説明

均一な色相を有する耐久性装飾コーティング、それらの調製のための方法、およびそれらによって被覆された物品

均一な色相を有する耐久性装飾コーティングの生成に適した粉末コーティング組成物、その上に堆積した均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを含む物品、均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを調製するための方法、均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを生成し得るキット、および粉末コーティング組成物を用いて色合わせするための方法を開示する。これらのコーティング組成物は、第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物と、第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物との混合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、均一な色相を有する耐久性装飾コーティングの生成に適した粉末コーティング組成物、その上に堆積した均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを含む物品、均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを調製するための方法、および均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを生成し得るキットに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景情報)
各種基材の被覆に用いるための粉末コーティング組成物が、しばしば所望される。このようなコーティング組成物は、液体コーティング組成物に用いられることが多い有機溶媒の使用を大幅に減らすか、あるいはなくすこともできる。粉末コーティング組成物を加熱することによって硬化させる場合、揮発性物質を周囲の環境に追いやることはほとんどない。これは、コーティング組成物を加熱することによって硬化させる場合に有機溶媒が周囲の大気中に揮発する液体コーティング組成物を上回る顕著な利点である。
【0003】
粉末コーティング組成物は、カラー顔料、フィルム形成樹脂、硬化剤などのさまざまなコーティング成分、および流れ制御剤(flow control agent)、電荷制御剤(charge control agent)などの他の添加剤をドライブレンドし、得られた混合物を押出機などを用いて加熱、溶融、混練した後、得られた押出物を冷却、粉砕、分級する(本明細書では「押出プロセス」という)ことを含む複雑なプロセスによって代表的に生成される。したがって、押出プロセスは、多くの工程を必要とする。
【0004】
粉末コーティング組成物の使用についての不利益の1つは、異なる色相のさまざまなコーティングを得るために、各所望の色相に対して別個の粉末コーティング組成物の生成を必要とすることである。異なる色相の液体コーティング組成物を混合すると、それぞれの混合された液体コーティング組成物の色相と異なる均一な色相を有するコーティングを得ることができる。一方、異なる色相の代表的な粉末コーティング組成物をドライブレンドし、得られた混合物を基材に塗布すると、その結果は、各色相が一般的に肉眼による目視検査によって区別でき、「ゴマ塩状(salt and pepper)」の影響を生じる。したがって、以前は、不可能でないにしても、異なる色相の2つ以上の粉末コーティング組成物のドライブレンドから所望の色相のコーティングを得ることは、困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結果として、それぞれ異なる色相を有する2つ以上の粉末コーティング組成物のドライブレンドから選択した均一な色相を有する耐久性装飾コーティングの生成に適した粉末コーティング組成物を提供することもまた、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
特定の点で、本発明は、耐久性装飾コーティングの生成に適した粉末コーティング組成物に関する。これらのコーティング組成物は、第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物と、第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物との混合物を含む。さらに、第1の粉末コーティング組成物および/または第2の粉末コーティング組成物は、ポリマー封入された色付与粒子を含む。本発明の粉末コーティング組成物は、基材の少なくとも一部に直接塗布されて硬化すると、第1の色相および第2の色相と異なる均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを生成する。
【0007】
他の点で、本発明は、その上に堆積した均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを含む物品に関する。耐久性装飾コーティングは、第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物と、第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物との混合物を含む粉末コーティング組成物から直接堆積し、前記第1の粉末コーティング組成物および/または前記第2の粉末コーティング組成物は、ポリマー封入された色付与粒子を含む。本発明の物品において、均一な色相は、第1の色相および第2の色相とは異なる。
【0008】
さらに別の点で、本発明は、均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを調製するための方法に関する。これらの方法は、(a)第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物を供給すること、(b)第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物を供給すること、(c)第1の粉末コーティング組成物と第2の粉末コーティング組成物とを混合すること、および(d)混合物を基材の少なくとも一部に直接塗布することを含む。これらの方法において、第1の粉末コーティング組成物および/または第2の粉末コーティング組成物は、ポリマー封入された色付与粒子を含む。
【0009】
なお他の点で、本発明は、(a)第1の色相を有する粉末コーティング組成物を含む第1の容器、および(b)第1の色相とは異なる第2の色相を有する粉末コーティング組成物を含む第2の容器を備えるキットに関する。本発明のキットにおいて、第1の容器および/または第2の容器は、ポリマー封入された色付与粒子を含む粉末コーティング組成物を含み、第1の容器の内容物と第2の容器の内容物とを混合する際に、基材の少なくとも一部に直接塗布されて硬化すると第1の色相および第2の色相と異なる均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを生成する粉末コーティング組成物が、形成される。
【0010】
本発明は、また粉末コーティング組成物を用いて色合わせするための方法に関する。これらの方法は、(a)第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物を供給すること、(b)第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物を供給すること、(c)その混合物が基材の少なくとも一部に直接塗布されて硬化すると所望の均一な色相を有するコーティングを生じる割合で、第1の粉末コーティング組成物と第2の粉末コーティング組成物とを混合する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
以下の詳細な説明のために、本発明が、それに反して明らかに明記される場合を除いて、さまざまな別の変形および工程順序を想定しうることは、理解されるべきである。また、任意の操作例以外においてか、または特に表示がない限り、例えば、明細書および特許請求の範囲で用いた材料の量を表す全ての数は、すべての場合において用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、それとは反対のことが表示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で記載した数のパラメータは、本発明によって得られる所望の特性に依存して変化し得る近似値である。極めて最小に見積もっても、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数のパラメータは、報告された有効数字の数を考慮し、かつ普通の四捨五入法を適用することによって少なくとも構成されるべきである。
【0012】
本発明の広範な範囲を記載した数の範囲およびパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載した数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いかなる数値もそれらの各試験測定で得られる標準偏差から必ず生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0013】
また、本明細書で列挙したいかなる数の範囲も、その中に包含されるすべての部分的な範囲を含むものとすることは、理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、列挙した最小値1と列挙した最大値10(を含む)との間のすべての部分的な範囲、すなわち、1以上の最小値と10以下の最大値を有するすべての部分的な範囲を含む。
【0014】
本出願において、単数の使用は、複数を含み、特に記載がない限り、複数は、単数を包含する。また、本出願において、「および/または」は、特定の場合、明確に用いられてもよいが、特に記載がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。
【0015】
先に述べたように、本発明の特定の実施形態は、耐久性装飾コーティングの生成に適した粉末コーティング組成物に関する。本明細書で使用される「粉末コーティング組成物」という用語は、基材上にコーティングを生成するのに適した組成物のことをいい、液状とは反対に固体粒子状で具現化される。本明細書で使用される「耐久性装飾コーティング」という用語は、装飾性(すなわち、それは、基材に所望の外観を提供する)、および耐久性(すなわち、それは、他の製品と同様に、車体、ドアパネル、タクシー、トレーラーの車体などの自動車およびトラック部品、胴体および翼などの飛行機部品、建築部品、コンピュータおよび電話などの家電機器に用いられるコーティング等のコーティングが、一般的に経験する湿度および磨耗などの環境条件に供される場合、著しく欠けたり、剥離したり、傷ついたり、層状に剥離したりしない)の両方を与えるコーティングのことをいう。結果として本発明の「耐久性装飾コーティング」は、耐久性がない染料またはインクを用いて形成した装飾コーティングと区別される。
【0016】
