説明

地盤特性試験方法及び地盤特性試験装置

【課題】掘削により到達した地盤表面に直接荷重をかけることで変位した地盤の変位量を高精度で測定することができ、信頼性の高い地盤の特性試験を行うことが可能な地盤特性試験方法及び地盤特性試験装置を提供する。
【解決手段】掘削方向先端にジャッキが配設された掘削ヘッドを前記地盤の所定位置まで貫入させる貫入工程と、前記貫入工程後、前記ジャッキを作動させ、当該ジャッキを前記貫入方向に移動させて前記地盤を押圧する押圧工程と、前記押圧工程の際に前記ジャッキが前記地盤にかける荷重量と、当該荷重量によって前記ジャッキが移動した変位量と、を測定する測定工程と、前記測定工程で測定した荷重量と前記ジャッキの変位量との関係から前記地盤の強度を取得する強度取得工程と、を有する地盤特性試験方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の先端支持力を推定するための地盤特性を測定する試験方法及び試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面に埋設した杭の支持力を測定する場合、杭に対して載荷装置による載荷を行い、載荷した荷重と、この荷重による沈下量とを測定し、これらの測定データから支持力を算定する杭の載荷試験方法が行われている。
【0003】
このような杭の載荷試験方法は、大掛かりな載荷装置を用いるため、多額の費用と時間が必要になって数多く実施することは困難である。また、載荷桁の能力や反力杭として本設杭を利用すること等の問題から十分な荷重を試験杭に載荷することができない場合が多い。多額の費用と時間を費やしているにもかかわらず、殆どの載荷試験で、極限支持力は勿論降伏支持力も得られていないのが実情である。このような試験では設計支持力の確認はできるものの、杭と地盤の情報、とくに杭先端地盤について十分な情報が得られないことになる。
【0004】
特に、杭先端地盤の強度−変形特性について調査する場合で前記杭が開端杭の場合、先端部に侵入する土砂が杭の先端部において閉塞状態となるため、侵入した土砂の上部の軟弱な部分を除去するか、あるいは圧着してから測定する必要があった。
【0005】
そこで、土中に埋設された中空杭の先端に同径の短管状をなす中空先端短管を支持層に摺動自在に接続し、前記中空杭内に前記先端管短管を押圧する押圧杆を挿入し、杭の上部にアンカーされた反力桁を設け、当該中空先端短管内の外土を反力として、前記押圧杆と該反力桁の間に設けられたジャッキと、前記押圧杆及び反力桁を介して中空杭頭部に引抜力を作用させ、ジャッキによる荷重と杭及び押圧杆の変位を測定することにより、杭の周面摩擦力と先端支持力を測定する杭の鉛直載荷試験装置が紹介されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、場所打ち杭の先端支持力の確認及び支持力の増加を簡単且つ安価に行える方法として、杭孔と略同径の筒状補助装置を杭孔の底部に設置すると共に、圧入パイプの下端を補助装置の内部高さ途中に位置させ、杭孔にコンクリートを打設して杭を造成し、杭の硬化後、圧入パイプを介して硬化性の流体を所要圧力で圧入し、その圧入力で補助装置内の杭先端部を上下に分割させ、杭の周面摩擦を反力として先端地盤を押圧して支持力の増加を図ると共に、流体の圧入力で支持力を確認する方法が紹介されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
そしてまた、杭孔と略同径でその内部所要高さ位置に仕切板を設けた筒状補助装置を、杭孔の底部に設置すると共に圧入パイプの下端を補助装置の仕切板上方に臨ませ、杭孔にコンクリートを打設して杭を造成し、杭の硬化後、圧入パイプを介して硬化性の流体を所要圧力で圧入し、その圧入力で杭先端部を補助装置の仕切板上方で上下に分割し、杭の周面摩擦を反力として先端地盤を押圧して支持力の増加を図ると共に、流体の圧入力で支持力を確認する方法も紹介されている。(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
