法を提供する。
【解決手段】地盤安定化用混和剤であって、(a)アルカリ金属炭酸塩と(b)数平均分子量が12,500〜40,000に制御されたα,β−不飽和ジカルボン酸60〜85モル%とオレフイン40〜15モル%との共重合体又はその塩とを併用し、前記(a)と前記(b)の合計量に占める前記(a)の量の割合が45〜95質量%である混合物を含有してなることを特徴とする。また、セメント、該地盤安定化用混和剤及び水を含有してなる地盤安定化材料であり、該地盤安定化材料を地盤中に高圧注入し、土と混合して硬化させる地盤安定化工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にセメントミルクを高圧噴射し、地盤を硬化、安定化させる地盤安定化用混和剤、地盤安定化材料及び地盤安定化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤のような不良地盤を改良するためには、軟弱な地盤を硬化、安定化させなければならない。
この地盤安定化工法としては、例えば、セメントミルクを、高圧で地中深くに噴射し、土と混合して硬化させ安定化する工法が挙げられる(非特許文献1参照)。
この工法は、地中にセメントミルクを噴射する管を挿入し、管を回転させながら管先端付近からセメントミルクを高圧噴射し、地中の土を切削すると同時に、切削された土とセメントミルクとが混合された混合土を別の管内を通して地上へ排出しながら、一定速度で管を上昇させ、地中をセメントミルクと土との混合物で置換して硬化させ、地盤を安定化させる工法である。
切削によりセメントミルクと土を混合した場合に、セメント粒子と土の粒子が電気的作用により互いに凝集するために、セメントミルクと土との混合物である混合土の粘性が上昇し、そのため、これを地上へ排出できにくくなるといった課題があった。
【非特許文献1】坪井 直道著、薬液注入工法の実際、第5〜9頁、昭和56年3月25日、鹿島出版会、改訂版第2刷発行
【0003】
混合土の粘性を低下させるものとして、リン酸塩、アルカリ金属含有物(硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機酸およびアンモニウム塩等を含有する物質を組み合わせたものが知られている(特許文献1〜6参照)。
しかしながら、これらの超高圧噴流注入工法用セメント添加剤は、粘性土地盤において、粘性を低減させる効果が小さいために多量に添加する必要があり、その結果、強度発現性が向上しにくいという課題があった。
【特許文献1】特開平05−254903号公報
【特許文献2】特開平06−206747号公報
【特許文献3】特開平07−206495号公報
【特許文献4】特開平07−069695号公報
【特許文献5】特開2004−143041号公報
【特許文献6】特開平09−194835号公報
【0004】
また、粘性を低減させる効果が高いものにアルカリ金属炭酸塩とポリアクリル酸等のカルボン酸またはその1価塩を主要構成単量体単位とする重量平均分子量が25,000以下の低分子重合体を組み合わせたものが知られている(特許文献7参照)。
これらを使用した場合には、後述する比較例に示すように、練混ぜ直後の粘性は低下するものの経時的に粘性が上昇し安定的な排出が困難となり、さらに強度発現性が向上しにくいという課題があった。
【特許文献7】特許第3554496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決しようとするものであり、粘性を低減させる効果が大きく、経時的に粘性が上昇することが抑制され、かつ、高い強度発現性が可能となる地盤安定化用混和剤、地盤安定化材料及びそれを用いた安定的な圧送が可能となる地盤安定化工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、地盤安定化工法において、前記課題を解決すべく種々検討を行った結果、特定の地盤安定化用混和剤を使用することにより、液状化によって安定的に圧送が可能となり、そのうえ、高い強度発現が可能になるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)(a)アルカリ金属炭酸塩と(b)数平均分子量が12,500〜40,000に制御されたα,β−不飽和ジカルボン酸60〜85モル%とオレフイン40〜15モル%との共重合体またはその塩とを併用し、前記(a)と前記(b)の合計量に占める前記(a)の量の割合が45〜95質量%である混合物を含有してなることを特徴とする地盤安定化用混和剤である。
(2)前記(a)のアルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウムであることを特徴とする前記(1)の地盤安定化用混和剤である。
(3)セメント、前記(1)又は(2)の地盤安定化用混和剤及び水を含有してなる地盤安定化材料である。
(4)前記地盤安定化用混和剤を、セメント100質量部に対して、1〜10質量部使用することを特徴とする前記(3)の地盤安定化材料である。
(5)前記(3)又は(4)の地盤安定化材料を地盤中に高圧注入し、土と混合して硬化させる地盤安定化工法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の地盤安定化用混和剤及び地盤安定化材料を使用することにより、液状化によって安定的な圧送が可能となり、その上、高い強度発現が可能となるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。
