説明

地盤改良装置

【課題】撹拌ヘッドの深度を制御するための手段を、予めベースマシンの本体に設けていない場合であっても、小規模な改造によって、撹拌ヘッドの深度と間欠的な移動量を高精度で制御しうる地盤改良装置を提供する。
【解決手段】ベースマシン14とリーダ2と回転駆動機構13と昇降用ワイヤ6とロッド11と撹拌ヘッド3と深度計測手段と昇降制御機構を備えた地盤改良装置。深度計測手段は、輪状のワイヤ8、及び、ワイヤ8の移動距離を計測して撹拌ヘッド3の深度を把握するための、プーリー10及びロータリーエンコーダ17を備えている。ワイヤ8は、回転駆動機構13の昇降に従って回転する。ワイヤ8を支持する滑車9及びプーリー10は、各々、回転駆動機構13の昇降可能な範囲の上端付近及び下端付近に配設されている。昇降制御機構は、ロータリーエンコーダ17から送られる信号に基づいて、回転駆動機構13の間欠的な昇降及び停止を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤等に固化材を噴射しながら攪拌して、地盤の改良を行うための地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地中に挿入したロッドの下端の攪拌ヘッドから固化材を噴射して、軟弱地盤等を改良するための地盤改良装置が知られている。
その一例として、立設されたリーダに沿って昇降可能に支持された回転駆動機構を昇降機構により移動させると共に、前記回転駆動機構によりロッドの先端に設けられた攪拌ヘッドを回転し、該攪拌ヘッドから地盤改良剤を噴射する地盤改良装置において、前記攪拌ヘッドの深度を検出する深度検出センサと、前記昇降機構を制御して、絶対到達予定深度に達したときには前記昇降機構を一旦停止し、1ステップ時間が経過したときには前記昇降機構の駆動を再開して、前記攪拌ヘッドを断続的に移動させる攪拌制御手段とを備えたことを特徴とする地盤改良装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−13054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載された地盤改良装置等に備えられている従来の攪拌ヘッド制御手段は、リーダに沿って昇降可能に配設された回転駆動機構を吊り下げるためのワイヤを、ベースマシン上の巻き取りドラムで巻き取るように構成した昇降機構において、巻き取りドラムで巻き取られる前のワイヤを、ベースマシン本体上に備えられたロータリーエンコーダに取り付けられたプーリーに当接させ、このプーリーの回転数をロータリーエンコーダによって計測して、ワイヤの移動距離を把握し、その結果に基いて撹拌ヘッドの深度と間欠的な移動量を制御するものである。
しかし、地盤改良機には、回転駆動機構を吊り下げるワイヤに当接して該ワイヤの移動距離を計測するための移動距離計測手段(具体的には、プーリー及びロータリーエンコーダ)を予めベースマシンの本体に設けたものと、設けていないものとがある。
このような移動距離計測手段を予めベースマシンの本体に設けていない地盤改良機を用いて、例えば上述の特許文献1に記載されているような撹拌ヘッドの深度の制御を行おうとする場合、ベースマシンの本体に前記の移動距離計測手段を追加しなければならず、大規模な改造が必要になる。
そこで、本発明は、撹拌ヘッドの深度を制御するための手段を、予めベースマシンの本体に設けていない場合であっても、小規模な改造によって、撹拌ヘッドの深度と間欠的な移動量を高精度で制御しうるように構成した地盤改良装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、回転駆動機構を吊り下げて回転駆動機構を昇降させるための昇降用ワイヤに加えて、回転駆動機構の昇降の程度を計測するための特定のワイヤを追加すれば、前記の課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[2]を提供するものである。
[1] ベースマシンと、該ベースマシンによって支持されたリーダと、該リーダに沿って昇降可能に配設された回転駆動機構と、該回転駆動機構を吊り下げて該回転駆動機構を昇降させるための昇降用ワイヤと、前記回転駆動機構によって回転駆動される、前記回転駆動機構の下端から前記リーダに沿って下方に延びるロッドと、該ロッドの下端に設けられた撹拌ヘッドを備えた地盤改良装置であって、前記回転駆動機構の昇降に従って移動する深度管理用ワイヤ、及び、該深度管理用ワイヤの移動距離を計測して前記撹拌ヘッドの深度を把握するための移動距離測定手段を備えている深度計測手段と、前記移動距離測定手段から送られる信号に基づいて、前記回転駆動機構の間欠的な昇降及び停止を制御するための昇降制御機構を備えており、前記移動距離測定手段が、ロータリーエンコーダであることを特徴とする地盤改良装置。
