説明

地盤立体表示システム

【課題】空中電磁探査法で得た地表下の比抵抗情報の色分布を誰もが立体的に把握できる。
【解決手段】比抵抗コントラストデータF1を記憶したデータベース100と、地形立体画像データG1を記憶したデータベース110と、第1のカラーテーブル変換部101と、第2のカラーテーブル変換部105と、第1のHSV変換部108と、第1の合成部11とを備えて、地下所定深さにおける水分を含む部分、乾いた部分等を立体的に表示する。第1のカラーテーブル変換部101(ルックアップテーブル)は、データベース100の比抵抗コントラストデータF1(尾根:青、谷:赤)を座標値毎に読み出し、比抵抗値pが小さいほどより赤く(水を多く含む谷の部分)、比抵抗値pが大きいほどより青く(あまり含まない乾いた部分:例えば尾根)なるような色調変換をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中電磁探査法で得た地表下の比抵抗情報の色分布を誰でもが立体的に把握できるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプターで電磁センサーを曳航しながらこの電磁センサーで電磁波を地上に発射し、得られた受信信号から地盤の電気的性質を確認する方法(空中電磁探査法)がある。
【0003】
この方法は、電気を流しやすい地層及び地下水層の抽出能力に優れている方法であり、現地立ち入りが不要なこともあって推奨されている(図30参照)。
【0004】
空中電磁法の探査原理は、図31(a)、(b)に示すように磁気センサーの送信コイル(FL、FH)から電磁波を地上に放射させて一次磁場を発生させる。このとき、一次磁場の変化を打ち消すように地中に渦電流が誘起される。
【0005】
そして、渦電流による2次磁場が生じ、一次磁場に対する二次磁場の割合(Ha/Hp)を測定する。そして、比抵抗を解析する。
【0006】
なお、比抵抗は、「単位面積を通る電流に対する単位長な当たりの電気抵抗であり、断面積S、長さLの均質な導体の電気抵抗Rは、
R=ρL/S
で表され、このときのρを比抵抗と称している。
【0007】
一方、特許文献1には、電磁波を用いた空中地下構造探査方法が開示されている。特許文献1は、航空機で電磁探査用バードを調査対象エリアをカバーするように曳航し、上空の無数の位置で異なる複数種類の一次磁場を発生させ、それによる地下の電磁誘導作用を利用して調査対象エリアの二次磁場情報収集する。
【0008】
調査対象エリアの地形図を処理した地理情報に、取得した二次磁場情報を合わせて地下の三次元的な電気的特性分布に基づく三次元地質構造モデルを構築する。
【0009】
それに基づきコンピュータ上で稼動する三次元可視化手段により、地上及び地中を含む任意の位置から任意の方向に見える二次元もしくは三次元のイメージを、観察位置或いは観察方向に変化させて連続的に画面上に表示可能とする。
【0010】
また、特許文献1の段落0022には、空中電磁探査により取得した地下の3次元的なお電気的特性(比抵抗)の膨大なデータが基本情報となり、システムに入力される。
【0011】
不規則に分布する地形データ(XY座標)から規則正しく並ぶ格子点での標高値を数学的に計算し、地形面を生成する、と記載している。
【0012】
また、段落0023には、空中電磁探査法で取得した地球磁場強度情報による地表面の磁気的特性分布、・・・・等を用いる、と記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−294853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、磁気的分布の色付けは経験に基づいているのが殆どであり、判読者によって異なる。
【0015】
さらに、適切な色づけを行なったとしても、例えば平面図において水分を含む地形は赤、高比抵抗部分を青としたとしても、地表の凹凸が容易に視覚的に分らないので、地質学的に将来の予測を行なうには容易ではない。
【0016】
本発明は、空中電磁探査法で得た地表下の比抵抗情報の色分布を誰もが立体的に把握できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の地盤立体表示システムは、所定の地域に、空中から電磁波を発射して人工的に発生させた交流磁場が地中を透過する際に生ずる電磁誘導現象を計測して得たメッシュ毎の地表下の地盤の比抵抗値に、その比抵抗値の値が小さいほどに赤色を強調したRGB値を、値が大きいほどに青色を強調したRGB値が割り付けられ、これらを比抵抗画像データとして記憶した第1のデータベースと、
