説明

地震予知システム及び地震予知方法

【課題】地震発生の予兆としての電磁ノイズを、効率良くかつ正確に測定して収集する。
【解決手段】既存の無線電話端末や無線タグなどと通信を行う無線通信基地局と、端末局との間の無線通信状態に関する情報を無線通信基地局から取得する。そして、取得した無線通信状態に関する情報についての一定時間ごとの変化を、直近の特定期間内で蓄積し、その蓄積した特定期間内の変化から地震発生の可能性の有無の判断を行う。この判断で無線通信状態が悪い無線通信基地局の近傍の領域を、短期的に地震発生の可能性が高い地域と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震予知システム及び地震予知方法に関し、特に地震発生前に生じる電磁ノイズを利用した地震予知システム及び地震予知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地震予知技術としては、例えば地殻の変動量を観測して、その地殻変動量が大きい場合に、地震が発生する可能性が高いとする技術が知られている。ところが、このようは技術では、大きな地殻変動があったとしても、地殻変動が引き起こす地震が、いつ頃、どの程度で起こるか、正確な予測は不可能である。すなわち、予測できたとしても、その予測で得られる情報は、「数ヶ月以内に××地方で大きな地震が起きる可能性がある」という程度であり、短期的予測の観点からは正確性に乏しい。
【0003】
これに対して、地震発生よりも数週間前から1日前程度までに観測される前兆現象を観測することで、短期的な地震予測が可能であることが既に知られている。具体的には、地震発生よりも1週間程度前から電磁気現象が起こることが知られており、その電磁気現象を観測することで、短期的な地震予知が可能なことが既に知られている。
【0004】
電磁気現象の1つとして、震源となる地域の近傍の地圏で、地震発生の数日前から1日前程度にピークとなる電磁ノイズが発生する。すなわち、震源となる地域の地殻の圧力上昇などに伴って、微少岩石破壊が地震に先行して起こることで、圧電効果や摩擦電気などのメカニズムにより電荷分離(すなわち、電流)が発生することで、地表近くで電磁ノイズが発生することが知られている。
この電磁ノイズは、従来、比較的低い周波数で発生するとされていたが、近年の観測で、高い周波数帯でも発生することが判ってきた。すなわち、10Hz程度以下のULF(Ultra Low Frequency)帯から、ELF(Extremely Low Frequency)帯,VLF(Very Low Frequency)帯,LF(Low Frequency)帯、更にはVHF(Very High Frequency)帯や、UHF(Ultra High Frequency)帯などの数百MHzや数GHzの周波数でも、電磁ノイズが発生することが判明した。
【0005】
図15は、ある地震が発生した際に観測された、地震発生より5日前から発生当日までの、特定の周波数(VHF帯)での電磁ノイズレベルの変化を示した図である。図15では、右端の×印の箇所が地震の発生時刻であり、4〜5日前に定常時のノイズレベルより若干高い電磁ノイズが観測され、さらに1〜2日前に、さらに高い電磁ノイズが観測されている。このような電磁ノイズの発生量の変化を観測することで、地震の発生の可能性を高い精度で検知できる。現在の電磁ノイズの観測精度では、マグニチュード4程度以上の規模の地震が陸地(又は陸地の近くの海中)であった際に、その前兆としての電磁ノイズが観測されている。
【0006】
特許文献1には、電磁ノイズを検知して地震発生の予測解析を行う点についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−26479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のように、ラジオ放送受信機などの電磁波の受信装置を異なる地域に多数設置して、それぞれの受信装置での受信状況を解析することで、地震発生の予兆を検出して、短期的な地震発生の予知が可能である。
【0009】
ところが、特許文献1に記載される受信システムで正確な観測を行うためには、観測範囲内に多数の受信装置を設置する必要がある。すなわち、震源地をある程度正確に判定するためには、電磁ノイズが発生した場所を特定する必要があり、例えば日本全体を観測範囲とするためには、日本中に極めて多数の受信装置を設置する必要があり、システム構成が非常に膨大なものになる問題がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みて、地震発生の予兆としての電磁ノイズを、効率良くかつ正確に測定して、短期的な地震予知を行うことができる地震予知システム及び地震予知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の地震予知システムは、無線通信基地局と、その無線通信基地局の周囲に存在する端末局との間で無線通信を行う無線通信系での、無線通信基地局と端末局との間の無線通信状態に関する情報を無線通信基地局から取得する監視部を備える。また、その監視部が取得した無線通信状態に関する情報についての一定時間ごとの変化を、直近の特定期間内で蓄積し、その蓄積した特定期間内の変化から地震発生の可能性の有無の判断を行う解析部を備える。
【0012】
