説明

地盤探査器

【課題】異なった測定項目を安価でしかも簡単容易に測定できる地盤探査器を提供することを目的としている。
【解決手段】この地盤探査器は、一端部に地盤測定部2を有するセンサーケーブル1と、該センサーケーブル1の他端部に接続される計測器とを有してなる地盤探査器であって、前記地盤測定部2は、少なくとも、PHを測定するPH測定電極部20Aと、酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定電極部20Bと、比抵抗を測定する比抵抗測定電極部(比抵抗塩分測定電極部20C)と、塩分濃度を測定する塩分濃度測定電極部(比抵抗塩分測定電極部20C)とを有し、前記計測器は、前記地盤測定部2によって測定された測定値を表示してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤調査に用いられる地盤探査器に関し、より詳しくは、PH、酸化還元電位等の異なった測定項目の測定が可能な地盤探査器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤調査を実施するにあたって、PHや酸化還元電位等の測定項目に応じた計測器を用いて測定を行っていた。すなわち、PHを測定するには、例えば特許文献1に記載のようなPH計を用い、酸化還元電位(以下、ORPという。)を測定するには、例えば特許文献2に記載のような酸化還元電位計を用い、比抵抗を測定するには、例えば特許文献3に記載のような計測器を用いるという方法が採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−178698号公報
【特許文献2】特開2005−331454号公報
【特許文献3】特開2010−145263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような測定方法は、測定項目に応じた計測器を夫々用意しなければならないため、コストが嵩むばかりか、手間及び時間を要して作業性が非常に悪いという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上述の情況に鑑み、異なった測定項目を安価でしかも簡単容易に測定できる地盤探査器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明する。請求項1に係る地盤探査器は、一端部に地盤測定部2,100,200,300を有するセンサーケーブル1と、該センサーケーブル1の他端部に接続される計測器4とを有してなる地盤探査器であって、前記地盤測定部2,100,200,300は、少なくとも、PHを測定するPH測定電極部20A,20A1と、酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定電極部20B,20B1と、比抵抗を測定する比抵抗測定電極部(比抵抗塩分測定電極部20C,20C1)と、塩分濃度を測定する塩分濃度測定電極部(比抵抗塩分測定電極部20C,20C1)とを有し、前記計測器4は、前記地盤測定部2,100,200,300によって測定された測定値を表示してなることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2の発明は、上記請求項1に記載の地盤探査器において、前記地盤測定部2,100,200,300は、さらに温度センサ33を有し、前記計測器4は、該温度センサ33にて測定された測定値も表示してなることを特徴としている。
【0008】
一方、請求項3の発明は、上記請求項1又は2に記載の地盤探査器において、前記計測器4には、当該計測器4と前記各測定電極部20A〜20C,20A1〜20C1及び/又は温度センサ33とを夫々電気的に接続あるいは切断可能な切替手段(スイッチ切替部40)が設けられてなることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤探査器において、前記計測器4は、比抵抗又は塩分濃度を測定する際、正弦波信号を外部へ出力してなることを特徴としている。
【0010】
そして、請求項5の発明は、上記請求項4に記載の地盤探査器において、前記計測器4は、測定内容に応じて、前記正弦波信号を変化させてなることを特徴としている。
【0011】
一方、請求項6の発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の地盤探査器において、前記PH測定電極部20A,20A1は、比較電極(比較参照電極23)を有し、該比較電極(比較参照電極23)には、ナフィオン膜が形成されてなることを特徴としている。
【0012】
また、請求項7の発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の地盤探査器において、前記地盤測定部2,100,200,300の基端側には、錘10が設けられてなることを特徴としている。
【0013】
そして、請求項8の発明は、上記請求項1〜7のいずれか1項に記載の地盤探査器において、前記地盤測定部2,100,200,300の基端側及び/又は前記錘10の基端側には、前記センサーケーブル1を覆うようなカバー体11が設けられてなることを特徴としている。
【0014】
一方、請求項9の発明は、上記請求項1〜8のいずれか1項に記載の地盤探査器において、前記PH測定電極部20A,20A1は、ガラス電極22,101を有し、該ガラス電極22,101は、前記地盤測定部2,100の先端側に設けられ、その先端側にはさらに当該ガラス電極22,101を保護する保護部材24,102が設けられてなることを特徴としている。
【0015】
また、請求項10の発明は、上記請求項1〜8のいずれか1項に記載の地盤探査器において、前記地盤測定部300は、先端部に比抵抗測定電極部20C1を設け、該比抵抗電極部20C1は、一対の比抵抗用電極(比抵抗温度電極27,比抵抗作用電極301)を有し、その一対の比抵抗用電極(比抵抗温度電極27,比抵抗作用電極301)は、同軸上に設けられてなることを特徴としている。
【0016】
他方、請求項11の発明は、上記請求項1〜10のいずれか1項に記載の地盤探査器において、前記センサーケーブル1には、目盛り1bが設けられてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明にかかる地盤探査器では、センサーケーブル1と、そのセンサーケーブル1の一端部に設けられる地盤測定部2,100,200,300と、そのセンサーケーブル2の他端部に接続されている計測器4とを有している。そして、この地盤測定部2,100,200,300は、少なくとも、PHを測定するPH測定電極部20A,20A1と、酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定電極部20B,20B1と、比抵抗を測定する比抵抗測定電極部(比抵抗塩分測定電極部20C,20C1)と、塩分濃度を測定する塩分濃度測定電極部(比抵抗塩分測定電極部20C,20C1)とを有し、計測器4は、この地盤測定部2,100,200,300によって測定された測定値を表示することができる。
