説明

地盤改良装置および掘削施工方法

【課題】簡便且つ低コストに回転軸の傾斜度を計測することができ、回転軸の鉛直精度の向上に寄与することのできる地盤改良装置を提供する。
【解決手段】リーダー103の下端部に設けた下部振れ止め機構150のフレーム内に、鉛直な軸回りに回転可能な4個以上の水平回転ローラ152を周方向に間隔をおいて配置し、それら水平回転ローラを各々横荷重計301を介してフレームにより回転自在に支持し、水平回転ローラの内側に内接させ且つ落下を止めた状態で、鉛直な軸回りに回転可能に回転筒153を配置し、その回転筒の内周に周方向に間隔をおいて、水平な軸回りに回転可能な3個の垂直回転ローラ154を配置し、垂直回転ローラの内側に内接するように回転軸101を貫通させて、横荷重計の測定値のバランスにより回転軸の傾斜度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に掘削手段を有する回転軸を回転させつつ昇降させることで地盤の改良を行う地盤改良装置、および、その地盤改良装置を使用した掘削施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
混合処理工法等において用いられる地盤改良装置は、リーダーに沿って鉛直に支持した回転軸を回転しながら地盤に鉛直に貫入させていき、回転軸の下端にて供給吐出する改良材(セメントミルク等の安定材)と現地土とを攪拌混合して、地下に杭や壁等の改良体を造成するものである。
【0003】
このような地盤改良装置を用いて地盤を掘削する場合、回転軸を貫入する過程において、回転軸の先端に設けた掘削手段が硬質層や障害物等に当たることによって、回転軸が設計垂直度からずれてしまうことがある。このような芯ずれ(回転軸の「軸ずれ」、「曲がり」、または「傾斜」ともいう)は、改良体が設計仕様から外れる要因となり、施工品質を損なうため、従来より色々な対策が提案されている。
【0004】
従来の対策として、まず第1に、リーダーの下端部に下部振れ止め機構を設け、回転軸の水平方向の振れを防止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。しかし、回転軸の芯ずれ自体が、下部振れ止め機構を支点にして回転軸が曲がりながら地中に貫入する現象として起こるため、下部振れ止め機構だけでは有効にこれを防止することはできない。特に長尺施工になると、深度が深くなるほど、回転軸のずれ量が大きくなるため、曲がりによる影響を貫入初期に回避しておく必要がある。
【0005】
そこで、一般的には、回転軸の傾斜度をジャイロ方式等の傾斜計で測定して、傾斜が大きくならないように施工する方法が採られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開2001−234527号公報
【特許文献2】特開平6−10338号公報
【特許文献3】特開2005−54375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ジャイロ方式等の傾斜計を使用する場合、傾斜計の設置場所の選択に苦労する上、施工時の振動の影響を受けやすい等の問題があり、回転軸の傾斜度を簡便に低コストに測定することはできなかった。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮し、簡便且つ低コストに回転軸の傾斜度を計測することができ、回転軸の鉛直精度の向上に寄与することのできる地盤改良装置および掘削施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の地盤改良装置は、先端部に掘削手段を備え、ベースマシンのリーダーのガイドに沿って鉛直方向に昇降自在に支持された回転軸と、該回転軸を回転させつつ昇降させる駆動装置と、前記リーダーの下端部に設けられ、前記回転軸の周囲をフレームで取り囲むことで、前記回転軸の水平方向の振れを防止する下部振れ止め機構と、を備える地盤改良装置において、前記下部振れ止め機構のフレーム内に、前記回転軸を取り囲むように、該回転軸を案内するための複数のローラを設け、これら各ローラと前記フレームとの間に、前記回転軸から前記ローラへかかる水平荷重を検知する横荷重計を設け、各横荷重計の測定値のバランスにより前記回転軸の鉛直線に対する傾斜度を検出するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の地盤改良装置であって、前記フレームの内周の略同じ高さの位置に、前記回転軸を案内するためのローラとして、鉛直な軸回りに回転可能な3個以上の複数の水平回転ローラを周方向に間隔をおいて配置し、それら水