説明

均等に着色されたセラミックフレームワークおよびセラミック着色溶液

本発明は、セラミックフレームワーク用の着色溶液と、該溶液で着色されたセラミックフレームワークと、均等に着色されたセラミックフレームワークを得るための方法とに関する。該溶液は、溶媒と、金属塩と、1,000〜200,000の範囲のMnを有するポリエチレングリコールとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックフレームワーク用の着色溶液と、該溶液で着色されたセラミックフレームワークと、均等に着色されたセラミックフレームワークを得るための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックフレームワークは、通常、金属塩溶液で着色される。そのためには、塩溶液がセラミック上に塗布されるか、あるいはフレームワーク自体が溶液中に浸漬される。フレームワークはその後乾燥され、色を定着させるために焼成される。
【0003】
この点において、(特許文献1)は、水およびその中に溶解されたパラジウム含有化合物から本質的になるセラミック着色溶液について記載している。溶液は、さらに、アルコール、グリコール、グリコールエーテルまたはポリエチレングリコールなどの共溶媒を含有してもよい。
【0004】
(特許文献2)は、TiおよびFe成分の混合物を含有する同様の溶液について言及している。
【0005】
(特許文献3)は、希土類元素またはサブグループ元素のうちの少なくとも1つの塩または錯体を、確定した濃度で含有するイオンまたは錯体含有溶液によって、セラミックを着色することについて言及している。溶液は、安定剤、錯体ビルダー(complex builder)、顔料およびビーティング(beating)添加剤のような添加剤を含有してもよい。
【0006】
従来技術で記載された方法の欠点は、乾燥および/または焼成の工程中に生じる力が、金属イオンを表面に向かって不均一な形で移行させ、それにより、義歯学的な作業全体の審美性を損ねるかもしれないことである。
【0007】
そのタイプの移行を防止するための1つの方法は、高分子量の可溶性物質の添加であろう。これは、通常、全ての成分の拡散に影響を与え、それにより所望の効果がもたらされる。
【0008】
一方、このような添加剤は、通常、粘度の実質的な増大をもたらし、系の全体的な極性を変更することによって湿潤挙動の変化をもたらし得る。このような効果は、結果として、セラミックの細孔内への溶液の浸透を低下させ、それにより作業時間を過度に増大させることが多い。
【0009】
もう1つの欠点は、高分子添加剤が、利用できる水のかなりの部分を結合することによって金属イオンの溶解度を低下させ、そして沈殿を促進するか、あるいは劣化しやすいことによって溶液の貯蔵寿命の安定性も低下させることであろう。
【0010】
また添加剤は、焼成工程の間に、残渣を残すことなく、あるいはセラミックフレームワークの組成および完全性に影響を与えることなく、熱分解可能でなければならない。
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第19619168A1号明細書
【特許文献2】DE19619165C1A1
【特許文献3】国際公開第00/46168A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/4618A1号パンフレット
【特許文献5】独国特許出願公開第10052203A1号明細書
【非特許文献1】Amdt/Mueller、Polymercharakterisierung、Hanse Verlag、1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、改善された特性を有するセラミックフレームワーク用の着色溶液を提供することである。
【0013】
更なる目的は、不利な分離傾向を防止するが、系の他の全ての所望の特性を保持するセラミックフレームワーク用の着色溶液を提供することである。
【0014】
また更なる目的は、焼成後に、セラミックフレームワークのより少ない焼結変形をもたらす着色溶液を提供することである。
【0015】
また更なる目的は、均等に着色されたセラミックフレームワークをもたらす着色溶液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くことに、
金属塩と、
約1,000〜約200,000の範囲のMnを有するポリエチレングリコールまたはその誘導体と、
溶媒と、
任意に安定剤と、
を含み、ポリエチレングリコールが組成物全体の約0.5〜約10重量%の量で存在する溶液を提供することで、上記の問題が対処されることが分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
従って、本発明は、セラミックフレームワークを着色するための溶液、前記溶液で着色されたセラミックフレームワーク、およびセラミックフレームワークの着色方法に関する。
【0018】
