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坑口の止水構造及びシールド機の進行方法
説明

坑口の止水構造及びシールド機の進行方法

【課題】シールド機の上段のカッター部が空間から地山へ又は地山から空間へ進入する際に、上段のカッター部の下面と坑口との間の隙間から流出する地下水を止水する止水構造及びその止水構造箇所の進行方法を提供する。
【解決手段】坑口3の止水構造2は、坑口3の周縁部に沿って土留め壁1に取り付けられた第一の止水手段7と、第一の止水手段7の内方に設けられた第二の止水手段10とを備える。第一の止水手段7は、環状に形成された第一の止水材8と、第一の止水材8よりも空間6側に設けられた第一のバックアップ材9とから構成される。第二の止水手段10は、両端が第一の止水材8の内周縁部に接続された第二の止水材11と、第二の止水材11よりも空間6側に設けられた第二のバックアップ材12とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機の発進時及び到達時における坑口の止水構造及びシールド機の進行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路等をアンダーパスするシールド機に関して、本出願人は、例えば、特許文献1において、互いに独立して前進及び後進可能な複数の主シールドを縦横に所定の配列で組み合わせ、各々の主シールドを独立して掘進させて地山を掘削するシールド機を開示している。このシールド機でトンネルを掘削する際は、まず、複数の主シールドのうちの最上段の外側に位置する主シールドを先に掘進させ、次に、その内側に位置する主シールドを掘進させて最上段の主シールドをすべて突出し、それから、下段の主シールドを掘進させる。
【0003】
また、特許文献2には、カッター部が上段及び下段に分割されたシールド機を、その上段のカッター部を下段のカッター部よりも進行方向に突出させた状態で推進させる方法が開示されている。この方法は、下段のカッター部の上部が地表面よりも上に露出する程度の深さの立坑内にシールド機を傾斜させた状態で設置し、発進とともに、まず、下段のカッター部で立坑の土留め壁を掘削し、その後、上段及び下段のカッター部で地山を掘削しつつ、地山内を掘進する。
【特許文献1】特開2006−46061号公報
【特許文献2】特開2006−207141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているシールド機では、複数の主シールド毎にジャッキ等の推進装置やスクリューコンベア等の排土装置が設置されているので、シールド機の前部の重量が重くなって、推進時における線形制御が難しい。また、小土被り区間を掘削する際は、土被りが浅いので線形制御に多少のずれが生じるとすぐに地上に影響を与えてしまうという問題点があった。
【0005】
また、特許文献2に記載のシールド機の推進方法では、シールド機の上段のカッター部が地山内に進入する際の土被り厚はほとんど無い。したがって、土被り部分の自重は、シールド機の地山内への進入に伴って地山とシールド機との間に生じる摩擦力よりも小さいので、シールド機の上段のカッター部が地山内に進入する際に、シールド機の進行方向に土被り部分が引っ張られて盛り上がり、地山を傷めてしまうという問題点があった。
【0006】
これに対し、本出願人は、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部は、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に所定の長さだけ突出するように固定配置されているシールド機を提案している(特願2008−93221)。このシールド機を用いることにより、地山内に進入する際に、シールド機の進行方向に土被り部分が引っ張られて盛り上がり、地山を傷めてしまうという問題を解決することができる。
【0007】
このシールド機を立坑や明かり等の空間から地山へ向かって発進させる際は、上段のカッター部及び下段のカッター部のカッターヘッドを回転駆動させるとともに、シールドジャッキを伸張させることによりシールド機本体を進行させて、まず、進行方向に位置する地山を上段のカッター部のカッターヘッドで掘削しつつ、地山内にシールド機を進入させる。上段のカッター部が地山内に進入したら、シールド機本体を進行させて、次に、下段のカッター部のカッターヘッドで地山を掘削しつつ、地山内にシールド機本体を進入させる。
【0008】
一方、このシールド機を地山から立坑や明かり等の空間内に到達させる際は、上段のカッター部及び下段のカッター部のカッターヘッドを回転駆動させるとともに、シールドジャッキを伸張させることによりシールド機本体を進行させて、まず、上段のカッター部を空間内に進入させる。上段のカッター部が空間内に進入したら、シールド機本体を進行させて、次に、下段のカッター部のカッターヘッドで地山を掘削しつつ、空間内にシールド機本体を進入させる。
【0009】
