説明

均一な形態を有するマイクロカプセルの製造方法、並びにこの方法により製造されたマイクロカプセル

【課題】簡単にして穏やかな方法により、均一な形態を有し、凝集性のないマイクロカプセルを、毒性の問題がない溶媒を使用して製造する方法の提供。
【解決手段】ペプチド、タンパク質、又は他の水溶性の生物的活性な物質を、活性物質として含有し、生分解性のポリマー又はコポリマーから構成され、均一な形態を有するマイクロカプセルを製造するために、−ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、又はヒドロキシカルボン酸のポリエステルとポリエチレングリコールから構成されるブロックコポリマーを、ハロゲンを含まず、1部が水と混和する溶媒又は溶媒混合液に溶解し、−この溶液に、pH値6.0〜8.0を有する、活性物質の緩衝液を分散し、−引き続いて、このW/O型エマルションに、界面活性物質又は界面活性物質の混合物を含む水溶液を添加し、そして−最後に、溶媒又は溶媒混合液を、通常の方式及び方法を用いて除去する、マイクロカプセルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、タンパク質、又は他の水溶性の生物的活性な物質を、活性物質として含有し、均一な形態を有するマイクロカプセルの製造方法、並びにこの方法により製造されたマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドとタンパク質は、大きな薬動力学を有する活性物質であることが知られているが、経口投与を行うと胃内の酸性環境のもとで加水分解を受けやすく、酵素による解体のために分解され、そのために一部が不活性化される結果、胃腸管内での活性効果が著しく低下する。
【0003】
タンパク質とペプチドが急速に活性を失うことは、しかしながら、腸管外での投与、とくに静脈投与の後でも半減期が非常に短くなることからしばしば観察される。これが意味することは、大きな薬動力学をもち、治療に要する理論上の用量が少ないにかかわらず、高用量の投与を何回も行う必要が生じて、患者に大きな負荷をかけることである。
【0004】
ここに挙げた欠点を避ける適切な製剤は、ポリマーのマイクロカプセル又はナノカプセルの形をとったデポーシステムであり、これは、ペプチドについても数多く知られ、文献にも記載されている。
【0005】
これらの製剤の長所を挙げると、
− ペプチドとタンパク質が、急速な不活性化から保護される、
− より少ない用量でも薬理的に活性である、
− 何回にもわたる投与回数を減らすことができる、
− ペプチドとタンパク質の放出を調節することが、原理的に可能になる、
− カプセル化した活性物質を、目的指向に従って移送し、そして
− 望ましくない副作用を減少させることができる。
【0006】
水溶性の物質を、マイクロカプセル化、又はナノカプセル化する公知の方法は次のように分類される:
− コアセルベーション乃至はエマルション相分離
− 噴霧乾燥によるカプセル化
− 有機物相又は水相における溶媒蒸発
【0007】
すべての方法が意味する内容は、活性物質を、生分解性のポリマーマトリックス乃至はコポリマーマトリックスの中へ封入することにある。
【0008】
この目的に関して文献から知られるポリマーには、ポリアミド、ポリアンヒドリド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアセタート、ポリラクトン、ポリオルトカーボネート、その他がある。従来、とくにポリ(ラクチド−co−グリコリド)が利用されてきた。
【0009】
例えば、米国特許 US 4.675.189 (Syntex Inc.) 、米国特許 US 4.835.139 (Debiopharm S.A.) 及び欧州特許 EP 302 582 B1 (Southern Research Inst.)から知られる薬剤組成物は、カプセルの形をした水溶性のペプチドとタンパク質であり、これらは、コアセルベーション乃至はエマルション相分離に基づいて製造された。
【0010】
開示された方法の記載によると、使用したコポリマー、好ましくはポリ(ラクチド−co−グリコリド)を、ジクロロメタンを優先するハロゲン化した有機溶媒に溶かし、この溶液にペプチドの水溶液を分散させる。その後でいわゆるコアセルベーション試剤を加える。コアセルベーション試剤は有機溶液に溶けるが、ポリマーは、コアセルベーション試剤に溶けず、分散したポリペプチドを封入するとポリマーが沈澱してくる。コアセルベーション試剤としては、通常、相分離のためにシリコーン油が用いられる。さらにシリコーン油を入れた後で、マイクロカプセルを硬化させるヘプタンを大量に加えなければならない。
