説明

地磁気センサ

【課題】低消費電力化を図る。
【解決手段】地磁気センサは、閉磁路を構成するコア10と、コア10の互いに対向する位置に巻回され、コア10に同じ周回方向に磁束を発生させるように直列接続された一対のコイル21,22と、一対のコイル21,22に直流電流を重畳した交流電流を印加する励磁電源30と、一対のコイルの接続点Pに接続された検出回路40とを備える。従来のフラックスゲート型の地磁気センサのようにコアが磁気飽和するまで励磁するといったことは不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は地磁気を測定する地磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地磁気を測定する地磁気センサとしては、フラックスゲート型(FG型)の地磁気センサが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
フラックスゲート型の地磁気センサは高精度な地磁気の測定が可能であるものの、励磁コイルが巻回されているコアを交流で磁気飽和させる必要があり、このため、励磁電流が大きくなり、消費電力が大きいといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−92381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、上述した問題に鑑み、低消費電力化を図ることができる地磁気センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、地磁気センサは、閉磁路を構成するコアと、コアの互いに対向する位置に巻回され、コアに同じ周回方向に磁束を発生させるように直列接続された一対のコイルと、一対のコイルに直流電流を重畳した交流電流を印加する励磁電源と、一対のコイルの接続点に接続された検出回路とを備える。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、検出回路は、前記接続点の電圧を励磁電源の交流励磁電圧を用いて同期検波する同期検波器と、同期検波器の出力を平滑化するローパスフィルタとよりなる。
【0008】
請求項3の発明では請求項1の発明において、検出回路は、前記接続点の電圧の直流成分を除去する直流遮断器と、直流遮断器の出力を全波整流する全波整流器と、全波整流器の出力を平滑化するローパスフィルタとよりなる。
【0009】
請求項4の発明では請求項1の発明において、検出回路は、前記接続点の電圧の直流成分を除去する直流遮断器と、直流遮断器の出力を半波整流する半波整流器と、半波整流器の出力を平滑化するローパスフィルタとよりなる。
【0010】
請求項5の発明では請求項2乃至4のいずれかの発明において、フィードバックコイルとフィードバック回路と読取抵抗器とが設けられ、フィードバックコイルはコアを磁気平衡させるべく、コアに巻回され、フィードバック回路は、基準電圧を発生する基準電圧源と、ローパスフィルタの出力と基準電圧を加算する加算器と、加算器の出力を増幅してフィードバックコイルにフィードバック電流を流す増幅器とよりなり、フィードバック電流は読取抵抗器によって電圧に変換されて出力される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、従来のフラックスゲート型の地磁気センサのようにコアが磁気飽和するまで励磁するといったことは不要となり、つまりコアを磁気飽和させることなく、地磁気を高精度に測定することができ、よって従来に比し、低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明による地磁気センサの第1の実施例の構成概要を示す図。
【図2】この発明による地磁気センサの第1の実施例の機能構成を示すブロック図。
【図3】B−Hカーブ及び比透磁率を示すグラフ。
【図4】この発明による地磁気センサの第2の実施例の機能構成を示すブロック図。
【図5】この発明による地磁気センサの第3の実施例の構成概要を示す図。
【図6】この発明による地磁気センサの第3の実施例の機能構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0014】
図1はこの発明による地磁気センサの第1の実施例の構成概要を示したものであり、図2は図1に示した地磁気センサの機能構成をブロック図で示したものである。
【0015】
閉磁路を構成するコア10は、パーマロイ等の高透磁率材料よりなり、この例ではトロイダルコアとされている。コア10の互いに対向する位置には、コイル軸心が互いに平行とされてコイル21,22が巻回されている。コイル21,22はコア10の中心から見て同じ向きに巻回されており、コイル21,22に電流を印加した時に、コア10に同じ周回方向に磁束を発生させるように直列接続されている。