前記所定の地域における地表面の前記メッシュ間隔のDEMデータに基づいて求めた地上開度に、その地上開度が大きいほど明るい色を割り付けた地上開度画像と前記DEMデータに基づいて求めた地下開度に、その地下開度の値が大きいほど暗い色を割り付けた地下開度画像との差画像に、斜度が大きいほどに赤が強調された色値を割り付けた傾斜強調画像を合成した地形立体画像が前記メッシュ座標と該地形立体画像のRGB値とで記憶された第2のデータベースと、
前記第1のデータベースから前記メッシュ座標毎に比抵値を読み出し、比抵抗値が低いほどにシアンに強調したRGB値、比抵抗値が高いほどに紅色に強調したRGBに変換するカラーテーブル変換部と、
前記第2のデータベースから地形立体画像のメッシュ座標毎にRGB値を読み出し、前記RGB値を読み出す毎に、S(彩度)、H(色相)、V(明度)を制御してグレイスケール化し、これをグレイスケール化地形立体画像として出力する第1のHSV変換部と、
前記グレイスケール化地形立体画像と前記カラー変換テーブルからの画像データとを合成する手段と、
前記合成された画像データを画面に表示する手段と
を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、誰でもが地表下の地盤の状況を容易に立体的に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1の地盤立体表示システムの概略構成図である。
【図2】比抵抗コントラストデータを説明する説明図である。
【図3】比抵抗コントラストデータを説明する説明図である。
【図4】地形立体画像データG1を説明する説明図である。
【図5】カラーテーブル変換部(1)の説明図である。
【図6】カラーテーブル変換部(1)の説明図である。
【図7】カラーテーブル変換部(1)の説明図である。
【図8】カラーテーブル変換部(1)の概念を説明する説明図である。
【図9】画像データF2を説明する説明図である。
【図10】第2のカラーテーブル変換部105の変換処理の説明図である。
【図11】第2のカラーテーブル変換部105の変換処理の説明図である。
【図12】第2のカラーテーブル変換部105の変換処理の説明図である。
【図13】合成画像FGa(画像合成タイプ1ともいう)の説明図である。
【図14】実施の形態2の地盤立体表示システムの概略構成図である。
【図15】第3のカラーテーブル変換部130における変換処理の説明図である。
【図16】第3のカラーテーブル変換部130における変換処理の説明図である。
【図17】第3のカラーテーブル変換部130における変換処理の説明図である。
【図18】画像合成タイプ2を説明する説明図である。
【図19】淡い赤色の赤色立体画像G3を説明する説明図である。
【図20】画像合成タイプ1又は画像合成タイプ2の変換処理を説明する説明図である。
【図21】画像合成タイプ1又は画像合成タイプ2の変換処理を説明する説明図である。
【図22】画像合成タイプ1又は画像合成タイプ2の変換処理を説明する説明図である。
【図23】第2のカラーテーブル変換部のカラーテーブルを段階的に変更した場合の画面例を説明する説明図である。
【図24】画像合成タイプ3の説明図である。
【図25】図25に画像合成タイプ2の他の一例を説明する説明図である。
【図26】画像合成タイプ3の他の一例を説明する説明図である。
【図27】画像合成タイプ3の他の一例を説明する説明図である。
【図28】画像合成タイプ2の他の一例を説明する説明図である。
【図29】画像合成タイプ2の他の一例を説明する説明図である。
【図30】空中電磁探査法の説明図である。
【図31】空中電磁探査法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施の形態は、比抵抗データ(特願2010−091934)に基づく比抵抗コントラストデータF1と地形立体画像G1(特願2004−368549)とを用いる。
【0021】
(比抵抗コントラストデータ)
比抵抗コントラストデータF1は、以下のようにして得ている。
【0022】
ヘリコプタを用いた空中電磁探査法による電磁探査を行い、調査対象地盤における1次磁場に対する2次磁場の強さの割合を同相成分と離相成分とに分離する。
【0023】