【0018】
しかして、作業者は地盤Gに掘削機等で形成された掘削孔G1内にセンサーケーブル1の一端部に設けられている地盤測定部2を貫入させるだけで、PH,ORP等の異なった測定を実施することができる。それゆえ、作業者は、簡単容易に地盤の地盤調査を行うことができる。また、作業者は、測定項目に応じた計測器を夫々用意しなくともよいため、従来に比べて安価に地盤の地盤調査を行うことができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、上記地盤測定部2,100,200,300は、さらに温度センサ33を有し、上記計測器4は、該温度センサ33にて測定された測定値も表示するようにしているから、地盤G内の温度を測定することができる。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、上記計測器4には、当該計測器4と上記各測定電極部20A〜20C,20A1〜20C1及び/又は温度センサ33とを夫々電気的に接続あるいは切断可能な切替手段(スイッチ切替部40)が設けられている。それゆえ、このように切替手段(スイッチ切替部40)によって、測定したい所望の測定項目のみ、上記計測器4と電気的に接続できるように切り替えられるから、作業者は簡単容易にしかも確実に所望の測定項目を測定することができる。
【0021】
一方、請求項4の発明によれば、上記計測器4は、比抵抗又は塩分濃度を測定する際、正弦波信号を外部へ出力しているから、電解質をもつ液体を測定する際、直流電圧のように電気分解が発生することがないため、安定した測定が可能となる。それゆえ、より高精度な測定が可能となる。
【0022】
また、請求項5の発明によれば、上記計測器4は、測定内容に応じて、上記正弦波信号を変化させてなるから、本発明よれば、測定内容に適した正弦波信号に変化させることできるため、より正確な測定を行うことができる。それゆえ、より高精度な測定を行うことができる。
【0023】
一方、請求項6の発明によれば、上記PH測定電極部20A,20A1は、比較電極(比較参照電極23)を有し、該比較電極(比較参照電極23)には、ナフィオン膜が形成されているから、PH測定に際してアルカリ性まで正確に測定することができる。それゆえ、さらに高精度な測定を行うことができる。
【0024】
また、請求項7の発明によれは、上記地盤測定部2,100,200,300の基端側には、錘10が設けられているから、上記地盤測定部2,100,200,300を鉛直下向きに略真っ直ぐ地盤G内に貫入させることができる。
【0025】
そして、請求項8の発明によれば、上記地盤測定部2,100,200,300の基端側及び/又は上記錘10の基端側には、前記センサーケーブル1を覆うようなカバー体11が設けられているから、作業中にセンサーケーブル1に曲げ等の負荷が加わっても、カバー体11がその負荷を吸収するため、曲げ等の負荷によるセンサーケーブル1の断線を軽減させることができる。
【0026】
一方、請求項9の発明によれば、上記PH測定電極部20A,20A1は、ガラス電極22,101を有し、該ガラス電極22,101は、上記地盤測定部2,100の先端側に設けられ、その先端側にはさらに当該ガラス電極22,101を保護する保護部材24,102が設けられているから、ガラス電極の破損を低減させることができる。
【0027】
また、請求項10の発明によれば、上記地盤測定部300は、先端部に比抵抗測定電極部20C1を設け、該比抵抗電極部20C1は、一対の比抵抗用電極(比抵抗温度電極27,比抵抗作用電極301)を有し、その一対の比抵抗用電極(比抵抗温度電極27,比抵抗作用電極301)は、同軸上に設けられてなる。しかして、本発明によれば、一対の比抵抗用電極(比抵抗温度電極27,比抵抗作用電極301)を同軸上に配設しているから、地盤G内周辺への電界の漏洩が軽減され、地盤G内の物質変化の影響を極力抑えることができる。それゆえ、より高精度な測定が可能となる。
【0028】
他方、請求項11の発明によれば、上記センサーケーブル1には、目盛り1bが設けられているから、地盤測定部が地盤G中にどの程度貫入されたかを容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る地盤探査器の使用状態を示す図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態に係るセンサーケーブルと地盤測定部の要部拡大側面図、(b)は(a)の縦断面図である。
【図3】本発明に係る計測器のブロック図である。
【図4】図3におけるスイッチ切替部の詳細回路図である。
【図5】図3におけるブロック図中、比抵抗、高比抵抗、塩分濃度測定に係るブロックの詳細図である。
【図6】比抵抗、高比抵抗、塩分濃度を測定する方法を説明するブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るセンサーケーブルと地盤測定部の要部拡大縦断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る地盤測定部の側面図である。
【図9】(a)は本発明の第4実施形態に係る地盤測定部の側面図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る地盤探査器の第1実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る地盤探査器は、5芯線で形成される長尺(例えば10m)のセンサーケーブル1と、そのセンサーケーブル1の一端部に設けられている地盤測定部2と、そのセンサーケーブル1の他端部に接続されている計測器4とで構成されている。このように構成される地盤探査器は、地盤Gの調査をするにあたって、図1に示すように使用される。すなわち、地盤G内に掘削機等で形成された掘削孔G1内に、作業者がセンサーケーブル1の一端部に設けられた地盤測定部2を貫入し、被測定物である地下水Wに浸入するまで貫入する。これにより、地下水Wに浸入した地盤測定部2が当該地下水WのPH,ORP等を測定し、その測定値が計測器4に表示される。それゆえ、作業者は、本実施形態に係る地盤探査器を用いることで、地盤Gの調査を行うことができる。
【0031】
次に、より具体的に地盤測定部2の測定方法及び計測器4の表示方法を説明する。地盤測定部2は、図2(a)に示すように、略円筒状に形成され、先端から順に長手方向に向って、PH測定電極部20A、酸化還元電位測定電極部20B、比抵抗塩分測定電極部20C、絶縁体21とで構成されている。
【0032】