また本発明の地震予知方法は、無線通信基地局と、その無線通信基地局の周囲に存在する端末局との間で無線通信を行う無線通信系での、無線通信基地局と端末局との間の無線通信状態に関する情報を無線通信基地局から取得する処理を行う。そして、取得した無線通信状態に関する情報についての一定時間ごとの変化を、直近の特定期間内で蓄積し、その蓄積した特定期間内の変化から情報地震発生の可能性の有無の判断を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、例えば無線電話用基地局や無線タグリーダなどの広域内に超多点に設置された無線基地局を介して取得した情報から、その基地局の設置箇所近傍の無線通信状態の傾向が判り、間接的に無線通信状態が悪化した地域が判断でき、既存の無線通信システムを利用して、地震が発生する可能性がある地域を的確に判断できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態による概要を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態によるシステム例を示す構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による各装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による基地局と端末装置との間での伝送データ例を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態による基地局毎の集計処理例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態による解析処理例1を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態による解析処理例2を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施の形態による端末装置ごとの出力指示状態と一定時間ごとの指示の平均の例を示す特性図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態による特定期間での基地局ごとの変化例を示す特性図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態によるシステム例を示す構成図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態によるリーダ毎の集計処理例を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施の形態による解析処理例1を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施の形態による解析処理例2を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態の変形例のシステム例を示す構成図である。
【図15】電磁ノイズと地震との関係の例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.システム全体の概要]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態の例の概要を説明する。
本実施の形態の例では、図14で説明した地震発生当日より数日前などに検出される電磁ノイズを、無線電話システム用基地局を使用して検出する。
例えば、図1に示すように、地球Eの特定の箇所を震源eとして、地震が発生したとする。このとき、背景技術の欄で既に説明したように、その震源eの近傍の地表近くで、地震発生より数日前から発生当日まで、電磁ノイズNaが発生することが、電磁波の観測から知られている。例えば震源eから約100km以内の領域で、電磁ノイズNaが発生することが知られている。
なお、電磁ノイズが発生する継続時間や発生間隔、並びに電磁ノイズの大きさについては、地震の大きさ(マグニチュード)や地表から震源までの深さなどと関係があり、震源からの距離についても、100kmは一つの例である。
【0016】
ここで本実施の形態の例では、無線電話用基地局BS1,BS2,BS3,・・・がエリアごとに設置されていることを利用して、それぞれの無線電話用基地局BS1,BS2,BS3,・・・での端末装置との無線通信状態から、電磁ノイズNaの発生状況を推測する。
具体的な電磁ノイズNaの発生状況の推測処理については後述するが、図1の状況では、震源eの近傍に無線電話用基地局BS1があり、無線電話用基地局BS1と端末との無線通信状態が電磁ノイズNaで妨害を受ける。
【0017】
この無線電話用基地局BS1による無線通信状態が、電磁ノイズNaで妨害を受けていることを検出し、その検出状態の解析を行うことで、無線電話用基地局BS1による無線通信エリアの近傍で地震が発生する可能性が短期的に高いことを検出するものである。
【0018】
[2.無線電話システムを利用したシステム構成例]
図2は、本発明の第1の実施の形態のシステム構成例である。
図2に示すように、無線電話用の無線通信基地局として、第1基地局10と第2基地局20と第3基地局30とを設置する。図2では、3つの基地局10,20,30だけを示すが、実際には無線電話サービス提供エリアに応じて、非常に多数の基地局が配置される。
それぞれの基地局10,20,30は、各基地局10,20,30を中心として形成される半径数km程度のサービスエリア内の端末装置と無線通信を行う。例えば図2の例では、第1基地局10が、端末装置11,12,13,14,15と無線通信を行う。また、第2基地局20が、端末装置21,22,23,24と無線通信を行う。さらに、第3基地局30が、端末装置31,32,33と無線通信を行う。無線通信に使用する周波数帯としては、例えば数百kHz帯から数GHz帯のHF,VHF,UHF帯である。
基地局と端末装置とが無線通信を行っている状態には、端末装置が通話中やデータ通信中で、基地局と連続的にデータパケットのやり取りを行っている状態と、単に基地局からの待ち受け信号だけを端末装置で間欠的に受信して、その待ち受け信号に対する応答だけを行う待ち受け状態とがある。
