説明

地絡事故区間標定装置

【課題】配電用変圧器の2次側で発生した地絡事故が、電力ケーブル内、電力ケーブルの電源側外部、負荷側外部のいずれであるかを標定する。
【解決手段】配電用変圧器1及び複数の電力ケーブル線路Ka,Kbの間に設けられる接地形計器用変圧器GPTと、複数の電力ケーブル線路Ka,Kbの電源側端部に、端部が貫通するように設けられる複数の零相変流器ZCTと、複数の電力ケーブル線路Ka,Kbの負荷側端部の金属シースの接地線2に、接地線2が貫通するように設けられる複数の計器用変流器CTと、接地形計器用変圧器GPTによって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電圧、零相変流器ZCTによって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流及び計器用変流器CTによって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、配電用変圧器の2次側で地絡事故があった場合に、配電用変圧器の2次側に接続された2次電力ケーブル内の事故であるのか、負荷側外部(2次電力ケーブルと変圧器2次遮断器との間)の事故であるのか、電源側外部(配電用変圧器の2次側と2次電力ケーブルとの間)の事故であるのかを標定できる地絡事故区間標定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の地絡事故区間標定装置は、例えば、図30に示すように、主変圧器(配電用変圧器)1と、2次電力ケーブル線路K1と、変圧器2次遮断器CB1と、母線3と、接地形計器用変圧器GPTと、配電線遮断器CB2とを備えている。
【0003】
主変圧器1は、1次側に高電圧の電力ケーブル線路K0が接続されるとともに、2次側に低電圧の電力ケーブル線路(以下、2次電力ケーブル線路という)K1が接続されている。
【0004】
2次電力ケーブル線路K1は、三相のケーブルによって構成されている。そして、ケーブルは、金属シースのそれぞれに接地線2が接続されて接地されている。そして、2次電力ケーブル線路K1は、その金属シースの片側(母線側)のみが接地線2で接地されている。また、この接地線2に、接地線2が貫通するように貫通型変流器CTが設けられている。そして、貫通型変流器CTによって、接地線2に流れる地絡電流が検出されるようになっている。また、この地絡電流は、配電線の対地静電容量による充電電流と、接地形計器用変圧器ZPTの3次制限抵抗により制限された電流とによって決定される。
【0005】
そして、変圧器2次遮断器CB1および配電線遮断器CB2が配電線4を遮断する前に、接地線2に流れる事故電流Iが検出されることで、2次電力ケーブル線路K1内での地絡事故が標定されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−9786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1の地絡事故区間標定装置の場合、2次電力ケーブル線路K1内の地絡事故は標定できるものの、2次電力ケーブル線路K1内の地絡事故以外、すなわち、2次電力ケーブル線路K1の電源側(主変圧器(配電用変圧器)1の2次側と2次電力ケーブルとの間)および負荷側外部(2次電力ケーブルと変圧器2次遮断器CB1との間)の地絡事故は標定できないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、電力ケーブル線路内の地絡事故を標定できることに加えて、電力ケーブル線路の電源側外部(配電用変圧器の2次側と2次電力ケーブルとの間)、および、負荷側外部(2次電力ケーブルと変圧器2次遮断器との間)の地絡事故を標定できる地絡事故区間標定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る地絡事故区間標定装置は、複数の電力ケーブル線路が分岐接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、配電用変圧器および複数の電力ケーブル線路の間に設けられる接地形計器用変圧器と、複数の電力ケーブル線路の電源側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように設けられる複数の零相変流器と、複数の電力ケーブル線路の負荷側の端部の金属シースの接地線のそれぞれに、該接地線が貫通するように設けられる複数の計器用変流器と、接地形計器用変圧器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電圧、零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、計器用変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、地絡事故区間標定手段は、接地形計器用変圧器から入力される判定電圧に基づいて、地絡事故を判定する。また、地絡事故区間標定手段は、複数の零相変流器によって検出される検出電流と、複数の計器用変流器によって検出される検出電流とに基づいて、電力ケーブル内、電力ケーブルの電源側外部、電力ケーブルの負荷側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定する。
【0011】
本発明に係る地絡事故区間標定装置は、電力ケーブル線路が接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、配電用変圧器および電力ケーブル線路の間に設けられるサージアブソーバーと、該サージアブソーバーに接続される接地線に、該接地線が貫通するように設けられる第1計器用変流器と、電力ケーブル線路の電源側の端部に、該端部が貫通するように設けられる零相変流器と、電力ケーブル線路の負荷側の端部の金属シースの接地線に、該接地線が貫通するように設けられる第2計器用変流器と、第1計器用変流器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電流、零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、第2計器用変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、地絡事故区間標定手段は、第1計器用変流器から入力される判定電流に基づいて、地絡事故発生を判定する。また、地絡事故区間標定手段は、零相変流器から入力第1検出電流、および、第2計器用変流器から入力される第2検出電流に基づいて、電力ケーブル内、電力ケーブルの電源側外部、電力ケーブルの負荷側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定する。
【0013】
本発明に係る地絡事故区間標定装置は、電力ケーブル線路が接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、配電用変圧器および電力ケーブル線路の間に設けられるサージアブソーバーと、該サージアブソーバーに接続された接地線に、該接地線が貫通するように設けられる計器用変流器と、電力ケーブル線路の電源側の端部に、該端部が貫通するように設けられる第1零相変流器と、電力ケーブル線路の負荷側の端部に、該端部が貫通するように設けられるとともに、該端部の金属シースの接地線に、該接地線が電源側に向かって貫通するように設けられる第2零相変流器と、計器用変流器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電流、第1零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、第2零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、地絡事故区間標定手段は、計器用変流器から入力される判定電流に基づいて、地絡事故発生を判定する。また、地絡事故区間標定手段は、第1零相変流器から入力第1検出電流、および、第2零相変流器から入力される第2検出電流に基づいて、電力ケーブル内、電力ケーブルの電源側外部、電力ケーブルの負荷側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定する。
【0015】
本発明に係る地絡事故区間標定装置は、複数の電力ケーブル線路が分岐接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、配電用変圧器および複数の電力ケーブル線路の間に設けられるサージアブソーバーと、該サージアブソーバーに接続された接地線に、該接地線が貫通するように設けられる第1計器用変流器と、複数の電力ケーブル線路の電源側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように設けられる複数の零相変流器と、複数の電力ケーブル線路の負荷側の端部の金属シースの接地線のそれぞれに、該接地線が貫通するように設けられる複数の第2計器用変流器と、第1計器用変流器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電流、複数の零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、複数の第2計器用変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、地絡事故区間標定手段は、第1計器用変流器から入力される判定電流に基づいて、地絡事故発生を判定する。また、地絡事故区間標定手段は、零相変流器から入力第1検出電流、および、第2計器用変流器から入力される第2検出電流に基づいて、電力ケーブル内、電力ケーブルの電源側外部、電力ケーブルの負荷側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定する。
【0017】
本発明に係る地絡事故区間標定装置は、複数の電力ケーブル線路が分岐接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、配電用変圧器および複数の電力ケーブル線路の間に設けられるサージアブソーバーと、該サージアブソーバーに接続された接地線に、該接地線が貫通するように設けられる計器用変流器と、複数の電力ケーブル線路の電源側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように設けられる第1零相変流器と、電力ケーブル線路の負荷側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように設けられるとともに、該端部の金属シースが電源側に向かって貫通するように設けられる第2零相変流器と、計器用変流器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電流、第1零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、第2零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、地絡事故区間標定手段は、計器用変流器から入力される判定電流に基づいて、地絡事故発生を判定する。また、地絡事故区間標定手段は、第1零相変流器から入力される第1検出電流、および、第2零相変流器から入力される第2検出電流に基づいて、電力ケーブル内、電力ケーブルの電源側外部、電力ケーブルの負荷側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、接地形計器用変圧器によって検出される電圧または計器用変流器によって検出される検出電流に基づいて、地絡事故発生を判定する一方、零相変流器によって検出される検出電流と、計器用変流器によって検出される検出電流とに基づいて、それぞれの検出電流の方向や大きさによって、電力ケーブル線路内の地絡事故を標定できることに加えて、電力ケーブル線路の電源側外部(配電用変圧器の2次側と2次電力ケーブルとの間)、および、負荷側外部(2次電力ケーブルと変圧器2次遮断器との間)の地絡事故を標定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る地絡事故区間標定装置の構成を示す概略図。
【図2】地絡事故区間標定手段を示すブロック回路図。
【図3】(a)は、図1の等価回路を示し、第1の電力ケーブル内で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(b)は、図1の等価回路を示し、第2の電力ケーブル内で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図4】事故電流の流れを示す図。
