説明

均等分配方法およびそれに使用する装置

【目的】 1つの容器に供給物を一括して仕込むだけで、該供給物を高精度で分配し、各供給場所に供給することができる装置を提供する。
【構成】 回転体1の回転軸と分配容器20の中心軸とが同一軸上に配置され、前記分配容器20の円筒状周壁22または上蓋21に複数の吐出口7が円周方向に配置されてなる均等分配装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回転により発生する遠心力で容器の外周に、液体、粉体または顆粒状体などの供給物を均一に押し出して均等分配物をうる方法およびそれに使用する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、遠心力を利用する供給装置としては、中空糸膜を製造するポッティング装置などが知られている。該ポッティング装置はポッティング用金型およびポッティング剤の仕込み容器などから構成されており、必要量のポッティング剤を計量して容器に仕込んだあと、遠心力により前記ポッティング剤を金型内に充填させるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のポッティング装置においては、ポッティングに応じた数の仕込み容器が必要であり、それにともない複数回の計量および仕込みが必要となり、作業能率の点からも好ましくない。量産装置においては、1台につき20〜100 本またはそれ以上の容器、およびそれにともなう計量、仕込みが必要となり、装置が複雑化するうえ、仕込み時間が長くなり、ポッティング剤の硬化が進みすぎるなどの問題があった。
【0004】また、遠心力を利用する従来例としては、前記中空糸膜の製造のほかに、円筒状コンクリート管の製造や金型成形などがあるが、これらも前記ポッティング装置のばあいと同様の問題があった。
【0005】本発明は、前記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、1つの容器に供給物を一括して仕込むだけで、該供給物を高精度で分配し、各供給場所に供給することができる方法およびそれに使用する装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】容器をその中心軸を回転軸として回転させると、容器内に遠心力が働いて容器内の物質は外周に向かって押し出される。その際、回転軸が偏心していなければ、容器内の物質は均一に分散されることが知られている。さらに、遠心力を増加させると、外周に向かって押し出された物質は重力に打ち勝ち、その界面は鉛直に近づく。すなわち、外周に向かって押し出された物質の容器周壁に対する厚さが、すべての場所において一定であるような状態に近づく。本発明はこの原理を応用し、一括して仕込んだ物質を均等に分配し、かつ供給する方法およびそれに使用する装置である。
【0007】すなわち、本発明により、液体、粉体または顆粒状体などの供給物を、複数の吐出口がその円周方向に形成された円筒状容器に入れ、該円筒状容器をその中心軸を回転軸として回転させ、遠心力によって前記供給物を均等に分配する均等分配方法が提供される。
【0008】さらに本発明により、上蓋、円筒状周壁および底蓋からなる分配容器と回転体とからなる均等分配装置であって、前記回転体の回転軸と前記分配容器の中心軸とが同一軸上に配置されており、かつ前記分配容器の周壁または上蓋に、均等に分配された前記供給物を取り出すための複数の吐出口が円周方向に配置されてなる均等分配装置が提供される。
【0009】本発明の装置においては、前記供給物を入れたときの界面の前記分配容器底面からの高さよりも高い位置に、前記吐出口が形成されているものが好ましく、さらに、前記分配容器の周壁の内面に、じゃま板を設けてなるものが好ましい。
【0010】前記じゃま板は、前記周壁の内面に対するその高さが、前記供給物が遠心力によって前記周壁に向かって付勢されたときに該供給物を隔離しうる高さであり、かつ容器中心軸付近では開放されている、すなわち、前記じゃま板により形成される各部屋が容器中心軸付近では互いに連通するように構成されていることが好ましい。
【0011】
【作用】本発明の方法および装置によれば、1つの容器に供給物を一括して仕込むだけで、均等に分配された該供給物を各供給場所に供給することができ、供給物の計量および仕込みが1回で済む。
【0012】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて以下に説明する。
【0013】図1は、回転体と分配容器からなる、本発明の装置の要部斜視図であり、1は回転体を示し、20は供給物3を均等分配する分配容器を示す。該分配容器の中心軸は回転体1の回転軸と同軸上に位置する。
【0014】図2、3および4は、図1における分配容器20の各種実施例を示しており、該分配容器20は上蓋21、円筒状周壁22および底蓋23からなる。分配容器20には目的とする分配数に応じた数の吐出口7が形成されているが、ここでは簡単のために吐出口7が4つのばあいについて図示している。
【0015】図2は本発明における分配容器の基本的な形式を示している。円筒状の分配容器20の周壁22には、該容器20によって分配された材料を別途用意した容器へ供給するための吐出口7が形成されている。10は供給物3を容器内に注入するための供給口を示す。吐出口7から供給場所へのチューブまたは配管はもちろん、目的物に塗布する方法などは本発明においてとくに限定されるものではなく、通常用いられるチューブなどを用いることができる。
【0016】図3に示される分配容器20は、図2の分配容器に、じゃま板6を設けたもので、これにより、必要な分配数に応じた数の部屋を隔離形成している。このようにじゃま板6で区画された部屋を設けることにより、たとえ吐出口7の内、供給抵抗にムラが生じても、他の吐出口へ集中して供給されるような事がふせげるなどの利点がある。
【0017】吐出口7は周壁22以外の場所に形成されてもよく、図4の分配容器20においては上蓋21に吐出口7が形成されている。