【0019】
各基地局10,20,30は、例えば100チャンネル程度の複数の無線通信チャンネルを備えて、1チャンネル当たり1台の端末装置と通話などの通信が行える。また、1チャンネル当たり30台程度の端末装置を待ち受け状態に収容でき、合計で例えば3000台程度の収容が可能である。なお、ここでのチャンネルは、伝送帯域を通信方式に応じて分割して設定する通信チャンネルであり、周波数チャンネルとは異なる。例えば、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)方式の場合には、1つのチャンネルに1つの拡散符号を割り当てることになる。
【0020】
そして、各基地局10,20,30と制御局100とを幹線通信路で接続し、制御局100が各基地局10,20,30と各端末装置11,12,・・・との無線通信を制御する。例えば、無線電話サービスに加入する全ての端末装置が、どの基地局のエリアで待ち受け状態かを制御局100が把握し、特定の端末装置への着信時には、待ち受けをしている基地局を経由して、該当する端末装置に呼び出し信号を送信する。
【0021】
ここで本実施の形態の例の制御局100は、各基地局10,20,30での端末装置との無線通信状態を監視する機能を備える。具体的には、例えば各基地局が収容した台数が適正であるか、各基地局での無線通信状態に異常がないか等を、制御局100内で監視する。本実施の形態の例では、その監視項目の1つに、パワーコントロール信号の状態を加える。すなわち、各基地局10,20,30と端末装置との間で無線伝送される制御データの1つに、通信相手から無線送信する信号の出力を指示するパワーコントロール信号がある。パワーコントロール信号の具体例は後述するが、基地局から端末装置に対して送信するパワーコントロール信号で、端末装置からの無線信号の送信出力を強くする指令と、端末装置からの無線信号の送信出力を弱くする指令の、少なくとも2段階の指令を行う。
このパワーコントロール信号を受信した端末装置では、その端末装置が備える出力アンプのゲインを、指示に基づいて1段階高くするか、あるいは1段階弱くする処理を行う。基地局でのパワーコントロール信号の生成は、該当する端末装置からの受信信号のレベルや受信エラーの発生状況などに基づいて行われる。
【0022】
このようなパワーコントロール信号によって端末装置からの送信出力を基地局側が制御することで、基地局で各端末装置から送信される信号を受信する際に、どの端末装置からの信号であっても、信号の受信レベルを一定レベルの範囲内に収めることができる。この一定レベルの範囲内に収めることで、基地局では、どの端末装置からの信号についても良好に受信することができる。例えば、CDMA方式を無線伝送方式として適用した無線電話システムでは、各端末装置からの信号が、拡散コードで拡散されて同一周波数で伝送される。そして、それぞれの端末装置からの信号を受信信号から適正に取り出すためには、それぞれの端末装置からの信号の受信強度を一定範囲内にする必要がある。このような制御を行うのは、基地局から比較的近い位置の端末装置からのレベルの強い受信信号で、基地局から比較的遠く離れた位置の端末装置からの受信信号が妨害を受けて受信できなくなる、いわゆる遠近問題が生じないようにするためである。
なお、ここでは遠近問題が比較的顕著に現れるCDMA方式を例にして説明したが、多数の端末装置からの信号を同時に受信処理する無線電話用基地局の場合、どのような無線伝送方式であっても、同様なパワーコントロール信号による端末制御が必要である。
【0023】
図2の説明に戻ると、制御局100が各基地局10,20,30でのパワーコントロール信号の送信状態についてのデータを集計して、制御局100内のデータベースが記憶する。そして、制御局100に接続された解析装置110で、制御局100内のデータベースが記憶したパワーコントロール信号の送信状態についてのデータの解析を行う。その解析結果から、通常と異なる状態の基地局が検出された場合に、地震が発生する可能性についての評価を行う。
【0024】
[3.基地局と端末装置の構成例]
次に、図3を参照して、基地局と端末装置の構成を説明する。図3では、第1基地局10と端末装置11の構成例を示す。第1基地局10は、この基地局が送受信可能なチャンネルごとに個別の無線通信処理系を備える。すなわち、第1無線通信処理系91,第2無線通信処理系92,第3無線通信処理系93,・・・を備え、それぞれの無線通信処理系91,92,93,・・・で1つのチャンネルの処理を行い、1つの端末装置と無線通信処理を行う。各無線通信処理系91,92,93,・・・は、有線処理系82を介して他の基地局や図示しない有線電話網などと接続されて、各端末装置の通信相手などと通信を行う。また、第1基地局10は、通信状態監視部80を備えて、その通信状態監視部80で各端末装置11,12,・・・との無線通信状態を監視し、その監視結果を制御局100に伝送する。
【0025】
端末装置11の構成について説明すると、端末装置11は、アンテナ1を備え、アンテナ1に接続された受信処理部2で受信処理を行うことで、基地局から伝送された下り回線のパケットを得る。そして、受信して得たパケットをデータ処理部3に送り、データ処理部3で受信パケットに対応した処理を行う。後述するように、受信パケットには制御データが含まれ、さらにその制御データの1つにパワーコントロール信号がある。つまり、パワーコントロール信号は、1単位のパケットのデータを受信するごとに含まれる。
【0026】
