説明

坑道の支保構造

【課題】例えば放射性廃棄物などの廃棄物を処分するための坑道に用いて好適な坑道の支保構造を提供する。
【解決手段】地山Gの掘削面G1に沿って設けられて地山Gを支える坑道2の支保構造10であって、坑道2の軸線O1方向に間隔をあけて且つ掘削面G1との間に隙間Hをあけて並設した複数の鋼製支保部材11と、隙間Hに鋼製支保部材11と掘削面G1を繋ぐように介装された介装部材12と、掘削面G1との間に隙間Hをあけて隣り合う鋼製支保部材11の間に設けられた鋼製矢板13と、鋼製支保部材11及び鋼製矢板13と掘削面G1との隙間Hに充填された粘土系材料の充填材14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑道の支保構造に関し、特に、例えば放射性廃棄物などの廃棄物を埋設処分するための坑道に用いて好適な支保構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地下300mを超える地下深部に高レベルの放射性廃棄物を埋設処分することが検討されている。この際、放射性廃棄物は、例えばガラスと混ぜて固化され、このガラス固化体を炭素鋼などからなるオーバーパックで密閉して廃棄体を形成した状態で処分される。そして、この廃棄体が、図5に示すように、地下深部の硬質岩や堆積軟岩の比較的安定した地山G内に、略環状に繋がる主要坑道1と、この主要坑道1と繋がるように形成した処分坑道(坑道)や処分孔(以下、処分坑道2という)からなる廃棄物埋設処分施設Aを構築し、この廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2内に処分される(例えば、特許文献1参照)。また、廃棄体を処分する処分坑道2には、例えば硬質岩の地山G内に形成される場合に、図6に示すように、支保構造3が、地山Gを掘削した後に吹付けコンクリート3aとインバートコンクリート(路盤コンクリート)3bなどによって形成され、且つセメント系材料を用いて定着させるロックボルト3cを地山G内に設置して、地山Gの処分坑道2内への崩落を防止するように形成される。
【0003】
また、廃棄体を処分した処分坑道2は、そのままにしておくと処分坑道2そのものが、地下水の卓越した水みちを形成するおそれがあり、処分施設A全体としてのバリア性能を低下させるおそれがある。このため、図7に示すように、ガラス固化体4aをオーバーパック4bで密閉した廃棄体4を包むようにして、地山Gと同等以上の低透水性の材料(緩衝材)5で処分坑道2を埋め戻す(処分坑道2を閉鎖する)ことが考えられている。そして、この種の緩衝材5には、膨潤性や放射性物質の吸着性に優れるベントナイトやベントナイト混合材が用いられ、地山Gから処分坑道2に浸入した地下水が接触するとともに膨潤して地山Gを押圧することによりさらなる地下水の浸入を防止したり、膨潤に伴い緩衝材5の透水係数が低下することで地下水の浸透を防止する。これにより、高レベルの放射性廃棄物を確実に外部の自然環境から隔離して処分することが可能になる。
【0004】
しかしながら、上記のように、廃棄物埋設処分施設Aの坑道2の支保構造3に吹付けコンクリートやインバートコンクリートなどのセメント系材料を用いた場合には、地下水が接触した際に、セメントからCa(カルシウム)や高アルカリ成分が溶出し、処分坑道2の周辺が高アルカリ環境になる可能性がある。そして、処分坑道2が高アルカリ環境により劣化するおそれと、Caイオンによって緩衝材5が劣化するおそれが生じる。すなわち、緩衝材5には、膨潤性に優れるという点でNa(ナトリウム)型ベントナイトが多用されるが、このNa型ベントナイトは、Caイオンと接触するとNaとCaのイオン交換がなされ、膨潤性に劣るCa型ベントナイトに変質してしまう。このため、緩衝材5の膨潤性が乏しくなり地下水の遮蔽能力ひいては放射性物質(有害物質)の遮蔽能力の低下を招くおそれが生じる。
【0005】
