説明

坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法

【課題】地山の崩落を確実に防止して、坑道のコンクリートの撤去、埋め戻し材の供給及び締め固めを効率よく行なうことが可能な坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法を提供する。
【解決手段】坑道2の地山面G1を被覆したコンクリート製の支保工4をはつり除去するはつり装置16と、坑道2内に埋め戻し材3を供給する埋め戻し材供給装置15と、はつり装置16及び埋め戻し材供給装置15を覆って保護するプロテクター10と、坑道2内を、埋め戻し材3を供給する空間11とプロテクター10側の空間12とに区画する支圧板13と、プロテクター10と支圧板13を坑道2の軸線O1方向に相対移動させる推進機構14とを備え、プロテクター10には、膨縮自在なマット型ジャッキ24が具備されており、マット型ジャッキ24の膨張圧によってはつり装置16で露出させた地山面G1を押圧し地山Gを支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば放射性廃棄物などの廃棄物を埋設処分する廃棄物埋設処分施設の坑道を、埋め戻し材を用いて埋め戻して閉鎖するための坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地下300mを超える地下深部に高レベルの放射性廃棄物を埋設処分することが検討されている。この際、放射性廃棄物は、例えばガラスと混ぜて固化され、このガラス固化体を炭素鋼などからなるオーバーパックで密閉して廃棄体を形成した状態で処分される。そして、この廃棄体が、図4及び図5に示すように、地下深部の硬質岩や堆積軟岩(軟質岩)の比較的安定した地山G内に、略環状に繋がる主要坑道1と、この主要坑道1と繋がるように形成した処分坑道(坑道)や処分孔(以下、処分坑道2という)からなる廃棄物埋設処分施設Aを構築し、この廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2内に処分される(例えば、特許文献1参照)。また、廃棄体を処分する処分坑道2は、例えば、硬質岩の地山G内に形成される場合、地山Gを掘削した後に厚さ5cm程度の覆工と、厚さ15cm程度のインバートが吹付けコンクリートまたはコンクリートによって形成され、軟質岩の地山G内に形成される場合には、これら覆工とインバートを厚さ50cmで重厚に形成して、地山Gを安定させることにより処分坑道2内への地山崩落や押出しを防止するようにしている。
【0003】
また、廃棄体を処分した処分坑道2をそのままにしておくと、処分坑道2の周辺地山Gの緩みの拡大や地下水の卓越した水みちが形成されるおそれがあり、処分施設A全体としてのバリア性能を低下させるおそれがある。このため、地山Gと同等以上の低透水性の材料(埋め戻し材3)で処分坑道2を埋め戻すことが考えられている。そして、この種の埋め戻し材3には、膨潤性や放射性物質の吸着性に優れるベントナイトやベントナイト混合材(ベントナイト系粘土材)が用いられ、地山Gから処分坑道2に浸入した地下水が接触するとともに膨潤して地山Gを押圧することによってさらなる地下水の浸入を防止したり、膨潤に伴い埋め戻し材3の透水係数が低下することで地下水の浸透を防止する。これにより、放射性廃棄物を確実に外部の自然環境から隔離して処分することが可能になる。
【0004】
一方、吹付けコンクリートで形成される覆工やインバート(支保工)に地下水が接触した場合には、セメントからCa(カルシウム)や高アルカリ成分が地下水に溶出し、処分坑道2の周辺が高アルカリ環境になる可能性がある。このように処分坑道2が高アルカリ環境になった場合には、特にCaイオンによって埋め戻し材3が劣化するおそれが生じる。すなわち、埋め戻し材3のベントナイト系粘土材には、その膨潤性に優れるという点でNa(ナトリウム)型ベントナイトが多用されるが、このNa型ベントナイトは、Caイオンと接触するとNaとCaのイオン交換がなされ、膨潤性に劣るCa型ベントナイトに変質してしまう。このようにベントナイトが変質した場合には、埋め戻し材3の膨潤性が乏しくなり地下水の遮蔽能力ひいては放射性物質の遮蔽能力の低下を招くおそれが生じる。
【0005】
