説明

地盤改良工事評価装置

【課題】 地盤改良工事を施行しながら同時に性能評価を行うことが可能な地盤改良工事評価装置を提供する。
【解決手段】 性能評価画面120には、性能評価の基準として設定された調査データの調査トルク及びNswの深度変化を示す調査トルク曲線125,Nsw曲線127と、施行時におけるコラム4の回転トルク(施行トルク)を示す施行トルク曲線126とがモニタ表示部124に比較表示される。モニタ表示部124に調査データの調査トルク及びNswの深度変化と施行トルクの深度変化とが逐次比較表示されるため、地盤改良工事を行いながら杭が本当に支持地盤に定着されているか確かめることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
地盤改良工事施工時に性能評価を行うことが可能な地盤改良工事評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅地盤においては、例えばスウェーデン式サウンディング試験機などを用いて原位置における土の貫入抵抗を測定し、その硬軟または締まり具合、さらに土層の構成を測定し、地耐力を推定する地盤調査が予め行なわれる。そして、この地盤調査の結果、軟弱な地盤であると判断された場合には、セメント系固化剤をスラリー状態にし、対象となる地盤に注入しながら機械混合攪拌することによって、地盤土を柱状固化して地盤強化を図る地盤改良工事が行なわれている。
【0003】
ところで、特許文献1では、地盤調査から設計を経て地盤改良工事に至る各工程の関連性を有機的に徹底管理すると共に、正確な調査,設計および工事結果を集中管理できる住宅地盤の総合管理装置が提案されている。
【0004】
地盤調査は、スウェーデン式サウンディング試験機からの試験結果である調査データを見て判断される。図7は、当該調査データの出力であり、一つの工番の各試験ポイント(測点)毎にその結果が出力される。具体的には、調査を行なった現場名,住所,調査目的,標高,調査時の天候,調査年月日,調査時間,調査責任者,調査者,記事,側点番号,標高差,地下水位,最終貫入深さを記入する一覧表示部200の他に、所定の貫入深さDまでロッドを貫入したときのおもりの重量Wsw,半回転数Na,貫入量L,1m当たりの半回転数Nsw,貫入速度cm/s,土質を示すデータ表示部201と、地盤の強さを評価する換算N値Ncを棒グラフおよび数値で示した換算N値表示部202が各々配置される。なお、1m当たりの半回転数Nswひいては換算N値Ncは、地盤の強さを示す地盤強度指標となる。同図からこの試験ポイントでは、ロッドの貫入深さDが3.00mに達するまでは、100kgのおもりWswでさほどハンドルを回さずにロッドを25cm貫入することができたが、それよりもロッドの貫入深さDが深くなると、ハンドルの半回転数Nswが急激に増加していることがわかる。また、換算N値Ncもロッドの貫入深さDが3.00mを境にして急に増加している。したがって、ここでは3.25mよりも深い地盤中に支持基盤が存在することが判る。当該調査の結果、地盤改良が必要な工番の調査データに基づいて杭の設計データが作成される。
【0005】
工事機はこの設計データに基づいて、攪拌器付きのコラムを回転させて地盤を掘削し、掘削された穴内に地盤改良剤であるセメントミルクを注入しながら混合攪拌して、セメントミルクを固化させる。これにより所望の長さ(深度)と注入量(流量)を有する杭が地盤内に形成され、軟弱地盤に対して地盤改良がなされる。図8は、一つの工事が終了した段階で、その工事結果である工事データを示したものであり、一つの杭番号の工事におけるコラムの深度,コラムの圧入圧,コラムの積算回転数およびセメントミルクの積算流量について、その時間変化がグラフで示されている。ここには、測定時間,杭番号,調査地名および担当者を記入する表記部203の他に、コラムの深度曲線211と、コラムの圧入圧曲線212と、コラムの積算回転数曲線213と、セメントミルクの積算流量曲線214を各々示したグラフ表示部204が設けられる。