【図5】(a)は、零相電圧に対して事故電流が外部方向であることを示す図、(b)は、零相電圧に対して事故電流が内部方向であることを示す図。
【図6】地絡事故区間を標定するフローチャートを示す図。
【図7】(a)は、図1の等価回路を示し、第1の電力ケーブルの負荷側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(b)は、図1の等価回路を示し、第2の電力ケーブルの負荷側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図8】図1の等価回路を示し、第1および第2の電力ケーブルの電源側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る地絡事故区間標定装置の構成を示す概略図。
【図10】(a)は、図9の等価回路を示し、電力ケーブル内で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(b)は、図9の等価回路を示し、電力ケーブルの負荷側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(c)は、図9の等価回路を示し、電力ケーブルの電源側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図11】事故電流の流れを示す図。
【図12】(a)は、零相電流に対して事故電流が外部方向であることを示す図、(b)は、零相電圧に対して事故電流が内部方向であることを示す図。
【図13】地絡事故区間を標定するフローチャートを示す図。
【図14】本発明の第3実施形態に係る地絡事故区間標定装置の構成を示す概略図。
【図15】(a)は、図14の等価回路を示し、電力ケーブル内で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(b)は、図14の等価回路を示し、電力ケーブルの負荷側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(c)は、図14の等価回路を示し、電力ケーブル線路の電源側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図16】事故電流の流れを示す図。
【図17】地絡事故区間を標定するフローチャートを示す図。
【図18】本発明の第4実施形態に係る地絡事故区間標定装置の構成を示す概略図。
【図19】(a)は、図18の等価回路を示し、第1の電力ケーブル内で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(b)は、図18の等価回路を示し、第2の電力ケーブル内で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図20】事故電流の流れを示す図。
【図21】地絡事故区間を標定するフローチャートを示す図。
【図22】(a)は、図18の等価回路を示し、第1の電力ケーブルの負荷側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(b)は、図18の等価回路を示し、第2の電力ケーブルの負荷側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図23】図18の等価回路を示し、第1および第2の電力ケーブルの電源側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図24】本発明の第5実施形態に係る地絡事故区間標定装置の構成を示す概略図。
【図25】(a)は、図24の等価回路を示し、第1の電力ケーブル内で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(b)は、図24の等価回路を示し、第2の電力ケーブル内で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図26】事故電流の流れを示す図。
【図27】地絡事故区間を標定するフローチャートを示す図。
【図28】(a)は、図24の等価回路を示し、第1の電力ケーブルの負荷側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図、(b)は、図24の等価回路を示し、第2の電力ケーブルの負荷側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図29】図24の等価回路を示し、第1および第2の電力ケーブルの電源側外部で地絡事故が発生した場合の事故電流の流れを示す図。
【図30】従来の地絡事故区間標定装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る地絡事故区間標定装置の実施形態について、図1〜図29を参照しながら説明する。なお、第1〜第5実施形態において、配電用変圧器1の2次側(配電用変圧器1の6kV母線3側)に接続される2次電力ケーブル線路K1を、単に電力ケーブルという場合がある。また、電力ケーブルと変圧器2次遮断器CB1との間を、電力ケーブルの負荷側外部という。また、配電用変圧器1と電力ケーブルとの間を、電力ケーブルの電源側外部という。また、図中の10は、地絡過電圧継電器を示す。
(第1実施形態)
【0022】
第1実施形態に係る地絡事故区間標定装置の構成について図1〜図8を参照して説明する。該地絡事故区間標定装置の構成は、図1に示すように、配電用変圧器1と、接地形計器用変圧器GPTと、サージアブソーバーSAと、第1の電力ケーブルKaおよび第2の電力ケーブルKbと、零相変流器ZCTと、計器用変流器CTと、変圧器2次遮断器CB1と、地絡事故区間標定手段5と、母線3と、配電線遮断器CB2とを備えている。
【0023】
配電用変圧器1は、1次側に高電圧の1次電力ケーブル線路K0が接続されるとともに、2次側に低電圧の2次電力ケーブル線路K1が複数接続されている。接地形計器用変圧器GPTは、配電用変圧器1の2次側に接続されて、地絡事故が発生したことを判定する判定電圧を出力する。サージアブソーバーSAは、配電用変圧器1と第1および第2の電力ケーブルKa,Kbとの間に設けられている。零相変流器ZCTは、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側の端部に、該端部が貫通するように設けられている。計器用変流器CTは、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの負荷側の端部の金属シースの接地線2に、該接地線2が貫通するように設けられている。変圧器2次遮断器は、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの負荷側に接続されている。母線3は、変圧器2次遮断器CB1と配電線遮断器CB2との間に配線されている。
【0024】
地絡事故区間標定手段5は、図2に示すように、接地形計器用変圧器GPTによって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電圧、零相変流器ZCTによって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、計器用変流器CTによって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される。また、地絡事故区間標定手段5は、アナログ入力部6と、整定値メモリ7と、地絡事故区間標定部8と、表示制御部9とを備えている。そして、アナログ入力部6と、整定値メモリ7と、地絡事故区間標定部8と、表示制御部9とは、バスを介して接続されている(図示せず)。なお、アナログ入力部6、整定値メモリ7、地絡事故区間標定部8、表示制御部9の構成は、第1〜第5実施形態とも図2を共通して使用し、第2〜第5実施形態においてはその説明は省略する。また、第1〜第5実施形態において、後述するアナログ入力部6の入力変換器60に入力される信号、および、地絡事故区間標定部8における制御内容は異なるため、第1〜第5実施形態ごとに説明する。
【0025】
アナログ入力部6は、入力変換器60と、バンドパスフィルタ(BPF)61と、サンプリングホールド回路(S/H回路)62と、マルチプレクサ回路(信号切換回路(MPX回路))63と、A/D変換器64とを備えている。
【0026】
BPF61は、接地形計器用変圧器GPT、零相変流器ZCT、計器用変流器CTから入力変換器60を介して入力される、地絡事故発生を判定するための判定電圧、地絡事故区間を検出するための第1検出電流および第2検出電流の交流成分のみを抽出する。
【0027】
S/H回路62は、所定のサンプリング周波数、例えば、商用周波数60Hzの場合には、5760Hz(電気角度3.75度)でBPF61の出力信号をサンプリングしてホールドする。
【0028】
MPX回路63は、S/H回路62の出力信号を切り換えてA/D変換器64に出力する。
【0029】
A/D変換器64は、MPX回路63から入力されるアナログ信号である、地絡事故発生を判定するための判定電圧、地絡事故区間を検出するための第1検出電流および第2検出電流を、ディジタル信号に変換する。
【0030】
整定値メモリ7は、地絡事故発生を判定するための判定電圧と比較される零相電圧整定値などが外部から入力されて格納される。
【0031】
地絡事故区間標定部8は、A/D変換器64から入力される、地絡事故発生を判定するための判定電圧に基づいて、地絡事故が発生したことを判定する一方、地絡事故区間を検出するための第1検出電流および第2検出電流に基づいて地絡区間を標定する。
【0032】
つぎに地絡事故区間を標定する手順について説明する。まず、電力ケーブル内で地絡事故が発生した場合、電力ケーブルの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、電力ケーブルの電源側外部で地絡事故が発生した場合のそれぞれの事故電流Iの流れについて等価回路を用いて説明する。つぎに、事故電流Iの流れる方向や大きさに基づいてなされる地絡事故区間標定手段(地絡事故区間標定部8)5の制御内容について説明する。
【0033】
第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合は、図3(a)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKa内の事故点Xから計器用変流器CT、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CT、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量C、第2の電力ケーブルKbの芯線、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKa内の事故点Xから計器用変流器、サージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCT、第1の電力ケーブルKaの芯線に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第1の電力ケーブルKaの対地静電容量C、第1の電力ケーブルKaの芯線に流れる。
【0034】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向である(図4参照)。ここでいう、外部方向とは、図5(a)に示すように、接地形計器用変圧器GPTの判定電圧の位相を基準とした場合の、零相変流器ZCTおよび計器用変流器CTの位相差が、0度〜−180度の範囲に入る方向をいう。内部方向とは、図5(b)に示すように、接地形計器用変圧器GPTの判定電圧の位相を基準とした場合の、零相変流器ZCTおよび計器用変流器CTの位相差が、0度〜180度の範囲に入る方向をいう。
【0035】
そして、第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差、および、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲外となる。
【0036】
つぎに地絡事故区間標定部8の地絡事故区間を標定する手順について図6に示すフローチャートにしたがって説明する(なお、フローチャートにおいて、上下に並列して記載しているZCTおよびCTは、上側が第1の電力ケーブルKaのもので、下側が第2の電力ケーブルKbのものを示す)。第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部8は、まず、接地形計器用変圧器GPTから出力される出力電圧(判定電圧)V0と、零相電圧整定値との比較を行って(S1)、出力電圧V0が零相電圧整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0037】
