説明

均一に積層された捕捉材およびその製造方法

【課題】嵩密度を制御しながらシート状材料を巻き取ることにより捕捉材を製造するための簡便で実用的な方法を提供する。
【解決手段】中心に直径Rの円形断面を有する円筒状の空間ができるようにシート状材料を円筒状にN回巻く際、各段の段差がWsetであり、シート状材料を巻始める位置の段を1段目としたときの上段からn段目の長さが、前記円筒状の空間における中心点から捕捉材最内層を第1層としたときの第n層における厚みの中心位置までの距離を半径とした円周の長さの0.9倍から1.1倍であり、かつ1段目からN段目の全ての長さの和が、第1層から第N層までの前記円周の長さの和の0.8倍から1.2倍であることを特徴とする捕捉材の製造方法(N:2以上の自然数、n:1以上の自然数、Wset[mm]:捕捉材一層当たりの厚みの設定値)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状材料を巻いてなる捕捉材、特に血液を循環して使用する血液処理カラムに適した捕捉材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート状材料、中でも不織布は、医療用、空気清浄フィルター、ガス吸着エレメントなどの捕捉材として利用されてきた。近年、医療用分野では血液処理カラムが研究され、例えば、白血球除去や、顆粒球除去を目的としたカラム(特許文献1,2)がそれぞれ開発されてきた。これらは、通常、カラム内部にそれぞれ目的とする物質を除去・吸着するための不織布を有している。不織布の嵩密度は、大きすぎると血液が目詰まりしやすく、逆に小さすぎると不織布の表面積が小さくなり、捕捉能力が低下する。
【0003】
これらシート状材料は、円筒形状フィルターとすると、大半の捕捉対象物を外周部の大きな面積を有する外周部の不織布で除去し、残ったわずかな捕捉対象物を小さな面積を有する内周部の不織布で除去できるため効率的であるとされているが、いずれの特許文献においても、嵩密度の重要性については述べているが、円筒状のようなフィルターに柔らかい低嵩密度の不織布を均一に巻くことが非常に困難であるという課題およびその解決による捕捉対象物の効率的除去の効果に着目していない。
【0004】
一方、目詰まりを軽減するために、嵩密度の異なる不織布を巻く方法が開示されている(特許文献4)。この方法によれば、フィルターと嵩密度の異なるプレフィルターを設けることで、目詰まりを低減し効率よく白血球などが除去可能であるとしている。しかしながら、この方法では2種類の異なる嵩密度の不織布を作成しなければならず製造コストが高くなったり、製造工程が煩雑になるという問題があった。
【0005】
また、円筒状に不織布を径方向に密度ムラが生じないように巻く方法として、巻き取り時の巻き付け張力を制御するガス処理装置の製造方法が開示されている(特許文献3)。しかし、この方法は、複雑な機械設備を要するため、クリーンルーム等で作業を行う医療用材料を製造するには適していない。また、不織布の柔らかさが変わった場合、どの方向も積層枚数が同じになるように巻き始めの位置と巻き終わりの位置を揃えるため、頻繁に巻き付け張力を変更する必要があり、実用的ではない。すなわち、これまで、嵩密度を制御しながらシート状材料を巻き取るための簡便かつ実用的な方法はなかった。
【特許文献1】特開2003−320026号公報
【特許文献2】特開2002−102332号公報
【特許文献3】特開2002−161440号公報
【特許文献4】特開平4−329965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の欠点を改良し、嵩密度を制御しながらシート状材料を巻き取るための簡便かつ実用的な方法、およびかかる方法によって製造された捕捉材を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の構成を有する。
1.シート状材料を巻いて積層して筒状にしてなる、下式を満たすことを特徴とする捕捉材。
0.01≦D≦0.30
W≧0.1
1.0≦Wmax/Wmin≦1.5
ここで、D[g/cm]:捕捉材の嵩密度、W[mm]:捕捉材一層当たりの厚み、Wmax[mm]:全層における一層当たりの最大厚み、Wmin[mm]:全層における一層当たりの最小厚み
2.シート状材料を巻いて積層して筒状にしてなる、一層の平均の厚みがWthicである層およびWthinである層を有し、かつ下式を満たすことを特徴とする捕捉材。
0.01≦D≦0.30
W≧0.1
1.0≦wmax/wmin≦1.5
2.0≦Wthic/Wthin
ここで、D[g/cm]:捕捉材の嵩密度、W[mm]:捕捉材一層当たりの厚み、wmax[mm]:各層における一層当たりの最大厚み、wmin[mm]:各層における一層当たりの最小厚み
3.下記式を満たすことを特徴とする前記1または2記載の捕捉材。
W1/WO≦0.7
ここで、WO[mm]:無荷重の場合のシート状材料の厚み、W1[mm]:100g/cmの荷重を捕捉材の上方から付与した場合のシート状材料の厚み
4.前記捕捉材の周方向における全部位の90%以上の部位において同一の積層数を有することを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の捕捉材。
5.前記シート状材料が繊維からなる材料を含むことを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の捕捉材。
6.ネットを含む2層以上の構造を有することを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の捕捉材。
7.医療用途に用いられることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の捕捉材。
8.下記式を満たすように一巻き毎の長さをあらかじめ定めてシート状材料を巻くことを特徴とする捕捉材の製造方法。