また、端末装置11内のデータ処理部3で得た送信パケットを送信処理部4に供給し、送信チャンネルで無線伝送するための送信処理を行う。そして、送信処理部4で得られた送信信号を出力アンプ(PA)5で送信出力を増幅した後、アンテナ1に供給して、無線送信させる。この場合、出力アンプ5の増幅率は、受信したパワーコントロール信号に基づいて設定する。例えば、パワーコントロール信号で送信出力を高くする指示があるとき、出力アンプ5のゲインを1段階高くする。また、パワーコントロール信号で送信出力を弱くする指示があるとき、出力アンプ5のゲインを1段階低くする。パワーコントロール信号で送信出力を維持する指示があるときには、出力アンプ5のゲインをそのまま維持する。
【0027】
各基地局の監視を行う制御局100は、基地局制御部101が各基地局からのデータを集計し、集計されたデータを制御データ用データベース(制御データ用DB)102に記憶させて、各基地局と端末装置との通信の実行状態の記憶を行う。例えば、どの端末装置からどのような発信が行われて、何分間通話したのか等の詳細が記憶される。
また、基地局制御部101は、各基地局での無線通信状態が適正かどうかを判断するために必要な情報についても収集して、制御データ用データベース102に記憶させる。例えば、それぞれの基地局での端末収容数が適正かどうかなどを制御データ用データベース102に記憶させる。
【0028】
ここで、本実施の形態の場合には、基地局制御部101が収集して制御データ用データベース102に記憶させるデータの1つに、各基地局から端末装置へのパワーコントロール信号の送信状態のデータがある。
そして、制御データ用データベース102が記憶した、パワーコントロール信号の送信状態のデータを、制御局100に接続された解析装置110に随時転送する。解析装置110では、転送されたパワーコントロール信号の送信状態のデータを受信部111で受信した後、通信状態データベース(通信状態DB)112が受信したパワーコントロール信号の送信状態のデータを記憶する。この通信状態データベース112では、少なくとも過去の数日間、好ましくは過去の2週間程度の各基地局でのパワーコントロール信号の送信状態のデータを記憶する。
【0029】
通信状態データベース112が記憶したパワーコントロール信号の送信状態のデータは、解析処理部113で随時読み出して解析処理を行い、その解析結果を表示部114で表示する。本実施の形態の例では、基地局ごとのパワーコントロール信号の送信状態の解析から、それぞれの基地局のサービスエリアでの地震発生の可能性の判定を行い、その判定結果を表示部114で表示する。パワーコントロール信号の送信状態の解析から地震発生の可能性を判定する具体例は後述する。
【0030】
[4.端末装置と基地局との間での伝送例]
次に、図4を参照して、端末装置と基地局との間でのデータ伝送例を説明する。
図4では、第1基地局10と端末装置11との間の伝送例を示すが、システム内のいずれの基地局と端末装置との間でも、基本的に同じデータ構成で伝送が行われる。
第1基地局10から端末装置11には下り回線パケットPDを無線伝送し、端末装置11から第1基地局10には上り回線パケットPUを無線伝送する。これらのパケットPD,PUは、決められた周期で伝送される。
【0031】
下り回線パケットPDには、制御データdcとペイロードdpとを配置する。ペイロードdpの区間には、音声データやウェブからダウンロードするデータなどが配置される。制御データdcの区間には、基地局側から端末装置に指示する各種データが配置される。この下り回線の制御データdcに配置されるデータの1つに、パワーコントロール信号dxがある。このパワーコントロール信号dxは、図3に示した出力アンプ5で送信出力を指示する信号であり、1ビットから数ビット程度の信号で、送信出力アップ又は送信出力ダウンが示される。
基地局からパワーコントロール信号dxで送信出力アップを指示する状態は、基地局での上り回線パケットPUの受信レベルやエラーレートが規定範囲未満で、受信状況が良くない状況である。また、基地局からパワーコントロール信号dxで送信出力ダウンを指示する状態は、基地局での上り回線パケットPUの受信レベルが過大などで、受信状況が規定範囲を超えている場合である。
【0032】
上り回線パケットPUについても、制御データucとペイロードupとを配置する。ペイロードupの区間には、音声データなどが配置される。制御データucの区間には、端末装置から基地局や制御局に指示する各種データが配置される。この上り回線パケットPUの制御データucには、端末装置での受信状態報告信号uxが含まれる場合もある。この受信状態報告信号uxを受信した基地局では、例えば受信状態が悪い状態の受信状態報告信号uxであるとき、他の基地局への切り換え処理などを行う。
【0033】
本実施の形態の例では、基地局10では、端末装置11に送信したパワーコントロール信号dxを、基地局10内の通信状態監視部80(図2)に送り、通信状態監視部80が無線通信状態を監視する構成としてある。また、端末装置11から受信状態報告信号uxを受信するシステムの場合には、この受信状態報告信号uxで得た端末装置での受信状態を通信状態監視部80に送り、無線通信状態の監視に使用する。
【0034】
なお、この図4に示した下り回線パケットPDと上り回線パケットPUは、実際にペイロードとしての音声データなどを伝送する際のパケットであり、例えば待ち受け状態などには、別の構成の信号のやり取りが行われる。また、制御データに続いてペイロードのデータを配置する構成は一例であり、無線電話システムによりデータ配置は異なる。
【0035】
[5.無線通信状態の集計及び解析処理]
次に、本実施の形態の例での無線通信状態の集計及び解析を行って、地震の発生の可能性の判定を行う処理について説明する。
まず、図5のフローチャートを参照して、無線通信状態の集計処理について説明する。
各基地局では、端末装置との交信時のパワーコントロール信号の送信状態を記録する(ステップS11)。このパワーコントロール信号は、図4に示したように、1つの送信パケットごとに配置される信号であり、例えば一定時間の間(1分間など)に、送信出力アップの信号を××回送信、送信出力ダウンの信号××回送信のように記録する。