PH測定電極部20Aは、図2(b)に示すように、ガラス電極22と比較参照電極23とで構成されている。ガラス電極22は、薄板円形状に形成され、希土類ケイ酸塩ガラスで形成されている。そして、このガラス電極22の裏面側には銀ペースト22aが塗付され、その塗付された銀ペースト22aを介して、ガラス電極22とセンサーケーブル1の芯線1aとが電気的に接続されている。また、比較参照電極23は円筒状に形成されると共に、表面上にナフィオン膜が形成され、裏面側にセンサーケーブル1の芯線1aが設けられている。このように形成されるガラス電極22と比較参照電極23は、フェノール樹脂等の絶縁性材料からなる円筒状の保護部材24を介して長手方向に離間して設けられている。より具体的には、保護部材24の先端面に、その先端面と面一となるようにガラス電極22が接着剤等で固着され、基端部に比較参照電極23の一端面が接着剤等で固着され設けられている。なお、本実施形態では、保護部材24の先端面と面一となるようにガラス電極22を設けたが、保護部材24の先端面が突出するようにガラス電極22を設けても良い。保護部材24の先端面をガラス電極22より突出させれば、ガラス電極の破損を軽減させることができる。また、本実施形態では、比較参照電極23の表面上にナフィオン膜を形成したが、ナフィオン膜に限らず、他の材料を用いても良い。しかしながら、ナフィオン膜を用いれば、PH測定に際し、アルカリ性まで正確に測定することができるため、ナフィオン膜を形成した方が好ましい。また、本実施形態のように比較参照電極24にナフィオン膜を形成すれば、ナフィオン膜の持つプロトン導電性により、従来のように比較電極に塩橋や電解質溶液を用いずともよいため、非常に簡便な電極構成となる。他方、本実施形態では、ガラス電極を希土類ケイ酸塩ガラスで形成する例を示したが、他のガラスで形成しても良い。しかしながら、ガラス電極を希土類ケイ酸塩ガラスで形成すれば板厚を厚くすることができ、ガラス電極を強化させることができるため、ガラス電極を希土類ケイ酸塩ガラスで形成した方が好ましい。なお、本実施形態で例示したPH測定電極部20Aの構成に関する詳細は、Journal of the Ceramic Society of Japan 2005 VoL.113 550頁〜554頁に記載の「LiO−Y−SiO系ガラスを用いた全個体型PH電極」を参照されたい。
【0033】
一方、酸化還元電位測定電極部20Bは、上述した比較参照電極23と、比抵抗作用電極25とで構成されている。比抵抗作用電極25は、円筒状に形成されると共に、Ptメッキ等の導電性材料で形成され、裏面側にはセンサーケーブル1の芯線1aが設けられている。そして、比較参照電極23と比抵抗作用電極25は、フェノール樹脂等の絶縁性材料からなる両端部に上下突起26a,26bが突設されている筒状の第1連結部材26を介して長手方向に離間して設けられている。より具体的には、第1連結部材26の下突起26aの基端面に、比較参照電極23の他端面(保護部材24と固着されている面とは反対の面)が接着剤等で固着され、その下突起26aの先端面が、保護部材24の基端面と接着剤等で固着されている。なお、この下突起26aの外周面には、ナフィオン膜で形成される比較参照電極23が付着されている。
【0034】
また一方、第1連結部材26の上突起26bには、比抵抗作用電極25の一端面が接着剤等で固着されている。これにより、比較参照電極23と比抵抗作用電極25は、第1連結部材26を介して長手方向に離間して設けられる。
【0035】
他方、比抵抗塩分測定電極部20Cは、上述した比抵抗作用電極25と、比抵抗温度電極27とで構成されている。比抵抗温度電極27は、円筒状に形成されると共に、ステンレス鋼等の導電性材料で形成され、裏面側にはセンサーケーブル1の芯線1aが設けられている。そして、比抵抗作用電極25と比抵抗温度電極27は、フェノール樹脂等の絶縁性材料からなる第2連結部材28を介して長手方向に離間して設けられている。より具体的には、第2連結部材28の先端面に、比抵抗作用電極25の他端面(第1連結部材26と固着されている面とは反対の面)が接着剤等で固着され、基端側外周面に比抵抗温度電極27が固着されている。これにより、比抵抗作用電極25と比抵抗温度電極27は、第2連結部材28を介して長手方向に離間して設けられる。
【0036】
一方、絶縁体21は、熱収縮チューブ等からなる絶縁体であって、図2(a)に示すように、略円筒状に形成され、比抵抗温度電極27の露出面積の調整を行うために、図2(b)に示すように、比抵抗温度電極27の一部表面を被覆している。また、絶縁体21は、上記第2連結部材28の基端部に螺合されている袋ナット29と、その袋ナット29の基端面に設けられているケーブルタイ30の接続を保護するために、袋ナット29及びケーブルタイ30の外周面を被覆している。また一方、袋ナット29及びケーブルタイ30内には、センサーケーブル1が挿通され、その抜出を防止するために、袋ナット29の基端面に抜出防止リング32が設けられている。さらに、図2(b)に示すように、袋ナット29側に配設されているセンサーケーブル1に係る複数の芯線1a(図示では3芯線)の内の一つの芯線1aにはフェノール樹脂等の絶縁性材料からなる絶縁膜31が巻回され、その絶縁膜31上には、サーミスタで形成される温度センサ33が設けられている。そして、その温度センサ33の一端子は、比抵抗温度電極27と電気的に接続されている。
【0037】
このように構成される地盤測定部2には、図2に示すように、基端部に錘10が設けられ、この錘10は、円筒状に形成される共に、真鍮等で形成されている。そして、図2(b)に示すように、錘10は、ケーブルタイ30にて支承され、内部にセンサーケーブル1が挿通されている。しかして、このように形成される錘10を設ければ、地盤測定部2を鉛直下向きに略真っ直ぐ地盤G内に貫入させることができる。
【0038】
また一方、錘10の基端部には、図2に示すように、略円錐状に形成されるカバー体11の先端部が被覆され、このカバー体11は、ゴム等の可撓性を有する絶縁性材料で形成されている。図2(b)に示すように、このカバー体11は、内部にセンサーケーブル1が挿通され、基端部がセンサーケーブル1に密接するようにセンサーケーブル1に被覆されている。しかして、このようなカバー体11を設ければ、作業中にセンサーケーブル1に曲げ等の負荷が加わっても、カバー体11がその負荷を吸収するため、曲げ等の負荷によるセンサーケーブル1の断線を軽減させることができる。なお、本実施形態においては、錘10の基端部を被覆するようにカバー体11を設けたが、錘10の外周面を全て被覆するようにカバー体11を設けても良い。
【0039】
ところで、センサーケーブル1には、図2に示すように目盛り1bが設けられているが、これは、地盤測定部2が地盤G中にどの程度貫入されたかを容易に測定することができるように設けたものである。それゆえ、そのような測定が必要ない場合は、目盛り1bを設けなくとも良い。
【0040】
次に、上記のように構成される地盤測定部2によって測定された測定値を計測器4に表示させる方法を説明する。
【0041】
