地面熱収支算出装置、地面熱収支算出方法、地面熱収支算出プログラム及び路面凍結可能性指数算出装置
【課題】 地面の純放射量を精度よく評価することにより、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上すること。
【解決手段】 地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率を取得する上空遮蔽率取得部34と、取得される上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する熱収支計算部42と、を含むことを特徴とする。
【解決手段】 地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率を取得する上空遮蔽率取得部34と、取得される上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する熱収支計算部42と、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面熱収支算出装置、地面熱収支算出方法、地面熱収支算出プログラム及び路面凍結可能性指数算出装置に関し、特に地面の純放射量を精度よく評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
路面の熱収支を計算することにより、路面の温度を予測したり、凍結を予測したりする技術が知られている。路面の熱収支とは路面における熱の出入り(収支)であり、例えば非特許文献1に示されるように、顕熱フラックスH、潜熱フラックスιE、地中熱伝導フラックスG、純放射量Rnを用いて、式(1)により計算される。
Rn=H+ιE+G ・・・(1)
【0003】
そして各気象予測データと式(1)とを利用して路面の熱収支を計算することにより、路面の温度を予測したり、路面の凍結を予測したり、といったことが可能になる。
【非特許文献1】近藤純正編著『水環境の気象学―地表面の水収支・熱収支―』朝倉書店、2000年10月10日、p.128−159
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記純放射量Rnは地面に吸収される放射量と地面から放出される放射量の差分である。より具体的には、大気放射、太陽放射、雲からの放射、地面からの放射の収支により最終的に路面に吸収される放射量が純放射量である。このため、上記式(1)の計算を実際に行うにあたっては地面の純放射量を算出する必要があるが、地点ごとの外部環境の相違のため、これまで地面の純放射量を精度よく算出することは困難である場合が多かった。一方で、路面温度予測や路面凍結予測を行う場合の予測精度は地面からの放射の算出の精度に影響される。このため、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度の向上のために、地面からの放射を精度よく評価することが課題となっていた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、地面の純放射量を精度よく評価することにより路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することを可能にする地面熱収支算出装置、地面熱収支算出方法、地面熱収支算出プログラム及び路面凍結可能性指数算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための地面熱収支算出装置は、地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出することを特徴とする。
【0007】
このようにすることにより、上空遮蔽率に応じた地面からの放射量の変化に基づいて該地面の純放射量を算出することができる。このため、遮蔽物の影響を評価して地面の純放射量を精度よく算出することができ、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【0008】
また、上記地面熱収支算出装置において、1日のうち前記地面に太陽光線が直達する時刻を示す可照時刻データを取得する可照時刻データ取得手段と、前記取得される可照時刻データに基づいて、前記算出される純放射量の時間変化を取得する時間変化取得手段と、を含むこととしてもよい。このようにすれば、可照時刻データにより示される太陽光線の直達の有無に応じた純放射量の時間変化を取得することができるので、遮蔽物の影響を評価して地面の純放射量をより精度よく算出することができ、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【0009】
また、本発明に係る路面凍結可能性指数算出装置は、地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する純放射量算出手段と、前記算出される地面の純放射量に基づいて、前記地面である路面の温度を算出する路面温度算出手段と、前記算出される路面の温度に基づいて、該路面の凍結可能性指数を算出する路面凍結可能性指数算出手段と、を含むこととしてもよい。このようにすれば、上空遮蔽率に基づいて路面の凍結し易さを示す路面凍結可能性指数を算出することができるので、路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【0010】
また、上記路面凍結可能性指数算出装置において、前記路面における太陽光線が直達する時間を示す可照時間データを取得する可照時間データ取得手段、をさらに含み、前記路面凍結可能性指数算出手段は、前記取得される可照時間データにさらに基づいて、該路面の凍結可能性指数を算出する、こととしてもよい。このようにすれば、上空遮蔽率に基づく放射量の変化と、可照時間に基づく放射量の変化とに基づいて路面凍結可能性指数を算出することができるので、路面凍結予測の予測精度をより向上することが可能になる。
【0011】
また、本発明に係る地面熱収支算出方法は、地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面からの放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出することを特徴とする。このようにすることによっても、上空遮蔽率に応じた地面からの放射量の変化に基づいて該地面の純放射量を算出することができる。このため、遮蔽物の影響を評価して地面の純放射量を精度よく算出することができ、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【0012】
また、本発明に係る地面熱収支算出プログラムは、地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率を算出する上空遮蔽率算出手段、及び、前記算出される上空遮蔽率に応じた該地面からの放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する純放射量算出手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。このようにすれば、コンピュータを使用して、上空遮蔽率に応じた地面からの放射量の変化に基づいて該地面の純放射量を算出することができる。このため、コンピュータにより遮蔽物の影響を評価して地面の純放射量を精度よく算出することができ、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本実施の形態に係る路面凍結可能性指数算出装置1のハードウェア構成図である。該路面凍結可能性指数算出装置1には、例えばパーソナルコンピュータやサーバコンピュータと同様のコンピュータを使用することができ、CPU10、RAM12、入出力部14、通信部16、データベース18、外部記憶媒体20、ハードディスク22、表示部24、入力部26、バス28を含んで構成されている。そしてCPU10、RAM12、入出力部14はバス28を介して相互に接続され、入出力部14は通信部16、データベース18、外部記憶媒体20、ハードディスク22、表示部24、入力部26と接続されている。
【0015】
CPU10は、路面凍結可能性指数算出装置1の各部を制御するとともに、各種の演算を行い、例えば後述する熱収支計算及び路面凍結可能性指数算出の各計算も行う。RAM12は、CPU10のワークメモリとして動作する。また、このRAM12は、CPU10によって行われる各種処理に関わるプログラムやパラメータを保持している。入出力部14は、CPU10と、通信部16、データベース18、外部記憶媒体20及びハードディスク22と、の間でのデータの送受信を中継する。また、CPU10の指示に従い、通信部16、データベース18、外部記憶媒体20及びハードディスク22を制御する。ハードディスク22には、従来公知のハードディスクを使用することができ、コンピュータプログラムやデータを記憶する。また本発明に係るプログラムも記憶している。外部記憶媒体20には、フレキシブルディスク、CD−ROM、CD−RW、DVD−RAM、USBフラッシュメモリ、ROMカード、リムーバルハードディスク等のあらゆるコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を使用することができ、コンピュータプログラムやデータを記憶する。また本発明に係るプログラムも記憶している。データベース18は、後述する可照時間データや路面温度データを記憶したり、算出した地面純放射量や路面凍結可能性指数を記憶したりする。表示部24はディスプレイ等の表示手段であり、路面凍結可能性指数算出装置1のユーザに対してCPU10の指示に応じた表示を行う。入力部26は、キーボードやマウス等の入力手段であり、路面凍結可能性指数算出装置1のユーザの操作による入力を受け付けて、CPU10に出力する。
【0016】
図2は、本実施の形態に係る路面凍結可能性指数算出装置1の機能ブロック図である。同図に示すように、路面凍結可能性指数算出装置1は、機能的には、天空図取得部30、太陽軌道取得部32、上空遮蔽率取得部34、日射遮蔽量取得部36、交通量取得部38、気象データ取得部40、熱収支計算部42、ニューラルネットワーク44、路面凍結可能性指数算出部46、乾燥時間取得部48を含んで構成されている。なお、天空図取得部30、太陽軌道取得部32、上空遮蔽率取得部34、日射遮蔽量取得部36、交通量取得部38、気象データ取得部40、熱収支計算部42、ニューラルネットワーク44、は地面の熱収支を算出するための地面熱収支算出部2として機能する。
【0017】
ここでまず、本実施の形態における路面凍結可能性指数算出装置1の処理について概説する。初めに、路面凍結可能性指数算出装置1は地点ごとの天空図を取得する。天空図とは図3に示されるように地面の上空所定範囲を撮影した図である。
【0018】