本出願人が、特願2008−93221にて提案したシールド機が空間から地山へ又は地山から空間へ進入する際に、シールド機本体の周囲は止水材で囲まれているので、シールド機本体と坑口との間の隙間から地下水が空間へ流入することは無い。しかしながら、土被りの厚い立坑や空間にシールド機を到達又は発進させる場合に、上段のカッター部が下段のカッター部よりも突出しているので、上段のカッター部のみが空間から地山へ又は地山から空間へ進入する際には、上段のカッター部の下面と坑口との間の隙間から地下水が流出してしまうという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであって、シールド機の上段のカッター部が空間から地山へ又は地山から空間へ進入する際に、上段のカッター部の下面と坑口との間の隙間から流出する地下水を止水する止水構造及びその止水構造箇所の進行方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部が、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されているシールド機を空間から地山へ又は地山から空間へ進入させるために土留め壁に開口された坑口の止水構造であって、環状で、その内寸は前記シールド機の外形よりも小さく、外寸は前記シールド機の外形よりも大きく形成され、その外周部が前記坑口の周縁部に沿って前記土留め壁に取り付けられる第一の止水材と、前記第一の止水材の内方で、前記シールド機が前記坑口を通過する際の前記上段のカッター部と前記下段のカッター部との境界部分に対応する高さ位置の前記土留め壁に取り付けられるとともに、その両端が前記第一の止水材に接続される帯状の第二の止水材と、前記第一の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第一の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する環状の第一のバックアップ材と、前記第二の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第二の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する帯状の第二のバックアップ材とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の坑口の止水構造によれば、第一の止水材及び第一のバックアップ材を備えているので、シールド機本体と土留め壁に開口された坑口との間の隙間を通過する地下水を止水することができる。また、第二の止水材及び第二のバックアップ材を備えているので、シールド機の上段のカッター部の下面と土留め壁に開口された坑口との間の隙間を通過する地下水を止水することができる。したがって、地下水が空間に流入するのを防止できる。
【0013】
さらに、隙間を通過した被圧地下水の圧力が第一及び第二の止水材に作用しても、第一のバックアップ材及び第二のバックアップ材を備えているので、これらのバックアップ材が第一及び第二の止水材を支持してその圧力を負担する。したがって、第一及び第二の止水材が被圧地下水の圧力によって破断することは無く、確実に止水性を保持できる。
【0014】
本発明において、前記第二の止水材及び前記第二のバックアップ材は、前記土留め壁に脱着可能であることとしてもよい。
【0015】
本発明によれば、シールド機の下段のカッター部が通過する際には、第二の止水材及び第二のバックアップ材を取り外すことができる。したがって、第二の止水材及び第二のバックアップ材を再利用することができる。
【0016】
本発明のシールド機の進行方法は、環状で、その内寸は前記シールド機の外形よりも小さく、外寸は前記シールド機の外形よりも大きく形成され、その外周部が前記坑口の周縁部に沿って前記土留め壁に取り付けられた第一の止水材と、前記第一の止水材の内方で、前記シールド機の前記上段のカッター部と前記下段のカッター部との境界部分に対応する高さ位置の前記土留め壁に取り付けられるとともに、その両端が前記第一の止水材に接続された帯状の第二の止水材と、前記第一の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第一の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する環状の第一のバックアップ材と、前記第二の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第二の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する帯状の第二のバックアップ材とからなる止水手段を備えた土留め壁を、空間から地山へ向かって又は地山から空間へ向かって、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部が、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されているシールド機が通過する際の進行方法において、前記上段のカッター部を前記第一の止水材と前記第二の止水材との間に進行させて、前記上段のカッター部の周囲を前記第一の止水材及び前記第二の止水材で止水するとともに、前記第一のバックアップ材及び第二のバックアップ材でそれらをそれぞれ支持し、前記シールド機の前記下段のカッター部が前記土留め壁の直前に到達したら、前記シールド機を停止し、前記第二の止水材及び前記第二のバックアップ材を取り外し、前記第一の止水材の内側に前記シールド機全体を進行させて、前記シールド機全体の周囲を前記第一の止水材で止水するとともに、前記第一のバックアップ材でそれを支持することを特徴とする。