そして、これらの分離データ全体について、ドリフトによるずれを補正し、この全体の補正を行った測定データを、飛行測線毎の測定データに分割し、それぞれレベリングを行い、各測定点における比抵抗の値を計算し、補間処理を行い、周波数毎にグリッド形式の比抵抗データを生成し、このグリッド形式の比抵抗データと、レベリングを行った飛行測線毎の測定データとからなる入力格子データを生成し、この入力格子データに対しグリッドレベリングを行って、2次元的にエラーを除外してレベリング済み格子データを求め、このレベリング済み格子データから、飛行測線毎の比抵抗データを生成する。これら一連の処理をグリッディングという。
【0024】
そして、生成した飛行測線毎の比抵抗データを基に、飛行測線間の比抵抗データを補間するとともに、再びグリッディングを行い、周波数毎にグリッド形式の比抵抗データを生成し、この生成した周波数毎のグリッド形式の比抵抗データと、数値標高モデルのデータとを組み合わせることにより、3次元比抵抗モデルを作成する。
【0025】
すなわち、生成した周波数毎のグリッド形式の比抵抗データと、DEMデータとを組み合わせることにより、任意の3次元位置の比抵抗値を取り出せる比抵抗モデルを作成する。
【0026】
そして、例えば、平面においては、メッシュの座標(X、Y:例えば1m、10m)と、比抵抗値範囲(以下単に比抵抗値pという)とを対応させた比抵抗コントラストデータF1を生成する。
【0027】
つまり、比抵抗値は測定の際に送信コイルからの出力と受信コイルでの計測された入力の比であり単位はppmレベルのΩmであり、測定周波数ごとに測定できる深さが違う。
【0028】
このまま地形図と重ねて検討すると最も知りたい地下水の飽和の程度による変化に対して地質の違いによる変化のオーダーが遥かに大きく地形と地下水の対応関係がわかりにくかった。そこで、全体的な値の変化傾向を引き去り局所的な増減を強調する処理を加えた。
【0029】
具体的には
10mメッシュ比抵抗値のデータに対してラプラシアン(二次微分)パラメータ※を求め地形の1m解像度にあわせて、スムージング処理を加えた。
【0030】
これが比抵抗コントラスト画像(比抵抗コントラストデータF1)である。
【0031】
なお、ラプラシアンは、元の値をp(i,j)とすると
-4*p(i,j)+p(i-1,j)+p(i,j-1)+p(i+1,j)+p(i-1,j)で求めることができる。
【0032】
(赤色立体画像データG1:地形立体画像データG1ともいう)
赤色立体画像データG1は、以下のようにして得ている。
【0033】
所定範囲の地表の標高値が付与された三次元のデジタルデータ(X、Y、Z)を読み込み、地表面を復元して各格子(各メッシュ:1m)の高さと座標とを第1のDEMデータとして生成し、これらの第1のDEMデータを連結する地表面の着目点の第1のDEMデ-タから複数方向毎に、一定範囲内までの最大頂点となる第2のDEMデータと水平線とがなす角度ベクトルをそれぞれ求めて平均化した地上開度を求める。
【0034】
そして、この地上開度の値の大きさほどに明るい色を割りあてた地上開度画像(Dp)を得て、一定範囲の第1のDEMデータ上に空気層を押し当てた立体を裏返した反転DEMデータの着目点の第1のDEMデータから複数方向毎に、一定範囲内までの最大頂点となる第3のDEMデータと水平線とがなす第2の角度ベクトルをそれぞれ求めて平均化して地下開度を求める。そして、この地下開度の値の大きさほどに暗い色を割りあてた地下開度画像(Dq)を得る。
【0035】
次に、地上開度画像(Dp)と地下開度画像(Dq)とを重み付け合成し、この値に応じて階調表現した第1の合成画像(Dh:第1の地形立体図画像G1aともいう)を得る。
【0036】
前述の地上開度画像(Dp)は、地上開度の値が40度から120度の範囲に収まる場合は、110度を最も明るく、50度を最も暗くした階調で第1のグレイスケールを前記地上開度画像に割りあてることで、地上開度が大きいほど色を明るくしている。
【0037】
また、地下開度の値が40度から120度の範囲に収まる場合は、110度を最も暗く、50度を最も明るくした階調で第2のグレイスケールを前記地下開度に割りあて、地下開度が大きいほど色を暗くしている。
【0038】
さらに、地上開度画像(Dp)は、地表面の第1のDEMデータの同じZ値を繋いだ等高線をメッシュ化し、着目点を有するメッシュ領域に、前記第1のグレイスケールに基づく色データを地上開度に割付けた地上開度画像(Dpa)を生成し、この地上開度画像(Dpa)の色階調を反転させて尾根が白くなるように調整する。
【0039】