【0036】
そして、1つの基地局内で予め決めた特定台数(ここではN台とする)の端末装置とのパワーコントロール信号の送信状態のデータが集まったか否かを判断する(ステップS12)。ここで、記録したデータがN台に満たない場合には、ステップS11の記録処理を継続して行う。そして、ステップS12の判断で、記録したデータがN台になったと判断したとき、そのN台の端末装置に対して送信したパワーコントロール信号の状態を平均化して記録する(ステップS13)。すなわち、例えば特定時間内に、N台の端末装置に対して送信したパワーコントロール信号の内で、送信出力アップの信号を送信した回数の合計と、送信出力ダウンの信号を送信した回数の合計を求め、それぞれの回数の合計から、平均の送信状態を求める。例えば、平均の送信状態として、送信出力アップの信号と送信出力ダウンの信号との比率を求める。この平均の送信状態を求めた後、ステップS11の記録処理に戻る。
【0037】
このようにして得られた各基地局での平均の送信状態のデータを制御局100(図2)に随時送信し、制御局100に接続された解析装置110で解析する。
図6及び図7は、解析装置110での解析処理例を示した図である。
図6のフローチャートから説明すると、解析装置110は、基地局毎のパワーコントロール信号の送信状態の記録データを取得すると、その記録データをある程度の時間ごとに平均化する(ステップS21)。例えば、基地局から送信された1分ごとの送信状態のデータを、1時間ごとに平均化するなど、比較的長時間の傾向を示すデータとして解析用に記録する。但し、基地局から送信された比較的短時間ごとの平均のデータをそのまま記録してもよい。
その後、過去の15日間の記録データの平均化を行い(ステップS22)、その過去の15日間の記録データの平均値に対する、ステップS21で算出した平均のデータの分散を算出し、その算出した分散を記録する(ステップS23)。
【0038】
次に、図7のフローチャートに示すように、直近の1日間の1時間ごとの平均のデータの読み出しを行い(ステップS31)、その読み出した直近の1日間の平均のデータと、過去の15日間の記録データの平均値とを比較する(ステップS32)。この比較では、過去の15日間の平均値よりも予め設定した値以上に差があるか否かを判断して、比較結果に異常があるか否かを判断する。そして、異常があると判断されたか否かを判定する(ステップS33)。
【0039】
ステップS33で異常がないと判定された場合には、該当する基地局の周辺において、地震の予兆となる電磁ノイズの検出がないと見なして、地震が発生する可能性がないと判断する(ステップS34)。すなわち、直近の1日間の送信出力アップの信号と送信出力ダウンの信号との比率が、過去の15日間の平均の比率とそれほど大きな変化がない場合に、地震が発生する可能性がないと判断する。
【0040】
そして、ステップS33で異常があると判断された場合には、該当する基地局の周辺において、地震の予兆となる電磁ノイズを検出したと見なして、地震が発生する可能性があると判断する(ステップS35)。すなわち、直近の1日間の送信出力アップの信号と送信出力ダウンの信号との比率が、過去の15日間の平均の比率と比べて一定以上の変化がある場合に、該当する基地局の周辺で、地震が発生する可能性があると判断する。
【0041】
このステップS34及びステップS35での判断結果が解析装置110の解析処理部113(図3)で得られることで、その判断結果が表示部114に供給され、表示部114で地震が発生する可能性の有無が、各基地局が属するエリアごとに表示される。例えば、ある基地局で地震が発生する可能性があると判断された場合、その基地局の位置を地図中に表示し、文字などで判断されたデータの詳細などを表示する。
【0042】
この図6及び図7による解析状態の例を示したのが、図8である。この図8(a),(b),(c)は、図2に示した第1基地局10と無線通信を行っている3台の端末装置11,12,13でのある時間でのパワーコントロール信号の送信状態の変化を示した図である。図8(a),(b),(c)において、出力「高」の状態は、送信出力アップを指示した信号が出力された状態であり、出力「低」の状態は、送信出力ダウンを指示した信号が出力された状態を示す。
例えば、端末装置11では、図8(a)に示すように、あるタイミングから出力「高」の状態が継続したとする。また、別の端末装置12では、図8(b)に示すように、出力「高」の状態と出力「低」の状態とが比較的頻繁に変化しているが、端末装置11よりは短い期間、出力「高」の状態が継続したとする。さらに別の端末装置13では、図8(c)に示すように、端末装置11と同様に、あるタイミングから出力「高」の状態が一定時間継続したとする。
【0043】
このような各端末装置11,12,13に対する指示は、基本的にそれぞれの端末装置11,12,13の状態に依存するものである。すなわち、電磁波ノイズを考慮しないで、出力「高」の指示が連続するときは、該当する端末装置が基地局から遠ざかりながら通話している状態が想定される。逆に、出力「低」の指示が連続するときには、該当する端末装置が基地局に近づいている状態が想定される。また、出力「高」と出力「低」が比較的頻繁に交互に表れる状態の場合には、該当する端末装置と基地局との距離に、あまり変化がない状態が想定される。
【0044】
したがって、1台毎の端末装置の状態を見た場合には、例えば図8(a)の端末装置11の出力指示例のように、一時的に出力「高」の状態が連続することもあり得る。しなしながら、図8(a),(b),(c)に示すように、ある期間において、多数の端末装置がほぼ同時に出力「高」の状態となることが頻繁に発生したとき、そのことが、該当する基地局のサービスエリアで電磁波ノイズが発生していることを示す可能性が高い。