【0010】
本発明の地盤安定化用混和剤(以下、本混和剤という)では、粘性低減効果、強度発現性を高める第一成分(a)として、アルカリ金属炭酸塩を使用する。
本発明に用いられるアルカリ金属炭酸塩としては、具体的に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられる。性能の面から、本発明に好ましいものは炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムであり、特に好ましいものは炭酸ナトリウムである。
【0011】
本発明ではさらに粘性低減効果を高める第二成分(b)として、数平均分子量が12,500〜40,000に制御されたα,β−不飽和ジカルボン酸60〜85モル%とオレフイン40〜15モル%との共重合体またはその塩を併用する。これは混合土の粘性を低下させる効果がある。
【0012】
第二成分(b)は、(ア)α,β−不飽和ジカルボン酸60〜85モル%、好ましくは65〜80モル%と(イ)オレフィン40〜15モル%、好ましくは35〜20モル%との共重合体またはその塩からなるものである。
α,β−不飽和ジカルボン酸60モル%未満(オレフィン40モル%超)であると、経時的に粘性が上昇し、また強度発現性が向上しにくく、α,β−不飽和ジカルボン酸85モル%超(オレフィン15モル%未満)であると、凝結が遅れ高い強度発現性が得られない場合があるので、上記の範囲が好ましい。
【0013】
さらに、第二成分(b)は、数平均分子量12,500〜40,000、好ましくは13,000〜20,000に制御されたものである。
数平均分子量12,500未満であると、経時的に粘性が上昇し、また強度発現性が向上しにくく、数平均分子量が40,000を超えると、増粘が生じる可能性があるので、上記の範囲が好ましい。
ここで数平均分子量とは、高速液体クロマトグラフ(テトラヒドロフラン溶媒、測定温度40℃)によって測定したポリスチレン換算のものを意味する。かかる共重合体は、従来から公知のポリカルボン酸系混和剤に比較して共重合体を構成するα,β−不飽和ジカルボン酸単位の量が大きいという特徴を有しており、かかる共重合体を併用することによって分散性および粘性の保持性の点で従来技術をしのぐ優れた性能を発揮する。なかでも分子量分布のシャープなものほど良好な性能を示す傾向があり、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.2以下、さらには2.1以下であることが好ましい。
【0014】
共重合体を構成する前記(ア)成分の具体例としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、これらの無水物等が挙げられるが、特に無水マレイン酸が工業的に有利である。
一方、前記(イ)成分の具体例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブテン−1、ブテン−2、ペンテン−1、ペンテン−2、2−メチルブテン−1、2−メチルブテン−2、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1などのごとき鎖状オレフィン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘブテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、2−エチル−5−ノルボルネン、2−シアノ−5−ノルボルネン、2−アセチル−5−ノルボルネンなどのごときシクロオレフィン等が挙げられ、なかでもC4〜6の鎖状オレフィン、C4〜C6のシクロオレフィン、とくにC5鎖状オレフィンが賞用される。
また本発明の効果を本質的に損わない範囲内であれば、アクリル酸、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、アクリロニトリル、エチレンスルホン酸などのビニルモノマーを共重合してもよく、さらに共重合体中のカルボキシル基および/または酸無水物基の一部をエステル化したりアミド化して用いることもできる。
【0015】
本発明で用いられる共重合体の製法はとくに制限されるものでなく、前記した性状の共重合体が得られる方法であればいずれでもよい。その具体例として、オレフィンに対して過剰量のα,β−不飽和ジカルボン酸を仕込んでラジカル重合したのち、高分子量部分を限外ろ過により除去する方法や溶媒を用いて高分子量部分を抽出分離する方法などが挙げられる。
生成した共重合体がそれ自身で水溶性の場合にはそのまま使用することができるが、通常は共重合体中に存在するカルボキシル基および/または酸無水物基の一部または全部を1価または多価のカチオンによって塩にし、水溶化能を高めて用いられる。かかる塩の具体例として、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、アンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのごときアミン塩およびこれらの塩の複合塩などが例示され、なかでも経済性、安全性、環境性などの見地からアルカリ金属塩がもっとも賞用される。
【0016】