さらに、地表面の第1のDEMデータの同じZ値を繋いだ等高線をメッシュ化し、前記着目点を有するメッシュ領域に、前記第2のグレイスケールに基づく色データを割付けた地上開度画像(Db)を生成し、この地上開度画像Dbの色が黒くなりすぎた場合は、トーンカーブを補正した度合いの色に補正する。
【0040】
一方、前記地表面をメッシュ化し、前記着目点のメッシュと隣接するメッシュとの平均傾斜を、それぞれのメッシュの前記第1のDEMデ-タに基づいて求めて平均化し、平均傾斜度として出力する。
【0041】
そして、地上開度画像(Dp)と地下開度画像(Dq)との差画像(Dra)を求め、この差画像(Dra)と同一の標高値を有する前記平均傾斜度を読み込み、この平均傾斜度毎に、その平均傾斜度の値が大きいほどに赤が強調された色を割り付けた傾斜強調画像(Dr)を得る。
【0042】
そして、前記地上開度画像(Dp)と地下開度画像(Dq)と前記傾斜強調画像(Dr)とを合成した第2の合成画像(Ki:第2の地形立体画像G1b)とする。
【0043】
前述の傾斜強調画像(Dr)は、斜度の値が0度から70度程度の範囲に収まる場合は、0度に最も明るく、50度以上を最も暗くした階調で前記第3のグレイスケールを前記差画像(Dra)に割りあてることで、傾斜の大きいほど色が黒くなる斜度画像(Dra)を得て、RGBカラーモード機能でRを強調している。
【0044】
さらに、記傾斜強調画像(Dr)と前記第1の合成部で合成して得た合成画像(Dh)と合成して、尾根が赤色で強調された立体画像(Ki:第3の地形立体画像G1cともいう)を得る。
【0045】
また、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成に特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0046】
<実施の形態1>
図1は本実施の形態の地盤立体表示システムの概略構成図である。図1に示すように本実施の形態の地盤表示システムは、比抵抗コントラストデータF1を記憶したデータベース100と、地形立体画像データG1を記憶したデータベース110と、第1のカラーテーブル変換部101と、第2のカラーテーブル変換部105と、第1のHSV変換部108と、第1の合成部11とを備えて、地下所定深さにおける水分を含む部分、乾いた部分等を立体的に表示する。
【0047】
前述のデータベース100に記憶されている比抵抗コントラストデータF1は、図2及び図3に示すように、メッシュの座標X,Yに比抵抗コントラスト値範囲(単に比抵抗値pという)とが対応させられて記憶されている。
【0048】
また、データベース110には、メッシュの座標X,Yに赤色立体画像データG1のRGB値と対応させている(図4参照)。なお、比抵抗コントラスト値は「1」、「2」・・・を称する。
【0049】
第1のカラーテーブル変換部101(ルックアップテーブル)は、データベース100の比抵抗コントラストデータF1(尾根:青、谷:赤)を座標値毎に読み出し、比抵抗値pが小さいほどより赤く(水を多く含む谷の部分)、比抵抗値pが大きいほどより青く(あまり含まない乾いた部分:例えば尾根)なるような色調変換をする。つまり、地下水位の高い部分を赤く表現する。
【0050】
具体的には、第1のカラーテーブル変換部101は、図5〜図7に示すように、比抵抗値pをRGB値に変換する。このテーブルを変換カラーテーブル(1)とも称している。
【0051】
すなわち、図8に示すように、第1のカラーテーブル変換部101は、図8に示すような変換を行なっている。
【0052】
この第1のカラーテーブル変換部101によって変換された画像データF2(水分を含む地層が赤:谷が赤、乾いた地層が青:尾根が青)をメモリ103に記憶する(図9参照)。図9においては等高線を重ねている例を示している。
【0053】
図9に示すように比抵抗値pが小さい方に赤なり、大きい方が青になる。このため、水を多く含む部分が赤色で、あまり水を含まない乾いた尾根等の部分が青色になる。
【0054】
一般に、青色は後退色であり、周囲よりもより低く見え、赤色は前進色で周囲よりもより高く見える。すなわち、尾根は比抵抗値pが高いので青色に表現されるため沈下しているように見え、谷では比抵抗値pが低いために赤色で表現されるので、周りよりも高いようにみえる。つまり、実際の地形との対応関係が反対で,尾根が青,谷が赤になっていることになる。
【0055】
第1のHSV変換部108は、データベース110から地形立体画像データG1のデータをメッシュの座標X,Y毎に読み出し、これをグレイスケール化してメモリ109に記憶する。グレイスケールにした赤色立体地図(グレイスケール化地形立体画像データG2)は尾根や山頂部は明るい白に近い灰色に表現される。