また、支保構造3に吹付けコンクリートやインバートコンクリートを用いた場合には、経年劣化によって支保構造3そのものの遮水性が低下し(透水性が増大し)、有害物質の漏出経路Tになるおそれがある。さらに、経年劣化とともに支保構造3と地山Gの掘削面G1の間に隙間が生じて、この隙間が有害物質の漏出経路Tになるおそれもある。そして、このような漏出経路Tを通じて漏出した有害物質が、地山Gを通じて地表に拡散し、特に地山Gに処分施設Aを横断する破砕帯などの高透水層が存在するような場合には早期に地表に達し、重大事故を招くおそれさえある。
【0006】
これに対し、例えば特許文献2に開示されるような坑道の支保構造がある。この坑道の支保構造は、繋ぎ材にて前後が他の鋼製支保工(鋼製支保部材)に連結される一の鋼製支保工と、この鋼製支保工の外側曲面に中央部分が接合され、鋼製支保工の前後に係る地山を支える帯板と、この帯板と地山との間の空隙部分(隙間)に充填される豆砂利の充填材とで構成されている。この坑道の支保構造においては、セメント系材料を用いずに地山を支える構成であるため、廃棄物埋設処分施設の処分坑道に適用した場合に、上記のセメントからのCaや高アルカリ成分の溶出に起因した緩衝材の劣化を招くおそれがない。
【特許文献1】特開2002−250795号公報
【特許文献2】特開平11−44190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献2に開示されるような坑道の支保構造においては、充填材に豆砂利を用いているため、鋼製支保工及び帯板と地山との間の隙間に地下水が容易に浸透してしまう。このため、廃棄物埋設処分施設の処分坑道に適用した場合に、この隙間部分が有害物質の漏出経路になってしまう。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑み、例えば放射性廃棄物などの廃棄物を処分するための坑道に用いて好適な坑道の支保構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0010】
本発明の坑道の支保構造は、地山の掘削面に沿って設けられて前記地山を支える坑道の支保構造であって、前記坑道の軸線方向に間隔をあけて且つ前記掘削面との間に隙間をあけて並設した複数の鋼製支保部材と、前記隙間に前記鋼製支保部材と前記掘削面を繋ぐように介装された介装部材と、前記掘削面との間に隙間をあけて隣り合う前記鋼製支保部材の間に設けられた鋼製矢板と、前記鋼製支保部材及び前記鋼製矢板と前記掘削面との前記隙間に充填された粘土系材料の充填材とを備えることを特徴とする。
【0011】
この発明においては、鋼製支保部材及び鋼製矢板と地山の掘削面の隙間に粘土系材料を充填するため、この隙間部分の遮水性を高めることができ、地山から坑道内に侵入しようとする地下水を確実に遮断することができる。また、このように鋼製支保部材及び鋼製矢板を地山の掘削面から離して設けた場合においても、介装部材を介して鋼製支保部材で地山を支えることができる。また、セメント系材料を使用していないため、坑道の周辺が高アルカリ環境になることを防止できる。
【0012】
また、本発明の坑道の支保構造においては、前記粘土系材料がベントナイト系材料であることが望ましい。
【0013】
この発明においては、地下水が接触するとともにベントナイト系材料が膨潤し、確実に鋼製支保部材及び鋼製矢板と地山の掘削面の隙間部分の遮水性を高めることができる。
【0014】
さらに、本発明の坑道の支保構造においては、前記隣り合う鋼製支保部材に連架した腹起しと、該腹起しに一端側が支持されて前記地山内に延設したロックボルトを備えることがより望ましい。
【0015】
この発明においては、鋼製支保部材及び鋼製矢板と地山の掘削面の隙間に粘土系材料の充填材、特にベントナイト系材料を充填した場合に、地下水が接触して膨潤した際に生じる膨潤圧を腹起しとロックボルトを介して地山で支持することが可能になる。これにより、充填材で遮水性を確保するようにした場合においても、膨潤圧によって鋼製支保部材に変形が生じることを確実に防止でき、地山を確実に安定して支える支保構造にすることができる。
【0016】
また、本発明の坑道の支保構造においては、前記ロックボルトが摩擦定着型のロックボルトであることがさらに望ましい。