【0017】
本発明のシールド機の進行方法によれば、第一の止水材、第一のバックアップ材、第二の止水材及び第二のバックアップ材で上段のカッター部の周囲を止水しながらシールド機を進行させるので、地下水が空間に流入することを防止できる。
【0018】
また、下段のカッター部が地山へ進入する際は、第一の止水材及び第一のバックアップ材でシールド機本体の周囲を止水しながらシールド機を進行させるので、地下水が空間に流入することを防止できる。
【0019】
さらに、シールド機と坑口との間の隙間を通過した被圧地下水の圧力が第一及び第二の止水材に作用しても、第一のバックアップ材及び第二のバックアップ材を備えているので、これらのバックアップ材が第一及び第二の止水材を支持してその圧力を負担する。したがって、第一及び第二の止水材が被圧地下水の圧力によって破断することは無く、確実に止水性を保持できる。
【0020】
そして、シールド機の下段のカッター部が土留め壁の直前に到達したら、第二の止水材及び第二のバックアップ材を取り外すので、第二の止水材及び第二のバックアップ材を再利用することができる。
【0021】
本発明のシールド機の進行方法は、環状で、その内寸は前記シールド機の外形よりも小さく、外寸は前記シールド機の外形よりも大きく形成され、その外周部が前記坑口の周縁部に沿って前記土留め壁に取り付けられた第一の止水材と、前記第一の止水材の内方で、前記シールド機の前記上段のカッター部と前記下段のカッター部との境界部分に対応する高さ位置の前記土留め壁に取り付けられるとともに、その両端が前記第一の止水材に接続された帯状の第二の止水材と、前記第一の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第一の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する環状の第一のバックアップ材と、前記第二の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第二の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する帯状の第二のバックアップ材とからなる止水手段を備えた土留め壁を、空間から地山へ向かって又は地山から空間へ向かって、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部が、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されているシールド機が通過する際の進行方法において、前記上段のカッター部を前記第一の止水材と前記第二の止水材との間に進行させて、前記上段のカッター部の周囲を前記第一の止水材及び前記第二の止水材で止水するとともに、前記第一のバックアップ材及び第二のバックアップ材でそれらをそれぞれ支持し、前記シールド機の前記下段のカッター部が前記土留め壁の直前に到達したら、前記下段のカッター部を回転し、前記下段のカッター部で前記第二の止水材及び前記第二のバックアップ材を破砕しながら、前記第一の止水材の内側に前記シールド機全体を進行させて、前記シールド機全体の周囲を前記第一の止水材で止水するとともに、前記第一のバックアップ材でそれを支持することを特徴とする。
【0022】
本発明のシールド機の進行方法によれば、第一の止水材、第一のバックアップ材、第二の止水材及び第二のバックアップ材で上段のカッター部の周囲を止水しながらシールド機を進行させるので、地下水が空間に流入することを防止できる。
【0023】
また、下段のカッター部が地山へ進入する際は、第一の止水材及び第一のバックアップ材でシールド機本体の周囲を止水しながらシールド機を進行させるので、地下水が空間に流入することを防止できる。
【0024】
さらに、シールド機と坑口との間の隙間を通過した被圧地下水の圧力が第一及び第二の止水材に作用しても、第一のバックアップ材及び第二のバックアップ材を備えているので、これらのバックアップ材が第一及び第二の止水材を支持してその圧力を負担する。したがって、第一及び第二の止水材が被圧地下水の圧力によって破断することは無く、確実に止水性を保持できる。
【0025】
そして、シールド機の下段のカッター部が土留め壁を通過する際には、第二の止水材及び第二のバックアップ材を取り付けたままシールド機を進行させるので、上段のカッター部の下面と坑口との間の隙間を止水し続けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シールド機の上段のカッター部が空間から地山へ又は地山から空間へ進入する際に、上段のカッター部の下面と坑口との間を確実に止水することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、明かりから土留め壁を貫通して地山内へ発進する場合及び地山内から土留め壁を貫通して明かりに到達する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、立坑内から地山へ発進したり、地山内から立坑へ到達する場合等にも適用可能である。また、予め坑口の上半分が土留め壁に開口されており、シールド機の進行とともに、坑口の下半分を開口する(すなわち、土留め壁を掘削する)場合について説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る坑口3の上半分3aが開口された土留め壁1に止水構造2を設置した状態を示す鉛直断面図である。また、図2及び図3は、それぞれ図1のa部拡大図、B矢視図である。