つぎに、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向で、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である(図4参照)。したがって、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S3)。第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向である(図4参照)。したがって、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKa内の事故であると判定する(S4)。
【0038】
つぎに、第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合は、図3(b)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの事故点Xから計器用変流器CT、サージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCT、第2の電力ケーブルKbの芯線に流れる。また、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKb内の事故点Xから計器用変流器CT、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CT、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量C、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKb内の事故点Xから第2の電力ケーブルKbの対地静電容量、第2の電力ケーブルKbの芯線に流れる。
【0039】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、外部方向である(図4参照)。
【0040】
そして、第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差、および、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲外となる。
【0041】
つぎに地絡事故区間標定部8の地絡事故区間を標定する手順について図6に示すフローチャートにしたがって説明する。まず、第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部8は、前記と同様に、接地形計器用変圧器GPTから出力されるGPT出力電圧V0と、零相電圧整定値との比較を行って(S1)、GPT出力電圧が零相電圧整定値よりも大きい場合は、地絡事故が発生したと判定する。
【0042】
つぎに、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。その後、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S5)。
【0043】
第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である(図4参照)。したがって、地絡事故区間標定部8は、第2の電力ケーブルKb内の事故であると判定する(S6)。
【0044】
つぎに負荷側外部事故(第1の電力ケーブルKaと変圧器2次遮断器CB1との間での地絡事故)が発生した場合は、図7(a)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKaの事故点Xから第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CT、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量C、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCT、第1の電力ケーブルKaの芯線に流れる。また、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部の事故点XからサージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCT、第1電力ケーブルの芯線に流れる。また、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部の事故点Xから第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CT、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量、第1の電力ケーブルKaの芯線に流れる。
【0045】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。また、第1電力ケーブルの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2電力ケーブルの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向である(図4参照)。
【0046】
そして、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲外となる。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。
【0047】
つぎに地絡事故区間標定部8の地絡事故区間を標定する手順について図6に示すフローチャートにしたがって説明する。第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部8は、まず、接地形計器用変圧器GPTから出力される出力電圧V0と、零相電圧整定値との比較を行って(S1)、出力電圧V0が零相電圧整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0048】
つぎに、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向で、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である(図4参照)。したがって、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S3)。第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1電力ケーブルの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2電力ケーブルの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向である(図4参照)。したがって、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部の地絡事故であると判定する(S7)。
【0049】
つぎに負荷側外部事故(第2の電力ケーブルKbと変圧器2次遮断器CB1との間での地絡事故)が発生した場合は、図7(b)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの負荷側外部の事故点XからサージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCT、第2の電力ケーブルKbの芯線に流れる。また、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの負荷側の事故点Xから第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CT、第1の電力ケーブルKa外部の事故点Xから第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CT、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの負荷側の事故点Xから第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CT、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量、第2の電力ケーブルKbの芯線に流れる。
【0050】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向である(図4参照)。
【0051】
そして、第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲外となる。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。
【0052】
つぎに地絡事故区間標定部8の地絡事故区間を標定する手順について図6に示すフローチャートにしたがって説明する。第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部8は、まず、接地形計器用変圧器GPTから出力される出力電圧V0と、零相電圧整定値との比較を行って(S1)、出力電圧V0が零相電圧整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0053】
つぎに、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向で、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である(図4参照)。したがって、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S5)。第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1電力ケーブルの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2電力ケーブルの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向である(図4参照)。したがって、地絡事故区間標定部8は、第2の電力ケーブルKbの負荷側外部の地絡事故であると判定する(S8)。
【0054】
つぎに電源側外部事故(配電用変圧器1とサージアブソーバーSAとの間での地絡事故)が発生した場合は、図8に示すように、事故電流Iが、事故点Xから第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CT、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CT、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、事故点XからサージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。
【0055】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTにおける事故電流Iの流れる方向は、内部方向である(図4参照)。
【0056】
そして、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側外部で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。また、第1の電力ケーブルKaの計器用変流器CTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの計器用変流器CTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。
【0057】
つぎに地絡事故区間標定部8の地絡事故区間を標定する手順について図6に示すフローチャートにしたがって説明する。第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源荷側で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部8は、まず、接地形計器用変圧器GPTから出力される出力電圧V0と、零相電圧整定値との比較を行って(S1)、出力電圧V0が零相電圧整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0058】