【0056】
本実施の形態では、S(彩度)を下げて、H(色相)をオレンジ色側に振り、V(明度)を上げることで灰色化する。
【0057】
前述のS(彩度)の処理を彩度低減処理と称し、H(色相)の処理を色相変換処理と称し、V(明度)の処理を明度増加処理とも称する。
【0058】
第2のカラーテーブル変換部105は、第1のカラーテーブル変換部101のメッシュ番号及び座標値並びに比抵抗コントラスト値範囲(総称してパラメータBという)において、比抵抗値pが低いところをシアン(水色)、比抵抗値が大きい部分を紅色(朱色)に変更する。
【0059】
つまり、第2のカラーテーブル変換部105は第1のカラーテーブル変換部101に設定されたパラメータBに対する彩度と明度の関係を維持したまま、色相について変更を行うテーブルである(変換カラーテーブル(2)又はパラメータBともいう)。これは,水色は後退色で,朱色は前進色であることを考慮したものである。このようにして得た画像データF3(谷をシアン、尾根を朱色)をメモリ106に記憶する。
【0060】
前述の第2のカラーテーブル変換部105の処理は、具体的には、図10〜図12に示している。
【0061】
ここで、シアン−朱色変換を採用した理由について述べる。
【0062】
この第2のカラーテーブル変換部105は、単純に画像データF1(尾根:青、谷:赤)を反転させたものではない。
【0063】
単純に画像データF1(尾根:青、谷:赤)を反転させた場合、グレイスケールにした赤色立体地図は谷や窪地の部分が暗い灰色に表現される。
【0064】
ここに青色のBlueの彩度の高い色が重なると、視覚の特性から、地形がほとんど読み取れなくなる。
【0065】
一方、グレイスケールにした赤色立体地図は尾根や山頂部は明るい白に近い灰色に表現される。このような部分に、赤の彩度が高い色が重なることになる。その結果、視覚の特性から、地形がほとんど読み取れなくなる。その点を考慮して、比抵抗値が小さい場合には、シアン色が次第に強調されるように調整し、比抵抗値が大きい場合に、朱色に次第に強調されるように調整する。
【0066】
従って、この色の場合、彩度が最大であっても、明度は確保されているのでグレイスケール化した赤色立体地図による地形を認識することができることになる。なお、色相環でみるとシアン-朱色の関係は、ほぼ補色関係にある、反対側の色に近い。補色関係にある場合に限って、高い値と低い値が狭い範囲で繰り返した場合に、離れた距離でみると、無彩色に見えるはずである。
【0067】
ただし、厳密に補色の値になっていないのは、ディスプレイ上での立体感を考慮して、調整する。
【0068】
第1の合成部115は、メモリ109のグレイスケール化した赤色立体画像G2とメモリ106のシアン−朱色変換した画像データF3(谷をシアン、尾根を朱色)とを重ねた合成画像FGa(画像合成タイプ1ともいう)をメモリ120に記憶する(図13参照)。
【0069】
出力部160は、メモリ120のFGa(画像合成タイプ1)を表示部155に出力して表示する。この出力部160は、設定により各メモリのいずれかの画像データを画面に表示する。
【0070】
この結果、図13に示すように大部分の尾根の部分が朱色,地すべりの部分がシアン色となり地形と含水との関係が大変よくわかる。尾根でもシアン色の部分や谷でも水色ではないところもあり様々な情報が読み取れる。
【0071】
<実施の形態2>
しかしながら、グレイスケール化した赤色立体地図とシアン−朱色変換した画像データF3(谷をシアン、尾根を朱色)を重ねた合成画像FGa(画像合成タイプ1)はオリジナルの赤色立体地図と比較すると立体感が弱い。
【0072】
そこで、第3のカラーテーブル変換部及び第2のHSV変換部等を新たに備える。
【0073】
図14は実施の形態2の概略構成図である。図14に示すように、実施の形態1の構成要件の他に、第2のHSV変換部140と、第3のカラーテーブル変換部130と、第2の合成部158と、シアン色除去部151等を備えている。
【0074】
第2のHSV変換部140は、データベースの赤色立体地図を読み出し、急斜面ほど赤いという性質を残しながら色相を本来の赤からオレンジに変化させると同時に彩度をやや落とす変換である(図19参照;画像データG3)。但し、谷の緑がかったシアン色に調整してある。
【0075】
すなわち、Sを0°(赤)から10°(朱色)に、彩度を10%減少、明度を10%増加させた。
【0076】