計測器4は、図3に示すように、スイッチ切替部40を有している。このスイッチ切替部40は、図1に示すように、測定したい所望の測定項目(PH測定、ORP測定、比抵抗測定、高比抵抗測定、塩分測定、温度測定)に切り替えられるようになっている。具体的には、図4に示すように、スイッチ切替部40は、センサーケーブル1の芯線1aを介してガラス電極22と電気的に接続されているガラス電極点40a、比較参照電極23と電気的に接続されている比較参照電極点40b、比抵抗作用電極25と電気的に接続されている比抵抗作用電極点40c、比抵抗温度電極27と電気的に接続されている比抵抗温度電極点40d、温度センサ33と電気的に接続されている温度センサ電極点40eを有し、さらに、その電極点40a〜40eと夫々電気的に接続される接点ST1〜ST6を有している。この接点ST1〜ST6と上記電極点40a〜40eとが電気的に接続されるか否かは、図1に示すスイッチ切替部40に設けられている矢印Pがどの測定項目を示しているかによって決定される。すなわち、矢印Pが「PH」を示している場合は、上記各電極点40a〜40eは夫々接点ST1に接続され、矢印Pが「ORP」を示している場合は、上記各電極点40a〜40eは夫々接点ST2に接続され、矢印Pが「比抵抗」を示している場合は、上記各電極点40a〜40eは夫々接点ST3に接続され、矢印Pが「高比抵抗」を示している場合は、上記各電極点40a〜40eは夫々接点ST4に接続され、矢印Pが「塩分」を示している場合は、上記各電極点40a〜40eは夫々接点ST5に接続され、矢印Pが「温度」を示している場合は、上記各電極点40a〜40eは夫々接点ST6に接続される。
【0042】
そしてその接続のうち、所望の測定項目に必要な電極点40a〜40eのみが接点ST1〜ST6と電気的に接続されるというものである。
【0043】
<PH測定>
すなわち、PH測定を行う場合は、作業者はスイッチ切替部40に設けられている矢印Pが「PH」を示すように、スイッチ切替部40を切り替える。これにより、図4に示すように、ガラス電極点40a及び比較参照電極点40bが接点ST1と電気的に接続され、他の電極点40c〜40eは接点ST1と電気的に接続されず切断状態となる。それゆえ、PHの測定値のみが計測器4に表示されることとなる。
【0044】
具体的には、被測定物である地下水WのPHを測定するガラス電極22と基準電位となる比較参照電極23が地下水Wに浸入した際に生じた電位差(電圧)が、図4に示すように、高入力インピーダンスアンプ41に供給される。そして、その高入力インピーダンスアンプ41によって増幅された信号が、図3に示すように、ローパスフィルタ42に供給されて高周波成分が除去され、A/D変換器43に供給される。このA/D変換器43に供給された信号はデジタル信号に変換され、デジタル処理部44に供給される。
【0045】
さらに、デジタル処理部44には、制御部45の制御信号が供給される。制御部45には、図4に示すように、各電極点40a〜40eと接点ST1〜ST6の接続情報の信号(6bit信号)が供給される。そして、制御部45は、その信号に基づいて各電極点40a〜40eがどの接点ST1〜ST6と接続されているのかを検知し、その検知した信号を制御信号としてデジタル処理部44に供給する(図3参照)。
【0046】
デジタル処理部44では、制御部45にて供給された制御信号により、各電極点40a〜40eと接点ST1が接続されているのを検知し、それに基づき、上記A/D変換器43にて変換されたデジタル信号の内容をPH値に換算する処理を行う。そして、デジタル処理部44は、その換算したPH値をデジタル表示部46に表示させる処理を行うと共に、D/A変換器47に供給する。そして、D/A変換器47は、供給されたPH値のデジタル信号をアナログ信号に変化し、アナログ表示部48に供給する。これにより、ガラス電極22と比較参照電極23にて生じた電位差(電圧)によるPH値が、デジタル表示部45に表示されると共に、アナログ表示部47に表示されるため、作業者は被測定物である地下水WのPHを測定することができる。
【0047】
<ORP測定>
一方、ORP測定を行う場合は、作業者はスイッチ切替部40に設けられている矢印Pが「ORP」を示すように、スイッチ切替部40を切り替える。これにより、図4に示すように、比較参照電極点40b及び比抵抗作用電極点40cが接点ST2と電気的に接続され、他の電極点40a,40d,40eは接点ST2と電気的に接続されず切断状態となる。それゆえ、ORPの測定値のみが計測器4に表示されることとなる。
【0048】
具体的には、被測定物である地下水Wの酸化還元反応の程度を示す電位が発生する作用電極からなる比抵抗作用電極25と、基準電位となる電位が発生する参照電極からなる比較参照電極23が、被測定物である地下水Wに浸入した際に、上記電極23,25間に電位差(電圧)が発生する。そして、その発生した電位差(電圧)は、図4に示すように、高入力インピーダンスアンプ41に供給される。高入力インピーダンスアンプ41に供給された信号は増幅され、図3に示すように、ローパスフィルタ42に供給されて高周波成分が除去され、A/D変換器43に供給される。このA/D変換器43に供給された信号はデジタル信号に変換され、デジタル処理部44に供給される。
【0049】
さらに、デジタル処理部44には、制御部45の制御信号が供給される。デジタル処理部44では、制御部45にて供給された制御信号により、各電極点40a〜40eと接点ST2が接続されているのを検知し、それに基づき、上記A/D変換器43にて変換されたデジタル信号の内容をデジタル表示部46に表示させる処理を行う共に、上記A/D変換器43にて変換されたデジタル信号をD/A変換器47に供給する。そして、D/A変換器47は、供給されたデジタル信号をアナログ信号に変化し、アナログ表示部48に供給する。これにより、比抵抗作用電極25と比較参照電極23間の電位差(電圧)が、デジタル表示部45に表示されると共に、アナログ表示部47に表示されるため、作業者は被測定物である地下水WのORPを測定することができる。
【0050】
<比抵抗測定>
また一方、比抵抗測定を行う場合は、作業者はスイッチ切替部40に設けられている矢印Pが「比抵抗」を示すように、スイッチ切替部40を切り替える。これにより、図4に示すように、比抵抗作用電極点40c及び比抵抗温度電極40dが接点ST3と電気的に接続され、他の電極点40a,40b,40eは接点ST3と電気的に接続されず切断状態となる。それゆえ、比抵抗の測定値のみが計測器4に表示されることとなる。なお、比抵抗を測定するのは、特許文献3に記載のように、地下水位を測定するために用いるものである。
【0051】
まず、比抵抗を測定する原理を図6に基づいて説明する。比抵抗温度電極27には正弦波信号(例えば、Vsin)が計測器4より供給され、比抵抗温度電極27及び比抵抗作用電極25が、地下水W(被測定物)に浸入されると、比抵抗作用電極25に正弦波信号(例えば、Vrec)が発生する。ここで、地下水W(被測定物)の抵抗値をrとし、比抵抗温度電極の負荷抵抗値をRとすると、オームの法則により、数式(1)の関係式が成り立つ。
(数1)
Vrec=Vsin×R/(R+r)