本発明の粉末コーティング組成物は、第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物と、第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物との混合物を含む。本明細書で使用される「混合物」という用語は、第1の粉末コーティング組成物と第2の粉末コーティング組成物の不均一な会合のことをいい、前記粉末コーティング組成物は、化学的に結合せず、機械的手段によって分離できる。第1の粉末コーティング組成物および第2の粉末コーティング組成物は、例えば、ヘンシェルミキサー(Henchsel mixer)などの高速攪拌機を用いるドライブレンド法などの任意の方法によって混合してもよい。本発明において、本明細書に記載したように、限られた数の色(原色)の粉末コーティング組成物を生成すること、およびこれらの着色粉末コーティング組成物の割合とそれから得たコーティングの色相との間の関係を予め調べることによって、混合物を押出プロセスに供する必要を伴わずに所望の均一なコーティングの色相を得るために、実質的に所望の色相の粉末コーティング組成物を、着色粉末コーティング組成物を適切に選択し、そしてそれらを適切な割合で混合することによって生成できる。
【0017】
先に示したように、第1の粉末コーティング組成物および/または第2の粉末コーティング組成物は、ポリマー封入された色付与粒子を含む。特定の実施形態において、第1の粉末コーティング組成物および第2の粉末コーティング組成物は両方とも、ポリマー封入された色付与粒子を含む。本明細書で使用される「ポリマー封入された粒子」という用語は、著しい粒子の凝集を防ぐように、得られたコーティング内で粒子を互いから引き離すことに十分な程度まで、ポリマーによって少なくとも部分的に封入される(すなわちポリマー内部に閉じ込められる)粒子のことをいう。もちろん、このような「ポリマー封入された粒子」を含む粉末コーティング組成物は、またポリマー封入された粒子ではない粒子を含んでもよいことが、認識される。本明細書で使用される「色付与粒子」という用語は、可視領域の他の波長を吸収するよりも可視光線の一部の波長、すなわち、400〜700nmの範囲の波長をより著しく吸収する粒子のことをいう。
【0018】
特定の実施形態において、ポリマーによって封入される粒子は、ナノ粒子を含む。本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、1ミクロン未満の平均粒径を有する粒子のことをいう。特定の実施形態において、本発明で用いられるナノ粒子は、300ナノメートル以下、例えば200ナノメートル以下、あるいはいくつかの場合において、100ナノメートル以下の平均粒径を有する。したがって、特定の実施形態において、粉末コーティング組成物は、ポリマー封入されているため、著しく凝集しない色付与粒子を含む。
【0019】
本発明のために、平均粒径は、公知のレーザ散乱技法にしたがって測定することができる。例えば、平均粒径は、Horiba Model LA 900レーザ回折粒径計測器を用いて決定でき、前記粒径計測器は、633nmの波長を有するヘリウム−ネオンレーザを用いて粒径を測定し、そして粒子が球形を有することを仮定する(すなわち「粒径」とは、粒子を完全に封入する最小の球のことをいう)。平均粒径はまた、粒子の代表的な試料の透過型電子顕微鏡(TEM)像の電子顕微鏡写真を目視検査し、画像中の粒子の直径を測定し、TEM像の倍率に基づいて測定した粒子の平均一次粒径を算出することによって決定できる。当業者は、このようなTEM像を調製し、倍率に基づいた一次粒径を決定する方法を理解するだろう。粒子の一次粒径とは、完全に粒子を封入する最小の直径の球のことをいう。本明細書で使用される「一次粒径」という用語は、個々の粒子の大きさのことをいう。
【0020】
ポリマー封入された色付与粒子の形状(または形態)は、変化し得る。例えば、立方、板状または針状(細長いかまたは繊維状)の粒子と同様に、代表的な球状形態(中実ビーズ、マイクロビーズまたは中空の球など)が使用できる。さらに、粒子は、中空、多孔性、または空隙のない内部構造、あるいは前記のもの、例えば多孔性の壁または中実の壁を伴う中空の中心などのいずれかの組み合わせを有することができる。適した粒子の特徴に関するさらなる情報については、H.Katzら(編),Handbook of Fillers and Plastics(1987)、9−10ページを参照のこと。
【0021】
得られた粉末コーティング組成物の所望の特性および特徴(例えば、コーティング硬度、引っ掻き耐性、安定性または色)に依存して、異なる平均粒径を有する1つ以上のポリマー封入された色付与粒子の混合物を用いることができる。
【0022】
ナノ粒子などのポリマー封入された色付与粒子は、ポリマー無機材料および/または非ポリマー無機材料、ポリマー有機材料および/または非ポリマー有機材料、複合材料、さらに前記材料の任意の混合物から形成できる。本明細書で使用される「から形成される」とは、例えば「含む」などの開放クレームの用語を示す。それ自体、列挙された成分の一覧「から形成される」組成物または物質が、少なくともこれらの列挙した成分を含む組成物であり、組成物の形成中に他の列挙されていない成分をさらに含み得ることを意図する。さらに、本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、オリゴマーを包含することを意味し、オリゴマーとしては、ホモポリマーおよびコポリマーの両方が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用される「ポリマー無機材料」という用語は、炭素以外の元素に基づく主鎖の繰返し単位を有するポリマー材料を意味する。さらに、本明細書で使用される「ポリマー有機材料」という用語は、合成ポリマー材料、半合成ポリマー材料および天然ポリマー材料を意味し、これらすべてのポリマー材料は、炭素に基づく主鎖の繰返し単位を有する。
【0024】
本明細書で使用される「有機材料」という用語は、代表的に、炭素をそれ自体および水素、そして多くの場合、さらに他の元素に結合し、炭素酸化物、炭化物、二硫化炭素などの二元化合物、金属シアン化物、金属カルボニル、ホスゲン、硫化カルボニルなどの三元化合物、ならびに金属炭酸塩、例えば、炭酸カルシウムおよび炭酸ナトリウムなどの炭素含有イオン化合物を除く炭素含有化合物を意味する。
【0025】
本明細書で使用される「無機材料」という用語は、有機材料ではないあらゆる材料を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「複合材料」という用語は、2つ以上の異なる材料の組み合わせを意味する。複合材料から形成された粒子は、概してその表面下の粒子の内部の硬度とは異なる表面の硬度を有する。さらに具体的には、粒子の表面は、当該分野において公知である技法を用いて化学的または物理的にその表面の特徴を変えることを含む当該分野において公知である方法で改変できるが、これに限定されない。
【0027】
例えば、1つ以上の二次材料で被覆、クラッドまたは封入されて、より柔軟な表面を有する複合粒子を形成する一次材料から、粒子を形成できる。特定の実施形態において、複合材料から形成される粒子は、異なる形態の一次材料で被覆、クラッドまたは封入される一次材料から形成できる。本発明において有用な粒子に関するさらなる情報については、G.Wypych,Handbook of Fillers,第2版(1999)、15−202ページを参照されたい。
【0028】
上述したように、本発明において有用な粒子として、当該分野において公知である無機材料が挙げられる。適切な粒子は、セラミック材料、金属材料および前記材料のいずれかの混合物から形成できる。このようなセラミック材料の非限定的な例としては、金属酸化物、混合金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属ケイ酸塩、金属ホウ化物、金属炭酸塩および前記材料のいずれかの混合物が挙げられる。金属窒化物の非限定的な具体例としては、窒化ホウ素が挙げられ、金属酸化物の非限定的な具体例としては、酸化亜鉛が挙げられ、適切な混合金属酸化物の非限定的な例としては、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムが挙げられ、適切な金属硫化物の非限定的な例としては、二硫化モリブデン、二硫化タンタル、二硫化タングステンおよび硫化亜鉛が挙げられ、金属ケイ酸塩の非限定的な例としては、蛭石などのケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、粒子は、アルミニウム、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、コバルト、銅、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、モリブデン、窒素、酸素、リン、セレン、ケイ素、銀、硫黄、錫、チタン、タングステン、バナジウム、イットリウム、亜鉛、およびジルコニウム(それらの酸化物、それらの窒化物、それらのリン化物、それらのリン酸塩、それらのセレン化物、それらの硫化物、それらの硫酸塩およびそれらの混合物を含む)から選択される無機材料を含む。前記の無機粒子の適切な非限定的な例としては、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉄、ケイ酸アルミニウム、炭化ホウ素、窒素ドープチタニアおよびセレン化カドミウムが挙げられる。
【0030】
粒子は、例えば、コロイド、ヒュームドまたは無定形の形態のシリカ、アルミナまたはコロイドアルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セシウム、酸化イットリウム、コロイドイットリア、ジルコニア(例えばコロイドまたは無定形のジルコニア)および前記材料の任意の混合物;または別の種類の有機酸化物がその上に堆積している1種の無機酸化物などの本質的に単一の無機酸化物のコアを含むことができる。
【0031】
本発明において用いられる粒子の形成に有用な非ポリマーの無機材料としては、グラファイト、金属、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩および水酸化物から選択される無機材料が挙げられる。有用な無機酸化物の非限定的な例としては、酸化亜鉛が挙げられる。適切な無機硫化物の非限定的な例としては、二硫化モリブデン、二硫化タンタル、二硫化タングステンおよび二硫化亜鉛が挙げられる。有用な無機ケイ酸塩の非限定的な例としては、蛭石などのケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムが挙げられる。適切な金属の非限定的な例としては、モリブデン、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、銅、金、鉄、銀ならびに前記金属のいずれかの合金および混合物が挙げられる。
【0032】
特定の実施形態において、粒子は、ヒュームドシリカ、無定形シリカ、コロイドシリカ、アルミナ、コロイドアルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セシウム、酸化イットリウム、コロイドイットリア、ジルコニア、コロイドジルコニアおよび前記材料の任意の混合物から選択できる。特定の実施形態において、粒子は、コロイドシリカを含む。上記に開示したように、これらの材料は表面処理してもよいし、表面処理しなくてもよい。他の有用な粒子として、例えば、参考として本明細書に援用される米国特許第5,853,809号、第6欄51行目〜第8欄43行目に記載の表面改変シリカが挙げられる。
【0033】
別の選択肢として、1つ以上の二次材料で被覆、クラッドまたは封入されてより硬い表面を有する複合粒子を形成する一次材料から、粒子を形成できる。あるいは、異なる形態の一次材料で被覆、クラッドまたは封入されてより硬い表面を有する複合粒子を形成する一次材料から、粒子を形成できる。
【0034】