ポリエチレングリコールまたはその誘導体の添加は、驚くことに、粘度に対して有害な影響を少しも示さず、溶液の貯蔵寿命安定性に影響を与えない。
【0019】
それどころか、驚くことに、酸化的劣化に対する添加剤の安定化に起因することを考慮すれば、この添加剤は、塩基性の塩が沈殿するのを防止することにより貯蔵寿命安定性を維持しさえする。
【0020】
ポリエチレンオキシドおよびその誘導体を用いるさらに肯定的で驚くべき効果は、焼結工程の間に生じる変形に対する肯定的な影響である。従って、本発明の着色溶液を用いて、幅広に広がるフレームワーク(3単位よりも多い)の適合を改善することが可能である。
【0021】
さらに、3M ESPE社(3M ESPE AG)のラバ(Lava)TMフレームの現行の取扱説明書(08/02版)において提言されるように歯科技工士が浸透工程中に圧力を用いる絶対的な必要性は存在しない。
【0022】
本発明の意味の範囲内における「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という用語は非網羅的な特徴のリストを紹介する。同様に、「1つ」という単語は、「少なくとも1つ」の意味で理解されるべきである。
【0023】
本発明の溶液は、予備焼結された様々な組成のセラミック本体、特に、それぞれZrO2および/またはAl23を含むもの、あるいは好ましくは本質的にZrO2および/またはAl23からなるものに塗布することができる。これらの組成物は、当業者には既知である(例えば、(特許文献4)を参照)。ZrO2は、好ましくは、Y23で安定化される。
【0024】
着色の目的のために有用な金属塩は、例えば、(特許文献3)の特に3頁に記載されている。有用な金属塩は、好ましくは、La、Prおよび/またはErのような希土類元素または希土類元素のサブグループから選択される。また、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族の遷移金属の塩、特にFe、Co、Ni、CuおよびMnの塩も有用である。Fe、MnおよびErの組み合わせが特に好ましい(元素周期表、サージェント−ウェルチ・サイエンティフィック・カンパニー(SARGENT−WELCH Scientific Company)、イリノイ州60077、1980を参照)。
【0025】
使用される溶媒に可溶性であるほぼ全ての金属塩を使用することができる。好ましいのは、Cl-、Br-、J-、SO42-、SO32-、NO2-、NO3-をアニオンとして有する金属塩または金属錯体である。
【0026】
上記の文献(特許文献3)は明確に記載されており、その開示は参照によって援用され、特に上記箇所に開示された金属塩に関する開示は、本発明の開示の一部であると見なされる。
【0027】
金属イオンは、セラミックフレームワークの適切な着色を達成するのに十分な量で溶液中に含有される。
【0028】
例えば、約0.01〜約15.0重量%の範囲、好ましくは約0.1〜約10.0重量%の範囲、より好ましくは約0.1〜約7.0重量%の範囲の金属イオンの量で良好な結果を達成することができる。
【0029】
本発明の意味におけるポリエチレンオキシドまたはポリエチレンオキシドの誘導体は、一般に、主として−(CH2−CH2−O)−基を含むプレポリマーポリエーテルである。
【0030】
ポリエチレングリコールは、好ましくは、適切な量の上記の金属イオンを含有する溶媒中に溶解性または分散性でなければならない。
【0031】
市場において入手可能なこのような物質は、単純なポリエチレングリコールから、末端基が修飾されたポリエチレンオキシド、他のプレポリマー、好ましくはポリプロピレンオキシドおよびポリ−THFとのジ−、トリ−およびマルチブロックコポリマー、エチレンオキシドの重合のための出発材料としてモノ−、ジ−およびポリヒドロキシ化合物を用いる任意のタイプの末端基修飾種およびエトキシル化骨格まで、非常に様々である。
【0032】
使用されるポリエチレンオキシドは、好ましくは、式(1)
1O−(CH2−CH2−O)m−R1 (1)
(R1は、H、アシル、アルキル、アリール、アルキルアリール、ポリプロピルグリコール、ポリ−THFであり、好ましくはH、アセチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、オレイル、アリル、フェニル、p−アルキルフェニル、ポリプロピレングリコール、ポリ−THFであり、そしてmは約20〜約5000、好ましくは約200〜約2000、より好ましくは約400〜約1000である)、
または式(2)
2−[(OCH2−CH2n−OR1p (2)
(R2は任意の有機残基であり、エトキシル化のためのp個のアンカーポイントおよび約3〜約30個の炭素原子を有し、あるいはプロピレンオキシドまたはテトラヒドロフランのプレポリマー、好ましくはグリセリル(p=3)、TMP(トリメチロールプロパン−トリイル、p=3)、TME(トリメチロールエタン−トリイル、p=3)、ペンタエリトリトール−テトライル(p=4)、ジペンタエリトリトール−ヘキサイル(p=6)、BPA(ビスフェノール−A−ジイル、p=2)、ポリプロピレングリコール−ジイル(p=2)、およびポリテトラメチレングリコール−ジイル(p=2)であり、m=n*p=約20〜約5.000、好ましくは約200〜約2,000、より好ましくは約400〜約1,000であり、そしてp=2〜約10、好ましくは2〜約6である)