このため、処分坑道2に廃棄体を搬送定置して、埋め戻し材3による埋め戻しを行なう前段で、支保工を撤去し、コンクリートに起因した埋め戻し材3の劣化を防止することが検討されている。そして、このように支保工を撤去するための装置として、例えば特許文献2に開示されるような、処分坑道2の径方向内側から外側に回転カッタを送り出し、この回転カッタを軸芯回りに回転させながらコンクリート表面に所定の押圧力で当接させてコンクリートをはつり取るはつり装置を適用することが検討されている。
【特許文献1】特開2003−215297号公報
【特許文献2】特開2000−38899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の専用機械であるはつり機(はつり装置)を用いて支保工の撤去を行う場合には、処分坑道の一部に廃棄体を搬送定置してこの部分の支保工を撤去した後に、専用機械である埋め戻し材投入機(埋め戻し材供給装置)で埋め戻し材を投入(供給)し、さらに締め固め機でこれを締め固める一連の作業を行なうことになる。このため、この一連の作業を繰り返して処分坑道全体を埋め戻す際に、各専用機械をそれぞれの作業毎に入れ替える必要が生じて作業効率が著しく低下するという問題があった。
【0007】
また、はつり機によって、支保工に加え坑道構築時に生じた坑道周辺の地山の緩み領域(劣化地山)を撤去することが確実に廃棄物を遮蔽する上で望ましく、このように劣化地山をはつり機で撤去した場合にも、特に軟質岩の地山内に形成された処分坑道では、地山の緩み領域が進展しやすく劣化地山が残存するおそれがある。このため、支保工を撤去してから埋め戻し材を投入しこれを締め固めるまでの間、露出した地山を支持することが安全性を確保するために必要になる。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑み、地山の崩落を確実に防止して、坑道のコンクリートの撤去、埋め戻し材の供給及び締め固めを効率よく行なうことが可能な坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0010】
本発明の坑道閉鎖装置は、廃棄物を処分した坑道を埋め戻すための坑道閉鎖装置であって、前記坑道の地山面を被覆したコンクリートあるいは該コンクリート及び劣化地山をはつり除去するはつり装置と、前記坑道内に埋め戻し材を供給する埋め戻し材供給装置と、前記はつり装置及び前記埋め戻し材供給装置を覆って保護するプロテクターと、前記坑道を、前記埋め戻し材を供給する側の空間と前記プロテクターが配置される側の空間とに区画するとともに前記両空間を連通させる窓部を備えた支圧板と、前記プロテクターと前記支圧板に接続して設けられ、前記プロテクターと前記支圧板を前記坑道の軸線方向に相対移動させる推進機構とを備え、前記プロテクターには、膨縮自在なマット型ジャッキが具備されており、該マット型ジャッキの膨張圧によって前記はつり装置で露出させた地山面を押圧し地山を支持することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の坑道閉鎖方法は、廃棄物を処分した坑道内に埋め戻し材を供給するとともに締め固めて前記坑道を埋め戻す坑道閉鎖方法であって、前記坑道の地山面を被覆したコンクリートあるいは該コンクリート及び劣化地山をはつり除去するはつり装置、及び前記坑道内の支圧板で区画した空間に前記埋め戻し材を供給する埋め戻し材供給装置を覆って保護するプロテクターに、前記はつり装置で露出させた前記地山面を押圧して地山を支持する膨縮自在なマット型ジャッキと、前記プロテクターと前記支圧板に接続して設けられ、前記プロテクターと前記支圧板を前記坑道の軸線方向に相対移動させる推進機構とが設けられ、前記マット型ジャッキを膨張させて前記はつり装置で露出させた地山を支持した状態で、他の部分の前記コンクリートあるいは該コンクリート及び劣化地山をはつり除去するとともに前記空間に前記埋め戻し材を供給し、前記マット型ジャッキを収縮させて前記地山の支持状態を解除するとともに、前記推進機構の駆動により前記空間に供給した前記埋め戻し材を前記支圧板で押圧して締め固め、前記支圧板で締め固めた埋め戻し材で反力を確保しながら前記プロテクターを前記坑道の軸線方向前方に推進させることを特徴とする。
【0012】
