説明

地盤材料組成物

【課題】有害物質が溶出する可能性があり、且つ取り扱いが困難な浚渫土砂及び石炭焼却灰を有効利用するために、有害物質の溶出量が低減され、且つ地盤材料として十分な強度を発揮する前記浚渫土砂及び石炭焼却灰を含む地盤材料組成物を提供する。
【解決手段】浚渫土砂及び石炭焼却灰に対して、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種及び石膏を添加し、混合攪拌した後、2〜7日間大気中で養生することによって得られる地盤材料組成物であって、環境省告示第18号で定められる土壌溶出量調査に係る測定方法によって測定した地盤材料組成物に含まれる下記有害物質の溶出量が検液1Lにつき下記の範囲にあり、且つコーン指数200kN/m以上の強度を発揮することを特徴とする地盤材料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質が溶出する可能性があり、且つ取り扱いが困難となっている浚渫土砂及び石炭焼却灰を有効利用するための前記浚渫土砂及び石炭焼却灰を含む地盤材料組成物に関するものであり、さらに詳しくは有害物質の溶出量が低減され、且つ地盤材料として十分な強度を発揮する前記浚渫土砂及び石炭焼却灰を含む地盤材料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋環境の保護のため廃棄物等の海洋投棄による海洋の汚染を防止することを目的としたロンドン条約(1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約)の規制内容を強化したロンドン条約96年議定書が平成2006年3月24日に国際発効された。
これを受けて改正された海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(以下、海洋汚染防止法という)が、2007年4月1日から施行された。改正海洋汚染防止法の施行により、港湾事業等により発生する浚渫土砂の海洋投入に関して、(1)政令で定める基準を満たす水底土砂以外の浚渫土砂の投入禁止となる、(2)海洋投入処分を実施する場合には、環境大臣の許可が必要となる、(3)海洋投入処分する前には、海上保安庁長官の事前確認が必要となる、(4)監視計画の策定、実施及び報告を行う、という規制強化がなされた。
【0003】
港湾事業等により浚渫土砂を処分するための他の手段として、港湾事業等を実施している事業所内の埋立地に埋め立て処分する手段があるが、大量に発生する浚渫土砂を埋め立てるための十分な敷地を確保することは容易ではない。
【0004】
また、河川、湖沼、ダム湖、海域、等の浚渫工事で大量に発生する浚渫土砂に関しても、埋め立てるための十分な敷地を確保することが困難となっている。このような状況において、浚渫土砂の有効利用方法の必要性が高まっていた。
【0005】
浚渫土砂の有効利用方法として開示されている先行技術としては、例えば、高濃度浚渫船により浚渫した浚渫泥水を篩にかけ、大礫、夾雑物を除去した後、凝集剤反応槽に送り、該凝集剤反応槽にて凝集剤を添加混合してフロックを生成させ、該フロックをスクリュープレスで脱水させて脱水ケーキとなし、該脱水ケーキに固化剤を添加混合して粒状土となすことを特徴としてなる浚渫土砂のリサイクル方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、浚渫土砂などの軟弱土1mに対し、遊離石灰を含有した、最大粒径が10mm以下である転炉スラグを20〜150kg、及び高炉セメントを40〜100kg添加して、固化する処理方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
また、浚渫土砂に凝集固化剤を添加して予備固形物を得る工程と、得られた予備固形物を固液分離して含水比100〜200質量%の固形物を得る工程と、得られた固形物に二次添加剤としてポリビニルアルコールおよび/または土質改良剤を添加する工程と、二次添加剤が添加された固形物を成形し、乾燥して乾燥固形物を得る工程と、得られた乾燥固形物を、常温より高く130℃以下の温度にて焼成処理する工程と、を含む底質固化物の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0008】
これらの特許文献に記載されている技術によって、浚渫土砂は、物理特性や強度特性が改善され、有効利用が可能となる。
しかし、浚渫土砂には、有害物質、特にふっ素、ほう素、砒素、等が含まれている場合があり、その溶出量が土壌汚染対策法(平成14年5月29日法律第53号)の施行規則で定められる第一溶出量基準値を超過する可能性がある。
有害物質の溶出量が第一溶出量基準値を超過した場合、物理特性や強度特性を改善した浚渫土砂であっても、用途が限定されてしまうか、あるいは環境負荷が大きいため利用できない。
特許文献に記載されている技術は、有害物質の溶出量を低減することを考慮しておらず、問題の解決には至っていない。
【0009】
一方、石炭燃焼施設で発生する石炭焼却灰は、セメント原料や、建設・土木分野における構造材料として利用されている。
石炭焼却灰の発生元となる石炭燃焼ボイラーは、基本的に燃料となる微粉石炭を空気と一緒に炉内に吹き込み燃焼させる。1,500℃前後の高温で微粉石炭を瞬時に燃焼させるので、灰の融点を超える燃焼領域で燃焼させることになり、排出される灰は溶融し、ガラス状態で回収される。
【0010】
そのなかでも、フライアッシュと呼ばれる集塵機で捕集される石炭焼却灰には、高温に曝されて気体化した石炭由来の有害物質が、排煙と共に移動し、排煙の冷却工程において固体化し、濃縮された状態で混入する恐れがある。
石炭焼却灰に含有する可能性がある有害物質は、石炭の産地等によって異なるが、主にカドミウム、六価クロム、水銀、セレン、鉛、砒素、ふっ素、ほう素、等が挙げられる。
これらの溶出量は、前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第一溶出量基準値を超過する可能性があるため、石炭焼却灰の用途が限定されてしまうか、あるいは環境負荷が大きいため利用できない。
【0011】
したがって、大半は埋め立て処分されているのが実状であり、近年、埋め立て処分場が逼迫していることからも、石炭焼却灰の更なる利用技術の開発が急務となっていた。
ドロマイト鉱石の分類などは従来知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−192200号公報
【特許文献2】特開2006−231208号公報
【特許文献3】特開2007−167790号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】宮澤清著「ドロマイトとその利用」(昭和55年6月25日版)、3頁、表1.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような現状に鑑み、有害物質が溶出する可能性があり、且つ取り扱いが困難となっている浚渫土砂及び石炭焼却灰の有効利用、及び埋め立て処分場の負担軽減を目的として、浚渫土砂と石炭焼却灰を主成分として構成され、且つ建設・土木分野において地盤材料として利用可能である地盤材料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、有害物質が溶出する可能性がある浚渫土砂及び石炭焼却灰に対して、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種及び石膏を混合した後、2〜7日間大気中で養生することによって得られる組成物が、組成物からの有害物質の溶出量を前記汚染対策法の施行規則で定められる第一溶出量基準値以下に低減することができ、且つ建設・土木分野において地盤材料として利用できる強度(国土交通省令に基づく土質区分基準が第4種建設発生土に分類されるコーン指数200kN/m以上)を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、前記課題を解決するための本発明の第1は、浚渫土砂及び石炭焼却灰に対して、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種及び石膏を添加し、混合攪拌した後、2〜7日間大気中で養生することによって得られる地盤材料組成物であって、
環境省告示第18号で定められる土壌溶出量調査に係る測定方法によって測定した地盤材料組成物に含まれる下記有害物質の溶出量が検液1Lにつき下記の範囲にあり、且つコーン指数200kN/m以上の強度を発揮することを特徴とする地盤材料組成物である。
【0017】
溶出量:
カドミウム及びその化合物:0.01mg以下、
六価クロム化合物:0.05mg以下、
シアン化合物:検出されない、
水銀及びその化合物:0.0005mg以下、
セレン及びその化合物:0.01mg以下、
鉛及びその化合物:0.01mg以下、
砒素及びその化合物:0.01mg以下、
ふっ素及びその化合物:0.8mg以下、
ほう素及びその化合物:1mg以下。
【0018】
本発明の第2は、第1の発明に記載の地盤材料組成物において、環境省告示第19号で定められる土壌含有量調査に係る測定方法によって測定した浚渫土砂に含まれる下記有害物質の含有量が下記の範囲にあることを特徴とする。
含有量:
カドミウム及びその化合物:150mg/kg以下、
六価クロム化合物:250mg/kg以下、
シアン化合物:遊離シアンとして50mg/kg以下、
水銀及びその化合物:15mg/kg以下、
セレン及びその化合物:150mg/kg以下、
鉛及びその化合物:150mg/kg以下、
砒素及びその化合物:150mg/kg以下、
ふっ素及びその化合物:4,000mg/kg以下、
ほう素及びその化合物:4,000mg/kg以下。
【0019】
本発明の第3は、第1の発明あるいは第2の発明の地盤材料組成物において、浚渫土砂の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で50.0〜95.5質量%であり、残部が石炭焼却灰と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種と、石膏で構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第4は、第1の発明から第3の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、環境省告示第19号で定められる土壌含有量調査に係る測定方法によって測定した石炭焼却灰に含まれる下記有害物質の含有量が下記の範囲にあることを特徴とする。