で表すことができる。
【0033】
Pおよびnは、物質中のエチレンオキシドの平均含量が、以下の式(3)
%エチレンオキシド=m*44.05*100/Mn(物質) (3)
に従って約50%を超えるか、あるいはそれに等しいような値に限定される。Mn(物質)は、使用されるそれぞれのポリエーテルオキシドまたはエトキシル化化合物の平均分子量である。
【0034】
単純なポリエチレングリコールは最も高い水溶解度を示すが、セグメント化誘導体は、必要に応じて、界面活性剤的な(tensidic)特性を加えることができる。
【0035】
ポリエチレンのほかに、ポリエチレンおよび誘導体の混合物を使用することもできる。
【0036】
上記のポリエチレンオキシドの好ましい例は、
ポリ−(エチレングリコール)−ブロック−ポリ−(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ−(エチレングリコール)(アルドリッチ(Aldrich)Art.−No.:54,234−2)Mn=14,600、82.5%エチレングリコール、
ポリエチレングリコール(VWR Art.No.:817008)M=10,000、ヒドロキシル数:9〜12、
ポリエチレングリコール(VWR Art No.:818892)M=35,000、ヒドロキシル数:3〜4、
グリセリン−エトキシレート(アルドリッチ Art.−No.:40,186−4)Mn=1,000、
ペンタエリトリットエトキシレート(15/4EO/OH)(アルドリッチ Art.−No.:41,873−0)Mn=797、
1,1,1−トリスヒドロキシメチル−プロパン−エトキシレート(20/3EO/OH)(アルドリッチ Art.−No.:41,617−7)Mn=1,104、
ポリエチレングリコールジメチルエーテル(アルドリッチ Art.−No.:44,590−8)Mn=約2,000、溶融範囲:52〜55℃、
ビスフェノールA−エトキシレート(15EO/フェノール)(アルドリッチ Art.No.:41,661−4)Mn=約1,500)、
ブリジ(Brij)(登録商標)700(アルドリッチ Art.No.:46−638−7)Mn=約4,670)である。
【0037】
本発明の着色溶液は溶媒も含む。溶媒は、好ましくは、使用される金属イオンを溶解させることができなければならない。典型的な溶媒は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソ−プロピルアルコール、n−プロピルアルコールのようなアルコール、アセトンのようなケトン、ならびに水とアルコールおよび/またはケトンおよび/またはエチレングリコールおよび/またはグリセリンとの混合物である。
【0038】
ポリエチレンオキシドの数平均分子量(Mn)は、約1,000〜約200,000の範囲、好ましくは約10,000〜約100,000の範囲、より好ましくは約20,000〜約50,000の範囲でなければならない。
【0039】
Mnが約500またはそれ以下の範囲であれば、使用されるポリエチレングリコールの含量は増大されるべきである。
【0040】
Mnが約200,000よりも大きければ、使用されるポリエチレングリコールは溶液中に十分に可溶性ではなく、均一な混合物を得ることは困難である。
【0041】
数平均分子量(Mn)は、例えば、(非特許文献1)に記載されるように、当業者に知られた手順に従って決定することができる。決定すべき分子量によっては、異なる測定方法を適用することが必要かもしれない(以下を参照)。
【0042】
一般に、ポリエチレンオキシドは、所望の効果が得られ、焼成後に得られるセラミックフレームワークが均等に着色されるような量で添加されるべきである。
【0043】
ポリエチレンオキシドは、着色溶液の約0.5〜約10重量%の範囲の量、好ましくは約1〜約8重量%の範囲の量、または約1〜約5重量%の範囲の量、または約4〜約8重量%の範囲の量で添加することができる。
【0044】
量が上記の範囲外であれば、達成される着色効果は、特に彩度に関して十分でないかもしれない。
【0045】
約10,000〜約50,000の範囲のMnを有するポリエチレンオキシドを、約4〜約8重量%の量で添加して、良好な結果を達成することができる。
【0046】
セラミックフレームワークの細孔の十分な湿潤および細孔への十分な浸透が達成されるように、使用される溶液は、好ましくは、適切な粘度を有するべきである。23℃でポリエチレングリコール水溶液(約6重量%のポリエチレングリコール35,000、Mn=14,000〜19,000)に相当する粘度を有する溶液を用いて、良好な結果を得ることができる。ポリエチレングリコール35,000は、メルク・シュハルト社(Merck Schuchardt OHG)、D−85662ホーエンブルン(Hohenbrunn)から入手可能である。
