説明

地震動抑制用液体貯留容器

【課題】長周期の地震動によるスロッシングの発生を抑制し内部の液体の流出を防止することができる地震動抑制用液体貯留容器を提供すること
【解決手段】液体7を貯留する地震動抑制用液体貯留容器であって、前記液体7を貯留する内部空間11の内側上部に、前記内部空間11の内側上部の全域を複数のセル8に分割する複数の中空体20,22,23を敷設したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体貯留容器に関し、特に長周期の地震動によるスロッシングの発生を防止することができる地震動抑制用液体貯留容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体貯留タンク等の液体をその内部に貯留する容器に地震波が作用すると液面は遥動する。この遥動は地震動の卓越した振動周期が貯留されている液体の固有周期に近い場合にきわめて大きくなる。このような現象は、一般にスロッシングと呼ばれている。
スロッシングが生じると構造物には大きな波力が作用し、壁や天井等の部材がこの波力に耐えられないと構造物は破壊される。
【0003】
従来、地震動の卓越した周期は0.5秒ないし1.0秒程度であると考えられていたため、石油貯留タンク等の大型容器は、固有振動数が上記の範囲よりも大きくなるように設計されていた。ところが、近年長周期の地震動(卓越周期が5秒ないし10秒程度)が観測されるようになり、容器構造物の破壊や貯留されている液体の漏出事故も報告されるようになった。
このような背景から、長周期の地震動によるスロッシングに対する防災対策の必要性が指摘されている。
【0004】
特許文献1には、スロッシングによる衝撃力が構造部材に直接作用しないようにして破壊を防止するように構成された液体貯留タンクが記載されている。この液体貯留タンクは、長方形の単位板を組み合わせてなる略直方体の躯体を有している。天井壁の遇四隅角部の単位板には、圧力解除蓋が設けられている。
このような構造とすることにより、スロッシングにより液面に生じた波が天井壁に達したときには圧力解除蓋が開放されて天井壁に作用する衝撃力は開放され、天井壁の破壊を防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平9−249292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された液体貯留タンクにおいては、スロッシングの発生そのものは防止することができない。そのため、スロッシングが生じたときには、貯留されている液体が流出してしまうという問題があった。
【0007】
(発明の目的)
本発明は、長周期の地震動によるスロッシングの発生を抑制し内部の液体の流出を防止することができる地震動抑制用液体貯留容器を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明にかかる液体貯留容器は、液体を貯留する内部空間の上部に固定され、前記内部空間の上部を複数のセルに分割する複数の中空体を敷設する、という構成を採っている(請求項1)。
【0009】
この地震動抑制用液体貯留容器によれば、内部空間の内側上部を複数のセルに分割しない場合に比べ、容器内に貯留されている液体の固有振動数を小さくすることができ、そのため、長周期の地震動によるスロッシングの発生を防止し、貯留されている液体の漏出を防止することができる。
【0010】
また、中空体は、内部空間の上部にのみ配置されているので、中空体の下部には連続した大きな内部空間を確保することができる。
【0011】
ここで、前記各中空体の外形を円筒形とすると共に、その両端部を下方から固着し支持する支持板を設け、この支持板を、前記内部空間を構成する外壁の内側に沿って直立するようにしてもよい(請求項2)。
【0012】
このようにすれば、広く流通しているパイプ部材の端部をふさぐだけで中空体として用いることができる。また、支持板を備えているので、中空体を強固に固定することができる。
【0013】
又、上記円筒形の各中空体の一部が、その端部と前記外壁との間に空隙が生じるように配置してもよい(請求項3)。