つぎに、地絡事故区間標定部8は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向で、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である(図4参照)。したがって、地絡事故区間標定部8は、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側外部の地絡事故であると判定する(S9)。
【0059】
このように第1実施形態によれば、接地形計器用変圧器GPTから出力される出力電圧に基づいて、地絡事故が発生したと判定される。また、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの零相変流器ZCTによって検出される検出電流と、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの計器用変流器CTによって検出される検出電流とに基づいて、電力ケーブル内、電力ケーブルの負荷側外部、電力ケーブルの電源側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定できるようになる。
【0060】
(第2実施形態)
つぎに本発明の第2実施形態に係る地絡事故区間標定装置について図9〜図13を参照して説明する。これらの図において、図1と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。異なる点は、複数の電力ケーブルKa,Kbが分岐接続されていない点と、配電用変圧器1と電力ケーブル線路K1との間に設けられた接地形計器用変圧器GPTが取り除かれている点と、配電用変圧器1と電力ケーブル線路K1との間に設けられたサージアブソーバーSAの接地線2に、該接地線2が貫通するように、第1計器用変流器CT1が設けられている点と、地絡事故区間標定手段50において、第1計器用変流器CT1によって検出される判定電流によって、地絡事故発生が判定されている点とである。
【0061】
そして、図1の場合と同様に、零相変流器ZCTが、電力ケーブル線路K1の電源側の端部に、該端部が貫通するように設けられている。また、第2計器用変流器CT2が、電力ケーブル線路K1の負荷側の端部の金属シースの接地線2に、該接地線2が貫通するように設けられている。
【0062】
そして、地絡事故区間標定手段50においては、第1計器用変流器CT1によって検出される、地絡事故発生が判定される判定電流と、零相変流器ZCTによって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流と、第2計器用変流器CT2によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流とが入力される。
【0063】
つぎに地絡事故区間の標定する手順について説明する。地絡事故区間標定手段50の地絡事故区間標定部において、第1計器用変流器CT1から判定電流I0と、零相電流整定値との比較が行われ、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合は、地絡事故が発生したと判定される。つぎに、零相変流器ZCTから入力される第1検出電流、および、第2計器用変流器CT2から入力される第2検出電流に基づいて、電力ケーブルK内、電力ケーブルKの電源側外部、電力ケーブルKの負荷側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定できるようになる。
【0064】
まず、電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合は、図10(a)の等価回路に示すように、事故電流Iが、事故点Xから第2計器用変流器CT2を通って、第1計器用変流器CT1、サージアブソーバーSA、零相変流器ZCT、電力ケーブルKの芯線に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから電力ケーブルKの対地静電容量C、電力ケーブルKの芯線に流れる。
【0065】
すなわち、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。具体的に説明すると、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。(図11参照)。ここでいう、外部方向とは、図12(a)に示すように、計器用変流器CT1の判定電流の位相を基準とした場合の、零相変流器ZCTおよび計器用変流器CT2の位相差が、±90度の範囲に入る方向をいう。内部方向とは、図12(b)に示すように、計器用変流器CT1の判定電流の位相を基準とした場合の、零相変流器ZCTおよび計器用変流器CT2の位相差が、±90度の範囲外に入る方向をいう。
【0066】
そして、電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合において、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。
【0067】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図13に示すフローチャートにしたがって説明する。電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、第1計器用変流器CT1によって検出される判定電流と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0068】
つぎに、地絡事故区間標定部は、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向が、内部方向であるか、外部方向であるかを判定する(S2)。電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向が、内部方向であるか、外部方向であるかを判定する(S3)。電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、電力ケーブルK内の地絡事故であると判定する(S4)。
【0069】
つぎに負荷側外部事故(電力ケーブルKと変圧器2次遮断器CB1との間での地絡事故)が発生した場合は、図10(b)の等価回路に示すように、事故電流Iが、事故点Xから第2計器用変流器CT2を通って、電力ケーブルKの対地静電容量C、電力ケーブルKの芯線に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第1計器用変流器CT1、サージアブソーバーSA、零相変流器ZCT、電力ケーブルKの芯線に流れる。
【0070】
すなわち、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。具体的に説明すると、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。(図11参照)。
【0071】
そして、電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合において、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲外となる。
【0072】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図13に示すフローチャートにしたがって説明する。電力ケーブルKの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、第1計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0073】
つぎに、地絡事故区間標定部は、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向が内部方向であるか、外部方向であるか否かを判定する(S2)。電力ケーブルKの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向が内部方向であるか、外部方向であるか否かを判定する(S3)。電力ケーブルKの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、電力ケーブルKの負荷側外部の地絡事故であると判定する(S5)。
【0074】
つぎに電源側外部事故(配電用変圧器1とサージアブソーバーSAとの間での地絡事故)が発生した場合は、図10(c)の等価回路に示すように、事故電流Iが、事故点Xから第2計器用変流器CT2を通って、電力ケーブルKの対地静電容量、零相変流器ZCTに流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第1計器用変流器CT1、サージアブソーバーSAに流れる。
【0075】
すなわち、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。具体的に説明すると、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。(図11参照)。
【0076】
そして、電力ケーブルKの電源側外部で地絡事故が発生した場合において、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。
【0077】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図13に示すフローチャートにしたがって説明する。電力ケーブルKの電源側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、第1計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0078】
つぎに、地絡事故区間標定部は、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向が内部方向であるか、外部方向であるかを判定する(S2)。電力ケーブルKの電源側外部で地絡事故が発生した場合、零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、電力ケーブルKの電源側外部の地絡事故であると判定する(S6)。
【0079】
このように、第2実施形態によれば、地絡事故区間標定手段50は、第1計器用変流器CT1から入力される判定電流に基づいて、地絡事故発生が判定される。また、地絡事故区間標定手段50は、零相変流器ZCTから入力される第1検出電流、および、第2計器用変流器CT2から入力される第2検出電流に基づいて、電力ケーブルK内、電力ケーブルKの負荷側外部、電力ケーブルKの電源側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定できるようになる。
【0080】
(第3実施形態)
つぎに本発明の第3実施形態に係る地絡事故区間標定装置について図14〜17を参照して説明する。これらの図において、図8と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。図8と異なる点は、第2零相変流器ZCT2が、電力ケーブルKの負荷側の端部に、該端部が貫通するように設けられている点と、該端部の金属シースの接地線2に、該接地線2が電源側に向かって貫通するように設けられている点とである。また、電力ケーブルKの負荷側の端部の金属シースの接地線2に設けられた計器用変流器CTが取り除かれている点と、第2零相変流器ZCT2によって、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が検出される点とである。
【0081】
そして、図8の場合と同様に、サージアブソーバーSAが、配電用変圧器1および電力ケーブルKの間に設けられている。また、計器用変流器CTが、サージアブソーバーSAの接地線2に、該接地線2が貫通するように設けられている。また、第1零相変流器ZCT1が、電力ケーブルKの電源側の端部に、該端部が貫通するように設けられている。
【0082】
そして、地絡事故区間標定手段51は、計器用変流器CTによって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電流I0、第1零相変流器ZCT1によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、第2零相変流器ZCT2によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される。
【0083】