【特許文献1】特開2002−129544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に地盤調査は整地前の状態で行われることが多く、当該調査から地盤改良工事施行時までの間に盛土などがされて地盤表面の高さが大きく変化している場合がある。しかし、従来行われていた地盤改良工事では、調査データに基づいて設計された杭の設計データどおりに地盤改良工事が行われていた。すなわち、施行時の条件に合致していない調査データに基づいて地盤改良工事が行われている虞があった。調査データが施行時の条件に合致しているかどうかは工事データから読取ることができないため、施工後に載荷試験を行って杭が本当に支持地盤(硬い地盤)に定着されているか確かめる性能評価を行う必要があった。このように、調査データに基づいて設計していても載荷試験をして性能評価する必要があるため、載荷試験を省略して基礎工事を短縮することが困難であった。
【0007】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、地盤改良工事を施行しながら同時に性能評価を行うことが可能な地盤改良工事評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における請求項1の地盤改良工事評価装置では、地盤調査により得た調査トルク及び地盤強度指標の深度変化と、地盤改良工事施行時に作業機から逐次得られる施行トルクの深度変化とを比較表示する性能評価手段を備えている。
【0009】
このようにすると、調査データの調査トルク及び例えばNswなどの地盤強度指標の深度変化と施行トルクの深度変化とから地盤の状態を的確に判断することができるため、地盤改良工事を行いながら杭が本当に支持地盤に定着されているか確かめることができる。
【0010】
本発明における請求項2の地盤改良工事評価装置では、前記性能評価手段は、当該比較表示する深度変化に対して、地盤調査時と地盤改良工事施行時との地盤表面高さの差分に応じて両者の深度を調整して比較表示するものである。
【0011】
このようにすると、調査時の条件と施行時の条件とを合致させることにより、正確な比較表示を行なうことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によると、地盤改良工事を施行しながら同時に性能評価を行うことが可能な地盤改良工事評価装置を提供することができる。
【0013】
本発明の請求項2によると、正確なデータに基づいて性能評価を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明における地盤改良工事評価装置の好ましい実施例を説明する。なお、従来例と同一箇所には同一符号を付し、共通する部分の説明は重複するため極力省略する。
【0015】
図1は、地盤改良工事施工システム全体の概略構成図である。同図において、2は住宅地盤の改良工事を行なうために現場に配置された作業機で、これはオペレータOが操作する運転席3と、この運転席3の前面にあって上下動可能なコラム4と、コラム4を保持する保持機構5と、作業機2を任意の位置に移動させる無限軌道6と、正逆回転可能なコラム4の下部に取り付けられた攪拌器11とにより概ね構成される。運転席3の内部には、移動可能な作業機2の各部の動作を制御するシーケンス制御盤12と、図示しない各センサからの信号出力を一定周期毎に取込んで、測定結果となる工事データを一時的に記憶保持すると共に、後述するように、当該工事データを調査データと比較して性能評価する地番改良工事評価装置に相当する地盤改良工事管理装置13と、この地盤改良工事管理装置13に接続して前記工事データを通信手段である公衆通信回線14に送り出す通信手段としての携帯電話15と、オペレータOの正面側に設置され、地盤改良工事管理装置13へ操作信号を出力する一方で地盤改良工事管理装置13の処理結果を画面表示する操作手段および表示手段としてのタッチパネル付き表示器16が配設される。地盤改良工事管理装置13には挿抜可能な記憶手段であるメモリカード17の挿入口18が設けられる。
【0016】
21は、予め例えばスウェーデン式サウンディング試験機などを用いて収集された調査データの他、一乃至複数の作業機2からの工事データを集中管理するセンター装置であり、これは公衆通信回線14により各作業機2と通信可能に接続される。なお、前記通信手段としては、実施例における携帯電話15の他に、PHS(Personal Handyphone System)やモバイル端末などの移動体端末も含まれる。
