説明

地表面画像データの生成方法および生成装置

【課題】衛星画像データ中に含まれる雲画像データを雲がなければ現れるはずであったと思われる地表面画像データに比較的高い精度で修正することができる地表面画像データの生成方法及び生成装置を提供する。
【解決手段】生成基準日における所定時刻の静止衛星画像データを取得し、次いで、各画素が地表面を反映したものか雲を反映したものかを判定して部分画像データと欠損領域を設定し、この後、前記生成基準日の所定時刻に対して太陽位置との関係で密接な時間的関連性を有するものと判定される他の撮像日時において画素値から地表面を反映したものと判定された画素により前記欠損領域が埋められるまで前記他の撮像日時を所定の優先順位に従って順次追加して処理を繰り返すことにより補間画像データを生成して地表面画像データの生成方法を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地表面画像データの生成方法および生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星画像データにおいて地表面画像データの一部を隠すようにして写り込む雲画像データを除去し、雲がなければ現れるはずであったと思われる地表面画像データに修正するものとしては、従来、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例は、雲画像を含む衛星画像と、この衛星画像と同一領域を撮影した雲画像を含まない参照用画像とを用意しておき、両画像間のDN(ディジタルナンバー)値の関係式に基づき、土地被覆分類を考慮した上で、参照用画像における上記雲画像に対応する領域のDN値から雲画像に代替する地表面画像を算出する。
【0003】
また、特許文献2には、同一衛星画像中に含まれる地表面画像と雲画像の画素濃度値を比較し、雲画像の画素濃度値を下げる処理をすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−143054号公報
【特許文献2】特開2000−322562号公報(第2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら以上の従来例は、日影を考慮しないために、雲画像データに代替する地表面画像データの精度が低くなりやすいという欠点がある。
【0006】
すなわち、日影は、日における時刻、例えば時間帯により変化する太陽位置と、地表面の地点により異なる凹凸状態とが相まって発生状況が大きく変化する。例えば、地表面が凹凸である場合には、日影は時刻よって大きくも小さくもなり、また、その位置も変化するし、一方、地表面が平坦である場合においては、太陽位置に関わらず日影は原則として発生しない。これに対し上述した従来例は、雲画像データに代替する地表面画像データを得るために、単に異なる時間の画素値を参考にしたり、異なる地点の画素値を参考にしたりするものに過ぎず、日における時刻や地点の違いによる日影の変化によって、得られる地表面画像データの精度が乱されてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、日影を考慮することにより、衛星画像データ中に含まれる雲画像データを雲がなければ現れるはずであったと思われる地表面画像データに比較的高い精度で修正することができる地表面画像データの生成方法及び生成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
生成基準日を設定した後、
静止衛星画像データ1に撮像日時データを対応づけて格納する画像データベース2を参照して前記生成基準日における所定時刻の静止衛星画像データ1の所定領域を基準画像データ3として取得し、
次いで、画素値と所定の閾値とを比較して前記基準画像データ3の各画素が地表面を反映したもの4か雲を反映したもの5かを判定し、地表面を反映したもの4と判定された画素を抽出して部分画像データ6として保存するとともに、残余の画素により特定される前記基準画像データ3上の領域を欠損領域7として設定し、
この後、所定の判定基準に従って前記生成基準日の所定時刻に対して太陽位置との関係で密接な時間的関連性を有するものと判定される他の撮像日時の静止衛星画像データ1において前記欠損領域7に対応する画像データを参考画像データ8として前記画像データベース2を参照して取得した上で、参考画像データ8の各画素の画素値を所定の閾値と比較して地表面を反映したもの4か雲を反映したもの5かを判定し、地表面を反映したもの4と判定された画素により前記欠損領域7が埋められるまで前記他の撮像日時を所定の優先順位に従って順次追加して処理を繰り返すことにより、地表面を反映したもの4と判定された画素で欠損領域7を埋めて構成される補間画像データ9を生成し、