1つの例において、本発明を限定せずに、炭化ケイ素または窒化アルミニウムなどの無機材料から形成される無機粒子は、有用な複合粒子を形成するために、シリカ、炭酸塩またはナノクレイのコーティングを含むことができる。別の非限定的な例において、アルキル側鎖を有するシランカップリング剤は、無機酸化物から形成される無機粒子の表面と相互作用して、「より柔軟な」表面を有する有用な複合粒子を供給することができる。他の例としては、非ポリマー材料またはポリマー材料と一緒に異なる非ポリマー材料またはポリマー材料から形成されるクラッド粒子、封入粒子または被覆粒子が挙げられる。このような複合粒子の非限定的な具体例は、DUALITETMであり、これは、ニューヨーク州バッファローのPierce and Stevens Corporationから市販されている炭酸カルシウムで被覆した合成ポリマー粒子である。
【0035】
特定の実施形態において、本発明において用いられる粒子は、層状構造を有する。層状構造を有する粒子は、六方晶系の配列の原子のシートまたは板から構成され、シート内部で強い結合を有し、シート間に低い剪断強度を供給するシート間に弱いファンデルワールス結合を有する。層状構造の非限定的な例は、六方晶系の結晶構造である。層状フラーレン(すなわち、バッキーボール)構造を有する無機固体粒子もまた、本発明において有用である。
【0036】
適切な層状構造を有する材料の非限定的な例としては、窒化ホウ素、グラファイト、金属ジカルコゲニド、雲母、タルク、石膏、カオリナイト、方解石、ヨウ化カドミウム、硫化銀およびそれらの混合物が挙げられる。適切な金属ジカルコゲニドとして、二硫化モリブデン、二セレン化モリブデン、二硫化タンタル、二セレン化タンタル、二硫化タングステン、二セレン化タングステンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0037】
粒子は、非ポリマー有機材料から形成できる。本発明において有用な非ポリマー有機材料の非限定的な例として、ステアリン酸塩(ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸アルミニウムなど)、ダイヤモンド、カーボンブラックおよびステアラミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明において用いられる粒子は、無機ポリマー材料から形成できる。有用な無機ポリマー材料の非限定的な例としては、ポリホスファゼン、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリゲルマン、ポリマー硫黄、ポリマーセレン、シリコーンおよび前記材料の任意の混合物が挙げられる。本発明における使用に適した無機ポリマー材料から形成される粒子の非限定的な具体例は、トスパール(Tospearl)であり、これは、架橋シロキサンから形成され、日本のToshiba Silicones Company,Ltd.から市販されている粒子である。
【0039】
粒子は、合成有機ポリマー材料から形成できる。適切な有機ポリマー材料の非限定的な例としては、熱硬化性材料および熱可塑性材料が挙げられるが、これらに限定されない。適した熱可塑性材料の非限定的な例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどの熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブテンなどのポリオレフィン、スチレンとアクリル酸モノマーとのコポリマーおよびメタクリレートを含有するポリマーなどのアクリル系ポリマー、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ビニルポリマーおよび前記材料のいずれかの混合物が挙げられる。
【0040】
適切な熱硬化性材料の非限定的な例としては、熱硬化性ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ材料、フェノール類、アミノプラスト、熱硬化性ポリウレタンおよび前記材料のいずれかの混合物が挙げられる。エポキシ材料から形成される合成ポリマー粒子の非限定的な具体例は、エポキシミクロゲル粒子である。
【0041】
粒子は、また、ポリマーおよび非ポリマー無機材料、ポリマーおよび非ポリマー有機材料、複合材料および前記材料のいずれかの混合物から選択される材料から形成される中空粒子であり得る。中空粒子を形成できる、適した材料の非限定的な例は、上記に記載されている。
【0042】
特定の実施形態において、本発明において用いられる粒子は、有機顔料、例えば、アゾ化合物(モノアゾ、ジアゾ、β−ナフトール、ナフトールAS塩系アゾ顔料レーキ、ベンズイミダゾロン、ジアゾ縮合、イソインドリノン、イソインドリン)および多環式(フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバンスロン、ピラントロン(pyranthrone)、アンサンスロン(anthanthrone)、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン)顔料および前記材料のいずれかの混合物を含む。特定の実施形態において、有機材料は、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン(すなわち、トリフェンジオキサジン)、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンサンスロン、フラバンスロン、インダントロン、ペリノン、ピラントロン、チオインジゴ、4,4’−ジアミノ−1,1’−ジアントラキノニル、ならびにそれらの置換誘導体およびそれらの混合物から選択される。
【0043】
本発明の実施において使用されるペリレン顔料は、置換されなくても置換されてもよい。置換ペリレンは、例えば、イミド窒素原子で置換されてもよく、置換基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基およびハロゲン(塩素など)、またはその組み合わせを含んでもよい。置換ペリレンは、任意の1つの置換基を2つ以上含有してもよい。ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸のジイミドおよび二無水物が好ましい。粗ペリレンは、当該分野において公知である方法によって調製できる。
【0044】
フタロシアニン顔料、特に金属フタロシアニンを用いてもよい。銅フタロシアニンは、より容易に利用できるが、亜鉛、コバルト、鉄、ニッケルおよび他のそのような金属をベースとするものなどの他の金属含有フタロシアニン顔料も用いてもよい。金属を含まないフタロシアニンもまた、適切である。フタロシアニン顔料は、例えば、1つ以上のアルキル(1〜10個の炭素原子を有する)、アルコキシ(1〜10個の炭素原子を有する)、塩素などのハロゲン、またはフタロシアニン顔料の代表的な他の置換基で置換されなくてもよいし、部分的に置換されてもよい。フタロシアニンは、当該分野において公知である任意のいくつかの方法によって調製されてもよい。それらは、フタル酸無水物、フタロニトリルまたはその誘導体と、金属ドナー、窒素ドナー(尿素またはフタロニトリル自体など)および任意の触媒との反応(好ましくは有機溶媒中での反応)によって代表的に調製される。
【0045】
本明細書で使用されるキナクリドン顔料は、非置換または置換キナクリドン(例えば、1つ以上のアルキル基、アルコシキ基、塩素などのハロゲン、またはキナクリドン顔料の代表的な他の置換基)を含み、本発明の実施に適している。キナクリドン顔料は、当該分野において公知である任意のいくつかの方法によって調製されてもよいが、好ましくは、さまざまな2,5−ジアニリノテレフタル酸前駆物質をポリリン酸の存在下で熱閉環して調製される。
【0046】
イソインドリン顔料は、必要に応じて、対称的かあるいは非対称的に置換でき、また本発明の実施に適しているが、当該分野において公知である方法によって調製できる。適切なイソインドリン顔料であるピグメントイエロー139は、イミノイソインドリンとバルビツール酸前駆物質との対称的な付加物である。ジオキサジン顔料(すなわち、トリフェンジオキサジン)もまた、適切な有機顔料であり、当該分野において公知である方法によって調製できる。
【0047】
先に述べた無機粒子および/または有機粒子のいずれかの混合物もまた、用いることができる。
【0048】
所望される場合、上記粒子は、ナノ粒子へと形成できる。特定の実施形態において、ナノ粒子は、以下により詳細に説明するように、ポリマー封入された粒子の水性分散液の形成中に、インサイチュで形成される。しかしながら、他の実施形態において、ナノ粒子は、そのような水性分散液に混合される前に形成される。これらの実施形態において、ナノ粒子は、当該分野において公知である多くのさまざまな方法のいずれかによって形成できる。例えば、ナノ粒子は、乾燥粒子材料を粉砕し、分級することによって調製できる。例えば、上記で述べた任意の無機顔料または有機顔料などのバルク顔料を、0.5ミリメートル(mm)未満、あるいは0.3mm未満、あるいは0.1mm未満の粒径を有するミリング媒体を用いて粉砕できる。顔料粒子は、一般的に、1つ以上の溶媒(水、有機溶媒またはその2つの混合物のいずれか)において、必要に応じて、ポリマー微粉砕(polymeric grind)ビヒクルの存在下で、高エネルギーミルでナノ粒子サイズに粉砕される。所望される場合、分散剤、例えば、Lubrizol Corprationから市販のSOLSPERSE(登録商標)32000または32500(有機溶媒中の場合)、または同じくLubrizol Corp.から市販のSOLSPERSE(登録商標)27000(水中の場合)を含むことができる。他のナノ粒子の生成に適した方法としては、結晶化、沈殿、気相縮合および化学摩損(すなわち、部分溶解)が挙げられる。
【0049】
特定の実施形態において、第1の粉末コーティング組成物および/または第2の粉末コーティング組成物中に存在するポリマー封入された色付与粒子は、ポリマー封入された色付与粒子の水性分散液から形成される。本明細書で使用される「分散液」という用語は、一方の相が、連続相である第2相を介して分布した微細に分割された粒子を含む2相系のことをいう。分散液は、水中油型エマルジョンであることが多く、この水中油型エマルジョンでは、ポリマー封入された粒子が有機相として懸濁する分散液の連続相を水性媒体が供給する。
【0050】
本明細書で使用される「水性」、「水相」、「水性媒体」などという用語は、専ら水のみからなるか、例えば、不活性有機溶媒などの別の材料と結合して水を優勢に含む媒体のことをいう。特定の実施形態において、水性分散液中に存在する有機溶媒の量は、全重量の分散液に基づく重量%を用いて、20重量%未満、例えば、10重量%未満、いくつかの場合において、5重量%未満、またはさらに他の場合、2重量%未満である。適した有機溶媒の非限定的な例としては、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、n−ブタノール、ベンジルアルコールおよびミネラルスピリットが挙げられる。
【0051】
本発明において用いられるポリマー封入された色付与粒子は、例えば、アクリル系ポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルポリマー、ケイ素ベースのポリマー、それらのコポリマーおよびそれらの混合物から選択されるポリマーを含んでもよい。このようなポリマーは、本発明が属する分野の当業者に公知の適切な方法によって生成できる。適したポリマーとしては、その引用部分が参考として本明細書に援用される米国特許出願第10/876,031の[0061]〜[0076]、およびその引用部分が参考として本明細書に援用される米国特許出願公開第2005/0287348 A1の[0042]〜[0044]に開示されたものが挙げられる。
【0052】