【0014】
このようにすれば、支持板上端より上部の空間と下部の空間との間の液体の流通を確保することができるため、地震動抑制用液体貯留容器の利便性を向上させることができる。
【0015】
ここで、前記内部空間を水平方向に分割する水平仕切り板を備えると共に、前記各中空体の外形を球形とし、当該各中空体の下端部が前記水平仕切り板の上面に固定された構成としてもよい。
【0016】
このようにすれば、ボール、ブイ等として広く用いられ安価に製造することができる球形の中空体を用いることができる。また、水平仕切り板を備えているので中空体を強固に固定することができる。
【0017】
上記地震動抑制用液体貯留容器において、水平仕切り板には複数の開口部が設けた構成としてもよい(請求項4)。
【0018】
このようにすれば、仕切り板の上部と下部の間の液体の流通を確保することができるため、液体貯留容器の利便性を向上させることができる。
【0019】
又、上記各中空体については、前記球形の各中空体に代えて、上側部分が開口された凹状半球体を使用するようにしてもよい(請求項5)。
【0020】
更に、前述した中空体には、その内部に対して前記液体を注入し又は排出するための孔がを設けてもよい(請求項6)。
【0021】
このようにすれば、中空体の設置後にも、セル内の液体の量を調節することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る地震動抑制用液体貯留容器では、内部空間の内側上部の全域を複数の中空体で複数のセルに分割することにより、各セル内の液体の振動方向の移動距離を減少させるようにしたので、液体の固有振動数が中空体を設けない場合よりも減少することとなり、更に、各セルには水面に当接する面を球状若しくは円弧状の中空体を装備したので、液体の揺動が抑制されることと成り、かかる点においても、長周期地震動によるスロッシングの発生をより一層有効に防止することができるという従来にない優れた液体貯留容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図を参照しながら本発明にかかる地震動抑制用液体貯留容器の実施形態を、順次説明する。
最初に、本発明にかかる液体貯留容器の開発の前提となった他の新規な技術内容(貯水槽/その1乃至その3)について順次説明し、その後に、本発明にかかる液体貯留容器について、その実施形態を具体的に説明する。
〔貯水槽/その1〕
まず、図1(a)(b)を参照しながら新規技術を含む貯水槽1について説明する。
図1(a)には新規技術を含む貯水槽(液体貯留容器)1の断面図を、図1(b)には同貯水槽1の平面図を、それぞれ示す。
この図1(a)(b)に開示した貯水槽1は、地盤等の上に設置された底板5を備え、底板5の外周には鉛直方向の外壁3が設けられている。底板5と外壁3により形成された内部空間11には、水7(液体の一例)が蓄えられている。
内部空間には、底板5から直立し格子状に配置された鉛直仕切り板2が設けられ、内部空間11は、鉛直仕切り板2により複数のセル8に分割されている。鉛直仕切り板2の上端は液面6の上に突出しており、下端は底板5の上面に固定されている。
【0024】
次に、貯水槽1に蓄えられている水の固有周期について説明する。
図1(a)のLが10〔m〕、Hが3〔m〕の場合について鉛直仕切り板2がないものとして、下記の数式1により固有周期を計算すると、固有周期Tは、4.17〔s〕となる。

【数1】

ここで、Tは固有周期〔S〕、L〔m〕は液体の振動方向の長さ、H〔m〕は水深、gは重力加速度〔9.8m/s〕、πは円周率である。
上記地震動抑制用液体貯留容器によれば、容器内に貯留されている液体は、セル単位に分離され地震動の振動方向の寸法は、鉛直仕切り板を設けない場合に比べて小さくなる。そうすると、上記数式1から明らかなように、各セルに貯留されている液体の固有振動数は、鉛直仕切り板を設けない場合に比べて小さくなる。
そのため、長周期の地震動によるスロッシングの発生を防止し、貯留されている液体の漏出を防止することができる。
前述した条件の下に数式1で演算した固有周期T=4.17〔s〕は、実際の場では、長周期の地震動の周期に近い値であり、スロッシングが発生する恐れがある。
