説明

地絡方向継電器

【課題】 あらゆる配電線路にて確実に直近上位の配電用変電所との地絡保護協調を図ることのできる地絡方向継電器を提供する。
【解決手段】 自家用受電設備の地絡保護装置に装備され、当該受電設備内の電路に発生した零相電流および零相電圧のレベルがそれぞれ所定の整定値を超過したことを示す零相電流判定信号および零相電圧判定信号とともに、前記零相電流および零相電圧の位相差から判定される地絡方向が負荷側である場合の判定出力信号の入力を条件としてAND回路から時限回路を介して前記地絡保護装置における開閉器のリレーを動作させる制御信号を出力する地絡方向継電器において、前記零相電圧についての整定値は零相電圧百分率にて1%以下とされた地絡方向継電器。前記AND回路と前記時限回路との間には方向・非方向切換スイッチを設けて前記制御信号または前記零相電流検出信号を選択的に切り換えて前記時限回路に送出するように構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地絡方向継電器に関し、具体的には主に自家用高圧受電設備の地絡保護装置に装備され、配電系統に大幅な変更があった場合でも確実に直近上位の配電用変電所との地絡保護協調を図ることができる地絡方向継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
配電線路では、当該線路の少なくとも1線に地絡事故が発生した場合に地絡事故点を含む配電線路の一部を選択して有効に遮断するために、通常、配電用変電所や電力需要家の自家用高圧受電設備などに地絡保護装置が設けられている。この地絡保護装置としては、地絡継電器により零相電流のみを検出して電路の遮断を行なうタイプと、地絡方向継電器により零相電流および零相電圧を検出して電路の遮断を行なうタイプとに大別される。
【0003】
図2は、前記各タイプの地絡保護装置をそれぞれ設置した電力需要家の高圧受電設備の単線結線図であり、(a)は前者のタイプ、(b)は後者のタイプについてのものである。図2(a)に示す地絡保護装置は、受電設備54内に責任分界点53を介して引き込まれた引込線52に設置された開閉器47(本明細書では以下、高圧用の各種の遮断器および開閉器を単に「開閉器」と呼ぶことにする)、その電源側に設けられた零相変流器(ZCT)43、およびこれらの機器と入出力線で電気的に接続されている地絡継電器(GR)45を備える。この地絡継電器45は非方向性であり、発生した零相電流のレベルのみを検出し、当該零相電流の方向によって選択的に接点出力するといった選択性は有していない。
【0004】
配電線路に生じた地絡事故により発生する零相電流はZCT43にて検出され、当該零相電流に比例する小勢力の零相電流信号が地絡継電器45にその2次側より送出される。地絡継電器45では、この入力された零相電流信号が予め設定した感度電流の整定値を超過し、かつ所定の時限条件を具備する場合に制御信号を出力し、リレーを動作させて開閉器47を開放する。しかし、この地絡継電器(GR)は前記のとおり非方向性であるため、例えば他の電力需要家の自家用高圧受電設備内のZCT以降で生じた地絡事故に起因して発生した地絡電流が、大地および対地静電容量を通じて図2(a)に示した受電設備54のZCT43に流れることで、構内で地絡事故が発生していないにも拘わらず、地絡継電器45が作動して開閉器47を開放してしまう、いわゆる「もらい事故」を引き起こす可能性がある。また、構内(54)の充電電流が大きい場合には直近上位の配電用変電所40との地絡保護協調を図ることが困難になる場合がある。
【0005】
また、図2(b)に示す後者のタイプの地絡保護装置42は、通常、高圧受電設備54内に責任分界点53を介して引き込まれる電路52に設置された開閉器47と、その電源側の電路に設置された零相変流器(ZCT)43と、その負荷側の電路に電力ヒューズ(PF)を介して接続される計器用変圧器(PD)44と、地絡方向継電器(DGR)46とを備える。地絡事故により引込線52に発生する零相電流および零相電圧はZCT43およびPD44によってそれぞれ検出され、それぞれ変成されて地絡方向継電器(DGR)46に送出される。以下では、これらZCT43およびPD44からの出力信号をそれぞれ「零相電圧」および「零相電流」ということにする。
【0006】
DGR46では、これに入力された零相電流および零相電圧が所定の整定値を超過したか否かをそれぞれ判定するとともに、両者の位相差から求めた地絡方向がZCT43の負荷側であるか否かを判定する。そして、これらの条件を具備する場合に制御信号を出力してリレーを動作させ、開閉器47を開放して電路52を遮断する。
【0007】