図1〜図3に示すように、止水構造2は、坑口3とシールド機4との間の隙間5(図8参照)から明かりである空間6へ地下水が流入することを防止するものである。
【0029】
止水構造2は、既に開口された上半分3a及び開口予定の下半分3bとからなる坑口3の周縁部に沿って土留め壁1に取り付けられた第一の止水手段7と、第一の止水手段7の内方に略水平に設けられ、その両端が第一の止水手段7の内周に接続された第二の止水手段10とを備える。
【0030】
第一の止水手段7は、環状で、その内寸がシールド機4の外形よりも小さく、外寸がシールド機4の外形よりも大きくなるように形成された第一の止水材8と、第一の止水材8よりも空間6側に設けられ、第一の止水材8よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する第一のバックアップ材9とから構成される。
【0031】
第一の止水材8は、その外周側縁部が坑口3の周端部に沿って土留め壁1に固定されている。外周側縁部には、接着剤が塗布されることで土留め壁1に密着している。第一の止水材8は、例えば、ゴム製の止水シートであり、シールド機4の進行に追随して進行方向へ変形可能である。
【0032】
第一のバックアップ材9は、第一の止水材8を覆うように環状に取り付けられる。第一のバックアップ材9は、例えば、鋼板であり、第一の止水材8と同様に、シールド機4の進行に追随して進行方向へ変形可能である。また、第一のバックアップ材9は、高い剛性を有しているため、隙間5を通過した被圧地下水の圧力が第一の止水材8に作用しても、第一の止水材8を支持してその圧力を負担する。
【0033】
第二の止水手段10は、シールド機4(後述する)が坑口3を通過する際の上段のカッター部13と下段のカッター部14との境界部分に対応する高さ位置に設けられる。この第二の止水手段10は、両端が第一の止水材8の内周縁部に接続され、下側縁部が土留め壁1に取り付けられた帯状の第二の止水材11と、第二の止水材11よりも空間6側に設けられ、第二の止水材11よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する第二のバックアップ材12とから構成される。
【0034】
第二の止水材11は、第一の止水材8と同様に、例えば、ゴム製の止水シートであり、シールド機4の進行に追随して進行方向へ変形可能である。
【0035】
第二のバックアップ材12は、第二の止水材11を覆うように帯状に取り付けられる。第二のバックアップ材12は、第一のバックアップ材9と同様に、例えば、鋼板であり、シールド機4の進行に追随して進行方向へ変形可能である。また、第二のバックアップ材12は、高い剛性を有しているため、隙間5を通過した被圧地下水の圧力が第二の止水材11に作用しても、第二の止水材11を支持してその圧力を負担する。
【0036】
以下に、シールド機4の発進方法及び到達方法について説明する。まず、最初に本発明で使用するシールド機4について説明する。
【0037】
図4及び図5は、それぞれ本実施形態に係るシールド機4の正面図及び側断面図である。
図4及び図5に示すように、シールド機4は、互いに独立して駆動可能なカッター部13、14をそれぞれ上段及び下段に備えたフード部15と、シールド機4本体を進行させるためのシールドジャッキ16等を備えたガーダ部17と、セグメント23を組み立てるエレクタ18等を備えたテール部19とから構成されている。
【0038】
上段のカッター部13及び下段のカッター部14は、シールド機4本体の前面に設けられ、地山Eを掘削するためのカッターヘッド20と、カッターヘッド20を回転させるための駆動源21とを備えており、各カッター部は、それぞれ独立して駆動可能である。
【0039】
上段のカッター部13は、シールド機4本体内に、下段のカッター部14よりも進行方向に所定の長さだけ突出するように配置されている。
【0040】
ガーダ部17には、各カッター部13、14で掘削した土砂を排出するためのスクリューコンベア22等が設置されている。
【0041】
次に、このシールド機4を用いた発進方法及び到達方法について、この順に説明する。なお、以下の説明では、発進時に利用する明かりを発進空間6aという。この発進空間6aは、シールド機4の発進位置であって、シールド機4の発進作業を行うための作業領域として使用される。坑口3の上半分3aは、シールド機4の上段のカッター部13が進入できるように、予め開口されているため、下段のカッター部14で土留め壁1を掘削して坑口3の下半分3bを形成しながら地山E内に進入する場合について説明する。
【0042】
図6は、発進空間6aにシールド機4を設置した状態を示す側断面図である。