【0052】
ところで、比抵抗温度電極27及び比抵抗作用電極25が共に地下水W(被測定物)に浸入した際、比抵抗作用電極25に発生する正弦波信号Vrecが、Vsinの半分、すなわち、Vrec=1/2×Vsinとなったとすると、数式(1)より、r=Rとなるから、計測器4によって抵抗値を測定することができることとなる。
【0053】
しかして、地下水W(被測定物)の比抵抗を測定するには、比抵抗作用電極25に発生する正弦波信号Vrecの電圧値が分かればよいことが分かる。なお、この原理は、後述する高比抵抗測定及び塩分濃度測定の際にも用いるものである。
【0054】
ここで、上記説明した原理を念頭に、より具体的に比抵抗の測定方法を説明する。まず、デジタルSin波発生部49に、制御部45から制御信号が供給される(図3及び図5参照)。デジタルSin波発生部49は、制御部45から供給された制御信号により、各電極点40a〜40eと接点ST3が接続されているのを検知し、400Hz周期のデジタル波形波を生成する。そして、デジタルSin波発生部49は、発生させた400Hz周期のデジタル波形波をD/A変換器50に供給する。D/A変換器50は、400Hz周期のデジタル波形波をアナログ信号、すなわち、正弦波信号に変換し、ローパスフィルタ51に供給する。ローパスフィルタ51は、その正弦波信号の高周波成分を除去し、Sin波出力アンプ52に供給する。Sin波出力アンプ52は、高周波成分除去後の正弦波信号を増幅し、その増幅した正弦波信号を比抵抗温度電極27に供給すると共に、ACアンプ53に供給する。なお、本実施形態で例示した周波数はあくまで一例であり、様々な値に変更可能である。
【0055】
一方、被測定物である地下水Wに比抵抗温度電極27及び比抵抗作用電極25が地下水W(被測定物)に浸入されると比抵抗作用電極25に正弦波信号が発生し、その正弦波信号が比抵抗作用電極点40cを介してACアンプ53に供給される(図4参照)。ACアンプ53には、入力端子間に抵抗切替部54が設けられており、その抵抗切替部54は、図5に示すように、制御部45の制御信号により抵抗値が切り替えられるものである。すなわち、抵抗切替部54は、図5に示すように、2KΩからなる抵抗R、10KΩからなる抵抗R、200Ωからなる抵抗Rが設けられており、制御部45から供給される制御信号に基づいて切り替えられ、「比抵抗」を測定する場合は、抵抗Rに切り替え接続される。なお、本実施形態で例示した抵抗値はあくまで一例であり、様々な値に変更可能である。
【0056】
このように、抵抗Rを介してACアンプ53に供給された正弦波信号は、ACアンプ53にて増幅されバンドパスフィルタ部55に供給される。バンドパスフィルタ部55には、BPF_A55a,BPF_B55b,BPF_C55cが設けられており、図5に示すように、ACアンプ53からの出力信号がBPF_A55a,BPF_B55b,BPF_C55cに夫々供給される。なお、BPF_A55aは、3dB帯域幅が±40Hzからなり、BPF_B55bは、3dB帯域幅が±5Hzからなり、BPF_C55cは、3dB帯域幅が±160Hzからなるものである。ところで、本実施形態で例示した帯域幅はあくまで一例であり、様々な帯域幅に変更可能である。
【0057】
一方、上記のように構成されるBPF_A55a,BPF_B55b,BPF_C55cにて、ACアンプ53にて増幅された正弦波信号は所定の通過帯域幅に制限され、夫々絶対値回路部56に供給される。絶対値回路部56には、絶対値回路56a〜56cが設けられており、図5に示すように、BPF_A55aの出力信号が絶対値回路56aに供給され、BPF_B55bの出力信号が絶対値回路56bに供給され、BPF_C55cの出力信号が絶対値回路56cに供給される。そして、絶対値回路56a〜56cは、BPF_A55a,BPF_B55b,BPF_C55cにて所定の通過帯域幅に制限された正弦波信号の絶対値を出力する。
【0058】
絶対値回路56a〜56cより出力された絶対値は、図5に示すように、A/D変換部57に供給される。A/D変換部57には、A/D変換器57a〜57cが設けられており、図5に示すように、絶対値回路56aの出力信号がA/D変換器57aに供給され、絶対値回路56bの出力信号がA/D変換器57bに供給され、絶対値回路56cの出力信号がA/D変換器57cに供給される。そして、このA/D変換器57a〜57cは、絶対値回路56a〜56cにて出力された絶対値をデジタル信号に変換し、デジタル処理部44に夫々供給する。
【0059】
一方、デジタル処理部44には、制御部45の制御信号が供給され、デジタル処理部44は、その供給された制御信号により、各電極点40a〜40eと接点ST3が接続されているのを検知する。そしてデジタル処理部44は、その検知した内容に基づき、上記A/D変換器57aにて変換されたデジタル信号を比抵抗に換算する処理を行う。そして、デジタル処理部44は、その換算した比抵抗をデジタル表示部46に表示させる処理を行うと共に、D/A変換器47に供給する。D/A変換器47は、供給された比抵抗のデジタル信号をアナログ信号に変化し、アナログ表示部48に供給する。これにより、地下水Wの比抵抗が、デジタル表示部45に表示されると共に、アナログ表示部47に表示されるため、作業者は被測定物である地下水Wの地下水位を測定することができる。
【0060】
<高比抵抗測定>
他方、高比抵抗測定を行う場合は、作業者はスイッチ切替部40に設けられている矢印Pが「高比抵抗」を示すように、スイッチ切替部40を切り替える。これにより、図4に示すように、比抵抗作用電極点40c及び比抵抗温度電極40dが接点ST4と電気的に接続され、他の電極点40a,40b,40eは接点ST4と電気的に接続されず切断状態となる。それゆえ、高比抵抗の測定値のみが計測器4に表示されることとなる。なお、高比抵抗を測定するのは、地下水Wの水質が良くなると比抵抗が高くなることが一般的に知られており、水質の良い地下水Wの測定にも対応できるようにするためである。
【0061】
制御部45は、デジタルSin波発生部49に制御信号を供給する(図3及び図5参照)。デジタルSin波発生部49は、制御部45にて供給された制御信号により、各電極点40a〜40eと接点ST4が接続されているのを検知し、50Hz周期のデジタル波形波を生成する。そして、デジタルSin波発生部49は、発生させた50Hz周期のデジタル波形波をD/A変換器50に供給する。D/A変換器50は、50Hz周期のデジタル波形波をアナログ信号、すなわち、正弦波信号に変換し、ローパスフィルタ51に供給する。ローパスフィルタ51は、その正弦波信号の高周波成分を除去し、Sin波出力アンプ52に供給する。Sin波出力アンプ52は、高周波成分除去後の正弦波信号を増幅し、その増幅した正弦波信号を比抵抗温度電極27に供給すると共に、ACアンプ53に供給する。なお、本実施形態では、「比抵抗」の測定の際に用いた周波数より低周波としているが、その理由は、比抵抗の測定の誤作動の原因となるセンサーケーブル1にクロストークの発生を低減されるようにするためである。ところで、本実施形態で例示した周波数はあくまで一例であり、様々な値に変更可能である。