【0017】
この発明においては、ロックボルトが摩擦定着して地山を支持するものであるため、すなわちロックボルトの定着にセメント系材料を使用する必要がないため、確実に周辺が高アルカリ環境になることを防止できる。
【0018】
さらに、本発明の坑道の支保構造においては、前記ロックボルトが、膨張可能に形成された鋼管と、該鋼管の中空部に充填した粘土系材料を備えることが望ましい。
【0019】
この発明においては、地山に穿設した削孔に鋼管を建て込み、鋼管を膨張させて地山に摩擦定着させた後に、中空部に粘土系材料をグラウトする。これにより、セメント系材料を用いることなく確実に地山を支えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の坑道の支保構造によれば、地山を確実に支えることができるとともに、地山からの地下水の侵入を防止でき、また周辺が高アルカリ環境になることを防止できる。これにより、廃棄物埋設処分施設の坑道に適用した場合に、緩衝材の劣化を防止することができ、且つ粘土系材料の充填材によって鋼製支保部材及び鋼製矢板と地山の掘削面の隙間部分が有害物質の漏出経路になることを防止でき、長期にわたって安定した状態で確実に廃棄物を埋設処分することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係る坑道の支保構造について説明する。本実施形態は、例えば図5に示した高レベルの放射性廃棄物を地下深部に埋設処分するための廃棄物埋設処分施設Aが備える処分坑道(坑道)2の支保構造に関するものである。
【0022】
本実施形態の坑道の支保構造10は、図1から図3に示すように、地山Gの掘削面G1に沿って逆U字状に形成され、坑道2の軸線O1方向に間隔をあけて且つ掘削面G1との間に隙間Hをあけて並設した複数の鋼製支保部材11と、隙間Hに鋼製支保部材11と掘削面G1(地山G)を繋ぐように介装されたくさび部材(介装部材)12と、掘削面G1との間に隙間Hをあけて隣り合う鋼製支保部材11の間に設けられた鋼製矢板13と、鋼製支保部材11及び鋼製矢板13と掘削面G1との隙間Hに充填された粘土系材料の充填材14とを備えて構成されている。
【0023】
鋼製支保部材11は、H形鋼を逆U字状に形成したものであり、坑道2の側壁部及びアーチ部の掘削面G1に沿うように設けられている。坑道2の軸線O1方向に隣り合う鋼製支保部材11は、図2に示すように、例えばタイロッドなどの連結部材15で連結されている。また、各鋼製支保部材11には、図1に示すように、掘削面G1側を向くフランジ面に、複数のくさび部材12のそれぞれの一端が繋げられている。さらに、各鋼製支保部材11に繋がる複数のくさび部材12は、鋼製支保部材11の延設方向、すなわち坑道2の周方向に所定の間隔をあけて設けられ、他端を地山Gの掘削面G1に当接させている。これにより、地山Gからの力がくさび部材12を介して各鋼製支保部材11に伝達されて支持される。
【0024】
また、鋼製矢板13は、図2に示すように、断面凹凸状の波状に形成されており、両側端を坑道2の軸線O1方向に隣り合う鋼製支保部材11の坑道2内側のフランジ部にそれぞれ支持させて設けられている。このとき、鋼製矢板13は、図1及び図3に示すように、隣り合う鋼製支保部材11の間を埋めるように、坑道2の側壁部及びアーチ部に沿って設けられている。
【0025】
本実施形態の充填材14の粘土系材料は、ベントナイト系材料であり、例えばベントナイト粉体、顆粒状ベントナイト、あるいはベントナイト粉体及び/又は顆粒状ベントナイトと砂などを混合した材料である。
【0026】
また、本実施形態の坑道の支保構造10には、図1及び図3に示すように、腹起し16とロックボルト17が具備されている。腹起し16は、坑道2の軸線O1方向に延設され、隣り合う鋼製支保部材11の坑道2内側のフランジ部に繋がり隣り合う鋼製支保部材11に連架して設けられている。また、ロックボルト17は、腹起し16に支持される定着板18に一端側を繋げて地山G内に延設されている。そして、このような腹起し16及びロックボルト17が、坑道2の周方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0027】