平回転ローラを各々、前記横荷重計を介して前記フレームにより回転自在に支持し、それら水平回転ローラの内側に内接させ且つ落下を止めた状態で、鉛直な軸回りに回転可能に回転筒を配置し、その回転筒の内周に周方向に間隔をおいて、水平な軸回りに回転可能な3個以上の垂直回転ローラを配置し、それら垂直回転ローラの内側に内接するように、前記回転軸を貫通させたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の地盤改良装置であって、前記フレームの中心に前記回転軸を貫通させ、その中心を通り水平面内で互いに直交する2本の直線上の前記中心から等距離の位置に、合計4個の前記水平回転ローラを配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の地盤改良装置であって、前記2本の直線が、前記リーダーから見て前後方向に延びる直線と左右方向に延びる直線であり、前記4個の水平回転ローラが、前記フレームの中心の前後と左右にそれぞれ配されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の地盤改良装置であって、前記駆動装置に、前記回転軸を回転駆動した際の回転負荷を検出する回転負荷検出手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の地盤改良装置であって、前記回転軸を回転させつつ昇降させる駆動装置として、回転軸を回転駆動する回転駆動装置と、該回転駆動装置を介して前記回転軸をワイヤーで吊り支持し該ワイヤーの巻き取りと繰り出しにより回転軸を昇降駆動する昇降駆動装置と、が設けられ、前記回転軸を吊り支持するワイヤーが、前記リーダーの上端を経由して前記ベースマシン上に装備された巻取装置のドラムに巻回され、前記ワイヤーの通過経路上に、ワイヤーの繰り出し速度を検出する速度計と、ワイヤーの吊り下げ荷重を検出する縦荷重計とが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明の掘削施工方法は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の地盤改良装置による掘削施工方法であって、前記駆動装置により回転軸を回転させつつ下降させることにより、前記掘削手段により地盤を掘削して回転軸を地盤中に貫入させ、その際、前記下部振れ止め機構に備わる横荷重計の測定値を監視しながら所定速度で回転軸の貫入を進めていき、前記横荷重計の測定値のバランスが所定以上に崩れたことを検知した場合は、貫入速度を制限しながら掘削を続行し、横荷重計の測定値のバランスの崩れが改善されたら、再び貫入速度を所定速度に戻し、一方、バランスの崩れが改善されない場合は、回転軸をいったん引き上げた後、再貫入することを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明の掘削施工方法は、請求項5に記載の地盤改良装置による掘削施工方法であって、前記駆動装置により回転軸を回転させつつ下降させることにより、前記掘削手段により地盤を掘削して回転軸を地盤中に貫入させ、その際、前記下部振れ止め機構に備わる横荷重計の測定値と前記回転負荷検出手段の検出値とを監視しながら所定速度で回転軸の貫入を進めていき、前記横荷重計の測定値のバランスが所定以上に崩れたか前記回転負荷検出手段の検出する回転負荷が所定以上に上昇したことを感知した場合は、貫入速度を制限しながら掘削を続行し、横荷重計の測定値のバランスの崩れが改善され且つ回転負荷検出手段の検出する回転負荷の上昇が改善されたら、再び貫入速度を所定速度に戻し、一方、前記横荷重計の測定値のバランスの崩れまたは回転負荷の上昇が改善されない場合は、回転軸をいったん引き上げた後、再貫入することを特徴とする。
【0016】
請求項9の掘削施工方法は、請求項6に記載の地盤改良装置による掘削施工方法であって、前記速度計と縦荷重計の検出値を監視し、前記ワイヤーの弛みを防止しつつ適正な垂直荷重を前記回転軸にかけながら、当該回転軸を下降させて地盤に貫入させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、下部振れ止め機構のフレーム内に、回転軸を案内するための複数のローラを設け、これら各ローラとフレームとの間に、回転軸からローラへかかる水平荷重を検知する横荷重計を設け、各横荷重計の測定値のバランスにより回転軸の鉛直線に対する傾斜度を検出するようにしているので、複数のローラの案内による回転軸のスムーズな貫入を保証しつつ、横荷重計により、振動の影響をあまり受けずに、簡便、且つ低コストに回転軸の傾斜度を貫入初期の段階で感知することができる。