【0021】
含有量:
カドミウム及びその化合物:150mg/kg以下、
六価クロム化合物:250mg/kg以下、
シアン化合物:遊離シアンとして50mg/kg以下、
水銀及びその化合物:15mg/kg以下、
セレン及びその化合物:150mg/kg以下、
鉛及びその化合物:150mg/kg以下、
砒素及びその化合物:150mg/kg以下、
ふっ素及びその化合物:4,000mg/kg以下、
ほう素及びその化合物:4,000mg/kg以下。
【0022】
本発明の第5は、第1の発明から第4の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石炭焼却灰が、石炭火力発電所における石炭燃焼ボイラーで石炭を燃焼させた際に、集塵機で捕集される石炭焼却飛灰であることを特徴とする。
【0023】
本発明の第6は、前記第1の発明から第5の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石炭焼却灰が、石炭焼却灰100質量%に対してケイ酸(SiO)を40.0〜95.0質量%、酸化アルミニウム(Al)を5.0〜60.0質量%の範囲で含有していることを特徴とする。
【0024】
本発明の第7は、前記第1の発明から第6の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石炭焼却灰の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜30.0質量%であり、残部が浚渫土砂と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種と、石膏で構成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の第8は、第1の発明から第7の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、焼成ドロマイトが、天然物であり、マグネシウムをMgO換算で2.1〜21.6質量%含むドロマイト岩を800〜1,300℃の範囲で焼成し、最大粒子径を0.1〜5.0mmになるように粉砕して得られた粉末であることを特徴とする。
【0026】
本発明の第9は、第1の発明から第8の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜10.0質量%であり、残部が浚渫土砂と、石炭焼却灰と、石膏で構成されていることを特徴とする。
【0027】
本発明の第10は、前記第1の発明から第9の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石膏が、二水石膏、半水石膏、天然無水石膏、フッ酸副生石膏、リン酸副生石膏、排煙脱硫石膏、石膏ボード破砕物、石膏ボード破砕物の焼成品の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0028】
本発明の第11は、前記第1の発明から第10の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石膏の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜10.0質量%であり、残部が浚渫土砂と、石炭焼却灰と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の第1は、浚渫土砂及び石炭焼却灰に対して、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種及び石膏を添加し、混合攪拌した後、2〜7日間大気中で養生することによって得られる地盤材料組成物であって、
環境省告示第18号で定められる土壌溶出量調査に係る測定方法によって測定した地盤材料組成物に含まれる前記有害物質の溶出量が検液1Lにつき前記の範囲にあり、且つコーン指数200kN/m以上の強度を発揮することを特徴とする地盤材料組成物であり、
安価な工業製品で構成され、複雑な操作を必要とせず、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第一溶出量基準値以下にでき、且つ地盤材料として利用できる強度(国土交通省令に基づく土質区分基準が第4種建設発生土に分類されるコーン指数200kN/m以上)を発揮し、建設・土木分野における地盤材料として幅広く利用でき、さらに埋め立て処分場の逼迫問題を解決できるという顕著な効果を奏する。
【0030】
本発明の第2は、第1の発明に記載の地盤材料組成物において、環境省告示第19号で定められる土壌含有量調査に係る測定方法によって測定した浚渫土砂に含まれる前記有害物質の含有量が前記の範囲にあることを特徴とするものであり、
浚渫土砂に含まれる前記有害物質の含有量が前記の範囲にあれば、建設・土木分野における地盤材料としてさらに幅広く利用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0031】
本発明の第3は、前記第1の発明あるいは第2の発明に記載の地盤材料組成物において、浚渫土砂の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で50.0〜95.5質量%であり、残部が石炭焼却灰と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種と、石膏で構成されていることを特徴とするものであり、
地盤材料組成物100質量%に対して、内比で50.0〜95.5質量%の割合で浚渫土砂を使用できるので、大量の浚渫土砂を有効利用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0032】
本発明の第4は、前記第1の発明から第3の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、環境省告示第19号で定められる土壌含有量調査に係る測定方法によって測定した石炭焼却灰に含まれるに含まれる前記有害物質の含有量が前記の範囲にあることを特徴とするものであり、
石炭焼却灰に含まれる有害物質の含有量が、前記土壌汚染対策法で定められる土壌含有量基準値以下であれば、建設・土木分野における地盤材料としてさらに幅広く利用でき、さらに埋め立て処分場の逼迫問題を解決できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0033】
本発明の第5は、前記第1の発明から第4の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石炭焼却灰が、石炭火力発電所における石炭燃焼ボイラーで石炭を燃焼させた際に、集塵機で捕集される石炭焼却飛灰であることを特徴とするものであり、
石炭火力発電所で大量に発生し、処分が困難な石炭焼却飛灰を、建設・土木分野における地盤材料として有効利用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0034】
本発明の第6は、前記第1の発明から第5の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石炭焼却灰が、石炭焼却灰100質量%に対してケイ酸(SiO)を40.0〜95.0質量%、酸化アルミニウム(Al)を5.0〜60.0質量%の範囲で含有していることを特徴とするものであり、
一般的な化学組成の石炭焼却灰を利用でき、且つケイ酸(SiO)を40.0〜95.0質量%、酸化アルミニウム(Al)を5.0〜60.0質量%の範囲で含有していることによって、これらの成分とカルシウム成分、マグネシウム成分との反応により生成し、有害物質の溶出量を低減する効果と、地盤材料として利用できる強度を発揮する効果に寄与し得るカルシウムサルフォアルミネート水和物、ハイドロタルサイト、ケイ酸カルシウム水和物、ケイ酸マグネシウム水和物の中から選ばれる1種以上の化合物の生成をより確実なものにできるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0035】
本発明の第7は、前記第1の発明から第6の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石炭焼却灰の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜30.0質量%であり、残部が浚渫土砂と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種と、石膏で構成されていることを特徴とするものであり、
地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜30.0質量%の割合で石炭焼却灰を添加すれば、石炭焼却灰に含まれるケイ酸、及び/又は酸化アルミニウムと、カルシウム成分、マグネシウム成分との反応によって生成するカルシウムアルミネート水和物、カルシウムサルフォアルミネート水和物、ハイドロタルサイト、ケイ酸カルシウム水和物、ケイ酸マグネシウム水和物の中から選ばれる1種以上の化合物による有害物質の溶出量を低減する効果と、地盤材料として利用できる強度を発揮する効果をより確実なものにできるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0036】
本発明の第8は、前記第1の発明から第7の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、焼成ドロマイトが、天然物であり、マグネシウムをMgO換算で2.1〜21.6質量%含むドロマイト岩を800〜1,300℃の範囲で焼成し、最大粒子径を0.1〜5.0mmになるように粉砕して得られた粉末であることを特徴とするものであり、
マグネシウムをMgO換算で2.1〜21.6質量%含む、天然物であるドロマイト岩を800〜1,300℃の範囲で焼成し、最大粒子径を0.1〜5.0mmになるように粉砕して得られた粉末であれば、様々な物性の焼成ドロマイトを本発明に適用可能であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0037】