第3のカラーテーブル変換部130は、メモリ100の画像データF1(尾根:青、谷:赤)をメッシュの座標毎(Xi,Yi)に読み込み、比抵抗値pが低くなるに従って青色が強く、比抵抗値が高くなるに従ってマゼンタに変換する。すなわち、シアン色を青に、朱色をマゼンタに変換する(画像データF4)。
【0077】
第3のカラーテーブル変換部130における変換処理である比抵抗コントラストと色コードとの関係を図15、図16、図17に示している。これを変換カラーテーブル(3)ともいう。
【0078】
第2の合成部153は、メモリ141の淡い赤色の赤色立体画像G3(画像データG3)と、メモリ131の画像データF4とを重ね合わせ、これを重ね合わせ画像Mi(画像合成タイプ2ともいう)としてメモリ150に記憶する(図18参照)。
【0079】
前述のMiを得るために、赤色立体地図が谷の部分が暗くなりすぎるのを避けるためにシアンが多く含む個所はシアン色除去部151がシアン色成分を除去する。
【0080】
これによって、地下開度の値が90°以上の時にシアンを含み、数値が大きいほどシアンが濃くなる。
【0081】
これは,パラメータBの値が低い場合,青色になり,位置的に谷と重なりパラメータBの読み取りに景況が出るため青色彩度低減処理である。
【0082】
従って、画像合成タイプ2は画像合成タイプ1と比較して,地形がより立体的に見やすくなっている。
【0083】
しかし,パラメータBの値を直読できるかという点では画像合成タイプ1の画像のほうが見やすい場合もある。
【0084】
このような場合には、出力部160に合成画像タイプ1の選択を設定するか合成画像タイプ2の選択を設定して、いずれかを画面に表示させる。
【0085】
すなわち、図20〜22に示すように、カラーテーブル変換(1)による比抵抗値の色相を、カラーテーブル変換(2)またはカラーテーブル変換(3)のように変換して、画像合成タイプ1又は画像合成タイプ2を得ている。
【0086】
<実施の形態3>
これまでのカラーテーブルは、いずれもグラデーションで表現されている。グラデーションで表現のために,あらかじめ閾値を決めることなく地形とパラメータの関係を相対的に扱うことができる。
【0087】
しかし,離れた2点間でのパラメータBの値を比較することは困難であった。
【0088】
このため、第2のカラーテーブル変換部のカラーテーブルを段階的に変更したもので全体で7階調にした。パラメータBの変化の様子が等値線的にも読み取れる(図23参照)。
【0089】
これと、画像Miとを合成すると(画像合成タイプ3ともいう:図24参照)、地形の水分を含む範囲が等高線的に分ると共に、地形の立体感が分りやすい。
【0090】
また、図25に画像合成タイプ2の一例を示す。この図25に示すように、赤色立体地図の赤色部(急斜面)、暗部(谷や沢部)と比抵抗コントラスト図の色相を合わせることにより沢部などに低比抵抗コントラスト図が重なり、水みちなどが地形表現と整合し、地形と比抵抗コントラストの分布が分りやすくなった。
【0091】
また、赤色立体地図を重ねることにより、急峻な尾根でかつ風化が進行している(比抵抗が高い)個所を容易に識別することが可能となった。
【0092】
さらに、同じ地滑り地形でも地下水が高い、あるいは含水比が高い崩積土からなる地滑りブロックを認識でき、危険判定が可能となった。
【0093】
なお、画像合成タイプ3の一例を図26及び図27に示す。図26は等高線を重ね表示している。図において、青い個を含む範囲であり、この個所は比抵抗が周囲に比べて低く、地下水位が高いが飽和高い崩積度が分布と推定される。は下方にガリーが発達し、土砂流出の可能性が高い。
【0094】
赤い個所は、比抵抗が高く、かつ近い水位が低いとされる。(2)はガリーが発達しており、落石、崩壊に注意が必要である。
【0095】
さらに、画像合成タイプ2の一例を図28及び図29に示す。図28において青い個所は、比抵抗が周囲に比較して低く、地下水が高いか含水比の高い崩積土が分布していると推定される。なお、現地調査においてこの青い部分において湿地が確認された。図28においては鳥瞰図で表している。
【0096】
そして、図28において、(1)の個所は下方にガリーが発達し、土砂流出の可能性が高いことが分る。
【0097】
また、赤い個所は、比抵抗が高く、かつ地下水位が低いあるいは風化が進行し、隙間が推定される。(2)の個所は現場においても緩みが確認され、落石、崩壊が推定される。
【0098】
従って、現地に立ち入ることなく、地滑り、崩壊、断層などの災害要因を立体的に把握できる。
【0099】
なお、上記の各画像データは、印刷若しくは外部にコンピュータに出力してもよい。