従って、即座に回転軸の傾斜を改善するように施工状況の是正を促すことができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、フレームの内側に3個以上の水平回転ローラを配置し、それら水平回転ローラを各々、横荷重計を介してフレームにより回転自在に支持し、水平回転ローラに内接するように回転筒を配置し、その回転筒の内周に3個以上の垂直回転ローラを配置し、それら垂直回転ローラに内接するように回転軸を貫通させているので、各横荷重計の測定値のバランスにより、回転軸の曲がり(傾斜)を検出することができる。例えば、ある横荷重計の測定値が増大すれば、その横荷重計を介して支持している水平回転ローラへの水平荷重が増大していることであるから、同ローラ側へ回転軸が曲がっていることを検出することができる。
【0019】
また、水平回転ローラで垂直な軸周りに回転自在に回転筒を支持し、その回転筒の内周に配した垂直回転ローラで回転軸を保持するので、回転しながら昇降する回転軸をスムーズにガイドすることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、フレームの中心に回転軸を貫通させ、その中心を通り水平面内で互いに直交する2本の直線上の前記中心から等距離の位置に合計4個の水平回転ローラを配置しているので、バランスよく円筒体を回転自在に支持することができる。また、直交する4方向の測定データにより、回転軸の曲がりを容易に分析することができ、曲がりが検出された際の対応も簡単にできる。
【0021】
請求項4の発明によれば、前記2本の直線が、リーダーから見て前後方向に延びる直線と左右方向に延びる直線であり、4個の水平回転ローラが、フレームの中心の前後と左右にそれぞれ配されているので、各水平回転ローラを支持する横荷重計により、前後左右の曲がりを独立して測定することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、回転軸の回転負荷の検出によって、回転軸の曲がりを、回転負荷の面から確認することができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、ベースマシン上の巻取装置のドラムの回転に基づいてワイヤーの繰り出し速度を測定するのではなく、ワイヤーの通過経路上に設けた速度計によってワイヤーの繰り出し速度を直接測定するようにしているので、ドラムにおけるワイヤーの巻き取り径に関係なく、正確なワイヤーの繰り出し速度を測定することができる。また、ワイヤーの吊り下げ荷重を縦荷重計で測定するので、速度計と縦荷重計のデータにより、ワイヤーの弛みを生じずに的確な垂直荷重を回転軸の先端に加えることができ、回転軸の芯ずれを防止することができる。
【0024】
請求項7の発明によれば、所定速度での回転軸の貫入時に、横荷重計の測定値のバランスが所定以上に崩れたことを検知した場合は、貫入速度を制限しながら掘削を続行し、横荷重計の測定値のバランスの崩れが改善されたら、再び貫入速度を所定速度に戻し、一方、バランスの崩れが改善されない場合は、回転軸をいったん引き上げた後、再貫入するようにしたので、軸ずれを生じることなく、精度良く回転軸を鉛直に貫入することができ、改良体の品質向上が図れる。
【0025】
請求項8の発明によれば、所定速度での回転軸の貫入時に、横荷重計の測定値のバランスが所定以上に崩れたか回転負荷が所定以上に上昇したことを感知した場合は、貫入速度を制限しながら掘削を続行し、横荷重計の測定値のバランスの崩れが改善され且つ回転負荷検出手段の検出する回転負荷の上昇が改善されたら、再び貫入速度を所定速度に戻し、一方、横荷重計の測定値のバランスの崩れまたは回転負荷の上昇が改善されない場合は、回転軸をいったん引き上げた後、再貫入するようにしたので、軸ずれを生じることなく、精度良く回転軸を鉛直に貫入することができ、改良体の品質向上が図れる。
【0026】
請求項9の発明によれば、速度計と縦荷重計の検出値を監視し、ワイヤーの弛みを防止しつつ適正な垂直荷重を回転軸にかけながら、当該回転軸を下降させて地盤に貫入させるので、精度良く回転軸を鉛直に貫入することができ、改良体の品質向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1に全体構成を示すように、本実施形態の地盤改良工法を実施する地盤改良装置は、ベースマシン102のリーダー103のガイド103aに沿って鉛直方向に昇降自在に支持された回転軸101と、該回転軸101を昇降させるワイヤー吊り下げ式の昇降駆動装置104と、該昇降駆動装置104の昇降部に装備された回転駆動装置105とを有し、昇降駆動装置104によって回転軸101を昇降させながら、回転駆動装置105で回転軸101を回転駆動することにより、回転軸101の先端に取り付けた掘削攪拌手段110により地盤を掘削し、その掘削土壌中に安定材を注入し、攪拌混合して地盤を改良するものである。回転軸101は、リーダー103の下部に設けた下部振れ止め機構150によって掘削と貫入を案内される。