【0047】
溶液の粘度が高くなれば、色値は明るくなり得る。
【0048】
溶液の粘度が低くなれば、色値は均一でなくなり得る。
【0049】
メトキシフェノールヒドロキノン、トパノール(Topanol)A、アスコルビン酸などの安定剤、EDTA、NTA、クエン酸、乳酸などの錯体ビルダー、および一時バインダーなどのビーティング添加剤、アセテートまたはアミノ緩衝剤などの緩衝剤、および多糖類のようなチキソトロピー物質、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、カラギナン、ポリビニルピロリドンのように、更なる添加剤を着色溶液に添加することができる。
【0050】
また、本発明は、
セラミックフレームワークを提供するステップと、
上記のような溶液を提供するステップと、
b)に記載されるような溶液でセラミックフレームワークを処理するステップと、
処理されたセラミックフレームワークを任意で乾燥させるステップと、
処理されたセラミックフレームワークを焼成するステップと、
を含む方法にも関する。
【0051】
セラミックフレームワークの着色は、フレームワークを溶液中に浸漬させることにより達成することができる。しかしながら、吹付、ブラッシングによって、あるいはスポンジまたは布を用いて溶液をフレームワークに塗布することもできる。
【0052】
セラミックフレームワークは、通常、室温で約1〜約5分間、好ましくは約2〜約3分間、溶液により処理される。
【0053】
好ましくは、圧力は用いられない。
【0054】
着色されたセラミックフレームワークの乾燥は絶対的に必要なわけではないが、焼成に必要とされる時間を短縮し、そして好ましくない不均一な着色効果を避けるために好ましい。
【0055】
焼成条件は、使用されるセラミック材料に依存する。
【0056】
ZrO2系のセラミックでは、焼成は通常、約1300℃よりも高い温度、好ましくは約1400℃よりも高い温度、より好ましくは約1450℃よりも高い温度で行なわれ、少なくとも約0.5時間、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間持続される。
【0057】
Al23系のセラミックでは、焼成は通常、約1350℃よりも高い温度、好ましくは約1450℃よりも高い温度、より好ましくは約1650℃よりも高い温度で行なわれ、少なくとも約0.5時間、好ましくは少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間持続される。
【0058】
また本発明は、本発明の溶液で着色されたセラミックフレームワーク、および上記の方法で得ることができるセラミックフレームワークにも関する。
【0059】
本発明の着色溶液は、顔料のように表面にのみ色を付けるが大量には付けない有機着色剤または着色手段を必ずしも含まない。
【0060】
本発明は、実施例によって以下に説明される。
【実施例】
【0061】
1,000〜40,000の範囲の数平均分子量を有するポリエチレングリコールのMnの値を決定するために、以下の方法を使用することができる。
【0062】
装置としては、Pt−滴定電極(titrode)および高オーム参照電極を有するタイトロプロツェッサ(Titroprozessor)(TIP)が使用され、使用すべき化学薬品は、2NのKOH/メタノール、50.0mlのDMFに溶解された2.5mlの無水酢酸、100mlのDMFに溶解された2.5gの4−ジメチルアミノピリジン(触媒溶媒)、THF、H2Oである。すべての物質は無水(<0.01%の水)でなければならない。
【0063】
分析すべき特定の量の物質が容器内に入れられ、必要であれば暖められて20mlのTHFに溶解される。10.0mlの触媒溶媒および5.0mlの無水酢酸試薬の添加後、混合物は、室温で30分間、密封容器内で攪拌される。その後、2.0mlのH2Oが添加され、そして混合物は、室温でさらに10分間攪拌される。0.2NのKOH/メタノールを用いて滴定が行なわれる。3つのブランク値が決定されて、平均値を決定するために使用される。
【0064】
計算は次のように行なわれる。
【数1】

【数2】


IW=初期重量
BW=ブランク値
V=体積
F=標準滴定剤の濃度
M=56.11[g/mol]

Mn=56100/OH−数
Mn=OH−当量*分子中のOH基の数
【0065】
10,000〜200,000の範囲の数平均分子量を有するポリエチレングリコールでは、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用することができる。
【0066】
ポリマーは、移動相としてのテトラヒドロフラン(THF、p.a.、BHTで安定化される)に溶解され、次に、示差屈折率検出器を用いてSECにより分析される。ポリエチレングリコール(PEG)外部標準(8個のSEC標準、420〜108,000g/mol、例えばフルカ(Fluka)から)の回帰分析によって、分子量のキャラクタリゼーションが達成される。