【0017】
作業機2は、例えばJIS規格などに沿って作成された設計データに基づいて、攪拌器11付きのコラム4を回転させて地盤を掘削し、掘削された穴内にセメント系固化剤であるセメントミルクを注入しながら混合攪拌する。そして、このセメントミルクを柱状固化して、地盤内の決められた位置に所望の長さ(深度)と注入量(流量)を有する柱状杭を形成する。なお、本実施例では、柱状改良工法と呼ばれる工法で地盤改良を行う場合について説明しているが、その他、例えば、軟弱地盤中にパイプ(細径鋼管)を貫入し、パイプ周面の摩擦力とパイプ先端の支持力、地盤の地耐力との複合作用により、地盤の支持力増加と沈下低減を図る工法であるRES−P工法や、支持層(硬い地盤)まで回転貫入した炭素鋼管杭で、住宅の荷重を支える工法である鋼管杭打設工法や、杭先端部の外周に杭径の2倍から3倍程度の大きさの螺旋翼(外翼)を取り付けた鋼管杭を右回転により回転貫入させる工法であるSMD杭工法などの各種工法から、地盤の状態や施工条件に合わせて最適な工法を選択すればよく、当該工法に合わせて作業機2や表示器16の表示画面等の構成に適当な変更が加えられることとなる。
【0018】
また、作業中はコラム4の深度や回転数の他に、コラム4のX−Y軸方向の傾きや、コラム4の移動速度、セメントミルクの注入流量、コラム4の圧入圧などの作業機2各部の動作情報が、作業機2に取り付けられた各センサ(図示せず)からシーケンス制御盤12ひいては地盤改良工事管理装置13に一定の周期で取込まれる。なお、ここでいう一定の周期とは、例えば深度0.25メートル毎または1分毎とし、そのいずれかを任意に選択できるようになっている。これを受けて地盤改良工事管理装置13は、この作業中のあらゆる動作情報を記憶手段であるメモリカード17に自動的に蓄積保持する。そして、一連の杭形成作業が終了した段階で、表示器16上面の送信ボタンを操作すると、携帯電話15が動作して特定の相手先であるセンター装置21が呼出され、メモリカード17に記憶された動作情報によって得られた一連の作業結果が、工事データとしてセンター装置21に送り出されるようになっている。
【0019】
図2のシステム構成図において、作業機2内に設置される地盤改良工事管理装置13は、携帯電話15を用いてセンター装置21から調査データを受信する調査データ受信手段30と、各センサからの信号出力を一定周期毎に取込んで、測定結果となる工事データを生成する工事データ生成手段31と、携帯電話15を用いてセンター装置21へ工事データを送信する工事データ送信手段32と、受信した調査データと工事データとから性能評価に必要な要素を抽出して比較する性能評価手段33と、表示器16と例えば操作信号や画面表示データなどをやり取りする表示器インターフェース手段34とから構成される。地盤改良工事管理装置13には、コラム4の深度を検出するエンコーダからなる深度検出手段22と、コラム4の回転数を検出するエンコーダからなる回転数検出手段23と、セメントミルクの注入量を検出する流量計すなわち流量検出手段24と、コラム4の回転トルクを検出するトルク検出手段25と、コラム4の圧入圧を検出する圧力検出手段26からの各検出信号がシーケンス制御盤12を介して入力される。前述のように、工事データ生成手段31は、これら各センサからの信号出力を基に工事データを生成する。
【0020】
次に、図3〜図6における表示器16の正面図を参照しながら、その表示構成と地盤改良工事管理装置13の各構成手段の作用を説明する。図3は作業中における表示器16のメイン表示画面40を示したもので、41は工番表示部、42は測点番号表示部、43は杭番号表示部である。工番表示部41に表示される工番は、作業を行なう住所と件名を特定するために、この住所と件名に関連付けられて予めセンター装置21で採番されるもので、13桁文字からなる工番が重複しないように割り当てられている。工番の入力はこのメイン表示画面40とは別の工番入力画面で行なわれて、メモリカード17に一旦格納され、作業開始時に呼出して工番表示部41に表示することができる。44は、性能評価の基準として設定する調査データの測点番号を変更する測点番号送りボタンであり、「+」を押す毎に当該測点番号が+1ずつ加算され、「−」を押す毎に当該測点番号が−1ずつ減算されて、測点番号表示部42に表示されるようになっている。杭番号表示部43に表示される数字は「001」から開始し、一つの杭作業が終了する毎に、数字が+1ずつ自動的に加算されるようになっている。