前記部分画像データ6と補間画像データ9とを合成して地表面画像データを生成する地表面画像データの生成方法を提供することにより達成される。
【0009】
本発明によれば、基準画像データ3中の雲画像データ5は参考画像データ8中の地表面画像データ4に置き換えられる。参考画像データ8の撮像日時は基準画像データ3の撮像日時に対して太陽位置との関係で密接な時間的関連性を有するタイミングが選択され、また、基準画像データ3中の雲画像データ5に置き換えられる参考画像データ8中の地表面画像データ4は、参考画像データ8中において基準画像データ3の雲画像データ5に対応する領域から取得される。
【0010】
したがって、雲画像データ5に置き換えられる地表面画像データ4は、置き換えられる雲画像5の撮像時における太陽位置と近似する太陽位置のときに撮像されたものにされ、且つ、雲画像5と同一地点のものにされることから、日影の発生状況がほぼ共通し、雲がなければ現れるはずであったと思われる地表面画像4と極めて高い精度で一致することができる。
【0011】
また、上記基準画像データ3や参考画像データ8には静止衛星画像データ1が用いられる。静止衛星は撮像地点に対する相対位置が変わらないため、ここから撮像することにより、撮像地点に対する撮像方向を常に一定に維持することができる。また、このように撮像地点に対する撮像方向が維持されることにより、撮像条件として時刻のみを異ならせた繰り返しの撮像を周回衛星を用いた場合に比べて極めて短時間で行うことができるなど時間に対する融通性を高めることができ、例えば1時間以下などの短い時間間隔での繰り返しの撮像や、連続する日の同一時刻での撮像など、太陽位置のあまり変わらない条件での撮像を短期間で行うことができる。
【0012】
上記基準画像データ3は、撮像日時を所定時刻、すなわち時や分などの単位で特定されることにより、太陽位置をより正確に特定することができるようにされる。この場合において、上記所定時刻として基準画像データ3の撮像領域についての南中時刻を用いた場合には、撮像領域の地表面が凹凸であっても日影が画像上に生じることを防止することができ、地表面をより正確に把握することが可能になる。また、南中時刻に静止衛星から撮像することで、図4に概念的に示すように、撮像領域、静止衛星、太陽の配置が一直線上に近いものになることから、日影を避けた最適の精度で地表面を撮像することができる。なお、図4において30は地表面、31は雲、32は太陽、33は太陽の軌跡、34は静止衛星を概念的に示すものである。
【0013】
なお、基準画像データ3においてなされる雲画像データ5の判別は、上述した従来例同様、画素値を所定の閾値に比較して行えば足り、この閾値についても従来例同様に適宜決定することが可能である。
【0014】
また、基準画像データ3の撮像領域が広い経度に及ぶ場合、南中時刻を撮像領域の中心位置の経度に基づいて決定することも可能であるが、基準画像データ3を静止衛星画像データ1上で南中時刻と判断できる所定領域を切り出して取得すれば足り、このようにして取得される基準画像データ3の複数を関連づければ、図3に示すように精度を維持してより広い経度に及ぶ複合的な静止衛星画像データ1を得ることができる。
【0015】
一方、上記参考画像データ8は、基準画像データ3とは撮像タイミングを異ならせることにより、その間に雲が移動して基準画像データ3の雲画像データ5に対応する領域で地表面画像データ4が得られる可能性に基づいて取得されるもので、基準画像データ3の雲画像データ5に対応する領域の静止衛星画像データ1が用いられ、静止衛星の最小撮像時間間隔に応じ、例えば基準画像データ3に対して撮像タイミングを15分遅らせたもので構成することができる。この参考画像データ8には、雲画像データ5に対応する領域の地表面画像データ4を得られるものであるか否かを判定するために、上述した基準画像データ3におけると同様に画素毎に地表面画像データ4か雲画像データ5かの判別が行われ、地表面に対応する画素が基準画像データ3の雲の画素の代替として採用される。したがって仮に雲画像データ5が含まれている場合には、当該雲画像データ5に対応する画素の地表面画像データ4は得られず、この場合には、新たに他の参考画像データ8を取得して当該画素の地表面画像データ4の取得が試みられる。
【0016】