さらにまた、杭孔と略同径でその内部所要高さ位置に仕切板を設けた筒状補助装置を、杭孔の底部に設置すると共に圧入パイプの下端を補助装置の仕切板下方に臨ませ、杭孔にコンクリートを打設して杭を造成し、杭の硬化後、圧入パイプを介して硬化性の流体を所要圧力で圧入し、その圧入力で杭先端部を補助装置の仕切板下方で上下に分割し、杭の周面摩擦を反力として先端地盤を押圧して支持力の増加を図ると共に、流体の圧入力で支持力を確認する方法も紹介されている。(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2774056号公報
【特許文献2】特許第3107458号公報
【特許文献3】特許第3107459号公報
【特許文献4】特許第3107460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された杭の鉛直載荷試験装置は、土中(地盤内)に中空先端短管と中空杭を埋設し、この中空杭内に押圧杆を挿入すると共に、当該中空杭の上部に反力桁を設け、さらに、前記押圧杆と反力桁の間にジャッキを設ける必要があり、装置が複雑であると共に、組立て作業に手間がかかる。また、前記押圧杆と反力桁を介して中空杭の頭部に引抜力を作用させ、ジャッキによる荷重と前記中空杭及び押圧杆の変位を測定することで、前記中空杭と土(地盤)との周面摩擦力と先端支持力を測定する構成を有しており、地盤の変位量を直接測定することができないため、高精度な測定を行うことが困難である。
【0011】
また、特許文献2〜4に記載された方法は、土中(地盤内)に杭孔を形成し、当該杭孔の底部に筒状補助装置を設置すると共に、圧入パイプの下端を補助装置の内部高さ途中に位置させ、杭孔にコンクリートを打設して杭を造成する必要があり、装置が複雑であると共に、組立て作業に手間がかかる。また、前記コンクリートが硬化した後、前記圧入パイプを介して硬化性の流体を圧入する力により、杭の支持力を確認する構成を有しており、地盤を直接押圧した際の反力を測定することができないため、高精度な測定を行うことが困難である。
【0012】
また、上記の試験方法においては、試験を実施する個々の杭の支持力を測定することはできるが、広い敷地内での支持層の不陸に起因する支持基盤のバラツキや、地盤の堆積履歴に起因する支持層の強度のバラツキを評価するための試験データを蓄積するには煩雑で、複数の杭で支持される構造物全体の安全性を評価することはできない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、土中(地盤内)に形成した杭孔に杭を設置する必要がなく、掘削により到達した地盤表面に直接荷重をかけることで変位した地盤の変位量を高精度で測定することができ、信頼性の高い地盤の特性試験を行うことが可能な試験方法及び試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するため本発明は、地盤の特性を測定する試験方法であって、掘削方向先端にジャッキが配設された掘削ヘッドを前記地盤の所定位置まで貫入させる貫入工程と、前記貫入工程後、前記ジャッキを作動させ、当該ジャッキを前記貫入方向に移動させて前記地盤を押圧する押圧工程と、前記押圧工程の際に前記ジャッキが前記地盤にかける荷重量と、当該荷重量によって前記ジャッキが移動した変位量と、を測定する測定工程と、前記測定工程で測定した荷重量と前記ジャッキの変位量との関係から前記地盤の強度を取得する強度取得工程と、を有する地盤特性試験方法を提供するものである。
【0015】
これらの工程を有する地盤特性試験方法は、掘削方向先端にジャッキが配設された掘削ヘッドを地盤の所定位置まで貫入させるため、掘削により到達した地盤表面を前記ジャッキで直接押圧して荷重をかけることができる。したがって、前記地盤表面にかけられた荷重によって変位した地盤の変位量を高精度で正確に測定することができる。また、従来の地盤特性試験方法とは異なり、土中(地盤内)に形成した杭孔に杭を設置する必要がないため、組立て作業に手間がかかることもない。そしてまた、前記地盤の変位量を前記掘削の直後に測定することができるため、施工時の作業等による地盤の乱れによる影響を施工直後に調査することもできる。同時に、施工直後に反力杭を打つことなく、先端地盤の特性を簡便に調査することができるため、敷地内の支持層の不陸や強度のバラツキを簡便に調査することが可能となり、構造物全体の安全性を評価することが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る地盤特性試験方法における押圧工程は、油圧により前記ジャッキを作動させることができる。