本発明の第9は、第1の発明から第8の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜10.0質量%であり、残部が浚渫土砂と、石炭焼却灰と、石膏で構成されていることを特徴とするものであり、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜10.0質量%の割合で焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種を添加すれば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムの有害物質の不溶化効果や吸着効果、浚渫土砂の団粒化による強度増加促進効果、浚渫土砂及び石炭焼却灰に含まれるケイ酸、及び/又は酸化アルミニウムとの反応生成物による有害物質の溶出量を低減する効果、及び地盤材料として利用できる強度を発揮する効果をさらに確実なものにできるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0038】
本発明の第10は、前記第1の発明から第9の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石膏が、二水石膏、半水石膏、天然無水石膏、フッ酸副生石膏、リン酸副生石膏、排煙脱硫石膏、石膏ボード破砕物、石膏ボード破砕物の焼成品の中から選ばれた1種以上であることを特徴とするものであり、
安価な石膏工業製品や工業で副生する石膏を利用可能であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0039】
本発明の第11は、前記第1の発明から第10の発明のいずれか一項に記載の地盤材料組成物において、石膏の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜10.0質量%であり、残部が浚渫土砂と、石炭焼却灰と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種で構成されていることを特徴とするものであり、
地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜10.0質量%の石膏を添加すれば、浚渫土砂及び石炭焼却灰に含まれる酸化アルミニウムと、焼成ドロマイトあるいは焼成ドロマイト水和物に由来する水酸化カルシウムと、石膏との反応生成物であるカルシウムサルフォアルミネート水和物の生成を促し、有害物質の溶出量を低減する効果と、地盤材料として利用できる強度を発揮する効果をさらに確実なものにできるというさらなる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】地盤材料組成物D−1、D−2、D−3の7日養生物の粉末X線回折パターン(図中の◇はエトリンガイト、●は二水石膏、■は石英のピーク)である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を詳細に説明する。
浚渫土砂は、沈積した土砂と水が混合されたもので、陸上の土砂と同様の成分を含有している。そのため、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、及びケイ素とアルミニウムを含む化合物を含有している。
石炭焼却灰は、原料の石炭に由来するケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、及びケイ素とアルミニウムを含む化合物を、多く含有している。
焼成ドロマイトは、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムを主な成分として含有しており、また、焼成ドロマイト水和物は、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムを主な成分として含有している。
【0042】
本発明の地盤材料組成物からの有害物質の溶出量を低減する効果は、これらの構成材料による種々の効果が複合化された形で発揮される。そのため、様々な有害物質に対して溶出量を低減することが可能となる。
【0043】
焼成ドロマイトに含まれる酸化カルシウムが水和反応して生成する水酸化カルシウム、又は焼成ドロマイト水和物に含まれる水酸化カルシウムによって、pHがアルカリ性になり、有害物質が難溶性の水酸化物を形成する。あるいは、水酸化カルシウムに、有害物質が物理的に吸着される。
【0044】
焼成ドロマイトに含まれる酸化マグネシウムが水和反応して生成する水酸化マグネシウム、又は焼成ドロマイト水和物に含まれる水酸化マグネシウムによってpHがアルカリ性になり、有害物質が難溶性の水酸化物を形成する。あるいは、水酸化マグネシウムに、有害物質が物理的に吸着される。
【0045】
浚渫土砂、及び石炭焼却灰に含まれるAl成分と、水酸化カルシウム、及び石膏が、水を介して反応し、難溶性のエトリンガイト(3CaO・Al・3CaSO・32HO)、モノサルフェート(3CaO・Al・CaSO・12HO)等のカルシウムサルフォアルミネート水和物を生成する。その際に、これらの難溶性化合物の結晶構造の中に有害物質を取り込み、封じ込める。
また、浚渫土砂、及び石炭焼却灰に含まれるAl成分と水酸化マグネシウムが反応して、層状複水酸化物のハイドロタルサイトが生成し、生成したハイドロタルサイトの層間に重金属のオキソ酸イオンを取り込む。さらに、ハイドロタルサイトのアルカリ性によって、有害物質が難溶性の水酸化物を形成する。
【0046】
浚渫土砂、及び石炭焼却灰に存在する活性の高いSiOと、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが、水を介して反応(ポゾラン反応)して、ケイ酸カルシウム水和物、ケイ酸マグネシウム水和物を生成し、その結晶構造の中に有害物質を取り込み、封じ込める。
【0047】
本発明において、地盤材料組成物が、地盤材料として利用できる強度は、種々のメカニズムが複合化された形で発揮される。
【0048】
焼成ドロマイトに含まれる酸化カルシウムは、水和反応する際に強い発熱を伴うため、浚渫土砂に含まれる水分を低減させる。
さらに、水和反応によって水酸化カルシウムを生成する際、結晶水として水を固定する。これらの減水効果によって、地盤材料組成物の強度特性が改善される。
【0049】
焼成ドロマイトに含まれる酸化マグネシウムは、水和反応によって水酸化マグネシウムを生成する際、結晶水として水を固定する。この減水効果によって、地盤材料組成物の強度特性が改善される。
【0050】
水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムは、浚渫土砂に付着している水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、等の陽イオンとイオン交換し、土粒子表面の帯電状態を変え、団粒化させる。さらに、空気中の二酸化炭素や水中の炭酸イオンと反応して、炭酸塩を生成し、地盤材料組成物中に不透水膜を形成して、強度増加を促進させる。
【0051】
浚渫土砂、及び石炭焼却灰に含まれるAl成分と、水酸化カルシウム、及び石膏が、水を介して反応し、組成物製造の初期段階でエトリンガイト、モノサルフェート等のカルシウムサルフォアルミネート水和物を生成する。
生成するエトリンガイトの針状結晶やモノサルフェートのカードハウス状結晶が、地盤材料組成物の土粒子間の空隙を埋め、早期強度を増強し、また、多量の水が固定されることで強度特性が改善される。
【0052】
水酸化カルシウムは、浚渫土砂、及び石炭焼却灰に存在する活性の高いSiOやAlとのポゾラン反応によって、セメントの水硬成分と同様のケイ酸カルシウム水和物やカルシウムアルミネート水和物を生成し、地盤材料組成物の安定化、及び強度発現に寄与する。
【0053】
また、水酸化マグネシウムは、浚渫土砂、及び石炭焼却灰に存在する活性の高いSiOやAlとの反応によって、ケイ酸マグネシウム水和物やハイドロタルサイトを生成する。
ケイ酸マグネシウム水和物の結晶やハイドロタルサイトの鱗状結晶が、地盤材料組成物の土粒子間の空隙を埋めることによって、強度が増強し、また、水が固定されることで強度特性が改善される効果も期待できる。
【0054】
本発明で使用する浚渫土砂は、浚渫工事で発生した土砂であれば、別段限定されるものではない。
しかし、浚渫土砂は、種々の経路を辿り堆積した土砂であるため、自然界に普遍に存在している有害物質であり、土壌汚染対策法(平成14年5月29日法律第53号)(以下、土壌汚染対策法と称す。)で定められる第二種特定有害物質である、9種類の重金属等(カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物)の中から選ばれる1種又は2種以上を含んでいる場合が多い。
【0055】
浚渫土砂を地盤材料組成物に利用するためには、環境省告示第18号で定められる土壌含有量調査に係る測定方法によって測定した第二種特定有害物質の溶出量が、前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第二溶出量基準値以下であることが望ましい。
浚渫土砂からの有害物質の溶出量が、第二溶出量基準値を超過した場合、本発明によって有害物質の溶出量を前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第一溶出量基準値以下に低減することができず、人への健康被害の恐れが生じてしまい、地盤材料組成物として取り扱うことができなくなる。
【0056】
なお、前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第一溶出量基準値は、環境省告示第18号で定められる土壌溶出量調査に係る測定方法[検液の作成方法は、平成3年8月環境庁告示第46号(土壌汚染に係る環境基準について)付表の通りとし、環境省告示第18号の別表に記載された検液の測定方法]に従って測定されたものである。
環境省告示第18号の別表に記載された検液の測定方法を次に記載する。
検液の測定方法:
カドミウム及びその化合物:JIS K 0102の55に定める方法、
六価クロム化合物:JIS K 0102の65.2に定める方法、シアン化合物:JIS K 0102の38に定める方法(JIS K 0102の38.1.1に定める方法を除く)、
水銀及びその化合物:昭和46年12月環境庁告示第59号(水質汚濁に係る環境基準について)付表1に掲げる方法、