ここで、本実施形態のロックボルト17は、摩擦定着型のロックボルトであり、図4(a)及び図4(b)に示すように、外面19aが内側に凹む凹部19bを備えて膨張可能に形成された略円筒状の鋼管19と、この鋼管19の中空部19cに充填される例えばベントナイト系材料などの粘土系材料20を備えて構成されている。このように構成した本実施形態のロックボルト17は、図4(a)に示すように、地山Gに穿設した削孔21に鋼管19を建て込んだ後に、中空部19cに高圧の水を供給し鋼管19を拡径するように膨張させて、外面19aを削孔内面21aに密着させる。これにより、ロックボルト(鋼管19)17が地山Gに摩擦定着する。また、図4(b)に示すように、中空部19cにベントナイト系材料(粘土系材料20)のスラリーをグラウトして、中空部19cに粘土系材料20を充填する。
【0028】
ついで、上記の構成からなる坑道の支保構造10を設置する方法を説明するとともに、本実施形態の坑道の支保構造10の作用及び効果について説明する。
【0029】
上記の坑道の支保構造10は、機械掘削及び/又は発破掘削によって坑道2を掘削してゆき、坑道2の側壁部及びアーチ部の掘削面G1に沿って鋼製支保部材11を設置し、鋼製支保部材11と掘削面G1の隙間Hにくさび部材12を設置する。これにより、くさび部材12を介して伝わる地山Gからの力が鋼製支保部材11で支えられる。また、これとともに軸線O1方向に隣り合う鋼製支保部材11を連結部材15で連結する。
【0030】
ついで、ロックボルト17を設置するための削孔21を坑道2内側から地山Gに向けて穿孔した段階で、図2に示すように、隣り合う鋼製支保部材11の間に、インバート部側から順次鋼製矢板13を設置しながら、鋼製矢板13によって形成される掘削面Gとの隙間H及び鋼製支保部材11と掘削面G1との隙間Hにベントナイト系材料の充填材14を充填してゆく。そして、鋼製矢板13の設置と充填材14の充填を行なった段階で、隣り合う鋼製支保部材11を繋ぐように腹起し16を設置する。さらに、削孔21内に鋼管19を建て込んでロックボルト17を設置し、最後に、坑道2のインバート部に、図1に示す路盤コンクリート(インバートコンクリート)22を打設する。これにより、本実施形態の坑道の支保構造10が構築される。
【0031】
上記のように坑道の支保構造10の構築を終えた段階から、坑道2内に放射性廃棄物を搬入し、処分を開始する。このとき、地山Gから力が作用した場合においても、この力がくさび部材12を介して鋼製支保部材11で支持されるため、確実に安定した状態で地山Gが支えられている。また、地山Gから地下水が坑道2内に侵入しようとする場合においても、坑道の支保構造10の充填材14に、地山Gから湧出した地下水が接触するとともにベントナイトが膨潤し、透水係数が低下することで地下水の侵入が阻止される。一方、このようにベントナイトが膨潤することによって生じる膨潤圧が、鋼製矢板13を介して鋼製支保部材11に伝わり、この膨潤圧が大きい場合には、鋼製支保部材11を坑道2内側に変形させる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、鋼製支保部材11に作用する膨潤圧が腹起し16とロックボルト17を通じて地山Gに支持されることになるため、鋼製支保部材11に変形が生じるようなことがない。これにより、本実施形態の坑道の支保構造10で地山Gを安定した状態で支え、且つ坑道2内への地下水の侵入を阻止した好適な状態で、放射性廃棄物の処分が行なわれる。
【0032】