図6に示すように、発進空間6aの底盤に掘削予定のトンネル24の傾斜角度に沿った架台25と、シールド機4の発進の際に反力を得るための反力壁26とを構築する。そして、シールド機4を架台25上に設置する。
【0043】
図7〜図9は、シールド機4の発進方法を示す図である。
図7に示すように、シールド機4本体を進行させて、進行方向に位置する第一の止水手段7と第二の止水手段10との間に上段のカッター部13を進入させる。
そして、図8に示すように、上段のカッター部13が進入すると、第一の止水材8、第二の止水材11、第一のバックアップ材9及び第二のバックアップ材12はシールド機4の進行方向に変形して、上段のカッター部13の外周面に密着することにより、上段のカッター部13と土留め壁1との間の隙間5を地下水が通過しても、両止水材8、11により、地下水が発進空間6a内に流入するのを防止できる。また、両止水材8、11に被圧地下水の圧力が作用しても、各バックアップ材9、12がそれぞれ各止水材8、11を支持してその圧力を負担するので、確実に止水できる。
【0044】
こうして、上段のカッター部13の周囲を両止水手段7、10で止水しながら、シールド機4を進行させる。そして、下段のカッター部14が土留め壁1の直前に到達したらシールド機4を停止して、第二の止水手段10を取り外す。
【0045】
次に、図9に示すように、上段のカッター部13及び下段のカッター部14のカッターヘッド20を回転駆動させるとともに、シールド機4本体を進行させて、進行方向に位置する土留め壁1を下段のカッター部14のカッターヘッド20で掘削し、下半分3bを開口する。
【0046】
シールド機4が土留め壁1を掘削しつつ、第一の止水手段7内に進入すると、下段のカッター部14に接する第一の止水材8及び第一のバックアップ材9がシールド機4の進行方向に変形して、シールド機4本体の外周面に密着することにより、シールド機4本体と土留め壁1との間の隙間5を地下水が通過しても、第一の止水材8により、地下水が発進空間6a内に流入するのを防止できる。また、第一の止水材8に被圧地下水の圧力が作用しても、第一のバックアップ材9が第一の止水材8を支持してその圧力を負担するので、確実に止水できる。
【0047】
こうして、シールド機4本体の周囲を第一の止水手段7で止水しながら、地山E内にシールド機4本体を進入させる。
【0048】
その後、上段のカッター部13及び下段のカッター部14のカッターヘッド20を回転駆動させて所定の距離だけ掘進してからセグメント23を構築するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、発進空間6aから地山E内にシールド機4全体を進入させる。
【0049】
次に、シールド機4の到達方法について説明する。
図10〜図13は、シールド機4の到達方法を示す図である。図10に示すように、以下の説明では、到達時に利用する明かりを到達空間6bという。この到達空間6bは、シールド機4の到達位置であって、シールド機4の到達作業を行うための作業領域として使用される。坑口3の上半分3aは、シールド機4の上段のカッター部13が進入できるように、予め開口されているため、下段のカッター部14で土留め壁1を掘削して坑口3の下半分3bを形成しながら到達空間6b内に進入する場合について説明する。
【0050】
地山E内で上段のカッター部13及び下段のカッター部14のカッターヘッド20を回転駆動させるとともに、シールド機4本体を到達空間6b側へ進行させる。そして、上段のカッター部13が、坑口3の上半分3aが内に到達したら、上段のカッター部13のカッターヘッド20の回転を停止する。
【0051】
そして、図11に示すように、上段のカッター部13のカッターヘッド20は停止したまま、下段のカッター部14のカッターヘッド20のみを回転させて地山Eを掘削しつつ、第一の止水手段7と第二の止水手段10との間に上段のカッター部13を進入させる。
【0052】
上段のカッター部13が進入すると、第一の止水材8、第二の止水材11、第一のバックアップ材9及び第二のバックアップ材12はシールド機4の進行方向に変形して、上段のカッター部13の外周面に密着することにより、上段のカッター部13と土留め壁1との間の隙間5を地下水が通過しても、両止水材8、11により、地下水が到達空間6b内に流入するのを防止できる。また、両止水材8、11に被圧地下水の圧力が作用しても、各バックアップ材9、12がそれぞれ各止水材8、11を支持してその圧力を負担するので、確実に止水できる。
【0053】
こうして、上段のカッター部13の周囲を両止水手段7、10で止水しながら、シールド機4を進行させる。そして、下段のカッター部14が土留め壁1の直前に到達したら、シールド機4の進行を停止する。
【0054】
次に、図12に示すように、シールド機4を停止したら、第二の止水手段10を取り外す。そして、再び、下段のカッター部14のカッターヘッド20を回転駆動させるとともに、シールド機4本体を進行させて、進行方向に位置する土留め壁1を下段のカッター部14のカッターヘッド20で掘削し、下半分3bを開口する。
【0055】