【0067】
分析は、粒径5ミクロンのカラムSDV、8.0mm×30cm、10,000Å、500Åおよび100Åのカラム(独国マインツのPSSから)、ならびに粒径10ミクロンのプレカラムSDV、8.0×50mm、100Å(独国マインツのPSSから)と共に示差屈折計(屈折率検出器)および電子積分器(electronic integrator)を備え、長期にわたり一定の1.0ml/分の流れを与えることができる液体クロマトグラフにより行なわれる。流速は1.0ml/分でなければならない。
【0068】
独国マインツのPSSからのWinGPC、サイズ排除クロマトグラフィソフトウェアを使用して、得られたデータを分析することができる。
【0069】
全てのPEG標準についての平均保持時間が、全てのPEG標準のlog10MWと共に計算される。PEG分子量(MW)の校正曲線が作成され、平均保持時間がPEG標準のlog10MWに対してプロットされて、三次多項式の適合が得られる。相関係数(R2)は、>0.99でなければならない。SECソフトウェアを用いてPEGサンプルの分子量が計算される。ピークMW(MP)、重量平均MW(MW)、数平均MW(MN)、および多分散性(DP)の値を得ることができる。
【0070】
略語
h 高さ、2.3mm
w 幅、3.1mm
l 長さ、37.0mm
H 焼結変形を示す
A 試験片/ディスク、ディスクの厚さ1.5mm
B 測定領域
r 半径、3.0mm
d サンプル直径、15.0mm
c 中心
b1 境界1
b2 境界2
b3 境界3
b4 境界4
L 輝度(100=白、0=黒)
* 赤−緑軸
* 黄−青軸
【0071】
着色セラミックフレームワークの変形を評価するための試験を以下のように実施した。
【0072】
市販のLavaTM装置を用いて、LavaTMブリッジ(粉砕、染色および焼結)と同様に、棒形状のサンプル(寸法h**l:3**48[mm]、焼結前)を加工した。
【0073】
予備焼結したジルコニア(ブリッジのためのLavaTMフレームブランク)を粉砕し、その後、マイクロブラシおよび圧縮空気で粉塵を除去した。粉砕したサンプルをLavaTMフレームシェード染色液のうちの1つ(F5、F5*)の中に2分間浸漬させた。その後、過剰に付着した染色液を吸収紙で除去した。後部ブリッジのための2つのLavaTM焼結支持体(20mm直径)(湾曲した白金ワイヤ)上に各サンプルを置いた。サンプルの長さとワイヤ間の距離の割合はブリッジの焼結と同様であった。標準焼結プログラムを用いて、LavaTM加熱炉(Therm furnace)で焼成を行なった。
【0074】
焼結後、投影機を用いて、Hで示されるサンプルの変形を測定した。
【0075】
使用したフレームシェード溶液をFS5(ポリエチレングリコールを含有しない溶液)およびFS5*(ポリエチレングリコールを含有する溶液)と命名した。
【0076】
溶液FS5は、1.9重量%の金属イオン、1.5重量%の有機バインダーを含んでいた。溶液FS5*はさらに、6重量%のPEG(Mn=35,000)を含んでいた。
【0077】
【表1】

【0078】
上記の表1から、ポリエチレングリコールを含有しない着色溶液の代わりにポリエチレングリコールを含有する着色溶液を用いると、焼成後に測定される色付きテストバーの変形を低減できることが明らかになる。
【0079】
色付きジルコニアディスクの均一性
均一性を市販のハンター(Hunter)Labシステムを用いて決定し、DIN5033 Farbmessung Teil 1−8(Normvalenz−System、L***−Farbraum nach CIE、1976)、DIN6174 Farbmetrische Bestimmung von Farbabstaenden bei Koerperfarben nach der CIE−LAB−Formel、DIN55981(ISO787-25)FarbabstandsbestimmungΔE*に従って、製造業者の取扱説明書(Hunter Lab、Coorp.)に従う標準操作手順を用いて測定し、サンプル寸法、校正および測定手順を決定した。
【0080】
この測定システムに対する更なる暗示は、(特許文献5)の3頁、56行目〜4頁、6行目にも見出すことができ、これは参照によって援用される。
【0081】
使用したフレームシェード溶液は、FS4および6(ポリエチレングリコールを含有しない溶液)ならびにFS4*および6*(ポリエチレングリコールを含有する溶液)と命名される。
【0082】
溶液FS4は、5.0重量%の金属イオン、1.5重量%の有機バインダーを含んでいた。溶液FS4*はさらに、6.0重量%のPEG35,000(Mn=14,000〜19,000)を含んでいた。
【0083】
溶液FS6は、1.4重量%の金属イオン、1.5重量%の有機バインダーを含んでいた。溶液FS6*はさらに、6.0重量%のPEG35,000(Mn=14.000〜19,000)を含んでいた。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