つぎに地絡事故区間の標定する手順について説明する。まず、電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合、電力ケーブルKの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、電力ケーブルKの電源側外部で地絡事故が発生した場合のそれぞれの事故電流Iの流れについて等価回路を用いて説明する。つぎに、前記地絡事故に応じて、事故電流Iの流れる方向や大きさに基づいてなされる地絡事故区間標定手段(地絡事故区間標定部)51の制御内容について説明する。
【0084】
まず、電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合は、図15(a)の等価回路に示すように、事故電流Iが、事故点Xから第2零相変流器ZCT2、電力ケーブルKの金属シースの接地線2を通って、計器用変流器CT、サージアブソーバーSA、第1零相変流器ZCT1、電力ケーブルKの芯線に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから電力ケーブルKの対地静電容量C、電力ケーブルKの芯線に流れる。
【0085】
すなわち、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第2零相変流器ZCT2(金属シースの接地線2)に流れる事故電流Iの方向とが同一方向(外部方向)になる。具体的に説明すると、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの大きさと、第2零相変流器ZCT2(金属シースの接地線2)に流れる事故電流Iの大きさとが同じであることから、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、第2零相変流器ZCT2(金属シースの接地線2)に流れる事故電流Iとは、互いに打ち消し合うため、第2零相変流器ZCT2で検出される検出電流は零になる(図16参照)。
【0086】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図17に示すフローチャートにしたがって説明する。電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、計器用変流器CTによって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0087】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向が内部方向であるか、外部方向であるかを判定する(S2)。電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iが零であるか、事故電流Iの方向が外部方向であるかを判定する(S3)。電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合、第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iは、上述したように零である。したがって、地絡事故区間標定部は、電力ケーブルK内の地絡事故であると判定する(S4)。
【0088】
つぎに負荷側外部事故(電力ケーブルKと変圧器2次遮断器CB1との間での地絡事故)が発生した場合は、図15(b)の等価回路に示すように、事故電流Iが、事故点Xから電力ケーブルKの金属シースの接地線2、第2零相変流器ZCT2を通って、電力ケーブルKの対地静電容量C、電力ケーブルKの芯線、第2零相変流器ZCT2に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから計器用変流器CT、サージアブソーバーSAを通って、第1零相変流器ZCT1、電力ケーブルKの芯線、第2零相変流器ZCT2に流れる。
【0089】
すなわち、第1零相変流器ZCT1および第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向が同一方向(外部方向)になる(図16参照)。そして、電力ケーブルKの負荷側外部で地絡事故が発生した場合において、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。
【0090】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図17に示すフローチャートにしたがって説明する。電力ケーブルKの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、計器用変流器CTによって検出される判定電流と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0091】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向が内部方向であるか、外部方向であるかを判定する(S2)。電力ケーブルKの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iが零であるか、事故電流Iの方向が外部方向であるかを判定する(S3)。電力ケーブルKの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iは、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、電力ケーブルKの負荷側外部の地絡事故であると判定する(S5)。
【0092】
つぎに電源側外部事故(配電用変圧器1とサージアブソーバーSAとの間での地絡事故)が発生した場合は、図15(c)の等価回路に示すように、事故電流Iが、事故点Xから電力ケーブルKの金属シースの接地線2、第2零相変流器ZCT2を通って、電力ケーブルKの対地静電容量、第1零相変流器ZCT1に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから計器用変流器CT、サージアブソーバーSAに流れる。すなわち、第1零相変流器ZCT1および第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向が同一方向(内部方向)になる。また、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流I大きさと、電力ケーブルKの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの大きさとが同じであることから、また、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、電力ケーブルKの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iとは、互いに打ち消し合うため、第2零相変流器ZCT2で検出される検出電流は零になる(図16参照)。
【0093】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図17に示すフローチャートにしたがって説明する。電力ケーブルKの電源側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、計器用変流器CTによって検出される判定電流と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0094】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向が内部方向であるか、外部方向であるかを判定する(S2)。電力ケーブルKの電源側外部で地絡事故が発生した場合、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、電力ケーブルKの電源側外部の地絡事故であると判定する(S6)。
【0095】
このように、第3実施形態によれば、計器用変流器CTから入力される判定電流I0に基づいて、地絡事故発生が判定される。また、地絡事故区間標定手段51は、第1零相変流器ZCT1から入力される第1検出電流、および、第2零相変流器ZCT2から入力される第2検出電流に基づいて、電力ケーブルK内、電力ケーブルKの電源側外部、電力ケーブルKの負荷側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定できるようになる。
【0096】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る地絡事故区間標定装置について図18〜図23を参照して説明する。これらの図において、図8と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。図8と異なる点は、配電用変圧器1に複数の電力ケーブル線路K1が分岐接続された点である。
【0097】
そして、図8と同様に、配電用変圧器1と複数の電力ケーブル線路K1との間に、サージアブソーバーSAが設けられるとともに、該サージアブソーバーSAの接地線2に、該接地線2が貫通するように第1計器用変流器CT1が設けられている。また、複数の電力ケーブル線路K1において、電力ケーブルKa,Kbの電源側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように零相変流器ZCTが設けられている。また、電力ケーブルKa,Kbの負荷側の端部の金属シースの接地線2のそれぞれに、該接地線2が貫通するように第2計器用変流器CT2が設けられている。
【0098】
つぎに地絡事故区間の標定する手順について説明する。まず、電力ケーブルK内で地絡事故が発生した場合、電力ケーブルKの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、電力ケーブルKの電源側外部で地絡事故が発生した場合のそれぞれの事故電流Iの流れについて等価回路を用いて説明する。つぎに、前記地絡事故に応じて、事故電流Iの流れる方向や大きさに基づいてなされる地絡事故区間標定手段(地絡事故区間標定部)52の制御内容について説明する。
【0099】
まず、第1の電力ケーブルKaの内部で地絡事故が発生した場合は、図19(a)の等価回路に示すように、事故電流Iが、事故点Xから第2計器用変流器CT2を通って、第1計器用変流器CT1、サージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCT、第1の電力ケーブルKaの芯線に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2を通って、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量C、第2の電力ケーブルKbの芯線、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに向かって流れる。
【0100】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は内部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である(図20参照)。
【0101】
そして、第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差、および、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲外となる。
【0102】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図21に示すフローチャートにしたがって説明する(なお、フローチャートにおいて、上下に並列して記載しているZCTおよびCTは、上側が第1の電力ケーブルKaのもので、下側が第2の電力ケーブルKbのものを示す)。第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、第1計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0103】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S3)。第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKa内の地絡事故であると判定する(S4)。
【0104】