セレン及びその化合物:JIS K 0102の67.2、67.3又は67.4に定める方法、
鉛及びその化合物:JIS K 0102の54に定める方法、
砒素及びその化合物:JIS K 0102の61に定める方法、
ふっ素及びその化合物:JIS K 0102の34.1に定める方法又はJIS K 0102の34.1c)(第3文を除く)に定める方法(懸濁物質及びイオンクロマトグラフ法で妨害となる物質が共存しない場合にあっては、これを省略することができる)及び昭和46年12月環境庁告示第59号(水質汚濁に係る環境基準について)付表6に掲げる方法、
ほう素及びその化合物:JIS K 0102の47.1、47.3又は47.4に定める方法)。
本発明の地盤材料組成物は、前記測定方法で測定したとき、地盤材料組成物に含まれる前記有害物質の溶出量が検液1Lにつき下記の範囲(第一溶出量基準値内)になければならない。
【0057】
溶出量:
カドミウム及びその化合物:0.01mg以下、
六価クロム化合物:0.05mg以下、
シアン化合物:検出されない、
水銀及びその化合物:0.0005mg以下、
セレン及びその化合物:0.01mg以下、
鉛及びその化合物:0.01mg以下、
砒素及びその化合物:0.01mg以下、
ふっ素及びその化合物:0.8mg以下、
ほう素及びその化合物:1mg以下。
【0058】
前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第二溶出量基準値は前記測定方法で測定したとき、浚渫土砂や石炭焼却灰などに含まれる前記有害物質の溶出量が検液1Lにつき下記の範囲になければならない。
溶出量:
カドミウム及びその化合物:検液1Lにつき0.3mg以下、
六価クロム化合物:検液1Lにつき1.5mg以下、
シアン化合物:検液1Lにつき1mg以下、
水銀及びその化合物:検液1Lにつき0.005mg以下(うち、アルキル水銀は検出されないこと)、
セレン及びその化合物:検液1Lにつき0.3mg以下、
鉛及びその化合物:検液1Lにつき0.3mg以下、
砒素及びその化合物:検液1Lにつき0.3mg以下、
ふっ素及びその化合物:検液1Lにつき24mg以下、
ほう素及びその化合物:検液1Lにつき30mg以下。
【0059】
浚渫土砂に含まれる有害物質の含有量は、前記土壌汚染対策法で定められる後述する土壌含有量基準値以下であることが望ましい。
浚渫土砂に含まれる有害物質の含有量が後述する土壌含有量基準を超過した場合、人への健康被害の恐れが生じてしまう上、本発明の地盤材料組成物の有害物質の溶出量を前記第一溶出量基準値以下に低減することが難しくなる。
【0060】
なお、土壌含有量基準値は、環境省告示第19号で定められる土壌含有量調査に係る測定方法[検液の作成方法は、環境省告示第19号の付表の通りとし、検液の測定方法は、環境省告示第19号の別表に記載された測定方法]に従って測定されたものである。
環境省告示第19号の別表に記載された検液の測定方法を次に記載する。
測定方法:
カドミウム及びその化合物:JIS K 0102の55に定める方法、
六価クロム化合物:JIS K 0102の65.2に定める方法、
シアン化合物:JIS K 0102の38に定める方法(JIS K 0102の38.1に定める方法を除く)、
水銀及びその化合物:昭和46年12月環境庁告示第59号(水質汚濁に係る環境基準について)付表1に掲げる方法、
セレン及びその化合物:JIS K 0102の67.2、67.3又は67.4に定める方法、
鉛及びその化合物:JIS K 0102の54に定める方法、
砒素及びその化合物:JIS K 0102の61に定める方法、
ふっ素及びその化合物:JIS K 0102の34.1に定める方法又はJIS K 0102の34.1c)(第3文を除く)に定める方法、及び昭和46年12月環境庁告示第59号(水質汚濁に係る環境基準について)付表6に掲げる方法、
ほう素及びその化合物:JIS K 0102の47.1、47.3又は47.4に定める方法。
本発明において浚渫土砂や石炭焼却灰などに含まれる前記有害物質は、前記測定方法で測定したとき、前記有害物質の含有量が土壌1kgにつき下記の範囲であることが望ましい。
【0061】
含有量:
カドミウム及びその化合物:150mg以下、
六価クロム化合物:250mg以下、
シアン化合物:遊離シアンとして50mg以下、
水銀及びその化合物:15mg以下、
セレン及びその化合物:150mg以下、
鉛及びその化合物:150mg以下、
砒素及びその化合物:150mg以下、
ふっ素及びその化合物:4,000mg以下、
ほう素及びその化合物:4,000mg以下。
【0062】
本発明で使用する浚渫土砂の種類は、浚渫工事によって発生した土砂であれば別段限定されるものではなく、港湾、河川、湖沼、ダム湖、海域、等に沈積した土砂を浚渫して得られた浚渫土砂を適用することが可能である。
中でも、海洋投入が困難となっていること、且つ埋め立て処分場が逼迫していることから、港湾、海域の底部のうち、いずれか一箇所以上に沈積した土砂を浚渫して得られた浚渫土砂を適用することが、より望ましい。
【0063】
浚渫土砂に含まれている水の含有量は、別段限定されるものではない。しかし、本発明において地盤材料として利用できる強度を得るためには、浚渫土砂100質量%に対して、水を内比で10〜75質量%含有しているものが、より望ましい。
水の含有量が10質量%未満の場合、化学反応の媒体となる水の割合が少なすぎるため、組成物を構成する材料同士の反応が起きなくなる恐れがある。水の含有量が75質量%を超える場合、水が多すぎるため、減水効果による強度特性の改善が得られない恐れがある。
【0064】
浚渫土砂の添加量は、本発明の地盤材料組成物からの有害物質の溶出量が、第一溶出量基準値以下となり、且つ地盤材料として利用できる強度を発揮するのであれば、別段限定されるものではないが、これらの効果をより確実なものにするためには、本発明の地盤材料組成物100質量%に対して、浚渫土砂を内比で50.0〜95.5質量%添加し、残部が石炭焼却灰と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種と、石膏で構成されていることが好ましく、より好ましくは浚渫土砂を内比で70〜92.5質量%添加することである。
浚渫土砂の添加量が50質量%未満の場合、浚渫土砂の使用量が少なくなってしまう恐れがあるため、浚渫土砂の有効利用の面から望ましくない。
浚渫土砂の添加量が95.5質量%を超える場合、浚渫土砂の割合が多すぎるため、有害物質の溶出量を低減する効果、及び地盤材料として必要な強度を発揮する効果を得るために必要な各種化学反応が起き難くなり、これらの効果を得ることが難しくなる恐れがある。
【0065】
本発明で使用する石炭焼却灰は、石炭の焼却灰であれば、別段限定されるものではない。しかし、石炭焼却灰は、原料の石炭に由来する前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第二種特定有害物質である、9種類の重金属等の中から選ばれる1種又は2種以上を含んでいる場合が多い。
【0066】
石炭焼却灰を地盤材料組成物に利用するためには、第二種特定有害物質の溶出量が、前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第二溶出量基準値以下であることが望ましい。
石炭焼却灰からの有害物質の溶出量が、第二溶出量基準値を超過した場合、本発明の地盤材料組成物からの有害物質の溶出量を前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第一溶出量基準値以下に低減することができず、人への健康被害の恐れが生じてしまい、地盤材料組成物として取り扱うことができなくなる。
【0067】
石炭焼却灰に含まれる有害物質の含有量は、前記土壌汚染対策法で定められる土壌含有量基準値以下であることが望ましい。
石炭焼却灰に含まれる有害物質の含有量が土壌含有量基準を超過した場合、人への健康被害の恐れが生じてしまう上、本発明の地盤材料組成物からの有害物質の溶出量を第一溶出量基準値以下に低減することが難しくなる。
【0068】
石炭焼却灰の種類は、別段限定されるものではないが、石炭火力発電所で大量に発生し、埋め立て処分場の逼迫問題によって処分が困難となっている、石炭火力発電所における石炭燃焼ボイラーで石炭を燃焼させた際に、集塵機で捕集される石炭焼却飛灰が、より望ましい。
【0069】
石炭焼却灰の化学成分は、一般的な石炭焼却灰の化学成分であればよく、別段限定されるものではないが、ケイ酸(SiO)を40.0〜95.0質量%、酸化アルミニウム(Al)を5.0〜60.0質量%の範囲で含有していることが、より望ましい。
ケイ酸(SiO)、及び酸化アルミニウム(Al)を前述の範囲で含有していれば、有害物質の溶出量を低減する効果、及び地盤材料として利用できる強度を発揮する効果を得ることができる。
【0070】
ケイ酸(SiO)が40.0質量%未満の場合、地盤材料組成物中のケイ酸カルシウム水和物の生成量、及びケイ酸マグネシウム水和物の生成量が少なくなり、これらの生成に起因する効果が低減するため、好ましくない。
ケイ酸(SiO)が95.0質量%を超える場合、酸化アルミニウム(Al)の含有量が5.0質量%未満となるため、酸化アルミニウム(Al)の効果が十分に得られなくなる恐れがある。
【0071】
酸化アルミニウム(Al)が5.0質量%未満の場合、地盤材料組成物中のカルシウムサルフォアルミネート水和物の生成量、及びハイドロタルサイトの生成量が少なくなり、これらの生成に起因する効果が低減するため、好ましくない。
酸化アルミニウム(Al)が60.0質量%超える場合、ケイ酸(SiO)の含有量が相対的に40.0質量%未満となるため、ケイ酸(SiO)の効果が十分に得られなくなる恐れがある。
【0072】
石炭焼却灰の添加量は、本発明の地盤材料組成物からの有害物質の溶出量が、第一溶出量基準値以下となり、且つ地盤材料として利用できる強度を発揮するのであれば、別段限定されるものではないが、これらの効果をより確実なものにするためには、本発明の地盤材料組成物100質量%に対して、石炭焼却灰を内比で1.5〜30.0質量%添加し、残部が浚渫土砂と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種と、石膏で構成されていることが好ましく、より好ましくは石炭焼却灰を内比で3.0〜10質量%添加することである。
【0073】