【0021】
70は作業中の各部の測定値をデジタル表示で表わすデジタル表示部で、これはコラム4の深度を表わす深度表示部50と、コラム4の積算回転数を表わす積算回転数表示部51と、セメントミルクの積算流量を表わす積算流量表示部52と、コラム4のX軸方向及びY軸方向の傾きを表わす傾斜表示部53とにより構成される。これらの各表示部50〜53には、現在の測定値が数字として表示される。また、71はデジタルおよびアナログ表示を併用したメーター表示部で、これはセメントミルクの瞬時流量を表示する瞬時流量表示部45と、コラム4の回転トルクを表示するトルク表示部46と、コラム4の圧入圧を表示する圧入圧表示部47と、コラム4の移動速度を表示する速度表示部48と、コラム4の回転速度を表示する回転速度表示部49とにより構成される。これら各表示部の右下にはメータの最大スケール値が数字で表示されているが、この値は任意に変更することができる。
【0022】
さらに、表示器16のメイン表示画面40には操作手段として、開始指示手段であるスタートボタン55と、停止指示手段であるストップボタン56と、再開指示手段である施工ボタン57と、一時停止指示手段である継杭ボタン58とを備えている。スタートボタン55は各部の測定を開始する際に操作するもので、測定開始を指示すると杭番号表示部43に表示される杭番号が+1加算されると共に、工番表示部41に表示される工番のなかで、杭番号表示部43に表示される杭番号に関する各部の動作情報が地盤改良工事管理装置13に取込まれ、かつ表示器16に表示されるようになる。なお、作業機2そのものが工事を開始していない場合は、スタートボタン55の操作を無効にし、不必要な動作情報の取込みを防止する。一方、ストップボタン56は各部の測定を終了する際に操作するもので、測定終了を指示すると、地盤改良工事管理装置13への各部の動作情報の取込みが停止する。また、継杭ボタン58は継杭またはトラブル発生時に操作するもので、これを押すと各部の測定が一時停止する。さらに、施工ボタン57は施工再開時に操作するもので、これを押すと各部の測定が再スタートする。
【0023】
その他に、表示器16の表示画面下部には、画面切換操作手段として、工番入力画面切換ボタン60と、データ送信画面切換ボタン61と、杭モニタ画面切換ボタン62と、グラフ画面切換ボタン63と、NAT画面切換ボタン64と、ポンプ画面切換ボタン65と、杭伏せ画面切換ボタン66と、パラメータ画面切換ボタン67が設けられており、いずれか一つのボタン64〜67を操作することにより、メイン表示画面40とは別の画面が表示器16で表示されるようになっている。また54は、セメントミルクを注入するための自動運転するポンプ(図示せず)の動作状況を表示するポンプ運転状況表示部である。なお、これ以降は、本発明に関連する地盤改良工事の性能評価に関する画面と、それに対応する地盤改良工事管理装置13の構成手段についてのみ説明する。
【0024】
地盤改良工事の性能評価を行うためには、その基準となる評価データをセンター装置21から地盤改良工事管理装置13へ取り込む必要がある。この操作を行なう画面が図4に示すNAT画面80である。メイン表示画面40からNAT画面80への遷移は、NAT画面切換ボタン64を押すことにより行われる。同図において、81は、メモリカード17に格納された調査データを表示するメモリカード照会部であり、ここにはメモリカード17内でNo.1〜10までの格納Noに関連づけられた各調査データの工番と杭本数(測点数)が10データ分一覧表示される。83は、メモリカード照会部81で選択されている(反転表示されている)格納No(同図ではNo.1)を変更する格納No送りボタンであり、「+」を押す毎に当該格納Noが+1ずつ加算され、「−」を押す毎に当該格納Noが−1ずつ減算されて、調査データ格納No表示部82に表示されるようになっている。メモリカード照会部81では、調査データ格納No表示部82に表示された格納Noが反転表示される。84は、センター装置21から受信する調査データの工番(受信工番)を入力する受信工番入力部であり、ここでは受信工番入力部84を手で触れると、入力用のテンキーウインドウ(図示せず)が表示され、受信工番を入力できるようになっている。