上記の発明においては、はつり装置によって、コンクリート製の覆工及びインバート(支保工)をはつり除去して地山面を露出させることができ、また、坑道構築時に緩みを生じた(劣化した)坑道周辺の地山をもはつり除去することができる。そして、埋め戻し材供給装置から支圧板で区画した空間内に埋め戻し材を投入した段階で、推進機構の駆動により支圧板を移動させ、この支圧板で、投入した埋め戻し材に押圧力を付加しつつこれを締め固めることができる。また、埋め戻し材が所定の状態に締め固められて、締め固めた埋め戻し材で支圧板が支持された後に、さらに推進機構を駆動することにより、今度は、締め固めた埋め戻し材で反力を確保してプロテクターを坑道の軸線方向前方側に推進(移動)させることができる。そして、支圧板がプロテクターに近づくように推進機構を駆動することによって、締め固めた埋め戻し材と支圧板との間に新たに埋め戻し材を投入する空間を画成することができる。これにより、上記操作を繰り返し行なってゆくことで、従来のように専用機械を作業毎に入れ替えることなく坑道を閉鎖することが可能になり、大幅に作業効率を向上させることが可能になる。
【0013】
また、このように支保工の撤去及び埋め戻し材の投入と締め固めを行なう際に、はつり装置及び埋め戻し材供給装置がプロテクターに覆われて保護され、且つこのプロテクターに具備したマット型ジャッキによって露出した地山が支持されているため、十分に安全性を確保した状態で作業を行なうことが可能になる。
【0014】
さらに、例えば軟質岩の地山内に坑道が形成されているような場合には、マット型ジャッキの押圧力によって、坑道構築時に生じた坑道周辺の地山の緩み領域(劣化地山)を締め固めることも可能になり、さらなる安全性の向上を図ることが可能になるとともに、長期にわたり安定した状態で確実に廃棄物を処分することが可能になる。
【0015】
また、本発明の坑道閉鎖装置においては、前記プロテクターが、前記坑道の底部側の前記軸線直交方向両側端側にそれぞれ配設される一対の支柱支持部材と、前記坑道の側部及び上部の地山面に沿う馬蹄形状に形成され、両下端のそれぞれを前記一対の支柱支持部材のそれぞれに接続して設けられた支柱部材と、該支柱部材の前記地山面側の端部に接続して支持され、前記支柱部材の内側に配置した前記はつり装置及び前記埋め戻し材供給装置を覆うように設けられた内側被覆板と、該内側被覆板上に敷設された前記マット型ジャッキと、該マット型ジャッキを覆って保護する外側被覆板とを備えることが望ましい。
【0016】
この発明においては、マット型ジャッキを膨張させて地山を支持する際に、マット型ジャッキで押圧した地山からの反力を、内側被覆板を介して支柱部材で確実に支持することができ、確実に地山にマット型ジャッキの押圧力(膨張圧)を作用させてこれを支持することができる。また、このとき、マット型ジャッキを覆う外側被覆板を、マット型ジャッキの膨張とともに地山面に当接させて、すなわちマット型ジャッキを直接地山面に接触させず外側被覆板を介して押圧力を地山に作用させることができ、マット型ジャッキに破損などが生じることを防止できる。さらに、このように外側被覆板を介することによって、坑道の側部及び上部の地山面に広範囲にわたって押圧力を作用させることができ、確実に地山を支持することができる。
【0017】
さらに、本発明の坑道閉鎖装置においては、前記一対の支柱支持部材に繋がり前記坑道の底部側の地山面に沿うように設けられたインバート部材を備えることがより望ましい。
【0018】
この発明においては、坑道の側部及び上部の地山をマット型ジャッキで支持した際に、インバート部材を坑道の底部の地山面に押圧させて反力を確保することができる。そして、このようにインバート部材が地山を押圧することで、特に軟質岩の地山内に坑道が形成されている場合においても、坑道底部に盤ぶくれなどの地山変位が生じることを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法によれば、コンクリート製の支保工をはつり除去しつつ埋め戻し材の投入及び締め固めを、安全性を確保した状態で行なうことができ、大幅に作業効率を向上させることが可能になる。また、長期にわたり安定した状態で廃棄物を処分することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1から図3を参照し、本発明の一実施形態に係る坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法について説明する。