石炭焼却灰の添加量が1.5質量%未満の場合、石炭焼却灰の使用量が少なくなってしまうため、石炭焼却灰の添加効果が得られなくなる恐れがある。石炭焼却灰の添加量が30.0質量%を超える場合、石炭焼却灰の割合が多すぎるため、石炭焼却灰からの有害物質の溶出量を第一溶出量基準値以下に低減することが難しくなる恐れがある。
【0074】
本発明の地盤材料組成物において、有害物質の溶出量を低減する効果、及び地盤材料として必要な強度を発揮する効果を均一に発揮させるために、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種を使用する。
【0075】
本発明で用いる焼成ドロマイト、及び焼成ドロマイト水和物は、カルシウムとマグネシウムが原子レベルで均一に分布しているドロマイト岩を原料としているため、ドロマイト岩の焼成物である焼成ドロマイト、焼成ドロマイトを水和して得られる焼成ドロマイト水和物は、カルシウム化合物とマグネシウム化合物が、非常に均一な状態で混合されている。
したがって、カルシウム化合物とマグネシウム化合物による効果が、単にカルシウム化合物とマグネシウム化合物を物理的に混合したものよりも、均一に発揮される。
【0076】
本発明で使用する焼成ドロマイトは、工業製品として流通しているものであれば、別段限定されるものではないが、天然物であり、マグネシウムをMgO換算で2.1〜21.6質量%含むドロマイト岩を原料としていることが、より望ましい。
【0077】
ドロマイト鉱石は、マグネシウムのMgO換算含有量によって、ドロマイト質石灰岩(MgO換算で2.1〜10.8質量%)、方解石質ドロマイト(MgO換算で10.8〜19.5質量%)、ドロマイト(MgO換算で19.5〜21.6質量%)と分類される。
【0078】
よって、ドロマイト鉱石のマグネシウム含有量がMgO換算で2.1質量%より少ないドロマイト鉱石は、鉱物学の分類上は存在せず、また、ドロマイト鉱石のマグネシウム含有量がMgO換算で21.6質量%より多いドロマイト鉱石は存在しない(非特許文献1参照)。
工業的に安定的に入手可能であることから、マグネシウムをMgO換算で10.8〜21.6質量%含む方解石質ドロマイト、およびドロマイトを原料とすることが、さらに望ましい。
【0079】
焼成ドロマイトを得るためのドロマイト岩の焼成温度は、ドロマイト岩を形成する炭酸塩(ドロマイト(Ca・Mg(CO)、炭酸カルシウム(CaCO))の脱炭酸反応が進行する温度であれば、別段限定されないが、800〜1,300℃の範囲で焼成することが、より望ましい。
ドロマイト岩の焼成温度が、800℃未満の場合、ドロマイト岩を形成する炭酸塩の脱炭酸反応が起きない恐れがある。
ドロマイト岩の焼成温度が、1,300℃を超える場合、脱炭酸反応によって生成する酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムが結晶成長し、水和反応性が著しく低下する恐れがある。
その結果、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムの水和反応に起因する効果、及びこれらの水酸化物に起因する効果が得られなくなってしまう恐れがある。
【0080】
焼成ドロマイトの粒子径は、別段限定されるものではないが、粉砕して得られる粉末状が望ましく、最大粒子径を0.1〜5.0mmになるように粉砕して得られたものであることが、より望ましい。
最大粒子径が0.1mm未満の場合、焼成ドロマイトの製造効率が低下し、且つ粉砕コストが高騰してしまう恐れがある。
最大粒子径が5.0mmを超える場合、地盤材料組成物を構成する材料と均一に混合することができず、これらの化学反応が均一に起こらなくなってしまう恐れがある。
【0081】
本発明で使用する焼成ドロマイト水和物は、工業的に流通しているものであり、焼成ドロマイトを水和反応させて得られた粉末状、ペースト状、又はスラリー状であれば、別段限定されるものではない。工業的には、焼成ドロマイトを乾式消化設備により水和反応させた後、分級操作によって得られる、乾燥粉末状のドロマイトプラスターが知られており、使用するのに好適である。
【0082】
焼成ドロマイト水和物は、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムを主な成分としているため、焼成ドロマイトのような、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムの水和反応による種々の効果が期待できない。したがって、焼成ドロマイトよりも有害物質の溶出量を低減する効果、及び地盤材料として利用できる強度を発揮する効果が低下する。
【0083】
焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種の添加量は、本発明の地盤材料組成物からの有害物質の溶出量が、第一溶出量基準値以下となり、且つ地盤材料として利用できる強度を発揮するのであれば、別段限定されるものではない。
【0084】
ただし、これらの効果をより確実なものにするためには、本発明の地盤材料組成物100質量%に対して、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種を内比で1.5〜10.0質量%添加し、残部が浚渫土砂と、石炭焼却灰と、石膏で構成されていることが好ましく、より好ましくは焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種を内比で2.5〜10質量%添加することである。
【0085】
焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種の添加量が1.5質量%未満の場合、これらの添加効果がほとんど得られなくなる恐れがある。
焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種の添加量が10.0質量%を超える場合、これらの割合が多すぎるため、多量に存在するアルカリ性化合物の影響で、本発明の地盤材料組成物のpHが高アルカリ性になり、本発明の地盤材料組成物の用途が限定されてしまう、材料コストが高騰してしまう、等の問題が生じる恐れがある。
【0086】
本発明で使用する石膏は、工業的に流通しているものであれば、別段限定されるものではない。代表的な石膏としては、安価な工業製品や工業副生品である、二水石膏、半水石膏、天然無水石膏、フッ酸副生石膏、リン酸副生石膏、排煙脱硫石膏、石膏ボード破砕物、石膏ボード破砕物の焼成品が挙げられ、これらの中から選ばれた1種以上を使用できる。
【0087】
石膏に含まれる結晶水を含めた水分は、別段限定されるものではないが、石膏100質量%に対し、内比で0〜50質量%であることが、より望ましい。石膏の固形分100質量%に対し、50質量%を超える場合、石膏として有効な固形分が少なくなるため、カルシウムサルフォアルミネート水和物生成量が減少し、添加効果が低下してしまう恐れがある。
【0088】
石膏の添加量は、本発明の地盤材料組成物からの有害物質の溶出量が、第一溶出量基準値以下となり、且つ地盤材料として利用できる強度を発揮する割合であれば、別段限定されるものではないが、これらの効果をより確実なものにするためには、本発明の地盤材料組成物100質量%に対して、石膏を内比で1.5〜10.0質量%添加し、残部が浚渫土砂と、石炭焼却灰と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種で構成されていることが好ましく、より好ましくは石膏を内比で2.0〜10質量%添加することである。
【0089】
石膏の添加量が1.5質量%未満の場合、カルシウムサルフォアルミネート水和物の生成量が減少し、有害物質の溶出量を低減しにくくなる恐れがあり、又は地盤材料組成物の強度が低下する恐れがある。
石膏の添加量が10.0質量%を超える場合、カルシウムサルフォアルミネート水和物が過剰に生成してしまうため、有害物質の溶出量を低減する効果、及び地盤材料として利用できる強度を発揮する効果のバランスが悪くなり、優れた地盤材料組成物が得られなくなる恐れがある。
【0090】
本発明の地盤材料組成物は、有害物質の溶出量が前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第一溶出量基準値以下に低減されたものでなければならない。そのため、本発明の地盤材料組成物を使用する前には、有害物質の溶出量を調査して、第一溶出基準値以下であることを確認する。
【0091】
本発明の地盤材料組成物からの有害物質の溶出量が、第一溶出基準値以下に低減できなかった場合、好ましい添加量の範囲内で各材料の配合割合を変化させることによって、改善することができる。
【0092】
各材料のうち、特に、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種及び石膏の配合割合を増やすことによって、有害物質の溶出量を低減する効果が向上する。
また、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種において、マグネシウムの含有量が多いものを使用することによって、有害物質の溶出量を低減する効果が向上する。
【0093】
本発明の地盤材料組成物は、国土交通省令に基づく土質区分基準が第4種建設発生土に分類されるコーン指数200kN/m以上の強度を発揮していなければならない。そのため、本発明の地盤材料組成物を使用する前には、コーン指数を測定して、200kN/m以上の強度を発揮していることを確認する。
【0094】
本発明の地盤材料組成物のコーン指数が、200kN/m以上にならなかった場合、好ましい添加量の範囲内で各材料の配合割合を変化させることによって、改善することができる。
各材料のうち、特に、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種、及び石炭焼却灰の配合割合を増やすことによって、地盤材料として利用できる強度を発揮する効果が向上する。
【0095】
本発明における地盤材料組成物を製造するための各材料の混合攪拌方法は、別段限定されるものではなく、工業分野、土木分野、建築分野で一般に用いられている材料混合攪拌装置、及び混合攪拌方法が適用できる。
【0096】
混合攪拌装置としては、例えば、ソイルミキサー、コンクリートミキサー、モルタルミキサー、1軸パドルミキサー、2軸パドルミキサー、自走式土質改良機、スクリューミキサー、レディーゲミキサー、バックホウ(エクスカベータ)、ホイールローダー、ブルドーザー、スタビライザー、泥上車式混合機械、等が挙げられる。