このように参考画像データ8が場合によっては複数必要となることに対応し、参考画像データ8を決定する際の優先順位、すなわち、参考画像データ8の撮像日時の優先順位が予め設定される。この優先順位は、基準画像データ3の撮像日時におけるときと太陽位置の違いが少ないタイミングであることのほか、基準画像データ3に含まれている雲5が移動していることを期待できるタイミングであることなどを考慮して適宜設定することが可能で、例えば、静止衛星の現時点での最小撮影時間間隔を考慮すると、基準画像データ3の撮像時刻に最も近い時刻、次に基準画像データ3の撮像日に最も近い日における同時刻、さらにその次にこの同時刻に最も近い時刻の順にすることができる。なお、基準画像データ3が画像データベース2において最新の撮影日時のものである場合、優先順位はより過去の撮影日時にのみ限られるが、基準画像データ3よりもさらに未来の撮影日時がある場合には、これらのいずれか一方を他方に比べてより優先するように設定すれば足りる。また、上述したように撮像日時の異なる基準画像データ3を結合した場合には、参考画像データ8も各基準画像データ3の撮像日時を考慮した撮像日時の異なるものを複数用意するようにすれば精度を維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、日影を考慮することにより、衛星画像データ中に含まれる雲画像データを雲がなければ現れるはずであったと思われる地表面画像データに比較的高い精度で修正する地表面画像の生成方法及び生成装置を提供することができ、静止衛星画像の広域性、反復容易性という利点を活用し、また、同時性という利点をほとんど損ねることなく、地表面を良好に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のフローチャートである。
【図2】本発明のブロック図である。
【図3】基準画像データの複数からなる静止衛星画像データを示す図である。
【図4】南中時刻の様子を示す図である。
【図5】部分画像データの保存、欠損領域の設定ステップについての詳細なフローチャートである。
【図6】参考画像データの取得、補間画像データの設定ステップについての詳細なフローチャートである。
【図7】撮影時刻の異なる静止衛星画像データを示す図で、(a)は図3において2点鎖線で囲む領域に対応するもので、基準画像データの要部を示す図、(b)は参考画像データが取得される静止衛星画像データの要部を示す図、(c)は他の参考画像データが取得される静止衛星画像データの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に本発明に係る地表面画像データの生成の全体的な処理手順を、図2にこの処理手順を実行するコンピュータのブロック図を示す。このコンピュータは、図示しないマウスやキーボード、記憶媒体の読み取り装置、インターネット等へのインターフェイスなどで構成される入力部20と、画像データベース2を格納する記憶部21と、演算部22と、図外のモニタ等に演算結果を出力する出力部23とを備えて構成される。上記画像データベース2は入力部20を介して日本気象協会等から取得した静止衛星画像データ1を蓄積したものであり、静止衛星画像データ1とともに取得される撮像日時データにより静止衛星画像データ1をその撮像日時で検索可能に構成される。この画像データベース2には、静止衛星の撮像時間間隔に応じて例えば15分間隔で撮像された静止衛星画像データ1、1、・・が数年単位の期間に渡って蓄積される。また、上記静止衛星画像データ1は、撮像日時データとともにいわゆるアノテーションデータとして取得される経度および緯度の座標データにより画像上の任意の位置の緯度、経度を特定することができるようにされる。
【0020】
また、上記記憶部21には領域データファイル24も格納される。この領域データファイル24は、地球上で太陽の南中時刻に相当する領域(以下「南中領域」という)を特定するための領域データを格納するもので、各領域データは、上述した静止衛星画像データ1についての座標データで南中領域を特定できるように、例えば東経x度からy度の範囲として構成される。南中領域は時間とともに変化するため、この領域データは、上述した静止衛星画像の各撮像日時と南中領域とを一対一対応して特定し、このため、その領域の広さは、静止衛星の撮像時間間隔に応じて設定される。すなわち、南中時刻は、一般に経度が1度違うと4分変化するため、その精度を最大限高めるために静止衛星の撮像時間間隔である15分単位で南中時刻に相当する領域を切り分けて判断すると、3度75分の経度範囲を所定の撮影時刻において南中時刻に相当する領域に決定することができる。したがって以上によれば、日時を特定することにより、画像データベース2と領域データファイル24とに基づいて当該日時に撮影された静止衛星画像データ1を得ることができ、また、該静止衛星画像データ1において当該日時の南中領域を特定することができる。