例えば、第1基地局10で各端末装置11,12,13,・・・に対して出力「高」を指示した数の平均の変化が、図8(d)に示す状態で、その出力「高」を指示した数が通常の平均値よりも高い値に設定した閾値TH1を超えたとき、図7のフローチャートのステップS35で地震の発生ありと判断される。
【0045】
図9は、地震発生より15日前からの各基地局でのパワーコントロール信号で出力「高」を指示した回数の変化傾向を示した図である。この図9は、図1に示したように、基地局BS1,BS2,BS3,・・・が配置された状態で、基地局BS1の通信サービスエリア内を震源e0とする地震が発生する15日前からの、パワーコントロール信号で出力「高」を指示した回数の変化例である。
この例では、図9(a)に示すように、基地局BS1からのパワーコントロール信号で出力「高」を指示した回数と、基地局BS3からのパワーコントロール信号で出力「高」を指示した回数が、他の基地局BS2,BS4〜BSn(nは任意の数)での平均よりも多くなっている状態である。したがって、基地局BS1のエリアや、基地局BS1に隣接した基地局BS3のエリアの付近で、地震の発生の可能性が高いことが示される。
【0046】
なお、図9(a)に示すパワーコントロール信号で出力「高」を指示した回数の変化特性は、図9(b)に示すような1時間などの一定時間ごとの回数の平均値の変化を示したものである。さらに、図9(b)に示すような1時間などの一定時間ごとの回数の平均値は、図9(c)に示した、各送信パケットに付加されるパワーコントロール信号をある程度の時間カウントした回数の平均値である。
この図9に示すようなパワーコントロール信号で出力「高」を指示した回数の変化特性を見ることで、現在の状態が、地震発生よりどの程度前なのかを判断することができる。例えば、地震発生より5日から3日前程度に表れる比較的低い電磁ノイズと、地震発生より2日前から1日前程度に表れる比較的高い電磁ノイズのいずれであるかを判別して、地震発生までどの程度日数や時間があるのかを予測してもよい。あるいは、地震発生より15日から7日程度前に発生する電磁ノイズを判別してもよい。
【0047】
なお、ここでは基地局から端末装置に送信されるパワーコントロール信号を、無線通信状態を反映した信号であるとして、解析に使用したが、端末装置から基地局に対して無線通信状態を報告する信号がある場合には、その信号を利用して同様の解析を行う構成としてもよい。例えば、図4の上り回線パケットPUに含まれる受信状態報告信号uxを基地局で集計して、無線通信状態を判断してもよい。受信状態報告信号uxは、基地局に対するパワーコントロール信号でもよい。
【0048】
[6.RFIDを使用したシステムの例]
次に、本発明の第2の実施の形態の例を説明する。
本実施の形態の例では、図14で説明した地震発生当日より数日前などに検出される電磁ノイズを、RFID(Radio Frequency Identification)を読み取るシステムを利用して検出する例である。
RFIDは、無線タグなどと称され、リーダと称される読み取り装置(基地局)を使用して、そのRFIDと無線通信を行うことで、RFIDに埋め込まれたID情報などを検出して、そのID情報から個体識別を行う。また、リーダライタと称される読み取り・書込装置を使用して、RFIDの記憶情報の読み取りと、そのRFIDへの書込みとを行うシステムもある。無線通信を行う周波数帯としては、例えば十数MHzや数百MHzが使用される。リーダと無線通信を行うRFIDは、リーダからの電波を受信して電源として利用するタイプのものと、電池を内蔵したタイプのRFIDのいずれでもよい。
【0049】
図10の例では、例えば工場210内で、多数のリーダ211,212,213を設置して、それぞれのリーダ211,212,213が近隣(例えば数センチから数m程度の範囲内)に存在するRFIDと無線通信を行う。
このように無線通信を行うことで、工場210内で製造される製品の在庫管理などが可能になる。
【0050】
また、ビル220において、出入口の近傍などにリーダ221を配置して、そのリーダ221でIDカードとしてのRFIDを認識する。このようにすることで、ビル220への入館が許可された者が所持するRFIDを検出した場合にだけ、ビルの出入口の施錠を解除する。
また、商店230において、会計用レジの近傍にリーダ231を配置し、クレジットカードやプリペイドカードとしての電子マネーとしてのIFIDを認識する。
さらに、家屋240において、出入口の近傍などにリーダ241を設置して、出入口の施錠や解錠をRFIDで指示する構成とする。
【0051】
これらの各リーダ211〜213,221,231,241は、インターネットなどのネットワーク200を経由して、リーダ監視装置250に対して、RFIDとの通信状態を随時報告する構成とする。リーダ監視装置250は、例えば警備会社などのリーダでの状態を監視する場所に設置する。リーダ監視装置250が監視するリーダは、出来るだけ多数のリーダが広いエリアに分散して存在していることが好ましい。リーダ監視装置250では、各リーダの設置位置についての情報を予め登録しておく。
そして本実施の形態の例では、各リーダからリーダ監視装置250に報告するデータの1つとして、各リーダで、近隣の無線通信エリアにRFIDがあることを検出しながら、その検出したRFIDと正しく通信ができず、通信に失敗した回数のデータを用意する。なお、以下の説明ではこのデータを、通信失敗回数と述べる。
リーダ監視装置250には解析装置251を接続し、この解析装置251で、通信失敗回数の増減についての解析を行い、地震の発生の可能性の判定を行う。
【0052】
[7.リーダでの無線通信状態の集計及び解析処理]