【0016】
一方のコイル21の一端には励磁電源30が接続されている。励磁電源30は直流電源31と交流電源32とよりなり、直流電流を重畳した交流電流をコイル21,22に印加することができるものとなっている。図1中、33は直流遮断器(コンデンサ)を示す。
【0017】
直流電源31によりコイル21,22には直流電流が印加され、これによりコア10内に直流磁束が発生する。図1中、矢印a,bはそれぞれコイル21及びコイル22により発生する磁束の向きを例示したものであり、コイル21及びコイル22により発生する磁束はコア10の周回方向において同じ向きになる。
【0018】
図3はコア10のB−Hカーブ及び比透磁率を示したものであり、コイル21,22に印加する直流電流は、例えば8A/m程度の直流磁界が発生するように設定する。この磁界の値:8A/mは、磁界に対し、比透磁率がリニアに変化する領域のほぼ中央に位置する。
【0019】
コイル21,22は同一巻数とされ、コイル21のインダクタンスL1とコイル22のインダクタンスL2は等しくされている。コイル21とコイル22の接続点Pには直流電源31と交流電源32とよりなる励磁電源30により、直流電圧が重畳した交流電圧が発生している。接続点Pの交流電圧Vdは励磁電源30の交流励磁電圧をVacとすると、
Vd=(L2/(L1+L2))・Vac (1)
で表され、外部磁界が0の時には、コイル21とコイル22のインダクタンスL1,L2が等しいため、接続点Pの交流電圧Vdは交流励磁電圧Vacの1/2となる。
【0020】
一方、図1に示したように地磁気Mがコア10を通過すると、地磁気Mに比例した磁束がコア10の、コイル21,22が位置する部分に発生する。これにより、コイル22が位置する部分では直流磁束は強めあい、コイル21が位置する部分では直流磁束は打ち消しあう。よって、コイル21が位置する部分及びコイル22が位置する部分におけるコア10内部の磁束密度が変化する。
【0021】
磁束密度が変化すると、図3から分かるように、コア10の比透磁率が変化する。コイル22が位置する部分では磁束密度が大きくなるため、比透磁率は小さくなり、コイル21が位置する部分では磁束密度が小さくなるため、比透磁率は大きくなる。この比透磁率の変化により、コイル22のインダクタンスL2は小さくなり、コイル21のインダクタンスL1は大きくなる。従って、(1)式より接続点Pの交流電圧Vdは外部磁界が0の時の値より小さくなり、つまり交流励磁電圧Vacの1/2より小さくなる。
【0022】
このように、2つのコイル21,22の接続点Pの交流電圧Vdは地磁気(外部磁界)の入力により変化するため、接続点Pの交流電圧Vdを検出することで地磁気を測定することができる。
【0023】
検出回路40はコイル21,22の接続点Pに接続されている。検出回路40はこの例では図2に示したように同期検波器41とローパスフィルタ42とよりなる。同期検波器41は接続点Pの電圧を励磁電源30の交流励磁電圧Vacを用いて同期検波する。ローパスフィルタ42は同期検波器41の出力を平滑化する。同期検波された電圧はローパスフィルタ42を通過して出力Voとなる。
【0024】
検出回路40はこのようにして出力Voを得るものとなっている。出力Voは地磁気の大きさに対応(比例)するため、この出力Voにより地磁気を測定することができる。
【0025】
上述したように、この例では従来のフラックスゲート型の地磁気センサと違い、コア10が磁気飽和するまで励磁する必要はなく、言い換えればコア10を磁気飽和させないものとなっている。従って、励磁電流(直流電流)は小さくてよく、また交流励磁電圧も小さい振幅でよく、これにより従来のフラックスゲート型の地磁気センサと比べ、消費電力を低減することができる。
【0026】
図4はこの発明による地磁気センサの第2の実施例の機能構成をブロック図で示したものであり、この例では検出回路40’はコイル21,22の接続点Pの電圧から直流成分を除去する直流遮断器43と、直流遮断器43の出力を全波整流する全波整流器44と、全波整流器44の出力を平滑化するローパスフィルタ42によって構成されている。図2に示した検出回路40に代え、このような検出回路40’を採用することもできる。なお、全波整流器44に代えて半波整流器を用いる構成としてもよい。
【0027】
次に、この発明による地磁気センサの第3の実施例について説明する。図5は第3の実施例の構成概要を示したものであり、図6は第3の実施例の機能構成をブロック図で示したものである。
【0028】