【0011】
この方法によるカプセル化効率は、約70%にある(米国特許US 4.835.136)。製造されたマイクロカプセルの直径は1〜 500μmであり、実施例によると主として10〜50μmにある。
【0012】
この方法には幾つかの欠陥が存在するが、それはジクロロメタン、ヘプタン及びシリコーン油などの毒性に問題がある薬剤を使用するほかに、シリコーン油などのコアセルベーション試剤を用いてカプセル化する結果、多量の溶液を投入する必要性が生じてくることにある。
【0013】
欧州特許 EP-A 315875 (Hoechst 株式会社) において、水溶性のペプチドとタンパク質からなる生分解性のマイクロカプセルの製造方法が記載されるが、この方法は、噴霧乾燥法に基づいており、ここでペプチドとタンパク質の水溶液は、有機質のポリマー溶液の中で乳化され、このエマルションが噴霧乾燥される。
【0014】
生分解性ポリマーとして、ポリヒドロキシ酪酸とポリ(ラクチド−co−グリコリド)を、比率 99 : 1〜 20 : 80に混ぜた混合物が使用される。
【0015】
ペプチド又はタンパク質は、微細な形状又は水溶液として存在する。溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、DMF、又は水/エタノール/クロロホルムからなる混合溶媒が考慮の対象になる。実施例によればクロロホルムが使用されている。噴霧乾燥は、45〜95℃の温度で行うことを優先する。
【0016】
非ハロゲン化溶媒を用いると強い爆発の危険性を示すことが、この方法の欠点であり、同時に乾燥方式の温度を高くしても危険性がある。他方において、ジクロロエタンのような発火しない溶媒を使用すると、最終製品において毒性上憂慮すべき残留溶媒による汚染が発生する。そのほか噴霧乾燥によるマイクロカプセルは、原理的に凝集する傾向が強く、約 100μmサイズの凝集体が生成する。
【0017】
“溶媒−乾燥−方式”によって製造された微細粒子は、2つのカナダ特許出願CA 2.100.925 (Rhone-Merieux)及びCA 2.099.941 (Tanabe Seiyaku Co.) に記載される。
【0018】
この方式においては、ペプチド水溶液又はタンパク質水溶液が、有機質のポリマー溶液に分散されるか、又は活性物質の結晶が、ポリマー溶液中に懸濁されるのが普通である。界面活性物質を入れた第2の水相を添加してから、ポリマー溶媒を蒸発させる。
【0019】
この方式は非常に変動的であり、通常は、W/O型又は複雑なW/O/W型エマルションが作られる。
【0020】
カナダ特許 CA 2.099.941 によれば、水溶性の活性物質と生分解性のポリマーを、最初に溶媒又は混合溶媒に溶かすと、ここで両者とも溶解される。引き続いて、この溶媒を除去し、生成した固形の分散体を、水と混和しない有機溶媒に溶かす。この結果できた溶液(油相)を、水相のなかで乳化するとW/O型エマルションが生成する。
最後に、このエマルションの油相に含まれる有機溶媒を蒸発する。
【0021】
特許の具体的実施例には、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)が、マトリックスとして、そして甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、又はその誘導体が、活性物質として出てくるが、これらは、最初に、アセトニトリル/エタノール、そして必要な場合には、水を入れた混合液、又はアセトニトリルだけ、又はアセトニトリルとゼラチン水溶液からなる混合液、又はジクロロメタンとエタノールからなる混合液の中で溶解される。
【0022】
固形の分散物を溶解する有機溶媒としては、ジクロロメタン又はクロロホルムが利用される。ポリビニルアルコール水溶液は、水相を形成する。
【0023】
マイクロカプセルのサイズは、直径が1〜 100μmであり、具体的実施例によれば、約 50 μmから100 μm未満の間にある。
【0024】
カナダ特許 CA 2.100.925 によると、LHRHホルモンと、その類似体を含むマイクロカプセルは、その前に粉状のLHRHホルモンを2つの有機溶媒中に分散処理して製造されるが、ここで第1の溶媒(分散用溶媒という)は、単純な攪拌により粉状ホルモンの均一な懸濁液を製造することができる。第2の溶媒は、水と容易に混和するので、水相の中で有機物相が微細に分散されることを可能にする。