【0021】
上述した記憶部21内のデータを利用して地表面画像データを生成する演算部22は、図2に示すように、生成基準日設定手段11、基準画像データ取得手段12、画像切り分け手段13、補間画像データ生成手段14、画像合成手段15を有する。上記生成基準日設定手段11は、例えば入力部20のキーボード等から特定の日が入力されたときに、この日の時点に相当する地表面画像を生成対象に設定にする。この生成基準日設定手段11は、特定の日ではなく特定の月が入力されたときには、この月に含まれる各々の日の時点に相当する地表面画像の複数を生成対象に設定するように構成することが望ましい。
【0022】
上記基準画像データ取得手段12は、このように日が特定されたときに、この日において南中領域を写す静止衛星画像データ1について、この日を代表する地表面画像データの候補としての基準画像データ3を取得する。具体的には、日が特定されることにより、画像データベース2を検索して当該日に属する撮像日時データの複数が特定され、この撮影日時データに対応する静止衛星画像データ1の複数が特定されるとともに、領域データファイル24により各撮影日時の静止衛星画像データ1上における南中領域が特定される。これにより、南中領域を含む各静止衛星画像データ1から南中領域に関する画像データを切り出して基準画像データ3として取得することができる。この基準画像データ3は、図3に示すように、画像データベース2に蓄積される静止衛星画像データ1の撮像領域全域が同図の上段に示すものであるときには、同図の下段に示すように、この撮像領域を上述したように3度75分の経度範囲で分割した各々のサイズになる。すなわち、各々の経度範囲における基準画像データ3は、当該基準画像データ3が写す南中領域が南中時刻とされるタイミングで撮像された静止衛星画像データ1、すなわち画像データベース2においてそれぞれ異なる撮像日時データに対応する静止衛星画像データ1から切り出されたものである。上述した特定の日に属する撮影日時の静止衛星画像データ1の複数から基準画像データ3を各々切り出すことにより、切り出した基準画像データ3を領域データの座標情報に従って並べると、図3に示すように静止衛星画像データ1の全域が基準画像データ3で構成され、言い換えれば複数の基準画像データ3を連結した拡大基準画像データ10を得ることができる。
【0023】
上記画像切り分け手段13は、上述した南中画像データに雲画像データ5が含まれている場合に、該雲画像データ5と地表面画像データ4とを切り分けるもので、これにより切り分けられた雲画像データ5に対応する領域を欠損領域7として設定する欠損領域設定手段25を有して構成される。画像切り分け手段13による切り分けは、上述した従来例等と同様、画素値を所定の閾値と比較して各画素が地表面を反映したもの4か、あるいは雲を反映したもの5かを判別して画素単位で行われ、上記閾値は従来例同様、経験則等により適宜設定される。切り分けられて地表面と判別された画素は部分画像データ6として保存され、雲と判別された画素に対応する領域は、欠損領域設定手段25により地表面画像の欠損領域7に設定される。
【0024】
上記補間画像データ生成手段14は、上述したように画像切り分け手段13により設定された欠損領域7を補間する補間画像データ9を生成するもので、参考画像データ取得手段26と、補間領域判定手段27とを有して構成される。上記参考画像データ取得手段26は、欠損領域7を補間するための候補となる画像データを画像データベース2から参考画像データ8として取得するもので、この参考画像データ8は、上述した基準画像データ3の撮像日時とは異なる撮像日時の静止衛星画像データ1における上述した欠損領域7に対応する領域のもので構成される。異なる撮像日時の静止衛星画像データ1における欠損領域7に対応する領域においても雲がある可能性もあるため、上述した参考画像データ8を取得するための静止衛星画像データ1の撮像日時は、後述する補間領域判定手段27により基準画像データ3の欠損領域7が地表面画像により完全に補間できるまで所定の優先順位に従って順次変更するように設定される。この優先順位は、この実施の形態においては、大まかに言えば、基準画像データ3の撮像日時の前後の時刻、日を前後にした同時刻、その前後の時刻、さらに日を前後して同じように繰り返すというもので、具体的には、例えば4月1日12時0分が基準画像データ3の撮像日時であるとすれば、参考画像データ8の撮像日時としては、例えば、第1に4月1日11時45分、第2に4月1日12時15分、第3に3月31日12時0分、第4に4月2日12時0分、第5に3月31日11時45分、第6に3月31日12時15分、第7に4月2日11時45分、第8に4月2日12時15分、第9に3月30日12時0分、第10に4月3日12時0分といったようになる。