そして、この天空図に基づいて、路面凍結可能性指数算出装置1は地点ごとの上空遮蔽率を取得する。図3の例では、道路脇に建っている建物である遮蔽物102があるため、遮蔽物102がある部分の上空については見通すことができない。このように遮蔽物により上空を見通すことができない部分が天空図のうち、後述する基準範囲に占める割合を、上空遮蔽率データとして算出する。なお、上空遮蔽率データは各地点について決定される。
【0019】
また、天空図はその中心が天頂となっている。このため、天空図上に太陽軌道を描くと、図7の太陽軌道110、太陽軌道112、太陽軌道114のようになる。太陽軌道は当然月日及び地点によって異なる。図7では、太陽軌道110が1月1日、太陽軌道112が4月1日、太陽軌道114が7月1日、の各太陽軌道を示している。天空図上においてこの太陽軌道に遮蔽物が重なっている場合、重なっている部分を示す月日時分においては、該天空図に対応する地点に直射日光が届かない。このため、1日のうち、遮蔽物と重なっていない時刻を示す可照時刻データを算出することができる。また、1日の太陽軌道のうち、遮蔽物と重なっていない時間を合計することにより、1日のうち、直射日光が地面に直達する時間を示す可照時間データを算出することができる。可照時刻データ及び可照時間データは各地点の各月日について決定される。
【0020】
さらに、天気予報から取得できる気象データと、路面凍結可能性指数算出の対象地点が道路である場合には該道路の交通量も取得する。そして、上空遮蔽率データと、可照時刻データと、気象データと、交通量データと、に基づいて、対象地点の熱収支を計算することができる。熱収支の計算結果として路面温度が得られるので、該路面温度と、上記可照時間データと、地点ごとの乾燥のし易さを示す乾燥時間データと、に基づいて、路面凍結可能性指数を算出することができる。このようにして、路面凍結可能性指数算出装置1は路面凍結可能性指数を算出している。
【0021】
以下、各部の処理について詳細に説明する。
【0022】
天空図取得部30は、地面からの上空所定範囲の見通しを示す天空図を取得する。図3は天空図の例であり、同図に示すような円形の図となる。すなわち天空図は上空の見通し範囲が円で示される図であり、円の中心が天頂となる。そして図4に示すように、道路100脇には建造物である遮蔽物102が存在する場合がある。このように遮蔽物102が道路脇に存在する地点104における天空図には、地点104の周囲の遮蔽物102である日射遮蔽物が天空図に現れる。ここでは日射遮蔽物は建造物であるとしているが、他にも、樹木、山など、地面への日射を遮蔽するものが日射遮蔽物である。
【0023】
このような天空図を取得する方法について以下詳細に説明する。
【0024】
天空図を取得するためには、図5に示すような観測車50を使用することが好適である。該観測車50には、図5に示す位置に、自車の位置を把握するためのGPSアンテナ52、車の周囲の全天映像を撮影するための魚眼レンズ付ビデオカメラ54、気温を測定するための温度センサ55、路面温度を測定するための路面温度センサ56が設置される。
【0025】
図6は、該観測車50のハードウェア構成図である。観測車50には、コンピュータ60、GPSロガー70、バックランプ82、車速検出回路84、温度計86、放射温度計88、全天カメラ90、デジタルビデオカメラ92が設置される。温度計86は温度センサ55を構成し、放射温度計88は路面温度センサ56を構成し、全天カメラ90及びデジタルビデオカメラ92は、魚眼レンズ付ビデオカメラ54を構成する。
【0026】
コンピュータ60には従来公知のパーソナルコンピュータと同様のコンピュータを使用することができ、該コンピュータ60は、制御部62、通信部64及び記憶部66を含んで構成される。制御部62はコンピュータ60の各部を制御するとともに、各機器から入力される情報を記憶部66に記憶する。通信部64はGPSロガー70、全天カメラ90及びデジタルビデオカメラ92と接続し、データの送受信ができるようにしている。さらに制御部62がGPSロガー70、全天カメラ90及びデジタルビデオカメラ92を制御することができるように構成されてもよい。
【0027】
GPSロガー70には従来公知のGPSロガーと同様のものを使用することができ、該GPSロガー70は、制御部72、記憶部74、GPSアンテナ76、ジャイロセンサ78、通信部80を含んで構成される。通信部80は、バックランプ82、車速検出回路84、温度計86、放射温度計88、コンピュータ60と接続され、データの送受信ができるようにしている。また、制御部72はGPSロガー70の各部を制御するとともに、GPSアンテナ76、ジャイロセンサ78、通信部80から入力される信号をそれぞれ対応付けて記憶部74に記憶する処理も行う。また、コンピュータ60からの指示に従い、記憶部74に記憶されるデータを読み出し、コンピュータ60に送信する処理も行う。さらに制御部72が温度計86、放射温度計88を制御できるように構成されることもできる。
【0028】
GPSアンテナ76にはGPSアンテナ52を構成する従来公知のGPSアンテナと同様のものを使用することができ、該GPSアンテナ76がGPS衛星からの信号を受信することにより、GPSロガー70は観測車50の位置、向き及び速度を測位する。すなわち、観測車50の存在する位置の緯度/経度/標高を示す緯度/経度/標高データ(位置データ)、方位(観測車50の向いている方位)を示す方位データ及び観測車50の地球上での速度を示す速度データを取得する。
【0029】
バックランプ82は、通常車に備えられるバックランプであり、観測車50が後進するときに点灯する。そしてGPSロガー70は、該バックランプ82が点灯しているか否かについての情報を受信し、点灯している場合に、観測車50が後進していると判断する。また、車速検出回路84は、通常車に備えられる観測車50の車速を検出する回路であり、観測車50の車速を数値データとして出力する。そしてGPSロガー70は該数値データを受信し、観測車50の移動速度を示す移動速度データを取得する。また、ジャイロセンサ78には従来公知のジャイロセンサと同様のものを使用することができ、該ジャイロセンサ78は観測車50の角速度を直交する3軸について出力する。GPSロガー70は、該3軸の角速度を示す角速度データをジャイロセンサ78から取得する。そして、GPSアンテナ76がGPS衛星からの信号を受信できない場合には、GPSアンテナ76からの信号により取得できた最終の位置/方位/速度データからの移動度を、後進情報、移動速度データ、角速度データに基づいて決定し、観測車50の存在する位置を示す位置データ、観測車50の向いている方位を示す方位データ及び観測車50の地球上での速度を示す速度データを取得する。
【0030】
温度計86には従来公知の温度計と同様のものを使用でき、該温度計86は、観測車50の車外気温を測定し、該車外気温を示す気温データをGPSロガー70に対して出力する。また、放射温度計88には、従来公知の放射温度計と同様のものを使用でき、該放射温度計88は、路面からの赤外線放射を測定することにより、路面の表面温度を測定し、該路面の表面温度を示す路面温度データをGPSロガー70に対して出力する。
【0031】
制御部72は、以上のようにして取得される、位置データ、方位データ、速度データ、気温データ、路面温度データ及びこれらの各データを取得した日時或いは各データが観測された日時を示す観測日時データを記憶部74に対応付けて記憶する。なおこれらのデータは、観測車50の観測走行中に常時観測されるものである。
【0032】
全天カメラ90は、図5に示す魚眼レンズ付ビデオカメラ54のように、観測車50の屋根部分に、観測車50の上方向に撮像部を向けて設置される。すなわち、全天カメラ90は観測車50の上方向の全天撮影を行う。該全天カメラ90には、従来公知の全天カメラと同様のものを使用することができるが、特に写角が180度以上で、半円周視界を撮像できるように設計される円周魚眼レンズを使用することが望ましいが、例えば写角が60度程度のものでもよい。全天カメラ90は、撮像結果である撮像データを、コンピュータ60或いはデジタルビデオカメラ92に対し出力する。
【0033】
図4に示すように観測車50が存在する道路100の地点104の道路脇に遮蔽物102が存在する状況において全天カメラ90で撮像すると、図3に示すような円形の撮像結果(天空図)が得られる。図3に示すように、撮像結果は、円の周囲が全天カメラ90のレンズ面の写真となり、円の中心はレンズの向いている向きの写真となる。このように撮影されることにより、円の一部に遮蔽物102が写る結果となる。すなわち、地点104の周囲の建造物や樹木等の日射遮蔽物が撮像結果に写ることとなる。
【0034】
そして、該撮像データも観測車50の観測走行中に常時撮影されるものであり、デジタルビデオカメラ92で録画することにより動画としてデジタルビデオカメラ92或いは記憶部66に記憶される。このとき、該撮像データも撮像した日時或いは該撮像データが記憶された日時を示す撮像日時データと対応付けられて記憶される。そして、該撮像日時データと上記観測日時データとによって、デジタルビデオカメラ92或いは記憶部66に記憶される撮像データと、GPSロガー70に記憶される位置データ、方位データ、速度データ、気温データ、路面温度データと、が対応付けられる。
【0035】
そして観測車50が道路100上を移動しながら観測(観測走行)することにより、天空図取得部30は、各地点について、上記天空図を取得している。
【0036】
次に、上空遮蔽率取得部34は、天空図取得部30が取得した天空図に基づいて、各地点についての上空遮蔽率を算出する。上空遮蔽率とは、上空の基準範囲(天空図により示される範囲であってもよいし、その一部であってもよい。ここでは、図8に示すように、真上を中心として片側30度の写角で示される範囲であるとする。天空図上では円形となる。)のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合であり、具体的には基準範囲の面積(円周率×円の半径の二乗)に占める遮蔽物部分の面積の割合となる。
【0037】
この計算のさらに具体的な例を、図9を参照しながら説明する。同図は図7に示す天空図に基準範囲120を加えたものである。図9においては、基準範囲120と重なっているのは、斜線で示した遮蔽物102−1の一部である遮蔽物102−1−1及び遮蔽物102−4の一部である遮蔽物102−4−1である。そこで、遮蔽物102−1−1と遮蔽物102−4−1の天空図における面積を計算し、基準範囲120の面積で除算することにより、上空遮蔽率を算出することができる。
【0038】
上空遮蔽率取得部34はまた、撮像データである上記天空図と対応付けてデジタルビデオカメラ92或いは記憶部66に記憶される撮像日時データを取得し、さらに該撮像日時データと対応付けて記憶部74に記憶される位置データを取得する。このようにして上空遮蔽率取得部34は、各位置データにより示される各地点での上空遮蔽率を示す上空遮蔽率データを取得している。
【0039】
太陽軌道取得部32は、地球の公転運度及び自転運動により決定される太陽軌道を取得する。具体的には、太陽軌道の時角t,高度角h,方位角Aは、緯度φ,経度λ,時刻H,太陽赤緯δ,均時差ETに基づいて、以下の式(2)、式(3)及び式(4)により太陽軌道を求めることにより、取得する。なお、太陽赤緯δ及び均時差ETは月日によって異なる。このため、太陽の高度角h及び方位角Aは測定点の緯度/経度/日時に基づいて異なる値となる。