【0025】
85は、受信ボタンであり、これを押すことにより地盤改良工事管理装置13の調査データ受信手段30が、携帯電話15を用いて公衆通信回線14上でセンター装置21とのデータ通信を確立させ、受信工番入力部84に入力された受信工番に対応する調査データをセンター装置21から受信する。当該受信結果は受信結果表示部87に例えば「受信失敗」,「受信完了」などのメッセージで表示される。センター装置21から地盤改良工事管理装置13へ受信された調査データは、調査データ格納No表示部82で指定された格納Noに対応するメモリカード17の記憶エリアに格納される。これに伴い、メモリカード照会部81の表示内容も更新される。86は、調査データの受信を中止する中止ボタンである。
【0026】
また、NAT画面80左下部には、メモリカード17が挿入口18に挿入されていないことを報知するメモリカード無報知部89と、地盤改良工事管理装置13のCPUバッテリが低下していることを報知するCPUバッテリ低下報知部90が、NAT画面80右下部には、画面切換操作手段として、調査データクリア画面切換ボタン91と、メイン表示画面40に戻るメイン表示画面切換ボタン92がそれぞれ設けられる。
【0027】
88は、メモリカード17に格納された調査データの1つを性能評価の基準として設定し、その内容を別画面で表示させる読出ボタンである。読出ボタン88を押すと、調査データ格納No表示部82で指定された格納Noの記憶エリアに格納されている調査データがメモリカード17から読み出されて、地盤改良工事管理装置13の性能評価手段33で性能評価の基準として設定されると共に、その内容が図5に示す調査データ表示画面100で表示される。101は、この画面上に表示されている調査データの工番を表示する調査データ工番表示部である。調査データは、調査データ表示部102において各測点毎にグラフ表示されている。調査データ表示部102には、それぞれの測点について、測点番号,標高,レベル,支持地盤の深度が表示される数値表示部103と、調査時におけるロッドの回転トルクの深度変化を示す調査トルク曲線125と前記Nswの深度変化を示すNsw曲線127をグラフにしたグラフ表示部104とが表示される。グラフ表示部104で表示される縦軸の最大値は変更可能であり、縦軸スケール入力部105を手で触れると、入力用のテンキーウインドウ(図示せず)が表示され、縦軸の最大値を入力できるようになっている。また、レベル入力部106を手で触れると、同様にして、グラフ表示部104を触れて選択した測点番号のレベルの値を入力できるようになっている。このレベルは、調査時の地盤表面高さと地盤改良工事施行時の地盤表面高さとの差分を表す項目であり、施行時の方が低い場合は−(負)、高い場合は+(正)の値を入力する。107は、一の測点番号について入力されたレベルの値を他の測点番号にコピーするコピーボタンである。
【0028】
調査データには最大10本分の杭についての調査結果が含まれており、一画面で表示しきれないため、調査データ表示画面100の右下部には、2画面分(2ページ分)にわたる測点番号のグラフの画面を切り替えるページ送りボタン113が設けられており、現在表示されている画面はページ表示部112に表示される。なお、これらの右隣には、メイン表示画面40に戻るメイン表示画面切換ボタン114が設けられている。
【0029】
また、調査データ表示画面100の中央上部には、グラフ表示部104のグラフ部の横軸スケールを変更させるスケール変更ボタン110が、調査データ表示画面100の右上部には、グラフ表示部104のグラフ部を左右方向にスクロールさせるスクロールボタン111がそれぞれ設けられる。
【0030】