次に、本実施の形態の例での無線通信状態の集計及び解析を行って、地震の発生の可能性の判定を行う処理について説明する。
まず、図11のフローチャートを参照して、リーダでの無線通信状態の集計処理について説明する。
各リーダでは、例えば過去の1時間の間の、RFIDとの交信時の失敗回数と、RFIDとの交信に成功した回数との比率から、受信エラー発生率を求め、記憶する(ステップS41)。例えば、過去1時間の間に、RFIDとの交信に99回成功し、1回失敗した場合、この1時間での受信エラー率が1%になる。この受信エラー率のデータを、ネットワーク200を介してリーダ監視装置250に報告する。
そして、リーダ監視装置250で、報告されたリーダからの1時間ごとの受信エラー率のデータを、リーダが設置された地域ごとに平均化して記憶する(ステップS42)。
【0053】
このようにして得られた各地域でのリーダの受信エラー率のデータを、リーダ監視装置250に接続された解析装置251で解析する。
図12及び図13は、解析装置251での解析処理例を示した図である。
図12のフローチャートから説明すると、解析装置251は、過去の15日間の記録データの平均化を行い(ステップS51)、その過去の15日間の記録データの平均値に対する、ステップS51で算出した平均のデータの分散を算出し、その算出した分散を記録する(ステップS52)。
【0054】
次に、図13のフローチャートに示すように、直近の1日間の1時間ごとの平均のデータの読み出しを行い(ステップS61)、その読み出した直近の1日間の平均のデータと、過去の15日間の記録データの平均値とを比較する(ステップS62)。この比較では、過去の15日間の平均値よりも予め設定した値以上に差があるか否かを判断して、比較結果に異常があるか否かを判断する。そして、異常があると判断されたか否かを判定する(ステップS63)。
【0055】
ステップS63で異常がないと判定された場合には、該当するリーダの設置地域の周辺において、地震の予兆となる電磁ノイズの検出がないと見なして、地震が発生する可能性がないと判断する(ステップS64)。すなわち、直近の1日間のリーダの受信エラー率が、過去の15日間の平均のリーダの受信エラー率とそれほど大きな変化がない場合に、地震が発生する可能性がないと判断する。
【0056】
そして、ステップS63で異常があると判断された場合には、該当するリーダの設置地域の周辺において、地震の予兆となる電磁ノイズを検出したと見なして、地震が発生する可能性があると判断する(ステップS65)。すなわち、直近の1日間のリーダの受信エラー率が、過去の15日間の平均のリーダの受信エラー率と比べて一定以上の変化がある場合に、該当するリーダの設置地域の周辺で、地震が発生する可能性があると判断する。
【0057】
このステップS64及びステップS65での判断結果が解析装置251で得られることで、その判断結果の表示を行う。例えば、あるリーダの設置地域で地震が発生する可能性があると判断された場合、そのリーダの設置地域の位置を地図中に表示し、文字などで判断されたデータの詳細などを表示する。
【0058】
このように、RFIDのリーダでの受信エラー率を使用して、電磁ノイズの発生状況を予測して、地震の発生の可能性を評価することが可能になる。なお、この例では、近隣の無線通信エリアにRFIDがあることを検出して、そのRFIDとの通信に失敗した場合を受信エラーとしたが、例えばリーダでRFIDと正しく通信ができた場合でも、受信データの一部に、エラー訂正符号などで訂正可能なエラーが検出された場合を、受信エラーとしてもよい。
また、図10に示したリーダの使用例は、一例を示したものであり、その他のRFID用のリーダを使用してもよい。
【0059】
[8.変形例]
ここまで説明した実施の形態の例では、無線電話システムに適用した例と、RFIDのリーダに適用した例を説明したが、無線通信エリアを超多点に設定して行う無線通信システムであれば、他の無線通信システムに適用してもよい。
例えば図14に示すように、インターネット300に接続される複数の無線LANアクセスポイント310,320,330,・・・のそれぞれが、家屋に設置したスマートメータなどと無線通信を行う構成に適用してもよい。各家屋側では、家屋311内の子局311aがスマートメータ311bと接続してあり、子局311aが無線LANアクセスポイント310と無線通信を行う。また、家屋312内の子局312aがスマートメータ312bと接続してあり、子局312aが無線LANアクセスポイント310と無線通信を行う。図14に示した他の家屋321,322,323,331,332についても、近隣の無線LANアクセスポイント320又は330と無線通信を行う子局と、その子局に接続されたスマートメータを備える。
【0060】
スマートメータ311b,312bは、家屋内の電力やガスの使用量を計測して、その計測で得た情報を、接続された子局などを経由して、インターネット300に接続された管理装置301に送信する機器である。また、高度化されたスマートメータの場合には、管理装置301側からインターネット300を経由して指示を受信し、電力使用量の制限などを行うこともできる。
【0061】
各無線LANアクセスポイント310,320,330,・・・と各子局311a,312a,・・・との無線通信は、IEEE802.11規格に準拠した無線通信を行う。例えば、IEEE802.11b規格として規定された、2GHz帯を使用した無線通信を行う。あるいは、現在規格化が進んでいるIEEE802.af規格やIEEE802.ah規格などのような、1GHzよりも低い数百MHz帯などの周波数帯を使用して、無線LANとしては比較的長距離(例えば数百m程度)の無線伝送を可能にする技術を適用してもよい。
【0062】