t=λ−9+ET+(H−12) ・・・(2)
sinh=sinφsinδ+cosφcosδcost ・・・(3)
sinA=−cosδsint/cosh ・・・(4)
【0040】
日射遮蔽量取得部36は、天空図取得部30が取得した天空図と太陽軌道取得部32が取得した太陽軌道とに基づいて、各地点の各日時についての可照時刻データと、各地点の各日についての可照時間データと、を取得する。具体的には、天空図に描かれた太陽軌道のうち、遮蔽物と重なっている部分の割合を取得し、取得した割合と、一日の日射量と、に基づいて日射遮蔽量を取得する。
【0041】
撮像データを撮像した地点の緯度/経度/標高は、上述のように記憶部74に記憶されている。そこで日射遮蔽量取得部36は、撮像データに対応付けられる緯度/経度/標高を取得し、式(2)、式(3)及び式(4)により、該地点での日時ごとの太陽の位置を取得する。そして該位置を撮像データ上にプロットすると、図7のような太陽軌道が得られる。撮像データは日によって普通は変化しないが、図7に示すように太陽軌道は毎日異なる線を描くこととなる。なおこの処理において、標高により太陽軌道は異なるので、位置データが示す測定点の標高に応じて、測定点における高度補正及び日射遮蔽物の高度補正を行っている。さらに、方位データにより示される観測車50の向きに応じて、撮像データを回転させる方位補正も行っている。
【0042】
そして日射遮蔽量取得部36は、撮像データにおいて、太陽軌道上にある遮蔽物102のような日射遮蔽物によって太陽光線が遮られない時間(太陽光線の可照時間)を算出する。具体的には、例えば図10のような太陽軌道遮蔽データを取得することにより、該可照時間を算出することができる。図10は、ある地点かつある月日において、縦軸を基準となる地点からの距離、横軸を時間、として、太陽軌道上に遮蔽物があるか否かを地点ごと時分ごとに表示したグラフである。該グラフは太陽軌道上に遮蔽物がある場合に黒、ない場合に白を表示している。それぞれが地点ごと時分ごとに太陽軌道の遮蔽の有無を表す太陽軌道遮蔽データとなる。そして、地点ごとの白の時間が該地点における太陽光線の可照時間となる。
【0043】
このようにして、観測車50が観測走行を実施した各地点について緯度/経度/標高/月日ごとの太陽光線の可照時間を算出することができ、日射遮蔽量取得部36は該可照時間を可照時間データとして取得する。
【0044】
また、日射遮蔽量取得部36は、図10に示すブラフから、各地点の各日について、1日のうち日射が該地点に直達する時刻を示す可照時刻データも取得する。可照時刻データは、図10に示すグラフにおける太陽軌道の遮蔽がないことを示す部分(白の部分)の時刻を示すデータである。
【0045】
次に、気象データ取得部40は、日本気象協会のGPV(Grid Point Value,気象要素や物理量の格子点上の値)による局地気象予測モデル(ANEMOS)システムなどの気象予測システムから気象予測データを受信することにより、気象データを取得する。この気象予測システムにおいては、1km標高データ、土地利用データ等の国土数値データ、気象庁領域モデル(RSM)や予報ガイダンス等の気象庁発表のGPVデータ、海水温データや雪線標高データ等の気候値データに基づいて、気象予測データを算出している。そして気象データ取得部40は、気象予測システムにより算出される気象予測データから、特に天気、気温、雲量、降雪量、風のGPV気象予測データを気象データとして取得している。
【0046】
交通量取得部38は、道路の地点ごとの交通量を示す交通量データを取得する。具体的には、交通量取得部38は、道路行政を担う公共機関から提供される車両の通行量を示す交通量データを地点ごとに取得することができる。取得される該交通量データは交通量実測データであったり、交通量予測データであったりするが、例えばある地点の将来の日時について後述する熱収支モデルにより路面温度を算出する場合には、交通量取得部38は、該地点及び該日時の交通量予測データを交通量データとして取得する。
【0047】
熱収支計算部42は、気象データ取得部40により取得される気象データと、交通量取得部38により取得される交通量データと、日射遮蔽量取得部36により取得される可照時刻データと、上空遮蔽率取得部34により取得される上空遮蔽率データと、に基づいて、特定の地点及び特定の日時における路面温度を算出するための熱収支モデルによる熱収支計算を行う。熱収支計算では、路面の熱収支を計算することにより、路面の温度を算出することができる。
【0048】
以下、熱収支計算部42における熱収支計算処理について、具体的に説明する。
【0049】
図11は本実施の形態における熱収支計算の概念図である。同図に示すように、路面に入ってくる熱(大気放射、太陽放射、雲からの放射、地中熱伝導フラックス、交通により発生する熱)と、路面から出ていく熱(地面からの放射、顕熱フラックス、潜熱フラックス、地中熱伝導フラックス)の収支を計算することにより、路面の温度を算出することができる。本実施の形態では特に、各地点の上空遮蔽率データに基づいて雲からの放射量及び地面からの放射量を、各地点の可照時刻データに基づいて太陽放射量を、それぞれ算出することにより、地面の純放射量を精度よく評価することを可能にしている。以下に、その具体的な計算方法について説明する。
【0050】
熱収支計算においては、路面が吸収する正味の放射量である純放射量Rnを算出する。純放射量Rnは、大気放射、太陽放射、雲からの放射、地面からの放射の収支により最終的に路面に吸収される放射量であり、アルベドをα、水平面日射量(全天の日射量)をS↓、射出率(黒体度)をε、ステファン-ボルツマン定数をσ、路面温度をTS、大気からの長波放射量をF↓、とすると、以下の式(5)で表されることが知られている。なお、σ×TS4が地表面温度に対する黒体放射量(地面からの放射量)となる。
Rn=(1−α)×S↓−ε×(σ×TS4−F↓) ・・・(5)
【0051】
ここで、上記パラメータのひとつである水平面日射量S↓は日射遮蔽量データに応じて変化する。例えば、日射が遮られている場合には水平面日射量S↓はゼロとなる。一方、日射が遮られる時刻(日射が地面に直達する時刻)とそうでない時刻(日射が地面に直達しない時刻)があることも多い。このため、日射遮蔽量取得部36において取得される可照時刻データに基づいて、水平面日射量S↓を計算する。
【0052】
具体的には、水平面日射量S↓は式(6)で表すことができる。ここで、θは天頂と太陽のなす角度(天頂角)、S0は地点及び日によって変化する定数である。
S↓=S0cosθ ・・・(6)
【0053】
そして、可照時刻データにより日射が直達しないと示される時刻tを例えばta≦t<tbとすると、式(6)は式(7)及び式(8)のように計算することができる。
S↓=0 (ta≦t<tb) ・・・(7)
S↓=S0cosθ (t<ta,tb≦t) ・・・(8)
【0054】
また、大気からの長波放射量F↓は、上空遮蔽率取得部34により取得される上空遮蔽率データにより示される上空遮蔽率に応じて変化する。つまり、上空が遮蔽されている割合が高いほど、大気から地面に入射される放射量が少なくなる。そこで熱収支計算部42は、遮蔽物がないとして計算される大気からの長波放射量F↓に上空遮蔽率を乗ずることにより、大気からの放射量を算出している。
【0055】
このようにすることにより、例えば樹木により上空遮蔽率20%で上空が遮蔽される場合には、遮蔽物のない場合に比べ大気からの放射量が80%となるように算出される。また、跨線橋や橋の下などのために上空遮蔽率80%で上空が遮蔽される場合には、遮蔽物のない場合に比べ大気からの放射量が20%となるように算出される。さらに、トンネル内など上空遮蔽率100%で上空が遮蔽される場合には、遮蔽物のない場合に比べ大気からの放射量が0%、すなわち大気からの放射量が0となるように算出される。
【0056】
熱収支計算部42では、このようにして、可照時刻データ及び上空遮蔽率データに基づいて、水平面日射量S↓、大気からの長波放射量F↓を計算している。そして、算出されたこれらのデータを使用して式(5)により各地点における純放射量Rnを算出している。
【0057】
なお、地面からの放射量σ×TS4も、上空遮蔽率取得部34により取得される上空遮蔽率データにより示される上空遮蔽率に応じて変化することとしてもよい。つまり、上空が遮蔽されている割合が高いほど、地面からの放射が少なくなることとしてもよい。この場合には、熱収支計算部42は、遮蔽物がないとして計算される地面からの放射量σ×TS4に上空遮蔽率を乗ずることにより、地面からの放射量を算出する。そして算出された地面からの放射量σ×TS4も使用して式(5)により各地点における純放射量Rnを算出する。
【0058】
このようにして算出される純放射量Rnの具体的な例を図12に示す。図12は、図7で示す天空図に対応する地点において、太陽軌道が太陽軌道110となる場合の1日の純放射量の変化を示すグラフである。同図では、横軸を時間、縦軸を純放射量として描画している。そして、時刻t1から時刻の間t6は日射がある時間帯(昼間帯)、時刻t6から時刻の間t7は日射がない時間帯(夜間帯)を示している。そして、昼間帯においては純放射量がプラスの値をとり、夜間帯においては純放射量がマイナスの値をとる。すなわち、昼間帯において地面は暖められ、夜間帯において地面は冷やされる。さらに、線200が可照時刻データ及び上空遮蔽率データを考慮せずに算出した純放射量、線202が可照時刻データ及び上空遮蔽率データに基づいて算出した純放射量、をそれぞれ示している。
【0059】
そしてこの地点では、日射遮蔽時刻データにより、時刻t1から時刻t2の期間では日射遮蔽物102−1、時刻t3から時刻t4の期間では日射遮蔽物102−2、時刻t5から時刻t6の期間では日射遮蔽物102−3によりそれぞれ日射が遮られることが示される。このため、上述のようにこれらの期間においては水平面日射量S↓が0となる。このため、熱収支計算部42では、これらの期間については式(5)と式(7)により純放射量を算出する。
【0060】
また、日射遮蔽時刻データにより、時刻t2から時刻t3の期間、及び時刻t4から時刻t5の期間では日射遮蔽物により日射が遮られることはないことが示される。このため、熱収支計算部42では、これらの期間については式(5)と式(8)により純放射量を算出する。
【0061】
さらに、時刻t6から時刻t7においては、大気からの長波放射量F↓、地面からの放射量σ×TS4を上空遮蔽率に基づいて算出した上で、式(5)により純放射量を算出する。なお、昼間帯(時刻t1から時刻t6の期間)においても大気からの長波放射量F↓、地面からの放射量σ×TS4を上空遮蔽率に基づいて算出した上で、式(5)により純放射量を算出してもよいのは勿論である。
【0062】
このようにして各期間についての純放射量を算出すると、純放射量は線202のように時間変化する。この線202により示されるように、道路に遮蔽物が存在することにより放射量が変化し、このため純放射量が線200から線202に変化する。この純放射量の遮蔽物による変化を、上空遮蔽率データ、可照時刻データに基づいて算出することが可能にしている。