一方、図1に示したように鉛直仕切り板2を設け、セル8の振動方向の長さL1が1mとなった場合について同様に計算するとセル8内の水の固有周期は1.13〔s〕となる。そのため、長周期地震動によるスロッシングを防止することができる。
【0025】
図2は、水深Hが0.1〔m〕から5.0〔m〕、液体の振動方向の長さLが0.1〔m〕から5〔m〕の範囲について数式1によりTを算出した結果を示す表である。図3は、この計算結果をグラフに表わしたものである。
図2及び図3に示した水深Hの範囲では、周期が0.5〔秒〕以上の地震動に対してスロッシングが生じないようにするためには、水深Hにかかわりなく振動方向の長さL1が0.2〔m〕以下となるように鉛直仕切り板2を設ければよいことがわかる。
【0026】
貯水槽1では、鉛直仕切り板2の上端は、水面6よりも上方に突出しているため、スロッシングの防止を想定している範囲外の振動周期の地震により大きな波が発生した場合、波が鉛直仕切り板2を越えて隣のセル8に流れるようになる。そのため、鉛直仕切り板2又は外壁3に作用する波力を減少させることができる。
【0027】
〔貯水槽/その2〕
次に、図4(a)(b)を参照しながら新規技術を含む他の貯水槽12について説明する。
まず図4(a)には貯水槽12の断面図を、図4(b)には貯水槽12の平面図を示す。
この図4(a)(b)において、貯水槽12は、地盤等の上に設置された底板5を備え、底板の外周には鉛直方向の外壁3が設けられている。底板5と外壁3により形成された内部空間11には、水7が蓄えられている。
内部空間11には水平仕切り板4が設けられ、内部空間は上部11aと下部11bに分割されている。水平仕切り板4は、その周囲が外壁3の内周に固定されている。
水平仕切り板4よりも上部には、鉛直仕切り板2が設けられ、内部空間の上部11aは、鉛直仕切り板2により複数のセル8に分割されている。鉛直仕切り板2の上端は液面6の上に突出しており、下端は水平仕切り板4の上面に固定されている。
【0028】
水平仕切り板4には、各セル8に対応して1個ずつ開口部10が設けられている。開口部10の面積は、水7をセル8ごとに分離する効果を失わないようにするために、セルの底部13の面積に比べ十分小さくすることが望ましい。
なお、図4では開口部10の平面形状は円形としてあるが、矩形等他の形状としてもよい。
【0029】
貯水槽12によれば、内部空間11をセル8に分割しているから図1の貯水槽1と同様に長周期地震動によるスロッシングの発生を防止することができる。
また、鉛直仕切り板2は内部空間の上部11aにのみ設けられているから、水平仕切り板4の下部には、連続した大きな空間11bを確保することができる。
さらに、前記水平仕切り板4には開口部10が設けられているから、水平仕切り板4の上部と下部の間の水の流通を確保することができる。
そのため、液体貯留容器の利便性を向上させることができる。たとえば、図1の貯水槽1では注水及び排水をセル8ごとに行う必要があるが、貯水槽12によれば、セル8のいずれか一つまたは内部空間の下部11bのいずれか1箇所から注排水を行うことができる。
【0030】
〔貯水槽/その3〕
次に、図5(a)(b)を参照しながら新規技術を含む他の貯水槽13について説明する。
図5(a)には貯水槽13の断面図を、図5(b)には貯水槽13の平面図を、それぞれ示す。
この図5(a)(b)において、貯水槽13は、地盤等の上に設置された底板5を備え、底板の外周には鉛直方向の外壁3が設けられている。底板5と外壁3により形成された内部空間11には、水7が蓄えられている。
外壁3の内周には受け台9が設けられ、その上面によって周辺部を支持する形で水平仕切り板4が固定されている。水平仕切り板4は、上方に持ち上げて取り外すこともできる。内部空間11は、水平仕切り板4により上部11aと下部11bに分割されている。
水平仕切り板4よりも上部には、鉛直仕切り板2が設けられ、内部空間の上部11aは、鉛直仕切り板2により複数のセル8に分割されている。鉛直仕切り板2の上端は液面6の上に突出しており、下端は水平仕切り板4の上面に固定されている。
【0031】