第2の溶媒として、ジクロロメタン、又は、これに代わりクロロホルムが使用される。カプセルは、1〜 250μmの直径を有する。ここで 50 〜 60 μmを超える大きさのカプセルが優先される。
【0025】
このようにして製造されたマイクロカプセルの形態は、同様に非常に様々である。すでに上述したようにハロゲン化した溶媒を使用すると毒性が憂慮される。そのほか本方法には、比較的多量の界面活性物質も必要になる。
【発明の開示】
【0026】
この発明の課題は、簡単にして穏やかな方法により、均一な形態を有し、凝集性のないマイクロカプセルを、毒性の問題がない溶媒を使用して製造する方法を開発することであり、カプセル化効率が、少なくとも85%、好ましくは90%を超え、サイズ範囲が 200nm〜 500μmにあり、高い填薬度をもつマイクロカプセルを提供することにあった。そのほか、この方法には、“スケールアップ”が可能でなければならない。
【0027】
発明の課題は、“誘発相転移”方式によって驚くほど簡単に解決されるが、これを実施するには、マイクロカプセルの製造で普通に使用されるポリマーを、例えば、ヒドロキシカルボン酸から構成されるポリエステル、又はヒドロキシカルボン酸のポリエステルとポリエチレングリコール(PEG)から構成されるブロックコポリマーを、ハロゲンを含まず、水と混和しないか、又は1部が水と混和する溶媒もしくは溶媒混合液に溶かし、そして、この溶液に、pH値が 6.0〜8.0 で、活性物質を含む緩衝液を注いで分散させる。均一化処理をすると安定なW/O型エマルションが生成するが、これに、界面活性物質又は界面活性物質の混合物を外相として加えると、W/O/W型の3相エマルションが得られる。その後で界面活性物質又は界面活性剤の混合物を、通常の方法で除去するが、好ましくは、真空中及び/又は空気/窒素の気流中で行う。マイクロカプセルには、グレードアップ、そして、必要な場合には、凍結乾燥の処理がなされる。
【0028】
ここで粒子サイズは、攪拌速度により調節されるが、小さいほうの粒子(≦8μm)は、静脈投与用の製品の場合に必要とされ、これは攪拌速度を高めるときに得られる。
【0029】
溶媒を除去した後で、マイクロカプセルは、さらに追加して“クロスフローろ過”の処理を受けることが望ましく、この処理によって残留する界面活性剤と残留溶媒部分が除かれる。これによって“初期バースト”が達成されるが、つまり(粒子表面に付着する活性物質による)投与直後の、活性物質の大量付与が、減少するか、乃至は避けられる。
【0030】
凍結乾燥を行うためには、必要な場合には、糖、糖アルコール又はポリビニルピロリドン誘導体のような凍結防止剤を添加する。
【0031】
発明による方法で使用することができるヒドロキシカルボン酸の優先されるポリエステルは:
ポリグリコリド(PGA)及びコポリ(グリコリド/ラクチド)(PGA/PLLA)のようなグリコリドのコポリマー又はコポリ(グリコリド/炭酸トリメチレン)(PGA/TMC);L−ポリラクチド(PLA)及びポリ−L−ラクチド(PLLA)のようなポリラクチドの立体コポリマー、ポリ−DL−ラクチドのコポリマー及びコポリ(L−ラクチド/DL−ラクチド);コポリ(ラクチド/テトラメチルグリコリド)のようなPLAのコポリマー、コポリ(ラクチド/δ−バレロラクトン)及びコポリ(ラクチド/ε−カプロラクトン);ポリ−β−ヒドロキシブチラート(PHBA)、コポリ(PHBA/β−ヒドロキシバレラート)(PHBA/HVA)、ポリ−β−ヒドロキシプロピオナート(PHPA)、ポリ−p−ジオキサノン(PDS)、ポリ−δ−バレロラクトン、疎水性多糖類、ヒアルロン酸、デキストラン又は疎水性アミロペクチン及びポリ−ε−カプロラクトンである。
【0032】
ヒドロキシカルボン酸のポリエステル及び直線状もしくは星状のポリエチレングリコール(PEG)から構成されるブロックコポリマーとして、発明の方法では、次に挙げる利用がある:
LAとPEGから構成されるAB型−ブロックコポリマー、PLA−PEG−PLAから構成されるABA型−トリブロックコポリマー、S(3)−PEG−PLA−ブロックコポリマー及びS(4)−PEG−PLA−ブロックコポリマーがある。
【0033】
発明によるとポリマーの Resomer(商標)505 、とくに Resomer(商標)RG- 756 又は Resomer(商標)RG- 858 が優先して使用される。
Resomer(商標)とは Bohringer Ingelheim社の商標マークである。ここで扱われるのは、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)である。
【0034】