つぎに第2の電力ケーブルKbの内部で地絡事故が発生した場合は、図19(b)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの事故点Xから第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2を通って、第1計器用変流器CT1、サージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCT、第2の電力ケーブルKbの芯線に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2を通って、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量C、第1の電力ケーブルKaの芯線、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに向かって流れる。
【0105】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、外部方向である(図20参照)。
【0106】
そして、第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差、および、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲外となる。
【0107】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図21に示すフローチャートにしたがって説明する。第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、第1計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0108】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S5)。第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第2の電力ケーブルKb内の地絡事故であると判定する(S6)。
【0109】
つぎに負荷側外部事故(第1の電力ケーブルKaと変圧器2次遮断器CB1との間での地絡事故)が発生した場合は、図22(a)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKaの事故点Xから第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2を通って、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量C、第1の電力ケーブルKaの芯線に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量、第2の電力ケーブルKbの芯線、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第1の電力ケーブルKaに流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第1計器用変流器CT1、サージアブソーバーSAを通って、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第1の電力ケーブルKaに流れる。
【0110】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向である(図20参照)。
【0111】
そして、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲外となる。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。
【0112】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図21に示すフローチャートにしたがって説明する。第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、第1計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0113】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S3)。第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部の地絡事故であると判定する(S7)。
【0114】
つぎに負荷側外部事故(第2の電力ケーブルKbと変圧器2次遮断器CB1との間での地絡事故)が発生した場合は、図22(b)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの事故点Xから第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2を通って、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量C、第2の電力ケーブルKbの芯線に流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量、第1の電力ケーブルKaの芯線、零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第1計器用変流器CT1、サージアブソーバーSAを通って、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCT、第2の電力ケーブルKbの芯線に流れる。
【0115】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向である(図20参照)。
【0116】
そして、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲外となる。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。
【0117】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図21に示すフローチャートにしたがって説明する。第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、第1計器用変流器CT1によって検出される判定電流と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0118】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S5)。第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第2の電力ケーブルKbの負荷側外部の地絡事故であると判定する(S8)。
【0119】
つぎに電源側外部事故(配電用変圧器1とサージアブソーバーSAとの間での地絡事故)が発生した場合は、図23の等価回路に示すように、事故電流Iが、事故点Xから第1電力ケーブルの第2計器用変流器CT2、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる。また。事故電流Iが、事故点Xから第2電力ケーブルの第2計器用変流器CT2、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCT、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第1計器用変流器CT1、サージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。
【0120】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一方向(内部方向)になる。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iの方向とが同一方向(内部方向)になる(図20参照)。
【0121】
そして、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側外部で地絡事故が発生した場合において、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。また、第1の電力ケーブルKaの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2に流れる事故電流Iとの位相差は、±90度の範囲内となる。
【0122】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図21に示すフローチャートにしたがって説明する。第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、第1計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0123】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側外部で地絡事故が発生した場合、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの零相変流器ZCTに流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部82は、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側外部の地絡事故であると判定する(S9)。
【0124】
このように、第4実施形態によれば、第1計器用変流器CT1から入力される判定電流I0に基づいて、地絡事故発生が判定される。また、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの零相変流器ZCTから入力される第1検出電流、および、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの第2計器用変流器CT2から入力される第2検出電流に基づいて、電力ケーブルKa,Kb内、電力ケーブルKa,Kbの電源側外部、電力ケーブルKa,Kbの負荷側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定できるようになる。
【0125】
(第5実施形態)
つぎに本発明の第5実施形態に係る地絡事故区間標定装置について図24〜図29を参照して説明する。これらの図において、図14と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。異なる点は、配電用変圧器1に複数の電力ケーブル線路K1が分岐接続された点である。
【0126】
そして、図14と同様に、配電用変圧器1と複数の電力ケーブル線路K1との間に、サージアブソーバーSAが設けられるとともに、該サージアブソーバーSAの接地線2に、該接地線2が貫通するように第1計器用変流器CT1が設けられている。また、複数の電力ケーブル線路K1において、電力ケーブルKa,Kbの電源側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように第1零相変流器ZCT1が設けられている。また、電力ケーブルKa,Kbの負荷側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように第2零相変流器ZCT2が設けられている。また、第2零変流器は、電力ケーブルKa,Kbの金属シースの接地線2が電源側に向かって貫通している。
【0127】
つぎに地絡事故区間の標定する手順について説明する。まず、電力ケーブルKa,Kb内で地絡事故が発生した場合、電力ケーブルKa,Kbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、電力ケーブルKa,Kbの電源側外部で地絡事故が発生した場合のそれぞれの事故電流Iの流れについて等価回路を用いて説明する。つぎに、前記地絡事故に応じて、事故電流Iの流れる方向や大きさに基づいてなされる地絡事故区間標定手段(地絡事故区間標定部)53の制御内容について説明する。
【0128】
まず、第1の電力ケーブルKa線路の内部で地絡事故が発生した場合は、図25(a)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKaの事故点Xから第2零相変流器ZCT2、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2を通って、計器用変流器CT、サージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1、第1の電力ケーブルKaの芯線に流れる。また、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKaの事故点Xから第2零相変流器ZCT2、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2を通って、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2、第2零相変流器ZCT2を通って、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量、第1零相変流器ZCT1、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKaの事故点Xから第1の電力ケーブルKaの対地静電容量C、第1の電力ケーブルKaの芯線に流れる。
