説明

地磁気センサ

【課題】温度が変化しても磁性体コアが磁気飽和するまでの時間が変化しないようにし、同期検波の位相ずれによる出力誤差を低減する。
【解決手段】磁性体コア11に励磁コイル12と検出コイル13が巻回されたセンサ部10を有し、検出コイル13より得られる検出出力から直流成分を除去した出力を励磁コイル12を励磁する励磁周波数の2倍の周波数信号により同期検波し、検波後の出力を積分して検出コイル13に負帰還する地磁気センサにおいて、励磁周波数信号と励磁周波数の2倍の周波数信号とその2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号を出力する発振回路70と、前記直流成分を除去した出力と励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号の位相差を検出して出力する位相差検出部50と、位相差検出部50の出力を積分する積分器60と、積分器60の出力により励磁コイル12に流れる励磁電流を制御する励磁制御部33を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフラックスゲート型の地磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
図11は従来から用いられているフラックスゲート型の地磁気センサの構成例を示したものであり、パーマロイ等の高透磁率材料からなる円環形状の磁性体コア11に励磁コイル12及び検出コイル13が巻回されてフラックスゲート型のセンサ部10が構成されている。
【0003】
発振回路20は励磁周波数fの2倍の周波数信号(2f信号)を出力する発振器21と分周器22とよりなり、発振器21から出力される励磁周波数fの2倍の周波数信号は分周器22に入力されて励磁周波数信号となる。励磁周波数信号は励磁駆動部31に入力される。
【0004】
励磁コイル12には励磁駆動部31から周波数fの図12に示したような矩形波状の励磁電圧が印加され、励磁電圧の印加によって励磁コイル12に励磁電流が供給される。励磁電流の供給によって励磁コイル12に起磁力が発生し、発生した磁束が検出コイル13を鎖交する。励磁電流の値は、磁性体コア11を磁気飽和させるのに十分な大きさに設定され、これにより磁性体コア11は周期的に磁気飽和を繰り返す。図11中、32は励磁コイル12に流れる励磁電流を制限する電流制限抵抗体を示す。
【0005】
磁性体コア11が周期的に磁気飽和を繰り返すことで励磁電流は図12に示したような波形となる。ここで、励磁電流波形中、(c),(f)の部分が磁気飽和した部分であり、急激に励磁電流が増加している。
【0006】
図13(1),(2)は図11に矢印Mで示した方向の外部磁界成分(地磁気成分)が0の場合とある場合の、検出コイル13の動作点P,Pで誘起される電圧、それらの合成及び参照信号と参照信号で同期検波後の検出コイル13の検出出力をそれぞれ示したものであり、図13に示したように検出コイル13からの出力は磁束(励磁電流)が急激に変化する(a),(c),(e),(f)で出力される。
【0007】
検出コイル13より得られる検出出力は図11に示したように直流遮断器41に入力され、直流成分が除去される。直流成分が除去された検出出力は増幅器42に入力されて増幅され、同期検波器43に入力される。同期検波器43は増幅器42から入力された検出出力を、発振器21が出力する励磁周波数fの2倍の周波数信号(2f信号)を参照信号として同期検波する。検波後の出力は積分器44で積分され、積分された出力は検出コイル13に入力され、外部磁界(地磁気)を打ち消す方向の磁束を発生する。このように、負帰還が構成されている。
【0008】
検出コイル13には抵抗体45が接続されており、積分器44からの負帰還により検出コイル13に流れる電流は電圧に変換され、変換された電圧はローパスフィルタ46により不要な周波数成分が除去されて出力電圧となる。
【0009】