発明により優先されるハロゲンを含まない溶媒又は溶媒混合液は、アセトン、エタノール、そして酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピルもしくは酢酸ブチルなどの酢酸アルキル、そしてギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピルもしくはギ酸ブチルなどのギ酸アルキル、トリアセチン、クエン酸トリエチル及び/又は、例えば、乳酸メチルもしくは乳酸エチルなどのC−C−乳酸アルキルである。
【0035】
とくに優先して、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及びギ酸プロピルが使用される。
【0036】
発明の意味の緩衝溶液とは、ペプチド、タンパク質、乃至は、これらの生理的和合性を有する塩、又は他の生物学的に活性な水溶性物質の水溶液であり、この溶液は、主としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液又はリン酸塩緩衝液によってpH値が 6.0〜8.0 、好ましくは 6.5〜7.4 に調節されている。
【0037】
発明で使用される他の緩衝液は、クエン酸塩緩衝液であり、緩衝剤の濃度は、一般的に、5 mmol/l〜 300 mmol/l の範囲にある。
【0038】
発明の方法を用いると水溶性がある任意なペプチド乃至はタンパク質が、カプセル化される。発明の方法が、とくに適しているのは、ヒト血清アルブミン、インスリン、インターフェロン及びLHRH−アンタゴニスト、又は、その類似体のカプセル化である。
【0039】
極めて有利なのは、発明の方法を用いると、ヒト血清アルブミン、インスリン、インターフェロン及び次に挙げるペプチドのマイクロカプセルを、均一な形態で製造できることである:
a)DesA(2)Nal-beta-Ala-DCpa-DPal-Ser-Tyr-DCit-Leu-Arg-Pro-DAla-NH
b)DesA(2)Nal-Gly-DCpa-DPal-Ser-Tyr-DCit-Leu-Arg-Pro-DAla-NH
c)Ac-DNal-DCpa-DPal-Ser-Tyr-DLys (Mor)-Leu-Lys (Mor)Pro-DAla-NH
【0040】
DesA(2)Nal及び DCit の意味、並びにペプチドa)〜c)の化学構造を図1乃至は2に記載する。
【0041】
発明の意味において界面活性物質として優先される物質には、Poloxamere(商標)グループ、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリソルベート[Tween(商標)、Span(商標)]、サッカロースエステル [Sisterna(商標)、オランダ製] 、サッカロースエステル (Ryoto sugar ester,東京) 、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、脂肪族アルコールポリグリコシド、チャプス、チャプソ、デシル−β−D−グリコピラノシド、デシル−β−D−マルトピラノシド、ドデシル−β−D−マルトピラノシド、オレイン酸ナトリウム、Poloxamine(商標)グループ、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンの脂肪酸エーテル [Brij(商標)]、トリトン X 100又は、これらの混合物がある。
【0042】
ポリビニルアルコール、Brij(商標)、Poloxamere(商標)、Poloxamine(商標)及び Tween(商標)が優先して使用される。
【0043】
この発明の対象は、均一な形態のマイクロカプセルでもあり、これは、上述の方法により製造され、その直径は、200 nm〜500μm、好ましくは 0.2〜8μmである。
【0044】
ポリマーと溶媒の組み合わせが好条件にあるために、発明の方法によるとマイクロカプセルの凝集体は生成しない。
【0045】
図3及び4は、実施例10(図3)乃至は実施例15(図4)によって製造された発明のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真を示す。写真画像の1ミリメートルは、実際の間隔の1μmに相当する。写真は、明らかに均一な形態を示し、粒子の凝集体は存在しない。
【0046】
この方法によるカプセル化効率は、少なくとも85%であり、カプセル化効率は、主として90〜95%に達している。カプセル化効率の意味は、カプセル化された活性物質の質量・100/使用した活性物質の質量、のように理解する。製造されたマイクロカプセルの填薬度は、3〜30%の間にある(填薬度=活性物質の質量・100/活性物質の質量+ポリマーの質量)。