0.01≦D≦0.30
W≧0.1
1.0≦Wmax/Wmin≦1.5
ここで、D:捕捉材の嵩密度、W[mm]:捕捉材一層当たりの厚み、Wmax[mm]:全層における一層当たりの最大厚み、Wmin[mm]:全層における一層当たりの最小厚み
9.一層の平均の厚みがWthicである層およびWthinである層を有し、かつ下記式を満たすように一巻き毎の長さをあらかじめ定めてシート状材料を巻くことを特徴とする捕捉材の製造方法。
0.01≦D≦0.30
W≧0.1
1.0≦wmax/wmin≦1.5
2.0≦Wthic/Wthin
ここで、D[g/cm]:捕捉材の嵩密度、W[mm]:捕捉材一層当たりの厚み、wmax[mm]:各層における一層当たりの最大厚み、wmin[mm]:各層における一層当たりの最小厚み
10.下記式を満たすようにシート状材料を巻くことを特徴とする前記9または10に記載の捕捉材の製造方法。
W1/WO≦0.7
ここで、WO[mm]:無荷重の場合のシート状材料の厚み、W1[mm]:100g/cmの荷重を捕捉材の上方から付与した場合のシート状材料の厚み
11.前記捕捉材の周方向における全部位の90%以上の部位において同一の積層数となるように巻くことを特徴とする前記8〜10のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
12.前記シート状材料が繊維からなる材料を含むことを特徴とする前記8〜11のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
13.前記捕捉材がネットを含む2層以上の構造を有することを特徴とする前記8〜12のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
14.前記捕捉材が円筒状を有するように巻くことを特徴とする前記8〜13のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
15.中心に直径Rの円形断面を有する円筒状の空間ができるようにシート状材料を円筒状にN回巻く際、各段の段差がWsetであり、シート状材料を巻始める位置の段を1段目としたときの上段からn段目の長さを前記円筒状の空間における中心点から捕捉材最内層を第1層としたときの第n層における厚みの中心位置までの距離を半径とした円周の長さの0.9倍から1.1倍であり、かつ1段目からN段目の全ての長さの和が、第1層から第N層までの前記円周の長さの和の0.8倍から1.2倍であることを特徴とする捕捉材の製造方法。
ここで、N[−]:2以上の自然数、n[−]:1以上の自然数、Wset[mm]:捕捉材一層当たりの厚みの設定値
16.中心に直径Rの円形断面を有する円筒状の空間ができるようにシート状材料を円筒状にN回巻く際、各段の段差がWsetであり、シート状材料を巻始める位置の段を1段目としたときの上段からn段目の長さLが下式を満たす(N−1)段以上の階段状の台の全部もしくは一部にシート状材料を敷き、芯材を上段から下段へ転動させながら捕捉材を筒状に巻くことを特徴とする捕捉材の製造方法。
【0008】
【数1】

【0009】
ここで、N[−]:2以上の自然数、n[−]:1以上の自然数、Wset[mm]:捕捉材一層当たりの厚みの設定値
17.中心に直径Rの円形断面を有する円筒状の空間ができるようにシート状材料を円筒状にN回巻く際、n段目の段差がWset−nであり、シート状材料を巻始める位置の段を1段目としたときの上段からn段目の長さLが下式を満たす(N−1)段以上の階段状の台の全部もしくは一部にシート状材料を敷き、芯材を上段から下段へ転動させながら捕捉材を筒状に巻くことを特徴とする捕捉材の製造方法。
【0010】
【数2】

【0011】
ここで、i[−]:2以上の自然数、Wset−n[mm]:n段目の捕捉材一層当たりの厚みの設定値
18.該捕捉材が医療用途に用いられることを特徴とする前記7〜17のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
19.前記15〜18のいずれかに記載の捕捉材の製造方法を用いてなる、前記1〜7のいずれかに記載の捕捉材。
20.前記1〜7および19のいずれかに記載の捕捉材を充填してなることを特徴とする血液処理カラム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によって製造された捕捉材は、嵩密度のムラが抑制されるため、医療用材料として用いたとき、血液循環時の圧力損失が少なく、かつ体積あたりの表面積が大きくできるため、各種血液処理カラムに好適に使用することができる。また、数種類の厚みの層を何層か重ねることで、目詰まりを防ぎながら目的物質を効率よく除去することもできる。本発明に係る捕捉材およびこれを用いたカラムは、特に、過剰に存在する人体に不要な白血球やガン細胞などと、サイトカインなどの生理活性物質の両方を除去する用途に好適に用いられ、自己免疫疾患、がん、アレルギーなどの血液処理や治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、上述の課題解決のために、シート状材料を所定の嵩密度に嵩密度のムラが改善されるように巻くことにより、血液等の被処理媒体が目詰まりしにくく、かつ単位体積当たりの表面積が大きい捕捉材を製造するものである。
【0014】
本発明における捕捉材を構成するシート状材料の形態としては、繊維、フィルムからなるものがあげられ、より具体的には不織布、多孔質フィルムなどをあげることができる。特に不織布は、捕捉材の骨格部分(繊維径)の制御がしやすく好ましい。
【0015】