再び図3のメイン表示画面40に戻って、地盤改良工事の性能評価について説明する。地盤改良工事を始めるにあたって、NAT画面80及び調査データ表示画面100にて、センター装置21から調査データを受信し、性能評価の基準となる調査データを設定すると共にそれらについて適当なレベルを入力しておく必要がある。次に、測点番号送りボタン44を操作して工事を行なう地点に対応する測点番号を選択し、スタートボタン55を押して地盤改良工事を開始する。このとき、表示器16の画面がメイン表示画面40から図6に示す性能評価画面120へ切換わる。
【0031】
ここで性能評価画面120の表示構成について説明する。121は現在施行している工事の工番を表示する工番表示部であり、122は当該工事中の杭番号を表示する杭番号表示部である。画面中央には、性能評価の基準として設定された調査データの測点番号,支持地盤の深度,標高,レベルが表示される数値表示部123と、当該調査データの調査トルク及びNswの深度変化を示す調査トルク曲線125,Nsw曲線127をグラフにしたモニタ表示部124とが表示される。また、モニタ表示部124には、調査トルク曲線125とNsw曲線127のグラフ上に、施行時におけるコラム4の回転トルク(施行トルク)を示す施行トルク曲線126が比較表示されるが、これについては後述する。また、施行トルクの現在値は施行トルク表示部130にリアルタイムに表示され、数値表示部123の右脇にはモニタ表示部124に表示されるデータを詳細表示するNAT詳細表示ボタン131が設けられる。その他、性能評価画面120の右上部には、モニタ表示部124のグラフ部の横軸スケールを変更させるスケール変更ボタン132と、モニタ表示部124のグラフ部を左右方向にスクロールさせるスクロールボタン133がそれぞれ設けられる。性能評価画面120右下部には、画面切換操作手段として、データ受信画面切換ボタン134と、グラフ選択画面切換ボタン135と、メイン表示画面40に戻るメイン表示画面切換ボタン136がそれぞれ設けられる。
【0032】
工事を開始すると、作業機2は攪拌機11付きのコラム4を正回転させて地盤を掘削すると共に、掘削した穴にスラリー状態のセメントミルクを注入し、このセメントミルクを攪拌する。このとき、地盤改良工事管理装置13に深度検出手段22,回転数検出手段23,流量検出手段24,トルク検出手段25,圧力検出手段26からの各検出信号が入力され、工事データ生成手段31がこれら各センサからの信号出力を基に工事データを生成する。それと同時に、性能評価手段33が深度と施行トルクを抽出,加工し、性能評価画面120のモニタ表示部124に、施行トルクの深度変化を示す施行トルク曲線126が折れ線状のグラフとして逐次比較表示される。施行トルク曲線126の開始点は、調査時と施行時の地盤表面高さを調整するため、入力されたレベル分(深度分)ずらした位置になる。図6では、数値表示部123のレベルが−0.500mであるため、施行トルク曲線126はモニタ表示部124で深度が0.500mとなる位置から開始されている。すなわち、施行トルク曲線126は、レベルの数値が負のときは施行時における実際の深度にその数値を加算し、正のときはその数値を減算した調整後の深度に対する施行トルクの変化を示したものとなる。
【0033】
図6のモニタ表示部124において、工事開始間もない時点では、まだ深度が浅く軟らかい地盤であるため、Nswと施行トルクは共に比較的小さい値であるが、深度が進むにつれてそれらの値が次第に大きくなっていき、硬い地盤に到達してNswが急増するに伴い、施行トルクも最大値を示す。その後、硬い地盤に衝突してコラム4が空転するため施工トルクは略0になる。なお、同図では、軟弱地盤部分でNswと施行トルクの値が大小に大きく振られているが、これは地中に埋まった例えば岩や建材などの硬い埋蔵物に衝突することにより、これらの値が一時的に大きくなるためである。このようにして、モニタ表示部124に調査データの調査トルク及びNswの深度変化と施行トルクの深度変化とが逐次比較表示されるため、地盤改良工事を行いながら杭が本当に支持地盤に定着されているか確かめることができる。とりわけ、性能評価の評価要素として調査トルクや施行トルクなどのトルクを採用することにより、そこからロッドやコラム4の挙動を読取り、Nswの値と相俟って地盤の状態を的確に判断しながら地盤改良工事を行うことができる。