貯水槽13によれば、内部空間11をセル8に分割しているから図1の貯水槽1と同様に長周期地震動によるスロッシングの発生を防止することができる。
貯水槽13では、鉛直仕切り板2と水平仕切り板4を取り外すことができるので、保守作業を行う際は、鉛直仕切り板4および水平仕切り板4を設けていない場合と同様に大きな作業空間を確保することができる。また、貯水槽13が大型のもので、保守作業のために内部空間11の下部11bに人間が入る必要がある場合でも外壁3または水平仕切り板4に人間が出入りするための開口部であるマンホールを設ける必要がなくなる。
【0032】
上記図1乃至図5に開示した貯水槽1乃至3において、貯水槽の平面形状は長方形に限定されない。
図6(a)は、平面形状を円形とし、平面形状が正方形のセルで分割した例である。円筒形の貯水槽14の内部空間11は、鉛直仕切り板2によって正方形のセル8に分割されている。
図6(b)は、平面形状を円形とし、平面形状が円形のセルで分割した例である。円筒形の貯水槽15の内部空間11は、平面形状がリング型の鉛直仕切り板2によって円形のセル8に分割されている。
平面形状が円形の場合の液体の固有振動数の計算式を数式2に示す。この数式は、例えば、独立行政法人消防研究所のホームページ(http://www.fri.go.jp/bosai/tokachi_lpgm.html )に記載されている。

【数2】

【0033】
ここで、Tは固有周期〔S〕、D〔m〕は貯水槽またはセルの内径、H〔m〕は水深、gは重力加速度〔9.8m/s〕、πは円周率である。
図7は、数式2による固有周期の計算結果を示すグラフである。長方形形状の場合と同様の傾向を示しており、セルの固有周期を0.5〔秒〕以下とするためには、図6(b)に示したセルの内径D1を0.2〔m〕以下とすればよいことがわかる。
【0034】
〔第1の実施形態〕
次に、本発明にかかる地震動抑制用液体貯留容器(貯水槽)の第1の実施形態を、図8(a)(b)(c)に基づいて説明する。
ここで、図8(a)は本実施形態の貯水槽16を示す断面図、図8(b)は図8(a)の平面図、図8(c)は図8(b)の一部を示す貯水槽16の拡大部分平面図である。
この図8に示す貯水槽16は、地盤等の上に設置された底板5を備え、底板の外周には鉛直方向の外壁3が設けられている。底板5と外壁3により形成された内部空間11には、水7が蓄えられている。
外壁3の内の一方の対向する二面3aと3bの内周には支持板26が設けられ、その上面によって2辺を支持される形で水平仕切り板4が固定されているが、必要に応じて上方に持ちあ上げて取り外すこともできる。即ち、水平仕切り板4は、単に置いてあるだけであるから上方に持ち上げて取り外すことができる。内部空間11は、水平仕切り板4により上部11aと下部11bに分割されている。
この水平仕切り板4の上には、中空体の一例である中空球体20が水面6全体を覆うように配置され、内部空間の上部11aは、中空球体20の内部空間により形成されたセル8に分割されている。中空球体20は、その上端部に注水孔21が設けられると共に、下端部が水平仕切り板4の上面に固定されている。
水平仕切り板4の中空球体20を支持していない部分には開口部10が設けられていて、水7は、上部空間11aと下部空間11bとの間を流通できるようになっている。
【0035】
このように、上記第1実施形態における液体貯留槽16は、上記のように構成され機能するので、これによれば、内部空間11をセル8に分割しない場合に比べ、液体貯留槽17内に貯留されている水の固有振動数を小さくすることができる。
そのため、長周期の地震動によるスロッシングの発生を防止し、貯留されている水の漏出を防止することができる。
また、中空球体20は、内部空間11の上部11aにのみ配置されているので、中空球体20の下部には連続した大きな内部空間11bを確保することができる。
セルを形成するための中空体として、ボール、ブイ等として広く用いられ安価に製造することができるものを採用することができる。また、水平仕切り板4を備えているので中空球体20を強固に固定することができる。
更に、水平仕切り板4には、開口部10が設けられているので、上部11aと下部11bの間の水6の流通を確保することができる。そのため、液体貯留容器の利便性を向上させることができる。