その後、図13に示すように、シールド機4全体が第一の止水手段7内に進入すると、下段のカッター部14に接する第一の止水材8及び第一のバックアップ材9がシールド機4の進行方向に変形して、シールド機4本体の外周面に密着することにより、シールド機4本体と土留め壁1との間の隙間5を地下水が通過しても、第一の止水材8により、地下水が到達空間6b内に流入するのを防止できる。また、第一の止水材8に被圧地下水の圧力が作用しても、第一のバックアップ材9が第一の止水材8を支持してその圧力を負担するので、確実に止水できる。
【0056】
こうして、シールド機4本体の周囲を第一の止水手段7で止水しながら、到達空間6bにシールド機4本体を進入させる。
【0057】
上述した本実施形態における止水構造2によれば、シールド機4の上段のカッター部13が発進空間6aから地山E内へ又は地山E内から到達空間6bへ進入する際は、上段のカッター部13の上面及び左右面と土留め壁1との間を第一の止水手段7で止水し、上段のカッター部13の下面と土留め壁1との間を第二の止水手段10で止水するので、上段のカッター部13と土留め壁1との間の隙間5を通過した地下水が発進空間6a内及び到達空間6b内に流入するのを防止できる。
【0058】
また、シールド機4全体が発進空間6aから地山E内へ又は地山E内から到達空間6bへ進入する際は、シールド機4の外殻を第一の止水手段7で止水するので、シールド機4本体と土留め壁1との間の隙間5を通過した地下水が発進空間6a内又は到達空間6bに流入するのを防止できる。
【0059】
さらに、上段のカッター部13と土留め壁1との間の隙間5やシールド機4本体と土留め壁1との間の隙間5を通過した被圧地下水の圧力が第一の止水材8や第二の止水材11に作用しても、各バックアップ材9、12がそれぞれ各止水材8、11を支持してその圧力を負担するので、確実に止水できる。
【0060】
そして、両バックアップ材9、12の鋼板や両止水材8、11のゴム製の止水シートは、一般的な材料なので、入手性に優れている。
【0061】
また、シールド機4の下段のカッター部14で土留め壁1を掘削する際は、第二の止水材11及び第二のバックアップ材12を取り外すので、第二の止水材11及び第二のバックアップ材12を再利用することができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、予め坑口3の上半分3aが開口されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、開口されていない場合にも適用可能である。
【0063】
なお、本実施形態においては、下段のカッター部14で土留め壁1を掘削する際に、第二の止水手段10を取り外す場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第二の止水手段10を土留め壁1と一緒に掘削してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る坑口の止水構造の鉛直断面図である。
【図2】図1のa部拡大図である。
【図3】図1のB矢視図である。
【図4】本実施形態に係るシールド機の正面図である。
【図5】本実施形態に係るシールド機の側断面図である。
【図6】発進空間にシールド機を設置した状態を示す側断面図である。
【図7】シールド機の発進方法を示す図である。
【図8】シールド機の発進方法を示す図である。
【図9】シールド機の発進方法を示す図である。
【図10】シールド機の到達方法を示す図である。
【図11】シールド機の到達方法を示す図である。
【図12】シールド機の到達方法を示す図である。
【図13】シールド機の到達方法を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 土留め壁
2 止水構造
3 坑口
3a 上半分
3b 下半分
4 シールド機
5 隙間
6 空間
6a 発進空間
6b 到達空間
7 第一の止水手段
8 第一の止水材
9 第一のバックアップ材
10 第二の止水手段
11 第二の止水材
12 第二のバックアップ材
13 上段のカッター部
14 下段のカッター部
15 フード部
16 シールドジャッキ
17 ガーダ部
18 エレクタ
19 テール部
20 カッターヘッド
21 駆動源
22 スクリューコンベア
23 セグメント
24 トンネル
25 架台
26 反力壁
E 地山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部が、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されているシールド機を空間から地山へ又は地山から空間へ進入させるために土留め壁に開口された坑口の止水構造であって、
環状で、その内寸は前記シールド機の外形よりも小さく、外寸は前記シールド機の外形よりも大きく形成され、その外周部が前記坑口の周縁部に沿って前記土留め壁に取り付けられる第一の止水材と、
前記第一の止水材の内方で、前記シールド機が前記坑口を通過する際の前記上段のカッター部と前記下段のカッター部との境界部分に対応する高さ位置の前記土留め壁に取り付けられるとともに、その両端が前記第一の止水材に接続される帯状の第二の止水材と、