引き続いて、発明を、実施例によって詳しく説明するが,発明が、実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
実施例1
ポリマー Resomer(商標)RG-756の 1.7gを、酢酸エチル 29 mlに溶かし、これを鋼容器(高さ 11.5 cm、内径8cm) に移す。引き続いて 200 mg のヒトアルブミンを含む5ミリモルのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液(pH 7.4) の 3 ml を、ポリマー溶液の中で、機械式攪拌機(分散機FT、VMA−Getzmann有限会社、5cmの溶解盤)を補助に用い、室温で 10000回/分の回転を与えて6分間分散させる。生成したW/O型エマルションに、2%ポリビニルアコール溶液(分子量9000〜10000 、Aldrich 製)からなる水溶液45 ml を攪拌(8000回転/分)しながら添加する。10秒の分散時間をおいてからW/O/W型エマルションを、500mlの三つ口フラスコに移してKPG攪拌機で攪拌する。次に溶媒の酢酸エチルを、20℃の真空下 (900 mbar) で窒素又は空気を通じて除去する。5時間後に懸濁物を、5 lの水又は水溶液で洗浄し、希望する容積の懸濁液になるまで濃縮する。 Sartocon Mini(商標)(Sartorius株式会社、ゲッチンゲン) のシステムによって“クロスフローろ過”の処理を行う。溶媒を含まず、そして近似的にみて乳化剤を含まない懸濁液に、凍結防止剤(例えば、糖、糖アルコール又はポリビニルピロリドン誘導体)を加えて、出来るだけ迅速に、例えば、液体窒素を使用して冷凍、そして凍結乾燥する。
【0048】
水又は水溶液で再懸濁した凍結乾燥体は、9%(ヒトアルブミンの質量・100/ヒトアルブミンの質量+ポリマーの質量=填薬度)のヒトアルブミンを含むマイクロカプセルを含有し、そしてマイクロカプセルは、直径 0.2〜8μmを有する。そのカプセル化効率は86%である。
【0049】
実施例2
実施例1のように処理するが、ここで Resomer(商標)RG-756の 1.7gを、酢酸エチル 29 mlではなく、酢酸メチル 40 mlに溶解する。
【0050】
実施例3
実施例1のように処理するが、ここでポリマー Resomer(商標)RG-756の 1.7gに代えて、ポリマー Resomer(商標)RG-858の 1.1gを使用する。
【0051】
実施例4
実施例1のように処理するが、ここでポリマー Resomer(商標)RG-756の 1.7gに代えて、ポリマー Resomer(商標)RG-858の 3.0gを使用する。
【0052】
実施例5
実施例1のように処理するが、ここで2%PVA溶液に代えて、2% Brij (商標)35の溶液を使用する。
【0053】
実施例6
実施例1のように処理するが、ここで2%PVA溶液に代えて、2% Brij (商標)96の溶液を使用する。
【0054】
実施例7
実施例1のように処理するが、ここで2%PVA溶液に代えて、2% Tween(商標)20の溶液を使用する。
【0055】
実施例8
ポリマー Resomer(商標)RG-858の 1.1gを、酢酸エチル 29 mlに溶かし、これを鋼容器(高さ 11.5 cm、内径8cm) に移す。
引き続いて 50 mgのペプチドDesA(2)Nal-beta-Ala-DCpa-DPal-Ser-Tyr-DCit-Leu-Arg-Pro-DAla-NH(ペプチドa)とエタノール 2 ml を含む5ミリモルのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液(pH 7.4) の 7 ml を、ポリマー溶液の中で、機械式攪拌機(分散機FT、VMA−Getzmann有限会社、5cmの溶解盤)を補助に用い、室温で 10000回/分の回転を与えて6分間分散させる。生成したW/O型エマルションに、2%ポリビニルアコール溶液(分子量9000〜10000、Aldrich 製) からなる水溶液 45 mlを、攪拌(8000回転/分)しながら添加する。10秒の分散時間をおいてからW/O/W型エマルションを、500 mlの三つ口フラスコに移してKPG攪拌機で攪拌する。次に溶媒の酢酸エチルを、20℃の真空下 (900 mbar) で窒素又は空気を通じて除去する。5時間後に懸濁物を、5 lの水又は水溶液で洗浄して、希望する容積の懸濁液になるまで濃縮する。ポリオレフィン膜(カットオフ 0.2μm) をもつ Sartocon Mini(商標)(Sartorius株式会社、ゲッチンゲン) のシステムによって“クロスフローろ過”の処理を行う。溶媒を含まず、そして近似的にみて乳化剤を含まない懸濁液に、凍結防止剤(例えば、糖、糖アルコール又はポリビニルピロリドン誘導体)を加えて、出来るだけ迅速に、例えば、液体窒素を使用して冷凍、そして凍結乾燥する。