【0029】
図2は下部振れ止め機構150の構成を示す平面図、図3は図2のIII−III矢視断面図である。
【0030】
下部振れ止め機構150は、回転軸101の水平方向の振れを防止するためのもので、リーダー103の下端部に設けられて中心部に回転軸101が貫通する正方形のフレーム151と、このフレーム151の4つの辺の長さ方向の中心の内面側に同じ高さに位置させて且つ各々横荷重計301を介して支持された鉛直な軸回りに回転可能な4つの水平回転ローラ152と、それら水平回転ローラ152の内側に内接させ且つ落下を止めた状態で支持された鉛直な軸回りに回転可能な回転筒153と、その回転筒153の内周に周方向に間隔をおいて配置されて水平な軸回りに回転可能な3個の垂直回転ローラ154と、から構成されている。そして、垂直回転ローラ154の内側に内接するように、回転軸101が貫通している。
【0031】
従って、フレーム151の中心Oを通り水平面内で互いに直交する前後方向に延びる中心線L1と左右方向に延びる中心線L2上の中心Oから等距離の位置に各水平回転ローラ152が配置され、4個の水平回転ローラ152がフレーム151の中心Oの前後と左右にそれぞれ位置している。そして、この地盤改良装置では、前記4つの横荷重計301の測定値のバランスにより、回転軸101の鉛直線に対する傾斜度を検出するようになっている。
【0032】
この下部振れ止め機構150では、回転軸101が回転しながら昇降するとき、垂直回転ローラ154によって回転軸101の上下方向の動きを案内し、自由回転する回転筒153を介して、水平回転ローラ152によって回転軸101の回転を案内する。
【0033】
また、回転駆動装置105には、回転軸101を回転駆動した際の回転負荷を検出する回転負荷検出手段302(回転駆動装置がモータの場合は電流検出手段が相当)が設けられる共に、回転駆動装置105を搭載した昇降部には深度計302(移動軌跡測定装置に相当)が設けられている。
【0034】
また、昇降駆動装置104は、回転駆動装置105を介して回転軸101をワイヤー104aで吊り支持し、該ワイヤー104aの巻き取りと繰り出しにより回転軸101を昇降駆動するものであり、回転軸101を吊り支持するワイヤー104aの基端側を、リーダー103の上端を経由して、ベースマシン102上に装備した巻取装置のドラム(図示省略)に巻回させている。そして、ワイヤー104aの通過経路上に、ワイヤー104aの繰り出し速度を検出する速度計304と、ワイヤー104aの吊り下げ荷重を検出する縦荷重計305とを設けている。
【0035】
一方、掘削攪拌手段110としては、図4に示すように、回転軸101の最先端に掘削ヘッド120が設けられると共に、その上側に、攪拌翼112と共回り板113とが、上下方向に複数段に交互に設けられている。攪拌翼112は、回転軸101から半径方向に直線的に延びるバー状のもので、回転軸101の軸線に対して傾斜した羽根板よりなる。最下段の攪拌翼112は、下端に掘削爪114を有しており、攪拌ばかりでなく掘削機能も果たせるようになっている。また、上段の攪拌翼112の回転方向の背面には、回転軸101内の供給管路を通して送られてくる安定材の吐出ボックス115が設けられている。
【0036】
また、掘削ヘッド120としては、図4及び図5に示すように、下端縁121aに多数の掘削爪122を有した2条の螺旋翼121が設けられている。2条の螺旋翼121は、回転軸101を中心に180°対称に配置されており、それぞれが180°の角度範囲で巻いている。つまり、各螺旋翼121は半ピッチ分だけ設けられている。
【0037】
また、各螺旋翼121の下端縁121aは、外周端から内周端に向かって上り傾斜した直線状になっており、2つの螺旋翼121の下端縁121aで構成される掘削ヘッド120の先端が、中心部が凹み、周縁部が突出した下向きの凹形状になっている。そして、一方の螺旋翼121の回転方向の背面側に、摩擦軽減用の流体(水、空気、水と空気の混合体など)の噴射ボックス130が設けられている。
【0038】
次に上記構成の地盤改良装置を用いた地盤改良工法について説明する。
【0039】
地盤改良に際しては、まず、昇降駆動装置104および回転駆動装置105により回転軸101を回転させつつ、掘削ヘッド120を地盤に向けて下降させる。それにより、回転軸101の先端に装備した掘削ヘッド120で地盤を掘削し、地盤中に回転軸101を貫入していく。