【0063】
そして、このようにして算出された純放射量を式(9)に適用することにより、熱収支計算部42は路面温度TSを算出することができる。ここで、Wは交通により発生する熱である。
Rn+W=H+ιE+G ・・・(9)
【0064】
交通により発生する熱Wは、車両1台当たりの排熱伝導係数をwC、時間hにおける時間帯平均の交通量をTR(h)、車両の仮想温度をTtr、路面温度をTSとすると、以下の式(10)のように表される。
W=wC×TR(h)×(Ttr−TS) ・・・(10)
【0065】
また、顕熱フラックスH及び潜熱フラックスιEはそれぞれ以下の式(11)及び式(12)で表される。ここで、cPは空気の定圧比熱、ρは空気の密度、CHは顕熱フラックスのバルク輸送係数、U’は地上風及び車両通行による風速の和、Tは地上気温、ιは水又は氷の気化の潜熱、βは路面の蒸発効率、qSは地上気温Tに対する飽和比湿、qは地表面温度TSに対する飽和比湿である。なお、地上風の風速及び地上気温は気象データから取得することができる。
H=cP×ρ×CH×U’×(TS−T) ・・・(11)
ιE=ι×ρ×β×CH×U’×(qS−q) ・・・(12)
【0066】
さらに、地中熱伝導フラックスGは以下の式(13)のように示されるので、式(14)に示す路面での熱収支計算を行うことにより、路面温度TSを算出することができる。ただし、λGは地中の熱伝導率であり、TGは地中温度であり、zは路面からの深さ(z=0が路面)である。
G(z)=−λG(dTG/dz) ・・・(13)
−λG(dTG/dz)|z=0=Rn+W−H−ιE ・・・(14)
【0067】
このようにして熱収支計算部42は、可照時刻データ及び上空遮蔽率データに基づいて算出する純放射量及びその時間変化に基づいて、さらに、路面温度及びその時間変化を算出する。そして熱収支計算部42は、該算出される路面温度及びその時間変化を路面凍結可能性指数算出部46に対して出力している。
【0068】
なお、上記の方法では解析的な方法で路面温度を算出しているが、一部のデータについては測定をすることなく、ニューラルネットワーク44を使用して路面温度を求めることも多い。例えば該ニューラルネットワーク44として教師付き学習を行うニューラルネットを使用することにすると、予め可照時刻データ、上空遮蔽率データ、交通量データ、気象データ、の各データと、日時ごとの路面温度データと、の対応関係を実際に測定し、これらを測定した地点の位置データと対応付けて該ニューラルネットに学習させておく。このとき、実際に測定したデータとして、観測車50において測定した気温データ、路面温度データ、可照時刻データ及び上空遮蔽率データを使用することができる。ニューラルネットワーク44にこのように学習させておくことにより、各データを入力することで、入力した各データに対応する路面温度データを、各地点の各日時について得ることができるようになる。
【0069】
そして路面凍結可能性指数算出部46は、熱収支計算部42から出力される各地点についての路面温度に基づいて、各地点についての路面凍結可能性指数を算出する。路面凍結可能性指数とは道路の各地点についての凍結しやすさを示す指数である。ある道路において、起点からの距離xの地点における路面温度をa(x)、可照時間をb(x)とすると、路面凍結可能性指数g(x)は以下の式(15)のように表すことができる。ただし、ある道路の路面凍結可能性算出対象区間において路面凍結可能性の高い地点を明らかにすることを目的として路面凍結可能性指数を算出する場合には、a(x)及びb(x)はそれぞれ該路面凍結可能性算出対象区間の起点から終点までの該a(x)及び該b(x)の最大値を1、最小値を0として正規化して計算することとしてもよい。
g(x)=m×a(x)+n×b(x) ・・・(15)
【0070】
ここで、路面凍結可能性指数算出部46は、式(15)における路面温度として、熱収支計算部42から出力される各地点についての路面温度を使用する。また、式(15)における可照時間として、日射遮蔽量取得部36により取得される可照時間を使用する。このようにして、路面凍結可能性指数算出部46は、熱収支計算部42から出力される各地点についての路面温度と、日射遮蔽量取得部36により取得される該地点についての可照時間と、に基づいて、路面凍結可能性指数を算出している。
【0071】
また、m,nはそれぞれ路面凍結可能性指数に対する可照時間,路面温度の重みを示す重み係数である。該m,nは種々の路面温度と可照時間を条件の下で、路面が乾燥するまでの時間を、地点ごとに測定することにより取得することができる。つまり、例えば水はけの悪い路面では乾燥までの時間は長くなる場合がある。また、例えば湧水があるために乾燥までの時間が長くなる場合もある。さらに、例えば交通量が多い道路ではすぐに乾燥する場合もある。これらのような場合に、実際に地点ごとに可照時間及び路面温度と、路面凍結可能性指数と、の関係を実験的に測定することにより、より精度よく路面凍結可能性指数を算出することができるようになる。
【0072】
より具体的には、乾燥時間取得部48は、各地点について、可照時間と路面温度の組み合わせごとに路面が乾燥するまでの時間を測定した結果を取得する。そしてこの取得される結果に基づいて、上記重み係数m,nが算出される。もっとも、雨雪による水分供給以外の水分供給がない路面や、交通量がそれほど多くない路面についての算出ではm=n=1としてもかまわない。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態では、上空遮蔽率データと可照時刻データとに基づいて地面の純放射量を精度よく算出することにより、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することを可能にしている。より具体的には、上空遮蔽率に基づく放射量の変化と、可照時刻に基づく放射量の時間変化とに基づいて、遮蔽物による純放射量の変化を算出することができる。そして、このようにして算出された純放射量を使用して算出された路面温度は、遮蔽物による路面温度への影響を評価して算出されているので精度が高いということができる。そしてさらにこの精度が高い路面温度に基づいて路面凍結可能性指数を算出することができるので、路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態にかかる路面凍結可能性指数算出装置のハードウェア構成図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる路面凍結可能性指数算出装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる天空図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる道路の俯瞰図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる観測車の外観図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる観測車の機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる太陽軌道を記載した天空図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる天空図により上空遮蔽率を算出する方法の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる基準範囲の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態にかかる地点ごと時分ごとの太陽軌道遮蔽データのグラフである。
【図11】本発明の実施の形態にかかる熱収支の概念図である。
【図12】本発明の実施の形態にかかる純放射量と時間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 路面凍結可能性指数算出装置、2 地面熱収支算出部、10 CPU、12 RAM、14 入出力部、16 通信部、18 データベース、20 外部記憶媒体、22 ハードディスク、24 表示部、26 入力部、28 バス、30 天空図取得部、32 太陽軌道取得部、34 上空遮蔽率取得部、36 日射遮蔽量取得部、38 交通量取得部、40 気象データ取得部、42 熱収支計算部、44 ニューラルネットワーク、46 路面凍結可能性指数算出部、48 乾燥時間取得部、49 路面凍結可能性指数算出部、50 観測車、52 GPSアンテナ、54 魚眼レンズ付ビデオカメラ、55 温度センサ、56 路面温度センサ、60 コンピュータ、62,72 制御部、64,80 通信部、66,74 記憶部、70 GPSロガー、76 GPSアンテナ、78 ジャイロセンサ、82 バックランプ、84 車速検出回路、86 温度計、88 放射温度計、90 全天カメラ、92 デジタルビデオカメラ、100 道路、102 遮蔽物、104 地点、110,112,114 太陽軌道、120 基準範囲、200,202 線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面熱収支算出装置、地面熱収支算出方法、地面熱収支算出プログラム及び路面凍結可能性指数算出装置に関し、特に地面の純放射量を精度よく評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
路面の熱収支を計算することにより、路面の温度を予測したり、凍結を予測したりする技術が知られている。路面の熱収支とは路面における熱の出入り(収支)であり、例えば非特許文献1に示されるように、顕熱フラックスH、潜熱フラックスιE、地中熱伝導フラックスG、純放射量Rnを用いて、式(1)により計算される。
Rn=H+ιE+G ・・・(1)
【0003】
そして各気象予測データと式(1)とを利用して路面の熱収支を計算することにより、路面の温度を予測したり、路面の凍結を予測したり、といったことが可能になる。
【非特許文献1】近藤純正編著『水環境の気象学―地表面の水収支・熱収支―』朝倉書店、2000年10月10日、p.128−159
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記純放射量Rnは地面に吸収される放射量と地面から放出される放射量の差分である。より具体的には、大気放射、太陽放射、雲からの放射、地面からの放射の収支により最終的に路面に吸収される放射量が純放射量である。このため、上記式(1)の計算を実際に行うにあたっては地面の純放射量を算出する必要があるが、地点ごとの外部環境の相違のため、これまで地面の純放射量を精度よく算出することは困難である場合が多かった。一方で、路面温度予測や路面凍結予測を行う場合の予測精度は地面からの放射の算出の精度に影響される。このため、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度の向上のために、地面からの放射を精度よく評価することが課題となっていた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、地面の純放射量を精度よく評価することにより路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することを可能にする地面熱収支算出装置、地面熱収支算出方法、地面熱収支算出プログラム及び路面凍結可能性指数算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための地面熱収支算出装置は、地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出することを特徴とする。