【0025】
また、補間領域判定手段27は、上述したように参考画像データ8が取得されると、画像切り分け手段13におけると同様に、参考画像データ8を対象にして、画素値を所定の閾値と比較して各画素が地表面を反映したもの4か、あるいは雲を反映したもの5かを判別し、地表面と判別された画素を補間画像データ9として保存して当該画素についての欠損領域7の設定を解除し、一方、雲と判別された画素については、欠損領域7の設定を維持される。
【0026】
したがって以上の補間画像データ生成手段14は、先ず、基準画像データ3に設定されている欠損領域7に従って参考画像データ取得手段26が参考画像データ8を取得し、次いで、取得された参考画像データ8を対象にして補間領域判定手段27が画素毎に地表面4か否かを判定し、地表面4と判定された画素を補間画像データ9として保存するとともに、この画素についての基準画像データ3における欠損領域7の設定を解除する。これにより欠損領域7に設定された画素が欠損領域7の設定を解除される、すなわち欠損領域7が解消すれば、欠損領域7に対応する地表面画像データが得られて処理が完了したことを示し、また、欠損領域7が残存していれば、この後、参考画像データ取得手段26により、残存する欠損領域7を対象にして他の参考画像データ8が取得され、さらにこの後、補間領域判定手段27による補間画像データ9の補充および欠損領域7の設定の解除、あるいは維持が繰り返される。
【0027】
上記画像合成手段15は、上述した部分画像データ6と補間画像データ9とを合成し、基準画像データ3の欠損領域7を補間画像データ9で補間して地表面画像データのみで構成された特定の経度範囲についての特定の日を代表する画像データを生成する。また、上述したように領域が連続する複数の基準画像データ3のそれぞれからこのような画像データが取得されるため、画像合成手段15は、これらの画像データをさらに領域データに従って結合して静止衛星画像データ1と同じサイズに生成する。このようにして生成された画像データは、出力部23を介してモニタに表示される。
【0028】
以上のコンピュータによる処理動作を図1に従って説明する。先ず、入力部20からの入力に基づき、生成基準日設定手段11により生成基準日が設定されるステップ(ステップS1)が実行された後、設定された生成基準日に従って基準画像データ取得手段12により生成基準日の南中画像データが基準画像データ3として取得されるステップ(ステップS2)が実行される。この基準画像データ3は図3に示すように領域的に連続する複数の画像データで構成される。
【0029】
次いで、画像切り分け手段13により各基準画像データ3から地表面を表すと思われる画素が部分画像データ6として保存されるとともに、雲を表すと思われる画素に対応する各基準画像データ3上の領域が欠損領域設定手段25により欠損領域7に設定されるステップ(ステップS3)が実行される。この後、欠損領域7が設定された各基準画像データ3に対しては、参考画像データ取得手段26により、その撮影日時の直前の撮像日時の静止衛星画像データ1において欠損領域7に対応する領域から参考画像データ8が取得され、次いで、補間領域判定手段27により、取得した参考画像データ8から地表面を表すと思われる画素を補間画像データ9として保存するとともに、基準画像データ3において対応する画素の欠損領域7の設定を解除することで、基準画像データ3において欠損領域7に設定される画素がなくなるまで、参考画像データ取得手段26により取得する参考画像データ8の撮影日時を順次変更して補間領域判定手段27による処理を繰り返すことにより、基準画像データ3の欠損領域7の全域について地表面を表すと思われる画素で埋めた補間画像データ9が生成されるステップ(ステップS4)が実行される。
【0030】