【0018】つぎに図3に示される分配容器を例にとり、本発明の装置の操作について説明する。まず、供給物3を計量して、上蓋21の中心部の供給口10より分配容器20内に投入する。このとき、分配容器20の周壁22に形成された吐出口7を、投入が完了したあとにおける供給物3の界面よりも高い位置に形成しておけば、供給物3が投入と同時に吐出口7から供給されることはない。なお、供給物3をその投入と同時に供給したいばあいには吐出口7の形成位置を前記界面よりも低い位置に形成すればよい。
【0019】供給物3の投入が完了したあと、回転体1を回転させる。回転体1の回転軸とそこにセットされた分配容器20の中心軸とは同一軸上に配置されているので、分配容器20はその中心軸を回転軸として回転し、回転数の増加にともない遠心力が増加する。このときの供給物3の状態の変化を図5〜8に示す。
【0020】図5においては、分配容器20はまだ回転しておらず、供給物3の界面は水平な状態にある。
【0021】図6は、遠心力が弱い段階を示しており、分離されるべき供給物3がまだ、じゃま板6の開放部分、つまり、じゃま板により隔離された各部屋の連通部分に存在している。
【0022】図7は、遠心力がやや増加した状態を示す。供給物3は、じゃま板6で隔離された各部屋に押し込まれているが、その上端部はまだ吐出口7には達しておらず、吐出口7からの供給物3の流出はない。
【0023】均一分散された供給物3は、図6から図7にいたる工程において、じゃま板6により完全に分離される。
【0024】図8は、さらに遠心力が増加した状態を示し、供給物3が吐出口7より流出し、供給されている。
【0025】図9は、本発明の均等分配装置の全体斜視図を示している。吐出口7より流出した、均等に分配された供給物3はチューブ8を通過して受け容器9に導入される。
【0026】実施例1直径200mm 、高さ100mm の分配容器に、容器の中心軸を中心とする直径150mmの領域が開放された状態で、じゃま板を形成し、さらに容器底面より85mmの高さにおける円周上に、直径10mmの吐出口を10個形成した。この分配容器に1cpの粘度を有する液体1000g (比重:1.00)を仕込み、吐出口にはチューブを接続して末端には計量可能な受け容器を設置した。
【0027】回転体を200rpmで回転させ、容器内の液体に遠心力を与えて分配し、吐出させた。
【0028】分配容器内の液体がすべて吐出されたあと、チューブ末端の受け容器内の液体を計量したところ、10個の各受け容器内の液体の量は、すべて100 ±0.5gの範囲内であった。すなわち誤差0.5 %の精度で正確に分配されていた。
【0029】このときの回転立上げ速度は200rpm/5秒であり、仕込みから供給終了までに要した時間は30秒であった。
【0030】実施例2直径200mm 、高さ100mm の分配容器に、容器の中心軸を中心とする直径150mmの領域が開放された状態で、じゃま板を形成し、さらに容器底面より85mmの高さにおける円周上に、直径10mmの吐出口を10個形成した。この分配容器に8000cpの粘度を有する液体1000g (比重:1.07)を仕込み、吐出口にはチューブを接続して末端には計量可能な受け容器を設置した。
【0031】回転体を200rpmで回転させ、容器内の液体に遠心力を与えて分配し、吐出させた。
【0032】分配容器内の液体がすべて吐出されたあと、チューブ末端の受け容器内の液体を計量したところ、10個の各受け容器内の液体の量は、すべて100 ±1g の範囲内であった。すなわち誤差1%の精度で正確に分配されていた。
【0033】このときの回転立上げ速度は200rpm/5秒であり、仕込みから供給終了までに要した時間は130 秒であった。
【0034】
【発明の効果】本発明の方法および装置によれば、供給物の分配数に関わらず、1回の計量および仕込みによって、供給物の分配を行うことができ、しかも高精度の分配が可能になる。さらに、設備の簡素化、コストの低減、および仕込み作業の簡易化による作業工数の低減が達成されうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の均等分配装置の一実施例の要部斜視図である。
【図2】本発明の均等分配装置における分配容器の基本的な形式を示す説明図である。
【図3】じゃま板を設けた分配容器を示す説明図である。
【図4】吐出口を上蓋に配置した分配容器を示す説明図である。
【図5】回転中の分配容器内の供給物の状態を説明する説明図である。
【図6】回転中の分配容器内の供給物の状態を説明する説明図である。
【図7】回転中の分配容器内の供給物の状態を説明する説明図である。
【図8】回転中の分配容器内の供給物の状態を説明する説明図である。
【図9】本発明の均等分配装置の一実施例の全体斜視図である。
【符号の説明】
1 回転体
20 分配容器
3 供給物
6 じゃま板
7 吐出口
10 供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】 供給物を、複数の吐出口がその円周方向に形成された円筒状容器に入れ、該円筒状容器をその中心軸を回転軸として回転させ、遠心力によって前記供給物を均等に分配する均等分配方法。
【請求項2】 上蓋、円筒状周壁および底蓋からなる分配容器と回転体とからなる均等分配装置であって、前記回転体の回転軸と前記分配容器の中心軸とが同一軸上に配置されており、かつ前記分配容器の周壁または上蓋に複数の吐出口が円周方向に配置されてなる均等分配装置。
【請求項3】 前記供給物を入れたときの界面の前記分配容器底面からの高さよりも高い位置に、前記吐出口が形成されてなる請求項2記載の均等分配装置。
【請求項4】 前記分配容器の周壁の内面に、じゃま板が設けられてなる請求項2または3記載の均等分配装置。
【請求項5】 前記仕切り板が、前記周壁の内面に対するその高さが、前記供給物が遠心力によって前記周壁に向かって付勢されたときに該供給物を隔離しうる高さであり、かつ容器中心軸付近では開放されるように構成されてなる請求項4記載の均等分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開平5−138004
【公開日】平成5年(1993)6月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−300394
【出願日】平成3年(1991)11月15日
【出願人】(000000941)鐘淵化学工業株式会社 (3,932)