このように動作する地磁気センサは例えば油田掘削等の現場で油田掘削機に搭載されて使用される。油田掘削においては地中深く掘削することから、地磁気センサは地中深くで高温環境下にさらされることになる。特許文献1にはこのような高温環境下でも精度良く地磁気を検出することができるようにした地磁気センサの構成(信号処理回路)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−92381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、例えば油田掘削等において使用される地磁気センサには、従来、使用温度条件として、−40℃〜+150℃の温度範囲での動作が求められていたが、近年、この要求温度範囲が広がり、−40℃〜+200℃の温度範囲での動作が求められるようになってきた。
【0012】
このように温度範囲が広く、温度変化が大きい動作条件では、センサ部10を構成する磁性体コア11に使用しているパーマロイ等の高透磁率材料の磁気特性の変化や励磁コイル12等の抵抗変化は無視することはできず、大きな出力誤差を生じる要因となる。
【0013】
例えば、磁性体コア11の比透磁率が変化すると、励磁コイル12のインダクタンスが変化する。励磁コイル12のインダクタンスが変化すると、励磁電流が変化するため、矩形波の励磁電圧が立ち上がってから磁気飽和するまでの時間が変化する。同期検波は励磁周波数fの2倍の周波数信号で行うため、磁気飽和するまでの時間が変化すると、同期検波する位相がずれ、出力誤差が大きくなる。
【0014】
また、磁性体コア11の飽和磁束密度が変化しても、同様に磁気飽和するまでの時間が変化するため、同期検波の位相がずれ、出力誤差が大きくなる。
【0015】
さらに、励磁コイル12の抵抗は温度が高くなると大きくなる。抵抗が大きくなると励磁電流が減少することにより磁気飽和するまでの時間が長くなる。よって、励磁コイル12の抵抗変化によっても同期検波の位相がずれ、出力誤差が大きくなる。
【0016】
図14はこのように磁気飽和するまでの時間が変化することによって生じる同期検波の位相ずれを示したものであり、グラフは励磁電圧と検出コイル13の出力と同期検波の参照信号(2f信号)と同期検波後の出力を示している。磁気飽和するまでの時間が変化し、検出コイル出力が点線で示したように変化すると、同期検波の位相がずれ、同期検波後の出力はグラフ最下段に示したようになる。
【0017】
前述した特許文献1に記載されている構成は広い温度範囲においてスケールファクタ変動(感度変動)を補償することができるものであって、スケールファクタ変動に基づく誤差を低減することはできるものの、上述した同期検波の位相ずれに基づく出力誤差には対応することができず、つまり位相ずれに基づく出力誤差を低減することはできないものとなっていた。
【0018】
この発明の目的はこのような状況に鑑み、広い温度範囲において磁性体コアの磁気飽和するまでの時間を一定とし、よって温度変化に伴う同期検波の位相ずれを解消し、広い温度範囲で出力誤差が小さく、高精度に地磁気を測定することができる地磁気センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1の発明によれば、磁性体コアに励磁コイル及び検出コイルが巻回されてなるフラックスゲート型のセンサ部を有し、検出コイルより得られる検出出力から直流成分を除去した出力を、励磁コイルを励磁する励磁周波数の2倍の周波数信号により同期検波し、検波後の出力を積分して検出コイルに負帰還する構成とされている地磁気センサは、励磁周波数信号と励磁周波数の2倍の周波数信号と励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号を出力する発振回路と、前記直流成分を除去した出力と励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号との位相差を検出して出力する位相差検出部と、位相差検出部の出力を積分する積分器と、積分器の出力により励磁コイルに流れる励磁電流を制御する励磁制御部とを具備するものとされる。
【0020】
請求項2の発明によれば、磁性体コアに励磁コイル及び検出コイルが巻回されてなるフラックスゲート型のセンサ部を有し、検出コイルより得られる検出出力から直流成分を除去した出力を、励磁コイルを励磁する励磁周波数の2倍の周波数信号により同期検波し、検波後の出力を積分して検出コイルに負帰還する構成とされている地磁気センサは、励磁周波数信号と励磁周波数の2倍の周波数信号と励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号を出力する発振回路と、前記直流成分を除去した出力と励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号との位相差を検出して出力する位相差検出部と、位相差検出部の出力を積分する積分器と、積分器の出力により励磁コイルに印加する励磁電圧を制御する励磁制御部とを具備するものとされる。