この例では図1及び図2に示した構成に対し、フィードバックコイル23とフィードバック回路50と読取抵抗器60とが付加されたものとなっている。
【0029】
フィードバックコイル23はコア10を磁気平衡させるべく、コア10に巻回される。フィードバックコイル23は図5に示したように、外部磁界(地磁気M)に対してフィードバックコイル23が発生する磁束が平行になるように配置するのが望ましい。図5中、矢印cはフィードバックコイル23が発生する磁束の向きを示す。
【0030】
フィードバック回路50は検出回路40の後段に接続される。フィードバック回路50は基準電圧を発生する基準電圧源51と、検出回路40の出力(ローパスフィルタ42の出力)と基準電圧を加算する加算器52と、加算器52の出力を増幅してフィードバックコイル23にフィードバック電流を流す増幅器53とよりなる。
【0031】
読取抵抗器60はフィードバックコイル23に流れるフィードバック電流を電圧に変換して出力する。
【0032】
基準電圧源51が発生する基準電圧は外部磁界が0の時にローパスフィルタ42から出力される出力電圧を相殺して0Vとするように設定される。従って、外部磁界が0の時はフィードバック電流は0となり、フィードバックコイル23に電流は流れない。読取抵抗器60の出力は0Vとなる。
【0033】
一方、地磁気Mが図5に示したように入力した場合、ローパスフィルタ42の出力は第1の実施例で説明したように、外部磁界が0の時よりも小さくなる。従って、加算器52の出力は負の電圧となる。これにより、フィードバックコイル23に負のフィードバック電流が流れ、コア10は地磁気Mに対して磁気平衡状態となる。フィードバック電流は読取抵抗器60によって電圧に変換されて出力され、この読取抵抗器60の出力により、この例では入力した地磁気を測定することができる。なお、検出回路40は検出回路40’としてもよい。
【0034】
以上、この発明の実施例について説明したが、コア10はトロイダルコアに限らず、他の形状のものであってもよく、例えば四角形状をなすコアであってもよい。また、直流電源31に代えて直流定電流源を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 コア 21,22 コイル
23 フィードバックコイル 30 励磁電源
31 直流電源 32 交流電源
33 直流遮断器 40,40’ 検出回路
41 同期検波器 42 ローパスフィルタ
43 直流遮断器 44 全波整流器
50 フィードバック回路 51 基準電圧源
52 加算器 53 増幅器
60 読取抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉磁路を構成するコアと、
前記コアの互いに対向する位置に巻回され、前記コアに同じ周回方向に磁束を発生させるように直列接続された一対のコイルと、
前記一対のコイルに直流電流を重畳した交流電流を印加する励磁電源と、
前記一対のコイルの接続点に接続された検出回路とを備えることを特徴とする地磁気センサ。
【請求項2】
請求項1記載の地磁気センサにおいて、
前記検出回路は、前記接続点の電圧を前記励磁電源の交流励磁電圧を用いて同期検波する同期検波器と、前記同期検波器の出力を平滑化するローパスフィルタとよりなることを特徴とする地磁気センサ。
【請求項3】
請求項1記載の地磁気センサにおいて、
前記検出回路は、前記接続点の電圧の直流成分を除去する直流遮断器と、前記直流遮断器の出力を全波整流する全波整流器と、前記全波整流器の出力を平滑化するローパスフィルタとよりなることを特徴とする地磁気センサ。
【請求項4】
請求項1記載の地磁気センサにおいて、
前記検出回路は、前記接続点の電圧の直流成分を除去する直流遮断器と、前記直流遮断器の出力を半波整流する半波整流器と、前記半波整流器の出力を平滑化するローパスフィルタとよりなることを特徴とする地磁気センサ。
【請求項5】
請求項2乃至4記載のいずれかの地磁気センサにおいて、
フィードバックコイルとフィードバック回路と読取抵抗器とが設けられ、
前記フィードバックコイルは前記コアを磁気平衡させるべく、前記コアに巻回され、
前記フィードバック回路は、基準電圧を発生する基準電圧源と、前記ローパスフィルタの出力と前記基準電圧を加算する加算器と、前記加算器の出力を増幅して前記フィードバックコイルにフィードバック電流を流す増幅器とよりなり、
前記フィードバック電流は前記読取抵抗器によって電圧に変換されて出力されることを特徴とする地磁気センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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