【0129】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。また、第2の電力ケーブルKbの第2零相用変流器における事故電流Iの流れる方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第2計器用変流器CT2における事故電流Iの流れる方向は、外部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流I大きさと、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの大きさとが同じであることから、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iとは、互いに打ち消し合うため、第2零相変流器ZCT2で検出される検出電流は零になる。また、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流I大きさと、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの大きさとが同じであることから、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iとは、互いに打ち消し合うため、第2の電力ケーブルKbの第2零相変流器ZCT2で検出される検出電流は零になる(図26参照)。
【0130】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図27に示すフローチャートにしたがって説明する(なお、フローチャートにおいて、上下に並列して記載しているZCTは、上側が第1の電力ケーブルKaのもので、下側が第2の電力ケーブルKbのものを示す)。第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0131】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向または大きさを判定する(S3)。第1の電力ケーブルKa内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2における事故電流Iは、零である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKa内の地絡事故であると判定する(S4)。
【0132】
つぎに第2の電力ケーブルKb線路の内部で地絡事故が発生した場合は、図25(b)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの事故点Xから第2零相変流器ZCT2、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2を通って、計器用変流器CT、サージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1、第2の電力ケーブルKbの芯線に流れる。また、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの事故点Xから第2零相変流器ZCT2、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2を通って、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量、第1零相変流器ZCT1に流れる。また、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの事故点Xから第2の電力ケーブルKbの対地静電容量C、第2の電力ケーブルKbの芯線に流れる。
【0133】
すなわち、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流I大きさと、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの大きさとが同じであることから、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iとは、互いに打ち消し合うため、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの第2零相変流器ZCT2で検出される検出電流は零になる(図26参照)。
【0134】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図27に示すフローチャートにしたがって説明する。第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0135】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第2の電力ケーブルKbの第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向または大きさを判定する。第2の電力ケーブルKb内で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2における事故電流Iは、零である。したがって、地絡事故区間標定部は、第2の電力ケーブルKb内の地絡事故であると判定する(S6)。
【0136】
つぎに負荷側外部事故(第1の電力ケーブルKaと変圧器2次遮断器CB1との間での地絡事故)が発生した場合は、図28(a)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第1電力ケーブルの負荷側外部の事故点Xから第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2、第2零相変流器ZCT2を通って、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量C、第2の電力ケーブルKbの芯線、第2零相変流器ZCT2、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部の事故点Xから、計器用変流器CT、サージアブソーバーSAを通って、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1、第1の電力ケーブルKaの芯線に流れる。また、事故電流Iが、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部の事故点Xから、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2、第2零相変流器ZCT2、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量、第2零相変流器ZCT2に流れる。
【0137】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。また、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの方向は、外部方向になる。また、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの方向は、外部方向になる。また、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流I大きさと、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの大きさとが同じであることから、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iとは、互いに打ち消し合うため、第2の電力ケーブルKbの第2零相変流器ZCT2で検出される検出電流は零になる(図26参照)。
【0138】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図27に示すフローチャートにしたがって説明する。第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0139】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、外部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向または大きさを判定する(S3)。第1の電力ケーブルKaの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2における事故電流Iは、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの負荷側外部の地絡事故であると判定する(S7)。
【0140】
つぎに負荷側外部事故(第2の電力ケーブルKbと変圧器2次遮断器との間での地絡事故)が発生した場合は、図28(b)の等価回路に示すように、事故電流Iが、第2電力ケーブルの負荷側外部の事故点Xから第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2、第2零相変流器ZCT2を通って、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量C、第2の電力ケーブルKbの芯線、第2零相変流器ZCT2に流れる。また、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの負荷側外部の事故点Xから、計器用変流器CT、サージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点A、第2の電力ケーブルKbに流れる。また、事故電流Iが、第2の電力ケーブルKbの負荷側外部の事故点Xから、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2、第2零相変流器ZCT2、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量、第1零相変流器ZCT1、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。
【0141】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの方向とが逆方向になる。また、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流I大きさと、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの大きさとが同じであることから、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iとは、互いに打ち消し合うため、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2で検出される検出電流は零になる。また、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの方向とが同一方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの方向は、外部方向になる。また、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向、および、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの方向は、内部方向になる(図26参照)。
【0142】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図27に示すフローチャートにしたがって説明する。第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、計器用変流器CT1によって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流I0が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0143】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向または大きさを判定する(S5)。第2の電力ケーブルKbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第2の電力ケーブルKbの第2零相変流器ZCT2における事故電流Iは、外部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第2の電力ケーブルKbの負荷側外部の地絡事故であると判定する(S8)。