【0021】
請求項3の発明によれば、磁性体コアに励磁コイル及び検出コイルが巻回されてなるフラックスゲート型のセンサ部を有し、検出コイルより得られる検出出力から直流成分を除去した出力を、励磁コイルを励磁する励磁周波数の2倍の周波数信号により同期検波し、検波後の出力を積分して検出コイルに負帰還する構成とされている地磁気センサは、励磁周波数信号と励磁周波数の2倍の周波数信号と励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号を出力する発振回路と、励磁コイルに流れる励磁電流と励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号との位相差を検出して出力する位相差検出部と、位相差検出部の出力を積分する積分器と、積分器の出力により励磁コイルに流れる励磁電流を制御する励磁制御部とを具備するものとされる。
【0022】
請求項4の発明によれば、磁性体コアに励磁コイル及び検出コイルが巻回されてなるフラックスゲート型のセンサ部を有し、検出コイルより得られる検出出力から直流成分を除去した出力を、励磁コイルを励磁する励磁周波数の2倍の周波数信号により同期検波し、検波後の出力を積分して検出コイルに負帰還する構成とされている地磁気センサは、励磁周波数信号と励磁周波数の2倍の周波数信号と励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号を出力する発振回路と、励磁コイルに流れる励磁電流と励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号との位相差を検出して出力する位相差検出部と、位相差検出部の出力を積分する積分器と、積分器の出力により励磁コイルに印加する励磁電圧を制御する励磁制御部とを具備するものとされる。
【0023】
請求項5の発明では請求項1又は2の発明において、位相差検出部は、前記直流成分を除去した出力を積分増幅する反転型積分増幅器と、反転型積分増幅器の出力と励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号とを掛け算して前記位相差を求める掛け算器とからなる。
【0024】
請求項6の発明では請求項3又は4の発明において、位相差検出部は、励磁コイルに接続されている電流制限抵抗体の両端の電圧を差動増幅する差動増幅器と、差動増幅器の出力を微分する微分器と、微分器の出力を積分増幅する積分増幅器と、積分増幅器の出力と励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号とを掛け算して前記位相差を求める掛け算器とからなる。
【0025】
請求項7の発明では請求項1又は3の発明において、励磁制御部は励磁コイルに接続されている電流制限抵抗体の両端に接続され、ゲートに前記積分器の出力が入力されるFETによって構成される。
【0026】
請求項8の発明では請求項2又は4の発明において、励磁制御部は、予め定められた基準値を出力する基準値出力部と、前記積分器の出力と前記基準値とを加算する加算器と、加算器の出力と励磁周波数信号とを掛け算して前記励磁電圧を生成する掛け算器とからなる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、温度が変化しても磁性体コアが磁気飽和するまでの時間は変化せず、一定とすることができ、よって温度変化に伴うセンサ部の磁気特性の変化やコイル抵抗の変化により同期検波の位相がずれるといった問題を解消することができ、温度変化に起因する出力誤差が小さく、広い温度範囲で精度良く地磁気を測定することができる地磁気センサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明による地磁気センサの第1の実施例の構成を示すブロック図。
【図2】図1における位相差検出部及び励磁回路の詳細を示すブロック図。
【図3】図2における各部の信号波形を示すグラフ。
【図4】図3に示した信号波形に対し、磁気飽和時間が変化した場合の信号波形を示すグラフ。