[2] 前記ベースマシンが、前記昇降用ワイヤに当接して前記昇降用ワイヤの移動距離を計測するための計測手段を備えていないものである、前記[1]に記載の地盤改良装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明の地盤改良装置は、撹拌ヘッドの深度を制御するための手段を、予めベースマシンの本体に設けていない場合であっても、小規模な改造によって、簡易かつ迅速に作製することができる。
本発明の地盤改良装置によれば、撹拌ヘッドの深度と間欠的な移動量を高精度で制御することができ、固化材スラリーの均一な供給による改良土の均質化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の地盤改良装置の一例を示す図である。
【図2】図1に示す本発明の地盤改良装置の一例における深度計測手段の構成を説明するための図である。
【図3】本発明の地盤改良装置の操作手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の地盤改良装置を説明する。
図1中、地盤改良装置1は、ベースマシンであるクローラークレーン1と、キャッチホーク式リーダ2と、回転駆動機構13と、昇降用ワイヤ6と、スクリューロッド11と、撹拌ヘッドである高圧噴射オーガーヘッド3と、深度管理用ワイヤ8と、ロータリーエンコーダ17等を備えている。
クローラークレーン(ベースマシン)1は、走行手段25と、走行手段25の上に設けられた水平方向に回転可能なベースマシン本体14と、ベースマシン本体14から前方に延びるブーム18と、ベースマシン本体14から斜め上方に延びるブーム19と、ベースマシン本体14の上に設けられた滑車15及びワイヤ巻取機16等を備えている。
図1では、クローラークレーン1が、港湾の水上に浮かぶ台船20上に載置されており、岸壁の軟弱地盤24を地盤改良している様子を示している。ただし、本発明において、ベースマシンは、クローラークレーンに限定されず、三点支持式杭打ち機等の他の種類のベースマシンを用いることもできる。また、ベースマシンは、水上に浮かぶ台船上に載置する形態に限定されず、地盤上に載置する形態で用いることもできる。
本発明は、前記目的の観点から、通常、昇降用ワイヤに当接して昇降用ワイヤの移動距離を計測するための計測手段を備えていないベースマシンに適用される。
キャッチホーク式リーダ2は、鉛直方向に延びる長尺の柱体であり、クローラークレーン1のブーム18、19によって支持されている。
回転駆動機構13は、スクリューロッド11を回転させるための動力装置であり、キャッチホーク式リーダ2に沿って昇降可能に配設されている。
【0009】
昇降用ワイヤ6は、回転駆動機構13を吊り下げて、回転駆動機構13を昇降させるためのものであり、一端が、回転駆動機構13の上端に固着されており、他端が、クローラークレーン1の上のワイヤ巻取機16に収容されている。また、昇降用ワイヤ6は、回転駆動機構13とワイヤ巻取機16の間に、シーブ5、シーブ4、滑車15と当接している。このうち、シーブ5及びシーブ4は、回転駆動機構13を吊り下げるためのものである。
スクリューロッド11は、回転駆動機構13の下端からキャッチホーク式リーダ2に沿って下方に延びており、円柱状のロッドの外周面に地盤掘削用スクリューを形成させてなるものである。スクリューロッド11を構成するロッドの内部空間は、固化材スラリーの流通路であり、図1には示していないが、ベースマシン本体14の近傍に配設された固化材スラリー貯留槽から高圧ホースを介して回転駆動機構13付近に固化材スラリーが導かれた後、この固化材スラリーが、スクリューロッド11内の流通路を介してスクリューロッド11の下端に設けた高圧噴射オーガーヘッド3に導かれるように構成されている。
高圧噴射オーガーヘッド3は、スクリューロッド11の回転と共に回転して、地盤を掘削し撹拌するとともに、固化材スラリーを高圧で噴射して、周囲の軟弱地盤と固化材スラリーとの混合物である改良体22を形成させるためのものである。
なお、回転駆動機構13とスクリューロッド11と高圧噴射オーガーヘッド3とによって、混合噴射撹拌装置12が構成されている。
【0010】
図1及び図2に示すように、深度管理用ワイヤ8は、回転駆動機構13の昇降に従って回転するものであり、回転駆動機構13を含めて輪状に形成されている。
深度管理用ワイヤ8は、一端が、回転駆動機構13の上端に固着され、他端が、回転駆動機構13の下端に固着されている。また、キャッチホーク式リーダ2には、深度管理用ワイヤ8を支持するための滑車9及びプーリー10が、上下方向(鉛直方向)に適宜の距離を隔てて配設されている。滑車9の位置は、回転駆動機構13の昇降可能な範囲の上端付近である。プーリー10の位置は、回転駆動機構13の昇降可能な範囲の下端付近である。滑車7は、深度管理用ワイヤ8の張力を一定以上に保つために、深度管理用ワイヤ8に当接されている。深度管理用ワイヤ8の撓みや滑りを防止するために、滑車7以外の部材(例えば、シャックル等)をさらに設けてもよい。