第一成分(a)は、第一成分(a)と第二成分(b)の合計量に占める割合が、45〜95%が好ましく、50〜70%がより好ましい。45%未満では、十分に粘性が低減せず、かつ高い強度発現性が得られない場合があり、95%を超えると、経時的に粘性が上昇し、十分に粘性が低減しない場合がある。
【0017】
本発明では、オキシカルボン酸類を併用することでさらに優れた粘性を低減させる効果が得られる。
オキシカルボン酸類としてはクエン酸、酒石酸、グルコン酸およびリンゴ酸又はそれらのナトリウムやカリウム塩等のいずれも使用可能であるが、強度発現性を阻害しにくいクエン酸ナトリウムの使用が好ましい。これらのうちの一種又は二種以上を使用することが可能である。
オキシカルボン酸類の使用量は、第一成分と第二成分の合計100部に対して、0.1〜20部が好ましく、0.3〜10部がより好ましい。0.1部未満ではセメントの凝結を防ぐことが難しい場合があり、20部より多いと長期強度発現性が不良となる可能性がある。
【0018】
本混和剤の使用形態として、本混和剤に増量材を加えて使用することが可能である。増量材としては、特に限定されるものではないが、非晶質シリカ、セメント、フライアッシュ、高炉スラグ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0019】
本混和剤の添加時期は、その使用目的に応じて適宜選択することができる。その具体的な方法としては、例えばセメントに予め混合する方法、地盤の切削時に予め混合する方法、セメントと水の混練時に同時添加する方法やセメントと粘土と水の混練時に同時添加する方法などが例示される。
【0020】
本混和剤の使用形態は、粉末のもの、溶液化したものいずれも使用可能であるが、溶液化したものを使用する場合、水と混合して、攪拌して溶液化することが好ましい。攪拌することで溶解時間の短縮や均質な溶液を得ることが可能である。
材料の溶解タンクへの混合順序や投入速度は特に限定されるものではない。また、溶解タンク内での貯蔵性や製造に要する時間を調整するために、カルボン酸、アルカリ金属水酸化物および硫酸塩等を用いてpH調整をすることが可能である。
【0021】
本発明では、本混和剤とセメントと水とを混合して地盤安定化材料を調製する。
本発明で使用するセメントとしては特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強および中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらのポルトランドセメントに、高炉スラグやフライアッシュなどを混合した各種混合セメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)、並びに、市販されている微粒子セメントなどが挙げられ、各種ポルトランドセメントや各種混合セメントを微粉末化して使用することも可能である。また、通常セメントに使用されている成分(例えば石膏等)量を増減して調整されたものも使用可能である。
【0022】
本混和剤の使用量は、セメント100部に対して、1〜10部が好ましく、3〜7部がより好ましい。1部未満だと粘性低下の効果が小さい場合があり、10部を超えると強度発現性を阻害する場合がある。
【0023】
本発明で使用する水の使用量は、土の含水比等で異なり、特に限定されるものではないが、通常、セメント100部に対して、30〜500部が好ましく、50〜300部がより好ましい。30部未満ではスライムの流動性が小さく、500部を超えると強度発現性を阻害するおそれがある。
本混和剤は、粘性土に限らず、砂質土や腐食土等の土に対しても優れた効果がある。
【0024】
次に、本発明の地盤安定化工法について説明する。
まず、地盤改良が必要な箇所を削孔する。削孔径は特に限定されるものではないが注入ロッドが挿入できる大きさであればよい。
削孔の深さは、改良したい領域により変更し特に限定することはできないが、10〜50m程度が通常である。
次に、二重管や三重管構造の注入ロッドを挿入し、セメントミルクをグラウトポンプ、超高圧ポンプ、又はコンプレッサーなどを用いて圧送し、二重管又は三重管のノズルから噴射する。
【0025】
セメントミルクの圧送圧力は大きい方が好ましいが、二重管、三重管、又はこれらのノズルの磨耗等を考慮すると50〜700kg/cm程度が通常である。
セメントミルクの送液量は特に限定されるものではないが、30〜800リットル/分程度が好ましい。
【0026】
このように地中で高圧噴射されたセメントミルクは、土と一緒に混合攪拌され、また、注入ロッドは回転しながら一定速度で地上へ上昇するので、最終的にはセメントミルクと土とからなる円柱状の杭が地中に形成される。
この杭の直径は、地盤の硬さを示すN値等の土の条件や噴射の圧送圧力等の施工条件により変化し、特に限定されるものではないが、0.5〜20mが適当である。杭の長さは3〜50m程度のものが形成可能である。
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
(共重合体の製造)
オートクレーブ中、窒素雰囲気下にて無水マレイン酸98部、表1に示すC5オレフィン混合物76、87、110部、ベンゾイルパーオキサイド4部およびベンゼン400部の混合物を、70〜75℃にて8時間加熱攪拌し、反応させた。重合反応終了後、析出した共重合体をろ別集収し乾燥して、C5オレフィン−無水マレイン酸共重合体を得た。なお、C5オレフィン混合物76部については、この共重合体をメチルエチルケトンに溶解し、限外ろ過することで高分子量部分を除去した。