このようなシステム構成において、各無線LANアクセスポイント310,320,330,・・・と各子局311a,312a,・・・との無線通信状態についての情報を、アクセスポイント側又は子局側が収集する。無線通信状態についての情報は、例えば第1の実施の形態で説明したパワーコントロール信号の状態でもよい。あるいは、第2の実施の形態で説明した受信エラー率についての情報でもよい。
そして、この無線通信状態についての情報の一定時間での変化を、無線LANアクセスポイント又は子局から、管理装置301に定期的に送信する。管理装置301には解析装置302を接続し、解析装置302で、各無線LANアクセスポイント310,320,330,・・・と各子局311a,312a,・・・との無線通信状態の変化の解析を行う。この無線通信状態の変化の解析は、既に第1又は第2の実施の形態で説明した処理を適用し、過去の数週間の変化から、それぞれの無線LANアクセスポイント310,320,330,・・・が設置されたエリアごとに、地震が発生する可能性についての判断を行う。
【0063】
このようにして、無線LANアクセスポイントを使用した無線通信状態の変化を利用して、地震が発生する可能性についての判断が可能になる。なお、図14に示したようにスマートメータが接続された子局を使用したのは1つの例であり、その他の処理を行う無線LAN用の子局を使用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…アンテナ、2…受信処理部、3…データ処理部、4…送信処理部、5…パワーアンプ(PA)、10…第1基地局、20…第2基地局、30…第3基地局、11〜14,21〜24,31〜33…端末装置、80…通信状態監視部、81…アンテナ、82…有線処理系、91…第1処理系、92…第2処理系、93…第3処理系、100…制御局、101…基地局制御部、102…制御データ用データベース(制御データ用DB)、110…解析装置、111…受信部、112…通信状態データベース(通信状態DB)、113…解析処理部、114…表示部、200…ネットワーク、210…工場、220…ビル、230…商店、240…家屋、211〜213,221,231,241…リーダ、250…リーダ監視装置、251…解析装置、300…インターネット、301…管理装置、302…解析装置、310,320,330…無線LANアクセスポイント、311,312,321,322,323,331,332…家屋、311a,312a…子局、311b,312b…スマートメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信基地局と、その無線通信基地局の周囲に存在する端末局との間で無線通信を行う無線通信系での、前記無線通信基地局と前記端末局との間の無線通信状態に関する情報を前記無線通信基地局から取得する監視部と、
前記監視部が取得した無線通信状態に関する情報についての一定時間ごとの変化を、直近の特定期間内で蓄積し、その蓄積した特定期間内の変化から地震発生の可能性の有無の判断を行う解析部とを備えた
地震予知システム。
【請求項2】
前記無線通信基地局は、無線電話用端末局と無線通信を行う複数の基地局であり、
前記解析部は、無線通信状態に関する情報で、無線通信環境の悪化が検出された基地局の設置箇所の近傍を、地震が発生する可能性がある地域と判断する
請求項1記載の地震予知システム。
【請求項3】
前記無線通信状態に関する情報は、前記無線通信基地局と前記端末局との間の上り又は下りの無線通信回線で伝送される、相手の送信出力を指示する情報であり、
前記監視部は、前記送信出力を指示する情報の内の、送信出力アップを示す情報が、1つの無線通信基地局で送信又は受信された数を一定時間ごとにカウントし、そのカウント値の前記特定の期間内の変化で、無線通信環境の悪化を検出する
請求項2記載の地震予知システム。
【請求項4】
前記特定期間は、1週間以上の期間であり、1週間以上の期間内における一定時間ごとのカウント値の変化を検出して、地震が発生する可能性の判断を行う
請求項3記載の地震予知システム。
【請求項5】
前記無線通信基地局は、無線タグと無線通信を行う複数の無線リーダとしての基地局であり、
前記解析部は、無線通信状態に関する情報で、無線通信環境の悪化が検出された無線リーダの設置箇所の近傍を、地震が発生する可能性がある地域と判断する
請求項1記載の地震予知システム。
【請求項6】
前記無線通信状態に関する情報は、前記無線リーダとしての基地局で、前記無線タグとの通信に失敗したことを示す情報であり、
前記解析部は、1つの基地局で前記無線タグとの通信に失敗した回数を一定時間ごとにカウントし、そのカウント値の前記特定の期間内の変化で、無線通信環境の悪化を検出する
請求項5記載の地震予知システム。
【請求項7】
前記特定期間は、1週間以上の期間であり、1週間以上の期間内における一定時間ごとの通信失敗した回数のカウント値の変化を検出して、地震が発生する可能性の判断を行う
請求項3記載の地震予知システム。
【請求項8】
無線通信基地局と、その無線通信基地局の周囲に存在する端末局との間で無線通信を行う無線通信系での、前記無線通信基地局と前記端末局との間の無線通信状態に関する情報を前記無線通信基地局から取得し、
その取得した無線通信状態に関する情報についての一定時間ごとの変化を、直近の特定期間内で蓄積し、その蓄積した特定期間内の変化から地震発生の可能性の有無の判断を行う
地震予知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−64611(P2013−64611A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202086(P2011−202086)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)