特定の実施形態において、このような水性分散液は、脆いポリマーによって封入された色付与粒子を含む。本明細書で使用される「脆いポリマー」という用語は、周囲の条件で容易に粉砕されるポリマーのことをいう。すなわち、分散液から液体材料を取り除く際に、得られた固体材料は、合体せず、例えば、押出機への乾燥供給材料として適した小さな断片または破片へと容易に砕かれて粉末コーティング組成物を生成する。一方、フィルム形成ポリマーは、分散液から液体材料を取り除く際に、少なくとも基材の水平面に自立連続フィルムを形成する。本明細書で使用される「周囲条件」という用語は、しばしば、ほぼ1大気圧、50%相対湿度、25℃である周囲の条件のことをいう。
【0053】
特定の実施形態において、脆いポリマーは、(i)重合可能なポリエステルポリウレタンと、(ii)エチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含む。本明細書で使用される「重合可能なポリエステルポリウレタン」という用語は、複数のエステル単位である
【0054】
【化1】

および複数のウレタン単位である
【0055】
【化2】

を含むポリマーをいい、そのポリマーは、重合されてより大きなポリマーを形成できる官能基を有し、式中、Rは、アルキル部分、シクロアルキル部分、またはオキシアルキル部分であり、Rは、アルキル部分またはシクロアルキル部分であり、Rは、アルキル部分、シクロアルキル部分、アラキル部分または芳香族部分である。特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンは、末端エチレン性不飽和を有するポリエステルポリウレタンを含む。本明細書で使用される「末端エチレン性不飽和」という語句は、ポリエステルポリウレタンの末端部の少なくともいくつかがエチレン性不飽和を含有する官能基を含有することを意味する。このようなポリエステルポリウレタンはまた、内部エチレン性不飽和を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。結果として、特定の実施形態において、水性分散液は、(a)ポリイソシアネート、(b)ポリエステルポリオール、および(c)エチレン性不飽和基と活性水素基とを含む材料を含む反応物から調製される、末端エチレン性不飽和を有する重合可能なポリエステルポリウレタンを含む。特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンは、(d)ポリアミン、および/または(e)酸官能基または酸無水物、およびイソシアネート基または水酸基と反応する官能基を含む材料をさらに含む反応物から形成される。本明細書で使用される「活性水素基」という用語は、JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,第49巻,3181ページ(1927)に記載のZerewitnoff試験によって決定されるイソシアネートと反応する官能基のことをいう。
【0056】
重合可能なポリエステルポリウレタンの調製における使用に適したポリイソシアネートとしては、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳脂肪族(araliphatical)イソシアネートおよび/または芳香族イソシアネートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0057】
有用な脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートの例としては、4,4−メチレンビスジシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、メタ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、およびシクロヘキシレンジイソシアネート(水添XDI)が挙げられる。他の脂肪族ポリイソシアネートとしては、IPDIおよびHDIのイソシアヌレートが挙げられる。
【0058】
適切な芳香族ポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)(すなわち、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートまたはそれらの混合物)、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、粗TDI(すなわち、TDIとそのオリゴマーの混合物)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、粗MDI(すなわち、MDIとそのオリゴマーとの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびフェニレンジイソシアネートが挙げられる。
【0059】
ヘキサメチレンジイソシアネートから調製されるポリイソシアネート誘導体、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)(そのイソシアヌレートを含む)、および/または4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが、適切である。
【0060】
特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられるポリイソシアネートの量は、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられる樹脂固体の全重量に基づく重量%に基づいて、20〜70重量%、例えば、30〜60重量%、あるいはいくつかの場合において、40〜50重量%の範囲にある。
【0061】
重合可能なポリエステルポリウレタンの調製における使用に適したポリエステルポリオールは、適切な方法(例えば、飽和ジカルボン酸またはその無水物(または酸と無水物の組み合わせ)および多価アルコールを使用すること、あるいはカプロラクトン、例えば、イプシロンカプロラクトンの開環)によって調製され得る。このようなポリエステルポリオールは、さまざまな分子量で市販されている。ポリエステルの調製に適した脂肪族ジカルボン酸は、4〜14個(例えば、6〜10個)の炭素原子を含有するものが挙げられる。このようなジカルボン酸の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が挙げられる。対応する無水物もまた、使用できる。一般的に、アジピン酸、アゼライン酸が使用される。
【0062】
重合可能なポリエステルポリウレタンの調製における使用に適したポリエステルポリオールの調製に用いられる多価アルコールとしては、少なくとも2個の水酸基を含有する脂肪族アルコール(例えば、2〜15個(例えば4〜8個)の炭素原子を含有する直鎖グリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、グリコールは、末端位置に水酸基を含有する。このような多価アルコールの非限定的な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールおよびこのような多価アルコールの混合物が挙げられる。
【0063】
特定の実施形態において、ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸(またはその無水物)を多価アルコールと、有機錫触媒などのエステル化触媒の存在下で反応させて調製される。酸およびアルコールの使用量は、変化し、所望の分子量のポリエステルによって左右されるだろう。ヒドロキシ末端を有するポリエステルは、過剰のアルコールを用い、それによって末端ヒドロキシル基を得ることによって得られる。ポリエステルの例としては、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブチレンスクシネート)、ポリ(1,4−ブチレングルタレート)、ポリ(1,4−ブチレンピメレート)、ポリ(1,4−ブチレンスベレート)、ポリ(1,4−ブチレンアゼレート)、ポリ(1,4−ブチレンセバケート)およびポリ(イプシロンカプロラクトン)が挙げられる。特定の実施形態において、脆い重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられるポリエステルポリオールは、500〜3000(例えば500〜2500、あるいはいくつかの場合において、900〜約1300)の重量平均分子量を有する。
【0064】
特定の実施形態において、本発明の特定の実施形態に含まれる重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられるポリエステルポリオールの量は、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられる樹脂固体の全重量に基づく重量%を用いて、10〜60重量%(例えば、20〜50重量%、あるいはいくつかの場合において、30〜40重量%)の範囲にある。
【0065】
示されたように、本発明の特定の実施形態に存在する重合可能なポリエステルポリウレタンは、エチレン性不飽和基と活性水素基とを含む材料から形成される。適切なエチレン性不飽和基としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、カルバミン酸アリルおよび炭酸アリルが挙げられる。アクリレート官能基およびメタクリレート官能基は、式CH=C(R)−C(O)O−(式中、Rは、水素またはメチル基である)で表わされてもよい。カルバミン酸アリルおよび炭酸アリルは、それぞれ式CH=CH−CH−NH−C(O)O−およびCH=CH−CH−O−(O)O−で表わされてもよい。
【0066】
特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられるエチレン性不飽和基と活性水素基とを含む材料は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む。適切なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、置換または非置換のアルキル基中に1〜18個の炭素原子を有するものが挙げられる。このような材料の非限定的な具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヘキサン−1,6−ジオールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含むことを意味する。
【0067】
特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられるエチレン性不飽和基と活性水素基とを含む材料の量は、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられる樹脂固体の全重量に基づく重量%を用いて、1〜12重量%(例えば、2〜8重量%、あるいはいくつかの場合において、4〜6重量%)の範囲にある。
【0068】
先に示したように、特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンは、ポリアミンから形成される。有用なポリアミンとしては、窒素原子に結合した基が、飽和または不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香族置換の脂肪族、脂肪族置換の芳香族および複素環であり得る第1級ジアミンまたは第2級ジアミンまたはポリアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例示の適切な脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミンとして、1,2−エチレンジアミン、1,2−ポルフィレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、イソホロンジアミン、プロパン−2,2−シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。例示の適切な芳香族ジアミンとしては、フェニレンジアミンおよびトルエンジアミン、例えば、o−フェニレンジアミンおよびp−トリレンジアミンが挙げられる。これらのおよび他の適切なポリアミンは、参考として本明細書に援用される米国特許第4,046,729号の第6欄61行目〜第7欄26行目に詳細に記載されている。