【0040】
その貫入時には、下部振れ止め機構150に備わる横荷重計301の測定値と回転負荷検出手段303の検出値とを監視しながら所定速度で回転軸101の貫入を進めていき、横荷重計301の測定値のバランスが所定以上に崩れたか回転負荷検出手段303の検出する回転負荷が所定以上に上昇したことを感知した場合は、貫入速度を制限しながら掘削を続行する。そして、横荷重計301の測定値のバランスの崩れが改善され且つ回転負荷検出手段303の検出する回転負荷の上昇が改善されたら、再び貫入速度を所定速度に戻す。一方、横荷重計301の測定値のバランスの崩れまたは回転負荷の上昇が改善されない場合は、回転軸101をいったん引き上げた後、再貫入する。
【0041】
また、それと同時に、速度計304と縦荷重計305の検出値を監視し、ワイヤー104aの弛みを防止しつつ適正な垂直荷重を回転軸101にかけながら、回転軸101を下降させて地盤に貫入させる。
【0042】
このように、横荷重計301の測定値のバランスにより回転軸101の鉛直線に対する傾斜度を検出するようにしているので、複数のローラ152、154の案内による回転軸101のスムーズな貫入を保証しつつ、横荷重計301により、振動の影響をあまり受けずに、簡便、且つ低コストに回転軸101の傾斜度を貫入初期の段階で感知することができる。
【0043】
従って、即座に回転軸101の傾斜を改善するように施工状況の是正を促すことができる。具体的な対処法としては、上述したように、横荷重計301の測定値により回転軸101の傾斜が発生したことが検知されたときには、貫入速度を低く抑えながら(貫入速度ゼロも含む)掘削を続行し、横荷重計301の測定値のバランスの崩れが改善され且つ回転負荷検出手段303の検出する回転負荷の上昇が改善されたら、再び貫入速度を所定速度に戻す。一方、横荷重計301の測定値のバランスの崩れや回転負荷の上昇が改善されない場合は、回転軸101をいったん引き上げた後、再び貫入する。
【0044】
こうすることで、貫入初期の段階での軸ずれを無くすことができるので、以降の貫入作業の継続により、精度良く回転軸101を鉛直に地盤中に貫入することができ、その結果、改良体の品質向上を図ることができるようになる。
【0045】
また、この実施形態では、リーダーから見て前後方向に延びる中心線L1と左右方向に延びる中心線L2上に水平回転ローラ152と横荷重計301の組を配置しているので、回転軸101の前後左右の曲がりを分析しやすく、また、それを是正するための対応も即座にとりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態の地盤改良工法を実施する地盤改良装置の全体構成の概要を示す側面図である。
【図2】地盤改良装置の下部振れ止め機構の詳細を示す平面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】同地盤改良装置の回転軸の先端に設けた掘削攪拌手段の構成を示す構成図である。
【図5】前記掘削攪拌手段を構成する掘削ヘッドの、上下逆にして見た斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
101 回転軸
102 ベースマシン
103 リーダー
103a ガイド
104 昇降駆動装置
104a ワイヤー
105 回転駆動装置
110 掘削攪拌手段
150 下部振れ止め機構
151 フレーム
152 水平回転ローラ
153 回転筒
154 垂直回転ローラ
301 横荷重計
303 回転負荷検出手段
304 速度計
305 縦荷重計
L1 前後方向に延びる中心線(直線)
L2 左右方向に延びる中心線(直線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に掘削手段を備え、ベースマシンのリーダーのガイドに沿って鉛直方向に昇降自在に支持された回転軸と、該回転軸を回転させつつ昇降させる駆動装置と、前記リーダーの下端部に設けられ、前記回転軸の周囲をフレームで取り囲むことで、前記回転軸の水平方向の振れを防止する下部振れ止め機構と、を備える地盤改良装置において、
前記下部振れ止め機構のフレーム内に、前記回転軸を取り囲むように、該回転軸を案内するための複数のローラを設け、これら各ローラと前記フレームとの間に、前記回転軸から前記ローラへかかる水平荷重を検知する横荷重計を設け、各横荷重計の測定値のバランスにより前記回転軸の鉛直線に対する傾斜度を検出するようにしたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地盤改良装置であって、