前記第一の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第一の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する環状の第一のバックアップ材と、
前記第二の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第二の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する帯状の第二のバックアップ材とを備えることを特徴とする坑口の止水構造。
【請求項2】
前記第二の止水材及び前記第二のバックアップ材は、前記土留め壁に脱着可能であることを特徴とする請求項1に記載の坑口の止水構造。
【請求項3】
環状で、その内寸は前記シールド機の外形よりも小さく、外寸は前記シールド機の外形よりも大きく形成され、その外周部が前記坑口の周縁部に沿って前記土留め壁に取り付けられた第一の止水材と、前記第一の止水材の内方で、前記シールド機の前記上段のカッター部と前記下段のカッター部との境界部分に対応する高さ位置の前記土留め壁に取り付けられるとともに、その両端が前記第一の止水材に接続された帯状の第二の止水材と、前記第一の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第一の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する環状の第一のバックアップ材と、前記第二の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第二の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する帯状の第二のバックアップ材とからなる止水手段を備えた土留め壁を、空間から地山へ向かって又は地山から空間へ向かって、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部が、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されているシールド機が通過する際の進行方法において、
前記上段のカッター部を前記第一の止水材と前記第二の止水材との間に進行させて、前記上段のカッター部の周囲を前記第一の止水材及び前記第二の止水材で止水するとともに、前記第一のバックアップ材及び第二のバックアップ材でそれらをそれぞれ支持し、
前記シールド機の前記下段のカッター部が前記土留め壁の直前に到達したら、前記シールド機を停止し、
前記第二の止水材及び前記第二のバックアップ材を取り外し、
前記第一の止水材の内側に前記シールド機全体を進行させて、前記シールド機全体の周囲を前記第一の止水材で止水するとともに、前記第一のバックアップ材でそれを支持することを特徴とするシールド機の進行方法。
【請求項4】
環状で、その内寸は前記シールド機の外形よりも小さく、外寸は前記シールド機の外形よりも大きく形成され、その外周部が前記坑口の周縁部に沿って前記土留め壁に取り付けられた第一の止水材と、前記第一の止水材の内方で、前記シールド機の前記上段のカッター部と前記下段のカッター部との境界部分に対応する高さ位置の前記土留め壁に取り付けられるとともに、その両端が前記第一の止水材に接続された帯状の第二の止水材と、前記第一の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第一の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する環状の第一のバックアップ材と、前記第二の止水材よりも前記空間側に設けられ、前記第二の止水材よりも剛性が高く、かつ、可撓性を有する帯状の第二のバックアップ材とからなる止水手段を備えた土留め壁を、空間から地山へ向かって又は地山から空間へ向かって、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部が、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されているシールド機が通過する際の進行方法において、
前記上段のカッター部を前記第一の止水材と前記第二の止水材との間に進行させて、前記上段のカッター部の周囲を前記第一の止水材及び前記第二の止水材で止水するとともに、前記第一のバックアップ材及び第二のバックアップ材でそれらをそれぞれ支持し、
前記シールド機の前記下段のカッター部が前記土留め壁の直前に到達したら、前記下段のカッター部を回転し、
前記下段のカッター部で前記第二の止水材及び前記第二のバックアップ材を破砕しながら、前記第一の止水材の内側に前記シールド機全体を進行させて、前記シールド機全体の周囲を前記第一の止水材で止水するとともに、前記第一のバックアップ材でそれを支持することを特徴とするシールド機の進行方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−190014(P2010−190014A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38355(P2009−38355)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】