中空球体20には、上部及び下部に注水孔21が設けられているので、中空球体20の設置後にも、セル8内の水の量を調節することができる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明にかかる地震動抑制用液体貯留容器(貯水槽)の第2の実施形態を、図9(a)(b)に基づいて説明する。
ここで、図9(a)は本第2実施形態の貯水槽17を示す断面図、図9(b)は図9(a)の平面図である。
ここで、貯水槽17の全体的な構成は、図8の貯水槽16と同様であるが、中空体として中空半球体22を用いている点が図8の貯水槽16とは異なっている。中空半球体22は、中空の球体をその中心を通る水平面で切断して上半分を取り除いてできるボウル状の形状をしている。
中空半球体22の上端部は円形の開口部となっており、ここから水6を注水及び排水することができる。中空半球体22の下部は、水平仕切り板4の上面に固定されている。
その他の構成は、図9に示すように、前述した第1実施形態(図8の場合)と同一となっている。
【0037】
このため、貯水槽17の各セル8の固有振動数は、中空半球体22の水面位置の内径(図9(a)のD2)を、数式2のDとして算出することができる。
【0038】
又、本第2実施形態の貯水槽17(図9)の基本的構造は、図8の貯水槽16と同様であるから、この貯水槽17は、図8の貯水槽16と同様の効果を奏する。
また、中空半球体22は、中空の球体を半分に分割することにより製造することができるから、中空体を容易に製造することができる。
【0039】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明にかかる地震動抑制用液体貯留容器(貯水槽)の第3実施形態を、図10(a)(b)に基づいて説明する。
ここで、図10(a)は本第3実施形態の貯水槽18を示す断面図、図10(b)は図10(a)の平面図である。
この図10に示す貯水槽18は、地盤等の上に設置された底板5を備え、底板の外周には鉛直方向の外壁3が設けられている。底板5と外壁3により形成された内部空間11には、水7が蓄えられている。
外壁3の内の一方の対向する二面3aと3bの内周には支持板26が底板5から直立して設けられ、その上面に両端部が固定される形で中空円筒体23が配置されている。内部空間11の上部11aは、中空円筒体23の内部空間により形成された複数のセル8に分割されている。
また、中空円筒体23は、軸方向の長さが異なる中空円筒体23aと中空円筒体23bがあり、それらが交互に、互いに接触するように、また、水面6全体を覆うように配置されている。
中空円筒体23aは、軸方向の長さが貯水槽18の内幅(図10(b)のL2)に等しく、端面25が外壁3に密着するように配置されている。又、中空円筒体23bは、軸方向の長さがL2よりもやや短く、端面25と外壁3との間に空隙24ができるように配置されている。水7は、この空隙24により上部11aと下部11bとの間を流通することができる。
【0040】
このように構成された本第3実施形態にかかつ貯水槽(地震動抑制用液体貯留容器)18によれば、内部空間を複数のセル8に分割しない場合に比べ、貯水槽18内に貯留されている水の固有振動数を小さくすることができる。
そのため、長周期の地震動によるスロッシングの発生を防止し、貯留されている液体の漏出を防止することができる。
又、中空円筒体23は、内部空間10の上部11aにのみ配置されているので、中空体の下部には連続した大きな内部空間11bを確保することができる。
更に、セルを形成するための中空体として、パイプ材として広く用いられ安価に製造することができるものを採用することができる。また、支持板26を備えているので中空円筒体23を強固に固定することができる。
また、中空円筒体23bは、外壁3との間に空隙24を生じるように配置されているので、上部11aと下部11bの間の水7の流通を確保することができる。そのため、貯水槽の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る地震動抑制用液体貯留容器の近接領域にある貯水槽(その1)を示す図で、図1(a)はその断面図、図1(b)は図1(a)の平面図である。