図2中、ワイヤ巻取機16(図1参照)が作動して昇降用ワイヤ6が特定の距離だけ上昇すると、回転駆動機構13が上昇し、それに伴い、深度管理用ワイヤ8が一方の方向に回転する。すると、プーリー10が一方の方向に、特定の回転数だけ回転する。プーリー10の軸は、ロータリーエンコーダ17(図1参照)に接続されており、ロータリーエンコーダ17は、プーリー10の軸の回転方向及び回転数に基いて、深度管理用ワイヤ8が上昇した距離(回転駆動機構13及び撹拌ヘッド3が上昇した距離と同じである。)を演算し、その演算結果を、回転駆動機構13の昇降及び停止を制御するための昇降制御機構(図示せず)に信号として送るように構成されている。回転駆動機構13の昇降等を制御するための昇降制御機構としては、例えば、特開平11−13054号公報に記載された撹拌制御手段及び補正手段を用いることができる。昇降制御機構は、ロータリーエンコーダ17から送られた信号に基いて、撹拌ヘッド3の上昇及び停止、並びに、間欠的な移動量を制御し、固化材スラリーを地盤に均一に供給する。
【0011】
前記とは逆に、ワイヤ巻取機16が作動して昇降用ワイヤ6が特定の距離だけ下降すると、回転駆動機構13が下降し、それに伴い、深度管理用ワイヤ8が、前記の方向とは逆の方向に回転する。すると、プーリー10が、前記の方向とは逆の方向に、特定の回転数だけ回転する。ロータリーエンコーダ17は、プーリー10の軸の回転方向及び回転数に基いて、深度管理用ワイヤ8が下降した距離(回転駆動機構13及び撹拌ヘッド3が下降した距離と同じである。)を演算し、その演算結果を昇降制御機構に信号として送る。昇降制御機構は、ロータリーエンコーダ17から送られた信号に基いて、撹拌ヘッド3の下降及び停止を制御する。
図3に、本発明の地盤改良装置の操作手順の一例を示す。
【0012】
本発明の地盤改良装置を用いた地盤改良工事について説明すると、まず、図1に示すように、スクリューロッド11を回転させながら下降させて、所定の深さまで軟弱地盤24を掘削し、撹拌土21を形成させる。次いで、スクリューロッド11を回転させながら上昇させ、かつ、高圧噴射オーガーヘッド3から固化材スラリー23を噴射して、改良体22を造成する。
この工事の過程において、例えば特開平11−13054号公報に記載された撹拌制御手段及び補正手段等の手段によって、高圧噴射オーガーヘッド3の昇降、停止、並びに間欠的な移動量を制御すれば、固化材スラリーを軟弱地盤24内に均一に分布させて、均質な改良体22を造成することができ、改良体22の品質を高めることができる。
【符号の説明】
【0013】
1 クローラークレーン(ベースマシン)
2 キャッチホーク式リーダ(リーダ)
3 高圧噴射オーガーヘッド(撹拌ヘッド)
4 シーブ
5 シーブ
6 昇降用ワイヤ
7 滑車
8 深度管理用ワイヤ
9 滑車
10 プーリー
11 スクリューロッド(ロッド)
12 混合噴射撹拌装置
13 回転駆動機構
14 ベースマシン本体
15 滑車
16 ワイヤ巻取機
17 ロータリーエンコーダ
18 ブーム
19 ブーム
20 台船
21 撹拌土
22 改良体
23 固化材スラリー
24 軟弱地盤
25 走行手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンと、該ベースマシンによって支持されたリーダと、該リーダに沿って昇降可能に配設された回転駆動機構と、該回転駆動機構を吊り下げて該回転駆動機構を昇降させるための昇降用ワイヤと、前記回転駆動機構によって回転駆動される、前記回転駆動機構の下端から前記リーダに沿って下方に延びるロッドと、該ロッドの下端に設けられた撹拌ヘッドを備えた地盤改良装置であって、
前記回転駆動機構の昇降に従って移動する深度管理用ワイヤ、及び、該深度管理用ワイヤの移動距離を計測して前記撹拌ヘッドの深度を把握するための移動距離測定手段を備えている深度計測手段と、
前記移動距離測定手段から送られる信号に基づいて、前記回転駆動機構の間欠的な昇降及び停止を制御するための昇降制御機構を備えており、
前記移動距離測定手段が、ロータリーエンコーダであることを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
前記ベースマシンが、前記昇降用ワイヤに当接して前記昇降用ワイヤの移動距離を計測するための計測手段を備えていないものである請求項1に記載の地盤改良装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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