【0069】
特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられるポリアミンの量は、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられる樹脂固体の全重量に基づく重量%を用いて、0.5〜5重量%(例えば、1〜4重量%、あるいはいくつかの場合において、2〜3重量%)の範囲にある。
【0070】
先に示したように、特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンは、酸官能基または酸無水物、およびポリウレタン材料を形成する他の成分のイソシアネート基または水酸基と反応する官能基を含む材料から形成される。有用な酸官能性材料は、構造:
X−Y−Z
を有する化合物およびその混合物を含み、式中、Xは、OH、SH、NHまたはNHRで、Rは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、置換アルキル基、置換アリール基、置換シクロアルキル基、およびそれらの混合物を含み、Yは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、置換アルキル基、置換アリール基、置換シクロアルキル基、およびそれらの混合物を含み、Zは、OSOH、COOH、OPO、SOOH、POOHおよびPOを含む。
【0071】
適切な酸官能性材料の例としては、ヒドロキシピバル酸、3−ヒドロキシ酪酸、D,L−トロパ酸、D,L−ヒドロキシマロン酸、D,L−リンゴ酸、クエン酸、チオグリコール酸、グリコール酸、アミノ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジメチロールプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸、メルカプトコハク酸、およびそれらの混合物を挙げられる。
【0072】
有用な無水物としては、脂肪族無水物、脂環式無水物、オレフィン性無水物、シクロオレフィン性無水物および芳香族無水物が挙げられる。置換した脂肪族無水物および置換した芳香族無水物はまた、この置換基が無水物の反応性または得られるポリウレタンの特性に悪影響を及ぼさない限り、有用である。置換基の例としては、クロロ、アルキルおよびアルコキシが挙げられる。無水物の例としては、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水ドデセニルコハク酸、無水オクタデセニルコハク酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物などの無水アルキルヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水クロレンド酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水マレイン酸、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0073】
特定の実施形態において、酸官能性材料または酸無水物は、水中でポリマーを可溶化するためにイオン化され得るアニオン性のイオン化可能な基を有する重合可能なポリエステルポリウレタンを供給する。結果として特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンは、水分散性である。本明細書で使用される「水分散性」という用語は、界面活性剤の補助を受けないか、あるいは界面活性剤を使用せずに材料が分散され得ることを意味する。本明細書で使用される「イオン化可能な」という用語は、イオン性になり得る(すなわち、イオンに解離可能であるかまたは電気的に荷電可能である)基を意味する。酸は、塩基で中和されてカルボン酸塩基を形成してもよい。アニオン基の例として、−OSO、−COO、−OPO、−SOO、−POO;およびPOが挙げられる。
【0074】
特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられる酸官能基または酸無水物、およびイソシアネート基または水酸基と反応する官能基を含む材料の量は、重合可能なポリエステルポリウレタンの調製に用いられる樹脂固体の全重量に基づく重量%を用いて、5〜20重量%(例えば、7〜15重量%、あるいはいくつかの場合において、8〜12重量%)の範囲にある。
【0075】
示されたように、特定の実施形態において、酸基は、塩基で中和される。中和は、0.6〜1.1(例えば0.4〜0.9、あるいはいくつかの場合において、0.8〜1.0)の理論上の全中和当量の範囲であり得る。適切な中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン、少なくとも1つの第1級アミノ基、第2級アミノ基または第3級アミノ基と少なくとも1つの水酸基を有するアルコールアミンなどの無機塩基および有機塩基が挙げられる。適切なアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられる。
【0076】
本発明の特定の実施形態に存在する重合可能なポリエステルポリウレタンは、上記の特定される成分を適した配列で組み合わせて形成され得る。例えば、重合可能なポリエステルポリウレタンは、本発明が属する分野の当業者によって理解される溶液重合技術によって調製されてもよい。
【0077】
上記説明から明らかであるように、重合可能なポリエステルポリウレタンは、非イオン性、アニオン性またはカチオン性であり得る。特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンは、150,000グラム/モル未満(例えば10,000〜100,000グラム/モル、あるいはいくつかの場合において、40,000〜80,000グラム/モル)の重量平均分子量を有するだろう。本明細書に記載のポリウレタンおよび他のポリマー材料の分子量は、ポリスチレン標準を用いてゲル透過クロマトグラフィーによって決定される。
【0078】
先に示したように、本発明の特定の実施形態において、(i)重合可能なポリエステルポリウレタン(例えば先に述べたもの)、および(ii)エチレン性不飽和モノマーの反応生成物を含む脆いポリマーが存在する。適切なエチレン性不飽和モノマーとしては、当該分野において公知であるビニルモノマーを含む任意の重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含む。有用なエチレン性不飽和カルボン酸の官能基含有モノマーの非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロキシプロピオン酸、クロトン酸、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステル、およびそれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用される「(メタ)アクリル酸」とそれから派生する用語は、アクリルおよびメタアクリルの両方を含むものとする。
【0079】
カルボン酸官能基を含まない他の有用なエチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;スチレンおよびビニルトルエンなどのビニル芳香族、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、マレイン酸およびフマル酸のジアルキルエステル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルエーテル、アリルエーテル、アリルアルコール、それらの誘導体およびそれらの混合物が挙げられる。
【0080】
エチレン性不飽和モノマーとしてはまた、エチレン性不飽和β−ヒドロキシエステル官能性モノマー(例えば、モノカルボン酸(例えばアクリル酸)などのエチレン性不飽和酸官能モノマーと、不飽和酸モノマーとのフリーラジカル開始重合に関与しないエポキシ化合物との反応から得られるもの)が挙げられる。このようなエポキシ化合物の例としては、グリシジルエーテルおよびグリシジルエステルが挙げられる。適切なグリシジルエーテルとしては、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどのアルコールおよびフェノールのグリシジルエーテルが挙げられる。
【0081】
特定の実施形態において、重合可能なポリエステルポリウレタンとエチレン性不飽和モノマーは、水性分散液中に95:5〜30:70(例えば90:10〜40:60、あるいはいくつかの場合において、80:20〜60:40)の重量比で存在する。
【0082】
本明細書に記載の水性分散液は、さまざまな方法のいずれかで調製できる。例えば、特定の実施形態において、水性分散液は、(A)(i)色付与粒子、(ii)1つ以上の重合可能なエチレン性不飽和モノマーおよび/または(iii)1つ以上の重合可能な不飽和モノマーと1つ以上のポリマーとの混合物および/または(iv)1つ以上のポリマーの混合物を水性媒体中に供給し、次いで水性媒体の存在下で、その混合物を高応力剪断条件にかけることを含む方法によって調製され得る。このような方法は、その引用部分が参考として本明細書に援用される米国特許出願番号第10/876,031の[0054]〜[0090]、およびその引用部分が参考として本明細書に援用される米国特許出願公開第2005/0287348 A1の[0036]〜[0050]に詳細に記載されている。
【0083】
しかしながら、特定の実施形態において、水性分散液は、(1)(i)色付与粒子と、(ii)重合可能なエチレン性不飽和モノマーと、(iii)水分散性の重合可能な分散液との混合物を水性媒体中に供給すること、(2)エチレン性不飽和モノマーと重合可能な分散液とを重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入された色付与粒子を形成することを含む方法によって作製される。これらの実施形態において、重合可能な分散液は、水分散性で、エチレン性不飽和モノマーとの重合時に、水分散性ポリマー(いくつかの場合において、水分散性の脆いポリマー)を含むポリマー封入された色付与粒子を生成する重合可能な材料を含んでもよい。特定の実施形態において、重合可能な分散液は、先に述べた末端エチレン性不飽和を有する水分散性の重合可能なポリエステルポリウレタンを含む。
【0084】
これらの実施形態において、水分散性の重合可能な分散液は、界面活性剤および/または高剪断条件を必要とせずに、それ自体とエチレン性不飽和モノマーとを含む他の材料を水性媒体に分散させることができる。結果としてポリマー封入された色付与粒子の水性分散液を作製する前記方法は、米国特許出願番号第10/876,031の[0081]〜[0084]、および米国特許出願公開第2005/0287348 A1の[0046]に記載の高応力剪断条件の使用が望ましくないかまたは実現不可能な状況において、特に適している。したがって、特定の実施形態において、ポリマー封入された色付与粒子の水性分散液は、色付与粒子と、重合可能なエチレン性不飽和モノマーと、水分散性の重合可能な分散液との混合物を高応力剪断条件に供する工程を含まない方法によって調製される。
【0085】