図3は、6kV配電用変電所に設置される一般的な地絡保護装置を示す単線結線図である。この図に示す配電用変電所には、配電用変電所40の電力母線41から引き出される配電線路に設置される遮断器(CB)47と、その負荷側に設けられた零相変流器(ZCT)43と、地絡継電器45とを備えた地絡保護装置42が設置されている。この配電線路に地絡事故が発生した場合、これにより当該配電線路に発生する零相電流はZCT45で検出、変成され、地絡継電器45に出力される。地絡継電器45では、入力された零相電流が所定の整定値を超過する場合に制御信号を出力し、遮断器(CB)47を開放してこの配電線路を遮断することで配電線路の保護を図っている。
【0008】
仮に電力需要家側の自家用高圧受電設備で地絡事故が発生した場合、当該自家用高圧受電設備における地絡保護装置よりも先に配電用変電所内の地絡保護装置が動作して開閉器を開放し、その負荷側の地絡事故点を含む配電線路をすべて遮断することはできない。そのため、自家用高圧受電設備の地絡保護装置が配電用変電所のそれに先んじて作動し開閉器を開放することで、当該事故による停電波及を防止する必要がある。このように直近上位の配電用変電所と自家用高圧受電設備との地絡保護装置間の地絡保護強調を図るためには、双方の地絡(方向)継電器の感度(整定値)調整を行い、自家用高圧受電設備側の地絡保護装置を高感度に設定する必要がある。
【0009】
配電用変電所の地絡保護装置では、例えば3年間隔に定期的に実施され、または配電線路の新設時若しくは配電線の亘長を大きく変化させるなどの配電系統の変更があった場合に実施される人工接地地絡試験(DG試験)の結果に基づいて整定値が決定される。6kV配電系統の場合、通常、零相電圧整定値は、零相電圧百分率(発生零相電圧/完全地絡時の零相電圧x100)にて5%程度に設定されることが多い。この整定値は、この配電用変電所の配電区域において自家用高圧受電設備を保有する各電力需要家に通達される。
【0010】
通達を受けた各電力需要家では、構内の地絡保護装置の地絡方向継電器において通達された整定値よりも相対的に高感度に設定し、配電用変電所との地絡保護協調を図っている。図4は、地絡方向継電器の一般的な内部構成を示すブロック図である。この図に示す地絡方向継電器2は、零相電圧レベル判定部16、零相電流レベル判定部18、地絡方向判定部20、AND回路部22、時限回路32、出力接点動作34、零相電圧動作表示35および零相電流動作表示36から構成されている。零相電圧レベル判定部16および零相電流レベル判定部18は、それぞれ電圧感度調整操作部17および感度電流調整操作部19を備えており、それぞれの操作部において整定値を設定できるようになっている。これらの操作部17、19は、通常、地絡方向継電器2の前面における表示板に突出して設けられたロータリースイッチを回動操作するなどして行なわれる。そして、零相電圧の場合であれば、通常、零相電圧百分率%にて、例えば2.5%、5.0%、7.5%、10%、15%のいずれかのステップに設定することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−156929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、大型の配電用変圧器を有し、都市部への配電を担当する配電用変電所においては、現状、配電設備の地中化や需要家側設備の増加により充電電流が増加しつつあるのに加え、
(1)電力母線に接続されている配電線路(フィーダー線路)の(亘長)延長などにより充電電流が増大するような場合、
(2)電力会社側で行う変電所作業や配電線作業等において配電系統を短期間変更する場合
などには、零相電圧の整定値はさらに小さく(高感度に)なり、高圧受電設備側においてもさらに地絡方向継電器の零相電圧整定値を高感度に設定せざるを得ない状況が生じることが予想される。地絡方向継電器の製造業者や電力需要家では、電路の充電電流増加などの観点から前記のような予想を行っていないことから、従来よりまったく対策が講じられておらず、前記のように所定のステップのみで零相電圧整定値を設定する方式の地絡保護装置では、自家用高圧受電設備側で保護協調がとれないといった問題が生じる可能性があった。
【0013】