本実施形態は、例えば図4及び図5に示した高レベルの放射性廃棄物を地下深部に埋設処分するための廃棄物埋設処分施設Aが備える処分坑道(坑道)2を埋め戻し材3で埋め戻すための坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法に関するものである。ここで、本発明の坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法は、特に軟質岩の地山G内に形成された処分坑道2の閉鎖を好適に行なうことが可能なものである。このため、本実施形態の処分坑道2は、軟質岩の地山G内に断面略円形状に形成され、図1に示すように、吹き付けコンクリート(コンクリート)によって形成した厚さ50cm程度の覆工とインバート(支保工)を備えて構築されているものとする。
【0021】
本実施形態の坑道閉鎖装置Bは、図1に示すように、処分坑道2の周方向の地山面(内面)G1に沿うように形成した断面略円形状のプロテクター10と、処分坑道2の内空を、埋め戻し材3を供給する側の空間11とプロテクター10が配置される側の空間12とに区画する略平板状の支圧板13と、プロテクター10と支圧板13に接続され、処分坑道2の軸線O1方向に伸縮してプロテクター10と支圧板13を軸線O1方向に相対移動させる推進機構14と、プロテクター10の内側に配置された埋め戻し材供給装置15及びはつり装置16とを備えて構成されている。
【0022】
プロテクター10は、図1から図3に示すように、処分坑道2の底部G2側の軸線O1直交方向両側端側にそれぞれ配置されて軸線O1方向に延設した一対の支柱支持部材20と、円弧状に形成され、一対の支柱支持部材20に繋がり処分坑道2の底面(底部G2側の地山面G1)に沿うように設けられた例えば厚肉鋼板からなるインバート部材21と、処分坑道2の側部G3及び上部G4の地山面G1に沿うように馬蹄形状に形成され、両下端がそれぞれ一対の支柱支持部材20のそれぞれに接続し且つ軸線O1方向に間隔をあけて設けられた複数の支柱部材22と、複数の支柱部材22の地山面G1側の端部に接続して支持され、複数の支柱部材22を覆うように設けられた円弧板状の内側被覆板23と、内側被覆板23に下端を繋げて内側被覆板23上に敷設された複数の膨縮自在なマット型ジャッキ24と、複数のマット型ジャッキ24の上端が繋がり、これら複数のマット型ジャッキ24を覆って保護する外側被覆板25とを備えて構成されている。
【0023】
複数のマット型ジャッキ24は、それぞれ例えばコンプレッサーやポンプなどの図示せぬ圧力流体供給源(駆動源)に繋げられている。そして、圧力流体供給源から空気、水あるいは油などの圧力流体が供給されると、処分坑道2の周方向外側に向けて膨張し、すなわち側部G3や上部G4の地山面G1に向けて膨張し、例えば6mm程度の鋼板からなる外側被覆板25を介して地山Gに押圧力を作用させる。また、このとき、押圧力の反力が例えば鋼板からなる内側被覆板23を介して複数の支柱部材22やインバート部材21で支持される。
【0024】
一方、支圧板13は、図1及び図3に示すように、処分坑道2の内空断面よりも僅かに小さな面積を備えて形成されており、処分坑道2の軸線O1に直交して設けられている。また、この支圧板13は、プロテクター10の後端と対向配置されており、プロテクター10と支圧板13の間に介装した推進機構14で支持されている。さらに、この支圧板13には、矩形状に開口する窓部13aが設けられており、この窓部13aは、支圧板13の背面13bに沿って水平方向に進退可能な図示せぬ扉部材によって開閉される。これにより、支圧板13で区画した埋め戻し材3を供給する側の空間11とプロテクター10が配置される側の空間12とがこの窓部13aを介して連通可能とされている。
【0025】
推進機構14は、例えばスライドジャッキ(水平ジャッキ)であり、一端がプロテクター10側を向く支圧板13の前面13cに繋がり、他端がプロテクター10の後端側に接続して設けられている。また、推進機構14は、その伸縮方向を処分坑道2の軸線O1と平行に配した状態で、プロテクター10の後端側の支柱部材(一対の支柱支持部材20の軸線O1方向後端側に設けられた支柱部材)22に接続して設けられている。さらに、このような推進機構14は、後端側の支柱部材22の延設方向に沿い、所定の間隔をあけて複数配置されている。そして、このような複数の推進機構14は、同期した駆動により軸線O1方向にそれぞれ伸縮し、プロテクター10と支圧板13との処分坑道2の軸線O1方向の間隔を大小変化させる。すなわち、推進機構14は、その駆動によってプロテクター10と支圧板13を、処分坑道2の軸線O1方向に近づけたり、遠ざけたり相対移動させる。