また、前記方法は、水性分散液の調製前に、ナノ粒子の形成を必要とするよりもむしろ、その場でナノ粒子を形成することができる。これらの方法において、水性媒体中でエチレン性不飽和モノマーと水分散性の重合可能な分散液との混合後、1ミクロン以上の一次粒径を有する粒子は、色付与ナノ粒子に形成されてもよい(すなわち、ナノ粒子は、その場で形成される)。特定の実施形態において、色付与ナノ粒子は、水性媒体を粉砕条件にかけることによって形成される。例えば、粒子は、0.5ミリメートル以下、あるいは0.3ミリメートル以下、あるいはいくつかの場合において、0.1ミリメートル以下の粒径を有するミリング媒体を用いて粉砕することができる。これらの実施形態において、色付与粒子は、水性媒体、重合可能なエチレン性不飽和モノマーおよび水分散性の重合可能な分散液の存在下で、高エネルギーミル中でナノ粒子に粉砕することができる。所望される場合、別の分散剤、例えば、Avecia Inc.から市販のSOLSPERSE27000を用いることができる。
【0086】
示されたように、ポリマー封入された色付与粒子の水性分散液を作製する前記方法は、エチレン性不飽和モノマーと重合可能な分散液とを重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入された色付与粒子を形成する工程を含む。特定の実施形態において、適用可能ならば、ナノ粒子の形成の間に重合の少なくとも一部がおこる。また、フリーラジカル開始剤を用いてもよい。水溶性開始剤および油溶性開始剤の両方を用いることができる。
【0087】
適切な水溶性開始剤の非限定的な例としては、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、ペルオキシ二硫酸カリウムおよび過酸化水素が挙げられる。油溶性開始剤の非限定的な例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジラウリルペルオキシドおよび2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)が挙げられる。多くの場合、反応は20°C〜80°Cの範囲の温度で行なわれる。重合は、バッチプロセスまたは連続プロセスのいずれかで行うことができる。重合を行うために必要な時間は、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーからインサイチュでポリマーを形成するのに十分な時間である限り、例えば、10分〜6時間の範囲であり得る。
【0088】
一旦、重合プロセスが終了すると、得られた生成物は、いくつかの有機溶媒を含有できる水性媒体におけるポリマー封入された色付与粒子の安定な分散液である。有機溶媒の一部またはすべては、例えば40°C未満の温度における減圧蒸留によって除去することができる。本明細書で使用される「安定な分散液」または「安定して分散する」という用語は、ポリマー封入された色付与粒子が、放置した際に、水性媒体から沈降も凝結も凝集もしないことを意味する。
【0089】
特定の実施形態において、ポリマー封入された粒子は、水性媒体中に存在する全固形物の重量に基づく重量%を用いて、少なくとも10重量%の量、あるいは10〜80重量%の量、あるいは25〜50重量%の量、あるいは25〜40重量%の量で存在する。
【0090】
特定の実施形態において、分散したポリマー封入された粒子は、10%の最大ヘーズ、あるいはいくつかの場合において、5%の最大ヘーズ、あるいはさらに他の場合において、1%の最大ヘーズ、あるいは他の実施形態において、0.5%の最大ヘーズを有する。本明細書で使用される「ヘーズ」は、ASTM D1003によって決定される。
【0091】
本明細書に記載のポリマー封入された粒子のヘーズ値は、初めに液体(本明細書に記載の水、有機溶媒および/または分散液)中に分散したナノ粒子などの粒子を有し、次に溶媒(例えば酢酸ブチル)中で希釈されたこれらの分散液を、500ミクロンのセル光路長を有するByk−Gardner TCS(カラー球体)計測器を用いて測定することによって決定される。液体試料の%ヘーズは、濃度に依存するので、本明細書で用いられる%ヘーズは、最大吸光度の波長で約15%〜約20%の透過率にて報告される。粒子と周囲の媒体との屈折率の差が小さい場合に、相対的に大きい粒子に対して許容ヘーズが得られるかもしれない。逆に、より小さな粒子に関して、粒子と周囲の媒体との屈折率の差が大きいほど、許容ヘーズが得られるかもしれない。
【0092】
特定の実施形態において、特に、ポリマー封入された粒子が脆いポリマーを含む場合、ポリマー封入された色付与粒子の水性分散液は、(1)水性媒体から水を除去してポリマー封入された色付与粒子を含む固体材料を形成こと、(2)固体材料を破砕することによって、その後さらに処理されてもよい。これらの実施形態において、水は、水性分散液から、適切な乾燥方法(例えばドラム乾燥機、ローラー乾燥機、スプレー乾燥機などを用いること)によって除去することができる。さらに、固体材料は、適切な技術(例えばハンマーミルなど)を用いて破砕できる。破砕後、得られた顆粒は、梱包する前に分級器においてふるいにかけられるなど、さらに処理されてもよい。
【0093】
本発明において、ポリマー封入された色付与粒子は、粉末コーティング組成物に組み込まれる。ポリマー封入された粒子に加えて、このような粉末コーティング組成物は、粒状フィルム形成樹脂を含んでもよい。適切なフィルム形成樹脂としては、例えば、エポキシ基含有アクリル系ポリマーなどのエポキシ樹脂、または多価アルコールのポリグリシジルエーテル、および多官能性カルボン酸基含有材料などのエポキシ樹脂に適した硬化剤、またはジシアナミドが挙げられる。硬化性粒状樹脂材料の例としては、参考として本明細書に援用される米国特許第RE32,261号および米国特許第4,804,581号に記載されている。他の適切な粒状フィルム形成樹脂の例は、カルボン酸官能性ポリエステルなどのカルボン酸官能性樹脂、アクリル系ポリマー、およびこのような材料(例えばトリグリシジルイソシアネート)に適した硬化剤、およびβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤(例えば、参考として本明細書に援用される、米国特許第4,801,680号および米国特許第4,988,767号に記載されている)である。
【0094】
特定の実施形態において、このような粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の全重量に基づいて50〜90重量%(例えば60〜80重量%)の粒状フィルム形成樹脂を含む。特定の実施形態において、このような粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の全重量に基づいて0.1〜50重量%(例えば1〜20重量%)のポリマー封入された粒子を含む。
【0095】
これらの粉末コーティング組成物は、他の顔料、充填剤、光安定剤、流れ制御剤、ポッピング防止剤および酸化防止剤などの他の材料を任意に含むことができる。適切な顔料として、例えば、二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック、グラファイト、フィブリル、黒色酸化鉄、酸化クロムグリーン、フェライドイエロー、キンドレッドが挙げられる。
【0096】
ポッピング防止剤は、組成物に加えられて、焼成中に任意の揮発性材料をフィルムから逃がすことができる。ベンゾインは、通常、好ましいポッピング防止剤で、使用時に、粉末コーティング組成物の全重量に基づいて、概して0.5〜3.0重量%の量で存在する。
【0097】
このような粉末コーティング組成物は、また、保存中に粉末のケーキングを低下させるためにヒュームドシリカなどを含んでもよい。ヒュームドシリカの一例は、商標CAB−O−SILの下でCabot Corporationによって販売されている。ヒュームドシリカは、粉末コーティング組成物の全重量に対して、0.1〜1重量%の範囲の量で存在する。
【0098】
ポリマー封入された色付与粒子は、さまざまな方法のいずれかによって粉末コーティング組成物に組み込まれてもよい。例えば、ポリマー封入された粒子が脆いポリマーを含む実施形態において、ポリマー封入された色付与粒子および他のコーティング成分は、すべて、乾燥した粒状にされ、一緒に混合され、次いで押出機中で溶融混合される。しかしながら、他の実施形態において、例えば、脆いポリマーを含まないポリマー封入された粒子の水性分散液を用いるような場合、ポリマー封入された色付与粒子は、(1)(a)ポリマー封入された色付与粒子の水性分散液、および(b)乾燥材料を含む粉末コーティング組成物を押出機に導入すること、(2)押出機中で、(a)と(b)とを混合すること、(3)この混合物を液化して押出物を形成すること、(4)押出物を冷却すること、(5)押出物を所望の粒径に粉砕することを含む方法によって粉末コーティング組成物に混和される。本明細書で使用される「液化する」という用語は、水および有機溶媒を含む揮発性材料を除去することを意味する。特定の実施形態において、このような粉末コーティング組成物は、関連の開示が参考として本明細書に援用される米国特許出願公開第2005/0212159 A1、2005/0212171 A1および/または2005/0213423 A1に記載の方法および/または装置によって作製される。
【0099】
前記方法において、乾燥材料は、他の組成物添加剤と同様に、先に述べた粒状フィルム形成樹脂を含んでもよい。乾燥材料は、初めに、高剪断ミキサー中で混合されてもよい(例えば、遊星(planetary)混合物)。特定の実施形態において、本発明の乾燥材料および水性分散液は、次に、80°C〜150°Cの範囲の温度にて押出機中で混合される。その後、押出物を冷却し、粒状混合物へと粉砕する。
【0100】
本発明にしたがって、ポリマー封入された色付与粒子を含む粉末コーティング組成物は、ポリマー封入された色付与粒子を含んでもよく、またポリマー封入された色付与粒子を含むことが多い別の粉末コーティング組成物と混合されて、本発明の粉末コーティング組成物を形成する。ポリマー封入された色付与粒子に加えて、このような粉末コーティング組成物は、先に述べたものなどの粒状フィルム形成樹脂を含んでもよい。特定の実施形態において、第1の粉末コーティング組成物中に存在するフィルム形成樹脂は、第2の粉末コーティング組成物中に存在するフィルム形成樹脂と同じものであるか、あるいは少なくとも適合性である。
【0101】
先に示したように、第1の粉末コーティング組成物と第2の粉末コーティング組成物との混合物は、基材の少なくとも一部に直接塗布されて硬化すると、形成される粉末コーティング組成物の色相とは異なる均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを生成する本発明の粉末コーティング組成物を生成する。言い換えると、本発明の粉末コーティング組成物は、第1の色相および第2の色相とは異なる均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを生成することができる。本明細書で使用される「直接塗布」などという用語は、粉末コーティング組成物が塗布前に押出プロセスに供される必要がないことを意味する。本明細書で使用される「第1の色相および第2の色相とは異なる均一な色相」という用語は、コーティングを、コーティングから1フィート以下の距離を含む任意の距離において肉眼で見たとき、第1の色相および第2の色相とは異なる均一な色相を有するものとして人が認識することを意味する。別の言い方をすれば、コーティングは、第1の色相および第2の色相のそれぞれを肉眼による目視検査によって区別できる「ゴマ塩状」外観をもたない。本明細書で使用される「色相」という用語は、その主波長によって決定されるような色の質のことをいう。
【0102】