【図5】この発明による地磁気センサの第2の実施例の要部構成を示すブロック図。
【図6】この発明による地磁気センサの第3の実施例の構成を示すブロック図。
【図7】図6における位相差検出部及び励磁回路の詳細を示すブロック図。
【図8】図7における各部の信号波形を示すグラフ。
【図9】図8に示した信号波形に対し、磁気飽和時間が変化した場合の信号波形を示すグラフ。
【図10】この発明による地磁気センサの第4の実施例の要部構成を示すブロック図。
【図11】地磁気センサの従来構成例を示すブロック図。
【図12】励磁電圧及び励磁電流の波形を示すグラフ。
【図13】検出コイルの検出電圧の各段階での波形を示すグラフ、(1)は外部磁界成分が0の場合、(2)は外部磁界成分がある場合。
【図14】磁気飽和時間が変化した場合の同期検波後の出力の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【実施例1】
【0030】
図1はこの発明による地磁気センサの実施例1の構成を示したものである。図11に示した従来の地磁気センサと対応する部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0031】
この例では図11に示した従来の地磁気センサの構成に加え、位相差検出部50と積分器60と励磁制御部33(図2参照)を具備するものとされ、また図11に示した従来の地磁気センサの発振回路20と異なる構成の発振回路70を有するものとされる。図2は位相差検出部50及び励磁制御部33を備えた励磁回路30の詳細を示したものである。
【0032】
発振回路70は発振器71と反転器72と分周器73〜75とによって構成され、発振器71は励磁周波数fの4倍の周波数信号(4f信号)を出力するものとされる。励磁周波数fの4倍の周波数信号は分周器73に入力されて励磁周波数fの2倍の周波数信号(2f信号)となり、さらに分周器74に入力されて励磁周波数信号となる。また、発振器71から出力される励磁周波数fの4倍の周波数信号(4f信号)は反転器72に入力されて反転信号(4fI信号(但し、Iは反転を表す))となり、さらに分周器75に入力されて2fI信号となる。従って、2f信号と2fI信号は位相差が90度ある。
【0033】
位相差検出部50は図2に示したように反転型積分増幅器51と掛け算器52で構成されている。反転型積分増幅器51には直流遮断器41の出力が入力され、直流遮断器41で直流成分が除去された検出コイル13の検出出力は積分器の時定数に依存した台形波となる。反転型積分増幅器51の出力は掛け算器52に入力される。掛け算器52は反転型積分増幅器51の出力と、分周器75から入力される励磁周波数fの2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号(2fI信号)とを掛け算する。
【0034】
図3は上述した位相差検出部50における各部の信号波形を示したものであり、上から順に、直流遮断器出力、2fI信号、反転型積分増幅器出力、掛け算器出力を示している。
【0035】
掛け算器52の出力は積分器60に入力される。図3に示すように、磁性体コア11の磁気飽和する時間が適切な時、即ち2fI信号と直流遮断器出力の位相差が90度である時、積分器60の出力は0となる。
【0036】
励磁回路30は励磁駆動部31と電流制限抵抗体32と励磁制御部33とによって構成されており、励磁制御部33は電流制限抵抗体32の両端に接続され、ゲートに積分器60の出力が入力されるFET33aによって構成されている。FET33aは例えばJFET(Junction FET)とされる。FET33aのゲート入力が0の時は例えば数百Ωのような一定の抵抗値となる。
【0037】
温度変化に伴うセンサ部10の磁気特性の変化やコイル抵抗の変化により磁気飽和するまでの時間が変化すると、前述した図14に示すように、検出コイル出力のインパルスが発生する時間が変化する。例えば、磁気飽和するまでの時間が短くなると、図14に示したように検出コイル出力のインパルスが発生する時間が早くなる。
【0038】