そこで、本発明は、前記課題を解決すべく、あらゆる配電線路において確実に直近上位の配電用変電所との地絡保護協調を図ることができる地絡方向継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的は、本発明によれば、自家用受電設備の地絡保護装置に装備され、当該受電設備内の電路に発生した零相電流および零相電圧のレベルがそれぞれ所定の整定値を超過したことを示す零相電流判定信号および零相電圧判定信号とともに、前記零相電流および零相電圧の位相差から判定される地絡方向が負荷側である場合の判定出力信号の入力を条件としてAND回路から時限回路を介して前記地絡保護装置における開閉器のリレーを動作させる制御信号を出力する地絡方向継電器において、前記零相電圧についての整定値は零相電圧百分率にて1%以下とされたことを特徴とする地絡方向継電器によって達成される。
【0015】
すなわち、本発明の地絡方向継電器の特徴は、地絡事故により電路に発生する零相電圧と零相電流との位相差から地絡方向を判定しつつ、DG試験の結果に基づかないで零相電圧の整定値を零相電圧百分率にて1%以下とすることで、零相電流との感度に差を設けて零相電圧が早期に整定値を超過する状態とし、地絡方向の所定条件の具備および零相電流の整定値超過によって開閉器リレーに対して制御信号を出力するようにしたこと特徴としている。
【0016】
また、必要に応じて前記AND回路と前記時限回路との間には方向・非方向切換スイッチを設け、前記制御信号または前記零相電流判定信号を選択的に切り換えて前記時限回路に送出するように構成することもできる。これにより、使用者のニーズに応じて本発明の地絡方向継電器は非方向性の地絡継電器としても使用できる利点がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の地絡方向継電器は、前記のように構成することにより、特に都市部なども含めてあらゆる配電系統において直近上位の地絡保護装置との間で地絡保護協調を確実にでき、しかも方向性を持たせることでいわゆるもらい事故の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の地絡方向継電器の一実施形態の内部構成を示すブロック図である。
【図2】配電用変電所における地絡保護装置を含む単線結線図である。
【図3】自家用高圧受電設備における地絡保護装置を含む単線結線図である。
【図4】従来の地絡方向継電器の内部ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態を掲げて本発明の地絡方向継電器を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0020】
図1は、地絡方向継電器の一実施形態の内部構成を示すブロック図である。この図に示すように、本発明の地絡方向継電器1は、主に零相電圧レベル判定部16、零相電流レベル判定部18、地絡方向判定部20、AND回路部22、制御出力部28の各部を備えている。零相電流レベル判定部18は、感度調整操作部17を含んでいる。
【0021】
零相電圧レベル判定部16は、これに入力された零相電圧信号を受け、その大きさと予め設定された電圧感度(整定値)との大小を比較し、零相電圧信号が当該整定値を超過した場合に所定の零相電圧判定信号を出力するように構成されている。なお、この零相電圧レベル判定部16には、フィルタ回路、増幅回路、波形整形回路などの公知の信号処理回路を含めることができる。
【0022】
この零相電圧レベル判定部16における電圧感度(整定値)は、零相電圧百分率にて1%以下に設定される。好ましくは、この整定値は0.5〜1%の範囲の適宜の値に設定されるのがよい。特に、近年は、大容量の配電用変圧器を備える配電用変電所においては、ケーブル布設の増大、太線化、長こう長化などによって対地静電容量が増大する傾向にあるので、充電電流(事故時の零相電流)が増大する。そのため、都市部などでは、零相電圧の整定値が2%以下となるところも少なくないといった事情を考慮して、例えば1%一定(固定値)に整定することができる。このように整定値を小さく高感度に設定することで、電路に地絡事故が生じた場合に当該電路に発生する零相電圧が早期に整定値を超過するように構成できる。
【0023】
この零相電圧レベル判定部16は、従来例と同様に電圧感度(整定値)を調整できるロータリースイッチなどの操作部を備える構成としてもよく、備えない構成としてもよいが、好適には、このような操作部を備えない構成とするのがよい。この場合、感度電圧の整定値は例えば本発明の地絡方向継電器1の内部に設けられた記憶手段(不図示)などに格納し、適時引き出すことができるようにしておくことができる。このような構成とすることで、零相電圧レベル判定部16の内部における回路構成の簡素化が図られる。
【0024】