【0100】
また、本実施の形態の地盤状況立体可視化表示装置は、プロセッサ、マイクロコンピュータ、ロジック、レジスタ等の適宜な組み合わせからなる中央情報処理装置(CPU)と、この中央情報処理装置に必要な制御・操作情報を入力するキーボード(KB)、マウス、対話型ソフトスイッチ、外部通信チャネル等を含む情報入力部と、ディスプレイ、データベース、メモリ等からなり、ロム(ROM)等には、前述の第1、第2、第3のカラーテーブル変換部、第1及び第2の合成部、第1及び第2のHSV変換部、シアン色除去部等として機能させるプログラムを記憶している。
【符号の説明】
【0101】
100 データベース
110 データベース
101 第1のカラーテーブル変換部
105 第2のカラーテーブル変換部
108 第1のHSV変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地域に、空中から電磁波を発射して人工的に発生させた交流磁場が地中を透過する際に生ずる電磁誘導現象を計測して得たメッシュ毎の地表下の地盤の比抵抗値に、その比抵抗値の値が小さいほどに赤色を強調したRGB値を、値が大きいほどに青色を強調したRGB値が割り付けられ、これらを比抵抗画像データとして記憶した第1のデータベースと、
前記所定の地域における地表面の前記メッシュ間隔のDEMデータに基づいて求めた地上開度に、その地上開度が大きいほど明るい色を割り付けた地上開度画像と前記DEMデータに基づいて求めた地下開度に、その地下開度の値が大きいほど暗い色を割り付けた地下開度画像との差画像に、斜度が大きいほどに赤が強調された色値を割り付けた傾斜強調画像を合成した地形立体画像が前記メッシュ座標と該地形立体画像のRGB値とで記憶された第2のデータベースと、
前記第1のデータベースから前記メッシュ座標毎に比抵値を読み出し、比抵抗値が低いほどにシアンに強調したRGB値、比抵抗値が高いほどに紅色に強調したRGBに変換するカラーテーブル変換部と、
前記第2のデータベースから地形立体画像のメッシュ座標毎にRGB値を読み出し、前記RGB値を読み出す毎に、S(彩度)、H(色相)、V(明度)を制御してグレイスケール化し、これをグレイスケール化地形立体画像として出力する第1のHSV変換部と、
前記グレイスケール化地形立体画像と前記カラー変換テーブルからの画像データとを合成する手段と、
前記合成された画像データを画面に表示する手段と
を有することを特徴とする地盤立体表示システム。
【請求項2】
前記第1のデータベースから前記メッシュ座標毎に比抵値を読み出し、比抵抗値が低いほどに青色に強調したRGB値、比抵抗値が高いほどにマゼンタに強調したRGBに変換するカラーテーブル変換部と、
第2のデータベースから地形立体画像のメッシュ座標毎にRGB値を読み出し、急斜面ほど赤いという性質を残しながら色相を赤からオレンジに変化させると共に彩度をやや落とす変換を行い、これを淡い赤色の地形立体画像として出力する第2のHSV変換部と、
前記淡い赤色の地形立体画像と前記カラーテーブル変換部からの画像データとを合成した合成画像を出力する第2の合成部と、
前記第2の合成部からの合成画像を画面に表示する手段と
を有することを特徴とする請求項1記載の地盤立体表示システム。
【請求項3】
前記淡い赤色の地形立体画像のデータを前記メッシュ座標毎に読み出して、一定値以上のシアン値を除去するシアン色除去部と
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の地盤立体表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−53191(P2012−53191A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194482(P2010−194482)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(591074161)アジア航測株式会社 (48)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(501497264)西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社 (17)
【出願人】(396007890)大日本コンサルタント株式会社 (9)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】