【0007】
このようにすることにより、上空遮蔽率に応じた地面からの放射量の変化に基づいて該地面の純放射量を算出することができる。このため、遮蔽物の影響を評価して地面の純放射量を精度よく算出することができ、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【0008】
また、上記地面熱収支算出装置において、1日のうち前記地面に太陽光線が直達する時刻を示す可照時刻データを取得する可照時刻データ取得手段と、前記取得される可照時刻データに基づいて、前記算出される純放射量の時間変化を取得する時間変化取得手段と、を含むこととしてもよい。このようにすれば、可照時刻データにより示される太陽光線の直達の有無に応じた純放射量の時間変化を取得することができるので、遮蔽物の影響を評価して地面の純放射量をより精度よく算出することができ、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【0009】
また、本発明に係る路面凍結可能性指数算出装置は、地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する純放射量算出手段と、前記算出される地面の純放射量に基づいて、前記地面である路面の温度を算出する路面温度算出手段と、前記算出される路面の温度に基づいて、該路面の凍結可能性指数を算出する路面凍結可能性指数算出手段と、を含むこととしてもよい。このようにすれば、上空遮蔽率に基づいて路面の凍結し易さを示す路面凍結可能性指数を算出することができるので、路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【0010】
また、上記路面凍結可能性指数算出装置において、前記路面における太陽光線が直達する時間を示す可照時間データを取得する可照時間データ取得手段、をさらに含み、前記路面凍結可能性指数算出手段は、前記取得される可照時間データにさらに基づいて、該路面の凍結可能性指数を算出する、こととしてもよい。このようにすれば、上空遮蔽率に基づく放射量の変化と、可照時間に基づく放射量の変化とに基づいて路面凍結可能性指数を算出することができるので、路面凍結予測の予測精度をより向上することが可能になる。
【0011】
また、本発明に係る地面熱収支算出方法は、地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面からの放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出することを特徴とする。このようにすることによっても、上空遮蔽率に応じた地面からの放射量の変化に基づいて該地面の純放射量を算出することができる。このため、遮蔽物の影響を評価して地面の純放射量を精度よく算出することができ、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【0012】
また、本発明に係る地面熱収支算出プログラムは、地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率を算出する上空遮蔽率算出手段、及び、前記算出される上空遮蔽率に応じた該地面からの放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する純放射量算出手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。このようにすれば、コンピュータを使用して、上空遮蔽率に応じた地面からの放射量の変化に基づいて該地面の純放射量を算出することができる。このため、コンピュータにより遮蔽物の影響を評価して地面の純放射量を精度よく算出することができ、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本実施の形態に係る路面凍結可能性指数算出装置1のハードウェア構成図である。該路面凍結可能性指数算出装置1には、例えばパーソナルコンピュータやサーバコンピュータと同様のコンピュータを使用することができ、CPU10、RAM12、入出力部14、通信部16、データベース18、外部記憶媒体20、ハードディスク22、表示部24、入力部26、バス28を含んで構成されている。そしてCPU10、RAM12、入出力部14はバス28を介して相互に接続され、入出力部14は通信部16、データベース18、外部記憶媒体20、ハードディスク22、表示部24、入力部26と接続されている。
【0015】
CPU10は、路面凍結可能性指数算出装置1の各部を制御するとともに、各種の演算を行い、例えば後述する熱収支計算及び路面凍結可能性指数算出の各計算も行う。RAM12は、CPU10のワークメモリとして動作する。また、このRAM12は、CPU10によって行われる各種処理に関わるプログラムやパラメータを保持している。入出力部14は、CPU10と、通信部16、データベース18、外部記憶媒体20及びハードディスク22と、の間でのデータの送受信を中継する。また、CPU10の指示に従い、通信部16、データベース18、外部記憶媒体20及びハードディスク22を制御する。ハードディスク22には、従来公知のハードディスクを使用することができ、コンピュータプログラムやデータを記憶する。また本発明に係るプログラムも記憶している。外部記憶媒体20には、フレキシブルディスク、CD−ROM、CD−RW、DVD−RAM、USBフラッシュメモリ、ROMカード、リムーバルハードディスク等のあらゆるコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を使用することができ、コンピュータプログラムやデータを記憶する。また本発明に係るプログラムも記憶している。データベース18は、後述する可照時間データや路面温度データを記憶したり、算出した地面純放射量や路面凍結可能性指数を記憶したりする。表示部24はディスプレイ等の表示手段であり、路面凍結可能性指数算出装置1のユーザに対してCPU10の指示に応じた表示を行う。入力部26は、キーボードやマウス等の入力手段であり、路面凍結可能性指数算出装置1のユーザの操作による入力を受け付けて、CPU10に出力する。
【0016】
図2は、本実施の形態に係る路面凍結可能性指数算出装置1の機能ブロック図である。同図に示すように、路面凍結可能性指数算出装置1は、機能的には、天空図取得部30、太陽軌道取得部32、上空遮蔽率取得部34、日射遮蔽量取得部36、交通量取得部38、気象データ取得部40、熱収支計算部42、ニューラルネットワーク44、路面凍結可能性指数算出部46、乾燥時間取得部48を含んで構成されている。なお、天空図取得部30、太陽軌道取得部32、上空遮蔽率取得部34、日射遮蔽量取得部36、交通量取得部38、気象データ取得部40、熱収支計算部42、ニューラルネットワーク44、は地面の熱収支を算出するための地面熱収支算出部2として機能する。
【0017】
ここでまず、本実施の形態における路面凍結可能性指数算出装置1の処理について概説する。初めに、路面凍結可能性指数算出装置1は地点ごとの天空図を取得する。天空図とは図3に示されるように地面の上空所定範囲を撮影した図である。
【0018】
そして、この天空図に基づいて、路面凍結可能性指数算出装置1は地点ごとの上空遮蔽率を取得する。図3の例では、道路脇に建っている建物である遮蔽物102があるため、遮蔽物102がある部分の上空については見通すことができない。このように遮蔽物により上空を見通すことができない部分が天空図のうち、後述する基準範囲に占める割合を、上空遮蔽率データとして算出する。なお、上空遮蔽率データは各地点について決定される。
【0019】
また、天空図はその中心が天頂となっている。このため、天空図上に太陽軌道を描くと、図7の太陽軌道110、太陽軌道112、太陽軌道114のようになる。太陽軌道は当然月日及び地点によって異なる。図7では、太陽軌道110が1月1日、太陽軌道112が4月1日、太陽軌道114が7月1日、の各太陽軌道を示している。天空図上においてこの太陽軌道に遮蔽物が重なっている場合、重なっている部分を示す月日時分においては、該天空図に対応する地点に直射日光が届かない。このため、1日のうち、遮蔽物と重なっていない時刻を示す可照時刻データを算出することができる。また、1日の太陽軌道のうち、遮蔽物と重なっていない時間を合計することにより、1日のうち、直射日光が地面に直達する時間を示す可照時間データを算出することができる。可照時刻データ及び可照時間データは各地点の各月日について決定される。
【0020】
さらに、天気予報から取得できる気象データと、路面凍結可能性指数算出の対象地点が道路である場合には該道路の交通量も取得する。そして、上空遮蔽率データと、可照時刻データと、気象データと、交通量データと、に基づいて、対象地点の熱収支を計算することができる。熱収支の計算結果として路面温度が得られるので、該路面温度と、上記可照時間データと、地点ごとの乾燥のし易さを示す乾燥時間データと、に基づいて、路面凍結可能性指数を算出することができる。このようにして、路面凍結可能性指数算出装置1は路面凍結可能性指数を算出している。
【0021】
以下、各部の処理について詳細に説明する。
【0022】
天空図取得部30は、地面からの上空所定範囲の見通しを示す天空図を取得する。図3は天空図の例であり、同図に示すような円形の図となる。すなわち天空図は上空の見通し範囲が円で示される図であり、円の中心が天頂となる。そして図4に示すように、道路100脇には建造物である遮蔽物102が存在する場合がある。このように遮蔽物102が道路脇に存在する地点104における天空図には、地点104の周囲の遮蔽物102である日射遮蔽物が天空図に現れる。ここでは日射遮蔽物は建造物であるとしているが、他にも、樹木、山など、地面への日射を遮蔽するものが日射遮蔽物である。
【0023】
このような天空図を取得する方法について以下詳細に説明する。
【0024】
天空図を取得するためには、図5に示すような観測車50を使用することが好適である。該観測車50には、図5に示す位置に、自車の位置を把握するためのGPSアンテナ52、車の周囲の全天映像を撮影するための魚眼レンズ付ビデオカメラ54、気温を測定するための温度センサ55、路面温度を測定するための路面温度センサ56が設置される。
【0025】