【0062】
一方、被測定物である地下水Wに比抵抗温度電極27及び比抵抗作用電極25が地下水W(被測定物)に浸入されると比抵抗作用電極25に正弦波信号が発生し、その正弦波信号が比抵抗作用電極点40cを介してACアンプ53に供給される(図4参照)。ACアンプ53には、入力端子間に抵抗切替部54が設けられており、その抵抗切替部54は、抵抗Rに切り替え接続される。
【0063】
このように、抵抗Rを介してACアンプ53に供給された正弦波信号は、ACアンプ53にて増幅され、バンドパスフィルタ部55に供給される。バンドパスフィルタ部55は、上記増幅された信号を所定の通過帯域幅に制限し、絶対値回路部56に供給する。そして、絶対値回路部56より、所定の通過帯域幅に制限された正弦波信号の絶対値がA/D変換部57に供給され、その絶対値がA/D変換部57にてデジタル信号に変換され、デジタル処理部44に供給される。
【0064】
一方、デジタル処理部44には、制御部45の制御信号が供給され、デジタル処理部44は、その供給された制御信号により、各電極点40a〜40eと接点ST4が接続されているのを検知する。そしてデジタル処理部44は、その検知した内容に基づき、上記A/D変換器57bにて変換されたデジタル信号を高比抵抗に換算する処理を行う。そして、デジタル処理部44は、その換算した高比抵抗をデジタル表示部46に表示させる処理を行うと共に、D/A変換器47に供給する。D/A変換器47は、供給された高比抵抗のデジタル信号をアナログ信号に変化し、アナログ表示部48に供給する。これにより、地下水Wの高比抵抗が、デジタル表示部45に表示されると共に、アナログ表示部47に表示される。そのため、作業者は被測定物である地下水Wの水質が良くても、地下水Wの地下水位を測定することができる。しかして、本実施形態によれば、高比抵抗を測定できるようにしているため、より高精度に地下水位を測定することができる。
【0065】
<塩分濃度測定>
一方、塩分濃度測定を行う場合は、作業者はスイッチ切替部40に設けられている矢印Pが「塩分」を示すように、スイッチ切替部40を切り替える。これにより、図4に示すように、比抵抗作用電極点40c及び比抵抗温度電極40dが接点ST5と電気的に接続され、他の電極点40a,40b,40eは接点ST5と電気的に接続されず切断状態となる。それゆえ、塩分濃度の測定値のみが計測器4に表示されることとなる。
【0066】
制御部45は、デジタルSin波発生部49に制御信号を供給する(図3及び図5参照)。デジタルSin波発生部49は、制御部45にて供給された制御信号により、各電極点40a〜40eと接点ST5が接続されているのを検知し、1600Hz周期のデジタル波形波を生成する。そして、デジタルSin波発生部49は、発生させた1600Hz周期のデジタル波形波をD/A変換器50に供給する。D/A変換器50は、1600Hz周期のデジタル波形波をアナログ信号、すなわち、正弦波信号に変換し、ローパスフィルタ51に供給する。ローパスフィルタ51は、その正弦波信号の高周波成分を除去し、Sin波出力アンプ52に供給する。Sin波出力アンプ52は、高周波成分除去後の正弦波信号を増幅し、その増幅した正弦波信号を比抵抗温度電極27に供給すると共に、ACアンプ53に供給する。なお、本実施形態では、「比抵抗」の測定の際に用いた周波数より高周波としているが、その理由は、塩分濃度の比抵抗は一般的に500Ω・mより低いことが知られているため、センサーケーブル1にクロストークが発生したとしても、クロストークの影響を無視することができるためである。ところで、本実施形態で例示した周波数はあくまで一例であり、様々な値に変更可能である。
【0067】
一方、被測定物である地下水Wに比抵抗温度電極27及び比抵抗作用電極25が地下水W(被測定物)に浸入されると、比抵抗作用電極25に正弦波信号が発生し、その正弦波信号が比抵抗作用電極点40cを介してACアンプ53に供給される(図4参照)。ACアンプ53には、入力端子間に抵抗切替部54が設けられており、その抵抗切替部54は、抵抗Rに切り替え接続される。
【0068】
このように、抵抗Rを介してACアンプ53に供給された正弦波信号は、ACアンプ53にて増幅されバンドパスフィルタ部55に供給される。バンドパスフィルタ部55は、上記増幅された信号を所定の通過帯域幅に制限し、絶対値回路部56に供給する。そして、絶対値回路部56より、所定の通過帯域幅に制限された正弦波信号の絶対値がA/D変換部57に供給され、その絶対値がA/D変換部57にてデジタル信号に変換され、デジタル処理部44に供給される。
【0069】
一方、デジタル処理部44には、制御部45の制御信号が供給され、デジタル処理部44は、その供給された制御信号により、各電極点40a〜40eと接点ST5が接続されているのを検知する。そしてデジタル処理部44は、その検知した内容に基づき、上記A/D変換器57cにて変換されたデジタル信号を塩分濃度に換算する処理を行う。そして、デジタル処理部44は、その換算した塩分濃度をデジタル表示部46に表示させる処理を行うと共に、D/A変換器47に供給する。D/A変換器47は、供給された塩分濃度のデジタル信号をアナログ信号に変化し、アナログ表示部48に供給する。これにより、地下水Wの塩分濃度が、デジタル表示部45に表示されると共に、アナログ表示部47に表示されるため、作業者は被測定物である地下水Wの塩分濃度を測定することができる。
【0070】
しかして、上記のように、比抵抗,高比抵抗,塩分濃度測定の測定内容に応じて、その測定内容に適した正弦波信号に変化させることで、より正確な測定を行うことができる。それゆえ、より高精度な測定を行うことができる。なお、本実施形態では、比抵抗,高比抵抗,塩分濃度測定の際に、交流電圧を用いているが、直流電圧を用いても良い。しかしながら、直流電圧を用いると、水などの電解質をもつ液体を測定する際、液体の電気分解が発生し測定が不安定なる。それゆえ、液体の電気分解が発生することがない交流電圧を用いた方が好ましい。
【0071】
<温度測定>
他方、温度測定を行う場合は、作業者はスイッチ切替部40に設けられている矢印Pが「温度」を示すように、スイッチ切替部40を切り替える。これにより、図4に示すように、比抵抗温度電極40d及び温度センサ電極点40eが接点ST6と電気的に接続され、他の電極点40a〜40cは接点ST6と電気的に接続されず切断状態となる。それゆえ、温度の測定値のみが計測器4に表示されることとなる。
【0072】
具体的には、温度センサ電極点40eにDC電源60より直流電圧が供給され、そのDC電源60より出力される直流電圧はDCアンプ61にも供給される。そして、被測定物である地下水Wに比抵抗温度電極27が浸入されると、温度センサ33の抵抗値が変化し、その変化した抵抗値に対応した電圧がDCアンプ61に供給される。
【0073】