【0097】
混合攪拌方法としては、例えば、自走式土質改良機による混合(連続式)、ベルトコンベヤによる混合(連続式)、バックホウ混合(バッチ式)、スタビライザー混合(バッチ式)、トレンチャー式混合(バッチ式)、プラント攪拌混合(バッチ式、連続式)、管中混合(連続式)、等が挙げられる。
【0098】
地盤材料組成物を主に構成する浚渫土砂の水分や、混合攪拌に用いられる装置や方法(バッチ式、連続式)によって、均一に混合攪拌するために要する時間に差があるため、各材料の混合攪拌状態が十分であることを判断する目安として、材料の色合いにムラが無くなるまで十分に混合攪拌することが望ましい。
浚渫土砂及び石炭焼却灰は、黒色、暗灰色、灰色、茶色等に呈色しているのに対して、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種及び石膏は、白色、又は明灰色であるため、混合攪拌状態を色合いで判断することが十分可能である。
【0099】
本発明の地盤材料組成物の強度を発揮する効果を確実なものにするためには、本発明の地盤材料組成物を構成する各材料を混合した直後から2〜7日間、大気中で養生させることが肝要である。
本発明の地盤材料組成物を養生させることによって、地盤材料として利用できる強度を発揮する効果に寄与する各種化学反応の進行が促進され、強度が増加する。
【0100】
養生条件としては、原則として湿潤の状態で、急激に乾燥させないようにして、所定の強度が得られるまで重荷重の負荷は避けるようにすることが望ましい。
養生日数は、2日以上であり、且つ目標とするコーン指数200kN/m が得られる日数であれば良く、養生日数が長い程、強度が増加する。
養生日数が、2日未満の場合、目標とするコーン指数200kN/m がほとんど達成できない恐れがあるため望ましくない。なお、一般的には、養生日数が7日を超えない範囲で、目標とするコーン指数200kN/m が得られるため、7日を超えて養生する必要はない。
【0101】
また、養生の段階において、地盤材料組成物の温度が、含有水分が凍結する温度まで低下すると、構成する各材料による各種反応が進行せず、有害物質の溶出量を低減する効果、地盤材料として利用できる強度を発揮する効果が得られなくなってしまう恐れがある。
地盤材料組成物に含まれる水分が凍結する温度は、構成する各材料の配合割合や、浚渫土砂に含まれる水が、海水か淡水であるかによって異なる。
地盤材料組成物の温度は、できるだけ含有水分が凍結しない程度で維持させることが望ましく、外気温が低下する冬季中の製造をなるべく避けることが望ましい。
【0102】
地盤材料組成物を構成する各材料を混合攪拌した後の養生期間や、得られた地盤材料組成物を建築物の埋戻し、道路路体用盛土、等の用途に使用する前において、外部から余分な水分が混入することを避けることが望ましい。
余分な水が混入すると、地盤材料組成物を構成する水分の増加によって、地盤材料としての十分な強度を発揮しなくなってしまう可能性がある。
【0103】
したがって、降雨時、降雪時は、露天での製造、養生、使用をできるだけ避けることが望ましい。
好適な温度を維持し、外部から余分な水分が混入することを避けるため、地盤材料組成物を土運船のボックスの中、陸上部に設けた土砂ピット、地面上で盛土、等による養生によって、外気との接触による熱の放散、及び余分な水の混入をできるだけ避けることが望ましい。
【実施例】
【0104】
以下、実施例および比較例によって本発明の地盤材料組成物の具体例およびその効果を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0105】
以下の実施例および比較例において、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の含有量は、環境省告示第19号で定められる土壌含有量調査に係る測定方法[検液の作成方法は、環境省告示第19号の付表の通りとし、検液の測定方法は、環境省告示第19号の別表に記載された下記の測定方法]に従って測定した。
測定方法:
カドミウム及びその化合物:JIS K 0102の55に定める方法、
六価クロム化合物:JIS K 0102の65.2に定める方法、
シアン化合物:JIS K 0102の38に定める方法(JIS K 0102の38.1に定める方法を除く)、
水銀及びその化合物:昭和46年12月環境庁告示第59号(水質汚濁に係る環境基準について)付表1に掲げる方法、
セレン及びその化合物:JIS K 0102の67.2、67.3又は67.4に定める方法、
鉛及びその化合物:JIS K 0102の54に定める方法、
砒素及びその化合物:JIS K 0102の61に定める方法、
ふっ素及びその化合物:JIS K 0102の34.1に定める方法又はJIS K 0102の34.1c)(第3文を除く)に定める方法、及び昭和46年12月環境庁告示第59号(水質汚濁に係る環境基準について)付表6に掲げる方法、
ほう素及びその化合物:JIS K 0102の47.1、47.3又は47.4に定める方法。
【0106】
また、以下の実施例および比較例において、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量は、環境省告示第18号で定められる土壌溶出量調査に係る測定方法[検液の作成方法は、平成3年8月環境庁告示第46号(土壌汚染に係る環境基準について)付表の通りとし、検液の測定方法は、環境省告示第18号の別表に記載された下記の測定方法]に従って測定した。
測定方法:
カドミウム及びその化合物:JIS K 0102の55に定める方法、
六価クロム化合物:JIS K 0102の65.2に定める方法、
シアン化合物:JIS K 0102の38に定める方法(JIS K 0102の38.1.1に定める方法を除く)、
水銀及びその化合物:昭和46年12月環境庁告示第59号(水質汚濁に係る環境基準について)付表1に掲げる方法、
セレン及びその化合物:JIS K 0102の67.2、67.3又は67.4に定める方法、
鉛及びその化合物:JIS K 0102の54に定める方法、
砒素及びその化合物:JIS K 0102の61に定める方法、
ふっ素及びその化合物:JIS K 0102の34.1に定める方法又はJIS K 0102の34.1c)(第3文を除く)に定める方法(懸濁物質及びイオンクロマトグラフ法で妨害となる物質が共存しない場合にあっては、これを省略することができる)及び昭和46年12月環境庁告示第59号(水質汚濁に係る環境基準について)付表6に掲げる方法、
ほう素及びその化合物:JIS K 0102の47.1、47.3又は47.4に定める方法。
【0107】
石炭火力発電所にて、産出される石炭焼却灰を回収した。回収した石炭焼却灰は、集塵機にて捕集されるフライアッシュであり、原料石炭の異なる2種類(石炭焼却灰A、及び石炭焼却灰B)が存在していた。
回収した石炭焼却灰を下記の測定条件で蛍光X線分析装置により化学成分を酸化物量に換算して分析した結果、表1の通りであった。
測定条件:
理学電気工業(株)製、波長分散型蛍光X線分析装置SYSTEM3270を使用、
アルミ製のリング(直径4cm、高さ0.5cm)に、適量の試料を配置した後、電動試料成型機にて15トンの圧力を加え成型し、圧縮成型測定試料を調製して測定、
X線源ターゲット=Rh、
X線管流の設定=50kV、50mA、3kW。
また、石炭焼却灰について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の含有量、及び溶出量を測定した結果は、表2の通りであった。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
下記の実施例、及び比較例で使用する焼成ドロマイトは、村樫石灰工業株式会社、会沢鉱山で採取した天然のドロマイト岩(カルシウムをCaOとして35.0質量%、及びマグネシウムをMgOとして20.3質量%含有)を、1250℃で焼成して得られた焼成ドロマイトを粉砕し、1.0mmふるい通過分のみを回収し、最大粒子径が1.0mmになるように調製したものを用いた。
【0111】
下記の実施例、及び比較例で使用する焼成ドロマイト水和物は、村樫石灰工業株式会社製のドロマイトプラスター(カルシウムをCaOとして43.7質量%、及びマグネシウムをMgOとして25.4質量%含有、粒径0.6mm以下)を用いた。
【0112】
下記の実施例、及び比較例で使用する石膏は、工業試薬特級の二水石膏(結晶水を含めた水分が20.9質量%、最大粒子径0.6mm)、及び石炭火力発電所の脱硫工程で副生した排煙脱硫石膏(結晶水を含めた水分が45.2質量%、最大粒子径0.4mm)を用いた。
【0113】
下記の比較例にて使用する高炉セメントB種は、JIS R 5211に適合する太平洋セメント株式会社製を用いた。
【0114】
下記の比較例にて使用する生石灰は、村樫石灰工業株式会社、会沢鉱山で採取した石灰岩(カルシウムをCaOとして51.5質量%、及びマグネシウムをMgOとして1.1質量%含有)を、1280℃で焼成して得られた生石灰を粉砕し、1.0mmふるい通過分のみを回収し、最大粒子径が1.0mmになるように調製したものを用いた。
【0115】
下記の実施例、及び比較例で使用する浚渫土砂は、東京湾で採取した浚渫土砂A、浚渫土砂B、浚渫土砂Cの3種を用いた。
各浚渫土砂の湿潤密度(g/cm)、乾燥密度(g/cm)、水の含有量(内比%)、コーン指数(kN/m)、平均粒子径(μm)を表3に示す。
【0116】
また、各浚渫土砂について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の含有量を測定した結果は表4の通りであり、溶出量を測定した結果は、表5の通りであった。
【0117】
また、浚渫土砂Aに対し、六価クロムを50mg/L、シアンを100mg/L、水銀を0.5mg/L、鉛を10mg/L含有する水溶液を外比で2.0質量%添加し、混合して得られた模擬汚染土砂を浚渫土砂Dとした。
浚渫土砂Dの湿潤密度(g/cm)、乾燥密度(g/cm)、水の含有量(内比%)、コーン指数(kN/m)、平均粒子径(μm)を表3に示す。
【0118】
また、浚渫土砂Dについて、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の含有量を測定した結果は表4の通りであり、溶出量を測定した結果は、表5の通りであった。
【0119】
【表3】