そして、放射性廃棄物を所定位置に定置して処分した段階で、図7に示したように、ベントナイト系の緩衝材5を用いて坑道2の埋め戻しを行なう。このとき、インバート部の路盤コンクリート22を撤去しながら埋め戻しを行なう。これにより、閉鎖後の坑道2は、本実施形態の坑道の支保構造10にセメント系材料が使用されていないため、路盤コンクリート22を撤去することによって完全にセメント系材料が残置されることがなく、坑道2の周辺を高アルカリ環境にするおそれがない。また、このようにセメント系材料が残置されないことによって、従来のように緩衝材5がカルシウムイオンや高アルカリ成分に起因して劣化するおそれがなくなり、放射性廃棄物を確実に安定した状態で埋設処分することが可能になる。
【0033】
さらに、坑道2の閉鎖後に、地山Gから地下水が侵入しようとした場合においても、鋼製支保部材11及び鋼製矢板13と掘削面G1との隙間Hにベントナイト系材料の充填材14が充填されているため、すなわち、放射性廃棄物を包む緩衝材5がさらに充填材14で覆われているため、この充填材14が地下水に接触するとともに膨潤し、確実に遮水性が確保される。また、放射性廃棄物から有害物質が漏出した場合においても、充填材14が膨潤して有害物質に対する移行遅延能力が確保されているため、この部分が有害物質の漏出経路になるおそれがない。一方、緩衝材5と充填材14の間に介在して残置される鋼製支保部材11や鋼製矢板13に腐食劣化が生じて、この部分が有害物質の漏出経路になるおそれがあるが、鋼製支保部材11や鋼製矢板13の腐食により生じた隙間が充填材14の膨潤によって埋められるため、やはり有害物質の漏出経路になることがない。
【0034】
さらに、本実施形態のロックボルト17においても、鋼管19に腐食劣化が生じて有害物質の漏出経路になるおそれがあるが、鋼管19の中空部19cに粘土系材料20、特にベントナイト系材料が充填されているため、鋼管19の腐食により生じた隙間がベントナイトの膨潤とともに埋められ、有害物質の漏出経路になることがない。
【0035】
また、本実施形態のように、インバート部に路盤コンクリート22を設けた場合においても、緩衝材5の埋め戻し時にこの路盤コンクリート22を撤去するため、インバート部が有害物質の漏出経路になるおそれもない。
【0036】
したがって、本実施形態の坑道の支保構造10によれば、ベントナイト系材料(粘土系材料、充填材14)を充填することで、鋼製支保部材11及び鋼製矢板13と地山Gの掘削面G1の間Hの遮水性を高めることができ、地下水を確実に遮断することができる。また、このように鋼製支保部材11及び鋼製矢板13を掘削面G1から離して設けた場合においても、くさび部材(介装部材)12を介して鋼製支保部材11で地山Gを支えることができる。そして、支保構造10にセメント系材料を使用していないため、坑道2の周辺が高アルカリ環境になることを防止できる。
【0037】
また、地下水が接触して膨潤した際に生じる充填材14の膨潤圧を腹起し16とロックボルト17を介して地山Gで支持することができる。これにより、充填材14で遮水性を確保した場合においても、膨潤圧によって鋼製支保部材11に変形が生じることを確実に防止でき、地山Gを確実に安定して支える支保構造10にすることができる。
【0038】
さらに、ロックボルト17が摩擦定着型であるため、すなわちロックボルト17の定着にセメント系材料を使用していないため、確実に周辺が高アルカリ環境になることを防止できる。
【0039】
よって、本実施形態の坑道の支保構造10によれば、廃棄物埋設処分施設Aの坑道2に適用した場合に、緩衝材5の劣化を防止することができ、且つ充填材14によって鋼製支保部材11及び鋼製矢板13と地山Gの掘削面G1の隙間H部分が有害物質の漏出経路になることを防止でき、長期にわたって安定した状態で確実に廃棄物を埋設処分することが可能になる。
【0040】
以上、本発明に係る坑道の支保構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、本発明の坑道の支保構造10を廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2の支保構造に用いるものとしたが、本発明の坑道の支保構造10は、廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2に限定して用いる必要はなく、緩衝材5で埋め戻して閉鎖することのない坑道2に適用されてもよい。この場合には、坑道の支保構造10にセメント系材料を用いていないため、周辺地山Gが高アルカリ環境になることがなく地山Gの変質を防止することができ、且つ地山Gからの地下水の侵入を粘土系材料の充填材14で阻止することができ、安定した坑道空間を形成することが可能である。