ここで、以上のステップS3とS4について、図5ないし図7を用いてより詳細に説明する。上述したステップ3においては、ステップ2により取得された各基準画像データ3に対し、先ず、画素値を所定の閾値と比較して各画素が表す画像が判定され(ステップS3ー1)、画素が表す画像が地表面か否かが判断され(ステップS3−2)、これにより地表面ではないとされたときには当該画素が欠損領域7に設定され(ステップS3−3)、反対に地表面4であると判断されたときには当該画素が部分画像データ6として保存される(ステップS3−4)。次いで、以上の処理が基準画像データ3内の全ての画素に対してなされるようにし(ステップS3−5)、また、複数ある基準画像データ3の全てに対してなされるようにする(ステップS3−6)。
【0031】
一方、ステップS4においては、ステップS3で処理された各基準画像データ3に対し、先ず、欠損領域7が設定されているかを確認し(ステップS4−1)、欠損領域7があるときには、次いで、当該基準画像データ3の撮影日時との間で太陽位置が近似するものとして初期設定されているその直前の撮影日時の静止衛星画像データ1から当該基準画像データ3に設定されている欠損領域7に対応する画像データを参考画像データ8として取得し(ステップS4−2)、この参考画像データ8に対して、画素値を所定の閾値と比較して各画素が表す画像が判定され(ステップS4ー3)、画素が表す画像が地表面か否かが判断され(ステップS4−4)、これにより地表面ではないとされたときには当該画素に対応する基準画像データ3の欠損領域7が維持され(ステップS4−5)、反対に地表面であると判断されたときには当該画素が補間画像データ9として保存されるとともに、当該画素に対応する基準画像データ3の画素の欠損領域7の設定が解除される(ステップS4−6)。次いで、以上の処理が参考画像データ8内の全ての画素に対してなされるようにする(ステップS4−7)。またこの後、上述した画素に対する欠損領域7の設定の解除により、当該基準画像データ3から欠損領域7がなくなっているかが判定され(ステップS4−8)、なくなっていない場合には、ステップS4−2において初期設定されている撮影日時条件を変更して(ステップS4−9)、以上のステップS4−2からステップS4−7までの処理を繰り返す。一方、欠損領域7がなくなっている場合には、当該基準画像データ3の処理については終了となるが、基準画像データ3の全てに対して以上の処理を行わせるようにする(ステップS4−10)。
【0032】
図7は、ステップS4ー9の結果、例えば、基準画像データ3の撮像日時に対して、15分前後にずれた静止衛星画像データ1から取得した参考画像データ8により欠損領域7が解除される様子を表したもので、図7(a)は基準画像データ3であり、(b)は基準画像データ3撮影の15分前に撮像された静止衛星画像データ1、(c)は基準画像データ3撮影の15分後に撮像された静止衛星画像データ1であり、各図において28は陸地、5は雲を示す。図7(a)の基準画像データ3において雲に対応する領域は欠損領域7であり、図7(b)では欠損領域7の内、ハッチングして示す領域が地表面4になっていて補間画像データ9に採用され、図7(c)では同様にハッチングして示す領域が、新たに地表面になっていて補間画像データ9に採用される。
【0033】
以上のようにステップS3、S4が終了すると、最後に、画像合成手段15により、このようにして生成された補間画像データ9と部分画像データ6とを合成して地表面4画像データのみで構成された合成画像データを生成し、また、所定経度範囲毎に生成される合成画像データの複数を領域データに従って結合するステップ(ステップS5)が実行されて処理動作が完了する。
【0034】
なお、以上の実施の形態においては、15分の時間間隔で撮像された静止衛星画像データ1を前提としたが、静止衛星画像データ1の撮像能力、画像データベース2に格納する静止衛星画像データ1の撮像時間間隔に応じて適宜に時間間隔、南中領域を変更することができる。また、添付の図面において例示した画像の縮尺は説明を分かりやすくするために選択したもので、画像中に地物等を含むような縮尺の静止衛星画像データ1においても適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 静止衛星画像データ
2 画像データベース
3 基準画像データ
4 地表面を反映したもの
5 雲を反映したもの
6 部分画像データ
7 欠損領域
8 参考画像データ
9 補間画像データ
10 拡大基準画像データ
11 生成基準日設定手段
12 基準画像データ取得手段
13 画像切り分け手段
14 補間画像生成手段
15 画像合成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成基準日を設定した後、