検出コイル出力の位相が進んだ場合は、直流遮断器出力は同じように位相が進む。図4はこの場合の直流遮断器出力、反転型積分増幅器出力、掛け算器出力等を図3と同様に示したものであり、掛け算器出力は図4に示したような波形となるため、この掛け算器出力を積分すると負の電圧となる。従って、FET33aのゲート入力は負の電圧となるため、FET抵抗値は大きくなり、これにより励磁コイル12に流れる励磁電流は小さくなる。従って、磁気飽和するまでの時間は長くなり、検出コイル出力の位相が遅れるように、つまりインパルスが発生する時間が遅れるように制御される。
【0039】
一方、磁気飽和するまでの時間が長くなった場合は上記の逆となり、掛け算器出力を積分すると正の電圧となり、FET33aのゲート入力は正の電圧となってFET33aの抵抗値は小さくなるため、励磁コイル12に流れる励磁電流は大きくなる。従って、磁気飽和するまでの時間は短くなり、検出コイル出力のインパルスが発生する時間が早くなるように制御される。
【0040】
以上説明したように、この例によれば、磁性体コア11の磁気飽和する時間(タイミング)と同期検波の参照信号との位相差を検出する位相差検出部50と、その位相差を積分する積分器60と、積分器60の出力により励磁電流を制御して磁気飽和を制御する励磁制御部33とを持つため、磁気飽和するまでの時間を常に一定にすることができ、よって同期検波の位相がずれるといった問題は発生せず、温度変化に対して出力誤差が小さく、例えば−40℃〜+200℃といった広い温度範囲で精度良く地磁気を測定することができる地磁気センサを得ることができる。
【実施例2】
【0041】
実施例2は実施例1において積分器60の出力により励磁電流を制御する構成となっていたのに対し、積分器60の出力によって励磁電圧を制御する構成としたものであり、図5に実施例2の要部構成を示す。
【0042】
この例では励磁回路30’は励磁駆動部31と電流制限抵抗体32と励磁制御部35とによって構成されており、実施例1と励磁制御部の構成が異なるものとなっている。
【0043】
励磁制御部35は基準値出力部36と加算器37と掛け算器38とによって構成されており、基準値出力部36は予め定められた基準値を出力する。
【0044】
積分器60の出力は加算器37に入力され、基準値と加算される。検出コイル出力のインパルスが発生する時間が早くなった場合は実施例1と同様に積分器出力は負の電圧となり、基準値と加算されるので、加算器出力は基準値より小さくなる。加算器出力は次の掛け算器38で励磁周波数信号と掛け合わされ、これにより励磁電圧が生成される。励磁電圧は基準値より小さくなるため、励磁コイル12に流れる励磁電流は小さくなり、これによりインパルスが発生する時間が遅れるように制御される。
【0045】
検出コイル出力のインパルスが発生する時間が遅くなった場合は加算器出力及び励磁電圧は基準値より大きくなるため、インパルスが発生する時間が早くなるように制御される。この実施例2においても実施例1と同様、磁気飽和するまでの時間を常に一定にすることができる。
【実施例3】
【0046】
次に、実施例3の構成を説明する。図6は実施例3の構成を示したものであり、この例では実施例1と位相差検出部及び発振回路の構成が異なるものとされる。図7は図6における位相差検出部80及び励磁回路30の詳細を示したものである。
【0047】
発振回路90はこの例では発振器91と反転器92と分周器93,94によって構成され、発振器91は励磁周波数fの2倍の周波数信号(2f信号)を出力する。励磁周波数fの2倍の周波数信号は分周器93に入力されて励磁周波数信号となる。また、発振器91から出力される励磁周波数fの2倍の周波数信号(2f信号)は反転器92に入力されて反転信号(2fI信号)となり、さらに分周器94に入力されてfI信号となる。励磁周波数信号(f信号)とfI信号とは90度の位相差を持つ。
【0048】
位相差検出部80は図7に示したように差動増幅器81と微分器82と積分増幅器83と掛け算器84とによって構成されている。励磁制御部33は実施例1と同様、FET33aによって構成されている。
【0049】
差動増幅器81は励磁コイル12に接続されている電流制限抵抗体32の両端の電圧を差動増幅するものとされ、電流制限抵抗体32の両端に図7に示したように接続されている。差動増幅器81の入力は励磁コイル12に流れる励磁電流を電圧に変換したものとなる。電流(電圧)が時間に対して急激に変化する点が磁気飽和したことを示しており、差動増幅器81の出力は図8に示したような波形となる。
【0050】