【図2】図1にかかる貯水槽(その1)に係る固有周期についての計算結果を示す図表である。
【図3】図2に開示した図表(固有周期の計算結果)を示すグラフである。
【図4】本発明に係る地震動抑制用液体貯留容器の近接領域にある貯水槽(その2)を示す図で、図4(a)はその断面図、図4(b)は図4(a)の平面図である。
【図5】本発明に係る地震動抑制用液体貯留容器の近接領域にある貯水槽(その3)を示す図で、図5(a)はその断面図、図5(b)は図5(a)の平面図である。
【図6】上記貯水槽(その1乃至3)にあって、貯水槽の形状を円筒形とした場合の例を示す平面図である。
【図7】上記貯水槽(その1乃至3)にあって、貯水槽の形状を円筒形とした場合の固有周期の計算結果を示すグラフである。
【図8】本発明に係る地震動抑制用液体貯留容器(貯水槽)の第1実施形態を示す図で、図8(a)はその断面図、図8(b)は図8(a)の平面図、図8(c)は図8(b)の一部を成す貯水槽の拡大部分平面図である。
【図9】本発明に係る地震動抑制用液体貯留容器(貯水槽)の第2実施形態を示す図で、図9(a)はその断面図、図9(b)は図9(a)の平面図である。
【図10】本発明に係る地震動抑制用液体貯留容器(貯水槽)の第3実施形態を示す図で、図10(a)はその断面図、図10(b)は図10(a)の平面図である。
【符号の説明】
【0042】
3,3a,3b 外壁
4 水平仕切り板
5 底板
6 水面
7 水
8 セル
9 受け台
10 開口部
11 内部空間
16,17,18 貯水槽
20 中空球体
21 孔
22 中空半球体
23 中空円筒体
24 空隙
25 端面
26 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体貯留容器において、
前記液体を貯留する内部空間の上部に固定され、前記内部空間の上部を複数のセルに分割する複数の中空体を敷設したことを特徴とする地震動抑制用液体貯留容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体貯留容器において、
前記各中空体の外形を円筒形とすると共にし、その両端部を下方から固着し支持する支持板を設けると共に、
この支持板が、前記内部空間を構成する外壁の内側に沿って直立するように設けられていることを特徴とする地震動抑制用液体貯留容器。
【請求項3】
請求項2に記載の液体貯留容器において、
前記各中空体の一部が、その端部と前記外壁との間に空隙が生じるように配置されていることを特徴とする地震動抑制用液体貯留容器。
【請求項4】
請求項1に記載の液体貯留容器において、
前記内部空間を水平方向に分割する水平仕切り板を備えると共に、
前記各中空体の外形を球形とし、当該各中空体の下端部が前記水平仕切り板の上面に固定されており、
前記水平仕切り板には、複数の開口部が設けられていることを特徴とした地震動抑制用液体貯留容器。
【請求項5】
請求項4に記載の液体貯留容器において、
前記球形の各中空体に代えて、上側部分が開口された凹状半球体を使用したことを特徴とする地震動抑制用液体貯留容器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つに記載の液体貯留容器において、
前記中空体には、その内部に対して前記液体を注入し又は排出するための孔が設けられていることを特徴とする地震動抑制用液体貯留容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−189994(P2011−189994A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151382(P2011−151382)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【分割の表示】特願2005−380386(P2005−380386)の分割
【原出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【Fターム(参考)】