【0026】
本実施形態の埋め戻し材供給装置15は、図1に示すように、埋め戻し材3を貯留するタンクなどを備え自走可能に構成した車体部15aと、車体部15aの前方側に設けられた多関節アーム15bと、多関節アーム15bの先端に支持され、タンクから圧送した埋め戻し材3を噴出するノズル部15cとを備えて構成されている。そして、この埋め戻し材供給装置15は、プロテクター10の後端側に配置されるとともに、多関節アーム15bを備えた前方側を支圧板13側(処分坑道2の軸線O1方向後方側)に向けて配置されている。また、このとき、埋め戻し材供給装置15は、プロテクター10のインバート部材21上に配置されて(支柱部材22の内側に配置されて)、このプロテクター10の支柱部材22や内側被覆板23に覆われている。
【0027】
一方、はつり装置16は、自走可能に構成した車体部16aと、この車体部16aに支持され、前方に突出するように設けられたビーム部16bとから構成されている。また、ビーム部16bは、後端側が車体部16aの前方側に支持されて車体部16aの前方に延出しており、その先端に回転カッタ16cが具備されている。さらに、ビーム部16bは、車体部16aに支持された後端側を回転中心として、処分坑道2の内周(地山面G1)に沿って回動可能に設けられ、且つ先端に具備された回転カッタ16cを中心軸回りに回転させるとともに中心軸方向に伸縮自在とされて回転カッタ16cを中心軸方向前方に送り出せるように構成されている。なお、回転カッタ16cは、円錐台状に形成されており、その外面に例えば外側に突出する図示せぬ複数の切刃が設けられている。
【0028】
そして、上記のように構成したはつり装置16は、プロテクター10の先端側に配置され、且つビーム部16bを備えた前方側を処分坑道2の軸線O1方向前方側に向けて配置されている。また、このとき、はつり装置16は、ビーム部16bの先端側、すなわち回転カッタ16cがプロテクター10の先端から軸線O1方向前方に配されるように設置されている。これにより、はつり装置16は、埋め戻し材供給装置15と同様、プロテクター10のインバート部材21上に配置されて(支柱部材22の内側に配置されて)、このプロテクター10の支柱部材22や内側被覆板23に覆われている。
【0029】
ついで、上記の構成からなる坑道閉鎖装置Bを用いて処分坑道2を閉鎖する方法について説明し、本実施形態の坑道閉鎖装置B及び坑道閉鎖方法の作用及び効果について説明する。
【0030】
本実施形態では、推進機構14をプロテクター10と支圧板13の間隔が最小となるように縮めた状態で、且つ、外側被覆板25が処分坑道2の周方向内側に退避して地山面G1に当接されないように(すなわち外側被覆板25が内側被覆板23や支柱部材22側に配置されるように)マット型ジャッキ24を収縮させた状態で、処分坑道2内に坑道閉鎖装置Bを設置する。
【0031】
ついで、図1及び図2に示すように、圧力流体供給源から圧力流体を供給してマット型ジャッキ24を膨張させ、露出した地山面G1に外側被覆板25を当接させるとともにこの外側被覆板25を介してマット型ジャッキ24から押圧力を地山Gに作用させる。そして、露出した地山Gのうち、側部G3側及び上部G4側の地山Gがマット型ジャッキ24で押圧されて支持される。また、マット型ジャッキ24の押圧力の反力及びプロテクター10の自重によって底部G2側の地山Gがインバート部材21で押圧される。これにより、処分坑道2の側部G3及び上部G4の露出した地山Gは、マット型ジャッキ24の押圧力によって崩落することがなく、また、処分坑道2の底部G2の露出した地山Gは、インバート部材21からの押圧力によって盤ぶくれなどの地山変位が防止され、プロテクター10の内側に配置した埋め戻し材供給装置15及びはつり装置16が安全な状態で保護される。
【0032】