図6は、該観測車50のハードウェア構成図である。観測車50には、コンピュータ60、GPSロガー70、バックランプ82、車速検出回路84、温度計86、放射温度計88、全天カメラ90、デジタルビデオカメラ92が設置される。温度計86は温度センサ55を構成し、放射温度計88は路面温度センサ56を構成し、全天カメラ90及びデジタルビデオカメラ92は、魚眼レンズ付ビデオカメラ54を構成する。
【0026】
コンピュータ60には従来公知のパーソナルコンピュータと同様のコンピュータを使用することができ、該コンピュータ60は、制御部62、通信部64及び記憶部66を含んで構成される。制御部62はコンピュータ60の各部を制御するとともに、各機器から入力される情報を記憶部66に記憶する。通信部64はGPSロガー70、全天カメラ90及びデジタルビデオカメラ92と接続し、データの送受信ができるようにしている。さらに制御部62がGPSロガー70、全天カメラ90及びデジタルビデオカメラ92を制御することができるように構成されてもよい。
【0027】
GPSロガー70には従来公知のGPSロガーと同様のものを使用することができ、該GPSロガー70は、制御部72、記憶部74、GPSアンテナ76、ジャイロセンサ78、通信部80を含んで構成される。通信部80は、バックランプ82、車速検出回路84、温度計86、放射温度計88、コンピュータ60と接続され、データの送受信ができるようにしている。また、制御部72はGPSロガー70の各部を制御するとともに、GPSアンテナ76、ジャイロセンサ78、通信部80から入力される信号をそれぞれ対応付けて記憶部74に記憶する処理も行う。また、コンピュータ60からの指示に従い、記憶部74に記憶されるデータを読み出し、コンピュータ60に送信する処理も行う。さらに制御部72が温度計86、放射温度計88を制御できるように構成されることもできる。
【0028】
GPSアンテナ76にはGPSアンテナ52を構成する従来公知のGPSアンテナと同様のものを使用することができ、該GPSアンテナ76がGPS衛星からの信号を受信することにより、GPSロガー70は観測車50の位置、向き及び速度を測位する。すなわち、観測車50の存在する位置の緯度/経度/標高を示す緯度/経度/標高データ(位置データ)、方位(観測車50の向いている方位)を示す方位データ及び観測車50の地球上での速度を示す速度データを取得する。
【0029】
バックランプ82は、通常車に備えられるバックランプであり、観測車50が後進するときに点灯する。そしてGPSロガー70は、該バックランプ82が点灯しているか否かについての情報を受信し、点灯している場合に、観測車50が後進していると判断する。また、車速検出回路84は、通常車に備えられる観測車50の車速を検出する回路であり、観測車50の車速を数値データとして出力する。そしてGPSロガー70は該数値データを受信し、観測車50の移動速度を示す移動速度データを取得する。また、ジャイロセンサ78には従来公知のジャイロセンサと同様のものを使用することができ、該ジャイロセンサ78は観測車50の角速度を直交する3軸について出力する。GPSロガー70は、該3軸の角速度を示す角速度データをジャイロセンサ78から取得する。そして、GPSアンテナ76がGPS衛星からの信号を受信できない場合には、GPSアンテナ76からの信号により取得できた最終の位置/方位/速度データからの移動度を、後進情報、移動速度データ、角速度データに基づいて決定し、観測車50の存在する位置を示す位置データ、観測車50の向いている方位を示す方位データ及び観測車50の地球上での速度を示す速度データを取得する。
【0030】
温度計86には従来公知の温度計と同様のものを使用でき、該温度計86は、観測車50の車外気温を測定し、該車外気温を示す気温データをGPSロガー70に対して出力する。また、放射温度計88には、従来公知の放射温度計と同様のものを使用でき、該放射温度計88は、路面からの赤外線放射を測定することにより、路面の表面温度を測定し、該路面の表面温度を示す路面温度データをGPSロガー70に対して出力する。
【0031】
制御部72は、以上のようにして取得される、位置データ、方位データ、速度データ、気温データ、路面温度データ及びこれらの各データを取得した日時或いは各データが観測された日時を示す観測日時データを記憶部74に対応付けて記憶する。なおこれらのデータは、観測車50の観測走行中に常時観測されるものである。
【0032】
全天カメラ90は、図5に示す魚眼レンズ付ビデオカメラ54のように、観測車50の屋根部分に、観測車50の上方向に撮像部を向けて設置される。すなわち、全天カメラ90は観測車50の上方向の全天撮影を行う。該全天カメラ90には、従来公知の全天カメラと同様のものを使用することができるが、特に写角が180度以上で、半円周視界を撮像できるように設計される円周魚眼レンズを使用することが望ましいが、例えば写角が60度程度のものでもよい。全天カメラ90は、撮像結果である撮像データを、コンピュータ60或いはデジタルビデオカメラ92に対し出力する。
【0033】
図4に示すように観測車50が存在する道路100の地点104の道路脇に遮蔽物102が存在する状況において全天カメラ90で撮像すると、図3に示すような円形の撮像結果(天空図)が得られる。図3に示すように、撮像結果は、円の周囲が全天カメラ90のレンズ面の写真となり、円の中心はレンズの向いている向きの写真となる。このように撮影されることにより、円の一部に遮蔽物102が写る結果となる。すなわち、地点104の周囲の建造物や樹木等の日射遮蔽物が撮像結果に写ることとなる。
【0034】
そして、該撮像データも観測車50の観測走行中に常時撮影されるものであり、デジタルビデオカメラ92で録画することにより動画としてデジタルビデオカメラ92或いは記憶部66に記憶される。このとき、該撮像データも撮像した日時或いは該撮像データが記憶された日時を示す撮像日時データと対応付けられて記憶される。そして、該撮像日時データと上記観測日時データとによって、デジタルビデオカメラ92或いは記憶部66に記憶される撮像データと、GPSロガー70に記憶される位置データ、方位データ、速度データ、気温データ、路面温度データと、が対応付けられる。
【0035】
そして観測車50が道路100上を移動しながら観測(観測走行)することにより、天空図取得部30は、各地点について、上記天空図を取得している。
【0036】
次に、上空遮蔽率取得部34は、天空図取得部30が取得した天空図に基づいて、各地点についての上空遮蔽率を算出する。上空遮蔽率とは、上空の基準範囲(天空図により示される範囲であってもよいし、その一部であってもよい。ここでは、図8に示すように、真上を中心として片側30度の写角で示される範囲であるとする。天空図上では円形となる。)のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合であり、具体的には基準範囲の面積(円周率×円の半径の二乗)に占める遮蔽物部分の面積の割合となる。
【0037】
この計算のさらに具体的な例を、図9を参照しながら説明する。同図は図7に示す天空図に基準範囲120を加えたものである。図9においては、基準範囲120と重なっているのは、斜線で示した遮蔽物102−1の一部である遮蔽物102−1−1及び遮蔽物102−4の一部である遮蔽物102−4−1である。そこで、遮蔽物102−1−1と遮蔽物102−4−1の天空図における面積を計算し、基準範囲120の面積で除算することにより、上空遮蔽率を算出することができる。
【0038】
上空遮蔽率取得部34はまた、撮像データである上記天空図と対応付けてデジタルビデオカメラ92或いは記憶部66に記憶される撮像日時データを取得し、さらに該撮像日時データと対応付けて記憶部74に記憶される位置データを取得する。このようにして上空遮蔽率取得部34は、各位置データにより示される各地点での上空遮蔽率を示す上空遮蔽率データを取得している。
【0039】
太陽軌道取得部32は、地球の公転運度及び自転運動により決定される太陽軌道を取得する。具体的には、太陽軌道の時角t,高度角h,方位角Aは、緯度φ,経度λ,時刻H,太陽赤緯δ,均時差ETに基づいて、以下の式(2)、式(3)及び式(4)により太陽軌道を求めることにより、取得する。なお、太陽赤緯δ及び均時差ETは月日によって異なる。このため、太陽の高度角h及び方位角Aは測定点の緯度/経度/日時に基づいて異なる値となる。
t=λ−9+ET+(H−12) ・・・(2)
sinh=sinφsinδ+cosφcosδcost ・・・(3)
sinA=−cosδsint/cosh ・・・(4)
【0040】
日射遮蔽量取得部36は、天空図取得部30が取得した天空図と太陽軌道取得部32が取得した太陽軌道とに基づいて、各地点の各日時についての可照時刻データと、各地点の各日についての可照時間データと、を取得する。具体的には、天空図に描かれた太陽軌道のうち、遮蔽物と重なっている部分の割合を取得し、取得した割合と、一日の日射量と、に基づいて日射遮蔽量を取得する。
【0041】
撮像データを撮像した地点の緯度/経度/標高は、上述のように記憶部74に記憶されている。そこで日射遮蔽量取得部36は、撮像データに対応付けられる緯度/経度/標高を取得し、式(2)、式(3)及び式(4)により、該地点での日時ごとの太陽の位置を取得する。そして該位置を撮像データ上にプロットすると、図7のような太陽軌道が得られる。撮像データは日によって普通は変化しないが、図7に示すように太陽軌道は毎日異なる線を描くこととなる。なおこの処理において、標高により太陽軌道は異なるので、位置データが示す測定点の標高に応じて、測定点における高度補正及び日射遮蔽物の高度補正を行っている。さらに、方位データにより示される観測車50の向きに応じて、撮像データを回転させる方位補正も行っている。
【0042】
そして日射遮蔽量取得部36は、撮像データにおいて、太陽軌道上にある遮蔽物102のような日射遮蔽物によって太陽光線が遮られない時間(太陽光線の可照時間)を算出する。具体的には、例えば図10のような太陽軌道遮蔽データを取得することにより、該可照時間を算出することができる。図10は、ある地点かつある月日において、縦軸を基準となる地点からの距離、横軸を時間、として、太陽軌道上に遮蔽物があるか否かを地点ごと時分ごとに表示したグラフである。該グラフは太陽軌道上に遮蔽物がある場合に黒、ない場合に白を表示している。それぞれが地点ごと時分ごとに太陽軌道の遮蔽の有無を表す太陽軌道遮蔽データとなる。そして、地点ごとの白の時間が該地点における太陽光線の可照時間となる。
【0043】
このようにして、観測車50が観測走行を実施した各地点について緯度/経度/標高/月日ごとの太陽光線の可照時間を算出することができ、日射遮蔽量取得部36は該可照時間を可照時間データとして取得する。
【0044】
また、日射遮蔽量取得部36は、図10に示すブラフから、各地点の各日について、1日のうち日射が該地点に直達する時刻を示す可照時刻データも取得する。可照時刻データは、図10に示すグラフにおける太陽軌道の遮蔽がないことを示す部分(白の部分)の時刻を示すデータである。
【0045】