【0144】
つぎに電源側外部事故(配電用変圧器1とサージアブソーバーSAとの間での地絡事故)が発生した場合は、図29の等価回路に示すように、事故電流Iが、事故点Xから第2の電力ケーブルKbの負荷側の金属シースの接地線2、第2零相変流器ZCT2を通って、第2の電力ケーブルKbの対地静電容量、第1零相変流器ZCT1、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから第1の電力ケーブルKaの負荷側の金属シースの接地線2、第2零相変流器ZCT2を通って、第1の電力ケーブルKaの対地静電容量、第1零相変流器ZCT1、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。また、事故電流Iが、事故点Xから計器用変流器CT、サージアブソーバーSA、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの分岐点Aに流れる。
【0145】
すなわち、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1および第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向が逆方向になる。具体的に説明すると、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。また、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの大きさと、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの大きさとが同じであることから、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、第1の電力ケーブルKaの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iとは、互いに打ち消し合うため、第1の電力ケーブルKaの第2零相変流器ZCT2で検出される検出電流は零になる(図26参照)。
【0146】
また、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1および第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向が逆方向になる。具体的に説明すると、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。第2の電力ケーブルKbの第2零相変流器ZCT2に流れる事故電流Iの方向は、外部方向である。また、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの大きさと、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iの大きさとが同じであることから、第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iと、第2の電力ケーブルKbの金属シースの接地線2に流れる事故電流Iとは、互いに打ち消し合うため、第2の電力ケーブルKbの第2零相変流器ZCT2で検出される検出電流は零になる(図26参照)。
【0147】
つぎに地絡事故区間標定部の地絡事故区間を標定する手順について図27に示すフローチャートにしたがって説明する。第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側外部で地絡事故が発生した場合、地絡事故区間標定部は、まず、計器用変流器CTによって検出される判定電流I0と、零相電流整定値との比較を行って(S1)、判定電流が零相電流整定値よりも大きい場合、地絡事故が発生したと判定する。
【0148】
つぎに、地絡事故区間標定部は、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向と、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向とが同一であるか否かを判定する(S2)。第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの負荷側外部で地絡事故が発生した場合、第1の電力ケーブルKaの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向であり、第2の電力ケーブルKbの第1零相変流器ZCT1に流れる事故電流Iの方向は、内部方向である。したがって、地絡事故区間標定部は、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの電源側外部の地絡事故であると判定する。
【0149】
このように、第5実施形態によれば、地絡事故区間標定手段53は、計器用変流器CTから入力される判定電流I0に基づいて、地絡事故発生が判定される。また、地絡事故区間標定手段53は、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの第1零相変流器ZCT1から入力される第1検出電流、および、第1および第2の電力ケーブルKa,Kbの第2零相変流器ZCT2から入力される第2検出電流に基づいて、電力ケーブルKa,Kb内、電力ケーブルKa,Kbの電源側外部、電力ケーブルKa,Kbの負荷側外部のいずれで発生した地絡事故であるのかを標定できるようになる。
【0150】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々変更することができる。
【0151】
例えば、前記第1〜第5実施形態の場合、配電用変圧器1と2次電力ケーブル線路K2との間にサージアブソーバーSAを設けるようにしたが、サージアブソーバーSAの代わりに充電電流補償用コンデンサを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0152】
1…配電用変圧器、2…接地線、3…母線、4…配電線、5…地絡事故区間標定手段、K1…1次電力ケーブル線路、K2…2次電力ケーブル線路、GPT…接地形計器用変圧器、SA…サージアブソーバー、CT…計器用変流器、CT1…第1計器用変流器、CT2…第2計器用変流器、ZCT…零相変流器、ZCT1…第1零相変流器、ZCT2…第2零相変流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力ケーブル線路が分岐接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、
配電用変圧器および複数の電力ケーブル線路の間に設けられる接地形計器用変圧器と、
複数の電力ケーブル線路の電源側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように設けられる複数の零相変流器と、
複数の電力ケーブル線路の負荷側の端部の金属シースの接地線のそれぞれに、該接地線が貫通するように設けられる複数の計器用変流器と、
接地形計器用変圧器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電圧、零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、計器用変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする地絡事故区間標定装置。
【請求項2】
電力ケーブル線路が接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、
配電用変圧器および電力ケーブル線路の間に設けられるサージアブソーバーと、
該サージアブソーバーの接地線に、該接地線が貫通するように設けられる第1計器用変流器と、
電力ケーブル線路の電源側の端部に、該端部が貫通するように設けられる零相変流器と、
電力ケーブル線路の負荷側の端部の金属シースの接地線に、該接地線が貫通するように設けられる第2計器用変流器と、
第1計器用変流器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電流、零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、第2計器用変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする地絡事故区間標定装置。
【請求項3】
電力ケーブル線路が接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、
配電用変圧器および電力ケーブル線路の間に設けられるサージアブソーバーと、
該サージアブソーバーの接地線に、該接地線が貫通するように設けられる計器用変流器と、
電力ケーブル線路の電源側の端部に、該端部が貫通するように設けられる第1零相変流器と、
電力ケーブル線路の負荷側の端部に、該端部が貫通するように設けられるとともに、該端部の金属シースの接地線に、該接地線が電源側に向かって貫通するように設けられる第2零相変流器と、
計器用変流器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電流、第1零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、第2零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする地絡事故区間標定装置。
【請求項4】
複数の電力ケーブル線路が分岐接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、
配電用変圧器および複数の電力ケーブル線路の間に設けられるサージアブソーバーと、
該サージアブソーバーの接地線に、該接地線が貫通するように設けられる第1計器用変流器と、
複数の電力ケーブル線路の電源側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように設けられる複数の零相変流器と、
複数の電力ケーブル線路の負荷側の端部の金属シースの接地線のそれぞれに、該接地線が貫通するように設けられる複数の第2計器用変流器と、
第1計器用変流器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電流、複数の零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、複数の第2計器用変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする地絡事故区間標定装置。
【請求項5】
複数の電力ケーブル線路が分岐接続される配電用変圧器の2次側での地絡事故区間を標定する地絡事故区間標定装置において、
配電用変圧器および複数の電力ケーブル線路の間に設けられるサージアブソーバーと、
該サージアブソーバーの接地線に、該接地線が貫通するように設けられる計器用変流器と、
複数の電力ケーブル線路の電源側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように設けられる第1零相変流器と、
電力ケーブル線路の負荷側の端部のそれぞれに、該端部が貫通するように設けられるとともに、該端部の金属シースが電源側に向かって貫通するように設けられる第2零相変流器と、
計器用変流器によって検出される、地絡事故発生を判定するための判定電流、第1零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第1検出電流、および、第2零相変流器によって検出される、地絡事故区間を検出するための第2検出電流が入力される地絡事故区間標定手段とを備えたことを特徴とする地絡事故区間標定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−88256(P2013−88256A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228235(P2011−228235)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】