【表5】

【0088】
【表6】

【0089】
【表7】

【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
上記表2〜8から、ポリエチレングリコールを含有しない着色溶液の代わりにポリエチレングリコールを含有する着色溶液を用いて、色付きディスクの均一性を改善できることが明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】着色セラミックフレームワークの焼成後の変形を評価するために使用される典型的なテストバーを示す。
【図2】着色方法の均一性の結果を評価するために使用される典型的なセラミックディスク(ジルコニア)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)金属塩と、
b)約1,000〜約200,000の範囲のMnを有するポリエチレングリコールと、
c)溶媒と、
d)任意に安定剤と、
を含む、セラミックフレームワークを着色するための溶液であって、
前記ポリエチレングリコールが、組成物全体の約0.5〜約10重量%の量で存在する溶液。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールが、23℃において、ポリエチレングリコール水溶液(6重量%のポリエチレングリコール35,000、Mn=14,000〜19,000)の粘度を有する請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記金属塩が、希土類元素および/または希土類元素のサブグループおよび/またはIIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族の遷移金属の塩から選択される請求項1または2に記載の溶液。
【請求項4】
前記金属塩が、組成物全体の約1〜約5.0重量%の量で存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項5】
前記溶媒が、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソ−プロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アセトン、グリコール、グリセリンを単独または混合物で含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項6】
a)セラミックフレームワークを提供するステップと、
b)請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶液を提供するステップと、
c)前記b)の溶液により前記セラミックフレームワークを処理するステップと、
d)前記処理されたセラミックフレームワークを任意で乾燥させるステップと、
e)前記処理されたセラミックフレームワークを焼成するステップと、
を含む、着色セラミックフレームワークを得るための方法。
【請求項7】
前記焼成が、約1300℃よりも高い温度で行なわれる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶液により処理されたセラミックフレームワーク。
【請求項9】
請求項6または7に記載の方法から得ることができるセラミックフレームワーク。
【請求項10】
ZrO2またはAl23を含む、請求項8または9に記載のセラミックフレームワーク。
【請求項11】
前記セラミックが予備焼結され、そして吸着性である請求項10に記載のセラミックフレームワーク。
【請求項12】
a)金属塩と、b)組成物全体の約0.5〜約10重量%の量のポリエチレングリコールと、c)溶媒とを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶液の使用。
【請求項13】
焼成中のセラミックフレームワークの焼結変形を低減するための、a)金属塩と、b)組成物全体の約0.5〜約10重量%の量のポリエチレングリコールと、c)溶媒とを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶液の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−527156(P2006−527156A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515864(P2006−515864)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006220
【国際公開番号】WO2004/110959
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(504169278)スリーエム イーエスピーイー アーゲー (43)
【Fターム(参考)】