【0034】
以上のように本実施例の地盤改良工事管理装置13では、地盤調査により得た調査トルク及び地盤強度指標としてのNswの深度変化を示す調査トルク曲線125,Nsw曲線127と、地盤改良工事施行時に作業機2から逐次得られる施行トルクの深度変化を示す施行トルク曲線126とを比較表示する性能評価手段33を備えている。
【0035】
このようにすると、調査トルク曲線125,Nsw曲線127と施行トルク曲線126とから地盤の状態を的確に判断することができるため、地盤改良工事を行いながら杭が本当に支持地盤に定着されているか確かめることができる。従って、地盤改良工事を施行しながら同時に性能評価を行うことが可能な地盤改良工事評価装置を提供することができる。
【0036】
また本実施例の地盤改良工事管理装置13では、前記性能評価手段33は、当該比較表示する深度変化である調査トルク曲線125,Nsw曲線127と施行トルク曲線126に対して、地盤調査時と地盤改良工事施行時との地盤表面高さの差分に応じて両者の深度を調整して比較表示するものである。
【0037】
このようにすると、調査時の条件と施行時の条件とを合致させることにより、正確な比較表示を行なうことができる。従って、正確なデータに基づいて性能評価を行うことができる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。性能評価画面120のモニタ表示部124には、Nswの代わりにN値Ncなどを表示してもよく、地盤の硬さがわかるデータであればどのようなものでも地盤強度指標として用いることができる。また、センター装置21から調査データを受信する際に、作業機2に例えばGPSなどの位置特定手段を登載して、地盤改良工事管理装置13がセンター装置21へ当該作業機2の位置情報を送信することにより、センター装置21が作業機2の位置から近い地点に関連付けられた調査データを自動検索するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明における地盤改良工事評価装置を搭載した地盤改良工事施行システムの全体構成を表わした概略図である。
【図2】本発明における地盤改良工事評価装置の構成を表わしたブロック図である。
【図3】同上、メイン表示画面を表示した状態の表示器の正面図である。
【図4】同上、NAT画面を表示した状態の表示器の正面図である。
【図5】同上、調査データ表示画面を表示した状態の表示器の正面図である。
【図6】同上、性能評価画面を表示した状態の表示器の正面図である。
【図7】従来例における地盤調査の試験結果を示す概略図である。
【図8】同上、工事データのグラフを表わした概略図である。
【符号の説明】
【0040】
2 作業機
13 地盤改良工事管理装置(地盤改良工事評価装置)
33 性能評価手段
125 調査トルク曲線(調査トルクの深度変化)
126 施行トルク曲線(施行トルクの深度変化)
127 Nsw曲線(地盤強度指標の深度変化)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤調査により得た調査トルク及び地盤強度指標の深度変化と、地盤改良工事施行時に作業機から逐次得られる施行トルクの深度変化とを比較表示する性能評価手段を備えたことを特徴とする地盤改良工事評価装置。
【請求項2】
前記性能評価手段は、当該比較表示する深度変化に対して、地盤調査時と地盤改良工事施行時との地盤表面高さの差分に応じて両者の深度を調整して比較表示するものであることを特徴とする請求項1記載の地盤改良工事評価装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−85137(P2007−85137A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278188(P2005−278188)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(500489059)株式会社アライブ (2)
【出願人】(500489255)株式会社サムシング (1)
【Fターム(参考)】