静止衛星画像データに撮像日時データを対応づけて格納する画像データベースを参照して前記生成基準日における所定時刻の静止衛星画像データの所定領域を基準画像データとして取得し、
次いで、画素値と所定の閾値とを比較して前記基準画像データの各画素が地表面を反映したものか雲を反映したものかを判定し、地表面を反映したものと判定された画素を抽出して部分画像データとして保存するとともに、残余の画素により特定される前記基準画像データ上の領域を欠損領域として設定し、
この後、所定の判定基準に従って前記生成基準日の所定時刻に対して太陽位置との関係で密接な時間的関連性を有するものと判定される他の撮像日時の静止衛星画像データにおいて前記欠損領域に対応する画像データを参考画像データとして前記画像データベースを参照して取得した上で、参考画像データの各画素の画素値を所定の閾値と比較して地表面を反映したものか雲を反映したものかを判定し、地表面を反映したものと判定された画素により前記欠損領域が埋められるまで前記他の撮像日時を所定の優先順位に従って順次追加して処理を繰り返すことにより、地表面を反映したものと判定された画素で欠損領域を埋めて構成される補間画像データを生成し、
前記部分画像データと補間画像データとを合成して地表面画像データを生成する地表面画像データの生成方法。
【請求項2】
前記撮像日時データには当該日時を南中時刻とする静止衛星画像データ上の領域データが関連づけられ、
前記基準画像データは、静止衛星画像データから前記領域データに対応する領域を切り出して取得される請求項1記載の地表面画像データの生成方法。
【請求項3】
前記撮像日時データに含まれる日データに基づいて、生成基準日に撮像された複数の静止衛星画像データから基準画像データを取得し、前記領域データに従って関連づけることにより拡大基準画像データが生成され、
前記参考画像データは、拡大基準画像データに含まれる複数の基準画像データの中で欠損領域が設定された基準画像データの各々について、該基準画像データの各々の撮像日時を基準にして所定の判定基準に従って太陽位置との関係で密接な時間的関連性を有するものと判定される撮像日時の静止衛星画像データから取得される請求項2記載の地表面画像データの生成方法。
【請求項4】
前記優先順位として先ず基準画像データの撮像日時に最も近い時刻、次に最も近い日における同時刻、さらにその次には該同時刻に最も近い時刻が設定される請求項1ないし3のいずれかに記載の地表面画像データの生成方法。
【請求項5】
生成基準日を設定する生成基準日設定手段と、
静止衛星画像データに撮像日時データを対応づけて格納する画像データベースを参照して前記生成基準日における所定時刻の静止衛星画像データの所定領域を基準画像データとして取得する基準画像データ取得手段と、
画素値と所定の閾値とを比較して前記基準画像データの各画素が地表面を反映したものか雲を反映したものかを判定し、地表面を反映したものと判定された画素を抽出して部分画像データとして保存するとともに、残余の画素により特定される前記基準画像データ上の領域を欠損領域として設定する画像切り分け手段と、
所定の判定基準に従って前記生成基準日の所定時刻に対して太陽位置との関係で密接な時間的関連性を有するものと判定とされる他の撮像日時の静止衛星画像データにおいて前記欠損領域に対応する画像データを参考画像データとして前記画像データベースを参照して取得した上で、参考画像データの各画素の画素値を所定の閾値と比較して地表面を反映したものか雲を反映したものかを判定し、地表面を反映したものと判定された画素により前記欠損領域が埋められるまで前記他の撮像日時を所定の優先順位に従って順次追加して処理を繰り返すことにより、地表面を反映したものと判定された画素で欠損領域を埋めて構成される補間画像データを生成する補間画像生成手段と、
前記部分画像データと補間画像データとを合成して地表面画像データを生成する画像合成手段とを有する地表面画像データの生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−218434(P2010−218434A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66771(P2009−66771)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【特許番号】特許第4365887号(P4365887)
【特許公報発行日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】