水又は水溶液で再懸濁した凍結乾燥体は、4%の活性物質を含むマイクロカプセルを含有する。このマイクロカプセルは、0.2〜8μmの直径を有する。そのカプセル化効率は93%である。
【0056】
実施例9
ポリマー Resomer(商標)RG-858の 1.1gを、酢酸エチル 29 mlに溶かし、これを鋼容器(高さ 11.5 cm、内径 8 cm)に移す。引き続いて48 mg のペプチド DesA(2)Nal-Gly-DCpa-DPal-Ser-Tyr-DCit-Leu-Arg-Pro-DAla-NH(ペプチドb)を含む5ミリモルのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液(pH 7.4) の 5 ml を、ポリマー溶液の中で、機械式攪拌機(分散機FT、VMA−Getzmann有限会社、5cmの溶解盤)を補助に用い、室温で 10000回/分の回転を与えて6分間分散させる。生成したW/O型エマルションに、2%ポリビニルアコール溶液(分子量9000〜10000、Aldrich製) からなる水溶液 45 mlを、攪拌(8000回転/分)しながら添加する。10秒の分散時間をおいてからW/O/W型エマルションを、500 mlの三つ口フラスコに移してKPG攪拌機で攪拌する。次に溶媒の酢酸エチルを、20℃の真空下 (900 mbar) で窒素又は空気を通じて除去する。5時間後に懸濁物を、5 lの水又は水溶液で洗浄して、希望する容積の懸濁液になるまで濃縮する。“クロスフローろ過”を使用すると有利であり、これには、例えば、ポリオレフィン膜(カットオフ 0.2μm) をもつSartocon Mini (商標)(Sartorius株式会社、ゲッチンゲン) のシステムがある。溶媒を含まず、そして近似的にみて乳化剤を含まない懸濁液に、凍結防止剤(例えば、糖、糖アルコール又はポリビニルピロリドン誘導体)を加えて、出来るだけ迅速に、例えば、液体窒素を使用して冷凍、そして凍結乾燥する。
水又は水溶液で再懸濁した凍結乾燥体は、4%の活性物質を含むマイクロカプセルを含有する。このマイクロカプセルは、0.2〜8μmの直径を有する。そのカプセル化効率は 95.7 %である。
【0057】
実施例10
ポリマー Resomer(商標)RG-858の 1.1gを、ギ酸プロピル 30 mlに溶かし、これを鋼容器(高さ 11.5 cm、内径 8 cm) に移す。引き続いて50 mg のLHRHアンタゴニストAc-DNal-DCpa-DPal-Ser-Tyr-DLys (Mor)-Leu-Lys (Mor)Pro-DAla-NH(ペプチドc)を含む5ミリモルのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液(pH 7.0) の 5 ml を、ポリマー溶液の中で、機械式攪拌機(分散機FT、VMA−Getzmann有限会社、5cmの溶解盤)を補助に用い、室温で 10000回/分の回転を与えて6分間分散させる。生成したW/O型エマルションに、2%ポリビニルアコール溶液(分子量9000〜10000、Aldrich製) からなる水溶液 45 mlを、攪拌(8000回転/分)しながら添加する。10秒の分散時間をおいてからW/O/W型エマルションを、500 mlの三つ口フラスコに移してKPG攪拌機で攪拌する。次に溶媒のギ酸プロピルを、20℃の真空下(900 mbar)で窒素又は空気を通じて除去する。5時間後に懸濁物を、5 lの水又は水溶液で洗浄し、希望する容積の懸濁液になるまで濃縮する。これに続いて“クロスフローろ過”を、ポリオレフィン膜(カットオフ 0.2μm) をもつ Sartocon Mini(商標)(Sartorius株式会社、ゲッチンゲン) のシステムによって行う。溶媒を含まず、そして近似的にみて乳化剤を含まない懸濁液を、出来るだけ迅速に、例えば、液体窒素を使用して冷凍、そして凍結乾燥する。
水又は水溶液で再懸濁した凍結乾燥体は、3.9 %の活性物質を含むマイクロカプセルを含有し、そしてマイクロカプセルは、 0.2〜8μmの直径を有する。そのカプセル化効率は 90.7 %である。
【0058】
実施例11