本発明の粉末コーティング組成物は、金属基材、例えば、アルミニウム基材および鋼鉄基材を含むさまざまな基材に塗布することができる。粉末コーティング組成物は、しばしば塗装によって塗布され、そして金属基材の場合、静電塗装によってかあるいは流動床の使用によって塗布される。本発明の粉末コーティング組成物は、単回の塗り(sweep)または数回の通過で塗布して、硬化後の厚みが約1〜10mil(25〜250マイクロメートル)、通常約2〜4mil(50〜100マイクロメートル)を有するフィルムを供給することができる。多くの場合、粉末コーティング組成物の塗布後、被覆された基材は、多くの場合、コーティングを十分に硬化する温度(250°F〜500°F(121.1°C〜260.0°C)の範囲の温度)に1〜60分間加熱され、例えば、300°F〜400°F(148.9°C〜204.4°C)の範囲の温度に15〜30分間加熱される。
【0103】
結果として本発明はまた、均一な色相を有する耐久性装飾コーティングによって少なくとも部分的に被覆された金属製品などの製品に関する。耐久性装飾コーティングは、第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物と、第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物との混合物を含む粉末コーティングから直接堆積し、前記第1の粉末コーティング組成物および/または前記第2の粉末コーティング組成物は、ポリマー封入された色付与粒子を含む。本発明の物品において、均一な色相は、第1の色相および第2の色相とは異なる。
【0104】
特定の実施形態において、均一な色相を有する耐久性装飾コーティングはまた、隠蔽しないコーティングである。本明細書で使用される「隠蔽しないコーティング」という用語は、コーティング層の下の表面が肉眼で見える、基材上に堆積しているコーティング層のことをいう。本発明の特定の実施形態において、隠蔽しないコーティング層を0.5〜5.0mil(12.7〜127ミクロン)の乾燥フィルム厚で塗布する場合、隠蔽しないコーティング層の下の表面が見える。隠蔽しないことを評価する1つの方法は、不透明度の測定によるものである。本明細書で使用される「不透明度」とは、材料が基材を覆い隠す度合いのことをいう。
【0105】
「%不透明度」とは、本明細書中では、5%以下の反射率の黒色基材上での乾燥フィルムの反射率の、85%の反射率の基材上で同様に塗布および乾燥した同一の被覆フィルムの反射率に対する割合のことをいう。乾燥被覆フィルムの%不透明度は、コーティングの乾燥フィルム厚および色付与粒子の濃度に左右されるだろう。本発明の特定の実施形態において、色を付与する隠蔽しないコーティング層は、1mil(約25ミクロン)の乾燥フィルム厚で90%以下(例えば50%以下)の%不透明度を有する。
【0106】
本発明の粉末コーティング組成物は、単一の耐久性装飾コーティング、例えば(単一コーティング(monocoating))、2層系の下塗り、またはその両方の形成に用いられてもよいし、透明な上塗りコーティング組成物を含む多層系の1つ以上の層、着色剤層および/またはベースコーティング組成物、および/または、例えば、電着下塗り剤を含む下塗り剤層、および/または下地表面層として用いられてもよい。
【0107】
本発明は、また、少なくとも1つのコーティング層が本発明の粉末コーティング組成物から堆積した多層複合コーティングで少なくとも部分的に被覆されている基材に関する。特定の実施形態において、例えば、本発明の粉末コーティング組成物は、下塗りと上塗りとを含む多層複合コーティング中に下塗り層を含む。結果として、これらの実施形態において、本発明の粉末コーティング組成物の塗布および硬化後に、少なくとも1つの上塗り層を下塗り層に塗布することができる。上塗りは、当該分野において公知であるように、例えば、粉末コーティング組成物、有機溶媒系コーティング組成物または水系コーティング組成物から堆積することができる。上塗りのフィルム形成組成物は、コーティング用途に有用な組成物のいずれかであり得、その組成物としては、例えば、アクリル系ポリマー、アルキドを含むポリエステルおよびポリウレタンから選択される樹脂結合剤を含むフィルム形成組成物が挙げられる。上塗り組成物は、ブラッシング、スプレー、ディッピング、フローなどの従来のあらゆる被覆技法によって塗布できるが、スプレーによって塗布することが最も多い。手動法または自動法のいずれかでの通常のスプレー技法およびエアスプレー用装置、エアレススプレーおよび静電スプレーを用いることができる。
【0108】
前記説明から明らかなように、本発明は、また、均一な色相を有する耐久性装飾コーティングの調製方法に関する。これらの方法は、(a)第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物を供給すること、(b)第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物を供給すること、(c)第1の粉末コーティング組成物と第2の粉末コーティング組成物とを混合すること、および(d)混合物を基材の少なくとも一部に直接塗布することを含む。これらの方法において、第1の粉末コーティング組成物および/または第2の粉末コーティング組成物は、ポリマー封入された色付与粒子を含む。
【0109】
特定の実施形態において、本発明は、キットの形態で具現化される。本明細書で使用される「キット」という用語は、一緒に使用できる製品の集合体のことをいう。これらの実施形態において、本発明は、(a)第1の色相を有する粉末コーティング組成物を含む第1の容器、および(b)第1の色相とは異なる第2の色相を有する粉末コーティング組成物を含む第2の容器を備えるキットに関する。本発明のキットにおいて、第1の容器および/または第2の容器は、ポリマー封入された色付与粒子を含む粉末コーティング組成物を含み、第1の容器の内容物と第2の容器の内容物とを混合する場合に、基材の少なくとも一部に直接塗布されて硬化すると第1の色相および第2の色相とは異なる均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを生成する粉末コーティング組成物が、形成される。
【0110】
また、特定の実施形態において、本発明は、2つ以上の粉末コーティング組成物の混合物から選択した色相のコーティングを生成するため(すなわち、色合わせするため)の方法に関する。これらの方法は、(a)第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物を供給すること、(b)第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物を供給すること、(c)その混合物が基材の少なくとも一部に直接塗布されて硬化すると選択した色相を有するコーティングを生じる割合で、第1の粉末コーティング組成物と第2の粉末コーティング組成物を混合することを含む。これらの方法において、第1の粉末コーティング組成物および/または第2の粉末コーティング組成物は、ポリマー封入された色付与粒子を含む。
【0111】
本発明を、それらの細部へと限定するものとしてみなされるべきではない以下の実施例により、本発明を説明する。実施例における「部」および「パーセンテージ」は、特に表示がない限り、明細書を通して、同様に、重量によるものである。
【実施例】
【0112】
(実施例1)
(ポリウレタン分散液)
本実施例は、実施例2〜3の各ポリウレタン分散液/ナノ顔料分散液の形成のために、後に用いられるポリウレタン分散液の調製法を記載する。表に示した割合の以下の材料の混合物からポリウレタン分散液を調製した。
【0113】
【化3】

数平均分子量1000のポリ(ブチレンオキサイド)
電子温度プローブ、機械的攪拌装置、コンデンサーおよび加熱マントルを備えた四つ首丸底フラスコ中でポリウレタン分散液を調製した。投入物Iを125°Cの温度のフラスコ中で5分間攪拌した。投入物IIを添加し、その混合物を70°Cに冷却した。投入物IIIを10分間かけて加えた。投入物IVを添加し、得られた混合物を90分かけて90°Cへと徐々に加熱した後、90°Cで1時間保持した。投入物Vを別のフラスコ中で攪拌し、60°Cに加熱した。投入物Iと、IIと、IIIと、IVとの反応生成物1387.8gを10分かけて投入物Vに添加した。投入物VIを添加し、得られた混合物を室温に冷却した。最終生成物は、酸価12.5、ブルックフィールド粘度3710センチポイズ(60rpmのスピンドル#5)、pH7.6、110°Cで1時間測定したときに不揮発分29.4%を有する半透明なエマルジョンだった。
【0114】
(実施例2)
(ポリウレタン/ナノ顔料分散液)
本実施例は、ナノサイズPB15:3のフタロシアニンブルー顔料分散液の調製法を記載する。表に示した割合の以下の材料の混合物から分散液を調製した。
【0115】
【化4】

BASF Corp.から市販されている
材料は、Ross回転子/固定子ミキサーモデル#HSM−100Lを用いて2.5時間混合した後、1リットルの研削チャンバーに、500mlの0.3mm Zirconox YTZ(登録商標)ミリング媒体を含有するAdvantis V15 Draisミルを通して再循環させた。混合物を1400rpmで19.0時間の合計時間にわたって粉砕した。粉砕の進行は、白色Lenetaペーパーおよび黒色Lenetaペーパー上で引き抜かれた試料のフィルムの透明度の変化を目で観察することによってモニターした。投入物IIを添加し、得られた混合物を、11°Cで5分間攪拌した。投入物IIIを5分かけて2つのアリコートに添加した。混合物の温度は、13°Cに上昇した。最終生成物は、ブルックフィールド粘度26センチポイズ(60rpmのスピンドル#1)、pH7.2、110°Cで1時間測定したときに不揮発成分30.0%を有する青色の液体であった。
【0116】
(実施例3)
(ポリウレタン/ナノ顔料分散液)
本実施例は、ナノサイズPY 128ジアゾイエロー顔料分散液の調製法を記載する。表に示した割合の以下の材料の混合物から分散液を調製した。
【0117】
【化5】

CIBAから市販されている
材料は、Ross回転子/固定子ミキサーモデル#HSM−100Lを用いて5.5時間混合した後、1リットルの研削チャンバーに、500mlの0.3mm Zirconox YTZ(登録商標)ミリング媒体を含有するAdvantis V15 Draisミルを通して再循環させた。混合物を1400rpmで23時間の合計時間にわたって粉砕した。粉砕の進行は、白色Lenetaペーパーおよび黒色Lenetaペーパー上で引き抜かれた試料のフィルムの透明度の変化を目で観察することによってモニターした。投入物IIを添加し、得られた混合物を5分間攪拌した。投入物IIIを5分かけて2つのアリコートに添加した。最終生成物は、ブルックフィールド粘度53センチポイズ(60rpmのスピンドル#1)、pH7.3、110°Cで1時間測定したときに不揮発分28.8%を有する黄色の液体であった。
【0118】
(実施例4)
(粉末コーティング組成物中間体の調製法)
本実施例は、実施例5および実施例6の粉末コーティング組成物の作製に用いられる乾燥材料のコア調合物の調製法を記載する。表に示した割合の以下の材料からコア調合物を調製した。
【0119】
【化6】

DSM Resinsから市販されている
EMSから市販されている
Estron Chemicalから市販されている
GCA Chemicalから市販されている
Clariantから市販されている
CIBAから市販されている
10Bayer Chemicalから市販されている
11Palmer Suppliesから市販されている
成分1〜9をヘンシェルブレンダー(Henschel Blender)において1000RPMで1分間、予め混合した。次に、この混合物を340RPMのスクリュー回転数および30〜40%の平均トルクでCoperion W&Pの30mm同時回転型二軸スクリュー押出機によって押出した。米国特許出願公開第2005/0213423、同第2005/0212159号A1および同第2005/0212171号A1に記載のように、押出機は、低圧注入装置および5つの独立型温度調節領域を備えていた。5つの独立型温度調節領域を以下の温度に調節した。領域1:60°C、領域2:120°C、領域3:130°C、領域4:120°C、領域5:100°C。押出物を冷却し、機械的粉砕装置内で約28〜30ミクロンの粒径に微粉砕した。大きすぎる粒子を除去し、成分10を添加した。