【0017】
そしてまた、前記ジャッキは、前記掘削ヘッド内に挿入可能であると共に、当該掘削ヘッド内から延出可能なロッド部を有し、前記貫入工程は、前記ロッド部が挿入された掘削ベッドを前記地盤の所定位置まで貫入させ、前記押圧工程は、前記掘削ベッド内から延出させたロッド部により前記地盤を押圧することができる。
【0018】
また、本発明は、地盤の特性を測定する試験装置であって、掘削ヘッドの掘削方向先端に配設されたジャッキと、前記ジャッキを当該掘削ヘッドから前記掘削方向に移動して地盤に当接させ、当該地盤に荷重をかける荷重付加部と、前記ジャッキが前記地盤にかけた荷重によって当該ジャッキが移動した変位量を測定する測定部と、前記ジャッキが前記地盤にかけた荷重量と、前記測定部が測定した変位量との関係から前記地盤の強度を取得する強度取得部と、を有する地盤特性試験装置を提供するものである。
【0019】
この構成を有する地盤特性試験装置は、ジャッキが掘削ヘッドの掘削方向先端に配設されており、このジャッキを当該地盤表面に当接させ、当該地盤に荷重をかける荷重付加部を有しているため、掘削ヘッドによる掘削により到達した地盤表面を前記ジャッキで直接押圧して荷重をかけることができる。したがって、前記地盤表面にかけられた荷重によって変位した地盤の変位量を高精度で正確に測定することができる。また、従来の地盤特性試験方法とは異なり、土中(地盤内)に形成した杭孔に杭を設置する必要がないため、組立て作業に手間がかかることもない。そしてまた、前記地盤の変位量を前記掘削の直後に測定することができるため、施工時の作業等による地盤の乱れによる影響を施工直後に調査することもできる。
【0020】
また、施工時のオーガーモーターに生じるトルク値及び押込み力、引抜き力と地盤のN値等、地盤の強度に係る指数と、本発明による地盤を押圧する圧力と変位の関係を総合的に評価することで、敷地内で平面的に分布している強度のバラツキや不陸等の情報が精度良く評価できることで、当該敷地内の構造物の総合的な安全性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明に係る地盤特性試験装置は、前記ジャッキが油圧ジャッキであり、荷重付加部は、前記油圧ジャッキを作動させる油圧ポンプを含むことができる。
【0022】
そしてまた、本発明に係る地盤特性試験装置は、前記ジャッキが前記掘削ヘッド内に挿入可能であると共に、当該掘削ヘッド内から延出可能なロッド部を有し、前記ロッド部は、前記地盤に前記掘削ベッドが貫入される際に、当該掘削ヘッド内に挿入され、前記地盤に当接し当該地盤に荷重をかける際に、当該掘削ヘッド内から延出される構成を備えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る地盤特性試験方法によれば、掘削により到達した地盤表面に荷重を直接かけることができ、この荷重によって変位した地盤の変位量を測定することができるため、前記地盤の特性試験を高精度で行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る地盤特性試験装置によれば、掘削ヘッドによる掘削により到達した地盤表面に、ジャッキで荷重を直接かけることができ、この荷重によって変位した地盤の変位量を測定することができるため、前記地盤の特性試験を高精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る地盤特性試験装置を掘削ヘッドの先端に取付けた状態を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す地盤特性試験装置のシリンダからロッドを延出させた状態を拡大して示す一部断面図である。
【図3】図1に示す地盤特性試験装置のシリンダ内にロッドを収容した状態を拡大して示す一部断面図である。
【図4】図1に示す地盤特性試験装置の底面図である。
【図5】掘削時の地盤特性試験装置の状態を模式的に示す図である。