【0120】
【表4】

【0121】
【表5】

【0122】
(実施例1)
表6に記載されている地盤材料組成物A−1に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、21℃であった。前記操作によって得られた混合物を用いて、コーン指数試験用供試体を作成した。
モールドの寸法は直径100.0mm、高さ127.3mm、成形は2.5kgランマーで30cmの高さから3層、25回の突き固めを行った。
コーン指数はJIS A 1228「締め固めた土のコーン指数試験方法」に従って測定した。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表7に示す。
また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表7の通りであった。
【0123】
(実施例2)
表6に記載されている地盤材料組成物A−2に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、21℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表7に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表7の通りであった。
【0124】
(実施例3)
表6に記載されている地盤材料組成物A−3に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、21℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表7に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表7の通りであった。
【0125】
(実施例4)
表6に記載されている地盤材料組成物A−4に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、21℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表7に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表7の通りであった。
【0126】
(実施例5)
表6に記載されている地盤材料組成物A−5に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、21℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表7に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表7の通りであった。
【0127】
(比較例1)
表6に記載されている地盤材料組成物A−6に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、21℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表7に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表7の通りであった。
【0128】
【表6】

【0129】
【表7】

【0130】
(実施例6)
表8に記載されている地盤材料組成物B−1に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、19℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表9に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表9の通りであった。
【0131】
(実施例7)
表8に記載されている地盤材料組成物B−2に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、19℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表9に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表9の通りであった。
【0132】
(実施例8)
表8に記載されている地盤材料組成物B−3に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、19℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表9に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表9の通りであった。
【0133】
(比較例2)
表8に記載されている地盤材料組成物B−4に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、19℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表9に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表9の通りであった。
【0134】
(比較例3)
表8に記載されている地盤材料組成物B−5に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、19℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表9に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表9の通りであった。
【0135】
【表8】

【0136】
【表9】

【0137】
(実施例9)
表10に記載されている地盤材料組成物C−1に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、20℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表11に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表11の通りであった。
【0138】
(実施例10)
表10に記載されている地盤材料組成物C−2に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、20℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表11に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表11の通りであった。
【0139】
(比較例4)
表10に記載されている地盤材料組成物C−3に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、20℃であった。以降、実施例1と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表11に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表11の通りであった。
【0140】
【表10】

【0141】
【表11】

【0142】
(実施例11)
表12に記載されている地盤材料組成物D−1に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物を5kg分取し、ビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下で2日間養生した。残りの5kgはビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下で7日間養生した。2日、および7日経過後の混合物の温度を測定した結果、各々20℃であった。
前述の操作によって得られた養生日数の異なる2種類の混合物について、コーン指数試験用供試体を作成した。
モールドの寸法は直径100.0mm、高さ127.3mm、成形は2.5kgランマーで30cmの高さから3層、25回の突き固めを行った。
コーン指数はJIS A 1228「締め固めた土のコーン指数試験方法」に従って測定した。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表13に示す。また、7日養生した混合物のコーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表13の通りであった。
【0143】
(実施例12)
表12に記載されている地盤材料組成物D−2に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物を5kg分取し、ビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下で2日間養生した。残りの5kgはビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下で7日間養生した。2日、および7日経過後の混合物の温度を測定した結果、各々20℃であった。以降、実施例11と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表13に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、土壌汚染対策法(平成14年5月29日法律第53号)で定められる前記の試験方法に従って第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表13の通りであった。
【0144】
(実施例13)
表12に記載されている地盤材料組成物D−3に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物を5kg分取し、ビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下で2日間養生した。残りの5kgはビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下で7日間養生した。2日、および7日経過後の混合物の温度を測定した結果、各々20℃であった。以降、実施例11と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表13に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、土壌汚染対策法(平成14年5月29日法律第53号)で定められる前記の試験方法に従って第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表13の通りであった。
【0145】
(比較例5)
表12に記載されている地盤材料組成物D−4に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物を5kg分取し、ビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下で2日間養生した。残りの5kgはビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下で7日間養生した。2日、および7日経過後の混合物の温度を測定した結果、各々20℃であった。以降、実施例11と同様に試験を行った。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表13に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、土壌汚染対策法(平成14年5月29日法律第53号)で定められる前記の試験方法に従って第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表13の通りであった。
【0146】
【表12】

【0147】
【表13】

【0148】
(比較例6〜8)
表12に記載されている地盤材料組成物D−1、D−2、D−3に従って、各材料の質量合計10kgをソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で1日間養生した。1日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、22℃であった。
前述の操作によって得られた混合物を用いて、コーン指数試験用供試体を作成した。
モールドの寸法は直径100.0mm、高さ127.3mm、成形は2.5kgランマーで30cmの高さから3層、25回の突き固めを行った。
コーン指数はJIS A 1228「締め固めた土のコーン指数試験方法」に従って測定した。供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表14に示す。
【0149】
【表14】