次いでこれら共重合体100部に対して水300部を加え、攪拌しながら10%水酸化ナトリウム水溶液600部を徐々に添加攪拌することにより水溶性塩を得た。結果を表2に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
(混和剤、スライムの調製)
上記のようにして得た各種共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量6,000)及びクエン酸ナトリウムを、それぞれ炭酸ナトリウムと表3に示す所定割合で配合して混和剤を調製した。
次いで、セメント100部に対して、調製した混和剤を5.0部混合し、さらに、水150部混合してセメントミルクを調製した。
このセメントミルクを、含水率30%の粘性土と、容積比で1:2の割合で混合してスライムを得、その粘度と圧縮強度を測定した。結果を表3に併記する。
【0031】
<使用材料>
セメント:高炉セメントB種、市販品、密度3.04g/cm
粘土 :東京湾産粘性土、含水率30%、湿潤密度1.73g/cm
【0032】
<測定方法>
粘度 :得られたスライムを温度20℃、湿度80%、回転数20rpmの条件下でB型粘度計により練混ぜ直後の粘度値を測定
圧縮強度:得られたスライムを4cm×4cm×16cmの型枠に流し込み、硬化後脱型して得た供試体を、温度20℃で封緘養生し、材齢7日における圧縮強度を測定
【0033】
【表3】

【0034】
表3より、アルカリ金属炭酸塩と、数平均分子量及び組成が本発明の範囲内にある共重合体1とを併用することで、高い強度と粘性の低減を持続させる効果が得られることが分かる(実験No.1-1〜1-5)。
これに対して、数平均分子量が12,500未満である共重合体2を併用した実験No.1-7の比較例の供試体は、経時的に粘性が上昇し、また高い強度発現性が得られない。
α,β−不飽和ジカルボン酸の割合が60モル%未満(オレフィン40モル%超)である共重合体3を併用した実験No.1-8の比較例の供試体も、経時的に粘性が上昇し、また高い強度発現性が得られない。
共重合体の組成が本発明の範囲内にあっても、アルカリ金属炭酸塩の併合割合が45%未満の実験No.1-6の比較例の供試体では、十分に粘性が低減しない。
共重合体の代わりにポリアクリル酸ナトリウムを併用した実験No.1-9の比較例の供試体は、練混ぜ直後の粘性は低下するもののすぐに粘性が上昇し、さらに高い強度発現性が得られない。
共重合体の代わりにクエン酸ナトリウムを併用した実験No.1-10の比較例の供試体は、十分に粘性が低減しない。
【実施例2】
【0035】
実施例1で最も効果のあるアルカリ金属炭酸塩と共重合体1の併用割合が55/45の混和剤(実験No.1-3)を用い、アルカリ金属炭酸塩の種類を変えて調製したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0036】
【表4】

【0037】
表4より、本混和剤で使用するアルカリ金属炭酸塩は炭酸ナトリウムが最も粘性低減効果に優れることが分かる(実験No.1-3)。
【実施例3】
【0038】
実施例1で最も効果のある炭酸ナトリウムと共重合体1の併用割合が55/45の混和剤(実験No.1-3)を調製した。次いで、セメント100部に対して、調製した混和剤を表5に示す質量部混合したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0039】
【表5】

【0040】
表5より、本混和剤をセメント100部に対して1〜10部使用すると、優れた粘性を低減させる効果と強度発現性が得られることが分かる(実験No.3-2〜No.3-5、No.1-3)。
これに対して、1部未満であると、実験No.3-1及びNo.3-2からみて、粘性低下の効果が小さくなり、10部を超えると、実験No.3-6の比較例の供試体からみて、高い強度発現性が得られない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルカリ金属炭酸塩と(b)数平均分子量が12,500〜40,000に制御されたα,β−不飽和ジカルボン酸60〜85モル%とオレフイン40〜15モル%との共重合体又はその塩とを併用し、前記(a)と前記(b)の合計量に占める前記(a)の量の割合が45〜95質量%である混合物を含有してなることを特徴とする地盤安定化用混和剤。
【請求項2】
前記(a)のアルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の地盤安定化用混和剤。
【請求項3】
セメント、請求項1又は2に記載の地盤安定化用混和剤及び水を含有してなる地盤安定化材料。
【請求項4】
前記地盤安定化用混和剤を、セメント100質量部に対して、1〜10質量部使用することを特徴とする請求項3に記載の地盤安定化材料。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の地盤安定化材料を地盤中に高圧注入し、土と混合して硬化させる地盤安定化工法。

【公開番号】特開2008−120847(P2008−120847A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302794(P2006−302794)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】