【図6】掘削後に地盤の特性試験を行う地盤特性試験装置の状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る地盤特性試験装置及び地盤特性試験方法について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る地盤特性試験装置を掘削ヘッドの先端に取付けた状態を模式的に示す断面図、図2は、図1に示す地盤特性試験装置のシリンダからロッドを延出させた状態を拡大して示す一部断面図、図3は、図1に示す地盤特性試験装置のシリンダ内にロッドを収容した状態を拡大して示す一部断面図、図4は、図1に示す地盤特性試験装置の底面図、図5は、掘削時の地盤特性試験装置の状態を模式的に示す図、図6は、掘削後に地盤の特性試験を行う地盤特性試験装置の状態を模式的に示す図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。
【0028】
図1〜図6に示すように、本実施形態に係る地盤特性試験装置1は、掘削機の先端に配設されている掘削ヘッド100の掘削方向先端に配設されたジャッキ10と、ジャッキ10に接続された油圧ポンプ20と、ジャッキ10の変位量を測定する変位計30と、各種制御を行う制御装置40と、を備えている。
【0029】
掘削ヘッド100は、オーガーモータ(図示省略)により回転駆動されて地盤Gを掘削する掘削ロッド150の先端に配設されており、この掘削ヘッド100の掘削方向先端部の内側には、ジャッキ10が収容される収容部103が形成されている。掘削ロッド150の周面には螺旋状の羽根102が取り付けられており、本実施形態では、地盤Gの上方から見た場合に、右ネジ状の羽根102を有する掘削ロッド150が時計回りに回転(以下、「正回転」と記す)する際に、羽根102が共に正回転することにより推進力を得て掘削ロッド150は地盤Gを掘進するようになっている。
【0030】
ジャッキ10は、油圧ジャッキであり、シリンダ11と、シリンダ11内に配設され、シリンダ11の軸方向に対し移動可能なピストン12と、ピストン12の前記掘削方向先端に配設され、ピストン12の移動に応じてシリンダ11内を進退可移動するロッド13と、ロッド13の前記掘削方向先端に配設された円盤部材14と、を備えている。
【0031】
シリンダ11は、前記掘削方向先端側の外形が六角柱(図4参照)であり、前記掘削方向とは反対(以下、「反掘削方向」と記す)側の外形が円筒形を有し、内側が円筒形の中空部となっている。このシリンダ11は、掘削ヘッド100の先端部の内側に形成された収容部103内に固定されており、シリンダ11の外周面と、掘削ヘッド100の収容部103を画定する内壁との間には、シール部材71が配設されている。このシリンダ11の反掘削方向先端には、図1〜図3に示すように、シリンダ11の内部空間を画定する略円盤状の画定部15が配設されており、この画定部15とピストン12との間に形成される空間がピストン12に圧力を加えるための圧力室17となっている。
【0032】
画定部15には、油圧ポンプ20から供給される流体が流通する流体流路16が形成されており、この流体流路16は圧力室17に連通されている。そして、流体流路16を介して圧力室17内の流体量が変化することで、ピストン12がシリンダ11の軸方向に対し移動するようになっている。なお、シリンダ11の内壁と、画定部15の外周面との間にはシール部材74が配設されている。
【0033】
ロッド13の前記掘削方向先端には、ロッド13の径よりも大きい径を有する円盤部材14がネジ18によって固定されている。この円盤部材14の外周であって互いに対向した位置(すなわち、同一径上)には、シリンダ11内に円盤部材14が収容された際に、円盤部材14がシリンダ11に対し回転することを防止するための回転止めキー19a及び19bが配設されている。また、円盤部材14は、油圧ポンプ20からの圧力がピストン12にかけられていない際は、図3及び図5に示すように、シリンダ11内に収容されており、油圧ポンプ20からの圧力がピストン12にかけられた際(地盤Gの特性試験を行う際)に、図1、図2及び図6のようにシリンダ11から掘削方向に延出するようになっている。なお、シリンダ11の内壁と、ロッド13の外周面との間にはシール部材73が配設されている。
【0034】