次に、気象データ取得部40は、日本気象協会のGPV(Grid Point Value,気象要素や物理量の格子点上の値)による局地気象予測モデル(ANEMOS)システムなどの気象予測システムから気象予測データを受信することにより、気象データを取得する。この気象予測システムにおいては、1km標高データ、土地利用データ等の国土数値データ、気象庁領域モデル(RSM)や予報ガイダンス等の気象庁発表のGPVデータ、海水温データや雪線標高データ等の気候値データに基づいて、気象予測データを算出している。そして気象データ取得部40は、気象予測システムにより算出される気象予測データから、特に天気、気温、雲量、降雪量、風のGPV気象予測データを気象データとして取得している。
【0046】
交通量取得部38は、道路の地点ごとの交通量を示す交通量データを取得する。具体的には、交通量取得部38は、道路行政を担う公共機関から提供される車両の通行量を示す交通量データを地点ごとに取得することができる。取得される該交通量データは交通量実測データであったり、交通量予測データであったりするが、例えばある地点の将来の日時について後述する熱収支モデルにより路面温度を算出する場合には、交通量取得部38は、該地点及び該日時の交通量予測データを交通量データとして取得する。
【0047】
熱収支計算部42は、気象データ取得部40により取得される気象データと、交通量取得部38により取得される交通量データと、日射遮蔽量取得部36により取得される可照時刻データと、上空遮蔽率取得部34により取得される上空遮蔽率データと、に基づいて、特定の地点及び特定の日時における路面温度を算出するための熱収支モデルによる熱収支計算を行う。熱収支計算では、路面の熱収支を計算することにより、路面の温度を算出することができる。
【0048】
以下、熱収支計算部42における熱収支計算処理について、具体的に説明する。
【0049】
図11は本実施の形態における熱収支計算の概念図である。同図に示すように、路面に入ってくる熱(大気放射、太陽放射、雲からの放射、地中熱伝導フラックス、交通により発生する熱)と、路面から出ていく熱(地面からの放射、顕熱フラックス、潜熱フラックス、地中熱伝導フラックス)の収支を計算することにより、路面の温度を算出することができる。本実施の形態では特に、各地点の上空遮蔽率データに基づいて雲からの放射量及び地面からの放射量を、各地点の可照時刻データに基づいて太陽放射量を、それぞれ算出することにより、地面の純放射量を精度よく評価することを可能にしている。以下に、その具体的な計算方法について説明する。
【0050】
熱収支計算においては、路面が吸収する正味の放射量である純放射量Rnを算出する。純放射量Rnは、大気放射、太陽放射、雲からの放射、地面からの放射の収支により最終的に路面に吸収される放射量であり、アルベドをα、水平面日射量(全天の日射量)をS↓、射出率(黒体度)をε、ステファン-ボルツマン定数をσ、路面温度をTS、大気からの長波放射量をF↓、とすると、以下の式(5)で表されることが知られている。なお、σ×TS4が地表面温度に対する黒体放射量(地面からの放射量)となる。
Rn=(1−α)×S↓−ε×(σ×TS4−F↓) ・・・(5)
【0051】
ここで、上記パラメータのひとつである水平面日射量S↓は日射遮蔽量データに応じて変化する。例えば、日射が遮られている場合には水平面日射量S↓はゼロとなる。一方、日射が遮られる時刻(日射が地面に直達する時刻)とそうでない時刻(日射が地面に直達しない時刻)があることも多い。このため、日射遮蔽量取得部36において取得される可照時刻データに基づいて、水平面日射量S↓を計算する。
【0052】
具体的には、水平面日射量S↓は式(6)で表すことができる。ここで、θは天頂と太陽のなす角度(天頂角)、S0は地点及び日によって変化する定数である。
S↓=S0cosθ ・・・(6)
【0053】
そして、可照時刻データにより日射が直達しないと示される時刻tを例えばta≦t<tbとすると、式(6)は式(7)及び式(8)のように計算することができる。
S↓=0 (ta≦t<tb) ・・・(7)
S↓=S0cosθ (t<ta,tb≦t) ・・・(8)
【0054】
また、大気からの長波放射量F↓は、上空遮蔽率取得部34により取得される上空遮蔽率データにより示される上空遮蔽率に応じて変化する。つまり、上空が遮蔽されている割合が高いほど、大気から地面に入射される放射量が少なくなる。そこで熱収支計算部42は、遮蔽物がないとして計算される大気からの長波放射量F↓に上空遮蔽率を乗ずることにより、大気からの放射量を算出している。
【0055】
このようにすることにより、例えば樹木により上空遮蔽率20%で上空が遮蔽される場合には、遮蔽物のない場合に比べ大気からの放射量が80%となるように算出される。また、跨線橋や橋の下などのために上空遮蔽率80%で上空が遮蔽される場合には、遮蔽物のない場合に比べ大気からの放射量が20%となるように算出される。さらに、トンネル内など上空遮蔽率100%で上空が遮蔽される場合には、遮蔽物のない場合に比べ大気からの放射量が0%、すなわち大気からの放射量が0となるように算出される。
【0056】
熱収支計算部42では、このようにして、可照時刻データ及び上空遮蔽率データに基づいて、水平面日射量S↓、大気からの長波放射量F↓を計算している。そして、算出されたこれらのデータを使用して式(5)により各地点における純放射量Rnを算出している。
【0057】
なお、地面からの放射量σ×TS4も、上空遮蔽率取得部34により取得される上空遮蔽率データにより示される上空遮蔽率に応じて変化することとしてもよい。つまり、上空が遮蔽されている割合が高いほど、地面からの放射が少なくなることとしてもよい。この場合には、熱収支計算部42は、遮蔽物がないとして計算される地面からの放射量σ×TS4に上空遮蔽率を乗ずることにより、地面からの放射量を算出する。そして算出された地面からの放射量σ×TS4も使用して式(5)により各地点における純放射量Rnを算出する。
【0058】
このようにして算出される純放射量Rnの具体的な例を図12に示す。図12は、図7で示す天空図に対応する地点において、太陽軌道が太陽軌道110となる場合の1日の純放射量の変化を示すグラフである。同図では、横軸を時間、縦軸を純放射量として描画している。そして、時刻t1から時刻の間t6は日射がある時間帯(昼間帯)、時刻t6から時刻の間t7は日射がない時間帯(夜間帯)を示している。そして、昼間帯においては純放射量がプラスの値をとり、夜間帯においては純放射量がマイナスの値をとる。すなわち、昼間帯において地面は暖められ、夜間帯において地面は冷やされる。さらに、線200が可照時刻データ及び上空遮蔽率データを考慮せずに算出した純放射量、線202が可照時刻データ及び上空遮蔽率データに基づいて算出した純放射量、をそれぞれ示している。
【0059】
そしてこの地点では、日射遮蔽時刻データにより、時刻t1から時刻t2の期間では日射遮蔽物102−1、時刻t3から時刻t4の期間では日射遮蔽物102−2、時刻t5から時刻t6の期間では日射遮蔽物102−3によりそれぞれ日射が遮られることが示される。このため、上述のようにこれらの期間においては水平面日射量S↓が0となる。このため、熱収支計算部42では、これらの期間については式(5)と式(7)により純放射量を算出する。
【0060】
また、日射遮蔽時刻データにより、時刻t2から時刻t3の期間、及び時刻t4から時刻t5の期間では日射遮蔽物により日射が遮られることはないことが示される。このため、熱収支計算部42では、これらの期間については式(5)と式(8)により純放射量を算出する。
【0061】
さらに、時刻t6から時刻t7においては、大気からの長波放射量F↓、地面からの放射量σ×TS4を上空遮蔽率に基づいて算出した上で、式(5)により純放射量を算出する。なお、昼間帯(時刻t1から時刻t6の期間)においても大気からの長波放射量F↓、地面からの放射量σ×TS4を上空遮蔽率に基づいて算出した上で、式(5)により純放射量を算出してもよいのは勿論である。
【0062】
このようにして各期間についての純放射量を算出すると、純放射量は線202のように時間変化する。この線202により示されるように、道路に遮蔽物が存在することにより放射量が変化し、このため純放射量が線200から線202に変化する。この純放射量の遮蔽物による変化を、上空遮蔽率データ、可照時刻データに基づいて算出することが可能にしている。
【0063】
そして、このようにして算出された純放射量を式(9)に適用することにより、熱収支計算部42は路面温度TSを算出することができる。ここで、Wは交通により発生する熱である。
Rn+W=H+ιE+G ・・・(9)
【0064】
交通により発生する熱Wは、車両1台当たりの排熱伝導係数をwC、時間hにおける時間帯平均の交通量をTR(h)、車両の仮想温度をTtr、路面温度をTSとすると、以下の式(10)のように表される。
W=wC×TR(h)×(Ttr−TS) ・・・(10)
【0065】
また、顕熱フラックスH及び潜熱フラックスιEはそれぞれ以下の式(11)及び式(12)で表される。ここで、cPは空気の定圧比熱、ρは空気の密度、CHは顕熱フラックスのバルク輸送係数、U’は地上風及び車両通行による風速の和、Tは地上気温、ιは水又は氷の気化の潜熱、βは路面の蒸発効率、qSは地上気温Tに対する飽和比湿、qは地表面温度TSに対する飽和比湿である。なお、地上風の風速及び地上気温は気象データから取得することができる。
H=cP×ρ×CH×U’×(TS−T) ・・・(11)
ιE=ι×ρ×β×CH×U’×(qS−q) ・・・(12)
【0066】
さらに、地中熱伝導フラックスGは以下の式(13)のように示されるので、式(14)に示す路面での熱収支計算を行うことにより、路面温度TSを算出することができる。ただし、λGは地中の熱伝導率であり、TGは地中温度であり、zは路面からの深さ(z=0が路面)である。
G(z)=−λG(dTG/dz) ・・・(13)
−λG(dTG/dz)|z=0=Rn+W−H−ιE ・・・(14)
【0067】
このようにして熱収支計算部42は、可照時刻データ及び上空遮蔽率データに基づいて算出する純放射量及びその時間変化に基づいて、さらに、路面温度及びその時間変化を算出する。そして熱収支計算部42は、該算出される路面温度及びその時間変化を路面凍結可能性指数算出部46に対して出力している。
【0068】
なお、上記の方法では解析的な方法で路面温度を算出しているが、一部のデータについては測定をすることなく、ニューラルネットワーク44を使用して路面温度を求めることも多い。例えば該ニューラルネットワーク44として教師付き学習を行うニューラルネットを使用することにすると、予め可照時刻データ、上空遮蔽率データ、交通量データ、気象データ、の各データと、日時ごとの路面温度データと、の対応関係を実際に測定し、これらを測定した地点の位置データと対応付けて該ニューラルネットに学習させておく。このとき、実際に測定したデータとして、観測車50において測定した気温データ、路面温度データ、可照時刻データ及び上空遮蔽率データを使用することができる。ニューラルネットワーク44にこのように学習させておくことにより、各データを入力することで、入力した各データに対応する路面温度データを、各地点の各日時について得ることができるようになる。