差動増幅器81の出力は微分器82に入力され、図8に示したように磁気飽和した点でインパルスに近い波形が微分器82から出力される。微分器出力は積分増幅器83に入力され、積分増幅器83は微分器出力を積分増幅する。積分増幅器83の出力は図8に示したようになり、掛け算器84に入力される。掛け算器84は積分増幅器出力と、分周器94から入力される励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号(fI信号)とを掛け算する。掛け算器84の出力は図8に示したようになり、積分器60に入力される。
【0051】
図8に示すように、磁性体コア11の磁気飽和する時間が適切な時、即ちfI信号の立ち上がり、立ち下がりと積分増幅器出力の位相差がない場合、積分器60の出力は0となる。積分器60の出力はFET33aのゲートに入力されており、実施例1と同様にFET33aのインピーダンスは変化しない。
【0052】
これに対し、図9に示すように磁気飽和するまでの時間が短くなった場合、掛け算器出力は負の値が大きくなり、よって実施例1と同様にFET33aが制御され、磁気飽和するまでの時間が長くなるように励磁電流が制御される。
【実施例4】
【0053】
実施例4は実施例3において積分器60の出力により励磁電流を制御する構成となっていたのに対し、積分器60の出力によって励磁電圧を制御する構成としたものであり、図10に実施例4の要部構成を示す。
【0054】
図10に示すように位相差検出部80は実施例3と同じであり、励磁制御部35は実施例2と同じである。
【0055】
図8に示したように磁気飽和する時間が適切な場合、積分器60の出力は0となる。積分器出力は基準値と加算されるので、加算器37の出力は基準値となり、次の掛け算器38では分周器93から入力される励磁周波数信号と掛け合わされる。これが励磁電圧となる。
【0056】
一方、磁気飽和するまでの時間が短くなった場合、掛け算器84の出力は負の値が大きくなり、積分器60の出力は負の値となる。積分器出力は基準値と加算されるので加算器37の出力は基準値より小さくなる。次の掛け算器38では励磁周波数信号と掛け合わされ、励磁電圧は基準値より小さくなる。よって、励磁コイル12に流れる励磁電流は小さくなり、磁気飽和するまでの時間が長くなるように制御される。
【0057】
以上、説明した実施例3及び実施例4においても実施例1,2と同様、磁気飽和するまでの時間を常に一定にすることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 センサ部 11 磁性体コア
12 励磁コイル 13 検出コイル
20 発振回路 21 発振器
22 分周器 30,30’ 励磁回路
31 励磁駆動部 32 電流制限抵抗体
33 励磁制御部 33a FET
35 励磁制御部 36 基準値出力部
37 加算器 38 掛け算器
41 直流遮断器 42 増幅器
43 同期検波器 44 積分器
45 抵抗体 46 ローパスフィルタ
50 位相差検出部 51 反転型積分増幅器
52 掛け算器 60 積分器
70 発振回路 71 発振器
72 反転器 73,74,75 分周器
80 位相差検出部 81 差動増幅器
82 微分器 83 積分増幅器
84 掛け算器 90 発振回路
91 発振器 92 反転器
93,94 分周器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体コアに励磁コイル及び検出コイルが巻回されてなるフラックスゲート型のセンサ部を有し、前記検出コイルより得られる検出出力から直流成分を除去した出力を、前記励磁コイルを励磁する励磁周波数の2倍の周波数信号により同期検波し、検波後の出力を積分して前記検出コイルに負帰還する構成とされている地磁気センサであって、
励磁周波数信号と前記励磁周波数の2倍の周波数信号と前記励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号を出力する発振回路と、
前記直流成分を除去した出力と前記励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号との位相差を検出して出力する位相差検出部と、
前記位相差検出部の出力を積分する積分器と、
前記積分器の出力により前記励磁コイルに流れる励磁電流を制御する励磁制御部とを具備することを特徴とする地磁気センサ。
【請求項2】