油圧ポンプ20は、後に詳述する制御装置40に接続されており、制御装置40から出力された信号に基づいて、圧力室17に圧力をかけるようになっている。この油圧ポンプ20は、圧力室17に圧力をかけることにより、ピストン12を掘削方向に移動させ、ロッド13の先端に配設されている円盤部材14を地盤表面GSに当接させて(図6参照)地盤表面GSに荷重をかける荷重付加部として機能している。なお、油圧ポンプ20としては、一般的に使用されている油圧ポンプを使用することができる。
【0035】
変位計30は、油圧ポンプ20によってピストン12に圧力がかけられた際に、円盤部材14が地盤表面GSを押圧する(地盤に荷重をかける)ことにより、円盤部材14が荷重方向に移動した長さ(変位量)を測定する測定装置である。この変位計30は、後に詳述する制御装置40に接続されており、測定した変位量を制御装置40に出力するようになっている。
【0036】
制御装置40は、油圧ポンプ20の作動を制御する油圧ポンプ制御部と、変位計30の作動を制御する変位計制御部と、円盤部材14が地盤にかけた荷重と変位計30が測定した円盤部材14の変位量との関係から前記地盤の強度を取得する強度取得部と、各種データを記憶する記憶部等を有している。
【0037】
制御装置40の記憶部には、例えば、円盤部材14が地盤にかけた荷重と変位計30が測定した円盤部材14の変位量との関係から、地盤の強度特性を推定し、設計時の条件と比較して、当該敷地内での設計値としての妥当性を判断することができる。
【0038】
なお、地盤特性としては荷重−変位量関係等があり、沈下度(%)と荷重度q(kN/m2)との関係等から得ることができる。
ここで、
沈下度(%)=δ/D
荷重度q(kN/m2)=P/A
但し、δは、地盤の変位量(m)
Dは、円盤部材14の直径
Pは、ピストン12に作用する力(すなわち、ジャッキ10に作用する力)
Aは、円盤部材14の面積(πD2/4)
【0039】
次に、本実施形態に係る地盤特性試験装置1を用いた地盤特性試験方法について説明する。
【0040】
先ず、掘削機の図示しないオーガーモータにより掘削ロッド150を正回転させ、地表から地盤Gを掘削する。この時、ジャッキ10は、掘削ヘッド100の収容部103内に収容されている(図3及び図5参照)ため、掘削に影響を与えることはない。この掘削により、図5に示すように地盤Gに掘削孔Hが形成される。さらに深くまで掘削する場合は、掘削ロッド150に他の掘削ロッドを継ぎ足し、さらに深くまで掘削する。
【0041】
次に、掘削ロッド150の先端が所定深度にまで達した後に押圧工程に移る。またこの時、当該掘削ロッド150を深さ一定に維持しながら少なくとも1回転以上回転させ(空転)た後に押圧工程に移り試験を実施することも可能である。これにより、掘削ロッド150の先端で掘削孔Hの孔底となる地盤表面GSが周方向に平均化した状態となるように平滑化されるので、後の工程で円盤部材14が地盤表面GSを押圧する際に、地盤表面GS全体に対してより均一に作用させることが可能となる。同時に、掘削工程の影響による支持地盤の乱れについても評価することが可能となる。
【0042】
次に、制御装置40の油圧ポンプ制御部が油圧ポンプ20を作動させ、油圧ポンプ20が圧力室17に所定の圧力をかけるように制御する。油圧ポンプ20が圧力室17に圧力をかけると、この圧力によってピストン12が掘削方向に(地盤表面GSに向けて)移動する。このピストン12の移動に伴って、ロッド13がピストン12と共に掘削方向に移動してシリンダ11の掘削方向先端から延出し、ロッド13の掘削方向先端に配設されている円盤部材14が、図6に示すように、地盤表面GSを押圧して地盤表面GSに荷重をかける。この状態で、制御装置40が、圧力室17にかける圧力を増加させるように油圧ポンプ20を制御すると、地盤表面GSにかかる荷重が大きくなり、この荷重によって地盤表面GSが沈下する。
【0043】
これと同時に、制御装置40の変位計制御部が変位計30を作動させ、変位計30が地盤表面GSの沈下量、すなわち、円盤部材14がこの沈下に伴って移動した変位量を測定し、この測定値を制御装置40に送信する。このように、地盤表面GSの沈下量(円盤部材14の変位量)を変位計30により直接測定することができるため、変位量を正確に測定することができる。
【0044】
次に、制御装置40の強度取得部は、円盤部材14が地盤表面GSにかけた荷重と変位計30が測定した円盤部材14の変位量との関係を取得し、この取得した情報から当該地盤の地盤特性を取得する。
【0045】