零相電流レベル判定部18は、電路に設置されたZCTなどの零相電流検出手段(不図示)から零相電流信号を受け、その大きさと予め設定された感度電流(整定値)との大小を比較し、零相電流信号が当該整定値を超過した場合に所定の零相電圧判定信号を出力するように構成されている。このような機能は、アナログ、デジタル、なお、零相電流レベル判定部17には、適宜フィルタ回路、増幅回路、波形整形回路などの公知の信号処理回路を含めることができる。零相電流レベル判定部18における感度電流(整定値)の設定は、感度調整操作部19に設けられている公知のロータリースイッチなどの操作器を操作することで設定することができる。
【0025】
地絡方向判定部22は、零相電流レベル判定部16および零相電圧レベル判定部18からそれぞれ抽出された零相電流信号および零相電圧信号の入力を受け、零相電圧を基準として零相電流の位相差を求め、これにより地絡方向、すなわち地絡事故点が電路に設置されたZCTの電源側であるか負荷側であるか、を判定するように構成されている。この結果、事故点が電源側であると判定された場合には判定信号の出力はなく、負荷側と判定された場合には、方向判定信号がAND回路部22に向けて出力される。
【0026】
AND回路部22では、前記各判定信号、すなわち零相電流判定信号、零相電圧判定信号および方向判定信号がこれに入力されたことを条件とし、制御信号を出力する。
【0027】
制御出力部28は、方向・非方向切換スイッチ部30および時限回路32を含んでいる。方向・非方向切換スイッチ部30は、AND回路部22からの制御出力信号と、信号線26を介して送出される零相電流判定信号とが入力され、スイッチの切換によりこれらのうちのいずれか一方を後続する時限回路32に出力するものである。このスイッチ部30としては、従来公知の機械式または電気式のもののいずれを使用してもよい。
【0028】
時限回路32は、これに方向・非方向切換スイッチ部30より制御信号または零相電流判定信号が入力された場合に所定の設定時間経過後に当該入力信号を出力するように構成されている。
【0029】
本発明の地絡方向継電器には、必要な場合には、表示部(不図示)を設けることができる。この表示部には、図1に示す零相電圧動作表示35および零相電流動作表示36のほか、零相電圧および零相電流のレベル(最大値)表示、動作表示、電源表示などの表示手段や自動/手動/試験復帰スイッチ、零相電流整定値調整スイッチなどの各種スイッチを配置することができる。
【0030】
次に、本実施形態の地絡方向継電器の動作について説明する。電路に地絡事故が生じた場合、当該電路に発生する零相電圧は当該電路に設置された零相電圧検出手段(不図示)によって検出され、その2次側から該零相電圧の大きさに比例する小勢力の零相電圧信号が本発明の地絡方向継電器1に向けて出力される。また、零相電圧と同時に電路に発生する零相電流は零相電流検出手段によって検出され、その2次側から該零相電流に比例する小勢力の零相電流信号が本発明の地絡方向継電器1に向けて出力される(以上、図1および図2参照)。ここで、零相電圧検出手段としては、計器用変圧器(PD)や零相電圧変成器(ZPD。零相基準入力装置ともいう。)などを好適に使用できる。また、零相電圧検出手段としては、零相変流器(ZCT)などが挙げられる。また、3個の変流器(CT)を用いてその計測結果をベクトル合成することで零相電流を求めるようにしてもよい。
【0031】
この零相電圧信号が入力端子13を介して入力されると、零相電圧レベル判定部16では、固定値として整定された整定値と比較した入力信号の大小を判定する。判定の結果、入力信号が整定値よりも小さい場合には信号の出力はなく、大きい場合には零相電圧判定信号が出力される。この零相電圧判定信号は、AND回路部22に送られる。
【0032】
この零相電流信号が入力端子14を介して零相電流レベル判定部18に入力されると、その大きさが予め設定されている感度電流の整定値と比較判定される。その判定の結果、入力信号が整定値以下である場合には信号出力はなく、整定値を超過している場合には零相電流判定信号がAND回路部22に出力されるとともに、信号線26を介して後述する制御出力部28内の方向・非方向切換スイッチ部30に送出される。
【0033】
また、零相電圧レベル判定部16および零相電流レベル判定部18からはそれぞれ、零相電圧信号および零相電流信号が地絡方向判定部20に送出され、そこで両信号の位相差に基づいて地絡方向が判定される。判定の結果、地絡方向がZCTよりも電源側である場合には信号出力はなく、負荷側の場合にはAND回路部22に方向判定信号が送出される。
【0034】
AND回路部22では、前記各判定信号、すなわち零相電流判定信号、零相電圧判定信号および方向判定信号がこれに入力されたことを条件とし、制御信号を出力する。
【0035】