【0120】
(実施例5)
(粉末コーティング組成物の調製法)
表に示した割合の以下の材料から粉末コーティング組成物を調製した。
【0121】
【化7】

成分1〜10をヘンシェルブレンダー(Henschel Blender)中、1000RPMで1分間予め混合した。次に、この混合物を340RPMのスクリュー回転数および30〜40%の平均トルクでCoperion W&Pの30mm同時回転型二軸スクリュー押出機によって押出した。米国特許出願公開第2005/0213423号、同第2005/0212159号A1および同第2005/0212171号A1に記載のように、押出機は、低圧注入装置および5つの独立型温度調節領域を備えていた。5つの独立型温度調節領域を以下の温度に調節した。領域1:60°C、領域2:120°C、領域3:130°C、領域4:120°C、領域5:100°C。押出物を冷却し、機械的粉砕装置内で約28〜30ミクロンの粒径に微粉砕した。大きすぎる粒子を除去し、成分10を添加した。
【0122】
(実施例6)
(粉末コーティング組成物の調製法)
表に示した割合の以下の材料から実施例5に記載の手順および装置を用いて粉末コーティング組成物を調製した。
【0123】
【化8】

(実施例7)
(粉末コーティング組成物の調製法)
実施例4の粉末コーティング組成物中間体および実施例2のポリウレタン/ナノ顔料分散液から粉末コーティング組成物を調製した。米国特許出願公開第2005/0213423、同第2005/0212159号A1および同第2005/0212171号A1に記載のように、低圧注入装置および5つの独立型温度調節領域を備えたCoperion W&Pの30mm同時回転型二軸スクリュー押出機および実施例4に記載の条件を用いて、粉末コーティング組成物を調製した。低圧注入装置を介して、実施例4の粉末コーティング組成物中間体を280グラム/分の割合で押出機に供給し、顔料分散液を105グラム/分の割合で押出機に供給した。領域4は、揮発性の蒸気を除去するための液化排出口を備えていた。押出物を冷却し、機械的粉砕装置内で約28〜30ミクロンの粒径に微粉砕した。
【0124】
(実施例8)
(粉末コーティング組成物の調製法)
実施例4の粉末コーティング組成物中間体および実施例3のポリウレタン/ナノ顔料分散液から実施例7に記載したものと同じ装置およびプロセス条件を用いて粉末コーティング組成物を調製した。
【0125】
(実施例9)
(テスト基材)
実施例9では、実施例5および実施例6の粉末コーティング組成物の50/50重量%の配合物を適当な容器中で、激しく振盪してドライブレンドした。得られた粉末コーティング組成物を4’’×12’’の電気被覆パネルに静電塗布した。パネルを適切な高温で硬化させ、周囲温度に冷却した。得られたコーティングを1フィート未満の距離で詳しく検査すると、コーティングは、黄色の色相と青色の色相が個々に見える「ゴマ塩状」の外観を有していた。
【0126】
実施例9では、実施例7および実施例8の粉末コーティング組成物の50/50重量%の配合物を適当な容器中で、激しく振盪させてドライブレンドした。得られた粉末コーティング組成物を4’’×12’’の電気被覆パネルに静電塗布した。パネルを適切な高温で硬化させ、周囲温度に冷却した。得られたコーティングを1フィート未満の距離で詳しく検査すると、コーティングは、均一な緑色の色相を有していた。
【0127】
広範な発明の概念から逸脱することなく、上記に記載の実施形態に対して変更できることは、当業者によって理解されるだろう。そのため、本発明が、開示した特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の趣旨および適用範囲内の変形を対象とすることは理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物と、該第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物との混合物を含む耐久性装飾コーティングの生成に適した粉末コーティング組成物であって、
(i)該第1の粉末コーティング組成物および/または該第2の粉末コーティング組成物が、ポリマー封入された色付与粒子を含み、そして
(ii)基材の少なくとも一部に直接塗布されて硬化すると、該粉末コーティング組成物が、該第1の色相および該第2の色相とは異なる均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを生成する、
粉末コーティング組成物。
【請求項2】
前記第1の粉末コーティング組成物および前記第2の粉末コーティング組成物が両方とも、ポリマー封入された色付与粒子を含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項3】
前記ポリマー封入された色付与粒子が、ナノ粒子を含む、請求項2に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項4】
前記ポリマー封入された色付与粒子が、ポリマー封入された色付与粒子の水性分散液から形成される、請求項3に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、10%の最大ヘーズを有する、請求項3に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、有機ナノ粒子を含む、請求項3に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項7】
前記有機ナノ粒子が、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン(すなわち、トリフェンジオキサジン)、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンサンスロン、フラバンスロン、インダントロン、ペリノン、ピラントロン、チオインジゴ、4,4’−ジアミノ−1,1’−ジアントラキノニル、アゾ化合物、それらの置換誘導体およびそれらの混合物から選択される有機顔料を含む、請求項6に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項8】
前記ポリマー封入された色付与粒子が、脆いポリマーを含む、請求項2に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項9】
前記脆いポリマーが、(i)重合可能なポリエステルポリウレタンと、(ii)エチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含む、請求項8に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項10】
前記重合可能なポリエステルポリウレタンが、末端エチレン性不飽和を有するポリエステルポリウレタンを含む、請求項9に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項11】
末端エチレン性不飽和を有するポリエステルポリウレタンが、
(a)ポリイソシアネート、
(b)ポリエステルポリオール、および
(c)エチレン性不飽和基と活性水素基とを含む材料
を含む反応物から調製される、請求項10に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項12】
前記ポリマー封入された色付与粒子の水性分散液が、水分散性であるポリマーを含む、請求項4に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項13】
前記第1の粉末コーティング組成物および前記第2の粉末コーティング組成物が、同じフィルム形成樹脂をさらに含む、請求項2に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項14】
請求項2に記載の粉末コーティング組成物から堆積したコーティングによって少なくとも部分的に被覆されている、基材。
【請求項15】
前記コーティングが、隠蔽しないコーティングである、請求項14に記載の基材。
【請求項16】
少なくとも1つのコーティング層が、請求項2に記載の粉末コーティング組成物から堆積している、多層複合コーティング。
【請求項17】
その上に堆積した均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを含む物品であって、
(i)該耐久性装飾コーティングが、第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物と、該第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物との混合物を含む粉末コーティング組成物から直接堆積し、
(ii)該第1の粉末コーティング組成物および/または該第2の粉末コーティング組成物が、ポリマー封入された色付与粒子を含み、そして
(iii)該均一な色相が、該第1の色相および該第2の色相とは異なる、
物品。
【請求項18】
(a)第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物を供給する工程;、
(b)該第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物を供給する工程;、
(c)該第1の粉末コーティング組成物と該第2の粉末コーティング組成物とを混合する工程;そして
(d)該混合物を基材の少なくとも一部に直接塗布する工程
を含む、均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを調製するための方法であって、
該第1の粉末コーティング組成物および/または該第2の粉末コーティング組成物が、ポリマー封入された色付与粒子を含む、
方法。
【請求項19】
(a)第1の色相を有する粉末コーティング組成物を含む第1の容器;および
(b)該第1の色相とは異なる第2の色相を有する粉末コーティング組成物を含む第2の容器;
を備えるキットであって、
(i)該第1の容器および/または該第2の容器は、ポリマー封入された色付与粒子を含む粉末コーティング組成物を含み、そして
(ii)該第1の容器の内容物と該第2の容器の内容物とを混合する際に、基材の少なくとも一部に直接塗布されて硬化すると該第1の色相および該第2の色相とは異なる均一な色相を有する耐久性装飾コーティングを生成する粉末コーティング組成物が、形成される、
キット。
【請求項20】
(a)第1の色相を有する第1の粉末コーティング組成物を供給する工程;
(b)該第1の色相とは異なる第2の色相を有する第2の粉末コーティング組成物を供給する工程;
(c)混合物が基材の少なくとも一部に直接塗布されて硬化すると所望の均一な色相を有するコーティングを生じる割合で、該第1の粉末コーティング組成物と該第2の粉末コーティング組成物とを混合する工程;
を含む、粉末コーティング組成物を用いて色合わせするための方法であって、
該第1の粉末コーティング組成物および/または該第2の粉末コーティング組成物が、ポリマー封入された色付与粒子を含む、
方法。

【公表番号】特表2009−523888(P2009−523888A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551292(P2008−551292)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/000643
【国際公開番号】WO2007/087169
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】