一方、DCアンプ61の入力端子間には、抵抗Rが設けられており、DC電源60より供給される電圧及び温度センサ33より出力される電圧は、抵抗Rを介してDCアンプ61に供給され、増幅される。そして、DCアンプ61によって増幅された信号は、図3に示すように、ローパスフィルタ62に供給されて高周波成分が除去され、A/D変換器63に供給される。このA/D変換器63に供給された信号はデジタル信号に変換され、デジタル処理部44に供給される。
【0074】
そしてさらに、デジタル処理部44には、制御部45の制御信号が供給される。デジタル処理部44では、制御部45にて供給された制御信号により、各電極点40a〜40eと接点ST6が接続されているのを検知し、それに基づき、上記A/D変換器63にて変換されたデジタル信号を温度に換算する処理を行う。そして、デジタル処理部44は、その換算した温度をデジタル表示部46に表示させる処理を行うと共に、D/A変換器47に供給する。D/A変換器47は、供給された温度のデジタル信号をアナログ信号に変化し、アナログ表示部48に供給する。これにより、地下水Wの温度が、デジタル表示部45に表示されると共に、アナログ表示部47に表示されるため、作業者は被測定物である地下水Wの温度を測定することができる。なお、本実施形態では、温度センサ33を設けたが、設けなくとも良い。しかしながら、温度センサ33を設ければ、被測定物である地下水Wの温度を測定することができるため、設けた方が好ましい。また、温度センサ33としては、本実施形態では、サーミスタを用いた例を示したが、他の温度センサを用いてもよい。一方、水の比抵抗は一度あたり2%変動するということが知られているから、このような温度センサ33を用いて、地下水Wの温度を測定し、デジタル処理部44にて比抵抗やPHの値を自動補正するようにしても良い。
【0075】
しかして、このようにスイッチ切替部40によって、測定したい所望の測定項目(PH測定、ORP測定、比抵抗測定、高比抵抗測定、塩分測定、温度測定)のみ電気的に接続できるように切り替えられるようにすれば、作業者は簡単容易にしかも確実に所望の測定項目を測定することができる。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、この地盤探査器は、センサーケーブル1と、そのセンサーケーブル1の一端部に設けられている地盤測定部2と、そのセンサーケーブル1の他端部に接続されている計測器4とで構成されている。そして、この地盤測定部2は、PHを測定するPH測定電極部20Aと、酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定電極部20Bと、比抵抗及び塩分濃度を測定する比抵抗塩分測定電極部20Cとで構成され、計測器4は、この地盤測定部2によって測定された測定値を表示することができる。
【0077】
しかして、作業者は地盤Gに掘削機等で形成された掘削孔G1内にセンサーケーブル1の一端部に設けられた地盤測定部2を貫入させるだけで、PH,ORP等の異なった測定ができるため、作業者は、簡単容易に地盤調査を行うことができる。また、作業者は、測定項目に応じた計測器を夫々用意しなくともよいため、従来に比べて安価に地盤調査を行うことができる。
【0078】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を図7に基づいて説明すると、図7は、本発明の第2実施形態に係るセンサーケーブルと地盤測定部の要部拡大縦断面図である。なお、第1実施形態と同一構成については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0079】
図7に示すように、第2実施形態と第1実施形態の異なる点は、地盤測定部に係るPH測定電極部、特にガラス電極が異なるのみでそれ以外は同一である。本実施形態に係る地盤測定部100は、図7に示すように、PH測定電極部20A1を有している。このPH測定電極部20A1は、ガラス電極101と比較参照電極23で構成され、ガラス電極101は、円筒状に形成され、希土類ケイ酸塩ガラスで形成されている。そして、このように形成されるガラス電極101は、基端面が保護部材24の先端面に接着剤等で固着され、先端面が、先端部がR状に形成された略T字状のフェノール樹脂等の絶縁性材料からなる保護部材102に固着されている。そして、ガラス電極101の基端側内周面には、銀ペースト101aが塗付され、その塗付された銀ペースト101aを介して、ガラス電極101とセンサーケーブル1の芯線1aとが電気的に接続されている。
【0080】
しかして、本実施形態によれば、ガラス電極101と、比較参照電極23を同一面内に配置することができるため、地盤G内の壁面のPHも容易に測定することが可能となる。また、先端側に保護部材102を設けているため、ガラス電極の破損を低減させることができる。
【0081】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を図8に基づいて説明すると、図8は、本発明の第3実施形態に係る地盤測定部の側面図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一構成については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0082】
図8に示すように、第3実施形態と第1実施形態及び第2実施形態の相違点は、地盤測定部の配列順序が異なるのみでそれ以外は同一である。本実施形態に係る地盤測定部200は、略円筒状に形成され、先端に保護部材102を設け、その保護部材102の基端部には比抵抗塩分測定電極部20Cが設けられている。この比抵抗塩分測定電極部20Cは、比抵抗作用電極25と比抵抗温度電極27とで構成され、第1連結部材26を介して長手方向に離間して設けられている。そして、比抵抗温度電極27の基端部には第2連結部材28が設けられ、その第2連結部材28の外周面には、比抵抗温度電極27の露出面積の調整を行う絶縁体21が被覆されている。さらに、第2連結部材28の基端部には、ガラス電極101と比較参照電極23で構成されるPH測定電極部20A1が設けられ、ガラス電極101と比較参照電極23は、保護部材24を介して長手方向に離間して設けられている。
【0083】
そして、このように構成される地盤測定部200の基端部には錘10が設けられている。
【0084】
しかして、本実施形態によれば、ガラス電極を先端側に配設していなから、ガラス電極の破損をより低減させることができる。
【0085】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態を図9に基づいて説明すると、図9(a)は、本発明の第4実施形態に係る地盤測定部の側面図、(b)は(a)のX−X線断面図である。なお、第1実施形態〜第3実施形態と同一構成については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0086】