シート状材料の素材としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの公知のポリマーを使用することができる。これらのポリマーを単独で用いるものであってもよく、捕捉材が芯鞘型、海島型またはサイドバイサイド型の複合糸からなる場合は、複数のポリマーを使用するものであってもかまわない。なお、繊維の場合の断面形状は、中空糸状であっても、中空糸状でない円形断面であっても、それ以外の異形断面であってもかまわない。シート状材料が不織布である場合、その製造方法としては、公知の不織布の製造方法、例えば湿式法、カーディング法、エアレイ法、スパンボンド法、メルトブロー法等を用いることができる。
【0016】
本発明によれば、シート状材料を用いて、厚みムラが少なくなるように巻いて捕捉材とすることができる。積層された捕捉材は円筒状形状を有するものであることが、実用上好ましい。なお、本発明において、特に断りのない限り、断面および厚みとは、例えば円筒状の捕捉材においては、捕捉材の軸方向と垂直な方向における円形断面およびその断面における半径方向の長さをいい、捕捉材の高さとは、捕捉材の軸方向と垂直な方向における長さを指す。
【0017】
本発明における捕捉材の嵩密度は、0.01〜0.30g/cmであるものが使用される。嵩密度を大きくすると表面積が大きくなり、捕捉能力が向上するが、大きすぎると繊維間の隙間が小さくなり、血液循環時に目詰まりしやすくなるため、前記の範囲が好ましい。ここでいう嵩密度は、後述のように捕捉材がネットを含む2層以上の構造を有する場合は、ネットを除いた部分の嵩密度である。この場合、嵩密度は、下記式より求める。
【0018】
嵩密度=(捕捉材の乾燥重量−ネットの乾燥重量)/(捕捉材の体積−ネットの体積)
捕捉材の体積は、捕捉材の各寸法を測定し求める。捕捉材の体積とは、捕捉材の見かけの体積であり、見かけ状直方体形状であれば、捕捉材の体積=幅×長さ×高さとして求める。捕捉材、ネットの乾燥重量は、通常は蒸留水等で十分洗浄した後、24時間程度50℃で乾燥した際の重量を求めるが、更に5時間乾燥し、乾燥重量の変動が5%以下であることを確認して5%を超える重量低下が認められた場合は、更に5時間乾燥を行い、5時間内の重量変動が5%以下になった時点を乾燥終了とする。また、耐熱性の低い材料の場合は、耐熱性が確認されている温度にて、真空乾燥等を行うと効率的である。ネットの体積は、各寸法が分かっている場合、計算により求めることができる。形状が複雑な場合は、ネットを水等に沈め、ネットのみを取り出し、(ネット+水等)と(水等)の体積の差より、ネットの体積を求めることができる。この際、材料内の空気を脱気するため、表面張力が小さい有機溶媒、例えばエタノールなどの利用、遠心力の付加等により捕捉材内部の浸潤を円滑にする方法も好適に使用できる。
【0019】
捕捉材の一層当たりの厚みWについては、厚すぎると巻く際に操作性が悪化し、薄すぎると嵩密度を制御しながら巻くことが難しくなるため、0.1mm以上であることが求められる。また0.5mm以上10cm以下が取り扱い上好ましい。捕捉材の一層当たりの厚みは、断面における異なる3方向もしくは4方向(例えば0−6時、1.5−7.5時、3−9時、4.5−10.5時から選ばれる方向)の各層の厚みを3回測定し、その平均値を求める。その際、各層の境界が分かりづらい場合は、最外周の直径を測定後、一層毎に解除し、解除後の最外周の直径を測定して、一層解除する前後の直径の差を求めることにより、一層当たりの厚みを計算することが可能である。無荷重の場合のシート状材料の厚みWOは、解除後の材料をシート面における1cm角の正方形の板状として切断したもの5枚を厚み方向に重ね、その4隅の高さ方向の長さをそれぞれ3回ずつ、計12回測定し、その平均値を5枚の枚数分で除した数値を採用する。ただし、1枚当たりの厚みが0.5mm以下のように薄い場合は、上記1cm角の正方形の板状として切断したもの5枚を重ねる代わりに、20枚を重ねて厚みを測定する方法を好適に用いることができる。
【0020】
また、捕捉材におけるシート状材料の積層枚数は、積層枚数が同一になるように、巻き始めの位置と巻き終わりの周方向における位置を可能な限り同一の位置にすることが望ましい。具体的には、その周方向における全部位の90%以上の部位において同一枚数であることが好ましい。積層枚数が他の部分より少ない部位(方向)があった場合、その方向に優先的に液が流れ、積層枚数がより多い部位に液が流れないことがある。すなわち、巻き始めと巻き終わりの位置のずれは、巻き周長の10%未満であることが好ましく、更に好ましくは5%未満以下であることが好ましい。すなわち、例えば、円筒状に巻く場合は、巻き始めと巻き終わりの位置のずれが36度未満であることが好ましく、18度未満であることがより好ましい。
【0021】
本発明における捕捉材の第一の態様としては、どの部位においても厚みムラが無いことが好ましい。厚みムラが多く、嵩密度が高い部分が部分的に生じると、血液等を流したときに、その部分に起因した偏流や目詰まりが生じてしまう。従って全層における一層当たりの最大厚みWmaxと全層における一層当たりの最小厚みWminとの比率Wmax/Wminが1.0以上、1.5以下であり、1.0以上、1.2以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明における捕捉材の第二の態様としては、平均の厚みが異なる2種類以上の層を積層して捕捉材とすること、具体的には、2.0≦Wthic/Wthinを満たす場合において一層の平均の厚みがWthicである層およびWthinである層を少なくとも有する捕捉材とすることで、より効率的に目詰まりを起こさず、目的物質を除去することが有り得る。たとえば除去対象が2種以上の異なる径の粒子である等の場合、2.0以上とすることで、目詰まりをより効果的に防止することが可能となり得る。すなわち、空隙細孔径の大きい厚みがWthicの捕捉材を液体流入側に配置することで、大きな物質を入口側の捕捉材で除去し、残った小さな物質を出口側の空隙孔径の小さい厚みがWthinの捕捉材にて除去することで、目詰まりをより効率的に軽減し、除去効率を向上させることができる。Wthic/Wthinが1.5を超え、2.0未満である場合、かかる第二の態様としての効率化が顕著に現れず、また第一の態様としての処理液体の流れが均一となる効果が得難いことから、好ましくない。ただし、各層における厚みムラは、上記同様の理由により、極力無いことが求められるため、各層における一層当たりの最大厚みwmaxと各層における一層当たりの最小厚みwminとの比率wmax/wminは1.0以上、1.5以下であり、1.0以上、1.2以下であることが好ましい。なお、上記2種類の捕捉材の厚みの比率Wthic/Wthinは、5.0倍以上であることが好ましく、10.0倍以上がより好ましい。