【0069】
そして路面凍結可能性指数算出部46は、熱収支計算部42から出力される各地点についての路面温度に基づいて、各地点についての路面凍結可能性指数を算出する。路面凍結可能性指数とは道路の各地点についての凍結しやすさを示す指数である。ある道路において、起点からの距離xの地点における路面温度をa(x)、可照時間をb(x)とすると、路面凍結可能性指数g(x)は以下の式(15)のように表すことができる。ただし、ある道路の路面凍結可能性算出対象区間において路面凍結可能性の高い地点を明らかにすることを目的として路面凍結可能性指数を算出する場合には、a(x)及びb(x)はそれぞれ該路面凍結可能性算出対象区間の起点から終点までの該a(x)及び該b(x)の最大値を1、最小値を0として正規化して計算することとしてもよい。
g(x)=m×a(x)+n×b(x) ・・・(15)
【0070】
ここで、路面凍結可能性指数算出部46は、式(15)における路面温度として、熱収支計算部42から出力される各地点についての路面温度を使用する。また、式(15)における可照時間として、日射遮蔽量取得部36により取得される可照時間を使用する。このようにして、路面凍結可能性指数算出部46は、熱収支計算部42から出力される各地点についての路面温度と、日射遮蔽量取得部36により取得される該地点についての可照時間と、に基づいて、路面凍結可能性指数を算出している。
【0071】
また、m,nはそれぞれ路面凍結可能性指数に対する可照時間,路面温度の重みを示す重み係数である。該m,nは種々の路面温度と可照時間を条件の下で、路面が乾燥するまでの時間を、地点ごとに測定することにより取得することができる。つまり、例えば水はけの悪い路面では乾燥までの時間は長くなる場合がある。また、例えば湧水があるために乾燥までの時間が長くなる場合もある。さらに、例えば交通量が多い道路ではすぐに乾燥する場合もある。これらのような場合に、実際に地点ごとに可照時間及び路面温度と、路面凍結可能性指数と、の関係を実験的に測定することにより、より精度よく路面凍結可能性指数を算出することができるようになる。
【0072】
より具体的には、乾燥時間取得部48は、各地点について、可照時間と路面温度の組み合わせごとに路面が乾燥するまでの時間を測定した結果を取得する。そしてこの取得される結果に基づいて、上記重み係数m,nが算出される。もっとも、雨雪による水分供給以外の水分供給がない路面や、交通量がそれほど多くない路面についての算出ではm=n=1としてもかまわない。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態では、上空遮蔽率データと可照時刻データとに基づいて地面の純放射量を精度よく算出することにより、路面温度予測や路面凍結予測の予測精度を向上することを可能にしている。より具体的には、上空遮蔽率に基づく放射量の変化と、可照時刻に基づく放射量の時間変化とに基づいて、遮蔽物による純放射量の変化を算出することができる。そして、このようにして算出された純放射量を使用して算出された路面温度は、遮蔽物による路面温度への影響を評価して算出されているので精度が高いということができる。そしてさらにこの精度が高い路面温度に基づいて路面凍結可能性指数を算出することができるので、路面凍結予測の予測精度を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態にかかる路面凍結可能性指数算出装置のハードウェア構成図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる路面凍結可能性指数算出装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる天空図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる道路の俯瞰図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる観測車の外観図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる観測車の機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる太陽軌道を記載した天空図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる天空図により上空遮蔽率を算出する方法の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる基準範囲の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態にかかる地点ごと時分ごとの太陽軌道遮蔽データのグラフである。
【図11】本発明の実施の形態にかかる熱収支の概念図である。
【図12】本発明の実施の形態にかかる純放射量と時間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 路面凍結可能性指数算出装置、2 地面熱収支算出部、10 CPU、12 RAM、14 入出力部、16 通信部、18 データベース、20 外部記憶媒体、22 ハードディスク、24 表示部、26 入力部、28 バス、30 天空図取得部、32 太陽軌道取得部、34 上空遮蔽率取得部、36 日射遮蔽量取得部、38 交通量取得部、40 気象データ取得部、42 熱収支計算部、44 ニューラルネットワーク、46 路面凍結可能性指数算出部、48 乾燥時間取得部、49 路面凍結可能性指数算出部、50 観測車、52 GPSアンテナ、54 魚眼レンズ付ビデオカメラ、55 温度センサ、56 路面温度センサ、60 コンピュータ、62,72 制御部、64,80 通信部、66,74 記憶部、70 GPSロガー、76 GPSアンテナ、78 ジャイロセンサ、82 バックランプ、84 車速検出回路、86 温度計、88 放射温度計、90 全天カメラ、92 デジタルビデオカメラ、100 道路、102 遮蔽物、104 地点、110,112,114 太陽軌道、120 基準範囲、200,202 線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出することを特徴とする地面熱収支算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地面熱収支算出装置において、
1日のうち前記地面に太陽光線が直達する時刻を示す可照時刻データを取得する可照時刻データ取得手段と、
前記取得される可照時刻データに基づいて、前記算出される純放射量の時間変化を取得する時間変化取得手段と、
を含むことを特徴とする地面熱収支算出装置。
【請求項3】
地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する純放射量算出手段と、
前記算出される地面の純放射量に基づいて、前記地面である路面の温度を算出する路面温度算出手段と、
前記算出される路面の温度に基づいて、該路面の凍結可能性指数を算出する路面凍結可能性指数算出手段と、
を含むことを特徴とする路面凍結可能性指数算出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の路面凍結可能性指数算出装置において、
前記路面における太陽光線が直達する時間を示す可照時間データを取得する可照時間データ取得手段、
をさらに含み、
前記路面凍結可能性指数算出手段は、前記取得される可照時間データにさらに基づいて、該路面の凍結可能性指数を算出する、
ことを特徴とする路面凍結可能性指数算出装置。
【請求項5】
地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出することを特徴とする地面熱収支算出方法。
【請求項6】
地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率を算出する上空遮蔽率算出手段、及び、
前記算出される上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する純放射量算出手段、
としてコンピュータを機能させることを特徴とする地面熱収支算出プログラム。
【請求項1】
地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出することを特徴とする地面熱収支算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地面熱収支算出装置において、
1日のうち前記地面に太陽光線が直達する時刻を示す可照時刻データを取得する可照時刻データ取得手段と、
前記取得される可照時刻データに基づいて、前記算出される純放射量の時間変化を取得する時間変化取得手段と、
を含むことを特徴とする地面熱収支算出装置。
【請求項3】
地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する純放射量算出手段と、
前記算出される地面の純放射量に基づいて、前記地面である路面の温度を算出する路面温度算出手段と、
前記算出される路面の温度に基づいて、該路面の凍結可能性指数を算出する路面凍結可能性指数算出手段と、
を含むことを特徴とする路面凍結可能性指数算出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の路面凍結可能性指数算出装置において、
前記路面における太陽光線が直達する時間を示す可照時間データを取得する可照時間データ取得手段、
をさらに含み、
前記路面凍結可能性指数算出手段は、前記取得される可照時間データにさらに基づいて、該路面の凍結可能性指数を算出する、
ことを特徴とする路面凍結可能性指数算出装置。
【請求項5】
地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出することを特徴とする地面熱収支算出方法。
【請求項6】
地面の上空所定範囲のうち、遮蔽物により見通すことができない部分の割合である上空遮蔽率を算出する上空遮蔽率算出手段、及び、
前記算出される上空遮蔽率に応じた該地面における放射量の変化に基づいて、該地面の純放射量を算出する純放射量算出手段、
としてコンピュータを機能させることを特徴とする地面熱収支算出プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−162447(P2006−162447A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354741(P2004−354741)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(397039919)財団法人日本気象協会 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(397039919)財団法人日本気象協会 (29)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]