前記フレームの内周の略同じ高さの位置に、前記回転軸を案内するためのローラとして、鉛直な軸回りに回転可能な3個以上の複数の水平回転ローラを周方向に間隔をおいて配置し、それら水平回転ローラを各々、前記横荷重計を介して前記フレームにより回転自在に支持し、それら水平回転ローラの内側に内接させ且つ落下を止めた状態で、鉛直な軸回りに回転可能に回転筒を配置し、その回転筒の内周に周方向に間隔をおいて、水平な軸回りに回転可能な3個以上の垂直回転ローラを配置し、それら垂直回転ローラの内側に内接するように、前記回転軸を貫通させたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項3】
請求項2に記載の地盤改良装置であって、
前記フレームの中心に前記回転軸を貫通させ、その中心を通り水平面内で互いに直交する2本の直線上の前記中心から等距離の位置に、合計4個の前記水平回転ローラを配置したことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地盤改良装置であって、
前記2本の直線が、前記リーダーから見て前後方向に延びる直線と左右方向に延びる直線であり、前記4個の水平回転ローラが、前記フレームの中心の前後と左右にそれぞれ配されていることを特徴とする地盤改良装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の地盤改良装置であって、
前記駆動装置に、前記回転軸を回転駆動した際の回転負荷を検出する回転負荷検出手段を設けたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の地盤改良装置であって、
前記回転軸を回転させつつ昇降させる駆動装置として、回転軸を回転駆動する回転駆動装置と、該回転駆動装置を介して前記回転軸をワイヤーで吊り支持し該ワイヤーの巻き取りと繰り出しにより回転軸を昇降駆動する昇降駆動装置と、が設けられ、前記回転軸を吊り支持するワイヤーが、前記リーダーの上端を経由して前記ベースマシン上に装備された巻取装置のドラムに巻回され、前記ワイヤーの通過経路上に、ワイヤーの繰り出し速度を検出する速度計と、ワイヤーの吊り下げ荷重を検出する縦荷重計とが設けられていることを特徴とする地盤改良装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の地盤改良装置による掘削施工方法であって、
前記駆動装置により回転軸を回転させつつ下降させることにより、前記掘削手段により地盤を掘削して回転軸を地盤中に貫入させ、その際、前記下部振れ止め機構に備わる横荷重計の測定値を監視しながら所定速度で回転軸の貫入を進めていき、前記横荷重計の測定値のバランスが所定以上に崩れたことを検知した場合は、貫入速度を制限しながら掘削を続行し、横荷重計の測定値のバランスの崩れが改善されたら、再び貫入速度を所定速度に戻し、一方、バランスの崩れが改善されない場合は、回転軸をいったん引き上げた後、再貫入することを特徴とする掘削施工方法。
【請求項8】
請求項5に記載の地盤改良装置による掘削施工方法であって、
前記駆動装置により回転軸を回転させつつ下降させることにより、前記掘削手段により地盤を掘削して回転軸を地盤中に貫入させ、その際、前記下部振れ止め機構に備わる横荷重計の測定値と前記回転負荷検出手段の検出値とを監視しながら所定速度で回転軸の貫入を進めていき、前記横荷重計の測定値のバランスが所定以上に崩れたか前記回転負荷検出手段の検出する回転負荷が所定以上に上昇したことを感知した場合は、貫入速度を制限しながら掘削を続行し、横荷重計の測定値のバランスの崩れが改善され且つ回転負荷検出手段の検出する回転負荷の上昇が改善されたら、再び貫入速度を所定速度に戻し、一方、前記横荷重計の測定値のバランスの崩れまたは回転負荷の上昇が改善されない場合は、回転軸をいったん引き上げた後、再貫入することを特徴とする掘削施工方法。
【請求項9】
請求項6に記載の地盤改良装置による掘削施工方法であって、
前記速度計と縦荷重計の検出値を監視し、前記ワイヤーの弛みを防止しつつ適正な垂直荷重を前記回転軸にかけながら、当該回転軸を下降させて地盤に貫入させることを特徴とする掘削施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−63867(P2008−63867A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244133(P2006−244133)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】