制御出力部28は、方向・非方向切換スイッチ部30および時限回路32を含んでいる。方向・非方向切換スイッチ部30は、AND回路部22からの制御出力信号と、信号線26を介して送出される零相電流判定信号とが入力され、スイッチの切換によりこれらのうちのいずれか一方を後続する時限回路32に出力することができるように構成されている。このスイッチ部30としては、従来公知の機械式または電気式のもののいずれを使用してもよく、したがって操作者が直接これを操作して方向、非方向を切り換えてもよく、他の機器からの何らかの信号によって切り換えるように構成されていてもよい。
【0036】
制御出力部28において;時限回路32を経た出力信号は、前記電路に設置された開閉器(不図示)動作リレーの接点を作動させる(図1、符号34参照)。この制御出力部28には、公知の自己保持回路およびその解除回路などを含め、出力信号の出力状態を保持し、例えば外部からの信号入力などによってこの自己保持状態を解除できるようにしてもよい。また、必要であれば、サンプル・ホールド回路やA/D変換回路などを含め、デジタル信号処理を行うようにすることもできる。制御出力部28からはまた、必要に応じて零相電圧動作表示35や零相電流動作表示36のための信号出力も可能である。
【0037】
かくして、本発明の地絡方向継電器1は、地絡事故により零相電圧信号および零相電流信号が電路に発生した場合に、まず零相電圧信号の整定値超過条件を具備させ、次いで零相電流信号の整定値超過条件を具備させるとともに、両入力信号の位相差より判定した地絡方向が所定の条件を具備することを条件として、所定の時間経過後に当該電路を遮断して負荷機器などの保護を図ることができる。また、このように開閉器リレーを動作させる条件に零相電流判定信号および零相電圧判定信号の双方が必要となるため、不要動作が生じる危険性も著しく低減される。
【0038】
さらに、本発明の地絡方向継電器1は、方向・非方向切換スイッチ部30を切換えて零相電流判定信号を開閉器リレーに出力することで、非方向性の地絡継電器として使用することができる。これによって、この継電器は例えば工事などのために臨時に移動用キュービクルとして使用する場合、都市部以外で利用する場合や構内に受電設備が複数あるなどの事情から非方向性の地絡継電器を使用したいなどの電力需要家のニーズがある場合などの場合に有効に使用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 地絡方向継電器
13 零相電圧入力端子
14 零相電流入力端子
16 零相電圧レベル判定部
17 零相電圧感度整定操作部
18 零相電流レベル判定部
19 零相電流感度整定操作部
20 地絡方向判定部
22 AND回路部
24 AND回路出力線
26 零相電流信号出力線
28 制御出力部
30 方向・非方向切換スイッチ部
32 時限回路部
34 出力接点動作
35 零相電圧動作表示
36 零相電流動作表示
40 配電用変電所
41 電力母線
42 地絡保護装置
43 零相変流器(ZCT)
44 コンデンサ型計器用変圧器(PD)
45 地絡継電器(GR)
46 地絡方向継電器(DGR)
47 遮断器
51 配電線路
52 高圧引込線
53 責任分界点
54 高圧受電設備
CB 遮断器
LBS 高圧交流負荷開閉器
PF 電力ヒューズ
PCT 計器用変圧器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自家用受電設備の地絡保護装置に装備され、当該受電設備内の電路に発生した零相電流および零相電圧のレベルがそれぞれ所定の整定値を超過したことを示す零相電流判定信号および零相電圧判定信号とともに、前記零相電流および零相電圧の位相差から判定される地絡方向が負荷側である場合の判定出力信号の入力を条件としてAND回路から時限回路を介して前記地絡保護装置における開閉器のリレーを動作させる制御信号を出力する地絡方向継電器において、前記零相電圧についての整定値は零相電圧百分率にて1%以下とされたことを特徴とする地絡方向継電器。
【請求項2】
前記AND回路と前記時限回路との間には方向・非方向切換スイッチが設けられ、前記制御信号または前記零相電流判定信号を選択的に切り換えて前記時限回路に送出するように構成された請求項1または2に記載の地絡方向継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−166667(P2010−166667A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5744(P2009−5744)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】