ここで、本実施形態では、外側被覆板25が例えば6mm程度の鋼板であるため、マット型ジャッキ24が膨張して地山Gに当接するとともに、露出した地山Gの凹凸に応じて外側被覆板25が変形する。これにより、外側被覆板25が凹凸の地山面Gに広範囲に当接することになり、複数のマット型ジャッキ24の押圧力がプロテクター10の周囲に位置する地山G全体に確実に作用する。そして、本実施形態のように地山Gが軟質岩である場合には、処分坑道2を構築した際に緩んだ周辺地山(劣化地山)がこのマット型ジャッキ24の押圧力によって締め固められるため、地山安定性の向上が図られ、この点からも露出した地山Gが崩落することを未然に防いでいる。よって、プロテクター10の内側に配置された埋め戻し材供給装置15及びはつり装置16が確実に安全な状態で保護される。
【0033】
ついで、このようにプロテクター10で露出した地山Gを支持した段階で、図1に示すように、支圧板13の扉部材を退避させて窓部13aを開口させる。そして、埋め戻し材供給装置15の多関節アーム15bを伸ばし、この窓部13aから支圧板13よりも後方側の空間11内にノズル部15cを挿入する。このようにノズル部15cを挿入した段階で、埋め戻し材供給装置15から空間11内に埋め戻し材3を吹き付けて投入(供給)し、埋め戻し材3でこの空間11が満たされた段階で支圧板13の窓部16aを扉部材で閉じる。
【0034】
一方、本実施形態では、埋め戻し材供給装置15で埋め戻し材3の投入を行なっている間(同時)に、はつり装置16によって、プロテクター10の先端から軸線O1方向前方に位置するコンクリート(他の部分の支保工4)をはつり取って除去する。このはつり作業では、はじめに、ビーム部16bを後端中心に回転し、回転カッタ16cを支保工4の表面近傍に位置させ、回転カッタ16cを中心軸回りに回転させながら支保工4の表面に所定の押圧力で当接させる。さらに、ビーム部16bを処分坑道2の内周に沿って回動させてゆき、処分坑道2の全周に亘る支保工4をはつり除去する。また、ビーム部16bの先端を伸長して回転カッタ16cを前方に送り出すことで、軸線O1方向の所定区間の支保工4を除去してゆく。
【0035】
本実施形態では、このように埋め戻し材3の投入や支保工4の除去を行う際に、埋め戻し材供給装置15及びはつり装置16がプロテクター10内に配置され、且つこのプロテクター10のマット型ジャッキ24及びインバート部材21によって地山Gの崩落や変位が防止されているため、安全性を確保した状態で各作業が行なわれる。
【0036】
そして、上記のように埋め戻し材3の投入及び所定区間の支保工4の除去を終え、はつり取ったコンクリート片を搬送撤去した段階で、マット型ジャッキ24を収縮させて外側被覆板25を坑道内側に戻し、地山Gへの押圧状態(地山Gの支持状態)を解除する。ついで、推進機構14を伸長するように駆動、すなわちプロテクター10と支圧板13の間隔を大きくするように駆動する。このとき、支圧板13の背面13b側に投入した埋め戻し材3は、投入時に締め固められていないため、推進機構14を伸長した際には、はじめに、支圧板13が処分坑道2の後方側に移動し、この支圧板13によって埋め戻し材3が押圧される。これにより、投入した埋め戻し材3が徐々に締め固められてゆく。そして、埋め戻し材3の締め固めが進行して支圧板13の移動が止まった段階で、埋め戻し材3は、所定の締め固め度をもって締め固められる。このように支圧板13が止まって埋め戻し材3で支持された状態で、さらに推進機構14を伸長させると、今度は、締め固めた埋め戻し材3で反力が確保され、支柱支持部材20が処分坑道2の底部G2上を滑動し、プロテクター10が処分坑道2の軸線O1方向前方に向けて推進する。そして、予め支保工4をはつり取った所定区間の地山面G1を覆うようにプロテクター10を推進させるとともに、埋め戻し材供給装置15及びはつり装置16を所定位置に配置する。
【0037】
ついで、推進機構14を元に戻すように(縮めるように)駆動して、支圧板13をプロテクター10に近づくように移動させる。これにより、締め固められた埋め戻し材3と支圧板13の背面13bとの間に新たな空間11が画成されてゆき、推進機構14が完全に縮まりプロテクター10と支圧板13の間隔が最小になった段階で所定厚(軸線O1方向の厚さ)の空間11が形成される。そして、再度、上記と同様にマット型ジャッキ24を膨張させてプロテクター10の外側被覆板25を新たに露出させた地山Gに当接させつつ押圧力を地山Gに作用させて支持させる。ついで、新たに形成した空間11内に埋め戻し材3を投入し、且つ前方側の支保工4を除去し、新たに投入した埋め戻し材3を締め固めつつプロテクター10を推進させる。このように、繰り返し上記の操作を行なってゆくことで、埋め戻し材3で処分坑道2が閉塞(閉鎖)されてゆく。
【0038】