【0023】
本発明の捕捉材は、シート状材料を用いて、所定の嵩密度、厚みとなるように一巻き毎の長さをあらかじめ定めて巻くことにより、厚みムラが少なくなるように巻くことができる。具体的な方法としては、まず巻き終わった後の捕捉材の各層の捕捉材の厚みの中心位置を特定する。次に、各層毎の捕捉材の厚みの中心を円形状と仮定し、一巻き毎の長さを求める。一巻き毎の長さをあらかじめ定めて巻く方法は、通常の方法によれば作業効率が低下する方法であるが、作業効率を改善するための好ましい製造方法として、たとえば、捕捉材が円筒状の場合、複数段からなる階段状の台の全部または一部にシート状材料を敷き、芯材等をかかる台の上段から下段に向けて転動させつつ、台に敷いたシート状材料が巻かれるようにする方法がある。この方法を用いると、複雑な機械設備を要せず、手動により均一に積層された捕捉材を得ることも可能である。中心に直径Rの円形断面を有する円筒状の空間ができるようにシート状材料を同じ厚みにN回(図1の場合は3回)巻く場合は、図2にその平面図を示す台であり、また、図3に示すように各段の段差が捕捉材の一層当たりの厚みの設定値Wsetに等しい、上段からn段目(シート状材料を巻き始める位置の段を1段目としたときのn段目)の長さを各層の円周の長さとなるよう設定する。なお、ここで、Nは2以上の自然数であり、nは1以上の自然数である。すなわち、各層の捕捉材の厚みの中心位置を特定して、上記円筒状の空間の中心点から各層における厚みの中心位置までの距離を半径とした円の長さを各層の円周の長さとして、各段の長さをこの円周の長さの0.9倍から1.1倍となるよう設計する。台の各段の長さがこの範囲を外れると、均一に積層された捕捉材が得られ難いことがある。また、段数が多い場合は、1段1段のずれが蓄積されて大きなずれとなることがあるため、1段目からN段目の全ての長さの和が、第1層から第N層までの前記円周の長さの和の0.8倍から1.2倍となるよう設計する。この場合、上段からn段目の段は最内層を第1層としたきの第n層を巻くために用いられる段であるが、その長さLは、n=1の場合、π(R+Wset)であり、n=2の場合、π(R+3Wset)であり、n=3の場合、π(R+5Wset)である。従って、これを一般化して、上段からn段目の段の長さLが下式を満たす階段状の台を使用して、シート状材料を巻くことで、前記のような厚みに巻くことができる。
【0024】
【数1】

【0025】
段数は(N−1)段以上であることが望ましく、積層数に応じて決定すればよい。なお、本発明でいう円形とは、一つの曲線で囲まれた平面図形であり、真円や楕円(2点からの距離の和が一定である一つの曲線からなる平面図形)およびその変形した形状も含む。断面が真円でない場合は、断面の周の長さを上式におけるπRとする。
【0026】
また、Rの円形断面を有する円筒状の空間ができるようにシート状材料を異なる厚みの層を有するようにN回(図4の場合は3回)巻く場合は、図5にその上面図を示す台であり、また、図6に示すように各段の段差が捕捉材の一層当たりの厚みの設定値Wset−−iに等しい、上段からn段目(シート状材料を巻き始める位置の段を1段目としたときのn段目)の長さを各層の円周の長さとして、各段の長さをこの円周の長さの0.9倍から1.1倍となるよう設計する。また、1段目からN段目の全ての長さの和が、第1層から第N層までの前記円周の長さの和の0.8倍から1.2倍となるよう設計する。この場合、上段からn段目の段は最内層を第1層としたきの第n層を巻くために用いられる段であるが、その長さLは、n=1の場合、π(R+Wset−1)であり、n=2の場合、π(R+2Wset−1+Wset−2)であり、n=3の場合、π(R+2Wset−1+2Wset−2+Wset−3)である。従って、これを一般化して、上段からn段目の段の長さLが下式を満たす階段状の台を使用して、シート状材料を巻くことで、前記のような厚みに巻くことができる。
【0027】
【数2】

【0028】
段数は(N−1)段以上であることが望ましく、積層数に応じて決定すればよい。なお、ここで、i[−]:2以上の自然数、Wset−n[mm]:n段目の捕捉材一層当たりの厚みの設定値である。
【0029】
また、円筒状の捕捉材を作製する場合、捕捉材の中心に直径Rの円形断面を有する円筒状の空間を確保するために、円形の断面が直径R以下の芯材を用いることもできる。かかる芯材は、特に捕捉材を血液の処理に用いる場合には、孔あるいはスリットを備えたものであることが好ましい。また、芯材の高さを一定に保つために両端に円盤状の板に取り付け、芯材を上段から下段へ転動させながらシート状材料を巻き取る方法も好適に利用できる。なお、捕捉材が円筒状以外の筒状形状を有する場合であっても、この方法を適用することで、本発明の目的を達成することが可能である。
【0030】
捕捉材は、重量による負荷を付与した場合に、厚みが変化する柔軟なものが好ましい。柔軟性がない捕捉材は、巻く際に隙間ができ、血液等がショートパスすること等の原因となる。従って、捕捉材一層当たりの厚みWOと1cm当たりに100gの荷重をシート状材料の上方から付与した場合のシート状材料の厚みW1の比率W1/WOが0.7以下であることが好ましく、更には0.5以下であることがより好ましい。W1/WOがかかる範囲を満たすためには、シート状材料に柔軟性を付与することが有効であり、そのために、繊維等からなる骨格部分が細い、かつ弾性のある材料を用いることが望ましい。また、骨格部分を少なくし、空隙を増やし、スポンジ状にする手段も採用可能である。