【0150】
(実施例14)
浚渫土砂Dを86.7kg、石炭焼却灰Bを4.3kg、軽焼ドロマイトを4.3kg、排煙脱硫石膏を4.3kg秤量し、ソイルミキサーにて5分間混合した。5分間混合によって、均一に混合されていることが確認された。混合物をビニール袋に入れて密封し、20±2℃の室温下、大気中で7日間養生した。7日経過後の前述の混合物の温度を測定した結果、22℃であった。
前述の操作によって得られた混合物を用いて、コーン指数試験用供試体を作成した。
モールドの寸法は直径100.0mm、高さ127.3mm、成形は2.5kgランマーで30cmの高さから3層、25回の突き固めを行った。
コーン指数はJIS A 1228「締め固めた土のコーン指数試験方法」に従って測定した。
供試体のコーン指数(kN/m)の測定結果を表15に示す。また、コーン指数測定後の供試体について、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量を測定した結果は、表15の通りであった。
【0151】
【表15】

【0152】
本発明の地盤材料組成物(実施例1〜14)は、全て、前記土壌汚染対策法で定められる第二種特定有害物質の溶出量が第一溶出量基準値以下であり、且つコーン指数200kN/m以上であり、地盤材料として利用可能であることが確認された。
比較例(比較例1〜8)の地盤材料組成物は、第二種特定有害物質の溶出量、及びコーン指数について、片方、或いは両方の条件を満たすことができず、目的とする地盤材料組成物が得られなかった。
【0153】
本発明の地盤材料組成物のうち、地盤材料組成物D−1、D−2、D−3を7日間養生したもの(実施例11〜13)について、下記の測定条件で粉末X線回折による結晶相の同定を行った。
【0154】
測定条件:
マックサイエンス(株)製、粉末X線回折装置MXP3AHF22を使用、
ガラス製試料フォルダに、測定試料をセットして測定、
X線発生装置=3kW、
X線源=1.54056Å(Cu)、モノクロメータを使用、
X線管流の設定=40kV、30mA、
サンプリング幅=0.02°、走査速度=4.00°/min、
発散スリット=1.00°、散乱スリット=1.00°、
受光スリット=0.30mm、
結晶相の同定は、XPRESS定性分析ソフトMach Makerを使用。
【0155】
粉末X線回折による結晶相の同定結果を図1に示す。
図1から、主な結晶相は、材料で使用した排煙脱硫石膏由来の二水石膏、浚渫土砂及び石炭焼却灰に含まれている石英(ケイ酸)、及び各材料同士の反応によって生成したエトリンガイトであることが判る。エトリンガイト標準結晶における最強ピークの位置が9.09°であるのに対し、地盤材料組成物D−1は9.00°、地盤材料組成物D−2は8.98°、地盤材料組成物D−3は8.94°となっていた。このピークのシフトは、エトリンガイト結晶に有害物質が取り込まれたことによる結晶の歪みに起因すると考えられる。
【0156】
焼成ドロマイト由来の酸化カルシウム、酸化マグネシウムの結晶相、及びその水和物である水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムの結晶相が確認されなかったことから、これらが水和反応した後、カルシウム源、マグネシウム源として、種々の化学反応、イオン交換反応、等に利用されたことが示唆される。
なお、図中にて同定されていないピークは、浚渫土砂中の粘土鉱物や、石炭焼却灰に含まれる複合酸化物である。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の地盤材料組成物は、安価な工業製品である焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種及び石膏と、有害物質が溶出する可能性があり処分が困難となっている浚渫土砂、及び石炭焼却灰を混合して得られる地盤材料組成物であり、複雑な操作を必要とせず、浚渫土砂、及び石炭焼却灰からの有害物質の溶出量を前記土壌汚染対策法の施行規則で定められる第一溶出量基準値以下に低減でき、且つ国土交通省令に基づく土質区分基準が第4種建設発生土に分類されるコーン指数200kN/m以上の強度を発揮することが可能となり、建設・土木分野における地盤材料として有効に利用でき、さらに浚渫土砂、及び石炭焼却灰の埋め立て処分量を低減することによって、埋め立て処分場の逼迫問題を解決できるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浚渫土砂及び石炭焼却灰に対して、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種及び石膏を添加し、混合攪拌した後、2〜7日間大気中で養生することによって得られる地盤材料組成物であって、
環境省告示第18号で定められる土壌溶出量調査に係る測定方法によって測定した地盤材料組成物に含まれる下記有害物質の溶出量が検液1Lにつき下記の範囲にあり、且つコーン指数200kN/m以上の強度を発揮することを特徴とする地盤材料組成物。
溶出量:
カドミウム及びその化合物:0.01mg以下、
六価クロム化合物:0.05mg以下、
シアン化合物:検出されない、
水銀及びその化合物:0.0005mg以下、
セレン及びその化合物:0.01mg以下、
鉛及びその化合物:0.01mg以下、
砒素及びその化合物:0.01mg以下、
ふっ素及びその化合物:0.8mg以下、
ほう素及びその化合物:1mg以下。
【請求項2】
環境省告示第19号で定められる土壌含有量調査に係る測定方法によって測定した浚渫土砂に含まれる下記有害物質の含有量が下記の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の地盤材料組成物。
含有量:
カドミウム及びその化合物:150mg/kg以下、
六価クロム化合物:250mg/kg以下、
シアン化合物:遊離シアンとして50mg/kg以下、
水銀及びその化合物:15mg/kg以下、
セレン及びその化合物:150mg/kg以下、
鉛及びその化合物:150mg/kg以下、
砒素及びその化合物:150mg/kg以下、
ふっ素及びその化合物:4,000mg/kg以下、
ほう素及びその化合物:4,000mg/kg以下。
【請求項3】
浚渫土砂の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で50.0〜95.5質量%であり、残部が石炭焼却灰と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種と、石膏で構成されていることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の地盤材料組成物。
【請求項4】
環境省告示第19号で定められる土壌含有量調査に係る測定方法によって測定した石炭焼却灰に含まれるに含まれる下記有害物質の含有量が下記の範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の地盤材料組成物。
含有量:
カドミウム及びその化合物:150mg/kg以下、
六価クロム化合物:250mg/kg以下、
シアン化合物:遊離シアンとして50mg/kg以下、
水銀及びその化合物:15mg/kg以下、
セレン及びその化合物:150mg/kg以下、
鉛及びその化合物:150mg/kg以下、
砒素及びその化合物:150mg/kg以下、
ふっ素及びその化合物:4,000mg/kg以下、
ほう素及びその化合物:4,000mg/kg以下。
【請求項5】
石炭焼却灰が、石炭火力発電所における石炭燃焼ボイラーで石炭を燃焼させた際に、集塵機で捕集される石炭焼却飛灰であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の地盤材料組成物。
【請求項6】
石炭焼却灰が、石炭焼却灰100質量%に対してケイ酸(SiO)を40.0〜95.0質量%、酸化アルミニウム(Al)を5.0〜60.0質量%の範囲で含有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の地盤材料組成物。
【請求項7】
石炭焼却灰の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜30.0質量%であり、残部が浚渫土砂と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種と、石膏で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の地盤材料組成物。
【請求項8】
焼成ドロマイトが、天然物であり、マグネシウムをMgO換算で2.1〜21.6質量%含むドロマイト岩を800〜1,300℃の範囲で焼成し、最大粒子径を0.1〜5.0mmになるように粉砕して得られた粉末であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の地盤材料組成物。
【請求項9】
焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜10.0質量%であり、残部が浚渫土砂と、石炭焼却灰と、石膏で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の地盤材料組成物。
【請求項10】
石膏が、二水石膏、半水石膏、天然無水石膏、フッ酸副生石膏、リン酸副生石膏、排煙脱硫石膏、石膏ボード破砕物、石膏ボード破砕物の焼成品の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の地盤材料組成物。
【請求項11】
石膏の添加量が、地盤材料組成物100質量%に対して、内比で1.5〜10.0質量%であり、残部が浚渫土砂と、石炭焼却灰と、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物の中から選ばれた1種又は2種で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の地盤材料組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−148227(P2012−148227A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8066(P2011−8066)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(591130319)東電環境エンジニアリング株式会社 (27)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000203047)村樫石灰工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】