したがって、本実施形態の坑道閉鎖装置B及び坑道閉鎖方法によれば、コンクリート製の支保工4をはつり除去しつつ埋め戻し材3の供給及び締め固めを行なうことができ、上記の操作を繰り返し行なうことで、従来のようにそれぞれの作業を行なうための専用機械を作業毎に入れ替えることなく、効率的に処分坑道2を閉鎖することが可能になる。そして、このように廃棄物を処分した処分坑道2を閉鎖することで、埋め戻し材3がコンクリートに起因した劣化を生じることがなく、長期にわたり安定した状態で廃棄物を処分することが可能になる。
【0039】
また、プロテクター10のマット型ジャッキ24及びインバート部材21によって、露出した地山Gを確実に支持することができるため、処分坑道2を軟質岩の地山G内に形成した場合においても安全性を確保して作業を行なうことができる。さらに、このとき、処分坑道2を構築した際に緩んだ周辺地山をマット型ジャッキ24の押圧力によって締め固めることが可能であるため、この点からも作業時の安全性を確保することができるとともに、処分坑道2を閉鎖した後の廃棄物を長期にわたり安定した状態で処分することができる。
【0040】
さらに、マット型ジャッキ24を覆う外側被覆板25を、マット型ジャッキ24の膨張とともに地山面G1に当接させて、すなわちマット型ジャッキ24を直接地山面G1に接触させずに外側被覆板25を介して押圧力を地山Gに作用させることができる。これにより、マット型ジャッキ24に破損などが生じることを防止できる。さらに、このように外側被覆板25を介することによって、処分坑道2の側部G3及び上部G4の地山面G1に広範囲にわたって押圧力を作用させることができ、確実に地山を支持することができる。
【0041】
以上、本発明に係る坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、軟質岩の地山Gに形成された処分坑道2を閉鎖するものとして説明を行なったが、本発明の坑道閉鎖装置及び坑道閉鎖方法は、硬質岩や中硬質岩の地山Gに形成された処分坑道2に適用されてもよい。また、本実施形態のような軟質岩の地山Gに形成した処分坑道2を含め、硬質岩や中硬質岩の地山Gに形成した処分坑道2の閉鎖に適用する際に、処分坑道2の底部G2側に盤ぶくれなどの地山変位が生じるおそれがない場合には、プロテクター10にインバート部材21が具備されなくてもよい。さらに、これに関連して、処分坑道2の側部G3側の地山Gに崩落の危険性がない場合には、埋め戻し材供給装置15やはつり装置16の上方側のみを覆うように内側被覆板23を形成し、マット型ジャッキ24を上部G4側のみに設けるようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、埋め戻し材供給装置15で埋め戻し材3の投入を行なっている間に、はつり装置16でプロテクター10の前方側の支保工4をはつり除去するものとしたが、埋め戻し材3を投入する前段もしくは埋め戻し材3を投入した後段でプロテクター10の前方側の支保工4をはつり除去するようにしてもよい。
【0043】
さらに、本実施形態では、はつり装置16でコンクリート製の支保工4のみをはつり除去するように説明を行なったが、このはつり作業時に、処分坑道2を構築した際に緩んだ周辺地山(劣化地山)を同時にはつって除去するようにしてもよく、このように劣化地山を無くすことで地山Gの安定性をさらに向上させることができる。一方で、劣化地山をはつり除去した際に、緩み領域が僅かながら地山Gの深部側に進展することも考えられる。しかしながら、本実施形態のようにマット型ジャッキ24の押圧力でこの地山Gを支持するため、安全性を確保して作業を行なうことが可能であり、また、このとき進展した緩み領域をマット型ジャッキ24の押圧力で締め固めることが可能であるため、この点からも安全性を確保して作業を行なうことができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、放射性廃棄物を処分する廃棄物埋設処分施設Aの処分坑道2を埋め戻すものとしたが、他の廃棄物を処分する坑道の埋め戻しに、本発明に係る坑道閉鎖装置及びこれを用いた坑道閉鎖方法が適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る坑道閉鎖装置を坑道に配置した状態を示す側断面図である。