【0031】
捕捉材の柔軟性は使用する繊維の材質により異なるためこれに限定されるものではないが、後述と同様に、10μm以下の直径の繊維を用いることが好ましい。また、シート状材料の素材としては、前述の如く、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの公知のポリマーを使用することができるが、柔軟性のある材料であればこれに限定されるものではない。
【0032】
シート状材料が不織布である場合、主に不織布部分によって白血球やガン細胞などを吸着及び濾過によって除去することができる。さらに、不織布部分の素材や繊維径を適宜選択することにより、これら白血球やガン細胞などに加えてサイトカインなどの生理活性物質をも吸着・除去することが可能である。白血球やガン細胞などに加えてサイトカインなどの生理活性物質をも効率よく吸着・除去するには、当該捕捉材に特定の官能基を導入、固定化することが好ましい。捕捉材、特に不織布部分を構成する素材を適宜選択することにより、特定の官能基を導入せずともサイトカインなどの生理活性物質の吸着・除去能を持たせることはできるが、これら官能基の導入によって生理活性物質をより効率的に吸着することができるようになる。
不織布を形成する繊維は、特に好ましくは芯がポリプロピレン、鞘がポリスチレンなどの多芯海島型複合繊維からつくられる。素材の組み合わせは、製糸性が良好であれば、いかなる組み合わせも実現できるが、鞘としてポリスチレンを用いると鞘構造に官能基導入が行いやすくなるため、特に好ましい。この場合、アミドメチル化法を適用することで、アミノ基を有する官能基を簡便に導入でき、環状ペプチド(ポリミキシンB、ポリミキシンS)、ポリエチレンイミン、4級アンモニウム塩などの導入を行うことが可能である。かかるアミノ基を有する官能基の具体例として、アミノ基を持つ環状ペプチド残基、ポリアルキレンイミン残基、ベンジルアミノ基、1級、2級、3級のアルキルアミノ基を使用することができる。そのなかでも、好ましくはアミノ基を持つ環状ペプチド残基、ポリアルキレイミン残基、さらに好ましくはアミノ基を持つ環状ペプチド残基が、生理活性物質に対する吸着性能が高くてよい。
【0033】
より具体的には、アミノ基をもつ環状ペプチドは、2個以上50個以下、より好ましくは4個以上16個以下のアミノ酸からなる環状ペプチドであって、その側鎖に1個以上のアミノ基をもつものであれば良く、特に制限はない。その具体例としては、ポリミキシンB、ポリミキシンE、コリスチン、グラミシジンSあるいはこれらのアルキルあるいはアシル誘導体などを使用することができる。
【0034】
また、本発明で言うポリアルキレイミン残基とは、ポリエチレンイミン、ポリヘキサメチレンイミンおよびポリ(エチレンイミン・デカメチレンイミン)共重合体に代表されるポリアルキレンイミンまたはその窒素原子の一部を、n−ヘキシルブロマイド、n−デカニルブロマイド、n−ステアリルブロマイドなどに代表されるハロゲン化炭化水素の単独または混合物でアルキル化したもの、または、酪酸、バレイン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、レノレイン酸、ステアリル酸などの脂肪酸でアシル化したものを意味する。
【0035】
また、捕捉材が繊維からなるシート状材料を含むものである場合、繊維の直径は、目的とする捕捉能の上で決められるべきものである。たとえば、被処理媒体として血液を用いる場合、メモリーセルの消失を引き起こすおそれのある過剰なリンパ球の除去率を抑制し、顆粒球を選択的に除去するためには4μm以上のものを含むことが好ましく、より好ましくは5μm〜10μmのものが使用される。一方で、0.5〜4μmの繊維を用いればリンパ球の除去にも好適に使える。さらに、0.5μm未満の繊維を用いれば、生理活性物質の除去効率を上げることが可能となる。これ以外に、捕捉材の形状安定性を高める等の目的のために、より太い繊維を混合した不織布とすることもできる。
【0036】
ここで示した直径は、円柱状のもののみ適用されるものではなく、たとえば断面が楕円や矩形、多角形の形状のものにも適用される。それらの場合、最外層を結んでできた図形の面積を求め、その面積に相当する円の直径を求めて繊維の直径とする。例えば、5つの突起部分が存在する星形を例にとると、その5つの頂点を直線的に結ぶ5角形の図形の面積を算出し、相当する円の直径を本発明でいう直径とする。
【0037】
本発明において、シート状材料は、ネットを含む2層以上の積層構造を有することが好ましい。シート状材料とネットの2層構造でもよいが、シート状材料の間にネットを挟み込んだ形状、すなわちシート状材料−ネット−シート状材料のサンドイッチ構造(3層構造)をとることがより好ましい。もちろん、後述する嵩密度を考慮し、被処理媒体の圧損に影響のない範囲でさらに多層構造とすることも可能である。
【0038】
本発明におけるネットの素材として、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの公知のポリマーを使用することができる。後述するように、シート状材料と一体化した後に官能基導入のための有機合成反応に供する場合は、用いる溶媒の種類や、反応温度に応じて適宜素材を選択すればよい。特に、医療用途に用いる場合、生体適合性の面からは、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0039】
複数の繊維が合糸された状態や紡績糸でネット構造が形成されていると、合糸された糸状間等に血液などの被処理媒体が通過することによる被処理媒体の圧損上昇の懸念があるため、ネットは単糸(モノフィラメント)で形成されていることが好ましい。また単糸であれば、1本あたりの機械的な強力も保持しやすい。
【0040】