ポリマー Resomer(商標)RG-858の 1.5gを、酢酸イソプロピル30 ml に溶かし、これを鋼容器(高さ 11.5 cm、内径 8 cm)に移す。引き続いて実施例10のようなLHRHアンタゴニスト 50 mgを含む、5ミリモルのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液(pH 7.0) の 5 ml を、ポリマー溶液の中で、機械式攪拌機(分散機FT、VMA−Getzmann有限会社、5cmの溶解盤)を補助に用い、室温で 10000回/分の回転を与えて6分間分散させる。
生成したW/O型エマルションに、2%ポリビニルアコール溶液(分子量9000〜10000 、Aldrich 製) からなる水溶液 45 mlを、攪拌(8000回転/分)しながら添加する。10秒の分散時間をおいてからW/O/W型エマルションを、500 mlの三つ口フラスコに移してKPG攪拌機で攪拌する。次に溶媒の酢酸イソプロピルを、20℃の真空下 (900 mbar) において窒素又は空気を通じて除去する。5時間後に懸濁物を、5 lの水又は水溶液で洗浄し、希望する容積の懸濁液になるまで濃縮する。ポリオレフィン膜(カットオフ 0.2μm) をもつ SartoconMini(商標)(Sartorius株式会社、ゲッチンゲン) のシステムを用いて“クロスフローろ過”の処理を行い、そして溶媒を含まず、そして近似的にみて乳化剤を含まない懸濁液を、凍結乾燥する。
水又は水溶液で再懸濁した凍結乾燥体は、2.9 %の活性物質を含むマイクロカプセルを含有し、そしてマイクロカプセルは、0.2〜8μmの直径を有する。そのカプセル化効率は 90.6 %である。
【0059】
実施例12
実施例1のように処理するが、ここで5ミリモルのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液(pH 7.0 )を、5ミリモルのリン酸塩緩衝液(PBS,pH 7.2)に置き換える。
【0060】
実施例13
実施例1のように処理するが、ここでトリス緩衝液(pH 7.4)の 3 ml に溶かしたHSA 200 mg に代えて、トリス緩衝液(pH 7.4)の 5 ml に溶かしたHSA 750 mg を使用する。
水又は水溶液で再懸濁した凍結乾燥体は、30%のHSAを含むマイクロカプセルを含有する。そのカプセル化効率は 90.9 %である。
【0061】
実施例14
実施例13のように処理するが、ここで2%ポリビニルアルコール溶液の代わりに、2% Poloxamer F 127の溶液を使用する。
【0062】
実施例15
実施例13のように処理するが、ここで2%ポリビニルアルコール溶液の代わりに、2% Poloxamin T 707の溶液を使用する。
【0063】
実施例16
実施例13のように処理するが、ここで2%のポリビニルアルコール溶液の代りに、2% Poloxamin T 908の溶液を使用する。
【0064】
実施例17
実施例1のように処理するが、ここでHSA 200 mg を、インスリン 200 mg (ヒトインスリン、組換え型 (pfs)、Sigma Chemie Nr. I 0259 )に置き換える。
【0065】
実施例18
実施例1のように処理するが、ここでHSA 200 mg を、インターフェロン 200 mg (ヒト白血球(pfs)(α−IFH,Le),Sigma Chemie Nr. I 1008 )に置き換える。
【0066】
実施例19
実施例1のように処理するが、ここでHSA 200 mg を、インスリン 200 mg (ヒトインスリン、ガンマ型(pfs)(γ−IFN),Sigma Chemie Nr. I 6507 )に置き換える。
【0067】
実施例20
インスリンの 120 mg を、HCl(0.1 N) 0.8 ml に溶かし、NaCl溶液(0.9%) の 2 ml と混合する。引き続いて溶液のpHを、NaOH(0.1 N)を用いて6〜7に調節する。この溶液を、ポリマー RG-858 の 500 mg と酢酸エチル10 ml からなる溶液に加え、引き続いて Ultraturax (10.000 〜 15.000 回転/分) を用いて3〜4分攪拌する。次に攪拌しながら2% Palaxamin T707 の水溶液 50 mlを加える。添加終了後に、懸濁液を、攪拌装置つきの三つ口フラスコに移す。真空中に置いて攪拌すると、溶媒(酢酸エチル)が除去される。残留する残分を、クロスフローろ過 (Sartocon Mini (商標) Sartorius株式会社、ゲッチンゲン) により5リットルの水で洗浄する。溶媒と界面活性剤を殆ど含まないマイクロカプセルを含有する残分を、必要な場合には、凍結防止剤を加えて、迅速に冷凍、そして凍結乾燥する。