【図2】図1のX−X線矢視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る坑道閉鎖装置を示す斜視図である。
【図4】廃棄物埋設処分施設を示す斜視図である。
【図5】図4の廃棄物埋設処分施設の主要坑道及び処分坑道を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 主要坑道
2 処分坑道(坑道)
3 埋め戻し材
4 支保工(コンクリート)
10 プロテクター
11 埋め戻し材を供給する側の空間
12 プロテクターが配置される側の空間
13 支圧板
13a 窓部
14 推進機構(水平ジャッキ)
15 埋め戻し材供給装置
16 はつり装置
20 支柱支持部材
21 インバート部材
22 支柱部材
23 内側被覆板
24 マット型ジャッキ
25 外側被覆板
A 廃棄物埋設処分施設
B 坑道閉鎖装置
G 地山
G1 地山面
G2 底部
G3 側部
G4 上部
O1 処分坑道の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を処分した坑道を埋め戻すための坑道閉鎖装置であって、
前記坑道の地山面を被覆したコンクリートあるいは該コンクリート及び劣化地山をはつり除去するはつり装置と、前記坑道内に埋め戻し材を供給する埋め戻し材供給装置と、前記はつり装置及び前記埋め戻し材供給装置を覆って保護するプロテクターと、前記坑道を、前記埋め戻し材を供給する側の空間と前記プロテクターが配置される側の空間とに区画するとともに前記両空間を連通させる窓部を備えた支圧板と、前記プロテクターと前記支圧板に接続して設けられ、前記プロテクターと前記支圧板を前記坑道の軸線方向に相対移動させる推進機構とを備え、
前記プロテクターには、膨縮自在なマット型ジャッキが具備されており、該マット型ジャッキの膨張圧によって前記はつり装置で露出させた地山面を押圧し地山を支持することを特徴とする坑道閉鎖装置。
【請求項2】
請求項1記載の坑道閉鎖装置において、
前記プロテクターが、前記坑道の底部側の前記軸線直交方向両側端側にそれぞれ配設される一対の支柱支持部材と、前記坑道の側部及び上部の地山面に沿う馬蹄形状に形成され、両下端のそれぞれを前記一対の支柱支持部材のそれぞれに接続して設けられた支柱部材と、該支柱部材の前記地山面側の端部に接続して支持され、前記支柱部材の内側に配置した前記はつり装置及び前記埋め戻し材供給装置を覆うように設けられた内側被覆板と、該内側被覆板上に敷設された前記マット型ジャッキと、該マット型ジャッキを覆って保護する外側被覆板とを備えることを特徴とする坑道閉鎖装置。
【請求項3】
請求項2記載の坑道閉鎖装置において、
前記一対の支柱支持部材に繋がり前記坑道の底部側の地山面に沿うように設けられたインバート部材を備えることを特徴とする坑道閉鎖装置。
【請求項4】
廃棄物を処分した坑道内に埋め戻し材を供給するとともに締め固めて前記坑道を埋め戻す坑道閉鎖方法であって、
前記坑道の地山面を被覆したコンクリートあるいは該コンクリート及び劣化地山をはつり除去するはつり装置、及び前記坑道内の支圧板で区画した空間に前記埋め戻し材を供給する埋め戻し材供給装置を覆って保護するプロテクターに、前記はつり装置で露出させた前記地山面を押圧して地山を支持する膨縮自在なマット型ジャッキと、前記プロテクターと前記支圧板に接続して設けられ、前記プロテクターと前記支圧板を前記坑道の軸線方向に相対移動させる推進機構とが設けられ、
前記マット型ジャッキを膨張させて前記はつり装置で露出させた地山を支持した状態で、他の部分の前記コンクリートあるいは該コンクリート及び劣化地山をはつり除去するとともに前記空間に前記埋め戻し材を供給し、前記マット型ジャッキを収縮させて前記地山の支持状態を解除するとともに、前記推進機構の駆動により前記空間に供給した前記埋め戻し材を前記支圧板で押圧して締め固め、前記支圧板で締め固めた埋め戻し材で反力を確保しながら前記プロテクターを前記坑道の軸線方向前方に推進させることを特徴とする坑道閉鎖方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−196232(P2008−196232A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33528(P2007−33528)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】