ネットを構成する単糸の直径は好ましくは50μm以上1mm以下であり、同様にネットの厚みは50μm以上1.2mm以下である。これ以上大きな範囲でも可能であるが、単位体積あたりの吸着体そのものの分量を減らすことになり、好ましくはない。
【0041】
ネットの構成としては、特に限定されず、結節網、無結節網、ラッシェル網等を用いることができる。網み目の形状も特に限定されず、長方形、菱形、亀甲形等を用いることができる。
【0042】
ネットを用いることで、シート状材料に形体保持性を付与することができ、嵩密度が小さくても形体の安定した捕捉材とすることができる。なお、ネット自体が圧損に影響を与えるので、ネットは可能な限り開孔部が大きい方が望ましい。従って、任意の100mm中に、10mm以上の空隙を有することが望ましく、特に好ましくは、3mm角程度の開孔部を有すると、形体保持性も良好となり、好適に使用できる。
【0043】
本発明の捕捉材の製造方法としては、例えばシート状材料が不織布の場合、予め別々に作成した不織布とネットを、サーマルボンド法、カレンダー法、ニードルパンチ法等の公知のウエブ接着方法で積層構造とする方法がある。また、別の方法として、積層構造にするために、あらかじめ、プレパンチングを施した綿状物を作成し、その間にネットを挟み込んでパンチングしてシート状材料−ネット−シート状材料の層構造を有する捕捉材を作る方法があるが、この方法のほうが簡便であり、好ましい。プレパンチングした綿状物を片面1枚ネット構造にあわせることも可能である。
【0044】
本発明の医療用途に用いられる捕捉材を組み入れたカラムは、前記捕捉材を容器(その形状については特に限定はしないが、多角形状のものや楕円の容器、特に好ましくは円筒状容器)に充填することによって製造することができる。カラムとしては、シート状材料を芯材に、もしくは芯材なしでシート状材料を巻いて構成した捕捉材が、両端部に血液入口と血液出口とを有する容器に納められているものを製造することができる。特に限定しないが、血液処理カラムに用いる際は、捕捉材の外周部に通じる部位より血液を流入させ、捕捉材の内周部より血液を流出させる構成のカラム等が好ましい。このような構成にすることで、捕捉材の外周部の大きな面積部分によって捕捉対象物質を迅速に除去でき、除去されずに残ったわずかな捕捉対象物質も、捕捉材の内周部に到って、その小さな面積部分によっても十分に除去でき、効率的な除去が可能であるので、最も好ましい。
【0045】
本発明の製造方法によって製造される捕捉材は、血液中に過剰に存在する白血球やガン細胞などの細胞やサイトカインなどの生理活性物質を選択的に捕捉する用途等に用いられるが、これに限定されるものではない。生理活性物質としては、上述のサイトカイン以外にも、走化因子、抗体、補体、リンフォカインなど、生物由来の蛋白質や脂質、糖質、ホルモン類などを含み、特に、構造解析や、パターン解析などのため除去作業、治療目的等のターゲットとして選定された物質が対象となる。その他にも、生体にとって悪影響を及ぼす細菌、細菌毒素、ウイルスなども生理活性物質として取り扱う。細胞としては、主に血球細胞、癌化細胞などであり、血液やリンパ液、腹水、胸水などの滲出液中に含まれる物質を対象とする。研究における培養細胞、酵母、細菌類も対象となる。
【実施例】
【0046】
(繊維径の測定)
繊維径は不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−5400LV)で1000〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入し算出した。
[実施例1]
(捕捉材)
36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを次の成分を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%
海成分;エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3重量%含む共重合ポリエステル
複合比率(重量比率);芯:鞘:海=42:43:15
この繊維85重量%と、直径20μmのポリプロピレン繊維15重量%からなる不織布を作製した後、この不織布2枚で、開孔部が2mm角のポリエステル製ネット(厚み0.4mm、単糸径0.3mm)を間に挟み、ニードルパンチすることによって三層構造の不織布を得た。次に、この不織布を90℃の水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム濃度3重量%)で処理して海成分の「エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3重量%含む共重合ポリエステル」を溶解することによって、芯鞘繊維の直径が5μmで、嵩密度が0.02g/cm(総目付150g/m)のシート状材料を作製した。
(中間体)
次に、ニトロベンゼン600mLと硫酸390mLの混合液にパラホルムアルデヒド3gを20℃で溶解した後、0℃に冷却し、75.9gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、5℃以下で溶解した。これに5gの上記シート状材料を浸し、室温で2時間静置した。その後、繊維を取り出し、大過剰の冷メタノール中に入れ、洗浄した。繊維をメタノールで十分に洗った後、水洗し、乾燥して、7.0gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体1)を得た。
(官能基を導入したシート状材料)
N,N−ジメチルオクチルアミン50gとヨウ化カリウム8gを360mLのジメチルスルホオキシド(DMF)に溶かした溶液に5gの上記中間体1を浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。この繊維をイソプロパノールで洗浄後、1mol/L濃度の食塩水に浸漬した後、水洗し、真空乾燥して、8.3gのジメチルオクチルアンモニウム化繊維(官能基を導入した不織布からなるシート状材料)を得た。