図9に示すように、第4実施形態と第1実施形態乃至第3実施形態の相違点は、地盤測定部の配列順序及び比抵抗作用電極の構成が異なるのみでそれ以外は同一である。本実施形態に係る地盤測定部300は、図9(a)に示すように、略円筒状に形成され、先端部に比抵抗温度電極27が設けられている。そして、図9(b)に示すように、比抵抗温度電極27の内周面側に棒状の比抵抗作用電極301が配設されている。すなわち、本実施形態に係る比抵抗塩分測定電極部20C1は、同軸上に配設された比抵抗温度電極27と比抵抗作用電極301で構成されている。
【0087】
さらに、比抵抗温度電極27の基端部には第2連結部材28が設けられ、その第2連結部材28の外周面には、比抵抗温度電極27の露出面積の調整を行う絶縁体21が被覆されている。さらに、第2連結部材28の基端部には、ガラス電極101と比較参照電極23で構成されるPH測定電極部20A1が設けられ、ガラス電極101と比較参照電極23は、保護部材24を介して長手方向に離間して設けられている。
【0088】
そして、このように構成される地盤測定部300の基端部には錘10が設けられている。なお、本実施形態に係る酸化還元電位測定電極部20B1は、比較参照電極23と比抵抗作用電極301とで構成されている。
【0089】
しかして、本実施形態によれば、比抵抗温度電極27と比抵抗作用電極301を同軸上に配設しているから、地盤G内周辺への電界の漏洩が軽減され、地盤G内の物質変化の影響を極力抑えることができる。それゆえ、本実施形態によれば、より高精度な測定が可能となる。
【0090】
なお、第1実施形態〜第4実施形態において、地盤Gに掘削機等で形成された掘削孔G1内に、地盤測定部を貫入させる例を示したが、これに限らず、例えば、特許文献3に記載のような中空ロッド内に挿入させることもできる。すなわち、本発明は、地盤調査を行うものであればどのようなものにも適用可能である。
【0091】
また、第1実施形態〜第4実施形態において、比抵抗塩分測定電極部として、比抵抗測定と塩分濃度測定を共通の電極部で測定する例を示したが、別々の電極部を設けても良い。
【0092】
さらには、第1実施形態〜第4実施形態において、PH測定電極部、酸化還元電位測定部、比抵抗塩分測定電極部で用いる電極として、一部の電極を共用させる例を示したが、共用させずとも、別々の電極を設けても良い。
【0093】
一方、第1実施形態〜第4実施形態において、地盤測定部は略円筒状に形成されている例を示したが、それに限らず、種々様々な形状に設計変更可能である。
【0094】
さらに、PH測定電極部、酸化還元電位測定部、比抵抗塩分測定電極部の配列は、上記第1実施形態〜第4実施形態に配列に限らず、様々な配列に設計変更可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 センサーケーブル
1b 目盛り
2,100,200,300 地盤測定部
4 計測器
10 錘
11 カバー体
20A,20A1 PH測定電極部
20B,20B1 酸化還元電位測定部
20C,20C1 比抵抗塩分測定電極部
(比抵抗測定電極部、塩分濃度測定電極部)
22,101 ガラス電極
23 比較参照電極
24,102 保護部材
25 比抵抗作用電極
27 比抵抗温度電極(比抵抗用電極)
33 温度センサ
40 スイッチ切替部(切替手段)
301 比抵抗作用電極(比抵抗用電極)
G 地盤
G1 掘削孔
W 地下水(被測定物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に地盤測定部を有するセンサーケーブルと、該センサーケーブルの他端部に接続される計測器とを有してなる地盤探査器であって、
前記地盤測定部は、少なくとも、PHを測定するPH測定電極部と、酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定電極部と、比抵抗を測定する比抵抗測定電極部と、塩分濃度を測定する塩分濃度測定電極部とを有し、
前記計測器は、前記地盤測定部によって測定された測定値を表示してなることを特徴とする地盤探査器。
【請求項2】
前記地盤測定部は、さらに温度センサを有し、前記計測器は、該温度センサにて測定された測定値も表示してなることを特徴とする請求項1に記載の地盤探査器。
【請求項3】
前記計測器には、当該計測器と前記各測定電極部及び/又は温度センサとを夫々電気的に接続あるいは切断可能な切替手段が設けられてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤探査器。
【請求項4】
前記計測器は、比抵抗又は塩分濃度を測定する際、正弦波信号を外部へ出力してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤探査器。
【請求項5】
前記計測器は、測定内容に応じて、前記正弦波信号を変化させてなることを特徴とする請求項4に記載の地盤探査器。
【請求項6】
前記PH測定電極部は、比較電極を有し、該比較電極には、ナフィオン膜が形成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の地盤探査器。
【請求項7】
前記地盤測定部の基端側には、錘が設けられてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の地盤探査器。
【請求項8】
前記地盤測定部の基端側及び/又は前記錘の基端側には、前記センサーケーブルを覆うようなカバー体が設けられてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の地盤探査器。
【請求項9】
前記PH測定電極部は、ガラス電極を有し、該ガラス電極は、前記地盤測定部の先端側に設けられ、その先端側にはさらに当該ガラス電極を保護する保護部材が設けられてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の地盤探査器。
【請求項10】
前記地盤測定部は、先端部に比抵抗測定電極部を設け、該比抵抗電極部は、一対の比抵抗用電極を有し、その一対の比抵抗用電極は、同軸上に設けられてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の地盤探査器。
【請求項11】
前記センサーケーブルには、目盛りが設けられてなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の地盤探査器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−112668(P2012−112668A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259317(P2010−259317)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(596091428)報国エンジニアリング株式会社 (10)
【Fターム(参考)】