水又は水溶液で再懸濁した凍結乾燥体は、填薬度が、15重量%のマイクロカプセルを含有する。
【0068】
実施例21
実施例20のように処理するが、ここで2% Polaxamin T707 の代りに、2%Polaxamer-407 (F127)の溶液を使用する。
得られたマイクロカプセルの填薬度は17%である。
【0069】
実施例22
実施例20のように処理するが、ここで2% Polaxamin T707 の代りに、2%Polaxamer-188 (F68) の溶液を使用する。
得られたマイクロカプセルの填薬度は、16%である。
【0070】
実施例23
実施例20に類似した処理を行う。しかし、ここでは、ポリマー 700 mg とインスリン 223 mg を使用する。水又は水溶液に再懸濁した凍結乾燥体は、20%のインスリンを含むマイクロカプセルを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、DesA(2)Nal及び DCit の意味を示す。
【図2】図2は、ペプチドa)〜c)の化学構造を示す。
【図3】図3は、実施例10によって製造された発明のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真を示す。
【図4】図4は、実施例15によって製造された発明のマイクロカプセルの光学顕微鏡写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド、タンパク質、又は他の水溶性の生物的活性な物質を、活性物質として含有し、生分解性のポリマー又はコポリマーから構成され、均一な形態を有するマイクロカプセルを製造するために、
−ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、又はヒドロキシカルボン酸のポリエステルとポリエチレングリコールから構成されるブロックコポリマーを、ハロゲンを含まず、1部が水と混和する溶媒又は溶媒混合液に溶解し、
−この溶液に、pH値 6.0〜8.0 を有する、活性物質の緩衝液を分散し、
−引き続いて、このW/O型エマルションに、界面活性物質又は界面活性物質の混合物を含む水溶液を添加し、そして
−最後に、溶媒又は溶媒混合液を、通常の方式及び方法を用いて除去することを特徴とする方法。
【請求項2】
ハロゲンを含まない溶媒として、アセトン、エタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピルもしくは酢酸ブチル、トリアセチン、クエン酸トリエチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピルもしくはギ酸ブチル、乳酸メチルもしくは乳酸エチル、又はこれらの混合物が使用されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
活性物質として、ヒト血清アルブミン、ペプチド、タンパク質、インターフェロン、インスリン、LHRH−アンタゴニスト、又はその類似体が使用されることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
溶媒乃至は溶媒の混合液の除去、並びに、場合によっては、粒子表面に付着する活性物質及び/又は界面活性剤の除去を、“クロスフローろ過”によって行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4記載の方法によって製造された、填薬度3〜30重量%、及び直径 200nm〜500μmを示す、均一な形態を有するマイクロカプセル。
【請求項6】
直径 0.2〜8μmを有する、請求項5記載のマイクロカプセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−273964(P2008−273964A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107032(P2008−107032)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【分割の表示】特願平9−520098の分割
【原出願日】平成8年10月30日(1996.10.30)
【出願人】(507402266)アルライズ バイオシステムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】