【0047】
得られたシート状材料を幅が47mm、長さが377mmにカットした後、以下に示す方法を用いて、外直径8mmの円筒状でかつ、直径4mmの孔を有する、開口率40%のポリプロピレン製の芯材にロール状に約6回転分巻き付けた。すなわち、各段の水平方向の長さが上段より1段目は31mm、2段目44mm、3段目57mm、4段目69mm、5段目82mmであり、それぞれの段差2mmの階段状の台を準備し、シート状材料を、その長手方向(長さ377mmの方向)を台の長手方向と合わせ、材料の長手方向の一端を台の長手方向における1段目の端と合わせるように敷いた(担体の長さが余った分は、台を設置した床に敷いた。)。一方で、芯材の両端に直径32mmの円盤状の板をそれぞれ取り付け、芯材を台の1段目から下段へと転動させることによって担体を巻き取った。次に、巻き終わりの点を0時方向として、1.5−7.5時、3−9時、4.5−10.5時の方向について、最外周の直径を各1回測定後、一層毎に解除し、その都度最外周の直径を測定した。最外周の厚みは、3方向の平均値を用いた。この値を用いて、n周目の層の厚みを(n周巻きの直径−(n−1)周巻きの直径)/2の式より求めた(最内周で片面のみしかない場合は、n周巻きの直径−(n−1)周巻きの直径)。無荷重の場合のシート状材料の厚みWOは、解除後の材料をシート面における1cm角の正方形の板状として切断したもの5枚を捕捉材の厚み方向に重ね、その4隅について高さ方向の長さをそれぞれ3回ずつ、計12回測定し、その平均値を5枚の枚数分で除した数値を採用した。更に、5枚重ねの捕捉材に100gの分銅を上からのせた後、5分後に同様に捕捉材の厚みを測定した。
【0048】
巻き始めと巻き終わりの位置のずれは、芯材における回転方向と平行な方向の断面の円における角度として+5度で、巻き数は6周+5度であった。
【0049】
捕捉材の厚みは、最大部分で2.38mm、最小部分で1.68mmであり、最大厚みの層の厚さと最小厚みの層の厚さの比率Wmax/Wminは1.42であり、全ての厚みWは0.1mm以上であった。また、無荷重の場合のシート状材料の厚みWOは2.1mmであり、100gの重量の負荷を付与した場合の厚みW1は0.8mmであったので、W1/WOは0.4と柔軟性の高い材料であることが確認できた。また、捕捉材から芯材を取り出し、捕捉材を50℃で24時間乾燥した。乾燥後の重量は繊維部分が3.41g、ネット部分が1.36gであり、ネットの体積は1.60cmであった。また、捕捉材部の体積は35.4cmであることから計算した結果、嵩密度は、0.10g/cmであった。
[比較例1]
実施例1と同様に得られたシート状材料を幅47mm、長さ377mmにカットした後、外径4mmの円形の孔を開口率40%で有する芯材にロール状に約6周巻き付けた。この際、実施例1にて用いた台は使用せず、段のない平らな台上にシート状材料を敷き、芯材を手で転動させて材料を巻き上げた。巻き始めと巻き終わりの位置のずれは、芯材における回転方向と平行な方向の断面の円における角度として+90度で、6周+90度(6周と4分の1)の巻き数であった。実施例1と同様に各長さを測定した結果、巻き上げられた捕捉材の厚みは、最大部分で2.45mm、最小部分で1.41mmであり、最大厚みの層の厚さと最小厚みの層の厚さの比率Wmax/Wminは1.74であり、全ての厚みWは0.1mm以上であった。また、無荷重の場合のシート状材料の厚みWOは2.1mmで、実施例1と同様にして荷重を100g付加した場合の厚みW1は0.8mmで、W1/WOは0.4であった。嵩密度は、実施例1と同様に測定した結果、0.10g/cmであった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明における全層を均一な厚みに巻く場合の捕捉材を上から見た図
【図2】本発明における全層を均一な厚みに巻く場合の捕捉材を製造するために用いる階段状の台および台を用いた巻き方(平面図)
【図3】本発明における全層を均一な厚みに巻く場合の捕捉材を製造するために用いる階段状の台および台を用いた巻き方(側面図)
【図4】本発明における異なる厚みに巻く場合(厚みがWthicである層およびWthinである層を有する場合)の捕捉材を上から見た図
【図5】本発明における異なる厚みに巻く場合の捕捉材を製造するために用いる階段状の台および台を用いた巻き方(平面図)
【図6】本発明における異なる厚みに巻く場合の捕捉材を製造するために用いる階段状の台および台を用いた巻き方(側面図)
【符号の説明】
【0051】

1 芯材
2 捕捉材
3 階段状の台
4 円盤状の板
R 芯材の直径
W 捕捉材1層当たりの厚み
set 捕捉材一層当たりの厚みの設定値
W1 捕捉材内側1層目の厚み
W2 捕捉材内側2層目の厚み
W3 捕捉材内側3層目の厚み
set−1 捕捉材内側一層目の厚みの設定値
set−2 捕捉材内側一層目の厚みの設定値
set−3 捕捉材内側一層目の厚みの設定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状材料を巻いて積層して筒状にしてなる、下式を満たすことを特徴とする捕捉材。
0.01≦D≦0.30
W≧0.1
1.0≦Wmax/Wmin≦1.5
ここで、D[g/cm]:捕捉材の嵩密度、W[mm]:捕捉材一層当たりの厚み、Wmax[mm]:全層における一層当たりの最大厚み、Wmin[mm]:全層における一層当たりの最小厚み
【請求項2】
シート状材料を巻いて積層して筒状にしてなる、一層の平均の厚みがWthicである層およびWthinである層を有し、かつ下式を満たすことを特徴とする捕捉材。
0.01≦D≦0.30
W≧0.1
1.0≦wmax/wmin≦1.5
2.0≦Wthic/Wthin