【0041】
また、本実施形態では、充填材14の膨潤圧を支えるために腹起し16とロックボルト17を備えるものとしたが、この膨潤圧によって変形が生じない強度特性を鋼製支保部材11に付与した場合には、腹起し16とロックボルト17を具備する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る坑道の支保構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る坑道の支保構造を示す斜視図である。
【図3】図1のX−X線矢視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る坑道の支保構造が具備するロックボルトの断面図である。
【図5】廃棄物埋設処分施設を示す図である。
【図6】従来の廃棄物埋設処分施設の処分坑道の支保構造を示す断面図である。
【図7】従来の廃棄物埋設処分施設の処分坑道に放射性廃棄物を処分した状態を示す坑道軸線方向に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 主要坑道
2 処分坑道(坑道)
3 従来の坑道の支保構造
3a 吹付けコンクリート
3b 路盤コンクリート(インバートコンクリート)
3c セメント系定着材を用いたロックボルト
4 廃棄体
5 緩衝材
10 坑道の支保構造
11 鋼製支保部材
12 くさび部材(介装部材)
13 鋼製矢板
14 充填材(粘土系材料、ベントナイト系材料)
15 連結部材
16 腹起し
17 ロックボルト
18 定着板
19 鋼管
20 粘土系材料
21 削孔
21a 孔面
22 路盤コンクリート(インバートコンクリート)
A 廃棄物埋設処分施設
G 地山
G1 掘削面
H 隙間
O1 坑道の軸線
T 有害物質の漏出経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山の掘削面に沿って設けられて前記地山を支える坑道の支保構造であって、
前記坑道の軸線方向に間隔をあけて且つ前記掘削面との間に隙間をあけて並設した複数の鋼製支保部材と、前記隙間に前記鋼製支保部材と前記掘削面を繋ぐように介装された介装部材と、前記掘削面との間に隙間をあけて隣り合う前記鋼製支保部材の間に設けられた鋼製矢板と、前記鋼製支保部材及び前記鋼製矢板と前記掘削面との前記隙間に充填された粘土系材料の充填材とを備えることを特徴とする坑道の支保構造。
【請求項2】
請求項1記載の坑道の支保構造において、
前記粘土系材料がベントナイト系材料であることを特徴とする坑道の支保構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の坑道の支保構造において、
前記隣り合う鋼製支保部材に連架した腹起しと、該腹起しに一端側が支持されて前記地山内に延設したロックボルトを備えることを特徴とする坑道の支保構造。
【請求項4】
請求項3記載の坑道の支保構造において、
前記ロックボルトが摩擦定着型のロックボルトであることを特徴とする坑道の支保構造。
【請求項5】
請求項4記載の坑道の支保構造において、
前記ロックボルトが、膨張可能に形成された鋼管と、該鋼管の中空部に充填した粘土系材料を備えることを特徴とする坑道の支保構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−127793(P2008−127793A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311532(P2006−311532)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】