このように、本実施形態に係る地盤特性試験装置1を用いた地盤特性試験方法は、掘削方向先端にジャッキ10が配設された掘削ヘッド100を地盤Gの所定位置まで貫入させるため、掘削により到達した地盤表面GSをジャッキ10の円盤部材14で直接押圧して荷重をかけることができる。したがって、地盤表面にかけられた荷重によって変位した地盤の変位量を高精度で正確に測定することができる。また、地盤の変位量を掘削の直後に測定することができるため、施工時の作業等による地盤の乱れによる影響を施工直後に調査することもできる。
【0046】
なお、本実施形態では、ピストン12と、ロッド13と、円盤部材14を有するジャッキ10を用いた場合について説明したが、これに限らず、本発明に係るジャッキは、掘削ヘッド100の掘削方向先端に配設されており、掘削ヘッド100から掘削方向に移動して地盤に当接させて荷重をかけることが可能であれば、他の構成を備えていてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、荷重付加部として油圧ポンプ20を用いた場合について説明したが、これに限らず、荷重付加部は、ジャッキ10を掘削ヘッド100から掘削方向に移動させて地盤に当接させ、当該地盤に荷重をかけることが可能な荷重(圧力)をジャッキ10に加えることが可能であれば、他の構成を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…地盤特性試験装置、10…ジャッキ、11…シリンダ、12…ピストン、13…ロッド、14…円盤部材、17…圧力室、20…油圧ポンプ、30…変位計、40…制御装置、100…掘削ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の特性を測定する試験方法であって、
掘削方向先端にジャッキが配設された掘削ヘッドを前記地盤の所定位置まで貫入させる貫入工程と、
前記貫入工程後、前記ジャッキを作動させ、当該ジャッキを前記貫入方向に移動させて前記地盤を押圧する押圧工程と、
前記押圧工程の際に前記ジャッキが前記地盤にかける荷重量と、当該荷重量によって前記ジャッキが移動した変位量と、を測定する測定工程と、
前記測定工程で測定した荷重量と前記ジャッキの変位量との関係から前記地盤の強度を取得する強度取得工程と、
を有する地盤特性試験方法。
【請求項2】
前記押圧工程は、油圧により前記ジャッキを作動させる請求項1記載の地盤特性試験方法。
【請求項3】
前記ジャッキは、前記掘削ヘッド内に挿入可能であると共に、当該掘削ヘッド内から延出可能なロッド部を有し、
前記貫入工程は、前記ロッド部が挿入された掘削ベッドを前記地盤の所定位置まで貫入させ、
前記押圧工程は、前記掘削ベッド内から延出させたロッド部により前記地盤を押圧する請求項1または請求項2記載の地盤特性試験方法。
【請求項4】
地盤の特性を測定する試験装置であって、
掘削ヘッドの掘削方向先端に配設されたジャッキと、
前記ジャッキを当該掘削ヘッドから前記掘削方向に移動して地盤に当接させ、当該地盤に荷重をかける荷重付加部と、
前記ジャッキが前記地盤にかけた荷重によって当該ジャッキが移動した変位量を測定する測定部と、
前記ジャッキが前記地盤にかけた荷重量と、前記測定部が測定した変位量との関係から前記地盤の強度を取得する強度取得部と、
を有する地盤特性試験装置。
【請求項5】
前記ジャッキは、油圧ジャッキであり、
前記荷重付加部は、前記油圧ジャッキを作動させる油圧ポンプを含む請求項4記載の地盤特性試験装置。
【請求項6】
前記ジャッキは、前記掘削ヘッド内に挿入可能であると共に、当該掘削ヘッド内から延出可能なロッド部を有し、
前記ロッド部は、前記地盤に前記掘削ベッドが貫入される際に、当該掘削ヘッド内に挿入され、前記地盤に当接し当該地盤に荷重をかける際に、当該掘削ヘッド内から延出される請求項4または請求項5記載の地盤特性試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−67560(P2012−67560A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215461(P2010−215461)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】