ここで、D[g/cm]:捕捉材の嵩密度、W[mm]:捕捉材一層当たりの厚み、wmax[mm]:各層における一層当たりの最大厚み、wmin[mm]:各層における一層当たりの最小厚み
【請求項3】
下記式を満たすことを特徴とする請求項1または2記載の捕捉材。
W1/WO≦0.7
ここで、WO[mm]:無荷重の場合のシート状材料の厚み、W1[mm]:100g/cmの荷重を捕捉材の上方から付与した場合のシート状材料の厚み
【請求項4】
前記捕捉材の周方向における全部位の90%以上の部位において同一の積層数を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の捕捉材。
【請求項5】
前記シート状材料が繊維からなる材料を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の捕捉材。
【請求項6】
ネットを含む2層以上の構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の捕捉材。
【請求項7】
医療用途に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の捕捉材。
【請求項8】
下記式を満たすように一巻き毎の長さをあらかじめ定めてシート状材料を巻くことを特徴とする捕捉材の製造方法。
0.01≦D≦0.30
W≧0.1
1.0≦Wmax/Wmin≦1.5
ここで、D:捕捉材の嵩密度、W[mm]:捕捉材一層当たりの厚み、Wmax[mm]:全層における一層当たりの最大厚み、Wmin[mm]:全層における一層当たりの最小厚み
【請求項9】
一層の平均の厚みがWthicである層およびWthinである層を有し、かつ下記式を満たすように一巻き毎の長さをあらかじめ定めてシート状材料を巻くことを特徴とする捕捉材の製造方法。
0.01≦D≦0.30
W≧0.1
1.0≦wmax/wmin≦1.5
2.0≦Wthic/Wthin
ここで、D[g/cm]:捕捉材の嵩密度、W[mm]:捕捉材一層当たりの厚み、wmax[mm]:各層における一層当たりの最大厚み、wmin[mm]:各層における一層当たりの最小厚み
【請求項10】
下記式を満たすようにシート状材料を巻くことを特徴とする請求項9または10に記載の捕捉材の製造方法。
W1/WO≦0.7
ここで、WO[mm]:無荷重の場合のシート状材料の厚み、W1[mm]:100g/cmの荷重を捕捉材の上方から付与した場合のシート状材料の厚み
【請求項11】
前記捕捉材の周方向における全部位の90%以上の部位において同一の積層数となるように巻くことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
【請求項12】
前記シート状材料が繊維からなる材料を含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
【請求項13】
前記捕捉材がネットを含む2層以上の構造を有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
【請求項14】
前記捕捉材が円筒状を有するように巻くことを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
【請求項15】
中心に直径Rの円形断面を有する円筒状の空間ができるようにシート状材料を円筒状にN回巻く際、各段の段差がWsetであり、シート状材料を巻始める位置の段を1段目としたときの上段からn段目の長さを前記円筒状の空間における中心点から捕捉材最内層を第1層としたときの第n層における厚みの中心位置までの距離を半径とした円周の長さの0.9倍から1.1倍であり、かつ1段目からN段目の全ての長さの和が、第1層から第N層までの前記円周の長さの和の0.8倍から1.2倍であることを特徴とする捕捉材の製造方法。
ここで、N[−]:2以上の自然数、n[−]:1以上の自然数、Wset[mm]:捕捉材一層当たりの厚みの設定値
【請求項16】
中心に直径Rの円形断面を有する円筒状の空間ができるようにシート状材料を円筒状にN回巻く際、各段の段差がWsetであり、シート状材料を巻始める位置の段を1段目としたときの上段からn段目の長さLが下式を満たす(N−1)段以上の階段状の台の全部もしくは一部にシート状材料を敷き、芯材を上段から下段へ転動させながら捕捉材を筒状に巻くことを特徴とする捕捉材の製造方法。
【数1】

ここで、N[−]:2以上の自然数、n[−]:1以上の自然数、Wset[mm]:捕捉材一層当たりの厚みの設定値
【請求項17】
中心に直径Rの円形断面を有する円筒状の空間ができるようにシート状材料を円筒状にN回巻く際、n段目の段差がWset−nであり、シート状材料を巻始める位置の段を1段目としたときの上段からn段目の長さLが下式を満たす(N−1)段以上の階段状の台の全部もしくは一部にシート状材料を敷き、芯材を上段から下段へ転動させながら捕捉材を筒状に巻くことを特徴とする捕捉材の製造方法。
【数2】

ここで、i[−]:2以上の自然数、Wset−n[mm]:n段目の捕捉材一層当たりの厚みの設定値
【請求項18】
該捕捉材が医療用途に用いられることを特徴とする請求項7〜17のいずれかに記載の捕捉材の製造方法。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに記載の捕捉材の製造方法を用いてなる、請求項1〜7のいずれかに記載の捕捉材。
【請求項20】
請求項1〜7および19のいずれかに記載の捕捉材を充填してなることを特徴とする血液処理カラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−313495(P2007−313495A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353763(P2006−353763)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】