磁性体コアに励磁コイル及び検出コイルが巻回されてなるフラックスゲート型のセンサ部を有し、前記検出コイルより得られる検出出力から直流成分を除去した出力を、前記励磁コイルを励磁する励磁周波数の2倍の周波数信号により同期検波し、検波後の出力を積分して前記検出コイルに負帰還する構成とされている地磁気センサであって、
励磁周波数信号と前記励磁周波数の2倍の周波数信号と前記励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号を出力する発振回路と、
前記直流成分を除去した出力と前記励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号との位相差を検出して出力する位相差検出部と、
前記位相差検出部の出力を積分する積分器と、
前記積分器の出力により前記励磁コイルに印加する励磁電圧を制御する励磁制御部とを具備することを特徴とする地磁気センサ。
【請求項3】
磁性体コアに励磁コイル及び検出コイルが巻回されてなるフラックスゲート型のセンサ部を有し、前記検出コイルより得られる検出出力から直流成分を除去した出力を、前記励磁コイルを励磁する励磁周波数の2倍の周波数信号により同期検波し、検波後の出力を積分して前記検出コイルに負帰還する構成とされている地磁気センサであって、
励磁周波数信号と前記励磁周波数の2倍の周波数信号と前記励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号を出力する発振回路と、
前記励磁コイルに流れる励磁電流と前記励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号との位相差を検出して出力する位相差検出部と、
前記位相差検出部の出力を積分する積分器と、
前記積分器の出力により前記励磁コイルに流れる励磁電流を制御する励磁制御部とを具備することを特徴とする地磁気センサ。
【請求項4】
磁性体コアに励磁コイル及び検出コイルが巻回されてなるフラックスゲート型のセンサ部を有し、前記検出コイルより得られる検出出力から直流成分を除去した出力を、前記励磁コイルを励磁する励磁周波数の2倍の周波数信号により同期検波し、検波後の出力を積分して前記検出コイルに負帰還する構成とされている地磁気センサであって、
励磁周波数信号と前記励磁周波数の2倍の周波数信号と前記励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号を出力する発振回路と、
前記励磁コイルに流れる励磁電流と前記励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号との位相差を検出して出力する位相差検出部と、
前記位相差検出部の出力を積分する積分器と、
前記積分器の出力により前記励磁コイルに印加する励磁電圧を制御する励磁制御部とを具備することを特徴とする地磁気センサ。
【請求項5】
請求項1又は2記載の地磁気センサにおいて、
前記位相差検出部は、前記直流成分を除去した出力を積分増幅する反転型積分増幅器と、
前記反転型積分増幅器の出力と、前記励磁周波数の2倍の周波数信号と位相が90度ずれている信号とを掛け算して前記位相差を求める掛け算器とからなることを特徴とする地磁気センサ。
【請求項6】
請求項3又は4記載の地磁気センサにおいて、
前記位相差検出部は、前記励磁コイルに接続されている電流制限抵抗体の両端の電圧を差動増幅する差動増幅器と、
前記差動増幅器の出力を微分する微分器と、
前記微分器の出力を積分増幅する積分増幅器と、
前記積分増幅器の出力と、前記励磁周波数信号と位相が90度ずれている信号とを掛け算して前記位相差を求める掛け算器とからなることを特徴とする地磁気センサ。
【請求項7】
請求項1又は3記載の地磁気センサにおいて、
前記励磁制御部は前記励磁コイルに接続されている電流制限抵抗体の両端に接続され、ゲートに前記積分器の出力が入力されるFETによって構成されていることを特徴とする地磁気センサ。
【請求項8】
請求項2又は4記載の地磁気センサにおいて、
前記励磁制御部は、予め定められた基準値を出力する基準値出力部と、
前記積分器の出力と前記基準値とを加算する加算器と、
前記加算器の出力と前記励磁周波数信号とを掛け算して前記励磁電圧を生成する掛け算器とからなることを特徴とする地磁気センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate